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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180549
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ガス系消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A62C35/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024179642
(22)【出願日】2024-10-15
(62)【分割の表示】P 2023138624の分割
【原出願日】2015-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
(57)【要約】
【課題】施工費用の低減、設計の自由度の向上を実現できるガス系消火設備を提供する。
【解決手段】ガス系消火設備は、消火剤ガスが貯蔵された複数のガス貯蔵容器5と、前記複数のガス貯蔵容器5内の消火剤ガスを防護区画1へ消火剤ガスを導入する導入手段としての配管3と、消火剤ガスが導入される防護区画1から消火剤ガスを排出するためのダクト2とを備え、複数の前記ガス貯蔵容器5のうちの一つの容器と別の容器との開弁時期をずらして前記防護区画1へ消火剤ガスが導入される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤ガスが貯蔵された複数の容器と、
複数の前記容器内の消火剤ガスを防護区画へ導入する導入手段と、
消火剤ガスが導入される防護区画から消火剤ガスを排出するためのダクトとを備え、
複数の前記容器のうちの一つの容器と別の容器との開弁時期をずらして前記防護区画へ消火剤ガスが導入される、ガス系消火設備。
【請求項2】
消火剤ガスが貯蔵された複数の容器と、
複数の前記容器内の消火剤ガスを防護区画へ導入する導入手段と、
消火剤ガスが導入される防護区画から消火剤ガスを排出するためのダクトと、
前記導入手段に設けられて消火剤ガスを一定の流量で前記防護区画へ導入する調整弁とを備えた、ガス系消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガス系消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス系消火設備は、たとえば特開2014-108185号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-108185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガス系消火設備では施工コストが高く、かつ、設計の自由度が低いという問題があった。そこで、この発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、施工コストを低下させることが可能で、かつ、設計の自由度が高いガス系消火設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の1つの局面に従ったガス系消火設備は、消火剤ガスが貯蔵された複数の容器と、前記複数の容器内の消火剤ガスを防護区画へ導入する導入手段と、消火剤ガスが導入される防護区画から消火剤ガスを排出するためのダクトとを備え、複数の前記容器のうちの一つの容器と別の容器との開弁時期をずらして前記防護区画へ消火剤ガスが導入される。
【0006】
この発明の別の局面に従ったガス系消火設備は、消火剤ガスが貯蔵された複数の容器と、前記複数の容器内の消火剤ガスを防護区画へ導入する導入手段と、消火剤ガスが導入される防護区画から消火剤ガスを排出するためのダクトと、前記導入手段に設けられて消火剤ガスを一定の流量で前記防護区画へ導入する調整弁とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1に従ったガス消火設備の模式図である。
図2図1中のII-II線に沿った断面図である。
図3】窒素消火時の圧力変化を示すグラフである。
図4】調整圧力を約7MPaとした場合の窒素消火時の圧力変化を示すグラフである。
図5】調整圧力を約5MPaとした場合の窒素消火時の圧力変化を示すグラフである。
図6】調整圧力を約3-4MPaとした場合の窒素消火時の圧力変化を示すグラフである。
図7】実施の形態2に従ったガス消火設備の模式図である。
図8】実施の形態2に従ったガス消火設備ので用いられる調整弁の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰り返さない。また、各実施の形態を組み合わせることも可能である。
【0009】
(実施の形態1)
本発明者は、従来の問題点、すなわち、ガス系消火設備において施工コストが高く、設計の自由度が低いという問題について分析した。その結果、ガス系消火設備のコストおよび設計の自由度に関して、消火剤ガスを導入するための配管、および消火剤ガスを排出するためのダクトのコストが高く、設計の自由度を狭めているという問題を見出した。
【0010】
従来のダクトは、消火剤ガスが導入される防護区域からその防護区域を有する建物の外まで延びている。仮にダクトが従来よりも細くなれば、ダクトに関連する施工コストを低下させることができる。配管を細くすることでも、施工コストを低下させることができる。
【0011】
さらにダクトは建物内で縦および/または横方向に延びるため、建物の構造にも影響を与える。仮に、ダクトが従来よりも細くなれば従来はダクトを配管することができなかった狭い場所にもダクトを配管することができ、設計の自由度が高まる。配管が細くなれば、設計の自由度が高まる。
【0012】
図1から3を参照して、ガス消火設備は、防護区画1内へ消火剤ガスを送る配管3と、防護区画1に接続されて消火剤ガスを排出するためのダクト2とを備える。
【0013】
防護区画1は、ビルなどの建物に設けられる部屋である。電子機器が設けられている部屋では、消火のために水を用いることができず、消火剤ガスを用いて消火を行う。噴射ノズル4から消火ガス剤を防護区画1に放出して、不活性の消火剤ガスを防護区画1に充満させて酸素濃度を減少させることで消火することが可能である。消火剤ガスとしては、窒素、アルゴンなどの不活性ガスおよびハロゲン系のガスが用いられる。
【0014】
ダクト2は、防護区画1の消火剤ガスを防護区画1から放出するためのガス経路である。ダクト2は、中空であり角型および丸型のいずれであってもよい。防護区画1の避圧口1aでダクト2の端部には、ダンパ12が設けられており、ダンパ12が開閉することでダクト2と防護区画1とが連通および遮断される。ダンパ12は実線で記載されている位置から点線で記載されている位置まで回動可能である。この実施の形態では防護区画1に一本のダクト2のみが設けられているが、複数本のダクト2が設けられていてもよい。
【0015】
ダクト2は、入口(避圧口1a)から出口13まで延びている。
配管3は、防護区画1外に配置されているガス貯蔵容器5から防護区画1へ消火剤ガスを送るための経路である。ガス貯蔵容器5には、減圧弁(圧力調整器)50が設けられており、減圧弁50を通過した消火剤ガスが配管3および噴射ノズル4を経由して防護区画1へ放出される。
【0016】
複数のガス貯蔵容器5に集合管17が接続されている。集合管17には、各々のガス貯蔵容器5から消火剤ガスが供給される。集合管17、減圧弁50またはガス貯蔵容器5のいずれかには、ガス貯蔵容器5から集合管17への消火剤ガスの供給を制御する制御部15が接続されている。
【0017】
図3を参照して、曲線101は一つのガス貯蔵容器5内での消火ガス剤の圧力を示す。曲線102は、5本のガス貯蔵容器5を同時に開弁した場合における容器弁17の出口での消火ガス剤の圧力を示す。曲線103は、5本のガス貯蔵容器5を同時に開弁した場合における噴射ノズル4での消火ガス剤の圧力を示す。点105は、曲線102における最大圧力を示す。
【0018】
曲線111から115は、第1から第5のガス貯蔵容器5を開弁した場合における容器弁としての減圧弁50の出口での消火ガス剤の圧力を示す。曲線104は曲線111から115で示す消火剤の圧力の合計により構成される減圧弁50の出口での消火剤ガスの圧力を示す。
【0019】
点105は曲線102における最大圧力を示しており、この最大圧力を考慮して避圧口1aの大きさを決定する。すなわち点105で示す最大圧力が大きければ避圧口の径、およびダクト2の径を大きくする必要があり、建設コストが増大する。5本のガス貯蔵容器5を同時に開弁すれば、各々のガス貯蔵容器5から放出される消火剤ガスのピーク圧力が重なる。その結果、最大圧力が大きくなり、避圧口1aおよびダクト2の径が大きくなる。これに対して、5本のガス貯蔵容器5の開弁時期をずらすことにより、曲線111から115で示す各ガス貯蔵容器5から放出される消火剤ガスのピーク圧力が重なることを防止できる。その結果、曲線104における最大圧力は、曲線105における最大圧力よりも小さくなる。したがって、避圧口1aおよびダクト2を小型化することが可能となる。さらに、配管3も細くすることができる。
【0020】
図3では、流量制御(圧力制御)が安定していない減圧弁50を示している。流量制御が安定していないため、曲線102で示す減圧弁50の出口圧力も安定していない。
【0021】
図4から図6は、流量制御(圧力制御)が安定している減圧弁50を用いた例を示している。図4の曲線121は、5本のガス貯蔵容器5を時期をずらして開弁した場合における集合管17の出口での消火ガス剤の圧力を示す。曲線122は、5本のガス貯蔵容器5を時期をずらして開弁した場合における噴射ノズル4での消火ガス剤の圧力を示す。
【0022】
図5の曲線131は、5本のガス貯蔵容器5を時期をずらして開弁した場合における集合管17の出口での消火ガス剤の圧力を示す。曲線132は、5本のガス貯蔵容器5を時期をずらして開弁した場合における噴射ノズル4での消火ガス剤の圧力を示す。
【0023】
図6の曲線141は、5本のガス貯蔵容器5を時期をずらして開弁した場合における減圧弁50の出口での消火ガス剤の圧力を示す。
【0024】
図4から6で示すように、流量制御(圧力制御)が安定している減圧弁50では、出口圧力が安定している。5本のガス貯蔵容器5を時期をずらして開弁するため、集合管50の出口圧力はほぼ一定となっている。
【0025】
なお、図4から図6では、5秒ごとにガス貯蔵容器5を開弁しているが、この開弁のタイミングは必ずしも5秒には限られない。さらに、各ガス貯蔵容器5は均等な時間間隔で開弁されているが、不均等な時間間隔で各ガス貯蔵容器5が開弁されてもよい。開弁タイミングは制御部15で決定することができる。
【0026】
すなわち、ガス系消火設備は、消火剤ガスが貯蔵された複数のガス貯蔵容器5と、前記複数のガス貯蔵容器5内の消火剤ガスを防護区画1へ導入する導入手段としての配管3と、消火剤ガスが導入される防護区画1から消火剤ガスを排出するためのダクト2とを備え、複数の前記ガス貯蔵容器5のうちの一つの容器と別の容器との開弁時期をずらして前記防護区画1へ消火剤ガスが導入される。
【0027】
(実施の形態2)
図7で示すように、実施の形態2では、配管3に調整弁16が設けられている点で、実施の形態1と異なる。調整弁16は減圧弁50とは別に設けられており、出口側のガス消火剤の圧力を一定にする働きを有する。減圧弁50は、この実施の形態では、圧力を調整
する機能を有していないものであってもよい。すなわち、減圧弁50は、ガス貯蔵容器5を開閉する機能のみを有していてもよい。
【0028】
配管3は、図7では一本のみ示されているが、集合管17から減圧弁50までの間には配管3は三本存在している。この三本の配管3の各々に調整弁16が設けられていてもよい。
【0029】
図8で示すように、調整弁16は、筐体21、筐体21に設けられた入口流路22、筐体21内に設けられた入口側バネ23、筐体21内の設けられた出口側バネ24、入口側バネ23と出口側バネ24とで付勢される可動体25、出口側バネ24が封入され、可動体25が矢印16a,16bで示す方向に移動可能なシリンダ26、消火剤ガスが流れる筐体内流路27、筐体内流路27と連通した出口側流路28、および仕切部材29とを有する。可動体25は、仕切部材29により形成された開口29aに隣接する入口側弁25cと、出口側に配置された出口側弁25aと、出口側弁25aと入口側弁25cとを接続するシャフト25bとを有する。
【0030】
調整弁16に流入する消火剤ガスの圧力が高くなると、消火剤ガスの流速も速くなる。その結果、可動体25は矢印16aで示す方向に移動する。入口側弁25cが開口29aに近くなり、開口29aでの圧力損失が大きくなり消火剤ガスの流量が低下する。
【0031】
調整弁16に流入する消火剤ガスの圧力が低くなると、消火剤ガスの流速も遅くなる。その結果、可動体25は矢印16bで示す方向に移動する。入口側弁25cが開口29aから遠ざかり、開口29aでの圧力損失が小さくなり消火剤ガスの流量が増大する。
【0032】
すなわち、ガス系消火設備は、消火剤ガスが貯蔵された複数のガス貯蔵容器5と、消火剤ガスを防護区画1へ導入する導入手段としての配管3と、消火剤ガスが導入される防護区画1から消火剤ガスを排出するためのダクト2と、配管3に設けられて消火剤ガスを一定の流量で前記防護区画1へ導入する調整弁16とを備える。減圧弁50の下流側に調整弁16を設けることにより、減圧弁50の出口側で圧力が変動したとしても、この圧力の変動を調整弁16が平滑化することができる。そのため、複数のガス貯蔵容器5を一度に開弁しても、調整弁16によりピーク圧力が平滑化される。
【0033】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、ガス系消火設備の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 防護区画、1a 避圧口、2 ダクト、3 配管、4 噴射ノズル、5 ガス貯蔵容器、12 ダンパ、13 出口、15 制御部、16 調整弁、17 集合管、50 減圧弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-11-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤ガスが貯蔵された複数の容器と、前記複数の容器の各々に設けられた減圧弁とを備え、
前記複数の容器のうちの一つの容器の減圧弁と別の容器との減圧弁の開弁時期をずらすことにより、前記一つの容器の減圧弁と前記別の容器の減圧弁とから放出される消火剤ガスのピーク圧力が重なることを防止して防護区画へ消火剤ガスが導入され、前記防護区画には、避圧口および前記避圧口に設けられたダクトが設置されている、ガス系消火設備。