(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180546
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】照明装置、照明方法、照明システムの設計方法
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20241219BHJP
F21V 9/00 20180101ALI20241219BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241219BHJP
【FI】
F21S2/00 311
F21S2/00 390
F21V9/00
F21Y115:30
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024179417
(22)【出願日】2024-10-11
(62)【分割の表示】P 2021065321の分割
【原出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知枝
(72)【発明者】
【氏名】倉重 牧夫
(57)【要約】
【課題】投影パターンの情報を観察者に適切に認識させる。
【解決手段】照明システム1は、投影面3と、投影面3に情報を含む投影パターン4を投影する照明装置10と、を備える。投影パターン4は、投影面3から離間した所定の観察位置7から観察されることが意図されている。投影パターン4は、投影面3に対し観察位置7から降ろした垂線との交差位置8から一方向に離間した所定の位置9から、交差位置8とは逆側へ一方向に並んだ複数の要素パターン5を有する。投影パターン4の一方向の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度θ
Aは、10°以下である。各要素パターン5の一方向の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度θ
1、θ2、…、θ
nは、5°以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影面と、
前記投影面に情報を含む投影パターンを投影する照明装置と、を備える照明システムであって、
前記投影パターンは、前記投影面から離間した所定の観察位置から観察されることが意図されており、
前記投影パターンは、前記投影面に対し前記観察位置から降ろした垂線との交差位置から一方向に離間した所定の位置から、前記交差位置とは逆側へ前記一方向に並んだ複数の要素パターンを有し、
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、10°以下であり、
各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である、照明システム。
【請求項2】
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、3°以上である、請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、0.1°以上である、請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
各要素パターンの前記一方向に非平行な他方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項5】
各要素パターンの前記一方向に非平行な他方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、0.1°以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項6】
複数の前記要素パターンは、それぞれ同じ情報を含んでいる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項7】
前記照明装置は、コヒーレント光を出射する光源と、前記光源からのコヒーレント光を回折させて前記投影パターンを形成する回折光学素子と、を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項8】
照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、
前記観察位置と前記配置位置との関係に基づいて、前記照明装置から投影される前記投影パターンを決定する工程と、を備える、照明方法。
【請求項9】
照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記照明装置から投影される前記投影パターンを決定する工程と、
前記観察位置と前記投影パターンとの関係に基づいて、前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、を備える、照明方法。
【請求項10】
照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明システムの設計方法であって、 前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記観察位置から観察される観察パターンを決定する工程と、
前記観察位置及び前記観察パターンに基づいて前記投影パターンを決定する工程と、
前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、
前記観察位置と前記配置位置との関係に基づいて、前記照明装置から前記投影面に前記投影パターンが投影されるように、前記照明装置から出射する配光パターンを決定する工程と、
前記配光パターンを形成するよう、前記照明装置が有する回折光学素子を設計する工程と、を備える、照明システムの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明システム、照明方法及び照明システムの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置の光源としてコヒーレント光を発光するレーザー光源を用いることがある。レーザー光源は、一般に、LED(Light Emitting Device)に比べて発光点サイズが小さい上、輝度が高い。また、コヒーレント光を発光するため指向性を高めることができ、十分な量の光を遠方まで到達させることができる。さらに、回折光学素子やレンズアレイ等の各種光学素子やマイクロディスプレイ等を用いることにより、配光を細かく制御することも可能となる。
【0003】
このようなレーザー光源と光学素子とを組み合わせて、特許文献1に記載されているような、所望の投影パターンを投影する照明装置が提案されている。特許文献1に開示された照明装置では、単一光源で生成されたレーザー光をホログラム等の単一の光学素子で回折している。光学素子での回折により、単一光源からの光から所望の投影パターンを形成している。この投影パターンが、照明装置から離間した投影面に投影される。
【0004】
照明装置の光源としてレーザー光源と回折光学素子とを用いる場合、結像光学系を用いることなく、所望の投影パターンを投影することができる。また、照明装置の光源としてレーザー光源を用いる場合、照明装置から投射される光の発散角度を小さくすることができる。このことから、光源としてLEDを用いる場合と比較して、投影面に投影される投影パターンを効率よく鮮明に表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、照明装置によって投影される投影パターンの情報が、投影パターンを観察する観察者に認識されにくいことがある。とりわけ、投影パターンが一方向に延びている場合、当該方向の投影パターンを一目で認識することが困難である。本開示は、投影パターンの情報を観察者に適切に認識させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の照明システムは、
投影面と、
前記投影面に情報を含む投影パターンを投影する照明装置と、を備える照明システムであって、
前記投影パターンは、前記投影面から離間した所定の観察位置から観察されることが意図されており、
前記投影パターンは、前記投影面に対し前記観察位置から降ろした垂線との交差位置から一方向に離間した所定の位置から、前記交差位置とは逆側へ前記一方向に並んだ複数の要素パターンを有し、
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、10°以下であり、
各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である。
【0008】
本開示の照明システムにおいて、前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、3°以上であってもよい。
【0009】
本開示の照明システムにおいて、各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、0.1°以上であってもよい。
【0010】
本開示の照明システムにおいて、各要素パターンの前記一方向に非平行な他方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下であってもよい。
【0011】
本開示の照明システムにおいて、各要素パターンの前記一方向に非平行な他方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、0.1°以上であってもよい。
【0012】
本開示の照明システムにおいて、複数の前記要素パターンは、それぞれ同じ情報を含んでいてもよい。
【0013】
本開示の照明システムにおいて、前記照明装置は、コヒーレント光を出射する光源と、前記光源からのコヒーレント光を回折させて前記投影パターンを形成する回折光学素子と、を有してもよい。
【0014】
本開示の第1の照明方法は、照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、
前記観察位置と前記配置位置との関係に基づいて、前記照明装置から投影される前記投影パターンを決定する工程と、を備える。
【0015】
本開示の第2の照明方法は、照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記照明装置から投影される前記投影パターンを決定する工程と、
前記観察位置と前記投影パターンとの関係に基づいて、前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、を備える。
【0016】
本開示の照明システムの設計方法は、照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明システムの設計方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記観察位置から観察される観察パターンを決定する工程と、
前記観察位置及び前記観察パターンに基づいて前記投影パターンを決定する工程と、
前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、
前記観察位置と前記配置位置との関係に基づいて、前記照明装置から前記投影面に前記投影パターンが投影されるように、前記照明装置から出射する配光パターンを決定する工程と、
前記配光パターンを形成するよう、前記照明装置が有する回折光学素子を設計する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、投影パターンの情報を観察者に適切に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、照明システムの概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、照明システムを投影面の法線方向から観察した拡大平面図である。
【
図3】
図3は、照明システムが投影する投影パターンが観察者に観察される状態を示す図である。
【
図4】
図4は、照明システムが投影する投影パターンの要素パターンが観察者に観察される状態を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4とは異なる方向からの観察において、照明システムが投影する投影パターンの要素パターンが観察者に観察される状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
図1は、本実施の形態の照明システム1の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図1に示されているように、照明システム1は、投影面3と、照明装置10と、を有している。照明システム1において、照明装置10によって投影面3に投影パターン4が投影される。
【0022】
投影面3は、照明装置10から投影される投影パターン4を周囲の観察者から適切に観察されるように表示する表示面として機能する。投影面3は、照明装置10から離間した面である。投影面3は、投影パターン4を適切に表示するよう、平坦面であることが好ましい。
図1に示されているように、本実施の形態において、投影面3は、第1方向d1に所定の幅を有し、第2方向d2に延在している。このような投影面3は、例えば道路や通路の路面の一部である。投影面3の第1方向d1における長さ(幅)及び第2方向d2における長さは、照明装置10の後述する回折光学素子14で回折された光の配光パターン及び投影面3と照明装置10との位置関係によって規定される。また、図示されている例において、第1方向d1と第2方向d2とは、互いに直交している。
【0023】
投影パターン4は、投影面3に表示されて観察者に観察される所定のパターンである。
投影パターン4は、例えば、観察者に観察させるための所定の情報を含んでいる。
図1に示されている例では、投影パターン4は、所定の情報として経路案内等のための複数の矢印を含んでいる。しかしながら、投影パターン4が含む情報は任意であり、矢印等の記号だけでなく、絵柄や画像、文字、数字などを含んでいてもよい。また、所定の情報の表示色やサイズ、文字線種、線幅も任意であり、所定の情報の少なくとも一部を複数色で色分けしてもよい。
【0024】
投影パターン4は、
図3及び
図4に示されているように、所定の観察位置7から観察者に観察されることが意図されている。すなわち、観察位置7において、投影パターン4は適切に観察される。例えば、観察位置7において、観察者は、投影パターン4の全体を観察することができる。投影パターン4は、観察者にとって観察パターンとして観察される。例えば、観察者が投影パターン4の全体を略同一の大きさの観察パターンとして観察する場合、投影パターン4は、観察位置7から離間するにつれて大きくなっている。観察位置7は、投影面3から離間している。観察位置7が投影面3から離間している長さは、例えば、投影面3に直立している人の目の高さや、投影面3上に位置する自動車等の移動体の乗員の目の高さである。観察位置7が投影面3から離間している長さは、例えば70cm以上250cm以下である。
【0025】
投影パターン4は、複数の要素パターン5を有している。複数の要素パターン5は、第2方向d2に並んでいる。とりわけ、複数の要素パターン5が並んでいる方向は、観察者に対して前後方向である。すなわち、
図3及び
図4に示されているように、複数の要素パターン5は、投影面3に対し観察位置7から降ろした垂線との交差位置8から第2方向d2に離間した所定の位置9から、交差位置8とは逆側へ第2方向d2に並んでいる。観察者は、第2方向d2に並んでいる複数の要素パターン5を同時に観察することができる。
【0026】
要素パターン5は、投影パターン4の情報の一部を含んでいる。複数の要素パターン5は、それぞれ異なる情報を含んでいてもよいし、それぞれ同じ情報を含んでいてもよい。
例えば、
図1に示されているように、複数の要素パターン5は、それぞれ経路案内のための矢印のような同じ情報を含んでいてもよい。この場合、同じ経路案内の情報のために、矢印の向きや大きさ等が異なっていてもよい。このように、複数の要素パターン5が同じ情報を含んでいる場合でも、各要素パターン5は、大きさや形状等が異なっていてもよい。
【0027】
投影パターン4は、観察者に観察可能なよう、可視光波長域の波長の光を含んでいる。
具体的には、投影パターン4は、波長が380nm以上700nm以下の光を含んでいる。また、投影パターン4と同時に、照明装置10は、可視光波長域以外の光、例えば赤外線領域の光、紫外線領域の光、ミリ波やテラヘルツ波を照射してもよい。
【0028】
照明装置10は、投影面3に投影パターン4を投影する装置である。本実施の形態において、照明装置10は、設置型の情報表示灯の一部として用いられるものである。ただし、照明装置10は、サーチライトなどの種々の照明灯としても適用可能である。このような照明装置10は、例えば建物の天井面や壁面に設置される。また、照明装置10は、種々の移動体への搭載も考えられ、すなわち自動車や自転車等の車両だけでなく、船舶や飛行機、列車などの移動体への適用も可能である。さらには、照明装置10は、情報を表示可能な端末、例えばコンピュータのディスプレイ、タブレットやスマートフォン等の携帯端末、テレビ等に適用することも可能である。このように照明装置10には、本実施の形態のように所定の位置に設置されるものだけでなく、移動するものも含まれる。とりわけ、照明装置10は、照明装置10によって投影される投影パターン4を観察する観察者自身に携帯されるものであってもよい。照明装置10は、投影面3に適切に投影パターン4を投影することができる所定の配置位置11に配置される。言い換えると、配置位置11に配置された照明装置10は、投影面3に対して適切な向き且つ適切な解像度で、投影パターン4を投影する。
【0029】
図1に示すように、照明装置10は、光源12と、整形光学系13と、回折光学素子14と、を有している。また、照明装置10は、光源12、整形光学系13及び回折光学素子14を収容する筐体を、さらに有していてもよい。以下、照明装置10の各構成要素について、説明する。
【0030】
光源12は、波長及び位相が揃った光であるコヒーレント光を出射する。光源12として、種々の型式の光源を用いることができる。典型的には、コヒーレント光を出射する光源12として、レーザー光を発振するレーザー光源を用いることができる。一具体例として、光源12は、半導体レーザー光源として構成され、例えば回路基板によって支持される。
図1に示されている例では、それぞれ異なる波長の光を出射する3つの光源12が設けられている。光源12が出射する光の波長は、投影パターン4に含まれる光の波長に対応している。例えば、投影パターン4が可視光波長域の光を含むように投影される場合、光源12は、可視光波長域の光を出射する。この場合、典型的には、3つの光源12は、それぞれ赤、緑、青の波長域のコヒーレント光を出射する。また、光源12は、可視光波長域以外の光、例えば赤外線領域の光、紫外線領域の光、ミリ波やテラヘルツ波を出射してもよい。なお、図示されている例に限らず、光源12は、任意の数であってもよい。
【0031】
整形光学系13は、光源12から出射した光を整形する。言い換えると、整形光学系13は、光源12からの光の光軸に直交する断面での形状や、光の放射空間の立体的な形状を整形する。典型的には、整形光学系13は、光の光軸に直交する断面での投影光の断面積を拡大させる。特に、図示された例において、整形光学系13は、光源12から出射した光を拡幅した平行光に整形する。すなわち、整形光学系13は、コリメート光学系として機能する。
図1に示すように、整形光学系13は、コヒーレント光の光路に沿った順で、第1レンズ13a及び第2レンズ13bを有している。第1レンズ13aは、光源12から出射した光を発散光に整形する。第2レンズ13bは、第1レンズ13aで生成された発散光を、平行光に整形し直す。すなわち、第2レンズ13bは、コリメートレンズとして機能する。
図1に示されている例では、複数の整形光学系13が設けられている。整形光学系13は、各光源12に対応して設けられている。このため、整形光学系13は、光源12と同一の数となっている。
【0032】
回折光学素子14は、整形光学系13を通過した光を回折させて、投影パターン4を形成する。回折光学素子14で回折された光が、投影面3に投影される。
図1に示されている例では、複数の回折光学素子14が設けられている。回折光学素子14は、各整形光学系13に対応して設けられている。このため、回折光学素子14は、整形光学系13と同一の数となっている。
【0033】
図2には、1つの回折光学素子14が拡大して示されている。
図2に示されているように、回折光学素子14は、複数の要素回折光学素子15を含んでいる。とりわけ、複数の要素回折光学素子15は、微小な薄板状の部材であり、回折光学素子14において同一平面上に隙間をあけることなく二次元配列されている。要素回折光学素子15は、光を回折させて出射面15aから出射させる。複数の要素回折光学素子15は、それぞれで整形光学系13からの光を回折させることで、配光パターンを形成する。この配光パターンが投影面3に投影されることで、投影パターン4が形成される。各要素回折光学素子15は、投影パターン4が表示する所定の情報の全体を形成してもよいし、所定の情報の一部ずつを形成してもよい。
【0034】
各要素回折光学素子15が、それぞれ対応した投影面3の各照明範囲を正しく照明するように回折特性を設計されていることで、投影面3に投影される投影パターン4が表示する所定の情報を適切に表示することができる。
【0035】
図2に示すように、投影面3の第2方向d2に沿った任意の位置に入射する1つの要素回折光学素子15で回折した光の第1方向d1に沿った照射幅wが、投影面3の第2方向d2に沿った任意の位置に入射する他の1つの要素回折光学素子15で回折した光の第1方向d1に沿った照射幅wと、同一となるように、各要素回折光学素子15の回折特性は調整されている。
【0036】
要素回折光学素子15は、典型的には、ホログラム素子である。要素回折光学素子15としてホログラム素子を用いることで、回折特性を設計しやすくなり、予め定めた位置、サイズおよび形状の情報を投影面3に表示できるようなホログラム素子の設計も比較的容易に行うことができる。
【0037】
要素回折光学素子15をホログラム素子で構成する場合には、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)を用いることで、上述した回折特性を比較的容易に計算機を用いて設計することができる。
【0038】
要素回折光学素子15は、位相型の回折光学素子であってもよいし、振幅型の回折光学素子であってもよい。更に、要素回折光学素子15は、
図1に示された例において透過型として構成されているが、反射型として構成されてもよい。要素回折光学素子15が位相型の回折光学素子として構成される場合、要素回折光学素子15をなす微細構造は、光の入射位置に応じて光路長が変化する凹凸パターン構造や、光の入射位置に応じて屈折率が異なるパターン構造を採用することができる。凹凸パターンからなる微細構造は、フォトリソグラフィー技術を利用した樹脂成形により量産することができる点において好ましい。また、要素回折光学素子15が振幅型の回折光学素子として構成される場合、要素回折光学素子15をなす微細構造は、光の入射位置に応じて透過率が異なる構造を採用することができる。
【0039】
次に、
図3乃至
図5を参照しながら、投影パターン4と観察位置7との関係について説明する。
【0040】
図3及び
図4には、投影面3に平行な方向から、観察者が観察位置7から投影パターン4及び複数の要素パターン5を観察している状態が示されている。図示されている例において、要素パターン5は、経路案内等のための矢印である。とりわけ、図示されている例では、同一の形状及び大きさの矢印である複数の要素パターン5が、一方向(第2方向d2)に並んでいる。
【0041】
観察者は、観察位置7において、投影パターン4の全体を一目で観察することができる。言い換えると、観察者は、観察位置7において、視点を大きく移動させることなく、投影パターン4の全体、すなわち全ての要素パターン5を観察することができる。投影パターン4が十分に小さいため、観察位置7において観察者が投影パターン4の全体を見込む角度、すなわち投影パターン4の第2方向d2の両端のそれぞれと観察位置7との結ぶ線がなす角度θAは、十分に小さくなっている。具体的には、角度θAは、10°以下となっており、好ましくは8°以下となっている。また、投影パターン4は、観察者に容易に観察される程度の大きさを有している。投影パターン4が十分な大きさであるため、角度θAは、十分な大きさとなっている。具体的には、角度θAは、3°以上となっており、好ましくは5°以上となっている。
【0042】
観察者は、観察位置7において、第2方向d2に対して各要素パターン5をそれぞれ角度θ
1、θ
2、…、θ
nで見込んで観察する。言い換えると、観察者は、各要素パターン5の第2方向d2の両端のそれぞれと観察位置7との結ぶ線がなす角度θ
1、θ
2、…、θ
nで見込む。ただし、nは、第2方向d2に並んでいる要素パターン5の数であり、
図4に示されている例では、nは4である。観察者が各要素パターン5を注視することで第2方向d2に視点をほとんど移動させることなく認識することができるよう、各要素パターン5は第2方向d2において十分に小さくなっている。具体的には、角度θ
1、θ
2、…、θ
nは、5°以下となっており、好ましくは4°以下となっている。また、観察者が第2方向d2において各要素パターン5を適切に認識することができるよう、各要素パターン5は第2方向d2において十分に大きくなっている。具体的には、角度θ
1、θ
2、…、θ
nは、0.1°以上となっており、好ましくは1°以上となっている。
【0043】
図5には、
図3及び
図4とは異なる方向、とりわけ投影面3の法線方向から、観察者が観察位置7から複数の要素パターン5を観察している状態が示されている。
図5に示されているように、観察者は、観察位置7において、第1方向d1に対して各要素パターン5をそれぞれ角度φ
1、φ
2、…、φ
nで見込んで観察する。言い換えると、観察者は、各要素パターン5の第1方向d1の両端のそれぞれと観察位置7との結ぶ線がなす角度φ
1、φ
2、…、φ
nで見込む。観察者が各要素パターン5を注視することで第1方向d1に視点をほとんど移動させることなく認識することができるよう、各要素パターン5は第1方向d1において十分に小さくなっている。具体的には、角度φ
1、φ
2、…、φ
nは、5°以下となっており、好ましくは4°以下となっている。また、観察者が第1方向d1において各要素パターン5を適切に認識することができるよう、各要素パターン5は第1方向d1において十分に大きくなっている。具体的には、角度φ
1、φ
2、…、φ
nは、0.1°以上となっており、好ましくは1°以上となっている。
【0044】
次に、照明装置10によって投影面3に投影パターン4を投影する照明方法について説明する。
【0045】
まず、投影面3において投影パターン4が観察されることが想定される人の目の位置である観察位置7を決定する。例えば、通路等において経路案内をすべき位置を決定し、その位置における人の目の高さを決定することで、観察位置7は決定される。次に、投影面3に対する照明装置10の配置位置11を決定する。配置位置11は、観察位置7と独立して決定されてよいが、観察位置7に位置する観察者によって照明装置10から投影面3に投影される光が阻害されない位置とする。そして、観察位置7と配置位置11との関係に基づいて、照明装置10から投影される投影パターン4を決定する。具体的には、投影パターン4は、観察位置7から全体を観察されることができ、投影パターン4の各要素パターン5がそれぞれ認識されることができ、且つ、照明装置10が配置位置11から投影面3に適切な大きさ、角度や形状で投影されることができるように、決定される。このように投影された投影パターン4は、観察位置7において、所定の観察パターンとして観察者に観察される。
【0046】
あるいは、以下のように、照明装置10によって投影面3に投影パターン4を投影してもよい。まず、上述の照明方法と同様に、投影面3において投影パターン4が観察されることが想定される人の目の位置である観察位置7を決定する。次に、照明装置10から投影される投影パターン4を決定する。投影パターン4は、観察位置7から観察されるべき大きさ、角度や形状等に基づいて決定される。そして、観察位置7と投影パターン4との関係に基づいて、投影面3に対する照明装置10の配置位置11を決定する。具体的には、配置位置11は、観察位置7において投影パターン4の全体が観察できるような投影パターン4を照明装置10が投影面3に投影できるように決定される。このように投影された投影パターン4は、観察位置7において、所定の観察パターンとして観察者に観察される。
【0047】
次に、照明装置10によって投影面3に投影パターン4を投影する照明システム1の設計方法について説明する。
【0048】
まず、上述の照明方法と同様に、投影面3において投影パターン4が観察されることが想定される人の目の位置である観察位置7を決定する。次に、観察位置7において観察者によって観察される観察パターンを決定する。そして、観察位置7及び観察パターンに基づいて、照明装置10によって投影面3に投影される投影パターン4を決定する。投影パターン4は、観察位置7から観察されるべき大きさ、角度や形状等に基づいて決定される。その後、投影面3に対する照明装置10の配置位置11を決定する。配置位置11は、観察位置7と独立して決定されてよいが、観察位置7に位置する観察者によって照明装置10から投影面3に投影される光が阻害されない位置とする。そして、観察位置7と配置位置11との関係に基づいて、照明装置10から投影面3に投影パターン4が投影されるように、照明装置10から出射する配光パターンを決定する。その後、この配光パターンを形成するよう、照明装置10が有する回折光学素子14を設計する。すなわち、観察位置7から全体が適切に観察されるような投影パターン4が配置位置11に配置された照明装置10から投影面3に投影されるように、投影パターン4を形成する回折光学素子14が設計される。より詳しくは、回折光学素子14は、光源12からの光を回折することで配置位置11に配置された照明装置10からの光が投影面3において投影パターン4を形成する配光パターンとなるように、設計される。
【0049】
ところで、照明装置によって投影される投影パターンが一方向に延びている場合、当該方向において観察者が投影パターンの情報を認識しにくいことがある。人間の視野範囲には限界があり、視野範囲内でも注視している位置から離れるほど視力は下がる傾向にある。視野は、注視して細かいものまで観察できる中心視野と、見えてはいるが意味のある情報として認識は出来ない周辺視野と、に分けられる。注視している点からこの観察者の中心視野から投影パターンの一部が外れた場合、観察位置において観察者が投影パターンの全体を一目で観察することができないため、または投影パターンの各要素パターンを適切に認識することができないため、投影パターンの情報を認識しにくくなっていると考えられる。一方、投影パターンが観察者の中心視野に収まっている場合、観察者は投影パターンの全体を一目で観察することができる。
【0050】
本実施の形態では、投影パターン4の一方向の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度θAが10°以下である。このような角度範囲が、中心視野の範囲に対応する。このため、観察者は、観察位置7において、投影パターン4の全体を一目で観察することができる。また、要素パターン5の一方向の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度θ1、θ2、…、θnが5°以下である。このため、観察者は、各要素パターン5を注視することで一方向において各要素パターン5を適切に認識することができる。このように、本実施の形態では、投影パターン4の全体及び各要素パターン5を適切に認識させることができる。これにより、投影パターン4の情報を観察者に適切に認識させることができる。
【0051】
投影パターン4の一方向の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度θAが3°以上である。このような投影パターン4は、観察位置7からの観察において、一方向において十分な大きさとなっている。したがって、観察者は、観察位置7から投影パターン4を容易に観察することができる。
【0052】
各要素パターン5の一方向の両端のそれぞれと観察位置7との結ぶ線がなす角度θ1、θ2、…、θnは、0.1°以上である。このような要素パターン5は、観察位置7からの観察において、一方向において十分な大きさとなっている。したがって、観察者は、観察位置7から要素パターン5に含まれる情報を、容易に認識することができる。
【0053】
各要素パターン5の一方向に非平行な他方向、すなわち第2方向d2に非平行な第1方向d1の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度φ1、φ2、…、φnは、5°以下である。このため、観察者は、各要素パターン5を注視することで他方向において各要素パターン5を適切に認識することができる。これにより、投影パターン4の情報を観察者に適切に認識させることができる。
【0054】
各要素パターン5の一方向に非平行な他方向、すなわち第2方向d2に非平行な第1方向d1の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度φ1、φ2、…、φnは、0.1°以上である。このような投影パターン4は、観察位置7からの観察において、他方向において十分な大きさとなっている。したがって、観察者は、観察位置7から投影パターン4を容易に観察することができる。
【0055】
以上のように、本実施の形態の照明システム1は、投影面3と、投影面3に情報を含む投影パターン4を投影する照明装置10と、を備え、投影パターン4は、投影面3から離間した所定の観察位置7から観察されることが意図されており、投影パターン4は、投影面3に対し観察位置7から降ろした垂線との交差位置8から一方向に離間した所定の位置9から、交差位置8とは逆側へ一方向に並んだ複数の要素パターン5を有し、投影パターン4の一方向の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度θAは、10°以下であり、各要素パターン5の一方向の両端のそれぞれと観察位置7とを結ぶ線がなす角度θ1、θ2、…、θnは、5°以下である。このような照明システム1によれば、投影パターン4の全体及び各要素パターン5を観察者に適切に観察させることで、投影パターン4の情報を観察者に適切に認識させることができる。
【0056】
本開示の態様は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 照明システム
3 投影面
4 投影パターン
5 要素パターン
7 観察位置
8 交差位置
10 照明装置
11 配置位置
12 光源
13 整形光学系
14 回折光学素子
15 要素回折光学素子
【手続補正書】
【提出日】2024-10-16
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影面に情報を含む投影パターンを投影する照明装置であって、
前記投影パターンは、前記投影面から離間した所定の観察位置から観察されることが意図されており、
前記投影パターンは、前記投影面に対し前記観察位置から降ろした垂線との交差位置から一方向に離間した所定の位置から、前記交差位置とは逆側へ前記一方向に並んだ複数の要素パターンを有し、
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、10°以下であり、
各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である、照明装置。
【請求項2】
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、3°以上である、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、0.1°以上である、請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
各要素パターンの前記一方向に非平行な他方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
各要素パターンの前記一方向に非平行な他方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、0.1°以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
複数の前記要素パターンは、それぞれ同じ情報を含んでいる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記照明装置は、コヒーレント光を出射する光源と、前記光源からのコヒーレント光を回折させて前記投影パターンを形成する回折光学素子と、を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、
前記観察位置と前記配置位置との関係に基づいて、前記照明装置から投影される前記投影パターンを決定する工程と、を備え、
前記投影パターンを決定する工程において決定される前記投影パターンは、前記投影面に対し前記観察位置から降ろした垂線との交差位置から一方向に離間した所定の位置から、前記交差位置とは逆側へ前記一方向に並んだ複数の要素パターンを有し、
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、10°以下であり、各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である、照明方法。
【請求項9】
照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記照明装置から投影される前記投影パターンを決定する工程と、
前記観察位置と前記投影パターンとの関係に基づいて、前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、を備え、
前記配置位置を決定する工程において決定された配置位置に配置された前記照明装置は、前記投影面に対し前記観察位置から降ろした垂線との交差位置から一方向に離間した所定の位置から、前記交差位置とは逆側へ前記一方向に並んだ複数の要素パターンを有する前記投影パターンを、前記投影面に投影し、
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、10°以下であり、各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である、照明方法。
【請求項10】
照明装置によって投影面に投影パターンを投影する照明システムの設計方法であって、
前記投影パターンが観察される観察位置を決定する工程と、
前記観察位置から観察される観察パターンを決定する工程と、
前記観察位置及び前記観察パターンに基づいて前記投影パターンを決定する工程と、
前記投影面に対する前記照明装置の配置位置を決定する工程と、
前記観察位置と前記配置位置との関係に基づいて、前記照明装置から前記投影面に前記投影パターンが投影されるように、前記照明装置から出射する配光パターンを決定する工程と、
前記配光パターンを形成するよう、前記照明装置が有する回折光学素子を設計する工程と、を備え、
前記投影パターンは、前記投影面に対し前記観察位置から降ろした垂線との交差位置から一方向に離間した所定の位置から、前記交差位置とは逆側へ前記一方向に並んだ複数の要素パターンを有し、
前記投影パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、10°以下であり、各要素パターンの前記一方向の両端のそれぞれと前記観察位置とを結ぶ線がなす角度は、5°以下である、照明システムの設計方法。