(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180488
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】眼内挿入用に構成された装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024177409
(22)【出願日】2024-10-09
(62)【分割の表示】P 2022033279の分割
【原出願日】2015-12-21
(31)【優先権主張番号】14/828,083
(32)【優先日】2015-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/110,241
(32)【優先日】2015-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514185747
【氏名又は名称】クラービスタ メディカル,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CLARVISTA MEDICAL,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、グレン
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン、ポール
(72)【発明者】
【氏名】シーバー、アンドリュー
(57)【要約】
【課題】水晶体嚢を操作する必要なく、光学的結果の矯正または修正を可能にすること。
【解決手段】眼内挿入用に構成された装置が開示される。該装置は、環状のベースと、レンズとを備える。該レンズは、光学部分と、光学部分から突出する第1のタブと、第1のタブに対し直径方向に対向するように前記光学部分から突出する第2のタブとを備える。第2のタブは、一端が光学本体に取り付けられるとともに他端が自由端である一対の片持ち状スプリングからなり、当該レンズと前記環状のベースとをインターロック接続するために径方向に圧縮された位置と圧縮されていない拡張した位置との間で変形可能である。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内挿入用に構成された装置であって、
該装置は環状のベースを備え、
前記環状のベースは、
前開口を囲み、後面を有する前方部分と、
後開口を囲む後方部分と、
前記前方部分と前記後方部分との間に延び、径方向内方面を有する壁と、
前記前開口から前記後開口に前記環状のベースを貫通する通路と、
前記通路を囲み、前記前方部分の前記後面と、前記壁の前記径方向内方面と、前記後方部分の前面とによって画定される凹部と
を備え、
該装置は、レンズを備え、該レンズは、
光学部分と、
前記光学部分から突出する変形不能な第1のタブと、
前記第1のタブに対し直径方向に対向するように前記光学部分から突出する第2のタブであって、一端が光学本体に取り付けられるとともに他端が自由端である一対の片持ち状スプリングからなる第2のタブと
を含み、
前記第2のタブは、当該レンズと前記環状のベースとをインターロック接続するために(i)径方向に圧縮された位置と(ii)圧縮されていない拡張した位置との間で変形可能である、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼内挿入用に構成された装置、すなわち眼内レンズ(intraocular lens:IOL)に関する。より詳細には、本発明はモジュール式IOLの設計、方法および関連する器具の実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を介して光を透過させ、水晶体によって網膜上に像を結ぶことにより視覚を提供するように機能する。結像した像の品質は、眼の大きさおよび形状、並びに角膜および水晶体の透明度を含む多くの要因に依存する。
【0003】
年齢または疾患により水晶体があまり透明でなくなる(例えば曇る)と、網膜を透過可能な光が減少するため、視力は低下する。眼の水晶体におけるこの不具合は、医学的には白内障として知られている。この疾患に対して容認されている治療は、水晶体嚢からの水晶体の外科的除去および水晶体嚢内における人工眼内レンズ(IOL)の配置である。米国では、白内障の水晶体の大部分は、水晶体超音波乳化吸引術(phcoemulsification)と呼ばれる外科手術手技によって除去される。この処置の間、水晶体嚢の前側に開口(嚢切開部(capsulorhexis))が形成され、病変した水晶体内に細い水晶体超音波乳化吸引切断チップが挿入されて超音波振動を生じさせる。振動した切断チップは、水晶体が水晶体嚢から吸引され得るように水晶体を液化または混濁化させる。病変した水晶体は除去され、IOLと置き換えられる。
【0004】
IOLを植え込む白内障手術後、光学的結果が芳しくなかったり、または経時的に調整を必要としたりする場合がある。例えば、処置の直後に、屈折矯正が誤っていると判断されることがあり、時に「リフレクティブサプライズ」と呼ばれるものを生じる。また、例えば、処置後相当経過後に、患者が、より強力な屈折矯正、乱視矯正、または多焦点矯正のような異なる矯正を必要としているか、または所望していると判断されることもある。
【0005】
これらのケースの各々において、外科医は水晶体嚢から芳しくないIOLを除去し、新たなIOLと交換する試みを厭う場合がある。一般に、IOLを除去するための水晶体嚢の操作は後部破裂を含む損傷を水晶体嚢に与える危険がある。この危険性は水晶体嚢がIOLのまわりに潰れ、組織内殖がIOLのハプティックにまつわりつくにつれて経時的に増大する。よって、IOLを除去したり、または水晶体嚢を操作したりする必要なく、光学的結果を矯正または修正することができることが望ましい。
【0006】
よって、ベースまたは一次レンズに取り付けることができるレンズを用いることにより、水晶体嚢を操作する必要なく、光学的結果の矯正または修正を可能にするIOLシステムおよび方法の必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様は組付時にモジュール式IOLを形成する眼内ベースおよび光学コンポーネントを含むモジュール式IOLシステムを提供する。一般に前記モジュール式IOLは術中または術後のいずれにおいても、ベースを適所に残しながら、レンズを調整または交換することを可能にする。
【0008】
一態様において、モジュール式IOLシステムは、半径方向外側に延びる2つのハプティックを有する環状のベースを含んでいる。前記ベースは、中央孔および内周縁を画定し、前記内周縁において半径方向内方に解放された凹部を有する。モジュール式IOLシステムはまた、半径方向外方に延びる第1タブおよび第2のタブのある光学本体を有するレンズを含んでいる。前記ベースと前記レンズとは、レンズの第1のタブおよび第2のタブをベースの凹部に配置することによって組み付けてもよい。前記第1のタブは、可変スプリングであってもよく、前記第2のタブは非可変延長部であってもよい。前記第1のタブは、ベースとのレンズの組み付けのために半径方向の圧縮を必要とするものである。前記第1のタブは、それぞれの一端が光学本体に取り付けられ、他端が自由端である一対の片持ち状スプリングを備えていてもよい。
【0009】
薬品注入機能やセンサ機能の少なくともいずれか一方をベースに持たせることができ、これはそのような機能をレンズに持たせる場合に比べ、いくつかの利点をもたらす。例えば、薬品またはセンサがレンズの光学性能を有する場合に生じる干渉を回避する。
【0010】
本発明の態様はまた、モジュール式IOLのベースおよびレンズの直列装入または並列装入を容易にするインジェクタ装置を提供する。インジェクタは、少なくとも1つのプランジャが内部に配置された少なくとも1つの内部ルーメンを有するバレルを含んでいてもよい。ベースとレンズとがいずれもバレル内に装填された後、バレルの遠位端が眼の中に配置されて、プランジャがバレル内で前進され、ベースとレンズは眼の中に配置される。ベースおよびレンズは、順番に眼の中に配置されてもよく、または同時に配置されてもよい。前記バレルは、例えば内部に配置された単一のプランジャを有する単一の内部ルーメンを含んでいてもよく、プランジャが各ルーメンに配置され、遠位側で合流する並列な内部ルーメンを含んでいてもよく、一対の同軸プランジャが内部に配置された単一の内部ルーメンを含んでいてもよい。前記ベースと前記レンズは、バレル内に直列に配置されてもよく、必要な場合には、カートリッジを用いて並列に配置されてもよい。
【0011】
本発明によるモジュール式IOLシステム、器具、および方法は、固定単焦点、多焦点、トーリック(toric)、遠近調節、およびそれらの組み合わせを含む様々なIOL型式に適用可能である。加えて、本発明の態様によるモジュール式IOLシステム、器具、および方法は、例えば、白内障、近視(近眼)、遠視(遠眼)、並びに乱視の眼における大きな光学的誤差、水晶体転位症、無水晶体症、偽水晶体および核硬化症を治療するために使用可能である。
【0012】
本発明の実施形態の様々な他の態様は以下の詳細な説明および図面に記載されている。
図面は本発明の実施形態の例を示している。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、同一の番号を付された同様の要素を含むことがあり、また例として寸法(ミリメートル)および角度(度)を含む場合があるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2A】本発明の実施形態による水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLの図。
【
図2B】本発明の実施形態による水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLの図。
【
図2C】本発明の実施形態による水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLの図。
【
図2D】本発明の実施形態による水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLの図。
【
図2E】本発明の実施形態による水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLの図。
【
図2F】本発明の実施形態による水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLの図。
【
図3A】本発明の実施形態によるモジュール式IOLの代替的なベース部分の図。
【
図3B】本発明の実施形態によるモジュール式IOLの代替的なベース部分の図。
【
図3C】本発明の実施形態によるモジュール式IOLの代替的なベース部分の図。
【
図3D】本発明の実施形態によるモジュール式IOLの代替的なベース部分の図。
【
図3E】本発明の実施形態によるモジュール式IOLの代替的なベース部分の図。
【
図3F】本発明の実施形態によるモジュール式IOLの代替的なベース部分の図。
【
図4A】モジュール式IOLの植え込み方法および除去方法の例を示す図。
【
図4B】モジュール式IOLの植え込み方法および除去方法の例を示す図。
【
図4C】モジュール式IOLの植え込み方法および除去方法の例を示す図。
【
図4D】モジュール式IOLの植え込み方法および除去方法の例を示す図。
【
図4E】モジュール式IOLの植え込み方法および除去方法の例を示す図。
【
図4F】モジュール式IOLの植え込み方法および除去方法の例を示す図。
【
図4G】モジュール式IOLの植え込み方法および除去方法の例を示す図。
【
図5A】モジュール式IOLを植え込むための直列装置の概略側面図。
【
図5B】モジュール式IOLを植え込むための並列装置の概略側面図。
【
図5C】モジュール式IOLを植え込むための直列装置の概略側面図。
【
図5D】モジュール式IOLを植え込むための並列装置の概略側面図。
【
図6A】本発明によるモジュール式IOLの代替的なベース部を示す図。
【
図6B】本発明によるモジュール式IOLの代替的なベース部を示す図。
【
図6C】本発明によるモジュール式IOLの代替的なベース部を示す図。
【
図7A】本発明によるモジュール式IOLの代替的なレンズ部の斜視図である。
【
図7B】本発明によるモジュール式IOLの代替的なレンズ部の平面図である。
【
図7C】本発明によるモジュール式IOLの代替的なレンズ部の平面図である。
【
図8A】本発明によるモジュール式IOLの別の代替的なレンズ部の斜視図である。
【
図8B】本発明によるモジュール式IOLの別の代替的なレンズ部の平面図である。
【
図9】本発明による薬品注入機能を有するモジュール式IOLの代替的なレンズ部の平面図である。
【
図10】本発明によるセンサ機能を有するモジュール式IOLの代替的なレンズ部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、ヒトの眼10が断面図で示されている。眼10は、いくつかの目的のために光に反応する器官といわれている。意識的な感覚器官として、眼は視覚を可能にする。網膜24の桿体細胞および錐体細胞は、色の区別および奥行知覚を含む意識的な光覚および視覚を可能にする。加えて、網膜24内におけるヒトの眼の非画像形成光感受性神経節細胞(non-image-forming photosensitive ganglion cells)は、瞳孔の大きさの調整、メラトニンホルモンの調節および抑制、並びに体内時計の同調化に影響を与える光信号を受信する。
【0015】
眼10は、正確には球体ではなく、むしろ融着した2部分からなるユニットである。角膜12と呼ばれるより湾曲したより小さな前面ユニットは強膜14と呼ばれるより大きなユニットに連結している。角膜部分12は、半径が典型的には約8mm(0.3インチ)である。強膜14は、残りの5/6を構成し、その半径は、典型的には約12mmである。角膜12および強膜14は、リンバスと呼ばれる輪によって接続されている。角膜12は透明であるため、角膜12の代わりに、虹彩16、すなわち眼の色と、その黒色の中心部、すなわち瞳孔とが見える。眼10の内部を見るためには光が反射されないので、検眼鏡が必要である。黄斑28を含む眼底(瞳孔に対向する領域)は、特徴的な青白い視神経円板(乳頭)を示し、該視神経円板において、眼に進入する血管が通過し、視神経線維18が眼球から出ていく。
【0016】
しかして眼10は、3つの透明な構造体を包む3つの被膜からなる。最外層は、角膜12および強膜14から構成される。中間層は、脈絡膜20、毛様体22および虹彩16からなる。最内層は、網膜24であり、網膜24は検眼鏡内において見ることができる網膜の血管からだけでなく、脈絡膜20の血管からもその循環を得ている。これらの被膜内には、房水、硝子体26、および柔軟な水晶体30が存在する。房水は、2つの領域、すなわち角膜12と虹彩16および水晶体30の露出領域との間の前眼房と、虹彩16と水晶体30との間の後眼房とに含まれる透明な流体である。水晶体30は、微細な透明線維からなる毛様小帯32(チン小帯)によって毛様体22に懸架されている。硝子体26は、房水よりはるかに大きい透明なゼリー状物質である。
【0017】
水晶体30は角膜12とともに、網膜24上に結像されるように光の屈折を助ける眼内の透明な両凸構造体である。水晶体30は、その形状を変化させることによって、様々な距離の対象に対して焦点を合わせるべく、眼の焦点距離を変化させるように機能し、もって関心のある対象の鮮明な実像が網膜24上に形成されることを可能にする。水晶体30のこの調整は、遠近調節として知られており、写真用カメラのそのレンズの移動によるピント合わせに類似している。
【0018】
水晶体は、3つの主要部分、すなわち水晶体嚢、水晶体上皮、および水晶体線維を有する。水晶体嚢は、水晶体の最外層を形成し、水晶体線維は、水晶体内部の大部分を形成する。水晶体嚢と水晶体線維の最外層との間に位置する水晶体上皮の細胞は、主に水晶体の前側に見られるが、赤道を少し越えて後方に延びる。
【0019】
水晶体嚢は、水晶体を完全に囲繞する滑らかで透明な基底膜である。水晶体嚢には弾性があり、コラーゲンから構成されている。水晶体嚢は、水晶体上皮によって合成され、その主成分はIV型コラーゲンおよび硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)である。水晶体嚢は非常に弾性に富み、水晶体嚢を毛様体22に接続する小帯線維の張力が作用していない場合には、より球形を水晶体にとらせる。水晶体嚢は、約2~28マイクロメートルの間で厚さが変化し、赤道付近で最も厚く、後極付近で最も薄い。水晶体嚢は、水晶体の後方よりも高い前方の曲率に関与し得る。
【0020】
水晶体30の各種疾患および障害は、IOLによって治療され得る。一例として、必ずしもこれらに限定するものではないが、本発明の実施形態によるモジュール式IOLシステムは白内障、近視(近眼)、遠視(遠眼)、並びに乱視の眼における大きな光学的誤差、水晶体転位症、無水晶体症、偽水晶体および核硬化症を治療するために用いられ得る。しかしながら、説明のために、本発明のモジュール式IOL実施形態は白内障に関して記載する。
【0021】
以下の詳細な説明は一次眼内要素および二次眼内要素、すなわち眼内光学系を解放可能に受容するように構成された眼内ベースを備えたモジュール式IOLシステムの様々な実施形態について記載する。さらに広く述べると、任意の一実施形態に関して記載された特徴は他の実施形態に適用され、組み込まれてもよい。
【0022】
図2A~
図2Fを参照すると、ベース55およびレンズ65を含むモジュラーIOL90の実施形態が概略的に示されている。
図2A~2Cは、モジュール式IOL90のベース55を示し、
図2D~
図2Fは、モジュール式IOL90の光学部、即ちレンズ部65を示す。具体的には
図2Aは、ベース55の正面図を示し、
図2Bは、
図2AのB-B矢視断面図を示し、
図2Cは、ベース55の斜視図を示す。
図2Dは、レンズ65の正面図を示し、
図2Eは、
図2DのE-E断面図を示し、
図2Fは、レンズ65の斜視図を示している。モジュール式IOL90は、例として図面に示されるような寸法を有することができ、必ずしも限定されない。
【0023】
図2A~
図2Cを特に参照すると、モジュール式IOL90のベース55の部分は、レンズ65がベース55に取り付けられた場合にレンズ65の後方光学面が最外側部分を除いてベース55と接触しないように、一対のハプティック54と中央孔57とを含んでいる。凹溝92は、レンズ65のタブ部分95,96を受容するような大きさおよび構成であり、孔57の周縁を画定する。
【0024】
凹溝92は下側リム91および上側リム93と、内向き側壁94とを含む。上側リム93は、レンズ65がベース55の孔57の内側に留まることができるように、レンズ65(タブ部分95および96を除く)の光学部分97の外径と同等のまたは外径よりも大きい内径を有している。下側リム91の全部または一部は、ベース55の孔57内にレンズ65が配置された場合に下側リム91がレンズ65に対してレッジまたはバックストップとして作用するように、レンズ65(タブ部分95および96を含む)の外径より小さな内径を有している。例として、必ずしもこれらに限定するものではないが、上側リム93は、約6.0mmの内径を有し、下側リム91は約5.5mmの内径を有し、レンズ65の光学部分97は、約5.8mmの外径を有し、タブ95,96は、タブ95の頂端からタブ96の頂端までで約7.125mmの直径、即ち寸法を有している。
【0025】
前記溝92を画定する下側リム91および上側リム93は、孔57の周の全部または一部のまわりに連続的に延びていてもよい。ベース55は、後工程で結合(例えば接着剤結合または溶剤結合)される下側、すなわち後方部分55-1と、上側、すなわち前方部分55-2とを含む2部品に低温機械加工されてもよく、連続した溝92を画定するのによく適している場合がある。化学的性質および機械的性質の適合性を維持するために、接着剤およびベース55の部品55-1および55-2は同一のモノマ調合物またはポリマ調合物を備えていてもよい。例えば、前記接着剤はベース55の疎水性アクリル部品55-1および55-2の製造に用いられるのと同一のアクリルモノマから調剤されてもよい。代替的に、溝92を画定している下側リム91および上側リム93は、孔57の周の全部または一部のまわりに断続的に延びていてもよい。断続的な構成の例は、下側リム91と上側リム93とを交互にし、単一の部分でベース55を低温機械加工するのに適している。当技術分野においてよく知られている他の製造法を用いてもよい。
【0026】
選択的に、ベースの後方部分55-1は、孔57を備えた環状リングではなく、レンズ65の後方側が接触する後面を画定する中実の円盤であってもよい。前記後面は、平らであってもよいし、またはレンズ65の後方の輪郭に一致するために湾曲していてもよい。これはレンズ65にバックストップを提供することにより、ベース55に対するレンズ65の装入および位置決めをより容易にするという利点を有する。これはまた後嚢混濁の割合を低減するという利点を提供する。
【0027】
図2D~
図2Fを特に参照すると、モジュール式IOL90のレンズ65は光学部分97と、1つ以上のタブ95,96とを含んでいる。図示のように、タブ95は定常であるが、タブ96は可変である。代替案として、定常タブ95は(例えばタブ96のような)可変タブと置き換えられてもよい。定常タブ95は、貫通孔98を備えていてもよく、この孔98にプローブまたは同様の装置を係合させて、タブ95を操作し得るようにしてもよい。可変タブ96は、ベース55の孔57内に装入されるための圧縮姿勢と、ベース55の溝92内で配備されるための非圧縮拡張姿勢(図示)との間で可変であり、もってベース55とレンズ65との間にインターロック接続を形成する。
【0028】
定常タブ95の外側の湾曲は、溝92の内側半径に適合する半径を有していてもよい。同様に、可変タブ96の外側の湾曲は、当該可変タブ96がその非圧縮拡張姿勢にある場合、溝92の内側半径に適合する半径を有していてもよい。この構成は、いったん結合されると、ベース55とレンズ65との間の相対運動を制限する。
【0029】
選択的に、レンズ65は、円形ではなく、卵形または楕円形であってもよく、タブ95,96は、長軸に近接して位置決めされる。したがって、その構成は、当該短軸に沿ったレンズ65のエッジとベース55内の溝92の上側リム93の内周との間に隙間を画定することになる。前記隙間は、分解が必要となった場合に、プローブまたは同様の装置がベース55からレンズ65を取り外すためのアクセスを提供するという利点を有する場合がある。
【0030】
可変タブ96は図示のように、レンズ65に取り付けられた2つの端部がレンズから延び、中間部分が(板ばねのように)レンズ65から離反している。代替的に、可変タブ96はレンズ65に取り付けられた一端がレンズから延び、他端は(片持ち状スプリングのように)自由端であってもよい。機械の技術分野において知られているように、他のスプリング形態を用いてもよい。
【0031】
可変タブ96は(例えば側方内向きの力の作用により)その圧縮姿勢に弾性変形可能である。小さな力による圧縮を容易にするために、デンプル99をタブの外側(および内側の少なくともいずれか一方)の外側湾曲面に提供して、ヒンジにばね性持たせてもよい。
【0032】
図3A~
図3Fは、モジュール式IOL90の別のベース55Aを示す。具体的には、
図3Aは、ベース55の正面図を示し、
図3Bは、
図3AのB-B矢視断面図を示し、
図3Cは、ベース55Aの斜視図を示し、
図3Dは、
図3Bの円Dの詳細図を示し、
図3Eは、
図3Aの円Eの詳細図を示し、
図3Fは、ベース55Aおよびレンズ65を含む組み付け後のモジュール式IOL90の斜視図を示している。この別の実施形態において、モジュール式IOL90のベース55Aのすべての態様は、一対の切欠き91A、一対のノッチ93A、外向きリム53、および鋭利なエッジ91B,91Cを備えること以外はほぼ同一である。既出の実施形態の全ての同様な諸側面が、本実施形態にも適用可能である。大きさもまた、例示のために提示されたものであり、限定するものではない。
【0033】
既出の実施形態におけるように、この別の実施形態のモジュール式IOL90のベース55Aの部分は、レンズ65がベース55に取り付けられたときに、レンズ65の後方光学面が最外側部分以外はベース55と接触しないように、一対のハプティック54と中央孔57とを備える。また、既出の実施形態におけるように、ベース55Aは、単一部材として形成されたり、或いは、後方部分55A-1と前方部分55A-2とが(示したように)接着その他によって互いに固定されたものとして形成されていてもよい。レンズ65のタブ部分95,96を受容するような大きさおよび構成である凹溝92は、孔57の輪郭を画定する。凹溝92は下側リム91と、上側リム93と、内向き側壁94とを備える。下側リム91は、ベース55Aの後方部分55A-1の一部であってもよく、上側リム91は、ベース55Aの前方部分55A-2の一部であってもよい。
【0034】
モジュール式IOL90のベース55Aのこの別の実施形態において、下側リム91は、術中に粘弾性物(visco-elastic)を除去することを支援する1つ以上の切欠き91Aを含んでいてもよい。また、この別の実施形態において、上側リム93は、術中にベース55がより容易に操作されることを可能にするシンスキー氏フックへのアクセスを提供するために1つ以上のノッチ293Aを備えていてもよい。
【0035】
さらに、この実施形態において、ベース55Aは、ベース55Aのほぼ全周囲に延びる外側リム53を含んでいてもよい。外側リム53は、図示されるように、ベース55Aの後方部分55A-1の一部として形成されていてもよく、或いは当該ベースの前方部分55A-2の一部として形成されていてもよい。外側リム53は、当該ハプティック54の内側湾曲に満たないところでハプティック54の接合部を終端して、ハプティック54の本体にフレキシブル接合させてもよく、さらにベース55Aおよび外側リム53は、ハプティック54の外側湾曲に対して連続的に延びていてもよい。
【0036】
ベース55Aの最後部は、後嚢混濁の傾向を低減するために、当該ベース55Aの周縁に沿う少なくとも1つのコーナエッジ91Bを含んでいてもよく、ベース55Aの外周は、コーナエッジ91Cおよび91Dを含んでいてもよい。加えて、前方コーナエッジ93Bは、ベース55Aの前方外周に沿って形成される。コーナエッジ91B,91C,91Dは、下側リム91を画定するベース55Aの後方部分55A-1に形成されていてもよく、コーナエッジ93Bは、上側リム93を画定するベース55Aの前方部分55A-2に形成されていてもよい。断面において、コーナエッジ91B,91C,91D,93Bは、直角、鋭角または鈍角に画定されてもよい。後方コーナエッジ91Bは、示したように、後面と同一平面上にあってもよいし、または後方に突出していてもよい。ベース55Aは、コーナエッジ91B,91C,91D,93Bをより良好に形成するために、後続の反転工程を行わずに機械加工が可能である。好ましくは、コーナエッジ91B,91C,91D,93Bは、ベース55Aの全周にわたって延びていてもよい。
【0037】
図2B、
図3Bおよび
図2Eに関し、下側リム91および上側リム93は、ベース55/55Aの周まわりの前後(AP)寸法を画定し得るものであり、このAP寸法は、溝92に嵌合するタブ95,96に近接するレンズ65に対応するAP寸法よりも大きいことに留意されたい。例えば、
図2Bおよび
図3Bに示すように、ベース55/55Aの周縁まわりのAP寸法は、0.615mmであり、タブ95,96に近接した対応するレンズ65のAP寸法は、
図2Eに示すように0.25mmであってもよい。モジュール式IOL90が水晶体嚢内に植え込まれる場合、これらの相対寸法は、後嚢とレンズ65の後方側との間の乖離(standoff)、並びに嚢切開部に近接する前嚢(時に前尖と呼ばれる)と光学部の前方側との間の乖離を提供する。この乖離は、当該乖離がない場合に手術後の光学部の交換を妨げることがある細胞増殖の可能性、並びにレンズ65の混濁化およびレンズ65への組織付着の少なくともいずれか1つが生じる可能性を低減する。そのような細胞増殖は、典型的には半径方向内側に増殖するので、前記乖離は、下側リムおよび上側リム91,93の内周に近接したレンズ65の周囲に近接して提供される一方、前記光学部の中心部は乖離を有しても有さなくてもよく、ベース55/55Aの周まわりのAP寸法より小さいか、同一であるか、または大きいAP寸法を有する。
【0038】
例えば、前記光学部の中心部は
図2Eに示すように(視度によっては)、0.78mmのAP寸法を有してもよく、これは
図2Bおよび
図3Bに示したような0.615mmのベース55/55Aの周のAP寸法より大きい。加えて、前方側に嚢切開部が存在すること、およびそれに対応して前方側の組織接触領域がより少ないことによって、前方側より後方側で細胞増殖の可能性がより高いという認識の下、下側(後方)リム91が上側(前方)リム93よりも大きなAP寸法を有してもよい。当業者は、この効果を達成するためには例として提供され、必ずしもそれらに限定されるものではない特定の寸法ではなく、相対寸法の重要性を認めるであろう。
【0039】
例として、必ずしも限定されないが、
図3A~
図3Eに示されたように、代替的なベース55-1について、以下の寸法が、提供される。
図3Aにおいて、直径A1は13.00mm±0.02mm、直径A2は8.50mm±0.10mm、直径A3は7.00mm±0.051mm、直径A4は6.30mm±0.051mm、直径A5は5.50±0.15/-0.05mm、直径A6は7.92mmであってもよい。
図3Bにおいて、寸法B1は0.615mm±0.020mmであってもよい。
図3Dにおいて、寸法D1は0.15mm、寸法D2は0.17mm、寸法D3は0.75mm、寸法D4は0.35mm、寸法D5は0.08mm、寸法D6は0.30mm±0.02mmであってもよい。
図3Eにおいて、寸法E1(切欠き91Aの幅)は1.48mmであり、寸法E2(切欠き93Aの外縁における直径)は6.62mmであり、寸法E3(上側リム93の内径)は6.25mmであり、寸法E4(切欠き91Aのラジアン)は30度であってもよい。
【0040】
一般に、本モジュール式IOL90は、術中と術後のいずれにおいても、ベース55を所定の位置に残したまま、レンズ65を調整または交換することを可能にする。これらのものが好ましい例は、手術中に検出された芳しくない屈折結果についてレンズ65を交換すること、術後に検出された芳しくない屈折効果(残留屈折率誤差)についてレンズ65を交換すること、トーラス補正を微調整するためにレンズ65をベース55に対して相対的に回転方向に調整すること、真光学軸(水晶体嚢の中心でなくてもよい)との光学系の軸合わせのためにレンズ55をベース55に対して相対的に横方向に調整すること、より長い時間にわたる光学的ニーズまたは患者の希望もしくは要望に応じてレンズ65を交換すること、をこれらに限定することなく含んでいる。最後の例としては、成人または成熟するにつれて元の光学的矯正の必要性が変化する小児IOL患者、単焦点IOLからプレミアムIOL(トーリック、多焦点、収容もしくは他の将来のレンズ技術)へのアップグレードを希望する患者、プレミアムIOLに満足しておらず、単焦点IOLにダウングレードしたい患者、およびIOLもしくは特定のタイプのIOLが禁忌である病状を発症する患者を含んでいる。
【0041】
ベース55およびレンズ65を含むモジュール式IOL90を移植する方法の一例が
図4A~
図4Dに示されている。レンズ65をベース55から除去する方法の一例が
図4E~
図4Gに示されている。
図4C~
図4Dを参照して説明したステップに従って、レンズ65がベース55(および眼)から取り除かれた後、同一のベース65に異なるレンズ65を埋め込むことができる。
【0042】
図4Aに示すように、モジュール式IOL90は、最初に、角膜切開部13を介して嚢切開部36を通り水晶体嚢34内に挿入された、(挿入器または装入チューブとして知られている)インジェクタを用いることによって、ベース55を丸められた姿勢で水晶体嚢内に装入することにより、植え込まれる。
図4Bに示すように、ベース55は、インジェクタから放出され、広げられる。ベース55のハプティック54は、丁寧な操作で水晶体嚢34の内側の赤道に係合されるとともに、ベース55の孔57が嚢切開部36に対して芯合わせされる。
【0043】
レンズ65もまた、インジェクタを用いることによって丸められた姿勢で装入され、当該レンズ65の遠位チップがベース55に近接して位置決めされる。レンズ65は、インジェクタから放出され、広げられる。レンズ65は、丁寧な操作で嚢切開部36に対して芯合わせされる。一旦ベース55が水晶体嚢内に装入されて広げられると、レンズ65は、ベース55とレンズ65との間にインターロック接続を提供するべく、タブ95,96を溝92内に配置することによって、ベース55に接続される。
【0044】
図4C~
図4Dに示すように、レンズ65は、最初に可変タブ96を溝92に挿入することによって、ベース55に接続可能である。可変タブ96は、次いで、定常タブ95の孔98に挿入されたプローブまたは同様の装置を用いることによって、横方向の力の作用を受けることにより圧縮され、レンズ65とベース55とが同一平面上に位置するようにレンズ65がベース55の孔57内に進行することを可能にする。
【0045】
次に、圧縮力が可変タブ96から解除されることにより、定常タブ95は、ベース55の溝92内に摺動可能となり、レンズ65がベース55に接続する。インターロック機構(interlocking feature)を圧縮する際に前後方向の力ではなく横方向の力を用いることによって、水晶体嚢の後方断裂の危険性が低減される。プローブは孔98から除去される。ベース55からレンズ65を分離するためには、逆の工程に従えばよい。
【0046】
可変タブ96および溝92は、一対のうちの少なくとも一方が接続のロックまたはロック解除のために可変であって、ベース55とレンズ65との間にインターロック接続を提供するインターロック部材と称されてもよい。より一般的には、ベースとレンズとの間に1つ以上のインターロック接続が提供されていてもよい。各インターロック接続は、一方または双方が可変である一対のインターロック部材を備えてもよい。可変インターロック部材は、
図2A~
図2Fのモジュール式IOL90に関して記載したように、レンズと関連付けられてもよい。
【0047】
図4E~
図4Gに示すように、レンズの取り外しは、レンズをベースから分離することから開始される。
図4Eに示すように、プローブまたは同様の装置は、角膜切開部13、嚢切開部36を通過して、モジュール式IOL、例えばモジュール式IOL90を収容している水晶体嚢34内に進入する。
図4Fに示されるように、プローブまたは同様の装置が定常タブ95の孔98に係合し、横方向の力を作用させることによって可変タブ96を圧縮する。この圧縮により、定常タブ95は、ベース55の溝92から分離可能となる。丁寧な操作により、レンズ65は、当該レンズ65とベース55とがもはや同一平面上に位置しないように持ち上げられる。一旦解放されると、圧縮力は解除され、可変タブ96は弾性的に拡張して、ベース55の溝92から分離する。
【0048】
図4Gに示すように、レンズ65を水晶体嚢34から前眼房15内に通過させるため、プローブまたは同様の装置を用いることが可能である。この工程は、レンズ65の幅が嚢切開部36の幅よりも小さいので、眼に損傷を与えたり、または嚢切開部36の大きさを拡張したりしない。前記プローブまたは同様の装置はまた、定常タブ95が角膜切開部13に近位であり、かつ可変タブ96が角膜切開部13に遠位にある向きに、レンズ65を回転可能である。
【0049】
典型的な角膜切開部13は、レンズ65の外径より小さい約2.2mmの幅を有する。よって角膜切開部13を介して前眼房15からレンズ65を除去するにはレンズ65の機械的操作が必要となり得る。レンズ65は、単一片として、または複数片として、角膜切開部を介して引き出すことができるように、操作、例えば切断されてもよい。カニューレまたは管は、この除去を容易にする。
【0050】
従来の(挿入器として知られている)インジェクタがベース55およびレンズ65の装入に使用されてもよい。適切なインジェクタの例は、米国特許第5,123,905号明細書、米国特許第4,681,102号明細書、米国特許第5,304,182号明細書、および米国特許第5,944,725号明細書に記載されている。これらのようなインジェクタは、
図4A~
図4Gを参照して説明したように、ベース55およびレンズ65を単独で装入するように構成されていてもよい。代替的に、ベース55およびレンズ65は、直列に(すなわち順番に)装入するために直列で装填されていてもよく、或いは、並列で(すなわち同時に)装入するために予め組み立てて装填してもよい。直列または並列の装入を容易にする代替的なインジェクタの構成例を
図5A~5Dに示す。
【0051】
図5Aを参照して、代替的なインジェクタ100は、内部にプランジャ104が配置された単一の内部ルーメンを有する管状のバレル102を含んでいる。バレル102の遠位端106は、角膜切開部に挿入するために先細りになっている。一対のインラインカートリッジ108A,108Bがバレル102内に配置されており、ベース55およびレンズ65をそれぞれロール状の姿勢(不可視)で保持するように構成されている。カートリッジ108A,108Bは、インラインカートリッジが1つではなく2つ提供されていることを除いて、上述の米国特許第4,681,102号明細書に開示されているように構成されていてもよい。カートリッジ108A,108Bの代替品として、ベース55およびレンズ65は、バレル102内に予め配置されてもよく、或いは、上述のケルマンの米国特許第5,123,905号明細書に記載されているように、サイド装填開口を介してバレル102内に配置されてもよい。選択的に、バレル102内のカートリッジ108Aと108Bとの間にスペーサ107が配置されてもよい。プランジャ104がバレル102内で前進すると、プランジャ104の遠位端がレンズ65をカートリッジ108Bから押し出すので、スペーサ107(使用されている場合)が押圧されてカートリッジ108Aに配置されたベース55と係合する。プランジャ104が引き続いて前進することにより、ベース55が押圧されて、インジェクタ100の遠位端106から眼の中に入り、レンズ65がこれに続く。次いでレンズ65は、眼の中のベース55に取り付けられる。スペーサ107は、眼内への埋め込みを避けるためにインジェクタに繋がれていてもよいし、眼に入っても大丈夫な溶解可能材料で形成されていてもよい。ベース55は、バレル102内のベース55を前進させるのに必要な力が、レンズ65をバレル102内で前進させるのに必要な力よりも低くし、もってレンズ65がバレル102の内部でベース55に押しつけられる際に詰まる傾向を低減するように、レンズ65よりも小さい体積(すなわち、より少ない材料)を有していてもよい。
【0052】
図5Bを参照して、別の代替的なインジェクタ110は、内部壁103によって分離され、内部に一対のプランジャ104Aおよび104Bが配置された2つの並列な内部ルーメンを有する管状のバレル102を含んでいる。バレル102の遠位端106は、2つの並列なルーメンが合流し、壁103が終端する単一の共通ルーメンを含んでいる。バレル102の遠位端106は、角膜切開部に挿入するために先細りになっている。一対の並列なカートリッジ108A,108Bがバレル102内に配置されており、並列なルーメンのそれぞれにおいてベース55およびレンズ65をそれぞれロール状の姿勢(不可視)で保持するように構成されている。カートリッジ108A,108Bは、並列のカートリッジが1つではなく2つ提供されることを除いて、上述の米国特許第4,681,102号明細書に開示されているように構成されていてもよい。カートリッジ108A,108Bの代替品として、ベース55およびレンズ65は、バレル102内に予め配置されてもよく、或いは、上述の米国特許第5,123,905号明細書に記載されているように、サイド装填開口を介してバレル102内に配置されてもよい。プランジャ104Aがバレル102内で前進すると、プランジャ104Aの遠位端がカートリッジ108Aに配置されたベース55をカートリッジ108Aから押し出し、インジェクタ100の遠位端106から眼の中に配置する。次いで、プランジャ104Aは、元の位置に後退する。続いて、レンズ65を押圧し、カートリッジ108Bからインジェクタ100の遠位端106から眼の中に配置するために、プランジャ104Bをバレル102内に前進させる。次いで、レンズ65は、眼の内部のベース55に取り付けられる。
【0053】
図5Cを参照して、別の代替的なインジェクタ120は、内部に一対の同軸プランジャ104C,104Dが配置された単一の内部ルーメンを有する管状のバレル102を含んでいる。インナプランジャ104Cは、外側の管状のプランジャ104Dの内側で軸方向に移動可能に構成されている。バレル102の遠位端106は、角膜切開部に挿入するために先細りになっている。一対のインラインカートリッジ108A,108Bがバレル102内に配置されており、ベース55およびレンズ65をそれぞれロール状の姿勢(不可視)で保持するように構成されている。インラインカートリッジ108A,108Bは、インラインカートリッジが1つではなく2つ提供されていることを除いて、上述のバーテルの米国特許第4,681,102号明細書に開示されているように構成されていてもよい。カートリッジ108A,108Bの代替品として、ベース55およびレンズ65は、バレル102内に予め配置されてもよく、或いは、上述の米国特許第5,123,905号明細書に記載されているように、サイド装填開口を介してバレル102内に配置されてもよい。レンズ65は、インナプランジャ104Cの軸周りに丸まり、インナプランジャ104Cがレンズ65を通って摺動可能である。インナプランジャ104Cがアウタプランジャ104Dとバレル102の内側で前進すると、インナプランジャ104Cの遠位端がベース55をカートリッジ108Aから押し出す。インナプランジャ104Cが引き続いて前進することにより、当該インナプランジャ104Cの遠位端がベース55を押圧して、インジェクタ100の遠位端106から眼の中に配置する。次いで、インナプランジャ104Cは、元の位置に後退する。続いて、アウタプランジャ104Dがインナプランジャ104Cの外側で進行することにより、アウタプランジャ104Dの遠位端はレンズ65をカートリッジ108Bから押し出す。アウタプランジャ104Dが引き続いて前進することにより、当該アウタプランジャ104Dの遠位端がレンズ65を押圧し、インジェクタ100の遠位端106から眼の中に配置する。次いでレンズ65は、眼の中のベース55に取り付けられる。
【0054】
図5Dを参照して、別の代替的なインジェクタ130は、内部にプランジャ104が配置された単一の内部ルーメンを有する管状のバレル102を含んでいる。バレル102の遠位端106は、角膜切開部に挿入するために先細りになっている。一対の並列なカートリッジ108A,108Bが、横スロット拡張部109A,109Bにそれぞれ配置されている。カートリッジ108A,108Bは、ベース55およびレンズ65をロール状の姿勢(不可視)でそれぞれ保持するように構成されている。カートリッジ108A,108Bは、並列のカートリッジが1つではなく2つ提供されることを除いて、上述の米国特許第4,681,102号明細書に開示されているように構成されていてもよい。カートリッジ108A,108Bの代替品として、ベース55およびレンズ65は、バレル102内に予め配置されてもよく、或いは、上述の米国特許第5,123,905号明細書に記載されているように、サイド装填開口を介してバレル102内に配置されてもよい。
【0055】
引き続き
図5Dを参照して、並列なカートリッジ108A,108Bは、スロット拡張部109A,109Bの内側で横方向にスライドするものであり、第1の位置(図示のように下方位置)に押圧された場合には、カートリッジ108Aに収容されたベース55をバレル102の内部ルーメンと芯合わせし、第2の位置(上方位置、図示せず)に押圧された場合には、カートリッジ108Bに収容されたレンズ65をバレル102の内部ルーメンと芯合わせする。最初に、ベース55を収容するカートリッジ108Aがスロット拡張部109A内に押圧され、バレル102の中に配置する。プランジャ104の遠位端がバレル102内で前進すると、プランジャ104の遠位端がベース55をカートリッジ108Aから押し出し、インジェクタ100の遠位端106から眼の中に配置する。次いでプランジャ104は、(図示のように)その元の位置に退避する。続いてカートリッジ108Bは、スロット拡張部109B内に押し込まれてバレル102内に入りつつ、空のカートリッジ108Aをバレル102からスロット拡張部109Aに押し出す。次いで、プランジャ104は、レンズ65をカートリッジ108Bから押圧し、インジェクタ100の遠位端106から眼の中に配置するために、バレル102内で前進する。次いでレンズ65は、眼の中のベース55に取り付けられる。カートリッジ108A,108Bは、既述のように手動でスライドさせてもよく、或いは、例えばスプリングを使用して、ベース55をカートリッジ108Aから装入した後にプランジャ104が退避した場合に、レンズ65を収容したカートリッジ108Bがバレル102に押圧するように自動的に移動させてもよい。
【0056】
上述したように、ベース55およびレンズ65は、直列または並列に装入可能である。並列に装入するために、レンズ65は、ベース55と予め組み立てられ、一緒に湾曲され、次いで、眼内に装入するためにインジェクタに装填されていてもよく、この場合は、眼の中で2部材を組み立てる必要性はない。丸め工程、装填工程、および装入工程の間、ベース55とレンズ65とが組み付けられている結合を維持するために、溶解可能な接着剤、切断可能な部材(例えば、切断またはレーザアブレーションによって切断可能なタブ、テザーもしくはヒンジ)または他の一時的な接続手段を使用してもよい。代替的に、レンズ65は(両者を組み立てることなく)ベース55上に積み重ねられ、一緒に丸められ、インジェクタに装填され、眼に装入され、次いで眼の中で組み付けてもよい。
【0057】
図6A~6Cは、モジュール式IOL90に使用するための別の代替ベース55Bを示す。
図6Aは、ベース55Bの斜視図であり、
図6Bは、ベース55Bの平面図(正面図)であり、
図6Cは、
図6Bのベース55BのC-C斜視断面図である。代替的なベース55Bは、溝92の形状およびベース55Bの全体の大きさを除いて、ベース55と同様である。既出の実施形態の全ての同様な諸側面が、本実施形態にも適用可能である。
【0058】
この実施形態において、溝92は、前方に傾斜した上部リムすなわち壁93と、内向き側壁94と、後方に傾斜した下部リムすなわち壁91とによって画定されている。上部リム93は、例えば溝92の平面から30度、例えば、前方に傾斜していてもよく、下部リム91は、例えば溝92の平面から30度、後方に傾斜していてもよい。
【0059】
側壁94は、タブ95および96の厚さと適合する高さ(前後の寸法)を有することができる。側壁94は、タブ95および96の最外側の壁に適合する直線形状を有していてもよい。側壁94は上部リム93および下部リム91と交差して内側角部を形成している。湾曲した交差部と比較して、内側角部は、溝92の内側のタブ95,96のより良好な前後方向の安定性を提供することができ、それによりベース55Bに対するレンズ65のより良好な前後方向の安定性を提供する。
【0060】
溝92の開口は、リム91,93の内径に沿った上側リム93と下側リム91との間の距離によって規定される寸法を有する。溝92の開口寸法は、レンズ95のベース55Bへの挿入を容易にするために、タブ95,96の厚みよりもほぼ大きい。一例において、溝92の開口寸法はタブ95および96の厚さの1.5倍である。別の例において、溝92の開口寸法は、タブ95および96の厚さの2.0倍である。溝92の大きな開口は、レンズ65をベース55Bに迅速かつ容易に挿入することを可能にする。
【0061】
商業的に入手可能なIOLは、典型的には約6mmの赤道直径(ハプティックを除く)、直径6mmで約0.2mm、中心で0.7mmの前後の厚さを有し、約12mm3の全体積を提供する。レンズ65も同様に寸法決めされているが、ベース55Bには実質的により多くの体積が加わる。ベース55Bは約8.5mmの赤道直径(ハプティク54を除く)、直径8.5mmで約1mm、直径6mmで2.5mmの前後厚さを有し、レンズ65がベース55Bに配置されている場合には、約67mm3の全体積を有する。従って、組み合わされたベース55Bおよびレンズ65の寸法は、市販されている従来のIOLよりも体積的にはるかに大きい。この相対的に大きな体積は、水晶体嚢を天然レンズのように充填することを意図しており、もってベース55Bの安定性を高め、ベース55Bの周りの水晶体嚢の損傷による手術後の位置ずれを減少させる。比較のために、典型的な天然レンズは、体積が約180mm3に対応するものとして、約10.4mmの赤道直径、約4.0mmの前後寸法を有する。解剖学的なばらつきのために、天然レンズは、130mm3から250mm3の範囲の体積を有する場合がある。したがって、ベース55Bとレンズ65とは、天然レンズが摘出された後、従来のIOLが水晶体嚢の容積の約10%から5%を消費するのに対し、水晶体嚢の容積の約50%から25%を消費する。
【0062】
図7A~
図7Bは、モジュール式IOL90に使用する代替的なレンズ65Aを示す。
図7Aは、代替的なレンズ65Aの斜視図であり、
図7Bは、レンズ65Aの上部(前方)図である。代替的なレンズ65Aは、定常タブ95に設けられたノッチ98Aおよび代替の可変タブ96Aを除いて、レンズ65と同様の設計および機能を有する。既出の実施形態の全ての同様な諸側面が、本実施形態にも適用可能である。
【0063】
具体的には、代替的なレンズ65Aは、光学部97と、1つ以上の定常タブ95と、1つ以上の可変タブ96Aとを含んでいる。選択的に、定常タブ95は、可変タブ(例えば、タブ96Aのようなもの)で置き換えてもよい。定常タブ95は、プローブまたは同様の装置を用いて係合させ、タブ95を操作できるように、貫通孔98を含んでいてもよい。定常タブ95はまた、孔98の反時計回り(またはタブ95の反時計回りの別の部位)に位置決めされ、レンズ65Aの前方側が移植された場合に右側にあるという表示を提供するノッチ98Aを含んでいてもよい。換言すれば、レンズ65Aがベース55に配置されている場合において、ノッチ98Aが孔98の反時計回りに配置されているときは、レンズ65Aの前方側は正しく前方に向いて配置されている。ノッチ98Aが孔98の時計回りに配置されているときは、レンズ65Aの前方側は誤って後方に向いて配置されている。レンズ65Aの正しい前後の配置の他の表示は、レンズ65Aの周囲に2つのマーカを設け、それらの正しい相対位置(時計回りまたは反時計回り)を指定することによって、採用可能である。
【0064】
可変タブ96Aは、ベース55の穴57内に装入するための圧縮姿勢と、ベース55の溝92内への展開のための非圧縮拡張姿勢(図示されている)との間で可変であり、このようにしてベース55とレンズ65Aとのインターロック接続を構成している。可変タブ96Aは、2つの部材96A1,96A2を含み、各々が、光学部97の周縁リム97Aに接続される一端部と、自由端部とを有し、もって2つの片持ち状スプリングを形成する。光学部97の周囲に2つの端部が取り付けられ、中央が単一の板ばねのように接合されている可変タブ96(
図2D~
図2Fに図示)と比べ、可変タブ96Aは、各一端が光学部97の周囲の周縁リム97Aに取り付けられ、各他端が自由端である2つの片持ち状スプリングのような部材96A1,96A2を含んでいる。2つの部材96A1,96A2が周縁リム97Aに取り付けられている部位において、これら2つの部材96A1,96A2にヒンジ状の可撓性を付加するために、2つの部材96A1,96A2の間の周縁リム97Aには、ノッチ96A3が形成されてもよい。ノッチ96A3はまた、タブ96Aをベース55の溝92内に操作するプローブまたは類似の装置のアクセスを提供する。
【0065】
図7Aおよび
図7Bに示すように、可変タブ96Aの2つの片持ち状の部材96A1,96A2は、一端が光学部97の周縁リム97Aに取り付けられ、互いに半径方向外向きに離反して円弧状に延びている。この構成では、
図2D~
図2Fに示す可変タブ96と比べ、片持ち状の部材96A1,96A2は、2つの離反した部分で、ベース55の溝92を画定する側壁94と係合する。レンズ65Aは、直径方向において反対側の側壁94の一部分と接触する定常タブ95とともに、3つの離間した位置でベース55に接続されることとなり、相対的により強化された平面上の安定性が提供される。
【0066】
選択的に、2つの片持ち状の部材96A1,96A2の一方または両方は、
図7Cに示すように孔96A4を含んでいてもよい。孔96A4は、ベース55に配置された場合にレンズ65Aを回転させるために使用可能なシンスキー氏フックといった眼内ツールを受け入れ可能な寸法および構成にすることができる。これにより、ベース55に対するレンズ65Aの相対回転調整が容易になり、トーリック適用の調整に役立つ。そのような機構は、本明細書に記載の定常タブまたは可変タブのいずれかに組み込み可能である。
【0067】
図8A~
図8Bはモジュール式IOL90に使用するためのさらに別の代替的なレンズ65Bを示す。
図8Aは、レンズ65Bの斜視図であり、
図8Bは、レンズ65Bの平面(正面)図である。代替的なレンズ65Bは、2つの片持ち状の部材96B1および96B2を含む代替的な可変タブ96Bを除いて、レンズ65Aと同様のデザインおよび機能を有する。既出の実施形態の全ての同様な諸側面が、本実施形態にも適用可能である。本実施形態において、可変タブ96Bの2つの片持ち状の部材96B1および96B2は、光学部97の周縁リム97Aの一方の端部に取り付けられ、円弧状に半径方向外側から、(互いに離反するのではなく)互いに対向する方向に延びている。この構成は、部材96B1および96B2が分離され、板ばねではなく、一対の片持ち状スプリングを形成することを除いて、
図2D~
図2Fに示す可変タブ96と同様である。
【0068】
選択的に、薬品がベース55に含有されていてもよく、またはベース55に担持されていてもよい。ベース55を薬品のための担体として使用することは、レンズ65とは対照的に多くの利点を有する。例えば、それはレンズ65の光学性能と単一または複数の薬品との干渉を回避する。また、レンズ65の製造工程の一部で行われるように、ベース55を反転する必要がないので、ベース55が潜在的な損傷にさらされることはない。薬品をベース55に組み込むことは、ベース55の材料を有し(例えばスポンジのように)薬品を担持するものとして機能する1つ以上の別体の薬品担体をベース55に接続することによって、1つ以上の薬品溶出材料をベース55内に組み入れることによって、または薬品を担持する1つ以上の詰め替え可能なリザーバをベース55に組み込むことによって、可能である。ベース55の1つ以上の部分が1つ以上の薬品を担持してもよく、これらの部分は、例えば、異なる薬品間の相互作用を避けるために、互いに分離していてもよい。薬品を担持するベース55の1つの部分または複数の部分は、貯蔵された1種の薬品または複数種の薬品を、一度にまたは経時的に連続して放出させるために、光または熱エネルギー(例えば、レーザー、UV光等)によって選択的に活性化することができる。
【0069】
そのような薬品の臨床適応症の例には、湿性または乾性の黄斑変性症、開放性または閉塞性の緑内障、ブドウ膜炎、後嚢混濁、白内障手術後の術後管理等が含まれる。湿性黄斑変性に使用可能な薬品の例には、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ステロイド、およびアプタマが含まれる。乾性黄斑変性に使用可能な薬剤の例には、補体因子、抗酸化剤、および抗炎症剤が含まれる。開放隅角緑内障に使用可能な薬品の例には、ブリモニジン、ラタノプロスト、チモロール、ピロカルピン、ブリンゾラミド、並びにβ受容体作動薬、α作動薬、ROCK阻害剤、アデノシン受容体作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、アドレナリン作動性およびコリン作動性の受容体活性化剤、並びにプロスタグランジン類縁体の一般的なカテゴリに含まれる他の薬品が含まれる。ブドウ膜炎に使用可能な薬品の例には、メメトトレキサート、抗体、デキサメタゾン、トリアムシノロン、および他のステロイド剤が含まれる。後嚢混濁のために使用可能な薬品の例には、抗増殖性、抗有糸分裂性、抗炎症性、および水晶体上皮細胞の拡張を阻害する他の薬品が含まれる。白内障手術後の術後管理のために使用可能な薬剤の例には、フルオロキノロン等の抗生物質、ケトロラク等の非ステロイド剤、およびプレドニゾロン等のステロイドが含まれる。様々な眼の疾患および状態を治療するために使用可能な他の薬物には、抗線維化剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗新生物剤、移行阻害剤(migration inhibitors)、抗増殖剤、ラパマイシン、トリアムシノロンアセトニド、エベロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、アクチノマイシン、アザチオプリン、デキサメタゾン、サイクロスポリン、ベバシズマブ、抗VEGF剤(anti-VEGF agents)、IL-1阻害薬(anti-IL-1 agents)、カナキヌマブ、IL-2阻害薬(anti-IL-2 agents)、ウィルスベクタ、βブロッカ、α作動薬、ムスカリン性剤、ステロイド、抗生剤、非ステロイド性抗炎症剤、プロスタグランジン類縁体、ROCK阻害剤、一酸化窒素、エンドセリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、CNPA、副腎皮質ホルモン、および抗体ベースの免疫抑制剤が含まれる。これらの薬品は、患者の固有の臨床症状に応じて、単独でまたは組み合わせて使用可能である。
【0070】
また、ベース55の単一または複数の薬品を担持する部分は、特定の方向に向いている一方、他の方向は、水晶体嚢の特定の部分の薬品の濃度を増加させるために、マスクされているかまたはブロックされている。例えば、後眼構造に(例えば、黄斑変性を緩和するための)薬品の注入を集中する場合があり、前眼構造に(例えば、隅角に隣接して緑内障の薬品を注入するため、または白内障手術後のブドウ膜炎もしくは術後管理用の薬品を注入するための)薬品の注入を集中する場合がある。
【0071】
一例として、
図9は、1つ以上の薬品担体50を組み込んだベース55の上部(前方)の図を示す。図示のように、薬品担体50は、ベース55の本体の前方の周方向に間隔を隔てている。この薬品担体50は、詰め替え可能なリザーバ(例えば、シリコーン容器)、溶出性多孔質材料(例えば、生体適合性スポンジ)、生分解性または生分解性材料(例えば、PLGA)等を備えていてもよい。前記リザーバは、レーザ、UV光、RF信号、磁気操作、その他、拡散障壁を遠隔から除去するための方法によって、薬品を水性環境にさらす対象とされる。前記担体50は、例えば、ベース55の表面上に配置されてもよいし、埋め込まれてもよい。眼の特定の領域に薬剤の注入を集中させるために、担体50はベース55の材料が他の側面を覆いながら一方の側(例えば、図示の前側)に露出されてもよい。
【0072】
同様に、1つ以上のマイクロエレクトロニクスセンサをベース55に組み込むか、またはベース55に搭載してもよい。ベース55をセンサのキャリアとして使用することは、レンズ55とは対照的に多くの利点がある。例えば、レンズ65の光学的性能によってセンサがこうむる可能性のあるあらゆる干渉が回避される。また、レンズ65の製造工程の一部で行われるように、ベース55を反転する必要がないので、ベース55に担持されるセンサが潜在的な損傷にさらされることはない。
【0073】
ベース55の平面(正面)図である
図10に示すように、センサ70は、
図9を参照して説明した薬品担体50と同様に、ベース55に取り付けられていてもよく、或いは埋め込まれていてもよい。センサ70は、アンテナ74に接続された集積制御回路72に接続されてもよい。前記制御回路72は、アンテナ74を介してセンサデータを外部装置に無線送信するためのトランスミッタまたはトランシーバ回路を含んでいてもよい。前記制御回路72は、外部電源への誘導リンクを介して電力を受け取る電力回路を含んでいてもよい。ベース55に組み込まれたり、或いはベース55に保持されたりするのに適切なセンサの例としては、グルコースセンサ、電解質センサ、タンパク質センサ、温度センサ、導電性センサ、電界センサ、圧力センサ(例えば、眼圧を測定するためのもの)、パルスオキシメータセンサ、または人工視力をサポートするための光センサといった生物学的センサがある。コンタクトレンズに使用するためのマイクロエレクトロニクスセンサの例は、米国特許出願公開第2014/0085599号明細書、第2014/0084489号明細書、第2014/0085602号明細書、および第2014/0087452号明細書、第2014/0085600号明細書、第2014/0088381号明細書、第2014/0192311号明細書、第2014/0194710号明細書、第2014/0194713号明細書、2014/0194773号明細書、2014/0098226号明細書、および20140081178号明細書、並びに国際公開第2014/204575号に記載されている。コンタクトレンズに用いられるこのような超小型電子センサは、眼のインプラント用途のためにベース55内に気密性を保持した状態で封止されてもよい。センサ70は、直接的な生物学的インターフェース用途(グルコースセンサ、電解質センサ、タンパク質センサ等)のための透過性カバーを含んでいてもよい。代替的に、センサ70は、間接的な生物学的インターフェース用途(圧力センサ、温度センサ、伝導率センサ、電界センサ等)のための非透過性カバーを含んでいてもよい。
【0074】
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
眼内挿入用に構成された装置であって、
該装置は環状のベースを備え、
前記環状のベースは、
前開口を囲み、後面を有する前方部分と、
後開口を囲む後方部分と、
前記前方部分と前記後方部分との間に延び、径方向内方面を有する壁と、
前記前開口から前記後開口に前記環状のベースを貫通する通路と、
前記通路を囲み、前記前方部分の前記後面と、前記壁の前記径方向内方面と、前記後方部分の前面とによって画定される凹部と
を備え、
該装置は、レンズを備え、該レンズは、
光学部分と、
前記光学部分から突出する変形不能な第1のタブと、
前記第1のタブに対し直径方向に対向するように前記光学部分から突出する第2のタブであって、一端が光学本体に取り付けられるとともに他端が自由端である一対の片持ち状スプリングからなる第2のタブと
を含み、
前記第2のタブは、当該レンズと前記環状のベースとをインターロック接続するために(i)径方向に圧縮された位置と(ii)圧縮されていない拡張した位置との間で変形可能である、装置。
[項目2]
前記環状のベースの前記後方部分は、円錐形フラスタムを形成している、項目1に記載の装置。
[項目3]
前記壁の前記径方向内方面は、円筒形を形成している、項目1に記載の装置。
[項目4]
前記環状のベースの前記後面は、前記壁の前記径方向内方面の前方端から前記前開口まで真直ぐに延びている、項目1に記載の装置。
[項目5]
前記前方部分の前記後面と前記前方部分の径方向内方面との間が鈍角に形成されている、項目1に記載の装置。
[項目6]
前記前開口は、前記後開口よりも広い、項目1に記載の装置。
[項目7]
前記前方部分の前面と前記後方部分の後面との間で測定される軸方向の厚みは、少なくとも1mmである、項目1に記載の装置。
[項目8]
前記前方部分の前面と前記後方部分の後面との間で測定される軸方向の厚みは、1mmから2.5mmまでの間である、項目1に記載の装置。
[項目9]
前記環状のベースの直径に対する前記環状のベースの軸方向の厚さの比は、0.12から0.29までの間である、項目1に記載の装置。
[項目10]
眼内挿入用に構成された装置であって、該装置は環状のベースを備え、
前記環状のベースは、
中心長手軸と、
前記中心長手軸に対して直角に延びる赤道平面と、
前開口を囲み、前面と後面とを有し、且つ、前記前面と前記後面とが前記赤道平面に対して横向きに延びる前方部分と、
後開口を囲む後方部分と、
前記前方部分と前記後方部分との間に延び、径方向内方面を有する壁と、
前記前開口から前記後開口に前記ベースを貫通する通路と、
前記通路を囲み、且つ、前記前方部分の後面と、前記壁の前記径方向内方面と、前記後方部分とによって縁取られる凹部と
を備え、
該装置は、レンズを備え、該レンズは、
光学部分と、
前記光学部分から突出する第1のタブと、
前記第1のタブに対し直径方向に対向するように前記光学部分から突出する第2のタブであって、一端が前記光学部分に取り付けられるとともに他端が自由端である一対の片持ち状スプリングからなる第2のタブと
を含み、前記第2のタブは、当該レンズと前記環状のベースとをインターロック接続するために(i)径方向に圧縮された位置と(ii)圧縮されていない拡張した位置との間で変形可能である、装置。
[項目11]
前記前方部分の前記後面と前記壁の前記径方向内方面との間が鈍角に形成されている、項目10に記載の装置。
[項目12]
前記前方部分は当該前方部分の前記前面から前記後面まで延びる径方向内方面を含む、項目10に記載の装置。
[項目13]
前記環状のベースの軸方向厚みは、少なくとも1mmである、項目10に記載の装置。
[項目14]
前記環状のベースの軸方向厚みは、1mmから2.5mmの間である、項目10に記載の装置。
[項目15]
前記環状のベースの直径は、8.5mmである、項目10に記載の装置。
[項目16]
前記環状のベースの直径に対する前記環状のベースの軸方向厚さの比は0.12から0.29の間である、項目10に記載の装置。
[項目17]
前記第1のタブは孔を含む、項目1に記載の装置。
本発明の上述した検討は、例証および説明のために示されている。上述したものは、本発明を本明細書において発明した形態に限定するものではない。本発明の説明は1つ以上の実施形態および特定の別例および改変例の説明を含んでいるが、例えば本発明を理解した後に当業者の技能および知識の範囲内にあり得るような、他の別例および改変例は本発明の範囲内にある。本発明は権利請求されるものに対して、代替の、交換可能な、均等な構造、機能、範囲、または工程を含む別の実施形態を、そのような代替の、交換可能な、均等な構造、機能、範囲、または工程が本明細書に発明されているかに否かに拘わらず、許される範囲内で包含する権利を得ることを意図しており、特許性のある主題を公に供する意図はない。