(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180520
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】トンネル防災システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241219BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024178281
(22)【出願日】2024-10-10
(62)【分割の表示】P 2020123526の分割
【原出願日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019138657
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】本田 正人
(72)【発明者】
【氏名】雉子牟田 剛
(72)【発明者】
【氏名】森田 克久
(57)【要約】
【課題】1つの検知器が故障した場合であっても、保守担当者が現地に急行して保守作業をすることなく、トンネル内での未監視領域の発生を防ぐことができるトンネル防災システムを提供する。
【解決手段】監視領域を切り替えることができ所定の間隔をあけてトンネル3内に設置される複数の検知器5と、複数の検知器5のうちの所定の検知器5Cが故障したときに、故障した検知器5Cの隣に設置されている検知器5B、5Dの監視領域を拡大する防災受信盤7とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域を切り替えることができ、長手方向で所定の間隔をあけてトンネル内に設置される複数の検知器と、
前記複数の検知器のうちの所定の検知器が故障したときに、前記故障した検知器の隣に設置されている検知器の監視領域を拡大する防災受信盤と、
を有し、
前記トンネルの坑口から前記トンネル内に太陽光が入り込むことで前記検知器が誤作動するおそれを回避するために、前記複数の検知器のうちの、前記トンネルの坑口のところに設置されている検知器の両側の監視領域のうちの一方の監視領域の機能が削除されており、前記トンネルの坑口のところに設置されている検知器の監視領域が、前記トンネルの内側方向のみに設置されていることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル防災システムであって、
前記検知器の監視領域は、前記検知器の両側に形成されるように構成されており、
また、前記検知器の監視領域は、第1の監視領域と、長手方向で前記第1の監視領域の2倍の長さの第2の監視領域とのいずれかに切り替え可能であり、
前記複数の検知器における前記所定の間隔の値が、前記第1の監視領域の長さの値と等しいかもしくは前記第2の監視領域の長さの値と等しいことを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトンネル防災システムであって、
前記検知器は、受光部と試験発光部とメモリとを備えており、
前記検知器で故障が発生したか否かは、前記試験発光部が光を発したときに前記受光部で受光した光の強度を前記メモリの複数のアドレスのそれぞれに格納し、この格納後に前記各アドレスのそれぞれに格納されている光の強度を比較することでなされることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のトンネル防災システムであって、
前記検知器は、この検知器に供給される電源の電圧を監視する電圧監視部を備えており、
前記検知器で故障が発生したか否かは、前記電圧監視部で検出した電圧が許容範囲からはずれている否かを検出することによってなされることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項5】
請求項1、請求項3、請求項4のいずれか1項に記載のトンネル防災システムであって、
前記検知器の監視領域は、第1の監視領域と、長手方向で前記第1の監視領域の2倍の長さの第2の監視領域とのいずれかに切り替え可能であり、
前記複数の検知器のうちの前記トンネルの坑口のところに設置されている第1の検知器と、前記複数の検知器のうちの前記第1の検知器よりも前記トンネルの内側方向に設置されている第2の検知器との間の距離が、前記第1の検知器の第1の監視領域の長さと等しいことを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のトンネル防災システムであって、
前記トンネル内には、前記トンネルの長手方向で区切られた複数の区画が設定されており、
前記複数の区画毎に消火剤を吐出する区画消火部を複数備えた消火用設備が設けられており、
前記消火設備は、水噴霧ヘッドから前記消火剤である水を噴霧状に放射する水噴霧消火設備または泡ヘッドから前記消火剤である空気泡を放射する泡噴霧消火設備で構成されており、
前記検知器は、前記複数の区画の境界もしくはこの境界の近傍に設置されることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項7】
請求項6に記載のトンネル防災システムであって、
前記区画消火部が設けられている区画に加えて、前記区画消火部が設けられている区画に隣接している隣接区画にも、水噴霧または空気泡を放射するように構成されていることを特徴とするトンネル防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル防災システムに係り、特に、複数の検知器を用いてトンネル内の火災等を検出するものに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルに設置される従来のトンネル防災システムでは、トンネル内で未監視領域が発生しないように複数の検知器を設置する方式や、複数の検知器のうちの1つの検知器が故障しても未監視領域が形成されないようにするために検知器で2重監視する方式を採用している。ここで従来の技術に関する文献として、たとえば、特許文献1と特許文献2とを掲げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-314376号公報
【特許文献2】特開2018-147373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、トンネル内で未監視領域が発生しないように複数の検知器を設置する方式が採用されている場合において、検知器に故障(障害)が発生すると、保守担当者が現地に急行し、トンネル内に入り、障害復旧作業(たとえば検知器の交換作業)をする。
【0005】
また、検知器で2重監視する方式を採用している場合であっても、検知器に故障(障害)が発生すると、トンネル内で未監視領域が発生していないにもかかわらず、トンネルの管理規定等によって、保守担当者が現地に急行し、トンネル内に入り、障害復旧作業をする。
【0006】
いずれにしても、従来の方式では、検知器に故障が発生した場合、保守員がただちにトンネル内に入り故障した検知器を交換する等の保守作業をただちに行う必要があるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、複数の検知器がトンネル内に設置されているトンネル防災システムにおいて、複数の検知器のうちのたとえば1つの検知器が故障した場合であっても、保守担当者が現地に急行して保守作業をすることなく、トンネル内での未監視領域の発生を防ぐことができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、監視領域を切り替えることができ、長手方向で所定の間隔をあけてトンネル内に設置される複数の検知器と、前記複数の検知器のうちの所定の検知器が故障したときに、前記故障した検知器の隣に設置されている検知器の監視領域を拡大する防災受信盤とを有し、前記トンネルの坑口から前記トンネル内に太陽光が入り込むことで前記検知器が誤作動するおそれを回避するために、前記複数の検知器のうちの、前記トンネルの坑口のところに設置されている検知器の両側の監視領域のうちの一方の監視領域の機能が削除されており、前記トンネルの坑口のところに設置されている検知器の監視領域が、前記トンネルの内側方向のみに設置されているトンネル防災システムである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係るトンネル防災システムであって、前記検知器の監視領域は、前記検知器の両側に形成されるように構成されており、また、前記検知器の監視領域は、第1の監視領域と、長手方向で前記第1の監視領域の2倍の長さの第2の監視領域とのいずれかに切り替え可能であり、前記複数の検知器における前記所定の間隔の値が、前記第1の監視領域の長さの値と等しいかもしくは前記第2の監視領域の長さの値と等しいトンネル防災システムである。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明に係るトンネル防災システムであって、前記検知器は、受光部と試験発光部とメモリとを備えており、前記検知器で故障が発生したか否かは、前記試験発光部が光を発したときに前記受光部で受光した光の強度を前記メモリの複数のアドレスのそれぞれに格納し、この格納後に前記各アドレスのそれぞれに格納されている光の強度を比較することでなされるトンネル防災システムである。
【0011】
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1に係るトンネル防災システムであって、前記検知器は、この検知器に供給される電源の電圧を監視する電圧監視部を備えており、前記検知器で故障が発生したか否かは、前記電圧監視部で検出した電圧が許容範囲からはずれている否かを検出することによってなされるトンネル防災システムである。
【0012】
第5の発明は、第1、第3、第4の発明のいずれか1に係るトンネル防災システムであって、前記検知器の監視領域は、第1の監視領域と、長手方向で前記第1の監視領域の2倍の長さの第2の監視領域とのいずれかに切り替え可能であり、前記複数の検知器のうちの前記トンネルの坑口のところに設置されている第1の検知器と、前記複数の検知器のうちの前記第1の検知器よりも前記トンネルの内側方向に設置されている第2の検知器との間の距離が、前記第1の検知器の第1の監視領域の長さと等しいトンネル防災システムである。
【0013】
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1に係るトンネル防災システムであって、前記トンネル内には、前記トンネルの長手方向で区切られた複数の区画が設定されており、前記複数の区画毎に消火剤を吐出する区画消火部を複数備えた消火用設備が設けられており、前記消火設備は、水噴霧ヘッドから前記消火剤である水を噴霧状に放射する水噴霧消火設備または泡ヘッドから前記消火剤である空気泡を放射する泡噴霧消火設備で構成されており、前記検知器は、前記複数の区画の境界もしくはこの境界の近傍に設置されるトンネル防災システムである。
【0014】
第7の発明は、第6の発明に係るトンネル防災システムであって、前記区画消火部が設けられている区画に加えて、前記区画消火部が設けられている区画に隣接している隣接区画にも、水噴霧または空気泡を放射するように構成されているトンネル防災システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の検知器のうちのたとえば1つの検知器が故障した場合であっても、保守担当者が現地に急行して保守作業をすることなく、トンネル内での未監視領域の発生を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル防災システム(トンネルに設置されているトンネル防災システム)の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの検知器の外形形状を示す図であり、(b)は(a)におけるIIB矢視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの検知器の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの防災受信盤の概略構成と防災受信盤に設置された検知器とを示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの検知器の監視領域を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの消火用設備による水噴霧または空気泡を放射について説明する図である。
【
図7】
図5で示す態様において、1つの検知器が故障した場合における検知器の監視領域を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの検知器での監視領域の切り替え等の動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの検知器での故障検出等の動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの防災受信盤の動作を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの防災受信盤の動作を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態に係るトンネル防災システムの防災受信盤の動作を示すフローチャートである。
【
図13】1つ目の変形例に係るトンネル防災システムの概略構成を示す図である。
【
図14】2つ目の変形例に係るトンネル防災システムの概略構成を示す図である。
【
図15】3つ目の変形例に係るトンネル防災システムの概略構成を示す図である。
【
図16】
図15で示す態様において、1つの検知器が故障した場合における検知器の監視領域を示す図である。
【
図17】4つ目の変形例に係るトンネル防災システムの概略構成を示す図である。
【
図18】
図17で示す態様において、1つの検知器が故障した場合における検知器の監視領域を示す図である。
【
図19】
図5、
図7に対応する図であって、トンネルの坑口におけるトンネル防災システムの概略構成を示す図である。
【
図20】
図5、
図7に対応する図であって、トンネルの坑口における別のトンネル防災システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るトンネル防災システム(たとえば道路用トンネル防災システム)1は、
図1等で示すように、トンネル3に設置されて使用されるものであり、複数の検知器(火災検知器)5(5A、5B、5C、5D、5E・・・)と防災受信盤7とを備えている。
【0018】
検知器5は、監視領域(監視範囲;検知領域)を切り替えることができ(
図5や
図7の矢印A1等を参照)、トンネル3内に未監視領域が形成されないようにするために(トンネル3内の総ての領域を監視することができるようにするために)、トンネル3の長手方向で所定の間隔(たとえば一定の間隔)をあけてトンネル3内に設置される。監視領域では検知器5は火災等の高温箇所が存在するか否かを検知する。
【0019】
防災受信盤7は、複数の検知器5(5A、5B、5C、5D、5E・・・)のうちの所定の検知器(たとえば所定の1つの検知器5C)が故障したときにおいても、トンネル3内に未監視領域が形成されないようにするために、
図7に矢印B2w、D1wで示すように、たとえば一対の検知器5B、5Dの監視領域を拡大する(監視領域が広くなるように監視領域を切り替える)。検知器5B、5Dは、故障した検知器5Cの両隣に設置されている検知器である。
【0020】
さらに説明すると、総ての検知器5が正常に稼働している場合には、
図5に示すように、検知器5Aが矢印A1、A2で示す範囲を監視領域としており、検知器5Bが矢印B1、B2で示す範囲を監視領域としており、検知器5Cが矢印C1、C2で示す範囲を監視領域としており、検知器5Dが矢印D1、D2で示す範囲を監視領域としており、検知器5Eが矢印E1、E2で示す範囲を監視領域としている。
【0021】
一方、検知器5Cが故障した場合には、
図7で示すように、検知器5Bの検知器5C側の監視領域を広げ、検知器5Dの検知器5C側の監視領域を広げている。そして、検知器5Aが矢印A1、A2で示す範囲を監視領域とし、検知器5Bが矢印B1、B2wで示す範囲を監視領域とし、検知器5Dが矢印D1w、D2で示す範囲を監視領域とし、検知器5Eが矢印E1、E2で示す範囲を監視領域とする。
【0022】
なお、複数の検知器5のそれぞれは、故障が発生したときに故障発生信号(故障が発生したことを伝える信号;アラーム信号)を防災受信盤7に向けて送信する。また、防災受信盤7は、複数の検知器5のそれぞれから故障発生信号が送られてくるか否かを監視しており、所定の検知器5Cから送られてきた故障発生信号を受信したときに、この故障が発生した検知器5Cの隣に設置されている検知器5B、5Dに監視領域切り替え信号(監視領域の切り替えを指示する信号)を送信し、監視領域の切り替えを指令する。複数の検知器5のそれぞれは、防災受信盤7から監視領域切り替え信号が送られてくるか否かを監視しており、監視距離切り替え信号を受信したときに監視領域を広くする。
【0023】
検知器5の監視領域は、
図5や
図7に矢印で示すように、検知器5の両側(トンネル3内に設置されたときに、トンネル3の長手方向の一方の側と他方の側)に形成される。
【0024】
検知器5の監視領域は、たとえば、第1の監視領域(
図5の矢印B1、B2、C1、C2、D1、D2等を参照)と、この第1の監視領域の2倍の長さ(距離)の第2の監視領域(
図7の矢印B2w、D1wを参照)とのいずれかに切り替え可能になっている。複数の検知器5(5A、5B、5C、5D、5E・・・)における所定の間隔の値が、第1の監視領域の長さの値と等しくなっている。
【0025】
すでに理解されるように、総ての検知器5に故障が発生しておらず総ての検知器5が正常に稼働している場合は、各検知器5は、第1の監視領域で監視を行い、1つの検知器5Cで故障が発生した場合には、この故障した検知器5Cの隣に設置されている検知器5B、5Dは、故障した検知器5Bの側で、第2の監視領域で監視を行う。
【0026】
なお、
図7で示す態様では、検知器5B、5Dが故障した検知器5Cの側でのみ第2の監視領域によって監視を行うようになっているが、検知器5B、5Dがこれらの両側で第2の監視領域によって監視を行うようになっていてもよい。すなわち、検知器5Bが、検出器5C側と検出器5A側とで第2の監視領域により監視を行うようになっていてもよいし、検知器5Dが、検出器5C側と検出器5E側とで第2の監視領域により監視を行うようになっていてもよい。
【0027】
なお、
図15、
図16、
図17、
図18で示すように、複数の検知器5(5A、5C、5E・・・)における所定の間隔の値が、第2の監視領域の長さの値と等しくなっていてもよい。
【0028】
そして、総ての検知器5(5A、5C、5E・・・)が正常に稼働している場合には、
図15、
図17に示すように、検知器5Aが矢印A1、A2で示す範囲を監視領域とし、検知器5Cが矢印C1、C2で示す範囲を監視領域とし、検知器5Eが矢印E1、E2で示す範囲を監視領域としてもよい。
【0029】
一方、検知器5Cが故障した場合には、
図16、
図18で示すように、検知器5Aの検知器5C側の監視領域を広げ、検知器5Eの検知器5C側の監視領域を広げてもよい。そして、検知器5Aが矢印A1、A2wで示す範囲を監視領域とし、検知器5Eが矢印E1w、E2で示す範囲を監視領域としてもよい。
【0030】
ここで、トンネル3や検知器5の監視領域等についてさらに詳しく説明する。
【0031】
トンネル3の断面形状(長手方向に対して直交する平面による断面の形状)は、半円形状等のほぼ一定の形状になっている。また、トンネル3は、断面の高さの値や断面の幅の値に比べて長手方向(
図1等では左右方向)の寸法の値が相当に大きくなっている。なお、当然のことではあるが、トンネル3内を走行する車両は、トンネル3の長手方向に沿って走行する。
【0032】
トンネル3は断面の高さの値や断面の幅の値に比べて長手方向の寸法の値がかなり大きくなっているので、検知器5の監視領域を一次元的に考えることができ、検知器5の監視領域と検知器5の監視距離とを同義に考えることができる。
【0033】
複数の検知器5は、
図1等で示すように、トンネル3の長手方向で一定の間隔(たとえば25mの間隔)をあけて、トンネル3内に設置される。トンネル3に設置されている各検知器5は、これらの検知器5の両方の側(トンネルの長手方向における一方の側と他方の側)で、第1の監視距離(たとえば設置間隔の値と同じ25m)を監視領域としている。
【0034】
総ての検知器5が故障せず正常に稼働しているときには、
図5で示すように、各検知器5のそれぞれは、トンネル3の長手方向の一方の側の監視距離を25mとしトンネル3の長手方向の他方の側の監視距離も25mとしている。これによって、トンネル3内における火災等の発生を2重監視している。つまり、お互いが隣り合っている2つの検知器5の間の領域は、2つの検知器5のうちの一方の検知器と他方の検知器とで監視される。
【0035】
一方、検知器5のうちの1つの検知器5Cで故障が発生したときには、
図7で示すように、故障が発生した検知器5Cの一方の側に存在している1つの検知器5Bの故障が発生した検知器5C側における監視距離を25mから50mに変更し、故障が発生した検知器5Cの他方の側に存在している1つの検知器5Dの故障が発生した検知器5C側における監視距離を25mから50mに切り替えている。これによって、故障が発生した検知器5Cが設けられている領域でもトンネル3内における火災等の発生を2重監視する。
【0036】
ところで、監視距離を上述したように25m、50mのいずれかに切り替えることができる検知器5を、上述した
図15、
図16、
図17、
図18で示すように、50mの間隔をあけてトンネル3内に設置してもよい。
【0037】
そして、総ての検知器5が故障せず正常に稼働しているときには、各検知器5のそれぞれが、監視距離を25mとするようにしてもよい(
図15、
図17参照)。
【0038】
一方、検知器5のうちの1つの検知器5Cで故障が発生したときには、故障が発生した検知器5Cの一方の側に存在している1つの検知器5Aの監視距離(検知器5C側の監視距離)を25mから50mに変更し、故障が発生した検知器5Cの他方の側に存在している1つの検知器5Eの監視距離(検知器5C側の監視距離)を25mから50mに切り替えてもよい(
図16、
図18参照)。
【0039】
ここで、検知器5について詳しく説明する。
【0040】
検知器5は、
図3で示すように、受光部(火災検出部)9と、火災の炎や熱のような試験光(たとえば赤外線)を発する試験発光部11と、メモリ(EEPROM)13と、制御部(図示しないCPUを備えて構成されている火災検知器制御部)15とを備えて構成されている。受光部9は、実際に発生した火災の炎や熱も検出する。
【0041】
火災検出部9として、左側の火災検出部9Aと右側の火災検出部9Bとの2つが設けられている。左側の火災検出部9Aは、検知器5がトンネル3に設置されたときに、
図5等で示す検知器5の左側で火災等の発生を検出し、右側の火災検出部9Aは、検知器5がトンネル3に設置されたときに、
図5等で示す検知器5の右側で火災等の発生を検出する。
【0042】
また、火災検出部9は、第1のセンサ(センサA)17と、第2のセンサ(センサB)19と信号増幅部21(21A、21B)と増幅率切替部23とを備えて構成されている。第1のセンサ17は、所定の波長の光(たとえば、第1の波長の赤外線)を検出し、第2のセンサ19は、所定の波長の光(たとえば、第1の波長とは異なる第2の波長の赤外線)を検出する。
【0043】
信号増幅部21Aは、第1のセンサ17から出力された信号を増幅するものであり、信号増幅部21Bは、第2のセンサ19から出力された信号を増幅するものである。増幅率切替部23は、信号増幅部21(21A、21B)での信号の増幅率を変えるものである。増幅率切替部23によって信号増幅部21(21A、21B)での信号の増幅率が変更されることで、検知器5における監視領域の変更が可能になる。
【0044】
試験発光部11は、チェックランプ駆動部25とチェックランプ27(27A、27B)を備えて構成されている。チェックランプ27Aは、火災検出部9Aのセンサ17、19に向けて、センサ17、19が検出可能な光(たとえば赤外線)を発するようになっている。チェックランプ27Bは、火災検出部9Bのセンサ17、19に向けて、センサ17、19が検出可能な光を発するようになっている。
【0045】
また、検知器5は、
図2で示すように、貫通孔29、31が設けられている筐体33を備えており、試験発光部11(チェックランプ27)と受光部9(センサ17、19)とは、
図2では示していないが、筐体33内に設けられている。貫通孔29、31は、チェックランプ27が発した光が透過するガラス等の部材35で塞がれている。
【0046】
そして、試験発光部11が発した赤外線が部材35を透過して受光部9で受光されるようになっている。検知器5がトンネル3内に設置されると部材35は次第に汚れてくる。これによって、試験発光部11が赤外線を発したときに受光部9で受光する赤外線の強度が、時間の経過に伴って次第に弱くなるが、定期的に部材35の清掃をすることで、受光部9で受光する光の強度は回復する。
【0047】
また、検知器5には、
図3で示すように、電源部37と電圧監視部39に加えて、シリアル型の伝送部41とパラレル型のI/O部43との両方のものが設けられている。シリアル型の伝送部41は、検知器5と防災受信盤7との間での信号の授受を伝送方式で行うシリアル型である場合に用いられ、パラレル型のI/O部43は、検知器5と防災受信盤7との間での信号の授受を直送方式(有電圧または無電圧接点信号)で行う場合に用いられる。
【0048】
電源部37は、検知器5に電力を供給し、電圧監視部39は、検知器5に供給される電源の電圧および電源部37で電圧変換された複数の電源系統の電圧を監視する。
【0049】
火災検知器制御部15は、火災判断処理部45と電圧監視処理部47と監視範囲切替部処理部49とチェックランプ試験処理部51とを備えて構成されている。
【0050】
火災判断処理部45は、火災検出部9(信号増幅部21)から送られてきた信号に基づいて、検知器5の監視領域で火災が発生したか否かを判断し、火災が発生したとの判断をしたときには、火災が発生した旨の信号を防災受信盤7に送る。
【0051】
電圧監視処理部47は、電圧監視部39から送られてきた信号に基づいて、電源部37の電圧が正常か否かを判断し、電源部37の電圧が異常であると判断したときには、電圧が異常である旨の信号を防災受信盤7に送る。
【0052】
監視範囲切替部処理部49は、防災受信盤7から送られてきた信号に基づいて、検知器5の監視領域を切り替える。この切り替えは、上述したように、増幅率切替部23での増幅率を変えることでなされる。
【0053】
チェックランプ試験処理部51は、たとえば、防災受信盤7から所定の時間間隔で送られてくる信号に基づいて、チェックランプ27を点灯させる。また、チェックランプ試験処理部51は、検知器5で故障が発生したか否かを判断する。
【0054】
この判断は、試験発光部11(チェックランプ27)が光(たとえば赤外線)を発したときに受光部9(センサ17、19)で受光した光の強度(数値化された光の強度)を、EEPROM13の複数のアドレス(図示せず)のそれぞれに格納(記憶)し、この格納後に各アドレスのそれぞれに格納している光の強度を比較することでなされる。検知器5で故障が発生したと判断したとき、チェックランプ試験処理部51は、故障が発生した旨の信号を防災受信盤7に送る。
【0055】
検知器5(チェックランプ試験処理部51)における検知器5での故障の判断についてさらに説明する。
【0056】
試験発光部11(チェックランプ27A)が光を発したときに受光部9Aで受光した光の強度をEEPROM13の2つのアドレス(第1のアドレス、第2のアドレス)のそれぞれに格納する。この格納後に、2つのアドレスに格納されている光の強度を示す数値を比較する。そして、2つの数値がお互いに一致している場合には、検知器5での故障(メモリ13の障害)は発生していないと判断する。一方、2つのアドレスに格納されている光の強度を示す数値がお互いに異なっているときには、検知器5での故障(メモリの障害)が発生したと判断する。この検知器5での故障の判断は、チェックランプ27Bと受光部9Bでも同様に行われる。
【0057】
ところで、上述したように、試験発光部11が発した赤外線が部材35を透過して受光部9で受光されるようになっている。したがって、検知器5がトンネル3内に設置されると検知器4の筐体33の貫通孔29、31に設けられている部材35は次第に汚れ、受光部9で受光する赤外線の強度は、時間の経過に伴って次第に弱くなる。すなわち、部材35での赤外線の透過度が次第に悪くなる(汚損率が次第に高くなる)。
【0058】
そこで、チェックランプ試験処理部51は、汚損率が所定の閾値を超えた場合、防災受信盤7に汚損率が所定の閾値を超えた旨の信号送る(汚損警報を出力する)。なお、EEPROM13の2つのアドレスのそれぞれに格納される光の強度を示す数値(故障が発生しない場合の数値)は、汚損率として把握することもできる。
【0059】
次に、防災受信盤7について、
図4を参照しつつ詳しく説明する。
【0060】
防災受信盤7は、メイン制御部(図示しないCPUとメモリとを備えて構成されているメイン制御部)53と、たとえばLCDで構成された表示部55と、たとえばタッチパネルで構成された操作部57と、検知器5以外の機器の接続に使用されるI/O部59と、インターネット等の情報通信部の接続に使用される伝送部61と、検知器5の接続に使用される伝送部63とを備えて構成されている。
【0061】
なお、伝送部63は、シリアル型の検知器5の伝送部41との接続に使用され、シリアル型の検知器5との間での信号の授受に使用される。なお、伝送部63に代えてもしくは加えて伝送部64が設けられていてもよい。伝送部64は、I/Oコントローラ(信号変換器)を介してパラレル型の検知器5のI/O部との接続に使用される。
【0062】
トンネル防災システム1では、検知器5の電圧監視部39で検出した電圧が許容範囲に収まっていない場合(許容範囲からはずれている場合)、この許容範囲に収まっていない電圧が検出された検知器5が故障したと判断される。そして、防災受信盤7が故障した検知器5の隣に設置されている検知器5の監視領域を上述したようにして切り替える。
【0063】
また、トンネル防災システム1では、EEPROM13の2つのアドレスに格納されている光の強度を示す数値がお互いに異なっている場合、この光の強度を示す数値がお互いに異なっている検知器5が故障したと判断される。そして、防災受信盤7が故障した検知器5の隣に設置されている検知器5の監視領域を上述したようにして切り替える。
【0064】
トンネル3内は、
図1で示すように、トンネル3の長手方向(
図1の左右方向)で25m毎に区切られた複数の区画65(65A、65B、65C、65D、65E、65F・・・)が設定されている。各区画65は、トンネル3の長手方向で連続してつながっている。
【0065】
トンネル防災システム1には、消火用設備67が設けられている。消火用設備(水噴霧消火設備または泡噴霧消火設備)67は、水噴霧自動弁装置または空気泡自動弁装置とポンプ、弁およびこれらを接続する配管、継手類の消火設備機器類69と、複数の区画65毎に消火剤である水噴霧または空気泡を放射する複数の区画消火部71(71A、71B、71C、71D、71E、71F・・・)と、切替弁75とを備えている。なお、空気泡とは、泡消火設備であって、泡ヘッド、泡ノズル等から放射される泡であり、可燃性液体の表面を泡で覆い、微細な気泡の集合の被覆による窒息作用と気泡中の含有水分による冷却作用の二つの作用により消火を行うものである。
【0066】
区画消火部71は、トンネル3の長手方向で所定の間隔をあけてならんでいる複数の水噴霧ヘッドまたは泡ヘッド77を備えて構成されている。また、消火設備機器類69と各切替弁75は、防災受信盤7のI/O部59を介して防災受信盤7に接続されている。
【0067】
なお、複数の検知器5(5A、5B、5C、5D、5E・・・)のそれぞれは、
図1、
図5、
図6、
図7で示すように、トンネル3の長手方向で各区画65の中央部に設置されている。
【0068】
図6で示すように、たとえば、検知器5Bと検知器5Cとの間に位置している第2の区画65Bで火災が発生したとき(火点79が生成されたとき)には、メイン制御部53の制御の下、区画消火部71Bの切替弁75と区画消火部71Cの切替弁75とを開いて、区画消火部71Bの水噴霧または泡ヘッド77と区画消火部71Cの水噴霧または泡ヘッド77とから第2の区画65Bと第3の区画65Cとに水噴霧または空気泡を放射する。
【0069】
図17、
図18で示す態様では、トンネル3の長手方向で50m毎に区切られた複数の区画65(65A、65C、65E・・・)が設定されている。また、複数の区画消火部71(71A、71C、71E・・・)が、各区画65毎に設置されている。
【0070】
次に、トンネル防災システム1の動作について説明する。
【0071】
まず、検知器5の監視領域切り替え等の動作について、
図8を参照しつつ説明する。
図8に示す動作は、複数の検知器5のそれぞれで、たとえばお互いが並行して行われる。
【0072】
検知器5は、監視領域に応じた増幅率の設定を含む初期化処理をする(S1)。このときに、監視領域は、トンネル3の長手方向の一方の側で25mに設定され、トンネル3の長手方向の他方の側でも25mに設定される。
【0073】
続いて、火災判断処理をする(S3)。すなわち、火災判断処理部45によって、検知器5の監視領域で火災が発生したか否かを判断する。また、電圧監視処理をする(S5)。すなわち、電圧監視部39によって、電源部37の電圧が正常か否かを判断する。
【0074】
続いて、現在の監視範囲とは異なる監視範囲に切り替える信号の入力が、防災受信盤7から送られてきたか否か判断する(S7)。
【0075】
ステップS7で、現在の監視範囲とは異なる監視範囲に切り替える信号(監視範囲を広げる旨の信号もしくは監視範囲を狭める旨の信号)の入力がない場合には、ステップS3に戻り火災判断処理をする。
【0076】
ステップS7で、現在の監視範囲とは異なる監視範囲に切り替える信号(監視範囲切替信号)の入力があった場合には、増幅率切替部23の設定を変更することで、監視距離を50mから25mに切り替え、もしくは、監視距離を25mから50mに切り替え、切替応答信号を防災受信盤7に出力する(S13)。
【0077】
次に、検知器5の故障検出等の動作について、
図9を参照しつつ説明する。
図9に示す動作も、複数の検知器5のそれぞれで、たとえばお互いが並行して行われる。
【0078】
検知器5は、監視領域に応じた増幅率の設定を含む初期化処理をする(S21)。このときに、監視領域は、トンネル3の長手方向の一方の側で25mに設定され、トンネル3の長手方向の他方の側でも25mに設定される。
【0079】
続いて、火災判断処理をする(S23)。すなわち、火災判断処理部45によって、検知器5の監視領域で火災が発生したか否かを判断する。火災判断処理(S23)では監視と判断と決定と信号の送出処理とを行うが、詳細な説明は省略する。
【0080】
続いて、火災等を監視している検知器5の電源系統が電圧許容範囲を超えたか否かを判断する(S25)。すなわち、検知器5の電圧監視部39でたとえば電源部37の電圧を検知し、この検知した電圧が許容値に収まっているか否かを判断する。
【0081】
監視している検知器5の電源系統が電圧許容範囲内にある場合には、チェックランプ試験開始信号が防災受信盤7から送られてきたか否か判断する(S27)。
【0082】
チェックランプ試験開始信号の入力があった場合には、チェックランプ27の点灯動作(点滅動作でもよい。)による火災検出部9の汚損率を取得する(S28)。取得した汚損率をEEPROM13の2つのアドレスのそれぞれに格納する(S29)。また、ステップS29では、取得した汚損率が所定の閾値よりも大きい場合、汚損警報を防災受信盤7に出力する(S34)。なお、汚損率は光の強度を示す数値とする。
【0083】
続いて、ステップS29でEEPROM13に格納した汚損率にエラーがあるか否かを判断する(S31)。この判断は、EEPROM13の2つのアドレスのそれぞれに格納した汚損率が一致しているか否かによってなされ、2つのアドレスのそれぞれに格納した汚損率がお互いに一致している場合には、EEPROM13に格納した汚損率にエラーが無いものとし、2つのアドレスのそれぞれに格納した汚損率がお互いに一致していない場合には、EEPROM13に格納した汚損率にエラーがあるものと判断する。
【0084】
ステップS31でEEPROM13に格納した汚損率にエラーが無いと判断した場合には、ステップS23に戻る。
【0085】
ステップS25で検知器5の電源系統で電圧許容範囲を超えた場合には、この電圧許容範囲を超えた検知器5が電源系統故障信号を防災受信盤7に出力するとともに、故障した検知器5による火災監視を停止する(S33)。
【0086】
なお、ステップS25で監視している各検知器5の電源系統のうちの少なくとも1つ検知器5の電源系統で電圧許容範囲を超えた場合に、トンネル防災システム1による火災の監視を停止してもよい。
【0087】
ステップS27でチェックランプ試験開始信号の入力がなかった場合には、ステップS23に戻る。
【0088】
ステップS28で、取得した汚損率が所定の閾値以上である場合(汚損が有った場合)、汚損警報を出力し(S34)、取得した汚損率をEEPROM13の2つのアドレスのそれぞれに格納する(S29)。
【0089】
ステップS31でEEPROM13に格納した汚損率にエラーがあったと判断した場合には、この汚損率のエラーがあった検知器5が、EEPROM13の故障信号を防災受信盤7に出力するとともに、故障した検知器5による火災監視を停止する(S35)。
【0090】
なお、ステップS31で監視している各検知器5のEEPROM13のうちの少なくとも1つ検知器5のEEPROM13で故障が発生した場合に、トンネル防災システム1による火災の監視を停止してもよい。
【0091】
次に、防災受信盤7の動作について、
図10~
図12を参照しつつ説明する。
【0092】
防災受信盤7では、まず初期化処理をし(S51)、続いて、火災判断処理をする(S53)。火災判断処理は、検知器5から火災が発生した旨の信号を受信したか否かによってされる。火災判断処理(S53)では監視と判断と決定と信号の送出処理とを行うが、詳細な説明は省略する。
【0093】
続いて、検知器5から電源系統が故障した信号を受信したかを判断し(S55)、検知器5から電源系統が故障した信号を受信しない場合には、チェックランプ試験の時刻が到来したか否か(汚損率を測定する時刻が到来したか否か)を判断する(S57)。
【0094】
チェックランプ試験の時刻が到来した場合には、検知器5を指定して(検知器番号を指定して)、この指定された検知器にチェックランプ試験を行うべき旨の信号を送信する(S59)。
【0095】
続いて、指定した検知器5から試験結果の信号を受信し(S61)、この受信した信号に基づく試験結果(たとえば汚損率)を表示部55で表示する(S63)。
【0096】
続いて、指定した検知器5から故障信号(EEPROM13のエラーがあった旨の信号)を受信したか否かを判断する(S65)。
【0097】
指定した検知器5から故障信号を受信しなかった場合には、別の検知器5の総てにおいて、ステップS59~ステップS65の動作を繰り返す(S67)。なお、ステップS59~ステップS67の一群の動作は、たとえば、比較的短い時間でなされる。
【0098】
続いて、監視領域を25mから50mに変更した検知器5があるか否かと、故障した検知器5の復旧(交換や修理)がされたか否かを判断し(S69)、故障した検知器5の復旧がされた場合には、この故障した検知器5の隣の検知器5の監視範囲の復旧がされたか否かを判断し(S71)、監視範囲を変更した検知器5の監視範囲を復旧する(50mから25mに戻す;S73)。この検知器5の監視範囲を復旧は、監視範囲を復旧すべき検知器5の番号を指定し、検知器5にたとえば手動で防災受信盤7を介して復旧信号を送ることでされる。
【0099】
続いて、監視範囲を復旧した検知器5から復旧信号(切替応答信号)を受信したか否かを判断し(S75)、監視範囲を復旧した検知器5から信号を受信した場合には、監視範囲を復旧した検知器5を示す番号等を表示部55で表示して(S77)、ステップS53に戻る。
【0100】
なお、ステップS55で、電源系統が故障した旨の信号を受信した場合には、この故障した検知器5を示す番号を表示部55で表示する(S101)。
【0101】
続いて、故障した検知器5の両隣にある検知器5に、監視領域を25mから50mに広げる旨の信号を送る(S103)。この信号の送信は自動的に行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0102】
続いて、故障した検知器5の両隣にある検知器5から信号(監視領域を25mから50mに広げる旨の信号を受信した旨の信号)を受信し(S105)、監視範囲を広げた検知器5を示す番号等を表示部55で表示して(S107)、ステップS57の処理をする。
【0103】
また、ステップS57でチェックランプ試験の時刻が到来していないと判断した場合には、ステップS53に戻る。
【0104】
ステップS65で指定した検知器5から故障信号を受信した場合には、ステップS101~S107の処理をし、続いてS67の処理をする。
【0105】
ステップS69で、監視領域を変更した検知器5の復旧等がされていない場合には、ステップS53に戻る。
【0106】
ステップS71で、監視領域を変更した検知器5の監視範囲を復旧がされない場合には、ステップS53に戻る。
【0107】
トンネル防災システム1によれば、監視領域を切り替えることができ所定の間隔をあけてトンネル3内に設置されている複数の検知器5と、複数の検知器5のうちの所定の検知器5Cが故障したときに、この故障した検知器5Cの隣に設置されている検知器5B、5Dの監視領域を拡大する防災受信盤7とを備えているので、所定の検知器5Cが故障したときであっても、保守担当者が現地に急行して保守作業をすることなく、トンネル3内での未監視領域の発生を防ぐことができる。
【0108】
また、トンネルの管理規定等によってトンネル3内を検知器5で2重監視をしている場合であっても、保守担当者が現地に急行して保守作業をすることなく、トンネル3内での2重監視を維持することができる。
【0109】
これによって、所定の検知器5Cが故障したときであっても、交通量の多いときに交通規制をする必要が無くなり、交通量が少ない夜間等にたとえば他の工事とだきあわせて検知器5Cの保守作業をすることができる。
【0110】
また、トンネル防災システム1では、検知器5の監視領域が検知器5の両側に形成されており、検知器5の監視領域が、第1の監視領域もしくは第2の監視領域(第1の監視領域の2倍の長さの第2の監視領域)に設定可能になっており、複数の検知器5のトンネル3への設置における所定の間隔が、第1の監視領域の長さと等しくなっている。
【0111】
そして、総ての検知器5が正常に作動しているときには、総ての検知器5の監視領域を第1の監視領域に設定しておき、1つの検知器5Cが故障したときにこの両隣の検知器5B、5Dの監視領域(故障した側の検知器5C側の監視領域)を、第2の監視領域に設定するので、1つの検知器5Cが故障したときであっても、トンネル3内の総てで2重監視をすることができる(
図5、
図7参照)。
【0112】
また、複数の検知器5における所定の間隔が、第2の監視領域の長さと等しくなっている場合において、総ての検知器5が正常に作動しているときには、総ての検知器5の監視領域を第1の監視領域に設定しておき、1つの検知器5Cが故障したときにこの両隣の検知器5B、5Dの監視領域(故障した側の検知器5C側の監視領域)を、第2の監視領域に設定すれば、1つの検知器5Cが故障したときであっても、トンネル3内に未監視領域が形成される事態を回避することができる(
図15、
図16参照)。
【0113】
また、トンネル防災システム1によれば、検知器5が、受光部9と試験発光部11とメモリ13とを備えて構成されており、検知器5で故障が発生したか否かを、試験発光部11が光(赤外線)を発したときに受光部9で受光した光の強度をメモリ13の複数のアドレスのそれぞれに格納し、この格納後に各アドレスのそれぞれに格納している光の強度の値を比較することで確認されるので、検知器5での故障の発生を的確に検出することができる。
【0114】
また、トンネル防災システム1によれば、検知器5で故障が発生したか否かが、電圧監視処理部47で検出した電圧が許容範囲からはずれている否かを検出することでなされるので、これによっても、検知器5での故障の発生を的確に検出することができる。
【0115】
ここで、変形例に係るトンネル防災システム1aについて
図13を参照しつつ説明する。
【0116】
変形例に係るトンネル防災システム1aは、区画消火部71に対する検知器5の設置位置が、
図1等で示すトンネル防災システム1と異なり、その他の点は、トンネル防災システム1と同様に構成されている。
【0117】
図13で示すトンネル防災システム1aでも、トンネル3内に、トンネル3の長手方向で区切られた複数の区画65が設定されており、複数の区画65毎に水噴霧または空気泡を放射する区画消火部71を複数備えた消火用設備67が設けられている。
【0118】
一方、トンネル防災システム1aでは、複数の検知器5のそれぞれが、トンネル3の長手方向で複数の区画65の境界に設置されている。なお、複数の検知器5のそれぞれが、トンネル3の長手方向で複数の区画65の境界の近傍に設置されていてもよい。
【0119】
トンネル防災システム1aによれば、複数の検知器5のそれぞれが、複数の区画65の境界もしくはこの境界の近傍に設置されているので、火災が発生したときに使用する水噴霧または空気泡の消費量を少なくすることができる。
【0120】
すなわち、
図6で示すトンネル防災システム1のように、トンネル3の長手方向で各区画65の中央部に検知器5が設置されている態様で、たとえば、第2の区画65Bで火災が発生した場合、検知器5B、5Cが火災の発生を検知するが、第2の区画65Bで火災が発生したのかそれとも第3の区画65Cで火災が発生したのかを判別することができない。そこで、第2の区画65Bと第3の区画65Cとに水噴霧または空気泡が放射される。
【0121】
これに対して、
図13で示すトンネル防災システム1aでは、複数の区画65の境界に検知器5が設置されているので、たとえば、第2の区画65Bで火災が発生した場合、検知器5B、5Cによって第2の区画65Bで火災が発生したことを検出することができ、第2の区画65Bのみに水噴霧または空気泡が放射され、水噴霧または空気泡の消費量を少なくすることができる。
【0122】
次に、変形例に係るトンネル防災システム1bについて
図14を参照しつつ説明する。
【0123】
変形例に係るトンネル防災システム1bは、区画消火部71の形態が、
図13で示すトンネル防災システム1aと異なり、その他の点は、トンネル防災システム1aと同様に構成されている。
【0124】
すなわち、トンネル防災システム1bの区画消火部71は、この区画消火部71が設けられている区画65に加えて、区画消火部71が設けられている区画65に隣接している隣接区画にも、水噴霧または空気泡を放射するように構成されている。
【0125】
ここで、トンネル防災システム1bについて、トンネル3の長手方向でお互いが隣接している3つの区画(第2の区画65Bと第3の区画65Cと第4の区画65D)を例に掲げて詳しく説明する。第3の区画65Cには第3の区画消火部71Cが設けられている。
【0126】
第3の区画消火部71Cは、第3の区画65Cだけでなく、第2の区画65Bの一部と第4の区画65Dの一部にも水噴霧または空気泡を放射するように構成されている。
【0127】
第2の区画65Bの一部とは、トンネル3の長手方向で、第3の区画65Cの第2の区画65B側の端から所定の距離だけ第3の区画65Cから離れる側に位置している箇所71Caに至る部位71Cbである。箇所71Caは、第2の区画65B内に位置している箇所であって第2の区画65Bの中央よりも第3の区画65C側に位置している箇所である。
【0128】
第4の区画65Dの一部とは、トンネル3の長手方向で、第3の区画65Cの第4の区画65D側の端から所定の距離だけ第3の区画65Cから離れる側に位置している箇所71Ccに至る部位71Cdである。箇所71Ccは、第4の区画65D内に位置している箇所であって第4の区画65Dの中央よりも第3の区画65C側に位置している箇所である。
【0129】
第2の区画消火部71Bも、第3の区画消火部71Cと同様に、部位71Bb、71Bdにも水噴霧または空気泡を放射するように構成されている。第4の区画消火部71Dも、第3の区画消火部71Cと同様に、部位71Db、71Ddにも水噴霧または空気泡を放射するように構成されている。さらに、他の区画消火部71でも、同様にして水噴霧または空気泡を放射するように構成されている。
【0130】
これにより、第2の区画65Bと第3の区画65Cとの境界の近傍には、水噴霧または空気泡がオーバーラップして放射される部位(オーバーラップ放射部位)71Vaが形成されており、検知器5Bは、トンネル3の長手方向で、オーバーラップ放射部位71Va内に設置されている。
【0131】
また、第3の区画65Cと第4の区画65Dとの境界の近傍には、水噴霧または空気泡がオーバーラップして放射される部位(オーバーラップ放射部位)71Vbが形成されており、検知器5Cは、トンネル3の長手方向で、オーバーラップ放射部位71Vb内に設置されている。
【0132】
さらに、同様にして、他の区画65の境界の近傍にもオーバーラップ放射部位が形成されており、検知器5は、トンネル3の長手方向で、オーバーラップ放射部位内に設置されている。
【0133】
トンネル防災システム1bによれば、区画消火部71が、この区画消火部71が設けられている区画に加えて、隣接区画の区画消火部71が設けられている区画に隣接している部位にも、水噴霧または空気泡を放射するように構成されているので、発生した火災をより確実に消火することができる。
【0134】
たとえば、第3の区画65C内であって検知器5Cの近傍で火災が発生した場合、
図13で示す態様では、検知器5Cの左側近傍の部位への水噴霧または空気泡の放射量が不足するおそれがある。これに対して
図14示す態様では、検知器5Cの左側近傍の部位にも十分な水噴霧または空気泡を放射される。
【0135】
なお、トンネル防災システム1、1a、1bの状態や検知器5の監視領域の変更等を、
図4に示す伝送部61を介してトンネル防災システム1、1a、1bに接続されている外部機器でするようにしてもよい。
【0136】
ここで、トンネル3の坑口73のところにおけるトンネル防災システム1の構成について
図19を参照しつつ説明する。トンネル3は、この長手方向で、坑口73からトンネル3の内部に向かって、坑口区画65(65X)、第1区画65(65A)、第2区画65(65B)、・・・がこの順にならんでいる。トンネル3の長手方向における坑口区画65Xの長さは25mになっており、第1区画65Aや第2区画65B等の長さは50mになっている。
【0137】
検知器5(5X)は、坑口73のところに設置されている。検知器5(5A)は、第1画65Aの中央に設置されており、検知器5(5B)は、第2区画65Bの中央に設置されている。
【0138】
検知器5Xの監視領域は、トンネル3の内側方向にのみ設置されている。検知器5Xの第1の監視領域の長さは25m(矢印X1参照)になっており、検知器5Xの第2の監視領域の長さは50m(矢印Xw1参照)になっている。
【0139】
検知器5Xと検知器5Aとの間における火災の検知について説明する。常態では、検知器5Xは第1の監視領域での監視をしており(矢印X1参照)、検知器5Aも第1の監視領域での監視をしている(矢印A1参照)。
【0140】
常態において、検知器5Xが故障すると、検知器5Aの監視領域(故障した側の検知器5X側の監視領域)を、第2の監視領域に設定する(矢印Aw1参照)。一方、検知器5Aが故障すると、検知器5Xの監視領域を、第2の監視領域に設定する(矢印Xw1参照)。
【0141】
なお、
図19で示すトンネル防災システム1では、第1の区画(50mの区画)65Aに区画消火部(約50mの区画部)71Aを設置しているが、区画消火部71Aをトンネル3の長手方向で2分割し、第1の区画65Aの2つの消火区画部(2つの25mの消火区画部)を設けてもよい。同様にして、第2の区画(50mの区画)65B等において2つの消火区画部を設けてもよい。
【0142】
次に、トンネル3の坑口73のところにおける別のトンネル防災システム1の構成について、
図20を参照しつつ説明する。
図19で示すトンネル防災システム1では、トンネル3の内部へ坑口73から太陽光が入り込むことを想定していないが、
図20で示すトンネル防災システム1では、トンネル3の内部へ坑口73から太陽光が入り込むことを想定している。すなわち、トンネル3の内部へ太陽光が入り込むことで、検知器5が誤作動するおそれを、
図20で示すトンネル防災システム1では回避できるようになっている。
【0143】
図20で示すように、トンネル3は、この長手方向で、坑口73からトンネル3の内部に向かって、第1区画(坑口部の区画)65(65X)、第2区画65(65A)、第2区画65(65B)、・・・がこの順にならんでいる。トンネル3の長手方向における坑口部の区画(坑口区画)65Xの長さは50mになっており、第2区画65Aや第3区画65B等の長さも50mになっている。また、坑口区画65Xは、坑口73側の区画(坑口側区画)65X1と第2区画65A側の区画(反坑口側区画)65X2とで構成されている。坑口側区画65X1や反坑口側区画65X2の長さは25mになっている。
【0144】
検知器5(5X1)は、坑口73のところに設置されている。検知器5(5X2)は、坑口側区画65X1と反坑口側区画65X2との境界81のところ(坑口区画65Xの中央)に設置されている。検知器5(5A)は、第2区画65Aの中央に設置されており、検知器5(5B)は、第3区画65Bの中央に設置されている。
【0145】
検知器5X1の監視領域は、トンネル3の内側方向にのみ設置されている。検知器5X1の第1の監視領域の長さは25m(矢印X1参照)になっており、検知器5X1の第2の監視領域の長さは50m(矢印Xw1参照)になっている。検知器5X2の監視領域も、トンネル3の内側方向にのみ設置されている。検知器5X2の第1の監視領域の長さは25m(矢印X2参照)になっており、検知器5X2の第2の監視領域の長さは50m(矢印Xw2参照)になっている。
【0146】
常態において、検知器5X2が故障すると、検知器5Aの監視領域(故障した側の検知器5X2側の監視領域)を、第2の監視領域に設定し(矢印Aw1参照)、さらに、検知器5X1の監視領域(故障した側の検知器5X2側の監視領域)を、第2の監視領域に設定する(矢印Xw1参照)。
【0147】
なお、検知器5X2が故障した場合に、検知器5Aの監視領域のみを第2の監視領域に設定するか、もしくは、検知器5X1の監視領域を、第2の監視領域に設定するようにしてもよい。
【0148】
また、常態において、検知器5Aが故障すると、検知器5X2の監視領域(故障した側の検知器5A側の監視領域)を、第2の監視領域に設定し(矢印Xw2参照)、さらに、検知器5Bの監視領域(故障した側の検知器5A側の監視領域)を、第2の監視領域に設定する(矢印Bw1参照)。
【0149】
なお、検知器5Aが故障した場合に、検知器5X2の監視領域のみを第2の監視領域に設定するか、もしくは、検知器5Bの監視領域を、第2の監視領域に設定するようにしてもよい。
【0150】
また、検知器5X2の監視領域をトンネル3の坑口73側にも設定できるようにし、常態においては検知器5X2の監視領域をトンネル3の内側方向にのみ設置しておき、検知器5X1が故障した場合に検知器5X2の監視領域をトンネル3の坑口73側にも設定してもよい。
【0151】
なお、
図20で示すトンネル防災システム1では、第1の区画(50mの区画)65Xに区画消火部(約50mの区画部)71Xを設置しているが、
図19で示すトンネル防災システム1で説明した場合と同様にして、区画消火部71Xをトンネル3の長手方向で2分割し、第1の区画65Xの2つの消火区画部を設けてもよい。同様にして、第2の区画(50mの区画)65A等において2つの消火区画部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0152】
1 トンネル防災システム
3 トンネル
5、5B、5C、5D 検知器
7 防災受信盤
9 受光部
11 試験発光部
13 メモリ(EEPROM)
39 電圧監視部
65、65B、65C、65D 区画
67 消火用設備
71、71C 区画消火部
71Cb、71Cd 部位