(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180605
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】薬液注入コントローラ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181318
(22)【出願日】2024-10-16
(62)【分割の表示】P 2021534086の分割
【原出願日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2019134451
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
(57)【要約】
【課題】流量可変式の薬液投与装置をより簡単な構成でコンパクトに実現することができる、新規な構造の薬液注入コントローラを提供すること。
【解決手段】薬液を持続投与するメインライン14に対してサブライン26を介して接続されるサブリザーバー24を備えており、自己操作によるサブリザーバー24からの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラ10であって、メインライン14の流量を切替可能とする流量切替機構66が、サブリザーバー24を収容するハウジング22に収容されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、
前記メインラインの流量を切替可能とする流量切替機構が、前記サブリザーバーを収容するハウジングに収容されている薬液注入コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の持続投与を行う薬液投与装置において自己操作による薬液の急速注入を実行可能とする薬液注入コントローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、持続的な薬液投与を行う薬液投与装置が知られており、例えば鎮痛剤や麻酔剤などを少量ずつ持続的に体内へ投与する際に用いられている。薬液投与装置は、例えば、特開2010-227144号公報(特許文献1)に記載されているように、メインリザーバーに貯留された薬液をメインラインと留置針などの留置器具を通じて患者の体内へ持続投与する。また、薬液投与装置は、自己操作によって薬液の急速投与を実行可能とする薬液注入コントローラを備える場合がある。薬液注入コントローラは、薬液を貯留するサブリザーバーを備えており、例えば、患者がプッシュボタンを押し込むなどの自己操作をすることにより、薬液注入コントローラのサブリザーバーに貯留された薬液が患者の体内へ急速投与される。薬液投与装置は、長ければ2週間ほど用いられる。
【0003】
ところで、薬液投与装置は、持続投与される薬液の流量が、例えば複数段階に切替可能とされて変更できるようになっている場合もある。このような流量可変式の薬液投与装置は、特開平10-28741号公報(特許文献2)のような流量切替機構が、薬液注入コントローラとは別にメインラインに接続されている。流量切替機構は、断面積の異なる複数の制限流路を備えており、選択された制限流路がメインラインを構成することで、メインラインの流量が選択された制限流路の流路断面積などに応じて調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-227144号公報
【特許文献2】特開平10-28741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬液投与装置に流量切替機構が設けられると、薬液投与装置の構成が複雑になると共に、流量切替機構が嵩張ることで薬液投与装置の大型化が問題になる場合もあった。また、流量切替機構におけるメインラインが複数のチューブを接続して構成されることで、メインラインに環状の部分が形成されることから、当該環状部分や流量切替機構が引っかかるなどして留置器具が抜けてしまう場合もあった。
【0006】
本発明の解決課題は、流量可変式の薬液投与装置をより簡単な構成でコンパクトに実現することができる、新規な構造の薬液注入コントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、前記メインラインの流量を切替可能とする流量切替機構が、前記サブリザーバーを収容するハウジングに収容されているものである。
【0009】
本態様の薬液注入コントローラによれば、流量切替機構が薬液注入コントローラのハウジングに収容されることにより、薬液投与装置において薬液注入コントローラに接続される外部流路の構造が簡単になって、薬液投与装置のコンパクト化が図られる。それ故、本態様の薬液注入コントローラを採用すれば、薬液投与装置においてメインラインの流量の切り替えを可能としつつ、薬液投与装置の取回し性や携帯性の向上が実現され得る。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、外部からの操作によって前記流量切替機構による前記メインラインの流量の切り替えを行う操作部が、前記ハウジングの外面に露出して設けられているものである。
【0011】
本態様の薬液注入コントローラによれば、ハウジングの外面に露出した操作部を外部から操作することにより、流量切替機構によるメインラインの流量の切り替えを簡単に行うことができる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記メインラインを構成する外部流路に接続される入口ポートと出口ポートが前記ハウジングの先端部分に露出して設けられていると共に、前記流量切替機構が該ハウジングの先端部分に収容されて、前記操作部が該ハウジングの先端側の壁部を貫通して外部に露出しているものである。
【0013】
本態様の薬液注入コントローラによれば、流量切替機構の操作部が入口ポート及び出口ポートと共にハウジングの先端部分に設けられることにより、ハウジングの外面において操作部をスペース効率良く配することができる。しかも、例えば、ハウジングの周壁を掴んで薬液注入コントローラを使用する場合に、操作部が邪魔になり難い。
【0014】
第4の態様は、第2又は第3の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記操作部を外部から操作する際に用いられる操作ツールが、前記ハウジングに対して取外可能に取り付けられているものである。
【0015】
本態様の薬液注入コントローラによれば、操作ツールをハウジングから取り外して、操作ツールによって操作部を外部から操作することで、流量の切り替えを実行することができる。
【0016】
操作部が専用の操作ツールによって操作される構造であれば、ハウジングから取り外された操作ツールを看護師などが管理することにより、患者が操作部を操作してメインラインの流量設定を勝手に変更してしまうのを防ぐことができる。
【0017】
第5の態様は、第4の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記ハウジングに取り付けられる支持部と一体で前記操作ツールが設けられて、該操作ツールと該支持部との連結部分が切断可能な切断許容部を有しており、該切断許容部の切断によって該操作ツールが該ハウジングから取り外されると共に該支持部が該ハウジングに保持されるものである。
【0018】
本態様の薬液注入コントローラによれば、ハウジングとは別体の操作ツールをハウジングに対して簡単に取り付けることができると共に、切断許容部に外力を加えて切断することにより、操作ツールをハウジングから簡単に取り外すことができる。
【0019】
提供した薬液注入コントローラに初めから操作ツールが付いていなかった場合と、提供時に付いていた操作ツールを使用時にハウジングから取り外した場合とを、支持部がハウジングに保持されて残っているか否かによって判別することができる。
【0020】
第6の態様は、第5の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記支持部が挿通される取付穴が前記ハウジングを貫通して設けられて、該取付穴が該ハウジングの外周側において内周側よりも大径とされた収容部を有しており、前記切断許容部が該収容部に収容されているものである。
【0021】
本態様の薬液注入コントローラによれば、切断許容部の切断に伴うバリ状の突起などが支持部側に生じた場合に、当該突起などがハウジングの外周側へ突出することなく収容部に収容された状態となる。それ故、薬液注入コントローラを把持して使用する際に、突起による違和感や痛み、負傷などを回避することができる。
【0022】
第7の態様は、第2~第6の何れか1つの態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記操作部が前記ハウジングの挿通孔を貫通して該ハウジングに対して回転可能に設けられており、該操作部の該ハウジングに対する所定量の回転によってクリック感を生じる回転把握機構が設けられているものである。
【0023】
本態様の薬液注入コントローラによれば、回転操作によって流量を切り替える構造の操作部を採用する場合に、操作部の回転量を手応えによって把握することができる。
【0024】
第8の態様は、第1~第7の何れか1つの態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記流量切替機構の流量設定を外部から視認可能に表示する流量設定表示部が設けられているものである。
【0025】
本態様の薬液注入コントローラによれば、流量切替機構の流量設定を、目視によって簡単に確認することができる。
【0026】
第9の態様は、第1~第8の何れか1つの態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、流量切替機構が、略円筒状の外周部材に対して内周部材が相対回転可能に差し入れられた構造のコックを備えていると共に、前記サブラインから分岐して該コックに接続される分岐流路と、該コックから延び出して該サブラインに合流する切替流路とが設けられており、該コックにおける該外周部材の軸方向が前記ハウジングの軸方向とされていると共に、該分岐流路と該切替流路が少なくとも一部において該ハウジングの軸に対して周方向に傾斜して延びているものである。
【0027】
本態様の薬液注入コントローラによれば、ハウジング内の限られたスペースを効率的に利用してコックや分岐流路及び切替流路を配置することができ、薬液注入コントローラの大型化を防止することができる。
【0028】
第10の態様は、第1~第9の何れか1つの態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記ハウジングが軸直角方向の断面において長軸と短軸を有する扁平形状とされており、前記サブラインから分岐して前記流量切替機構に接続される分岐流路と、該流量切替機構から延び出して該サブラインに合流する切替流路とが、該サブラインに対して該ハウジングの軸直角方向の断面における長軸方向へ延び出しているものである。
【0029】
本態様の薬液注入コントローラによれば、分岐流路と切替流路がサブラインからハウジングの横断面の長軸方向に延び出して設けられることから、分岐流路と切替流路がハウジング内のスペースに効率よく配置されて、薬液注入コントローラの大型化が防止される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、流量可変式の薬液投与装置をより簡単な構成でコンパクトに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての薬液注入コントローラを備えた薬液投与装置の構成を示すモデル図
【
図5】
図2に示す薬液注入コントローラを第1の半割体を取り除いた状態で示す斜視図
【
図6】
図5に示す第1の半割体を取り除いた薬液注入コントローラを別の角度で示す斜視図
【
図7】
図5に示す第1の半割体を取り除いた薬液注入コントローラの正面図
【
図11】
図2に示す薬液注入コントローラに設けられた操作ツールの斜視図
【
図12】
図11に示す操作ツール使用中の薬液注入コントローラの斜視図
【
図13】
図11に示す操作ツール使用中の薬液注入コントローラの底面図
【
図14】
図11に示す操作ツール使用中の薬液注入コントローラの右側面図
【
図15】本発明の第2の実施形態としての薬液注入コントローラの要部を、第1の半割体を取り除いた状態で示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1には、第1の実施形態としての薬液注入コントローラ10を備える薬液投与装置12の構成が概略的に示されている。薬液投与装置12は、内部に貯留された薬液をメインライン14に送り出すメインリザーバー16と、患者の血管などに経皮的に穿刺された図示しない留置針などに接続される末端コネクタ18とが、メインライン14によって接続された構造を有している。更に、メインライン14を構成する外部流路20には、薬液注入コントローラ10が接続されている。なお、以下の説明において、薬液注入コントローラ10の先端側が
図3中の下方であると共に、薬液注入コントローラ10の基端側が
図3中の上方である。
【0034】
薬液注入コントローラ10は、
図2~8に示すように、ハウジング22にサブリザーバー24が収容された構造を有していると共に、メインライン14から分岐してサブリザーバー24をメインライン14に繋ぐサブライン26を備えている。サブライン26は、サブリザーバー24よりも上流側の流入ライン28の一部と、サブリザーバー24よりも下流側の流出ライン30の一部とを含んで構成されている。なお、流入ライン28と流出ライン30の端部がそれぞれハウジング22から先端側に露出しており、流入ライン28の端部によって上流側の外部流路20に接続される入口ポートが構成されていると共に、流出ライン30の端部によって下流側の外部流路20に接続される出口ポートが構成されている。
【0035】
ハウジング22は、基端側に開口する略有底円筒形状とされており、内部に収容領域32を備える中空構造とされている。ハウジング22は、軸直角方向の断面において、基端側が略円形断面とされていると共に、先端側が上下方向を長軸且つ左右方向を短軸とされた略長円形断面とされている。また、ハウジング22の基端部分には、プッシュボタン34が軸方向(
図8中の上下方向)へ相対移動可能に取り付けられている。プッシュボタン34は、内挿状態で配されたコイルスプリング36の弾性によって、ハウジング22の基端部分に弾性的に位置決めされている。コイルスプリング36の先端側には、プランジャ38が設けられており、プランジャ38とプッシュボタン34の軸方向間にコイルスプリング36が介装されている。
【0036】
プランジャ38の先端側には、サブリザーバー24が配されている。サブリザーバー24は、先端に向けて開口する凹形状のダイヤフラム部40と、ダイヤフラム部40の開口を覆蓋するベース部材42とによって構成されている。そして、プランジャ38によってダイヤフラム部40の底壁部が先端側へ押し込まれることによって、サブリザーバー24の容積が変化するようになっている。プッシュボタン34とプランジャ38とサブリザーバー24は、ハウジング22の長手方向である軸方向に直列的に並んで配されている。
【0037】
サブリザーバー24のベース部材42には、流入ライン28と流出ライン30が接続されている。流入ライン28は、
図1に示すように、中間部分において分岐しており、制限流路44とプライミング用流路46とが並列的に設けられている。プライミング用流路46は、制限流路44よりも流路断面積が大きくされて流量が大きくされている。
【0038】
プライミング用流路46上には、プライミング用流路46を閉止可能な閉止機構としての閉止弁48が設けられている。閉止弁48は、
図8に示すように、ハウジング22の外周面に露出するスイッチ50に一体形成されている。スイッチ50は、ハウジング22に対して相対移動可能とされており、スイッチ50の押込み操作によって閉止弁48が開位置から閉位置へ移動する。
【0039】
スイッチ50は、薬液投与装置12による薬液の持続投与を開始する前に行われるプライミングの完了後に操作される。即ち、プライミングの完了前には、閉止弁48が開位置にあって、プライミング用流路46が連通状態とされていることから、プライミング液がプライミング用流路46を通じてサブライン26とサブリザーバー24に速やかに充填される。プライミングの完了後には、スイッチ50が操作されることで閉止弁48が閉位置に移動して、プライミング用流路46が遮断状態とされる。これにより、流入ライン28の流量が制限流路44によって制限されて、後述する急速投与後にサブリザーバー24への薬液供給に要する時間が適宜に設定される。
図2~10、
図12~14に示す薬液注入コントローラ10は、プライミングが完了してスイッチ50が押し込まれ、閉止弁48によってプライミング用流路46が遮断された状態で図示されている。
【0040】
一方、流出ライン30上には、開閉弁52が設けられている。開閉弁52は、流出ライン30を連通状態と遮断状態に切り替える弁である。例えば、コイルスプリング56によって弁体54を流出ライン30に押し付けることで、流出ライン30が開閉弁52によって遮断されると共に、弁体54を流出ライン30から離れる方向へ移動させることで、流出ライン30が開閉弁52によって連通状態に切り替えられる。本実施形態では、プッシュボタン34が押し込まれて移動することにより、弁体54がプッシュボタン34から延び出す図示しない主動片によって、流出ライン30から離れる方向へ押されて移動するようになっている。
【0041】
そして、プッシュボタン34が患者の自己操作によって軸方向で押し込まれると、コイルスプリング36の弾性によってプランジャ38が先端側へ付勢されて、サブリザーバー24が圧縮されると共に、開閉弁52が閉位置から開位置へ移動する。これにより、サブリザーバー24に貯留された薬液が、連通状態とされた流出ライン30を通じて患者側へ急速投与されて、一時的に薬液の投与量が増加する。このように、薬液注入コントローラ10は、薬液投与装置12において、患者の自己操作による薬液の急速投与を実行可能とする。
【0042】
また、急速投与の実行によって薬液の貯留量が減少したサブリザーバー24には、流入ライン28を通じて薬液が供給される。流入ライン28のプライミング用流路46が閉止弁48によって遮断されており、制限流路44を通じて少量ずつ薬液がサブリザーバー24に供給されることから、サブリザーバー24への薬液の充填が完了するまでには、所定の時間が必要とされる。これにより、連続的な急速投与による過剰な薬液の投与が回避されている。好適には、サブリザーバー24に所定量の薬液が貯留される前には、再度の急速投与が実行不能とされる。
【0043】
なお、プランジャ38には、径方向外側へ突出する突起状の目印部58が設けられており、
図2,3に示すように、目印部58がハウジング22に形成されたスリット60を通じて外部に露出している。そして、目印部58のスリット60内での位置がプランジャ38の移動に伴って変化する。これにより、目印部58がスリット60のどこに位置しているかを目視で確認することによって、サブリザーバー24に貯留された薬液の量を確認できる。本実施形態では、
図3に示すように、スリット60の側方に目盛62が設けられており、目印部58の位置に応じたサブリザーバー24内の薬液量をより正確に把握することができる。
【0044】
ところで、メインライン14は、一部が薬液注入コントローラ10のハウジング22の先端部分に収容されている。メインライン14におけるハウジング22に収容された部分には、メインライン14の流量を設定する流量制御部64が設けられている。流量制御部64は、メインライン14を構成する外部流路20よりも内腔の断面積が小さいチューブで構成されているが、例えば、表面に溝を有する板材を貼り合わせることで、それら板材の間に断面積の小さい流路として設けることもできる。
【0045】
また、メインライン14のハウジング22への収容部分には、流量制御部64と並列的に流量切替機構66が設けられている。流量切替機構66は、ハウジング22の先端部分において収容領域32に収容されている。流量切替機構66は、
図1及び
図5~7に示すように、メインライン14において流量制御部64と並列に設けられる分岐流路68がコックとしての三方活栓70に接続され、相互に流量が異なる切替流路としての第1の流路72と第2の流路74が、三方活栓70において分岐して設けられた構造を有している。
【0046】
三方活栓70は、
図9に示すように、T字状の流路が形成された略円柱状の内周部材76と、内周部材76の流路と対応する3方向に流路を備えた略円筒状の外周部材77とを備えている。そして、内周部材76が外周部材77に対して相対回転可能に差し入れられており、内周部材76と外周部材77の相対的な向きによって、内周部材76の流路と外周部材77の3つの流路との連通状態が切り替えられるようになっている。内周部材76の中心軸と外周部材77の中心軸は、ハウジング22の中心軸と略平行延びており、内周部材76が外周部材77に対してハウジング22の周方向に回転可能とされている。
【0047】
分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74は、それぞれ所定の流量とされるように内径寸法と長さ寸法が調節されている。分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74は、長さ方向の中間部分がハウジング22の軸方向に対して周方向に傾斜して延びている。これにより、分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74は、ハウジング22内にスペース効率よく配されており、薬液注入コントローラ10の大型化が防止されると共に、それら流路68,72,74の流路長が大きな自由度で設定可能とされている。
【0048】
分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74は、三方活栓70の外周部材77の3つの流路に接続されており、軸方向に対して直交する方向で三方活栓70から延び出している。これにより、それら流路68,72,74の配設スペースが軸方向で小さくされて、薬液注入コントローラ10の軸方向での小型化が図られ得る。また、分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74は、
図9に示すように、三方活栓70からの延出方向が、少なくとも中間部分において、該サブラインに対してハウジング22の横断面の長軸方向となる上下方向とされている。これにより、それら流路68,72,74がハウジング22に効率的に収容されて、ハウジング22の小型化が図られている。
【0049】
分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74は、三方活栓70の外周部材77の3つの流路に挿入されている。これにより、内周部材76の流路と外周部材77の3つの流路との連通状態の切替えに伴って、第1の流路72と第2の流路74との分岐流路68に対する連通と遮断が切り替えられる。第1の流路72と第2の流路74は、相互に並列に設けられていると共に、分岐流路68に対して三方活栓70を介して直列に設けられている。三方活栓70に接続された第1の流路72と第2の流路74は、流路断面積が相互に異なっており、本実施形態では、第1の流路72の流量が第2の流路74の流量よりも少なくなっている。分岐流路68は、流量制御部64とサブライン26の分岐部分と三方活栓70とをつないで設けられており、サブライン26から分岐してメインライン14の一部を構成する。第1の流路72と第2の流路74は、流量制御部64とサブライン26の合流部分或いはそれよりも下流部分を三方活栓70につないで設けられており、サブライン26に合流してメインライン14の一部を構成する。
【0050】
そして、流量切替機構66は、三方活栓70の切り替えによって、(a)第1の流路72と第2の流路74が何れも遮断された遮断態様と、(b)第1の流路72が連通状態で第2の流路74が遮断状態とされた第1の連通態様と、(c)第1の流路72が遮断状態で第2の流路74が連通状態とされた第2の連通態様と、(d)第1の流路72と第2の流路74が何れも連通状態とされた全連通態様との4つの態様に選択的に切り替えられるようになっている。要するに、第1の流路72と第2の流路74は、三方活栓70によって、分岐流路68と直列的に連通された状態と、分岐流路68に対して連通されていない状態とに切り替えられる。
【0051】
なお、プライミング時には、全連通態様とされることが望ましく、これによって、分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74がプライミング液によって満たされる。従って、好適には、使用前の初期状態において三方活栓70が全連通態様とされており、例えば、プライミング完了前に三方活栓70を切替操作しないように注意喚起しても良い。尤も、分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74は、何れも容積が十分に小さく、仮に空気が残留しても問題にはならない。例えば、分岐流路68と第1の流路72と第2の流路74の空気を外部に排出するためのフィルタを適当な位置に設けても良い。これによれば、プライミングに際して、三方活栓70における内周部材76と外周部材77の相対的な向きに関係なく、それら流路68,72,74の空気をフィルタを通じて外部に排出することも可能になる。
【0052】
流量切替機構66が流量制御部64と並列的に設けられていることから、メインライン14は、(A)遮断態様において流量制御部64の流量、(B)第1の連通態様において、流量制御部64と第1の流路72を合わせた流量、(C)第2の連通態様において、流量制御部64と第2の流路74を合わせた流量、(D)全連通態様において、流量制御部64と第1の流路72と第2の流路74を合わせた流量とされる。要するに、メインライン14は、流量切替機構66によって、4種類の流量に選択的に切替可能とされた流量可変式の流路とされており、流量が流量制御部64の流量によって設定されている。(A)~(D)の各流量設定におけるメインライン14の具体的な流量は、特に限定されないが、本実施形態では、例えば、(A)において1ml/h、(B)において2ml/h、(C)において3ml/h、(D)において4ml/hとされている。
【0053】
流量切替機構66は、
図2~8に示すように、ハウジング22の外部に露出する操作部78を備えている。操作部78は、ハウジング22の先端側の壁部を貫通する挿通孔79に挿通されて外部に露出しており、ハウジング22に対して回転可能に取り付けられている。操作部78は、三方活栓70の内周部材76につながっており、操作部78の回転が三方活栓70の切替作動と連動している。そして、操作部78が外部から回転操作されることにより、三方活栓70が切り替えられて、メインライン14の流量が切り替えられる。
【0054】
操作部78は、
図10に示すように、ハウジング22の挿通孔79に差し入れられる挿通部分80が略円柱形状とされていると共に、
図4に示すように、挿通部分80から先端側へ突出する操作突起82が略四角形の外形を有している。ハウジング22の挿通孔79に挿通された操作部78は、ハウジング22に対して相対的に回転可能とされている。操作部78には、先端面に開口する挿入穴84が形成されている。
【0055】
図10に示すように、操作部78における挿通部分80の外周面には、4つの凹部86,86,86,86が周方向で90度ごとに形成されていると共に、ハウジング22における挿通孔79の内周面には、4つの凹部86,86,86,86に対応する4つの凸部88,88,88,88が設けられている。そして、操作部78がハウジング22に対して回転すると、操作部78が±90度回転するごとに凸部88の凹部86に対する入り込みと抜け出しによるクリック感が生じるようになっている。このように、凹部86と凸部88によって、本実施形態の回転把握機構が構成されている。流量切替機構66を構成する本実施形態の三方活栓70は、
図9に示すように、±90度の回転によって選択的な流量の切替えが完了する。それ故、凹部86と凸部88の嵌合によるクリック感が生じるタイミングを流量の切替完了と対応させて、流量の切替えを手応えによって使用者に把握させることができる。
【0056】
操作部78の挿通部分80は、先端側の端部において周方向の一部が他の部分に比して先細状に大径とされることにより、指針部90が設けられている。指針部90によって、操作部78のハウジング22に対する相対的な向きが、外部から目視で把握可能とされている。これにより、操作部78の回転と連動するメインライン14の流量設定を外部から簡単に把握することができる。
【0057】
ハウジング22の下面には、
図4に示すように、挿通孔79の周囲にメインライン14の流量に対応する数字を表示する表示部94が設けられており、指針部90が指す表示部94の数字によって、メインライン14の流量設定を簡単に把握可能とされている。このように、指針部90と表示部94によって、メインライン14の流量設定が外部から視認可能とされており、それら指針部90と表示部94によって本実施形態の流量設定表示部が構成されている。本実施形態の表示部94には、実際のメインライン14の流量である1ml/h~4ml/hに対応する1~4の数字が表示されている。尤も、表示部94の表示は、数字に限定されず、例えば、周方向に目盛を設けても良いし、図形の形やサイズ、数などによって流量の大小関係を示すことなどもできる。また、表示部94に数字を表示する場合には、必ずしも具体的な流量の数値を表示しなくても良く、例えば、流量設定の大きさの順に具体的な流量の数値とは無関係な数字を付すなどしても良い。
【0058】
操作部78は、操作ツール96を用いて外部から回転操作することが可能とされている。操作ツール96は、
図2~8に示すように、ハウジング22に取り付けられている。操作ツール96は、
図11に示すように、例えば長手板形状を有しており、一方の端部が手で把持される把持部98とされていると共に、他方の端部付近には、操作部78の操作突起82に対応する操作凹部100が厚さ方向に開口して設けられている。操作凹部100の底壁部には、操作凹部100の開口方向に突出する挿入筒部104が一体形成されている。
【0059】
操作ツール96は、好適には透明乃至は半透明とされており、後述するように操作ツール96を透かして操作部78を見ることが可能とされている。本実施形態では着色された半透明とされることによって、操作ツール96の視認性が確保されて紛失などの不具合も生じ難い。尤も、操作ツール96は、不透明であっても良い。なお、
図11では、見易さのために、操作ツール96が不透明に図示されている。
【0060】
操作ツール96は、
図7に示すように、ハウジング22によって支持される支持部106と一体形成されることで、ハウジング22に取り付けられている。支持部106は、前後方向で幅狭の幅狭部108と幅広の幅広部110とを有する凸形断面の内側部分112と、内側部分112の幅狭部108に連続する円板形状の外側部分114とを、備えている。外側部分114は、内側部分112の幅狭部108の前後寸法よりも大きな直径で形成されており、前後方向の両端部分が幅狭部108よりも前後外側へ突出している。これにより、支持部106の前後両側には、幅狭部108を底壁とする凹溝116,116が形成されている。
【0061】
支持部106は、ハウジング22の取付穴118に挿通されている。取付穴118は、ハウジング22を貫通して形成されている。取付穴118は、スリット状の挿通部120と、ハウジング22の軸方向において挿通部120よりも幅寸法が大きくされた収容部122とが、直列的に設けられた段付き穴とされている。収容部122は、挿通部120よりもハウジング22の外周側に設けられている。本実施形態では、ハウジング22が第1の半割体22aと第2の半割体22bを組み合わせた分割構造とされており、取付穴118が第1の半割体22aと第2の半割体22bの重ね合わせ部分に設けられて、ハウジング22の分割状態で取付穴118が開放される。
【0062】
そして、取付穴118の挿通部120に支持部106の中間部分である幅狭部108が挿入されて、支持部106の凹溝116,116にハウジング22における取付穴118の両縁部が差し入れられている。これにより、支持部106の幅広部110と外側部分114がハウジング22に係止されて、支持部106の取付穴118からの抜けがハウジング22の内周側と外周側の両側において防止されている。本実施形態では、第1の半割体22aと第2の半割体22bを組み合わせる際に、取付穴118の形成部分に支持部106の幅狭部108を挟み込むことで、支持部106を取付穴118に対して抜出不能に取り付けることができる。
【0063】
ハウジング22に対して脱落しないように設けられた支持部106には、操作ツール96が一体形成されている。即ち、操作ツール96に設けられた連結突起124が、支持部106の外面に一体的につながっている。これにより、操作ツール96は、ハウジング22の外面に沿ってハウジング22の先端部分の外周面上にセットされる。なお、操作ツール96は、ハウジング22の先端面に沿うように突出する嵌合部126が先端部分に設けられており、嵌合部126と支持部106の間でハウジング22の一部を挟み込むことによって、ハウジング22に対して位置決めされている。
【0064】
操作ツール96は、ハウジング22に対して取外し可能とされている。即ち、連結突起124は、支持部106に向かって次第に小径となる先細形状とされており、連結突起124と支持部106の連続部分が切断可能な切断許容部128とされている。切断許容部128は、横断面積が小さくされている。そして、連結突起124に対して支持部106の外側部分114の横断面積が大きくされており、横断面積が急激に変化する部分が切断許容部128とされていることから、後述する外力の作用時に切断許容部128に応力の集中が生じ易くなっている。支持部106の外側部分114は、取付穴118の収容部122の長さに比して薄肉とされており、切断許容部128は収容部122に収容されている。好適には、外側部分114の厚さが、収容部122の長さに対して、半分以下とされる。
【0065】
そして、例えば、支持部106がハウジング22に保持された状態で操作ツール96にこじり方向の力を加えると、切断許容部128に応力が集中して、切断許容部128が切断されて、操作ツール96が支持部106から分離される。これにより、操作ツール96をハウジング22から取り外すことができると共に、操作ツール96の取外し後にも支持部106がハウジング22から取り除かれることなく、ハウジング22への取付状態に保持される。これにより、操作ツール96が初めからハウジング22に装着されていなかった場合と、操作ツール96をハウジング22から取り外した後で紛失した場合とを、支持部106がハウジング22に残っているか否かで判別することができる。
【0066】
操作ツール96をハウジング22から取り外す際に、操作ツール96にこじり方向の力を加え易くするために、操作ツール96の先端には、ハウジング22の先端よりも更に先端側へ突出する入力部130が設けられている。そして、入力部130に手指によってハウジング22から離れる方向(
図7中の矢印方向)の力を加えることにより、操作ツール96の基端部を支点とする梃子の原理によって、切断許容部128を比較的に小さな入力で切断することができる。尤も、上記の切断許容部128の切断方法は、あくまでも例示であって、例えば、操作ツール96にねじり方向の力を加えて切断許容部128を捩じ切るようにしても良いし、操作ツール96を側方へ引っ張って切断許容部128を引き切るようにしても良い。
【0067】
切断許容部128が取付穴118の収容部122に収容されていることにより、操作ツール96がハウジング22から取り外された状態において、破断した切断許容部128のバリが支持部106側に残ってバリ状の突起として突出しても、当該突起が収容部122に収容される。このように、切断によって形成される当該突起がハウジング22の外周面よりも外側に突出しないことにより、ハウジング22の外周面を患者などが把持する際に、当該突起が手に当たるのを防ぐことができて、痛みや違和感を与え難い。
【0068】
ハウジング22から取り外された操作ツール96は、
図12~14に示すように、操作凹部100に操作部78の操作突起82が嵌め合わされる。そして、操作突起82と嵌め合わされた操作凹部100を中心として把持部98をハウジング22に対して相対的に回動させることにより、操作部78を回転させて、流量切替機構66によるメインライン14の流量の切替えを実行することができる。
【0069】
操作突起82が操作凹部100に嵌め合わされる際に、操作ツール96の挿入筒部104が操作部78の挿入穴84に嵌め入れられる。換言すれば、操作突起82は、操作凹部100の内周面と挿入筒部104の外周面との間に嵌め入れられて、外周面と内周面が何れも操作ツール96に重ね合わされることから、例えば操作ツール96による操作部78の回転操作に際して操作突起82が操作凹部100から抜け難い。
【0070】
本実施形態では、操作ツール96が半透明とされていることから、操作突起82と操作凹部100を嵌め合わせる際に、目視で確認しながら簡単に嵌め合わせることができる。また、
図13に示すように、操作ツール96を透かして指針部90を視認することが可能であり、メインライン14の流量設定も容易になる。なお、
図12,14では、見易さのために、操作ツール96が不透明に図示されている。
【0071】
好適には、操作部78の回転に対する抵抗が、操作突起82を指で抓んで回すことができない程度に大きく設定されて、操作部78の回転操作には操作ツール96が必要とされる。操作部78の回転抵抗は、例えば、ハウジング22の挿通孔79の内周面と操作部78の挿通部分80の外周面との摩擦抵抗や、凸部88と凹部86の形状やサイズなどによって調節することができる。
【0072】
なお、ハウジング22から取り外された操作ツール96は、例えば、把持部98を貫通する貫通孔132に紐やリングなどを通して、ナースステーションの壁面などに設けたフックに引っ掛けたり、看護師が首に下げるなどして、医療従事者により管理される。
【0073】
本実施形態に従う構造とされた薬液注入コントローラ10によれば、薬液投与装置12の外部流路20の構成を簡単にすることができる。即ち、薬液投与装置12の薬液投与ラインにおいて分岐する部分が、薬液注入コントローラ10のハウジング22に収容されていることから、薬液注入コントローラ10に接続される外部流路20の構成が簡単になる。本実施形態では、薬液投与装置12の流路における分岐部と合流部が、全て薬液注入コントローラ10のハウジング22に収容されていることで、外部流路20は、分岐部と合流部の間に設けられる並列的に延びる環状部分がない。それ故、外部流路20は、環状部分において引っ掛かることがなく、末端コネクタ18に接続された留置針などが外力によって抜けてしまうのを防ぐことができる。
【0074】
また、薬液注入コントローラ10を外部流路20に接続するだけで、メインライン14の流量の切替えと自己操作による薬液の急速投与が可能であり、且つプライミングを速やかに完了できる高機能な薬液投与装置12が簡単に構成される。
【0075】
従来、流量可変式の薬液投与装置の外部流路は、薬液注入コントローラに接続される外部流路上に流量切替機構が設けられることから、流量固定式の薬液投与装置の外部流路とは構成が異なっていた。ところが、本実施形態の薬液投与装置12は、流量切替機構66が薬液注入コントローラ10のハウジング22に収容されていることから、流量固定式の薬液投与装置と共通の外部流路20を採用することができる。要するに、流量切替機構66を内蔵する薬液注入コントローラ10と流量切替機構66を持たない薬液注入コントローラとの何れかを選択して外部流路20に接続することにより、流量可変式の薬液投与装置12と流量固定式の薬液投与装置を、共通の外部流路20を用いて選択的に得ることができる。
【0076】
メインライン14の流量を切り替える流量切替機構66はハウジング22の先端部分に収容されており、ハウジング22の先端部分にメインライン14が配されると共に、基端部分にはサブライン26及びサブリザーバー24が配される。これにより、流量切替機構66を含むメインライン14の一部と、サブライン26及びサブリザーバー24を含む急速投与機構とを、ハウジング22内にスペース効率良く収容することができる。
【0077】
さらに、流量切替機構66がハウジング22の先端部分に収容されることから、流量切替機構66を作動させる操作部78がハウジング22の先端側に露出している。それ故、患者によって把持される外周面やプッシュボタン34が配される基端側を避けて、操作部78が配置されている。しかも、ハウジング22の先端面が平坦な形状とされており、操作部78の操作突起82を突出状態で露出させ易い。
【0078】
図15には、本発明の第2の実施形態としての薬液注入コントローラ140が示されている。以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0079】
薬液注入コントローラ140は、流量切替機構66の操作部142が、前記実施形態のような操作突起82を備えておらず、4つの嵌合孔144,144,144,144を備えた構造とされている。嵌合孔144は、長方形の孔断面形状を有しており、操作部142の径方向中間部分において操作部142の先端面に開口して形成されている。4つの嵌合孔144,144,144,144は、径方向に放射状に延びており、周方向で略等間隔に配されている。
【0080】
本実施形態の操作部142は、三角柱形状の指針部146が先端面に突出して設けられている。そして、操作部142の外周に向かう指針部146の角の向きによって、操作部142の向き、ひいてはメインライン14の流量設定が外部から視認可能とされている。
【0081】
このような構造とされた操作部142は、図示しない操作ツールを用いて回転操作される。操作ツールは、4つの嵌合孔144,144,144,144に対応する4つの嵌合突起を備えており、各嵌合突起を各嵌合孔144に嵌め入れた状態で操作ツールに外力を加えることにより、操作部142を回転させることが可能とされている。
【0082】
本実施形態に係る薬液注入コントローラ140によれば、操作部142の露出面に突起が少なく、操作部142を指で抓んで回転させることが難しい。それ故、操作ツールを持たない患者などがメインライン14の流量設定を変更してしまうのを防ぎ易くなる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、操作部78は、ハウジング22の先端部分の外周面など、ハウジング22の先端面以外において露出していても良い。
【0084】
操作部78は、常時露出した状態で設けられている必要はない。例えば、操作部78を覆うカバーがハウジング22に取り付けられることで、使用しない操作部78がカバーで覆われて外部に露出しないようにもできる。これにより、患者などが操作部78をより操作し難くなる。また、操作部78の外周を囲む壁を設け、患者が指で摘まみ難くなるようにしてもよい。
【0085】
操作部はハウジングに収容されていても良く、例えば、ハウジング22を貫通するツール挿通孔に棒状の操作ツールを挿入して、収容状態の操作部を操作ツールによって操作可能とすることもできる。このように操作部がハウジングに対して外部に露出することなく収容されていれば、操作ツールを持たない患者などが操作部をより操作し難くなる。
【0086】
流量切替機構66の流量設定を切り替える操作部78の具体的な構造は、特に限定されない。例えば、ハウジング22に設けられたツール挿通孔に棒状の操作ツールを挿入して、ハウジング22内のボタンを操作ツールで押すことによって、流量切替機構66の流量設定が切り替わるようになっていても良い。このように、操作部の操作は回転に限定されず、押し込む、引っ張るなどの他の操作によって流量切替機構66を作動させるようにもできる。
【0087】
前記実施形態では、メインライン14の流量設定を4段階に切替可能とする流量切替機構66を例示したが、2段階又は3段階に切替可能な流量切替機構や、5段階以上に切替可能な流量切替機構を採用することもできる。
【0088】
ハウジング22に対して操作ツール96を設ける位置は、特に限定されず、必ずしも第1の半割体22aと第2の半割体22bの周方向間に挟まれるように設けられる必要はない。
【0089】
操作部78のハウジング22に対する所定量の回転によってクリック感を生じる回転把握機構は、必ずしも操作部78の外周面に形成される凹部86と、ハウジング22における挿通孔79の内周面に形成される凸部88とによって構成されるものに限定されない。具体的には、例えば、ハウジング22の先端面に突出する複数の突起を挿通孔79の周囲に形成し、操作部78からハウジング22の先端面上へ突出する指針部90が、それら突起を乗り越える際にクリック感を生じるようにすることで、回転把握機構を構成することもできる。
【0090】
前記実施形態では、外部流路20に分岐部及び合流部がない構造について例示したが、外部流路20には必要に応じて分岐部及び合流部が設けられ得る。外部流路20において、分岐部及び合流部の数は少ないことが望ましく、分岐部と合流部の間に位置する並列的に延びる部分の長さは短いことが望ましい。これにより、例えば、薬液投与装置12の持ち運びに際して、外部流路20における分岐部と合流部の間の環状部分が引っ掛かり難くなる。
【符号の説明】
【0091】
10,140 薬液注入コントローラ
12 薬液投与装置
14 メインライン
16 メインリザーバー
18 末端コネクタ
20 外部流路
22 ハウジング
22a 第1の半割体
22b 第2の半割体
24 サブリザーバー
26 サブライン
28 流入ライン
30 流出ライン
32 収容領域
34 プッシュボタン
36 コイルスプリング
38 プランジャ
40 ダイヤフラム部
42 ベース部材
44 制限流路
46 プライミング用流路
48 閉止弁
50 スイッチ
52 開閉弁
54 弁体
56 コイルスプリング
58 目印部
60 スリット
62 目盛
64 流量制御部
66 流量切替機構
68 分岐流路
70 三方活栓(コック)
72 第1の流路(切替流路)
74 第2の流路(切替流路)
76 内周部材
77 外周部材
78,142 操作部
79 挿通孔
80 挿通部分
82 操作突起
84 挿入穴
86 凹部(回転把握機構)
88 凸部(回転把握機構)
90,146 指針部(流量設定表示部)
94 表示部(流量設定表示部)
96 操作ツール
98 把持部
100 操作凹部
104 挿入筒部
106 支持部
108 幅狭部
110 幅広部
112 内側部分
114 外側部分
116 凹溝
118 取付穴
120 挿通部
122 収容部
124 連結突起
126 嵌合部
128 切断許容部
130 入力部
132 貫通孔
144 嵌合孔