(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180602
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】第XA因子及び誘導体を調製するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241219BHJP
C07K 14/745 20060101ALI20241219BHJP
C07K 5/09 20060101ALI20241219BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20241219BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20241219BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20241219BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241219BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20241219BHJP
C07K 14/765 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241219BHJP
C12N 9/50 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/745
C07K5/09
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/00
C12N15/57
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12N15/62 Z
C07K1/14
C07K19/00
C07K14/765
C12N15/12
C12N9/50
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024181226
(22)【出願日】2024-10-16
(62)【分割の表示】P 2022507622の分割
【原出願日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】62/884,652
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/990,885
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ゲンミン ルー
(57)【要約】
【課題】第XA因子及び誘導体を調製するための組成物及び方法の提供。
【解決手段】本開示は、第Xa因子タンパク質及びその誘導体を生成するために使用され得るタンパク質配列に関する。タンパク質配列は、第Xa因子軽鎖部分、重鎖触媒ドメイン部分及び重鎖触媒ドメイン部分に対してC末端にある活性化ペプチドを含む。活性化ペプチド(AP)が第Xa因子タンパク質又は誘導体の重鎖のC末端部に融合される場合、結果として生じるタンパク質は、より効率的に発現され得、及び重鎖への活性化ペプチド(AP)の付加は、タンパク質の活性に影響を及ぼさないことが発見されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月8日に提出された米国仮特許出願第62/884,652号明細書及び2020年3月17日に提出された米国仮特許出願第62/990,885号明細書の、米国特許法第119(e)条の下での利益を主張し、これらのそれぞれの内容は、その全体が参照により本開示に援用される。
【背景技術】
【0002】
組換え第Xa因子(fXa)及びアンデキサネットアルファなどのその誘導体は、宿主哺乳動物細胞株から作製することができる。アンデキサネットアルファ(又は単にアンデキサネット)は、リバロキサバン又はアピキサバンにより治療されている患者について、致命的な又はコントロールできない出血により抗凝固の打ち消しが必要とされる場合に米国及び欧州において承認された医薬品である。リバロキサバン及びアピキサバンは、ベトリキサバン及びエドキサバン並びに低分子量ヘパリン(LMWH)も含む抗凝固(抗凝血)薬のグループである第Xa因子阻害剤である。アンデキサネットは、第Xa因子(fXa)の修飾組換え誘導体である。アンデキサネットは、デコイ分子として作用し、阻害剤に結合し、fXaのその阻害を再現し、従ってfXaの通常の凝固活性を回復させる。
【0003】
第Xa因子及びアンデキサネットは、2本の鎖間のジスルフィド結合によって連結される2本の鎖を有する。組換え天然型fXaは、通常、第1に不活性型前駆体第X因子(fX)の発現、その後、生理的酵素(例えば、FVIIa/TF、FIXa/FVIIIa)又は非生理的活性化因子(例えば、RVV-X)により、発現されたfXをfXaに活性化する第2のステップによって作製される。fXとfXaとの間の違いは、fX重鎖のN末端の活性化ペプチド(AP)の52アミノ酸残基の除去にある。典型的な産生細胞株、例えばCHO細胞は、APを処理し、除去することができないため、活性化ステップは、不活性型fXを天然型fXaに変換するために必要である。
【0004】
対照的に、アンデキサネットは、収集された細胞培養液から直接精製することができる完全に処理された機能的な分子として直接発現される。これは、重鎖及び軽鎖間において、CHO細胞によって処理することができる-RKRRKR-リンカーを形成するために、-RKR-トリペプチドにより天然型fX中のAP配列を置き換えることによって実現される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、2本鎖活性化第Xa因子タンパク質又はその誘導体を調製するための組成物及び方法を提供する。活性化ペプチド(AP)が第Xa因子タンパク質又は誘導体の重鎖のC末端部に融合される場合、結果として生じるタンパク質は、より効率的に発現され得、及び重鎖への活性化ペプチド(AP)の付加は、タンパク質の活性に影響を及ぼさないことが発見されている。対照的に、タンパク質の他の部分に活性化ペプチドを追加することは、発現を増強するのに有用でない(例えば、軽鎖のC末端に付加される場合)か、又はさらに製造に課題を与える(例えば、重鎖のN末端に付加される場合)。さらに、FX重鎖のC末端20アミノ酸残基(ベータペプチド)の除去が第X因子のタンパク質発現に悪影響を与えないという一般的な知識に反して(例えば、Branchini et al,J Thromb Haemost 2015;13:1468-74及びFerrarese et al.,Thrombosis Res.2019,173:4-11を参照されたい)、そのような大きい切り詰めがfXa及び誘導体の効率的な発現のために所望されないことが本明細書において発見されている。さらに驚くべきことに、FXa及びその誘導体のC末端にAPを融合させることにより、タンパク質発現に対するC末端切り詰めの影響をなくすことができる。
【0006】
一実施形態において、本開示は、タンパク質であって、
LC-L1-HC-L2-AP (I)
(式中、
LCは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、
L1は、プロテアーゼ認識部位を含むペプチドリンカーであり、
HCは、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、
L2は、不在であるか、又はプロテアーゼによって処理され得ないペプチドリンカーであり、及び
APは、活性化ペプチドを含む)
の式(I)のアミノ酸配列を含み、L1がプロテアーゼによって処理される場合、ジスルフィド架橋によって接続される別々の鎖上にLC及びHCを含む2本鎖ポリペプチドを産生することが可能であり、2本鎖ポリペプチドは、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である、タンパク質を提供する。
【0007】
別の実施形態において、タンパク質であって、
HSA-L2-LC-L1-HC (II)
(式中、
HSAは、ヒト血清アルブミン(HSA)又はHSAに対して少なくとも85%の配列同一性を有する変異体であり、
L1は、プロテアーゼ認識部位を含むペプチドリンカーであり、
L2は、不在であるか、又はプロテアーゼによって処理され得ないペプチドリンカーであり、
LCは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、及び
HCは、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む)
の式(II)のアミノ酸配列を含み、L1がプロテアーゼによって処理される場合、別々の鎖上にLC及びHCを含む2本鎖ポリペプチドを産生することが可能であり、2本鎖ポリペプチドは、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である、タンパク質が提供される。
【0008】
別の実施形態において、タンパク質であって、
LC-L1-HC-L2-HSA (III)
(式中、
HSAは、ヒト血清アルブミン(HSA)又はHSAに対して少なくとも85%の配列同一性を有する変異体であり、
L1は、プロテアーゼ認識部位を含むペプチドリンカーであり、
L2は、不在であるか、又はプロテアーゼによって処理され得ないペプチドリンカーであり、
LCは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、及び
HCは、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む)
の式(II)のアミノ酸配列を含み、L1がプロテアーゼによって処理される場合、別々の鎖上にLC及びHCを含む2本鎖ポリペプチドを産生することが可能であり、2本鎖ポリペプチドは、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である、タンパク質が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態において、LCは、配列番号2のアミノ酸残基1~45を含まない。いくつかの実施形態において、L2は、不在である。
【0010】
いくつかの実施形態において、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む第1の断片及び第1の断片のC末端側にあり、且つ活性化ペプチドを含む第2の断片を含む重鎖とを含む2本鎖ポリペプチドであって、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である2本鎖ポリペプチドも提供される。
【0011】
ヒト血清アルブミン(HSA)又はHSAに対して少なくとも85%の配列同一性を有する変異体を含む第1の断片及び配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む第2の断片を含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖とを含む2本鎖ポリペプチドであって、第Xa因子阻害剤に結合することが可能であり、軽鎖は、配列番号2のアミノ酸残基1~45を含まない、2本鎖ポリペプチドも提供される。
【0012】
ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドでトランスフェクトされる細胞及び方法も、いくつかの実施形態において、2本鎖ポリペプチドを調製するために提供される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
タンパク質であって、
LC-L1-HC-L2-AP (I)
(式中、
LCは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、
L1は、プロテアーゼ認識部位を含むペプチドリンカーであり、
HCは、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、
L2は、不在であるか、又はプロテアーゼによって処理され得ないペプチドリンカーであり、及び
APは、活性化ペプチドを含む)
の式(I)のアミノ酸配列を含み、前記L1が前記プロテアーゼによって処理される場合、別々の鎖上に前記LC及び前記HCを含む2本鎖ポリペプチドを産生することが可能であり、前記2本鎖ポリペプチドは、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である、タンパク質。
(項目2)
前記プロテアーゼは、フューリンである、項目1に記載のタンパク質。
(項目3)
前記L1は、RKR又はRKRRKR(配列番号7)のアミノ酸配列を含む、項目2に記載のタンパク質。
(項目4)
L2は、長さが0~50アミノ酸残基である、項目1~3のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目5)
L2の前記アミノ酸残基の少なくとも50%は、Gly又はSerである、項目4に記載のタンパク質。
(項目6)
前記活性化ペプチドは、グリコシル化部位を含む、項目1~5のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目7)
前記活性化ペプチドは、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子若しくはプロテインCの活性化ペプチドであるか、又は第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子若しくはプロテインCの活性化ペプチドに対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目1~5のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目8)
前記活性化ペプチドは、配列番号12、31、32、33、39若しくは40のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号12、31、32、33、39若しくは40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1~5のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目9)
前記LCのN末端側にヒト血清アルブミン(HSA)をさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目10)
前記HSAは、配列番号15のアミノ酸配列を含む、項目9に記載のタンパク質。
(項目11)
LCは、配列番号2のアミノ酸残基1~45を含まない、項目9に記載のタンパク質。
(項目12)
前記産生された2本鎖ポリペプチドは、野生型fXaと比較して、集まってプロトロンビン複合体になる低下した能力を有する、項目1~11のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目13)
配列番号2のアミノ酸残基6~39を含まない、項目1~12のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目14)
前記LCは、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号6に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目13に記載のタンパク質。
(項目15)
前記産生された2本鎖ポリペプチドは、野生型ヒト第Xa因子と比較して低下した触媒活性を有する、項目1~14のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目16)
前記HCは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1~15のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目17)
前記HCは、配列番号11のアミノ酸配列を含む、項目1~16のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目18)
配列番号2のアミノ酸残基436~448を含まない、項目1~17のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目19)
配列番号2のアミノ酸残基434~448を含まない、項目1~18のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目20)
タンパク質であって、
HSA-L2-LC-L1-HC (II)
(式中、
HSAは、ヒト血清アルブミン(HSA)又は前記HSAに対して少なくとも85%の配列同一性を有する変異体であり、
L1は、プロテアーゼ認識部位を含むペプチドリンカーであり、
L2は、不在であるか、又はプロテアーゼによって処理され得ないペプチドリンカーであり、
LCは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、及び
HCは、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む)
の式(II)のアミノ酸配列を含み、前記L1が前記プロテアーゼによって処理される場合、別々の鎖上に前記LC及び前記HCを含む2本鎖ポリペプチドを産生することが可能である、前記2本鎖ポリペプチドは、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である、タンパク質。
(項目21)
前記HSAは、配列番号15のアミノ酸配列を含む、項目20に記載のタンパク質。
(項目22)
LCは、配列番号2のアミノ酸残基1~45を含まない、項目20に記載のタンパク質。
(項目23)
L2は、不在である、項目22に記載のタンパク質。
(項目24)
前記プロテアーゼは、フューリンである、項目22又は23に記載のタンパク質。
(項目25)
前記L1は、RKR又はRKRRKR(配列番号7)のアミノ酸配列を含む、項目24に記載のタンパク質。
(項目26)
前記HCのC末端側に融合された活性化ペプチド(AP)をさらに含む、項目20~25のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目27)
前記活性化ペプチドは、グリコシル化部位を含む、項目26に記載のタンパク質。
(項目28)
前記活性化ペプチドは、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子若しくはプロテインCの活性化ペプチドであるか、又は第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子若しくはプロテインCの活性化ペプチドに対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目26又は27に記載のタンパク質。
(項目29)
前記活性化ペプチドは、配列番号12、31、32、33、39若しくは40のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号12、31、32、33、39若しくは40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目28に記載のタンパク質。
(項目30)
前記LCは、配列番号13のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目20~29のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目31)
前記産生された2本鎖ポリペプチドは、野生型ヒト第Xa因子と比較して低下した触媒活性を有する、項目20~30のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目32)
前記HCは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目31に記載のタンパク質。
(項目33)
前記HCは、配列番号11のアミノ酸配列を含む、項目32に記載のタンパク質。
(項目34)
シグナル又はシグナル/プロペプチドをさらに含む、項目1~33のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目35)
前記シグナル又はシグナル/プロペプチドは、配列番号34~37からなる群から選択される、項目34に記載のタンパク質。
(項目36)
配列番号25のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(項目37)
配列番号26のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(項目38)
配列番号42のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(項目39)
配列番号43のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(項目40)
項目1~39のいずれか一項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目41)
項目40に記載のポリヌクレオチドを含む細胞。
(項目42)
前記プロテアーゼをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、項目41に記載の細胞。
(項目43)
タンパク質を調製する方法であって、項目41又は42に記載の細胞を培養することと、培養物から2本鎖タンパク質を回収することとを含む方法。
(項目44)
配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む第1の断片及び前記第1の断片のC末端側にあり、且つ活性化ペプチドを含む第2の断片を含む重鎖とを含む2本鎖ポリペプチドであって、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である2本鎖ポリペプチド。
(項目45)
ヒト血清アルブミン(HSA)又は前記HSAに対して少なくとも85%の配列同一性を有する変異体を含む第1の断片及び配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む第2の断片を含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む重鎖とを含む2本鎖ポリペプチドであって、第Xa因子阻害剤に結合することが可能であり、前記軽鎖は、配列番号2のアミノ酸残基1~45を含まない、2本鎖ポリペプチド。
(項目46)
項目1~39のいずれか一項に記載のタンパク質を前記プロテアーゼで処理することによって得ることができる2本鎖ポリペプチド。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2A】C05、C007、C08及びC10についての発現及び活性試験の結果を示す。
【
図3】基準としてアンデキサネット前駆体(AnXa)、C08及びC10を使用する、C12~C14についての発現及び活性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.定義
範囲を含め、すべての数値的な指定、例えばpH、温度、時間、濃度及び分子量は、0.1きざみで(+)又は(-)に変動する近似値である。常に明示されるわけではないが、すべての数値的な指定の前に用語「約」が置かれることが理解されるべきである。常に明示されるわけではないが、本明細書に記載される試薬は、単なる例示であり、そのような試薬の均等物は、当技術分野において知られていることも理解されるべきである。
【0015】
「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、区別なく使用され、最も広い意味で2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体又はペプチド模倣薬といった化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合によって連結され得る。別の実施形態において、サブユニットは、他の結合、例えばエステル、エーテル等によって連結され得る。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質又はペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限は設定されない。本明細書において使用されるように、「アミノ酸」という用語は、天然型及び/若しくは非天然型又は合成アミノ酸を指し、グリシン並びにD及びL光学異性体の両方、アミノ酸類似体並びにペプチド模倣薬を含む。天然に発生するアミノ酸の1文字及び3文字の略語を下記に示す。3つ以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短い場合、オリゴペプチドと一般に呼ばれる。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは、ポリペプチド又はタンパク質と一般に呼ばれる。
【0016】
「第Xa因子」、又は「fXa」、又は「fXaタンパク質」は、不活性型第X因子(fX)から産生される、血液凝固経路におけるセリンプロテアーゼを指す。第Xa因子は、内因系Xaseとして知られている複合体におけるその補因子、第VIIIa因子と共に第IXa因子によるか、又は外因系Xaseとして知られている複合体におけるその補因子、組織因子と共に第VIIa因子によるかのいずれかで活性化される。fXaは、第Va因子と膜結合プロトロンビナーゼ複合体を形成し、プロトロンビナーゼ複合体においてプロトロンビンのトロンビンへの変換を触媒する有効成分となる。トロンビンは、フィブリノーゲンのフィブリンへの変換を触媒する酵素であり、これは、最終的に血餅形成を導く。従って、fXaの生物学的活性は、ときに本明細書において「プロコアグラント活性」と称される。
【0017】
第Xa因子は、2本の鎖間の1つのジスルフィド結合によって連結される2本鎖の分子である。軽鎖(LC)は、139アミノ酸(配列番号2のアミノ酸1~139)残基を有し、短い芳香族スタック(AS)(配列番号2のアミノ酸40~45)を含むγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)リッチドメイン(配列番号2のアミノ酸1~45)、その後に続く2つの上皮成長因子(EGF)様ドメイン(EGF1:配列番号2のアミノ酸46~84、EGF2:アミノ酸85~128)を含有する。
【0018】
活性化前の重鎖(HC)は、306アミノ酸を有し、52アミノ酸活性化ペプチド(AP:配列番号2のアミノ酸143~194)、その後に続く触媒ドメイン(配列番号2のアミノ酸195~448)を含有する。キモトリプシン番号でのH57-D102-S195に対する触媒三残基均等物は、fX配列(配列番号2)においてHis236、Asp282及びSer379に位置する(配列番号2のアミノ酸236、282及び379)。重鎖は、セリンプロテアーゼ、トリプシン様活性部位及びグリコシル化されるN末端活性化ペプチドを含有する。重鎖は、少なくとも3つの形態、α、β及びγを有し、これらは、重鎖におけるC末端ペプチドの切断により異なる。
【0019】
ヒト第X因子(「fX」)をコードするヌクレオチド配列は、GenBank、「NM_000504」に見出すことができる。fXの対応するアミノ酸配列及びドメイン構造は、Leytus et al,Biochemistry,1986,25:5098-5102に記載されている。成熟fXのドメイン構造は、Venkateswarlu,D.et al,Biophysical Journal,2002,82:1190-1206にも記載されている。重鎖の最初の52残基の触媒による切断と同時に、fXは、fXa(配列番号3)に活性化される。FXaは、翻訳後にグルタミン酸残基がガンマ-カルボキシルグルタミン酸になる軽鎖及び重鎖を含有する。軽鎖の最初の45アミノ酸残基は、11の翻訳後修飾γ-カルボキシグルタミン酸残基(Gla)を含有するため、Glaドメインと呼ばれる。Glaドメインは、短い(6アミノ酸残基)芳香族スタック配列も含有する。キモトリプシン消化は、1~44残基を選択的に除去し、GlaドメインのないfXaをもたらす。fXaのセリンプロテアーゼ触媒ドメインは、C末端の重鎖に位置する。fXaの重鎖は、トロンビン、トリプシン及び活性化プロテインCなどの他のセリンプロテアーゼに対して非常に相同性である。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
「天然型fXa」又は「野生型fXa」は、血漿中に天然に存在するか、又はその本来の無修飾の形態で単離されるfXaを指し、fXaは、プロトロンビンを活性化する生物学的活性を処理し、そのため、血餅の形成を促進する。この用語は、組織サンプルから単離される天然に発生するポリペプチド及び組換えで産生されるfXaを含む。「活性型fXa」は、プロトロンビンを活性化する生物学的活性を有するfXaを指す。「活性型fXa」は、プロコアグラント活性を保持する天然型fXa又は修飾fXaであり得る。
【0024】
「fXa誘導体」、又は「修飾fXa」、又は「第Xa因子タンパク質の誘導体」は、修飾されているが、それでもなお直接又は間接的に第Xa因子阻害剤に結合することができるfXaタンパク質を指す。
【0025】
誘導体は、修飾活性部位及び/又は修飾Glaドメインを有し得る。追加の修飾も想定される。そのような修飾は、1つ以上の以下の手段で作製され得ることが想定される:配列からの1つ以上のアミノ酸の欠失、1つ以上の異なるアミノ酸残基による1つ以上のアミノ酸残基の置換及び/或いは1つ以上のアミノ酸側鎖又はその「C」若しくは「N」末端の操作。
【0026】
用語「活性部位」は、化学反応が生じる酵素又は抗体の一部を指す。「修飾活性部位」は、化学反応性又は特異性が増加又は減少した活性部位を提供するために構造的に修飾された活性部位である。活性部位は、実際の部位だけでなく、活性部位を含有するドメインも含むことが想定される。活性部位の例は、235~488アミノ酸残基を含むヒト第X因子の触媒ドメイン及び195~488アミノ酸残基を含むヒト第Xa因子の触媒ドメインを含むが、これらに限定されない。キモトリプシン番号でのH57-D102-S195に対する触媒三残基均等物は、His236、Asp282及びSer379に位置する。修飾活性部位の例は、個々の又は組み合わせの触媒三残基を含むが、これらに限定されない。ある修飾は、修飾活性部位Ser379Alaを有するfXa誘導体に関する。追加の例は、Arg306、Glu310、Arg347、Lys351、Lys414又はArg424位での少なくとも1つのアミノ酸置換による、195~448アミノ酸残基を含むヒト第Xa因子の触媒ドメインに対する修飾を含む。
【0027】
用語「第Xa因子阻害剤」又は「第Xa因子の阻害剤」は、インビトロ及び/又はインビボにおいてプロトロンビンのトロンビンへの変換を触媒する凝固因子Xaの活性を直接又は間接的に阻害することができる化合物を指す。既知のfXa阻害剤の例は、限定を伴うことなく、エドキサバン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、ビオチン化イドラパリヌクス、エノキサパリン、フラグミン、NAP-5、rNAPc2、組織因子経路阻害剤、DX-9065a(例えば、Herbert,J.M.,et al,J Pharmacol Exp Ther.1996 276(3):1030-8に記載されている)、YM-60828(例えば、Taniuchi,Y.,et al,Thromb Haemost.1998 79(3):543-8に記載されている)、YM-150(例えば、Eriksson,B.I.et.al,Blood 2005;106(11),Abstract 1865に記載されている)、アピキサバン、リバロキサバン、PD-348292(例えば、Pipeline Insight:Antithrombotics-Reaching the Untreated Prophylaxis Market,2007に記載されている)、オタミキサバン、ラザキサバン(DPC906)、BAY59-7939(例えば、Turpie,A.G.,et al,J.Thromb.Haemost.2005,3(11):2479-86に記載されている)、エドキサバン(例えば、Hylek EM,Curr Opin Invest Drugs 2007 8(9):778-783に記載されている)、LY517717(例えば、Agnelli,G.,et al,J.Thromb.Haemost.2007 5(4):746-53に記載されている)、GSK913893、ベトリキサバン及びその誘導体を含む。低分子量ヘパリン(「LMWH」)も第Xa因子阻害剤とみなされる。
【0028】
一実施形態において、本発明の誘導体は、直接又は間接的に第Xa因子阻害剤に結合する。用語「結合すること」、「結合する」、「認識」又は「認識する」は、本明細書において使用されるように、例えばハイブリダイゼーションアッセイを使用して検出され得る、分子間の相互作用を含むことを意味する。この用語は、分子間の「結合」相互作用を含むことも意味する。相互作用は、例えば、本質的に、タンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、タンパク質-小分子又は小分子-核酸であり得る。結合は、「直接的」又は「間接的」であり得る。「直接的な」結合は、分子間の直接の物理的接触を含む。分子間の「間接的な」結合は、同時に1つ以上の中間分子との直接の物理的接触を有する分子を含む。例えば、本発明の誘導体は、低分子量ヘパリン及び第Xa因子の他の間接的な阻害剤に間接的に結合し、実質的に中和することが想定される。この結合は、相互作用している分子を含む「複合体」の形成をもたらすことがある。「複合体」は、共有結合性又は非共有結合性の結合、相互作用又は力によって互いに合わされた2つ以上の分子の結合を指す。
【0029】
fXaの阻害剤の活性を「中和する」、「打ち消す」若しくは「反作用する」又は同様の語句は、fXa阻害剤の第Xa因子阻害機能又は抗凝固機能を阻害又は遮断することを指す。そのような語句は、インビトロ及び/又はインビボにおけるfXa阻害剤活性の機能の部分的な阻害若しくは遮断又はほとんど若しくはすべての阻害若しくは遮断を指す。これらの用語は、fXa阻害剤依存性の薬理学的又は代替マーカーの少なくとも約20%の中和作用も指す。マーカーの例は、INR、PR、aPTT、ACT、抗fXaユニット、トロンビン生成(Technothrombin TGA)、トロンボエラストグラフィ、CAT(自動較正トロンボグラム)及び他の同様のものを含むが、これらに限定されない。
【0030】
「組成物」は、活性剤及びアジュバントなどの不活性(例えば、検出可能な作用物質若しくはラベル)又は活性な別の化合物又は組成物の組み合わせを意味することを意図する。
【0031】
「医薬組成物」は、不活性又は活性なキャリアと活性剤との組み合わせを含み、組成物をインビトロ、インビボ又はエクスビボにおいて診断又は治療上の使用に適したものにすることを意図する。
【0032】
本明細書において使用されるように、用語「その均等物」は、基準タンパク質、ポリペプチド又は核酸を指す場合、最小限の相同性のみを有するが、それでもなお所望の機能性を維持するものを意図する。本明細書において言及される任意の修飾タンパク質は、その均等物も含むことが想定される。例えば、相同性は、少なくとも75%の相同性、代わりに少なくとも80%、又は代わりに少なくとも85%、又は代わりに少なくとも90%、又は代わりに少なくとも95%、又は代わりに98%の相同性パーセントであり得、基準ポリペプチド又はタンパク質に対して実質的に均等な生物学的活性を呈することができる。ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド領域(又はポリペプチド若しくはポリペプチド領域)が別の配列に対して一定のパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%又は95%)の「配列同一性」を有することは、アラインメントされた場合、そのパーセンテージの塩基(又はアミノ酸)が、2つの配列を比較した際に同じであることを意味する。fXa(又は関連するセリンプロテアーゼ)の重鎖のみが使用される場合、全体的な相同性は、例えば、65%又は50%など、75%よりも低いことができるが、所望の機能性が残っていることに留意すべきである。
【0033】
ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド領域(又はポリペプチド若しくはポリペプチド領域)が別の配列に対して一定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%)の「配列同一性」を有することは、アラインメントされた場合、そのパーセンテージの塩基(又はアミノ酸)が、2つの配列を比較した際に同じであることを意味する。
【0034】
II.第Xa因子及び誘導体の調製
アンデキサネットアルファ又は単にアンデキサネットは、リバロキサバン又はアピキサバンにより治療されている患者について、致命的な又はコントロールできない出血により抗凝固の打ち消しが必要とされる場合に米国及び欧州において承認された修飾第Xa因子ポリペプチドである。r-Antidoteとも称され、アンデキサネットの構造及び活性は、米国特許第8,153,590号明細書に記載されている。
【0035】
アンデキサネットは、処理された2本鎖ポリペプチド、-RKRRKR-(配列番号7)リンカーの切断後の配列番号4の処理産物である。アンデキサネットは、配列番号5によって示され、これは、軽鎖(配列番号6)及び重鎖(配列番号8)を含む。軽鎖及び重鎖は、軽鎖のシステイン98(Cys98)と重鎖のシステイン108(Cys108)との間の単一のジスルフィド結合により接続される。野生型fXaのように、一定の産生単位で、アンデキサネットは、翻訳後修飾を受け、あるアミノ酸残基、例えば軽鎖のSer56、Ser72、Ser76及びThr82並びに重鎖のThr249にグリコシル化を、且つ軽鎖のAsp29に修飾残基(3R)-3-ヒドロキシAspをもたらす。さらに、鎖間のジスルフィド結合に加えて、軽鎖のシステイン16及び27、21及び36、38及び47、55及び66、62及び75並びに77及び90間と、重鎖のシステイン7及び12、27及び43、156及び170並びに181及び209間とに鎖内ジスルフィド結合が形成されることがある。
【0036】
【0037】
【0038】
アンデキサネットの前駆体(配列番号4)は、野生型fXaと比較して3つの突然変異を含有する。第1の突然変異は、fXのGlaドメインにおける6~39aaの欠失である。第2の突然変異は、-RKR-による活性化ペプチド配列143~194aaの置き換えである。これは、軽鎖及び重鎖を接続する-RKRRKR-(配列番号7)リンカーを産生する。分泌と同時に、このリンカーは、切断され、2本鎖ポリペプチド(アンデキサネット)をもたらす。第3の突然変異は、活性部位残基S379のAla残基への突然変異である。
【0039】
これらの構造的な変化により、アンデキサネットは、fXaが集まってプロトロンビナーゼ複合体になる際に競合せず、触媒活性が低下しているか又はない。従って、アンデキサネットは、本来の凝固メカニズムに干渉することなく、循環しているfXa阻害剤を捕捉することができる。EGF-1又はEGF-2ドメイン中に欠失をさらに有するものを含め、同様の解毒薬も開示されている。
【0040】
配列番号4は、アンデキサネットを産生するために宿主細胞において発現される前駆体タンパク質であり、これは、-RKRRKR-リンカー(配列番号7)を標的にする内在性又はスーパートランスフェクトフューリンタンパク質によって消化することができる。野生型fX由来の活性化ペプチド(AP)は、人工-RKRRKR-リンカーと置き換えられたように、必要でないと考えられていた。
【0041】
しかしながら、APの包含は、処理された2本鎖産物の発現を増加させ得ることが本明細書において発見された。しかし、重鎖のN末端におけるものなど、前駆体タンパク質におけるAPの包含は、製造に課題を与える。タンパク質製造は、典型的には、CHO細胞により行われ、CHO細胞は、APと重鎖のN末端との間の切断部位-LTR-について、第X因子を天然に処理する酵素活性を有さない(配列番号2)。そのため、fXa誘導体は、-RKR-及び-RKRRKR-(配列番号7)リンカーを認識する、CHO細胞中の内在性フューリン又は同時にトランスフェクトされたフューリンプロテアーゼによって切断することができる特定のリンカーを含む。
【0042】
これに関連して、APがフューリン認識可能リンカーを通してタンパク質に付加される場合(例えば、C04~C06)、フューリンがリンカーを処理するのが早すぎることがあり、発現を増加させる目的を挫折させることが発見された。加えて、フューリン認識可能リンカーが適切に処理されなかった場合、処理された2本鎖分子は、不活性であり得る。他方では、APは、切断されないように軽鎖に融合される場合(例えば、C07)、タンパク質発現を増加させる能力を有さなかった。APは、切断されないように重鎖のC末端部に融合された場合にのみ、タンパク質発現及び機能的活性を増加させることにおいて最大の効果を有した。
【0043】
重鎖の13又は15C末端アミノ酸残基(それぞれDelta HC-13及びDelta HC-15)の欠失は、タンパク質の発現又は活性に対して有意な影響を有さないことがさらに発見された。対照的に、HCのC末端からの20C末端アミノ酸残基の欠失(Delta HC-20)は、タンパク質の発現を有意に低下させた。これは、例えば、Branchini et al.,Journal of Thrombosis and Haemostasis,13:1468-1474(2015)において実証されるように、20アミノ酸残基まで天然型FXを切り詰めても第X因子発現に有意に影響を及ぼさなかったという一般的な知識からみて予想外であった。さらに驚くべきことに、FXa及び誘導体のC末端にAPを融合させることにより、タンパク質発現に対するC末端切り詰めの影響をなくすことができた。
【0044】
本開示の一実施形態に従い、そのため、式(I):
LC-L1-HC-L2-AP (I)
の配列を含む前駆体タンパク質が提供される。
【0045】
ここで、LCは、配列番号13のアミノ酸配列を含むタンパク質断片又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドなどの生物学的均等物を示す。HCは、配列番号11のアミノ酸配列を含むタンパク質断片又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドなどの生物学的均等物を示す。いくつかの実施形態において、L2は、ベータペプチド(RGLPKAKSHAPEVITSSPLK、配列番号38)の少なくとも最初の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10アミノ酸残基を含む。
【0046】
L1は、プロテアーゼ認識部位を含むタンパク質リンカーを示す。プロテアーゼは、いくつかの実施形態において、フューリンであり得る。L2は、他方では、ヌル(換言すれば任意選択)又はペプチドリンカーであり得る。しかしながら、L2がリンカーである場合、L2は、プロテアーゼによって処理され得ない。そのため、タンパク質がプロテアーゼとインキューベートされる場合、プロテアーゼは、タンパク質を消化し、2本鎖ポリペプチドを作製することができ、一方は、LCを含み、他方は、HC-L2-APを含む。いくつかの実施形態において、産生された2本鎖ポリペプチドは、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である。
【0047】
興味深いことに、実験の第1のセットにおいて、APの発現増強効果は、発現タンパク質の発現又は安定性を増強するために一般に使用されるタンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA)で観察されなかった。実施例2のC10を参照されたい。しかしながら、さらなる実験(実施例3)において、軽鎖のN末端にHSAが融合された2つの前駆体構築物、C13及びC14は、非常に改善された発現及び活性を呈した。従って、Glaドメインの全欠失(C10は、Glaドメインの部分的な欠失を有した)は、HSAの効果を増強したことが想定される。換言すれば、HSAがEGF1ドメインに直接融合された場合、HSAの発現増強効果は、より顕著であった。
【0048】
本開示の別の実施形態に従い、そのため、式(II):
HSA-L2-LC-L1-HC (II)
の配列を含む前駆体タンパク質が提供される。
【0049】
別の実施形態において、式(III):
LC-L1-HC-L2-HSA (III)
の配列を含む前駆体タンパク質も提供される。
【0050】
ここで、HSAは、ヒト血清アルブミン(HSA)又はHSAに対して少なくとも85%の配列同一性を有する変異体を示し、L1は、プロテアーゼ認識部位を含むペプチドリンカーであり、L2は、不在であるか、又はプロテアーゼによって処理され得ないペプチドリンカーであり、LCは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含み、及びHCは、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む。式(II)のタンパク質は、L1がプロテアーゼによって処理される場合、別々の鎖上にLC及びHCを含む2本鎖ポリペプチドを産生し、2本鎖ポリペプチドは、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である。いくつかの実施形態において、LCは、配列番号2のアミノ酸残基1~45を含まない。いくつかの実施形態において、L2は、不在である。
【0051】
いくつかの実施形態において、式(I)のタンパク質は、軽鎖のN末端部又は重鎖のC末端部に融合されたHSAをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、式(II)のタンパク質は、重鎖のC末端部に融合されたAPをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、式(III)のタンパク質は、軽鎖のN末端部に融合されたAPをさらに含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示の任意のタンパク質は、免疫グロブリンのFc断片に融合され得る。結晶性断片領域(Fc領域)は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系のいくつかのタンパク質と相互作用する抗体のテール領域である。IgG、IgA及びIgD抗体アイソタイプにおいて、Fc領域は、抗体の2本の重鎖の第2及び第3の定常ドメインに由来する2つの同一のタンパク質断片から構成される。
【0053】
いくつかの実施形態において、使用されるFc断片は、IgG1、IgG2又はIgG4などのIgGのFc断片である。いくつかの実施形態において、Fc断片は、CH2及びCH3領域の他にCH1領域をさらに含む。例となるFc断片配列は、表24、配列番号46において提供される。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、配列番号34~36又は45などのシグナルペプチドを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、Fc断片の1本の鎖のみがfXa誘導体に融合される。いくつかの実施形態において、Fc断片の両方の鎖がfXa誘導体に融合される。
【0055】
用語「フューリン」又は「対塩基性アミノ酸切断酵素」は、本明細書において使用されるように、GenBank受入番号NP_002560(ヒト)、NP_001074923(マウス)又はNP_062204(ラット)の代表的なフューリン配列のいずれかと実質的に同一なアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。フューリンをコードする適したcDNAは、GenBank受入番号NM_002569(ヒト)、NM_001081454(マウス)又はNM_019331(ラット)で提供される。特定の態様において、フューリンは、ヒトフューリンを指す。
【0056】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、ヒトの血液中に見出される血清アルブミンである。HSAは、血清タンパク質の約半分を構成する。HSAは、肝臓で産生され、水に可溶性である。アルブミンは、他の機能の中でも、ホルモン、脂肪酸及び他の化合物を運搬し、pHを調節し、膠質浸透圧を維持する。アルブミンは、プレプロアルブミンとして肝臓で合成され、これは、新生タンパク質が粗面小胞体から放出される前に除去されるN末端ペプチドを有する。この産物、プロアルブミンは、次に、ゴルジ小胞中で切断され、分泌型アルブミンを産生する。HSAは、天然型配列を有するか、又は本明細書において試験されるように、天然型HSA中の遊離システインを除去するために単一のCys34Ser突然変異(配列番号15)を有することができる。
【0057】
APは、活性化ペプチドを含むタンパク質断片を示す。「活性化ペプチド」は、タンパク質に共有結合又は非共有結合で付加され、活性化ペプチドが除去されるまでそのタンパク質を不活性な状態に維持するペプチドである。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、4つ以上のグリコシル化部位を含む。Asp、Ser、Tyr及びThrなどのアミノ酸残基は、適したグリコシル化部位であることが知られている。いくつかの実施形態において、APは、長さが10~100アミノ酸残基(又は代わりに長さが10~80、15~70、20~60又は10~50アミノ酸残基)であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20グリコシル化部位を含む。
【0058】
活性化ペプチドは、第IX因子(fIX)、第X因子(fX)、第XIII因子(fXIIII)、第II因子(プロトロンビン)及びプロテインCの前駆体などの野生型タンパク質中に存在する。それらのそれぞれの配列を表6に示す。
【0059】
【0060】
いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、配列番号12、31、32、33、39若しくは40のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号12、31、32、33、39若しくは40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、配列番号12に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、1、2又は3つのアミノ酸追加、欠失及び/又は置換を有する、配列番号12に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、配列番号31に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、1、2又は3つのアミノ酸追加、欠失及び/又は置換を有する、配列番号31に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、配列番号32に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、1、2又は3つのアミノ酸追加、欠失及び/又は置換を有する、配列番号32に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、配列番号33に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、1、2又は3つのアミノ酸追加、欠失及び/又は置換を有する、配列番号33に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、配列番号39に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、1、2又は3つのアミノ酸追加、欠失及び/又は置換を有する、配列番号39に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、配列番号40に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、1、2又は3つのアミノ酸追加、欠失及び/又は置換を有する、配列番号40に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、活性化ペプチドは、長さが10~100アミノ酸残基(又は代わりに長さが10~80、15~70、20~60又は10~50アミノ酸残基)であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20グリコシル化部位を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、フューリンであるが、他のプロテアーゼ、例えばPC5などの他のプロタンパク質コンベルターゼ又はFXa及びトロンビンなどの凝固酵素も本開示の範囲内にある。フューリンに適したペプチドリンカーの例は、-RKR-及び-RKRRKR-(配列番号7)を含む。
【0062】
述べられるように、いくつかの実施形態において、L2は、不在(ヌル)である。いくつかの実施形態において、L2は、長さが1~50(又は1~40、1~30、1~25、1~20、5~40、10~30、15~35)アミノ酸残基のペプチドリンカーである。ペプチドリンカーは、好ましくは、可動性であり、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のGly及び/又はSerを有するものなどである。
【0063】
産生された2本鎖ポリペプチドは、いくつかの実施形態において、fXa因子阻害剤をベースとする抗凝固治療に対する解毒薬として使用するのに適している。いくつかの実施形態において、2本鎖ポリペプチドは、fXaが集まってプロトロンビナーゼ複合体になる際に競合することができないか、集まってプロトロンビン複合体になる低下した能力を有するか、又は集まってプロトロンビン複合体になることができない。集まってプロトロンビン複合体になるには、機能的なGlaドメインを必要とする。いくつかの実施形態において、LCは、配列番号2のアミノ酸6~39を含まないなど、Glaドメインの実質的な部分を含まない。いくつかの実施形態において、LCは、配列番号2のアミノ酸1~45を含まない。
【0064】
いくつかの実施形態において、LCは、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、或いは配列番号6に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、LCは、野生型fXaの全軽鎖配列(すなわち配列番号3のアミノ酸残基1~139)或いは野生型fXaの完全長軽鎖配列に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0066】
産生された2本鎖ポリペプチドは、いくつかの実施形態において、野生型ヒト第Xa因子と比較して低下した触媒活性を有する。これは、例えば、重鎖における1つ以上の活性部位、例えばHis236、Asp282及びSer379(配列番号2のアミノ酸236、282及び379)の突然変異によって達成することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、HCは、少なくとも、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、或いは配列番号10に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、HCは、少なくとも、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、或いは配列番号11に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、HCは、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、或いは配列番号7に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、HCは、野生型fXaの全重鎖配列(すなわち配列番号3のアミノ酸残基140~393)を含むか、或いは野生型fXaの完全長重鎖配列に対して少なくとも85%又は代わりに少なくとも70%、75%、80%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、タンパク質(又はHC)は、重鎖の13C末端アミノ酸残基(配列番号2の436~448)を含まない。いくつかの実施形態において、タンパク質(又はHC)は、重鎖の15C末端アミノ酸残基(配列番号2の434~448)を含まない。
【0070】
タンパク質配列の非限定的な例は、配列番号25及び26を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、シグナルペプチド(又はプロペプチドと組み合わせた)は、タンパク質のN末端部に含まれる。例となるシグナル/プロペプチドを表7に示す。
【0072】
【0073】
開示される前駆体タンパク質は、示される欠失を除いて、野生型fXと同じアミノ酸残基を有することができる。好ましい実施形態において、配列番号4に示されるSer379Ala置換などの特定のアミノ酸置換が導入され、fXa阻害剤に対して有効な解毒薬の産生を導く。いくつかの実施形態において、前駆体タンパク質は、L1及びL2が消化される場合、第Xa因子阻害剤に結合することが可能な2本鎖ポリペプチドを産生することが可能である。アミノ酸置換が導入される場合、いくつかの実施形態において、消化された2本鎖ポリペプチドは、fXaが集まってプロトロンビナーゼ複合体になる際に競合することができないか、集まってプロトロンビン複合体になる低下した能力を有するか、若しくは集まってプロトロンビナーゼ複合体になることができず、且つ/又は野生型ヒト第Xa因子と比較して低下した触媒活性を有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本開示の前駆体タンパク質を処理することによって得ることができる2本鎖ポリペプチドも提供される。一実施形態において、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するペプチドを含む第1の断片及び第1の断片のC末端側にあり、且つ活性化ペプチドを含む第2の断片を含む重鎖とを含む2本鎖ポリペプチドであって、第Xa因子阻害剤に結合することが可能である2本鎖ポリペプチドが提供される。そのような2本鎖ポリペプチドの例を下記の表8及び9に提供する。
【0075】
【0076】
【0077】
ポリヌクレオチド及び宿主細胞
本開示は、開示されるタンパク質をコードするポリヌクレオチド及び1つ以上のポリペプチドを含有する宿主細胞も提供する。一態様において、ポリペプチドは、発現され、細胞表面に(細胞外に)存在する。本発明のポリペプチドを含有する適した細胞は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、マウス細胞、ラット細胞、ヒツジ細胞、サル細胞及びヒト細胞を含むが、これらに限定されない原核細胞及び真核細胞を含む。細菌細胞の例は、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)及びストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)を含む。細胞は、American Type Culture Collection(ATCC、Rockville Maryland、USA)などの民間のベンダーから購入することができるか、又は当技術分野において知られている方法を使用して分離株から培養することができる。適した真核細胞の例は、293T HEK細胞並びにハムスター細胞株CHO、BHK-21;NIH3T3、NS0、C127と命名されたマウス細胞株、サル細胞株COS、Vero;並びにヒト細胞株HeLa、PER.C6(Crucellから市販で入手可能)、U-937及びHep G2を含むが、これらに限定されない。昆虫細胞の非限定的な例は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)を含む。発現に有用な酵母の例は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、カンジダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ヤロウイア(Yarrowia)属又はピキア(Pichia)属を含むが、これらに限定されない。米国特許第4,812,405号明細書;米国特許第4,818,700号明細書;米国特許第4,929,555号明細書;米国特許第5,736,383号明細書;米国特許第5,955,349号明細書;米国特許第5,888,768号明細書及び米国特許第6,258,559号明細書を参照されたい。
【0078】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、フューリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドでさらにトランスフェクトされる。
【0079】
種特異性に加えて、細胞は、ニューロンなどの任意の特定の組織型のもの又は代わりにニューロン細胞に分化することができるか若しくはできない幹細胞などの体性若しくは胚性幹細胞、例えば胚性幹細胞、脂肪幹細胞、ニューロン幹細胞及び血液幹細胞であり得る。幹細胞は、哺乳動物などのヒト又は動物を起源とするものであり得る。
【実施例0080】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに理解され、実施例は、本発明の純粋な例示であることが意図される。本発明は、例示される実施形態によって範囲を限定されるものではなく、実施形態は、本発明の単一の態様を例証するものにすぎないことが意図される。機能的に均等であるいかなる方法も本発明の範囲内にある。本発明の種々の修飾形態は、本明細書に記載される修飾形態に加えて、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾形態は、添付の特許請求の範囲内に入る。
【0081】
実施例1.発現ベクターの調製
本実施例により、第Xa因子阻害剤を中和するために使用することができる、アンデキサネットを含む第Xa因子誘導体を産生するために使用することができる、前駆体タンパク質をコード化するポリヌクレオチド構築物を生成した。前駆体タンパク質配列は、表10~20に示され、
図1に示され、C01~C11と称される。
【0082】
アンデキサネットの前駆体(配列番号4)と比較して、C01(配列番号18)は、重鎖の20C末端アミノ酸残基の欠失を含有した。同様に、C02(配列番号19)及びC03(配列番号20)は、それぞれ13及び15C末端アミノ酸残基の欠失を含有した。
【0083】
C03を基準として、第Xa因子活性化ペプチド(AP)を前駆体C04(配列番号21)中に追加して戻した。野生型fXと異なり、フューリンによる処理を促進するために、-RKRRKR-リンカーをAPと重鎖との間に置いた(野生型fXと同様に、-RKR-リンカーも軽鎖とAPとの間にあった)。C末端の切り詰めを有していないが、軽鎖のN末端11アミノ酸が除去されたこの前駆体の別のバージョン、C05(配列番号22)も調製した。N末端11アミノ酸の切り詰め及びC末端15アミノ酸の切り詰めの両方を含有したさらに別の前駆体、C06(配列番号23)も調製した。C07(配列番号24)において、軽鎖とAPとの間の天然の-RKR-リンカーを除去した。
【0084】
前駆体C08(配列番号25)及びC09(配列番号26)において、APを重鎖のC末端側に置いた。APは、C08では重鎖に直接に融合し、C09では人工リンカー(-KSS(GSS)9GSS-、配列番号14)を通して融合した。
【0085】
前駆体C10(配列番号27)及びC11(配列番号28)において、ヒト血清アルブミン(HSA、配列番号15)をN末端又はC末端のいずれかに融合し、HSAは、天然型配列又は天然型HSA中の遊離システインを除去するために単一のCys34Ser突然変異(配列番号15)を有する配列を有し得る。C10において、重鎖は、インタクトであり、C11において、重鎖は、C末端に15アミノ酸の切り詰めを有した。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
これらの前駆体タンパク質(適したシグナルペプチドを有する)をコード化するポリヌクレオチドを新規に合成した。これらのポリヌクレオチド配列の検証後、ポリヌクレオチド配列を、哺乳動物宿主細胞へのトランスフェクションに適した発現ベクターにライゲーションした。例となる発現ベクターは、AB1ベクターであった。使用した別の発現ベクターは、pcDNA3.3ベクター(Thermo Fisher Scientific)であった。
【0098】
発現ベクターは、宿主細胞CHO-DUXB11、CHO-S(Thermo Fisher Scientific)、ExpiCHO-S(Thermo Fisher Scientific)、DG44(Thermo Fisher Scientific)又はCHO-Mにトランスフェクトした。トランスフェクションは、ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(Thermo Fisher
Scientific)又は試薬及びエレクトロポレーター(Maxcyte)によるエレクトロポレーションを使用して、製品の推奨に従って実行した。
【0099】
トランスフェクトしたCHO細胞を振盪フラスコ中で培養し、経時的なタンパク質発現をモニターした。タンパク質発現は、安定した細胞選択のために抗生物質をあらかじめ使用することなく一時的にモニターした。タンパク質発現は、安定したCHO細胞プールを使用してさらにモニターした。安定したプールを増殖させ、細胞バンクを調製し、液体窒素中に保存した。安定したプールによるタンパク質発現は、細胞バンクのバイアルを解凍することにより、一過性発現と同様に進めた。
【0100】
fXa誘導体の重鎖及び軽鎖を接続するリンカーの処理を改善するために、ヒトフューリンタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチド配列を特定のサンプル中に同時にトランスフェクトした。フューリン構築物は、別々のベクターを使用して導入した。安定した細胞産生のため、安定した細胞プールは、安定したプール(親プール)を生成するために、fXa誘導体及びG-418を有するpcDNA3.3を使用して最初に選択した(0~1500μg/mL)。親プールは、フューリンを有する第2のベクターでさらにトランスフェクトした(スーパートランスフェクション)。スーパートランスフェクトしたプールは、抗生物質を使用してさらに選択し、細胞バンクのために調製する。
【0101】
細胞培養中のタンパク質発現レベルは、ELISA(FX-EIA、Enzyme Research Laboratories)によって測定し、FX/FXa重鎖及び軽鎖に対するモノクローナル抗体を使用してウエスタンブロットによって特徴付けた。アンデキサネットは、標準曲線を作成するために使用した。収集した細胞培養液中のタンパク質は、機能的なタンパク質を捕えるためにSTI-樹脂を使用するアフィニティーベースの方法によって精製した。
【0102】
実施例2.発現レベル及び活性の試験
本実施例は、実施例1において調製したfXa誘導体の発現レベル及び活性について試験した。
【0103】
アンデキサネット(AnXa)前駆体(配列番号4)及びC01~C03の発現及び機能的活性は、一過性トランスフェクション(フューリンによる同時トランスフェクション)において試験した。条件は、Expifectamineによる化学的トランスフェクション、続いて24時間後、37℃、8%CO2、135rpmでエンハンサー及びフィードの追加を含む。結果を下記の表に示す。
【0104】
【0105】
これらの構築物の安定したプールを生成した。全細胞培養容積は、30mLであった。細胞は、生存率>97%に細胞が完全に回復するまで3日毎に継代した。力価についての条件は、以下の通りとした:32℃、5%CO2、135rpm;1、4、7、10日目にフィードの追加。結果を下記の表に示す。
【0106】
【0107】
以下の表は、細胞をフューリンでさらにトランスフェクトした場合の試験結果を示す。
【0108】
【0109】
結果は、一過性及び安定した発現において、C01が低レベルの発現を有したが、C02及びC03がアンデキサネット前駆体と同様に機能することを示した。そのため、重鎖からの13又は15C末端残基の切り詰めは、タンパク質発現又は活性に影響を与えなかったが、20末端残基の欠失は、有意な悪影響を有した。
【0110】
C01~C03と比較して、C04~C11は、第X因子活性化ペプチド(AP)又はヒト血清アルブミン(HSA)をさらに含んだ。野生型第X因子が活性化されると、APが除去される。アンデキサネットの産生において、APは、構築物の一部ではなかった。下記の結果に示されるように、APの包含は、タンパク質発現を有意に増加させた。さらに、APを重鎖のC末端部に融合した場合(軽鎖とは対照的に)、構築物は、最も機能的に活性な産物をもたらした(C08及びC09)。HSAへの融合も発現及び活性を増加させることにおいて有用であったが、影響は、APと比較してそれほど顕著ではなかった。
【0111】
【0112】
【0113】
上記の結果に基づいて、C05、C07、C08及びC10をそれらの発現及び機能的活性についてさらに検討した。
図2A~2Dに示されるように、フューリンによる構築物の同時トランスフェクションは、ほとんどの場合に機能的なタンパク質の力価を増加させることを促進した。しかしながら、C05、C07、C08及びC10の中でも、C08のみが高い発現レベル及び機能的活性の両方を保持した。
【0114】
さらに、下記の表に示されるように、5%フューリンによるC08の同時トランスフェクションは、ELISA及び機能的定量分析からの両方の計算値において最も高いピコグラム/細胞/日(PCD)約1.9をもたらした。
【0115】
【0116】
実施例3.追加の構築物の調製及び試験
実施例2における試験結果に基づいて、本実施例は、配列を下記の表に提供する少数の追加の構築物を調製し、試験した。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
これらの構築物のドメイン構造は、
図1にも示される。C12は、C08と比較して、インタクトな重鎖及びEGF2と重鎖との間に挿入される追加のAPを有する。C13は、C10に類似しているが、N末端が切り詰められた軽鎖を有する。最後に、C14は、N末端のHSA(C14のように)及びC末端のAP(C08のように)の両方を含んだ。
【0121】
これらの構築物の発現レベル及び活性は、コントロールとしてのアンデキサネット前駆体(AnXa)、C10及びC12と共に測定した。結果を下記の表に示し、
図3にプロットする。
【0122】
【0123】
軽鎖のEGF1ドメインに直接融合されたHSAを有するC13及び重鎖のC末端にAPドメインをさらに含むC14は、最も高い発現及び活性を呈した。興味深いことに、C10とC13との間の唯一の差は、C10がGla-ドメイン由来の特定のアミノ酸(A1~K11)をさらに含むことであったが、C10の発現の方が著しく低く、HSAとEGF1ドメインと間の直接の融合が有益であることを示唆した。さらに、C12の結果は、軽鎖と重鎖との間に追加のAPを追加することが必要ではないことを示唆する。
【0124】
本実施例は、構築物において軽鎖のN末端にHSAを融合させること及び重鎖のC末端にAPドメインを融合させることの利益をさらに実証するものである。
【0125】
実施例4.Fc融合物の調製及び試験
本実施例は、Fc断片及びFc断片とアンデキサネットなどの第Xa因子誘導体との間の融合物について試験した。
【0126】
2つの融合構築物は、表25及び26に示されるように調製し、表24のFc断片及び2つの異なるシグナルペプチドを含んだ。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
これらの構築物の発現は、一過性トランスフェクションにおいて試験した。条件は、Expifectamineによる化学的トランスフェクション、続いて24時間後、37℃、8%CO2、135rpmでエンハンサー及びフィードの追加を含む。下記の結果に示されるように、fXaのシグナルペプチド(構築物F01)は、融合タンパク質の発現を増加させることを促進した。
【0131】
【0132】
本発明は、上記の実施形態と共に記載されたが、前述の説明及び実施例は、本発明を例証するものであり、本発明の範囲を限定しないことが意図されることが理解されるべきである。本発明の範囲内にある他の態様、利点及び変更形態は、当業者に明らかであろう。