(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180497
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】反応用プレート
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01N35/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024177611
(22)【出願日】2024-10-10
(62)【分割の表示】P 2023078694の分割
【原出願日】2019-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018017628
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018186756
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】植村 健二
(72)【発明者】
【氏名】谷本 功雄
(72)【発明者】
【氏名】江上 舞
(72)【発明者】
【氏名】又木 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】小西 有美
(72)【発明者】
【氏名】清水 元工
(72)【発明者】
【氏名】高橋 繁紀
(72)【発明者】
【氏名】坂口 剛士
(57)【要約】
【課題】アレルギー検査において、検査の高感度化及び検査時間の短縮化を図るとともに、検体となる血液等の必要量を低減し、検査の工程数を削減して容易に検査を行うことが可能であり、検査者の感染リスクを低減したアレルギー検査に用いられる反応用プレートを提供する。
【解決手段】生化学反応用基体に組み込まれる反応用プレートであって、前記反応用プレートは、反応エリアを囲むように形成された流出防止壁が流路部と連続して形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生化学反応用基体に組み込まれる反応用プレートであって、
前記反応用プレートは、反応エリアを囲むように形成された流出防止壁が流路部と連続して形成されていることを特徴とする反応用プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的測定法等の生化学反応処理に基づく生理活性を有する試料物質の量を測定するための生化学反応用基体及び血液などの検体と試薬との反応を分析する分析装置に係り、特に、分析装置の小型化、検査時間の短縮、検体量の少量化及び検査コストの低減を図ることができる分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体内物質の存在や量を検査する生体関連物質の検査は、健康状態を知り、治療方法を決定する上で重要である。また、生体関連物質の検査は、生活環境が多種多様化している現代においては、多種類の検査を行う必要性があり、迅速化や高感度化が求められている。例えば、アレルギー疾患の治療は、まず自己が罹患しているアレルギー疾患を把握することが重要である。近年はアレルギーの原因も多種に渡ることもあり、適正な薬物を使用するなど適正な治療を受けるためにはその原因を特定する必要があるからである。
【0003】
このような、アレルギーの検査方法としては、種々の方法が知られており、例えば、特許文献1に記載されているように、被験者から採取した血液サンプル中の特定アレルゲンに対するIgE抗体を固相サンドイッチ免疫学的測定法によって定量する方法が一般的である。この方法では、例えば、ガラスフィルターなどの固相担体上にリガンド捕捉抗体を吸着させ、リガンド捕捉抗体吸着部位以外のタンパク質吸着部位をカゼインなどのブロッキング剤で封止したものを準備し、一方、リガンドにダニや花粉などの特定アレルゲンを結合したものを準備し、これを血液サンプルと混合して、リガンドに結合された特定アレルゲンと血液サンプル中の前記特定アレルゲンに対するIgE抗体との複合体を形成させる。そして、この複合体を含む混合液を、上述の固相担体上にリガンド捕捉抗体を吸着させたものに添加し、複合体中のリガンドの部分をリガンド捕捉抗体に結合させ、次に、酵素などで標識された抗IgE抗体を添加し、複合体中のIgE抗体の部分を標識抗IgE抗体に結合させる。次に、複合体に結合しなかった過剰な標識抗IgE抗体を除去し、標識の種類に応じた呈色反応を行って、IgE抗体に結合された標識抗IgE抗体を検出する。得られた検出結果は、予め標準IgE抗体を使用して作成しておいた検量線と比較され、血液サンプル中の特定アレルゲンに対するIgE抗体を定量する。
【0004】
上記検査を行うため、一の特定アレルゲンを、一の生体反応用基体の多孔性フィルタに結合させた生体反応用基体を用いて、検査する方法及びその装置が知られている。また、当該生体反応用基体には、多孔性フィルタ(固相担体)の下部に適度な物理的強度を有するグラスファイバーを用い、その下部に固相担体を通過した溶液を吸収するためのセルロースから成る吸収層を組み合わせた免疫学的測定用の反応容器を用いることができる(特許文献2参照)。
【0005】
また同様に、特許文献3に記載されているように、多種のアレルゲンの抗原を互いに独立した即ち隔置したスポットとして搭載したバイオチップを用いて,検体の採取後に,検体と抗原との反応検出過程を自動化し,且つ迅速に測定結果を得ることができるバイオチップの分析方法が開示されている。
【0006】
また同様に、特許文献4に記載されているように、多種のアレルゲンの抗原を互いに独立した即ち隔置したスポットとして搭載したバイオチップを用いつつ、吸引ノズルを使用せずに洗浄液等を除去する方法が開示されている。
【0007】
さらに従来、血液などの検体と試薬との反応を分析する分析装置としては、種々の形態
が知られており、例えば特許文献5に示すような分析装置が知られている。特許文献5に記載された分析装置は、検体が収容される検体セル、試薬が収容される試薬セル及び検体、試薬が反応させられる反応セルが少なくとも含まれると共に各セルが直線的に配列されている態様の一若しくは複数の検査カートリッジと、予め決められたセットステージ及びこれに隣接する検査ステージのための空間部を内部に有する装置筐体と、前記セットステージに設けられ、前記一若しくは複数の検査カートリッジが保持されるカートリッジ受部を有するカートリッジ保持手段と、前記検査ステージに設けられ、前記カートリッジ保持手段に保持された検査カートリッジを検査ステージに直線的に搬入し、当該搬入された検査ステージ内の検査カートリッジの各セルの配列方向に沿う長手方向に沿って前記検査カートリッジを搬送する一方、検査後の検査カートリッジを検査ステージからセットステージに直線的に搬出して前記カートリッジ保持手段のカートリッジ受部に戻すカートリッジ搬送手段と、前記検査ステージ内の検査カートリッジの搬送経路の一部に予め設定された分注位置に対応して設けられ、前記カートリッジ搬送手段にて搬入された検査ステージ内の検査カートリッジの分注対象セルを前記分注位置に搬送して配置した状態で、前記検査カートリッジに対し当該検査カートリッジの検体、試薬を反応セルに分注する検体試薬分注手段と、前記検査ステージ内の検査カートリッジの搬送経路の一部に予め設定された測定位置に対応して設けられ、前記カートリッジ搬送手段にて搬送された検査ステージ内の検査カートリッジの反応セルを前記測定位置に搬送して配置した状態で、前記検体試薬分注手段にて分注された反応セル内の検体と試薬との反応を測定する測定手段と、加熱源にて加熱され、前記カートリッジ搬送手段にて搬送された検査ステージ内の検査カートリッジの少なくとも反応セル内の液温を予め設定された恒温環境温度に保つ恒温槽と、前記検査ステージの内部環境温度が検出可能な温度検出器を有し、当該温度検出器にて検出された内部環境温度に基づいて、当該内部環境温度が予め決められた閾値よりも低いときに当該閾値以上の温度の場合に比べて前記恒温槽の加熱源の設定温度を高くするように、前記加熱源の設定温度を制御する恒温槽制御手段と、を備えている。
【0008】
このような分析装置によれば、検体や試薬を検査カートリッジの反応セルに分注した後、該検査カートリッジの反応セル内の液温を予め設定された恒温環境温度に保つ恒温槽を備えているので、検査カートリッジ及び環境温度の変化に伴う測定精度の低下を有効に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-133285号公報
【特許文献2】特開2001-235471号公報
【特許文献3】特開2011-13000号公報
【特許文献4】国際公開第2016/163494号
【特許文献5】特開2016-24054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2に記載されているように、反応容器を用いた検査方法、装置においては、1検体の測定に12分、90サンプルの測定に約39分と、比較的短時間に計測することが可能であるが、特定のアレルゲン毎に検体(血液等)を用意しなければならず、検体量が多量に必要となる。そのため、乳幼児においては計測するために必要な検体を確保することが難しい場合があった。
【0011】
また、特許文献3に記載された技術では、洗浄ノズル、抗体ノズル、試薬ノズルといった各ノズルから供給された各液を吸引するための吸引ノズルが必要であり、各液の吸引が完了するまでに時間を要すると共に、吸引ノズルに付着した付着物がバイオチップに付着
しコンタミネーションを引き起こす恐れがあった。
【0012】
また、特許文献4に記載された技術では、第2の基台部に固定化されている多種のアレルゲンの抗原に対して、特異的に結合する特定アレルゲンに対するIgE抗体を、酵素などで標識された抗IgE抗体(標識抗IgE抗体)を結合させた後、呈色反応を行って、標識抗IgE抗体を検出するが、第2基台部の上部に第1基台部及びカバー部材が積層させているため、呈色の度合いが弱い反応を検出するためには有効な手段とはいえず、高感度に検出できないおそれがある。
【0013】
このように、従来のアレルギー検査においては、検査の高感度化及び検査の短時間化が望まれており、検体となる血液等が多量に必要となるために、検体量の少量化が望まれていた。また、アレルギー検査においては、反応操作の工程数が少なく、検査を行う者の手間が省けること、及び検体である患者の血液等を扱うことから、患者が罹患している疾患に感染するリスクを低減する必要があるという問題があった。
【0014】
また、特許文献5に記載された分析装置は、検体や試薬を反応セルへ分注した後、検体や試薬を所定量吸引保持し、測定対象である反応セル内に所定の検体、試薬を吐出したのち、該反応セルを有する検査カートリッジを測定位置に搬送して検査を行うが、検体や試薬を吸引する方式によると、装置が大型化し、装置製造のコストも上昇してしまうという問題があった。
【0015】
また、検査時間短縮のために、反応セルへ検体や試薬を分注した後、反応セルを撹拌したのち、余分な検体及び試薬を排液する方式が知られているが、このような撹拌や排液の機構を備えると分析装置の大型化及び製造コストが上昇してしまうなどといった問題が生じる。
【0016】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、アレルギー検査において、検査の高感度化及び検査時間の短縮化を図るとともに、検体となる血液等の必要量を低減し、検査の工程数を削減して容易に検査を行うことが可能であり、検査者の感染リスクを低減したアレルギー検査に用いられる生化学反応用基体を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、反応セルの撹拌及び排液の機構を加えて検査時間の短縮を図った場合であっても分析装置の小型化を図ることができ、製造コストを抑えることができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する本発明に係る反応用プレートは、生化学反応用基体に組み込まれる反応用プレートであって、前記反応用プレートは、反応エリアを囲むように形成された流出防止壁が流路部と連続して形成されていることを特徴とする。
また、一実施形態に係る発明は、検体と試薬との反応を分析する分析装置であって、試薬カートリッジ並びに生化学反応用基体を移動テーブルに架設する架設エリアと、分注エリアと、撹拌エリアと、排液エリアと、検出エリアとを備え、前記架設エリア、前記分注エリア、前記撹拌エリア、前記排液エリア及び前記検出エリアが同一直線上に配列され、前記排液エリアは前記同一直線のいずれかの端部に配置され、前記移動テーブルは、前記架設エリア、前記分注エリア、前記撹拌エリア、前記排液エリア及び前記検出エリアを直線上に移動可能に取り付けられていることを特徴とする。
また、一実施形態に係る発明は、検体と試薬との反応を分析する分析装置であって、試薬カートリッジ並びに生化学反応用基体を架設する架設エリアと、分注エリアと、撹拌エリアと、排液エリアと、検出エリアとを備え、前記架設エリア、前記分注エリア、前記撹拌エリア、前記排液エリア及び前記検出エリアが同一直線上に配列されることを特徴とする。
【0019】
また、一実施形態に係る発明は、検体と試薬との反応を分析する分析装置であって、試薬カートリッジ並びに生化学反応用基体を移動テーブルに架設する架設エリアと、分注エリアと、撹拌エリアと、排液エリアと、検出エリアとを備え、前記架設エリア、前記分注エリア、前記撹拌エリア、前記排液エリア及び前記検出エリアが同一直線上に配列され、前記排液エリアは、前記同一直線上に形成されたストッパを備え、該ストッパに当接することで前記生化学反応用基体を傾斜させる傾斜機構を備え、前記同一直線に沿って配置される案内手段と、前記案内手段によって案内される前記移動テーブルを備えると好適である。
また、一実施形態に係る発明は、検体と試薬との反応を分析する分析装置であって、前記検体と前記試薬が収容される試薬カートリッジ並びに前記検体と前記試薬を分注する生化学反応用基体を移動テーブルに架設する架設エリアと、前記生化学反応用基体に前記検体及び/又は前記試薬を分注する分注エリアと、分注された前記検体及び/又は前記試薬を撹拌混合する撹拌エリアと、前記撹拌混合された前記検体及び前記試薬を排液する排液エリアと、前記生化学反応用基体における前記検体と前記試薬との反応を検出する検出エリアとを備え、前記架設エリア、前記分注エリア、前記撹拌エリア、前記排液エリア及び前記検出エリアが同一直線上に配列され、前記排液エリアは前記同一直線のいずれかの端部に配置され、前記移動テーブルは、前記架設エリア、前記分注エリア、前記撹拌エリア、前記排液エリア及び前記検出エリアを直線上に移動可能に取り付けられていることを特徴とする。
また、一実施形態に係る発明は、検体と試薬との反応を分析する分析装置であって、前記検体と前記試薬が収容される試薬カートリッジ並びに前記検体と前記試薬を分注する生化学反応用基体を架設する架設エリアと、前記生化学反応用基体に前記検体及び/又は前記試薬を分注する分注エリアと、分注された前記検体及び/又は前記試薬を撹拌混合する撹拌エリアと、前記撹拌混合された前記検体及び前記試薬を排液する排液エリアと、前記生化学反応用基体における前記検体と前記試薬との反応を検出する検出エリアとを備え、前記架設エリア、前記分注エリア、前記撹拌エリア、前記排液エリア及び前記検出エリアが同一直線上に配列されることを特徴とする。
【0020】
また、一実施形態に係る発明において、前記移動テーブルは、前記試薬カートリッジが載置されると共に前記生化学反応用基体が載置される基体保持部を備えると好適である。
また、一実施形態に係る発明は、前記架設エリアと前記排液エリアはそれぞれ前記同一直線のいずれかの端部に配置されると好適である。
【0021】
また、一実施形態に係る発明において、前記生化学反応用基体は、反応用プレートを備え、前記反応用プレートは、検体中の被験物質に特異的に反応する特異結合物質が固定化される反応エリアを有し、前記傾斜機構は、前記基体保持部が傾斜することで前記生化学反応用基体の反応エリアから余分な前記検体及び前記試薬を排液すると好適である。
また、一実施形態に係る発明は、前記排液エリアは、前記生化学反応用基体を傾斜させる傾斜機構を備えると好適である。
【0022】
また、一実施形態に係る発明において、前記同一直線に沿って配置される案内手段と、前記案内手段によって案内される前記移動テーブルを備えると好適である。
【0023】
また、一実施形態に係る発明において、前記撹拌エリアでは、前記移動テーブルに架設された前記生化学反応用基体が前記同一直線に沿って往復移動して加振されると好適である。
【0024】
また、一実施形態に係る発明において、前記撹拌エリアでは、前記移動テーブルに架設された前記生化学反応用基体が前記案内手段に沿って前記撹拌エリア内を往復移動して、分注した前記検体及び前記試薬が撹拌されると好適である。
【0025】
また、一実施形態に係る発明において、前記分注エリアでは、前記同一直線と略垂直な方向に移動可能な分注ノズルを備えると好適である。
【0026】
また、一実施形態に係る発明において、前記生化学反応用基体は、反応用プレート、吸収体、前記反応用プレートを収納するための反応用プレート収納部及び前記吸収体を収納する吸収体収納部を備え、前記反応用プレートは、検体中の被験物質に特異的に反応する特異結合物質が固定化される反応エリアと、前記吸収体と前記反応エリアとを連絡する流路部を有すると好適である。
【0027】
また、一実施形態に係る発明において、前記同一直線に沿って配置される案内手段と、前記案内手段によって案内される前記移動テーブルを備え、前記移動テーブルは、前記試薬カートリッジが載置されると共に前記生化学反応用基体が載置される基体保持部を備えると好適である。
【0028】
また、一実施形態に係る発明において、前記傾斜機構は、前記基体保持部が傾斜することで前記生化学反応用基体の反応エリアから吸収体収納部へ余分な前記検体及び前記試薬を排液すると好適である。
【0029】
また、一実施形態に係る発明において、前記傾斜機構は、余分な前記検体及び前記試薬を、前記吸収体収納部に収納された前記吸収体に吸収させて排液すると好適である。
【0030】
また、一実施形態に係る発明において、前記検出エリアは、前記生化学反応用基体を遮光する遮光部と、前記生化学反応用基体の表面を検出する検出カメラとを備え、前記検出カメラは、前記同一直線と略垂直な方向に移動せしめる移動機構を備えると好適である。
【0031】
また、一実施形態に係る発明において、前記遮光部は、前記検出カメラと共に前記移動機構によって移動し、前記検出カメラから前記遮光部の端部の距離を調整可能な調整機構を備えると好適である。
【0032】
また、一実施形態に係る発明において、前記調整機構は、一端に前記検出カメラを取り付けた第1の筒と、前記第1の筒に組み付けられる第2の筒を備えると好適である。
【0033】
また、一実施形態に係る発明において、前記移動機構は、前記検体及び前記試薬の排液が終了した後、前記検出カメラを下降させて、前記遮光部を前記生化学反応用基体に密着させると好適である。
【発明の効果】
【0034】
また、本発明によれば、架設エリア、分注エリア、撹拌エリア、排液エリア及び検出エリアが同一直線上に配列されているので、検体と試薬を分注したチップデバイスの撹拌や排液を行って検査時間の短縮を図った場合であっても分析装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係る生化学反応用基体の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る生化学反応用基体の分解図。
【
図3】本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられる反応用プレートの斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられる収納容器の上面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられるカバーの底面図。
【
図6】反応用プレートの反応エリアにおける抗原(アレルゲン)の配置状態を説明するための上面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられるカバーの変形例を示す底面図。
【
図8】本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられる反応用プレートの変形例を示す上面図。
【
図11】反応用プレートの反応エリアにおける抗原(アレルゲン)の他の配列状態を説明するための上面図。
【
図12】本発明の実施形態に係る分析装置の斜視図。
【
図13】本発明の実施形態に係る分析装置の内部構造を説明するための図。
【
図14】本発明の実施形態に係る分析装置の内部構造を説明するための斜視図。
【
図15】本発明の実施形態に係る分析装置の架設エリアを説明するための斜視図。
【
図16】本発明の実施形態に係る分析装置のバーコード読み取りエリアを説明するための斜視図。
【
図17】本発明の実施形態に係る分析装置の分注エリアを説明するための斜視図。
【
図18】本発明の実施形態に係る分析装置の撹拌エリアを説明するための斜視図。
【
図19】本発明の実施形態に係る分析装置の排液エリアを説明するための斜視図。
【
図20】本発明の実施形態に係る分析装置の傾斜機構を説明するための斜視図。
【
図21】本発明の実施形態に係る分析装置の傾斜機構を説明するための斜視図であって、ストッパに傾斜用カムが当接した状態を示す図。
【
図22】本発明の実施形態に係る分析装置の傾斜機構を説明するための斜視図であって、基体保持部を傾斜させた状態を示す図。
【
図23】本発明の実施形態に係る分析装置の検出エリアを説明するための斜視図。
【
図24】本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、反応エリアにおける抗原の配置を説明するための図。
【
図25】本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、60秒間露光した状態を示す図。
【
図26】本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、20秒間露光した状態を示す図。
【
図27】本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、5秒間露光した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る生化学反応用基体及び分析装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0037】
図1は、本発明の実施形態に係る生化学反応用基体の斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る生化学反応用基体の分解図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられる反応用プレートの斜視図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられる収納容器の上面図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられるカバーの底面図であり、
図6は、反応用プレートの反応エリアにおける抗原(アレルゲン)の配置状態を説明するための上面図であり、
図7は、本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられるカバーの変形例を示す底面図であり、
図8は、本発明の実施形態に係る生化学反応用基体に用いられる反応用プレートの変形例を示す上面図であり、
図9は、
図8におけるA-A断面図であり、
図10は、
図8におけるB-B断面図であり、
図11は、反応用プレートの反応エリアにおける抗原(
アレルゲン)の他の配列状態を説明するための上面図であり、
図12は、本発明の実施形態に係る分析装置の斜視図であり、
図13は、本発明の実施形態に係る分析装置の内部構造を説明するための図であり、
図14は、本発明の実施形態に係る分析装置の内部構造を説明するための斜視図であり、
図15は、本発明の実施形態に係る分析装置の架設エリアを説明するための斜視図であり、
図16は、本発明の実施形態に係る分析装置のバーコード読み取りエリアを説明するための斜視図であり、
図17は、発明の実施形態に係る分析装置の分注エリアを説明するための斜視図であり、
図18は、発明の実施形態に係る分析装置の撹拌エリアを説明するための斜視図であり、
図19は、本発明の実施形態に係る分析装置の排液エリアを説明するための斜視図であり、
図20は、本発明の実施形態に係る分析装置の傾斜機構を説明するための斜視図であり、
図21は、本発明の実施形態に係る分析装置の傾斜機構を説明するための斜視図であって、ストッパに傾斜用カムが当接した状態を示す図であり、
図22は、発明の実施形態に係る分析装置の傾斜機構を説明するための斜視図であって、基体保持部を傾斜させた状態を示す図であり、
図23は、発明の実施形態に係る分析装置の検出エリアを説明するための斜視図であり、
図24は、本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、反応エリアにおける抗原の配置を説明するための図であり、
図25は、本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、60秒間露光した状態を示す図であり、
図26は、本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、20秒間露光した状態を示す図。であり、
図27は、本発明の実施形態に係る分析装置の検出結果を説明する図であって、5秒間露光した状態を示す図である。
【0038】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る生化学反応用基体1は、内部に反応用プレート10を収納可能であり、カバー30と収納容器40とを有している。カバー30には、略円形の注入孔31が形成されており、反応用プレート10を収納した状態で、注入孔31は、反応用プレート10の反応エリア11に対応した位置に配置されるように構成されている。また、収納容器40の底部には、凹状の被保温部43が形成されており、後述する検査装置のヒータが当接して反応エリア11を加温することができるよう構成されている。
【0039】
図2に示すように、収納容器40には、反応用プレート10を収納する反応用プレート収納部41及びスポンジなどの液体を十分に吸収可能な多孔質材などから構成された吸収体20を収納する吸収体収納部42が形成されている。なお、収納容器40に反応用プレート10及び吸収体20が収納された状態では、反応用プレート10に形成された流路部12の先端は吸収体20に当接するように配置されている。
【0040】
図3に示すように、反応用プレート10は、収納容器40に形成された反応用プレート収納部41に支障なく嵌め合わせることが可能な板状のベース部14と、該ベース部14から立設する流出防止壁13と、流路部12とを備えている。流出防止壁13は、概略円環状の壁であり、流出防止壁13の内部が反応エリア11として画成されている。
【0041】
また、反応エリア11から吸収体20と対向する位置には、流出防止壁13の外周縁から延びると共に一対の側壁間の距離が徐々に狭まるように形成された流路部12が形成されている。該流路部12は、反応エリア11に分注した検体等を排液して吸収体20に吸収させるために形成されており、生化学反応用基体1を傾けることで、反応エリア11から吸収体20に向けて無駄なく検体等を排出することができるように、流路部12には反応エリア11から登り上がるように形成された斜面15を有している。なお、斜面15は、ベース部14から5°~70°程度傾斜して形成されるのが好ましく、当該傾斜のより好ましい角度は12°~50°であり、さらに好ましい角度は17°~35°であり、好適な角度は23°である。流路部の傾斜は、その角度が大きければ大きいほど漏れを防止することができるが、一方で排出し難い事態が生じ易くなる。そのため、好ましい角度を
採用することで、本発明の目的を達成することができる。流路部12の反応エリア11側の基端は、反応エリア11上の検体等を円滑に吸収体20側の先端に導くためにできるだけ広い開口となるように構成されており、流路部12の先端側は、吸収体20に対して斜面15が鋭角に当接するように形成されている。
【0042】
このように、本実施形態に係る生化学反応用基体1に用いられる反応用プレート10は、反応エリア11を囲むように流出防止壁13が形成され、流路部12に斜面15が設けられているので、アレルギー検査において、生化学反応用基体1を撹拌した際にも反応エリア11から検体等が流出することを防止すると共に、撹拌後に検体等を排液する場合も流路部12から容易に検体等を排出することが可能となる。また反応エリア全域にブロッキング剤をあらかじめ塗布することにより、非特異的な吸着を抑制することができる。さらに、流出防止壁13の内部を反応エリアとして画成することにより、ブロッキング剤塗布の副次的な効果として、検体等の排出をより容易に行うこともできる。
【0043】
また、ブロッキング剤としては、ポリエチレングリコール等の動植物由来でない合成ポリマーを、一般的な技術で用いることができ、反応用プレート11の素材、抗原等の対象物質、血液等の検体及び洗浄液等の試薬の性質によって適宜選択して使用することができる。
【0044】
図4に示すように、収納容器40は、反応用プレート収納部41及び吸収体収納部42が形成されてもよい。また、収納容器40は、上方に開口端を有する有底箱状の部材であり、吸収体収納部42の内壁には、リブ45が形成された場合、吸収体20をより確実に保持することが可能となる。また、反応用プレート収納部41は、反応用プレート10を載置した際に反応エリア11と対応した位置に開口部46が形成されていると好適である。また、収納容器40は、該開口部46によって生化学反応用基体1の外部から直接反応エリア11を加温することが可能である。
【0045】
さらに、反応用プレート収納部41と吸収体収納部42は収納部溝44によって互いに連絡しており、万が一検体等が撹拌などによって流出防止壁13を越えて漏れ出た場合でも検体等を反応用プレート収納部41から吸収体収納部42まで導くことができるように構成されている。
【0046】
図5に示すように、カバー30は、上述した収納容器40の開口端を閉塞して生化学反応用基体1の外郭を構成する部材であり、天面36の外周縁から垂下して延びる側壁部36aを有している。また、天面36には、反応用プレート10の流出防止壁13と対応する位置に内壁部32が垂下して形成されており、反応用プレート10を生化学反応用基体1に収納した状態では、該内壁部32は流出防止壁13と当接している。
【0047】
また、収納容器40の反応用プレート収納部41と吸収体収納部42の連続部分に対応する位置には、天面36から垂下して延びる画成壁37が形成されている。この画成壁37によって反応用プレート10の反応エリア11と吸収体20とを区分けしている。なお、内壁部32と画成壁37とは、欠損部33を介して互いに不連続に形成されている。この欠損部33は、欠損部33の部分まで内壁部32を延設すると、流路部12の外周と内壁部32の間に微小な隙間が生じ、該隙間が存在することで毛細管現象によって流出防止壁13の反応エリアから見て外側に漏れ出るおそれがある又は吸収体20に吸収された検体等が反応エリア11側に逆流するおそれがあるので、これを防止するために設けられている。
【0048】
さらに、内壁部32は、カバー30の長手方向の端部に調整用欠損部34が形成されていても良い。内壁部32の一部を側壁部36aの内壁とすることで、省スペース化、材料
費等のコスト削減が可能となる。
【0049】
また、カバー30の外周の側壁部には、凹凸状の滑り防止手段35が形成されており、該滑り防止手段35によって、検査者が生化学反応用基体1を確実に把持することができるように構成されている。また、吸収体収納部42に対応する側壁部36aの内壁には、吸収体収納部42と同様にリブ38が形成されていてもよい。
【0050】
なお、
図6に示すように、反応用プレート10の反応エリア11には、複数セット(例えば3スポット/1セット)の抗原50が所定の数のセット(例えば、156スポット/52セット)で配列されている。このように配列することで、反応エリア11に載せる抗原50の量を増やすことができ、一度の検査で複数のアレルギー反応を検出することが可能となる。1セット毎に抗原の種類を同じにし、セット間に距離を置く事で測定の際の影響を無くすことで実現できる。また、当該セット毎の距離は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.5mm~2.0mm、さらに好ましくは0.8mm~1.6mm、好適は1.2mm程度であると良い。これにより、例えば種類の異なる抗原(アレルゲン)に対する血液サンプル中のIgE抗体の検査を1度にすることができる。そのため、検査は、検体の少量化、短時間化及び工程数の削減が可能となる。
【0051】
なお、
図7に示すように、カバー30aの欠損部の形状のように、内壁部32と画成壁37が連続するように概略L字状に形成された画成壁部37aを形成し、内壁部32に内壁欠損部33a及び画成壁に画成壁欠損部33bを其々形成して画成壁部37a、内壁部32及び側壁部36aを其々不連続に形成しても構わない。このように内壁欠損部33a,画成壁欠損部33bを形成することで、毛細管現象によって流出防止壁13の反応エリアから見て外側に漏れ出るおそれがある又は吸収体20に吸収された検体等が反応エリア11側に逆流するおそれがあるので、これを防止している。
【0052】
また、
図8から10に示すように反応用プレート10aの流路部12aに形成された斜面15aをより検体等が排出されやすいように形成すると好適である。
図9に示すように、斜面15aは、検体等を無駄なく排出することができるように、反応エリア11との連続部分が滑らかに形成されており、反応エリア11と斜面15aの連続部分に検体等が滞留することを防止している。さらに、
図10に示すように、斜面15a自体の断面形状も滑らかな曲線となるように構成されており、斜面15aに検体等が滞留することを防止している。
【0053】
さらに、反応エリア11に配列される抗原50は、
図11に示すように、反応用プレート10の中央に集中するように抗原50を配列すると好適である。このように抗原50の配列場所を調整することで、抗原50を反応用プレート10に固相化する時間を短縮することが可能となる。
【0054】
次に、
図12から23を参照して、本実施形態に係る生化学反応用基体1を用いたアレルギー検査を行う分析装置の動作について説明を行う。
【0055】
図12に示すように、本実施形態に係る分析装置101は、操作パネル102及び後述する試薬カートリッジ113及び生化学反応用基体1を架設する投入部103を有する筺体104を備えている。投入部103は、図示しない架設扉によって開閉自在とされている。
【0056】
図13に示すように、分析装置101の内部は、同一直線上に配列された架設エリア110,バーコード読み取りエリア120,分注エリア130,撹拌エリア140,検出エリア160及び排液エリア150に画成されている。また、架設エリア110から排液エ
リア150は、同一直線上に配置された案内手段117によって案内される移動テーブル116が移動可能に取り付けられている。また、例えば、撹拌エリア140と分注エリア130の内、これらのエリアにおいて、重なり合う部分が生じても良いなど、隣り合うエリア同士が重なり合って構成されても構わない。
【0057】
図14に示すように、移動テーブル116は、試薬カートリッジ113が載置されると共に生化学反応用基体1が載置される基体保持部116aを備えている。また、案内手段117と略平行に延設される駆動部118が取り付けられており、該駆動部118は図示しないモータ等の駆動源によって回転される円環状のバンドが架け回され、該バンドの駆動力を移動テーブル116に伝達することで、移動テーブル116を案内手段117に沿って移動可能に構成している。
【0058】
次に、架設エリア110,バーコード読み取りエリア120,分注エリア130,撹拌エリア140,検出エリア160及び排液エリア150の各エリアについて説明を行う。
【0059】
図13及び15に示すように、架設エリア110は、案内手段117の一端側(
図13における左側端)に位置している。また、
図15に示すように、架設エリア110に移動テーブル116が位置しているとき、投入部103を介して筺体104外から移動テーブル116に試薬カートリッジ113及び生化学反応用基体1を架設可能となるように構成される。試薬カートリッジ113は、検体111,反応用試薬112a、洗浄液112b並びにチップ132を収納可能に構成されている。なお、以下本願明細書において、反応用試薬112a及び洗浄液112bを総称して「試薬112」と称する。生化学反応用基体1は、上述したように検体111及び試薬112を分注する反応エリア11に向けて開口する注入孔31と、検体111及び試薬112の分注及び生化学反応用基体1の撹拌後に余分な検体111及び試薬112を排液するための吸収体収納部42を備えている。吸収体収納部42には、図示しない吸収体が収納されており、該吸収体によって余分な検体111や試薬112が外部に流出しないように保持される。なお、反応用試薬とは、検出に必要な反応のための試薬であり、例えば、標識抗体や発光基材等のことをいう。反応用試薬は、反応に必要な試薬であれば良く、特にこれらの具体例に限定されない。また、反応用試薬112aと洗浄液112bの配置位置は適宜決定することができ、
図15に記載された位置に限定されない。
【0060】
また、生化学反応用基体1が架設される基体保持部116aには、生化学反応用基体1の反応エリア11と対応するように加温部115が取り付けられており、該加温部115によって反応エリアを体温(例えば37℃程度)に加温することで反応時間の短縮を図っている。
【0061】
次に、
図16に示すように移動テーブル116を案内手段117に沿ってバーコード読み取りエリア120まで移動させる。バーコード読み取りエリア120には、バーコードリーダ121が取り付けられており、該バーコードリーダ121によって試薬カートリッジ113及び生化学反応用基体1の側壁に印刷又は貼り付けられたバーコードを各々読み取ることで、試薬、試薬の有効期限及びロット、検量線知情報等の試薬情報を分析装置101に読み取らせている。
【0062】
図17に示すように、分注エリア130は、案内手段117と略垂直な方向に移動可能に取り付けられた分注ノズル131を備えている。分注ノズル131は、試薬カートリッジ113に収納された検体111や試薬112を吸引吐出して生化学反応用基体1に該検体111及び試薬112を分注する部材である。この分注は、まず分注ノズル131の先端に試薬カートリッジ113に収納されたチップ132を嵌合させるために移動テーブル116を試薬カートリッジ113に収納されたチップ132の位置が分注ノズル131の
真下に位置するように移動させた後、分注ノズル131を下降させて分注ノズル131の先端にチップ132を嵌合させる。
【0063】
次に、移動テーブル116の検体111や試薬112等を試薬カートリッジ113から吸引するため、移動テーブル116の検体111又は試薬112などが収納された位置が分注ノズル131の真下に位置するように移動させて検体111又は試薬112をそれぞれ吸引する。同様に、検体111又は試薬112の吸引の後、移動テーブル116を生化学反応用基体1の注入孔31が分注ノズル131の真下に位置するように移動させて、吸引した検体111や試薬112等を生化学反応用基体1の注入孔31を介して反応エリア11に分注される。
【0064】
使用後のチップ132は、試薬カートリッジ113の所定の位置に分注ノズル131から分離されて戻される。このとき、使用後のチップ132は元の位置に戻すことで使用済みチップ132を回収するための位置を設ける必要がないため、試薬カートリッジ113のサイズを小型化することができると共に、使用後のチップ132を確実に回収することが可能となる。
【0065】
撹拌エリア140は、分注エリア130とバーコード読み取りエリア120の間に位置しており、
図18に示すように、移動テーブル116を案内手段117に沿って撹拌エリア140内を往復移動させて分注した検体111及び試薬112を適宜撹拌する。このとき、分注ノズル131および後述する検出カメラ161は上方に退避して撹拌の際に移動テーブル116と干渉しないように構成される。また、撹拌のスピードは、検体111及び試薬112が確実に撹拌することができればどのようなスピードで撹拌しても構わないが、例えば、1分間に1cmの振れ幅で60~160回程度動かせるスピードで撹拌すると好適であり、より好適には、100~160回程度の撹拌スピードで移動テーブルを撹拌することであり、さらに好適には、120~160回程度の撹拌スピードで移動テーブルを撹拌することであり、最適には140回程度の撹拌スピードで移動テーブルを撹拌することである。
【0066】
次に、
図19に示すように、排液エリア150に移動テーブル116を移動させて余分な検体111及び試薬112を生化学反応用基体1の吸収体収納部42に収納された吸収体20に吸収させて排液を行う。排液エリア150は、案内手段117の他方の端部に配置されており、
図20に示すように、案内手段117の端部にストッパ152が取り付けられている。また、移動テーブル116は、排液エリア150に至ると基体保持部116aが所定の角度に傾斜する傾斜機構を備えている。この傾斜機構によって基体保持部116aが傾斜することで生化学反応用基体1の反応エリア11から吸収体収納部42へ検体111及び試薬112を円滑に排液することが可能となる。なお、傾斜機構による傾斜角度は、円滑な排液を行うことができればどの程度に形成しても構わないが、例えば、傾斜角度は生化学反応用基体1内の反応エリア11から吸収体収納部42の間に形成された斜面15と同じ角度から90°の範囲で使用可能であるが、好適には23°以上に傾斜するように構成することであり、より好適には30°から70°に傾斜するように構成すると好適であり、さらに好適には30°から60°に傾斜するように構成することであり、最適には50°に傾斜するように構成することである。
【0067】
次に、
図19から22を参照して傾斜機構の動作について説明を行う。基体保持部116aには傾斜用カム151が取り付けられており、
図21に示すように、排液エリア150に移動テーブル116が移動すると、案内手段117の端部に取り付けられたストッパ152に傾斜用カム151が当接する。そして、
図22に示すように更にストッパ152側に移動テーブル116を移動させると、傾斜用カム151は回動軸155を中心に回動し傾斜用カム151の先端に取り付けられたローラ154が上方に持ち上がるように移動
する。このローラ154の移動によって基体保持部116aは
図19に示すように回転軸153を支点として持ち上がる。このように、傾斜用カム151の先端にはローラ154が取り付けられているので、基体保持部116aを円滑に傾斜させることが可能となる。また、排液が終わると移動テーブル116を後述する検出エリア160に移動させるが、このとき、ストッパ152と傾斜用カム151の当接が解除されるので、基体保持部116aの傾斜も同時に解除されて移動テーブル116と基体保持部116aの上面が略水平な状態に戻る。
【0068】
次に、
図23に示すように、移動テーブル116を検出エリア160に移動させる。検出エリア160は、検出カメラ161と検出カメラ161を案内手段117と略垂直な方向に上下動させる移動機構165と、検出カメラ161と共に上下動する第1の筒164及び第2の筒163を備えている。第2の筒163の先端には、遮光部162が取り付けられており、検出カメラ161を移動機構165によって下端に移動した際に、生化学反応用基体1の注入孔31を遮光するように反応エリア11を覆うことができる。また、第1の筒164は、上端に検出カメラ161が取り付けられると共に第2の筒163と嵌合している。第1の筒164と第2の筒163との嵌合部は、図示しないOリングなどを介して遮光可能に組み付けられており、該Oリングの弾性力によって互いに保持されている。なお、検出カメラ161を下降させた際に、生化学反応用基体1の反応エリア11と検出カメラ161の距離を調整してピントを合わせるために、第1の筒164と第2の筒163は互いに移動可能な調整機構を備えており、この調整機構は上述したOリングを介在されることによって構成されている。このように調整機構は第1の筒164と第2の筒163とがOリングによって互いに取り付けられて構成されているので、第2の筒163は、Oリングの接触面で上下にスライドし、第1の筒164に対して上下動することができる。
【0069】
このように、検出エリア160では、検体などの排液が終了した後、
図23に示すように、検出カメラ161を下降させて、その先端に設けられた遮光部162を生化学反応用基体1に密着させ、生化学反応用基体1及び分析装置101外部から外光が入らないように遮光する。この状態で、所定の反応時間の経過後の標識抗体の発光の有無を検出することで、アレルギー反応の有無を検出することが可能となる。標識抗体の発光は、標識抗IgE抗体を発光させて可視化する発光基材が試薬(反応用試薬)として分注されているため、この発光基材を所定の環境条件下で所定の時間、反応エリアにおいて生化学反応を行い、この発光の強度を検出カメラ161によって計測する。
【0070】
このように、分注ノズル131や検出カメラ161を第2の筒163,第1の筒164及び遮光部162と共に上下動させるように構成し、生化学反応用基体1の位置を移動可能とすることで、検出カメラ161を固定した状態で遮光部やカバーを移動させる機構に比べてカバーや移動機構が大型化してしまうことを防止して分析装置101の全体の小型化に寄与することが可能となる。本来であれば、検出対象のある生化学反応用基体1と、検出カメラ161との距離は、測定を精度よく行うために一定の距離に固定することが望ましいが、このような固定式の方式を採用すると、測定時の遮光のために検出カメラと生化学反応用基体1を覆って暗室構造を構成するフードを上下動させる必要があり、このフードが大型化すると共に当該フードが生化学反応用基体1全体を覆って遮光する必要があり、当該遮光を完全なものとするためには、さらにフード底面に弾性体を取り付けるなどして生化学反応用基体1を載置する台(非可動部)等と密着させる構造が必要となり、分析装置101の小型化を図ることが難しかった。これに対し本実施形態に係る分析装置101は、検出カメラ161そのものを上下動させることで、暗室構造のスペースを抑制し、移動機構の小型化を図ることが可能となる。さらに、第2の筒163を第1の筒164の内側に配し、その先端に遮光部162を取り付けることによって、遮光部162を生化学反応用基体1に密着させることでこれを遮光できるため、生化学反応用基体1の天板面
積全体を覆う程度に少し大きいかほぼ同等若しくは注入孔31を覆う程度の小さいスペースにて当該遮光が可能となり、移動機構の小型化を図ることができる。また、分注ノズル131の移動、基体保持部116aを傾斜させる及びバーコードリーダ121などを生化学反応用基体1に合わせて移動させるなど、分析装置内では様々な方向への移動機構が必要となるが、それぞれの移動方向に対応する移動機構を設けると分析装置の大型化に繋がってしまう。これに対し、本実施形態に係る分析装置101は、架設エリア110、分注エリア130、撹拌エリア140、排液エリア150及び検出エリア160を同一直線状に配置し、各エリア間を移動する生化学反応用基体1の移動機構を一軸にまとめることで、分析装置101の小型化を図っている。
【0071】
このような分析装置によれば、アレルギー検査において、検査の高感度化及び検査時間の短縮化を図るとともに、検体となる血液等の必要量を低減し、検査の工程数を削減して容易に検査を行うことが可能であり、検査者の感染リスクを低減することが可能となると共に、架設エリア,分注エリア,撹拌エリア,排液エリア,検出エリアを同一直線上に配置することで一軸上の移動だけで全工程を行うことができ、装置全体の小型化を図ることも可能となる。
【実施例0072】
次に、
図24から27を参照して本実施形態に係る分析装置101の検出結果について説明を行う。
図24に示すように、本実施例では、生化学反応用基体の反応エリアに抗原A(ゴキブリ:Cockroach),B(オオアワガエリ:Timothy)及びC(サケ:Salmon)を配列して検査を行った。
【0073】
図25に示すように、撹拌後、60秒間露光を経過した状態では、抗原A及び抗原Bが発光しており、検出カメラで当該発光が確認できた。また、抗原Cについては、強い発光が確認されておらず、この検体では、抗原Cに対して微量のIgE抗体を含んでいることが確認できた。
【0074】
また、反応エリア周辺の排液残りによる発光が抑えられていることが確認できた。なお、反応エリア周辺に若干の発光が確認されるが、当該発光は解析には影響のない範囲であって分析装置の検出性能に影響を与えるものではないことも確認できた。
【0075】
なお、抗原Bについては、露光時間を60秒とすると、発光が強くなっている。これに対し、本実施形態に係る分析装置101は、
図25から27に示すように、露光時間を5秒、20秒及び60秒の間隔で撮影を行っている。これにより、60秒経過後では抗原Bの発光が強く検出性能に影響を与えるところ、
図26に示すように、露光時間を20秒にした場合では抗原Bの発光が適切な強さの状態であることから抗原Bについては、露光時間が20秒間の検出結果を用いることで検出性能を確保している。さらに、本実施形態における分析装置101では、
図27に示すように露光時間を5秒間の状態も撮影を行っているが、今回の抗原AからCについては、5秒では発光も微弱なものであった。しかし、発光が強い抗原については、露光時間が5秒間の検出結果を用いることで分析装置101の検出性能を更に向上させることができる。
【0076】
なお、上述した本実施形態に係る生化学反応用基体1は、注入孔31や反応エリア11を円形に形成した場合について説明を行ったが、これらの形状については、円形に限定されず、例えば楕円形状等に形成しても構わない。
【0077】
また、上述した本実施形態に係る生化学反応用基体1に用いる反応用プレート10は、透明または有色のプレートを用いることができるが、黒色を用いることでより高感度に計測することができる。また、反応用プレート10に塗布するブロッキング剤の範囲は、流
出防止壁13の内部を含めた反応エリア11、斜面15に加え、流路部12の内部にすることでより非特異的な吸着を抑制できる。
【0078】
また、本実施形態に係る分析装置101に用いる傾斜機構による傾斜向きは、
図19を用いて説明を行ったが、案内手段117に対して直角な向きへの傾斜に限定されず、傾斜用カム151の位置又は回転軸153の位置により、案内手段117に対して例えば、水平方向へ傾斜させても構わない。さらに、試薬カートリッジ113は、測定に使用する全ての試薬と検体を1つにまとめたものでも構わないし、用途等に応じて2以上の試薬カートリッジを使用できるようにしても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。