IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 セルバックの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180611
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】成膜装置および成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/505 20060101AFI20241219BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C23C16/505
C23C16/42
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181464
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2023573113の分割
【原出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022167462
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301071413
【氏名又は名称】株式会社 セルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】和田 和夫
(57)【要約】
【課題】孔または溝の側壁に高い確度で選択的に成膜することができる成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】成膜装置1は、チャンバ101と、基板を支持するステージ190と、チャンバ101内へ原料ガスを供給する原料ガス供給部と、チャンバ101内に供給される原料ガスに高周波の電磁場を印加することによりチャンバ101内にプラズマを発生させる高周波印加部102と、チャンバ101内の原料ガスを含む気体を排気するための真空ポンプ181と、基板に高周波のバイアスを印加するバイアス印加部106と、を備える。チャンバ101の周壁における基板のZ軸方向への投影領域の-X方向側に位置する部分に導入口1012aが配設され、周壁における投影領域の+X方向側に位置する部分に排気口1011aが配設されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置され孔または溝が形成された成膜対象物の成膜対象部分側とは反対側から前記成膜対象物を支持するステージと、
前記チャンバ内へ前記成膜対象物に成膜する膜の基となる原料ガスを導入する原料ガス供給部と、
前記チャンバ内に供給される前記原料ガスに高周波の電磁場を印加することにより前記チャンバ内にプラズマを発生させる高周波印加部と、
前記チャンバ内の原料ガスを含む気体を排気するためのポンプと、
前記ステージに支持された前記成膜対象物に高周波のバイアスを印加するバイアス印加部と、を備え、
前記チャンバには、周壁における前記ステージに保持された前記成膜対象物の前記ステージと前記成膜対象物との並び方向への投影領域を挟んで対向する一方に位置する部分に前記原料ガス供給部から前記原料ガスを前記チャンバの内側へ導入する導入口が配設され、前記周壁における前記投影領域を挟んで対向する他方に位置する部分に前記チャンバ内の前記気体を前記ポンプにより排気するための排気口が配設されている、
成膜装置。
【請求項2】
前記成膜対象物は、孔または溝が形成された基板であり、前記成膜対象部分が前記孔または前記溝の側壁であり、
前記原料ガス供給部は、前記チャンバ内へ前記膜の基となる原料ガスとして、SiHガスおよびOガスを供給し、
前記チャンバ内の圧力は、1Paで維持され、
前記チャンバ内へ導入される前記SiHガスの流量は、5sccmよりも大きく且つ30sccm未満であり、前記チャンバ内へ導入される前記Oガスの流量は、10sccmよりも大きく且つ200sccm未満である、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記バイアス印加部は、前記成膜対象物に1000Wの高周波電力を印加し、
前記チャンバ内へ導入される前記SiHガスの流量は、10sccmであり、
前記チャンバ内へ導入される前記Oガスの流量は、20sccmである、
請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記チャンバ内へ前記成膜対象物をエッチングするためのArガスを導入するArガス供給部を更に備え、
前記原料ガス供給部は、前記原料ガスを供給する前に、前記Arガス供給部からArガスを前記チャンバ内へ導入した状態で、前記高周波印加部が、前記チャンバ内に供給されたArガスに高周波の電磁場を印加することにより前記チャンバ内にArプラズマを発生させ、前記成膜対象物を前記Arプラズマに2min以上且つ10min以下の時間だけ曝露させ、
前記チャンバ内へ導入される前記Arガスの流量は、300sccm以上且つ500sccm以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記Arプラズマ曝露工程において、前記チャンバ内の圧力は、2Paで維持され、
前記チャンバ内へ導入される前記Arガスの流量は、300sccmである、
請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記高周波印加部は、
高周波電力を発生する高周波発生源と、
前記チャンバの外側に配置されるとともに、前記チャンバ内に前記原料ガスが充填された状態で前記高周波発生源が発生した前記高周波電力が供給されることにより、前記チャンバ内に高周波磁界を発生させて前記チャンバ内にプラズマを発生させる誘導コイルと、を有し、
前記誘導コイルは、
平面視渦巻き状に延在し、中央部側の一端部が前記高周波発生源の出力端に電気的に接続され、外側の他端部が接地された第1渦巻き部と、
平面視渦巻き状に延在し、前記第1渦巻き部と隣り合う位置に配置されるとともに、中央部側の一端部が前記高周波発生源の出力端に電気的に接続され、外側の他端部が接地された第2渦巻き部と、を有し、
前記第2渦巻き部の巻回方向は、前記第1渦巻き部の巻回方向と逆向きである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
ステージに支持された孔または溝が形成された成膜対象物に高周波電圧を印加しながら、前記成膜対象物に成膜する膜の元となる原料ガスを、前記成膜対象物の前記ステージと前記成膜対象物との並び方向への投影領域を挟んで対向する一方から前記成膜対象物の上側を通って前記投影領域を挟んで対向する他方へ流しつつ、前記原料ガスに高周波の電磁場を印加することによりプラズマを発生させることで、前記成膜対象物に成膜する成膜工程を含む、
成膜方法。
【請求項8】
前記成膜工程において、
前記ステージは、チャンバ内に配置され、
前記チャンバの周壁における前記成膜対象物の前記ステージと前記成膜対象物との並び方向への投影領域を挟んで対向する一方に位置する部分に配設された前記原料ガスを前記チャンバの内側へ導入する導入口から前記チャンバ内へ前記原料ガスを導入し、前記周壁における前記投影領域を挟んで対向する他方に位置する部分に配設された前記チャンバ内の前記原料ガスを含む気体を排気するための排気口から前記チャンバ内の前記気体を排出する、
請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記成膜対象物は、孔または溝が形成された基板であり、成膜対象部分が前記孔または前記溝の側壁であり、
前記成膜工程において、
前記原料ガスは、少なくともSiHガスおよびOガスを含み、
成膜時の圧力を、1Paで維持し、
前記SiHガスの流量を、5sccmよりも大きく且つ30sccm未満に設定し、
前記Oガスの流量を、10sccmよりも大きく且つ200sccm未満に設定する、
請求項7または8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記成膜工程において、
前記SiHガスの流量を、10sccmに設定し、
前記Oガスの流量を、20sccmに設定し、
前記成膜対象物に1000Wの高周波電力を印加する、
請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記成膜工程の前に、Arガスを前記ステージが内側に配置されたチャンバ内へ導入した状態で、前記チャンバ内に供給されたArガスに高周波の電磁場を印加することにより前記チャンバ内にArプラズマを発生させ、前記成膜対象物を前記Arプラズマに2min以上且つ10min以下の時間だけ曝露させるArプラズマ曝露工程を更に含み、
前記チャンバ内へ導入される前記Arガスの流量は、300sccm以上且つ500sccm以下である、
請求項7または8に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記Arプラズマ曝露工程において、
前記チャンバ内の圧力は、2Paで維持され、
前記チャンバ内へ導入される前記Arガスの流量は、300sccmである、
請求項11に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の前面側に沿って配置されたレベル間誘電体(ILD)構造内に配されている複数の金属配線層と、基板の裏面側に沿って配された誘電体層と、誘電体層の上に配された導電性ボンドパッドと、複数の金属配線層のうちの1つの金属配線層から、基板および誘電体層を貫き、導電性ボンドパッドまで延伸する裏面側基板貫通ビア(BTSV)と、導電性ボンドパッドの上に配された導電性バンプと、BTSVの側壁に沿って配されたBTSVライナを備える集積チップが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-91840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたような集積チップの製造方法において、BTSV開口の底に露出する金属配線層とBTSVと間に誘電体膜が介在しないようにBTSV開口の内壁にBTSVライナの元となる誘電体膜を高い確度で選択的に成膜することが要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、孔または溝の側壁に高い確度で選択的に成膜することができる成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る成膜装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置され孔または溝が形成された成膜対象物の成膜対象部分側とは反対側から前記成膜対象物を支持するステージと、
前記チャンバ内へ前記成膜対象物に成膜する膜の基となる原料ガスを導入する原料ガス供給部と、
前記チャンバ内に供給される前記原料ガスに高周波の電磁場を印加することにより前記チャンバ内にプラズマを発生させる高周波印加部と、
前記チャンバ内の原料ガスを含む気体を排気するためのポンプと、
前記ステージに支持された前記成膜対象物に高周波のバイアスを印加するバイアス印加部と、を備え、
前記チャンバには、周壁における前記ステージに保持された前記成膜対象物の前記ステージと前記成膜対象物との並び方向への投影領域を挟んで対向する一方に位置する部分に前記原料ガス供給部から前記原料ガスを前記チャンバの内側へ導入する導入口が配設され、前記周壁における前記投影領域を挟んで対向する他方に位置する部分に前記チャンバ内の前記気体を前記ポンプにより排気するための排気口が配設されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導入口からチャンバ内に導入された原料ガスが、成膜対象物のステージ側とは反対側に沿って排気口に向かって流れるので、成膜対象部分が成膜対象物に形成された孔または溝の側壁である場合、孔または溝の底部分への膜の形成が抑制され、成膜対象部分である孔または溝の側壁に高い確度で選択的に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る成膜装置の概略構成図である。
図2】実施の形態1に係る成膜装置の正面図である。
図3】実施の形態1に係る成膜装置の一部の底面図である。
図4A】実施の形態1に係る半導体製造方法における多層構造形成工程後の状態を示す断面図である。
図4B】実施の形態1に係る半導体製造方法における貫通孔形成工程後の状態を示す断面図である。
図5A】実施の形態1に係る半導体製造方法における側壁成膜工程後の状態を示す断面図である。
図5B】実施の形態1に係る半導体製造方法におけるシンタ工程後の状態を示す断面図である。
図6】実施の形態1に係る半導体製造方法における電極埋込工程後の状態を示す断面図である。
図7A】比較例1に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図7B】比較例2に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図7C】比較例3に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図8A】実施例1に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図8B】比較例4に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図8C】比較例5に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図9A】比較例6に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図9B】比較例7に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図10】本発明の実施の形態2に係る成膜装置の概略構成図である。
図11A】実施例2に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図11B】実施例2に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図12A】実施例3に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
図12B】実施例3に係る成膜方法により成膜した基板の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る成膜装置は、チャンバと、チャンバ内に配置され成膜対象物の成膜対象部分側とは反対側から成膜対象物を支持するステージと、チャンバ内へ成膜対象物に成膜する膜の基となる原料ガスを導入する原料ガス供給部と、チャンバ内に供給される原料ガスまたはエッチャントガスに高周波の電磁場を印加することによりチャンバ内にプラズマを発生させる高周波印加部と、チャンバ内の原料ガスを含む気体を排気するためのポンプと、ステージに支持された成膜対象物に高周波のバイアスを印加するバイアス印加部と、を備える。そして、チャンバには、その周壁におけるステージに保持された成膜対象物のステージと成膜対象物との並び方向への投影領域を挟んで対向する一方に位置する部分に原料ガス供給部から原料ガスをチャンバの内側へ導入する導入口が配設され、周壁における投影領域を挟んで対向する他方に位置する部分にチャンバ内の気体をポンプにより排気するための排気口が配設されている。
【0010】
本実施の形態に係る成膜装置は、いわゆる誘導結合プラズマ型CVD装置であり、図1に示すように、この成膜装置1は、チャンバ101と、ステージ190と、高周波印加部102と、バイアス印加部106と、原料ガス供給部121、122、123と、を備える。また、成膜装置1は、図2に示すように、チャンバ101を支持する支持台109を備える。この成膜装置1は、例えばチャンバ101内に配置された基板W1の上面側にSiOのような酸化膜、SiONのような酸窒化絶縁膜、SiNのような窒化膜等の絶縁膜を成膜する。ここで、基板W1は、例えばSi基板、サファイヤ基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0011】
チャンバ101は、扁平な矩形箱状であり厚さ方向における一面側が開放されたチャンバ本体1011と、チャンバ本体1011の開放部分を覆う蓋体1012と、を有する。蓋体1012は、環状でありチャンバ本体1011の+Z方向側の端面全体に亘って配設されたOリングのようなシール部材(図示せず)を介してチャンバ本体1011に装着されておりチャンバ101内が密閉されている。また、蓋体1012を厚さ方向から見たときの蓋体1012の中央部には、開口部1012bが形成されている。そして、蓋体1012には、後述する供給管125から供給される原料ガス、エッチャントガスをチャンバ101内へ導入するための導入口1012aが形成されている。この導入口1012aは、蓋体1012の開口部1012bの内壁に開口している。また、蓋体1012の+Z方向側には、ガラスのような誘電体材料から形成され開口部1012bを閉塞するように配置された誘電体窓141と、誘電体窓141を蓋体1012に固定する窓固定部材142と、が配設されている。
【0012】
支持台109は、+Z方向側にチャンバ101が載置されたベース部材1092と、ベース部材1092を支持する支持フレーム1091と、を有する。支持フレーム1091は、外形が略直方体状となるようにフレームを組み合わせることにより形成されており、内側にフレームで囲まれた略直方体状の領域S1が形成されている。
【0013】
図1に戻って、ステージ190は、チャンバ101内に配置され、絶縁膜を成膜する対象となる基板W1を支持する。このステージ190は、Al、SUS、Cu等の金属で形成されている。また、ステージ190には、基板W1を加熱するためのヒータ191が埋設されている。
【0014】
原料ガス供給部121、122、123は、チャンバ101内へ絶縁膜の基となる原料ガスを導入する。原料ガスとしては、例えばSiH、O、Nが挙げられる。原料ガス供給部121は、例えばSiHガスを貯留するガス貯留部121aと、ガス貯留部121aからSiHガスが供給される供給管121bと、を有する。また、原料ガス供給部121は、供給管121bに接続され供給管121bを流れる原料ガスを希釈するための希釈用ガスを供給管121b内へ供給する供給管121eを有する。希釈用ガスとしては、例えばHガスを採用することができる。更に、原料ガス供給部121は、供給管121bを流れる原料ガスの流量を調節するための流量調節バルブ121cと、供給管121eを流れる希釈用ガスの流量を調節するための流量調節バルブ121dと、を有する。原料ガス供給部122は、例えばOガスを貯留するガス貯留部122aと、ガス貯留部121aからOガスが供給される供給管122bと、供給管122bを流れるOガスの流量を調節するための流量調節バルブ122cと、を有する。原料ガス供給部123は、例えばNガスを貯留するガス貯留部123aと、ガス貯留部123aからNガスが供給される供給管123bと、供給管123bを流れるNガスの流量を調節するための流量調節バルブ123cと、を有する。供給管121b、122b、123bは、供給管125に共通接続されている。供給管125は、図2に示すように、長尺の管状であり供給管121b、122b、123bが共通接続された第1部位1251と、長尺の管状であり一端部で第1部位1251の内側に連通し+Z方向側まで屈曲しながら延在する第2部位1252と、を有する。また、供給管125の第2部位1252の他端部は、結合部1253を介して蓋体1012に配設された後述する導入口1012aに連通している。
【0015】
図1に戻って、チャンバ101には、周壁おけるステージ109に保持された基板W1のステージ190と基板W1の並び方向、即ちZ軸方向の投影領域A1を挟んで対向する-X方向に位置する部分に原料ガスをチャンバ101の内側へ導入する導入口1012aが配設されている。また、チャンバ101の周壁における投影領域A1を挟んで対向する+X方向に位置する部分には、チャンバ101内の原料ガスが真空ポンプ181により排気される排気口1011aが配設されている。真空ポンプ181は、チャンバ101の周壁に配設された排気口1011aに連通する排気管182に接続されている。真空ポンプ181は、例えばターボ分子ポンプを採用することができる。この真空ポンプ181が動作することにより、チャンバ101内の原料ガスを含む気体が排気口1011aおよび排気管182を通じて排気され、チャンバ101内が減圧状態となる。
【0016】
高周波印加部102は、高周波電力を発生する高周波発生源1021と、整合器1022と、チャンバ101の外側においてチャンバ101の誘電体窓141に対向して配置された誘導コイル1023と、を有する。また、高周波印加部102は、図2に示すように、扁平な矩形箱状であり高周波発生源1021および整合器1022を収納する筐体1024aと、扁平な矩形箱状であり誘導コイル1023の一部を収納する筐体1024bと、を有する。更に、高周波印加部102は、筐体1024bの-Z方向側において誘導コイル1023を囲繞するように配置された枠体1025を有する。
【0017】
誘導コイル1023は、金属のような導体から長尺に形成され、チャンバ101の外側に配置されるとともに、チャンバ101内に原料ガスのような気体が充填された状態で高周波発生源1021から高周波電力が供給されることにより、チャンバ101内に高周波磁界を発生させてチャンバ101内にプラズマPLMを発生させる。誘導コイル1023は、枠体1025の内側における+Y方向側の領域に配置されたサブコイル10231と-Y方向側に配置されたサブコイル10232とを含む。また、筐体1024bの内側の領域と枠体1025の内側の領域は、図3に示す遮蔽板1024cにより隔てられており、誘導コイル1023は、この遮蔽板1024cに固定されている。
【0018】
サブコイル10231は、図3に示すように、平面視渦巻き状に延在している渦巻き部10231aと、平面視渦巻き状に延在しX軸方向において渦巻き部10231aと隣り合う位置に配置された渦巻き部10231bと、を有する。ここで、渦巻き部10231a、10231bは、それぞれ、最も外側に位置する端部が固定部材10233を介して遮蔽板1024cに接地されている。渦巻き部10231aは、-Z方向側から見たときに右回りに渦巻き状に延在しており、渦巻き部10231bは、左回りに渦巻き状に延在している。また、サブコイル10231は、渦巻き部10231a、10231bの最も外側における+Y方向置された端部同士を連結する連結部10231cを有する。更に、サブコイル10231の渦巻き部10231a、10231bそれぞれのX軸方向における中央部に配置された端部は、高周波発生源1021の出力端に電気的に接続されている。また、サブコイル10232も、平面視渦巻き状に延在している渦巻き部10232aと、平面視渦巻き状に延在しX軸方向において渦巻き部10232aと隣り合う位置に配置された渦巻き部10232bと、を有する。ここで、渦巻き部10231a、10231bは、それぞれ、最も外側に位置する端部が固定部材10233を介して遮蔽板1024cに接地されている。渦巻き部10232aは、-Z方向側から見たときに左回りに渦巻き状に延在し、渦巻き部10232bは、右回りに渦巻き状に延在している。また、サブコイル10232も、渦巻き部10232a、10232bの最も外側における+Y方向側に配置された端部同士を連結する連結部10232cを有する。更に、サブコイル10232の渦巻き部10232a、10232bそれぞれのX軸方向における中央部に配置された端部も、高周波発生源1021の出力端に電気的に接続されている。
【0019】
遮蔽板1024cは、Y軸方向における中央部よりも+Y方向側でX軸方向に並列し遮蔽板1024cの厚さ方向に貫通する4つの貫通孔1024c1が設けられている。そして、サブコイル10231、10232それぞれの端部が、遮蔽板1024cの-Z方向側から貫通孔1024c1に挿通されて遮蔽板1024cの+Z方向側へ延在している。また、サブコイル10231、10232それぞれの端部は、絶縁保持部10235を介して遮蔽板1024cに固定されている。絶縁保持部10235は、例えばセラミックスから形成されている。
【0020】
また、サブコイル10231の渦巻き部10231a、10231bそれぞれの最も-Y方向側の部分が、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10234により遮蔽板1024cに固定され、渦巻き部10231a、10231bそれぞれの連結部10231cに接続される端部が、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10233により遮蔽板1024cに固定されている。また、サブコイル10232の渦巻き部10232a、10232bそれぞれの最も-Y方向側の部分も、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10234より遮蔽板1024cに固定され、渦巻き部10232a、10232bそれぞれの連結部10232cに接続される端部も、遮蔽板1024cの-Z方向側に配置された固定部材10233より遮蔽板1024cに固定されている。ここで、固定部材10234は、サブコイル10231、10232が内側に配置される溝が形成された絶縁ブロック10234aと、平面視長方形状であり絶縁ブロック10234aにおける溝10234a2側に配置されサブコイル10231、10232を絶縁ブロック10234aに固定するための固定片10234bと、を有する。絶縁ブロック10234aは、例えばセラミックスから形成され、固定片10234bは、例えば銅のような金属から形成されている。固定部材10233は、例えば銅のような金属から形成されている。
【0021】
図1に戻って、高周波印加部102は、誘導コイル1023に高周波数(例えば周波数13.56MHz)の交流を印加することにより、チャンバ101内に供給された原料ガスまたはエッチャントガスに高周波数の電磁場を印加する。これにより、チャンバ101内にプラズマPLMが発生する。バイアス印加部106は、ステージ190に支持された基板W1に高周波のバイアスを印加する。バイアス印加部106は、ステージ190に対して0Vと-2000Vの負電圧との間で振動する高周波電圧(例えば周波数13.56MHzの高周波電圧)を印加する。バイアス印加部106は、高周波発生源1061と整合器1062とを有する。
【0022】
次に、本実施の形態に係る配線層の製造方法について図4乃至図6を参照しながら説明する。まず、図4Aに示すような、Si基板である基板W1と、基板W1上に形成された絶縁体層L1と、絶縁体層L1に埋設された金属層P1と、金属層P1上に形成された金属層P2と、金属層P2を覆うように形成された絶縁体層L3と、絶縁体層L3上に形成された絶縁体層L4と、絶縁体層L2上に配置されたSi基板である基板W2と、基板W2上に形成された絶縁体層L2と、を備える複合基板を準備する。ここで、絶縁体層L1、L2、L4は、SiOから形成され、絶縁体層L3は、SiNから形成されている。また、金属層P1は、Cuから形成され、金属層P2は、TiまたはNiから形成されている。更に、基板W2の厚さTH1は、例えば30μm以上50μm以下に設定されている。
【0023】
次に、図4Bに示すように、絶縁体層L2、基板W2、絶縁体層L4、L3を貫通して金属層P2の表面にまで到達する貫通孔TR1をエッチングにより形成する。続いて、本実施の形態に係る成膜装置1を使用して、図5Aに示すように、貫通孔TR1の内側壁並びに絶縁体層L2の上面にライナ層L5を形成する。ここで、ライナ層L5は、SiO、SiN、SiON等から形成されている。ここで、複合基板におけるライナ層L5を成膜する成膜対象部分は、貫通孔TR1の側壁になる。ここで、成膜装置1は、ステージ190により絶縁体層L2側とは反対側から支持された複合基板成にバイアス印加部106により高周波電圧を印加しながら、SiHガスおよびOガスを、複合基板の厚さ方向への投影領域(図1の投影領域A1を参照)を挟んで対向する一方から複合基板の絶縁体層L2側を通って投影領域を挟んで対向する他方へ流しつつ、SiHガスおよびOガスに高周波の電磁場を印加することによりプラズマを発生させることで、貫通孔TR1の側壁にSiOから形成されたライナ層L5を成膜する。このとき、チャンバ101内の圧力を、1Paで維持する。また、チャンバ101内へ導入されるSiHガスの流量は、5sccmよりも大きく且つ30sccm未満に設定され、チャンバ101内へ導入されるOガスの流量は、10sccmよりも大きく且つ200sccm未満に設定される。その後、複合基板を加熱することにより図5Bに示すように、メタライズ層P3を形成する。次に、図6に示すように、貫通孔TR1を金属層P4で埋め込むことにより配線層を形成する。
【0024】
ここで、本実施の形態に係る成膜方法の一実施例の成膜方法について、比較例に係る成膜方法と比較しながら説明する。実施例1並びに比較例1乃至7に係る成膜方法では、幅1μm、深さ3μm、長さ50mmの溝を5μm間隔で5本形成された直径4インチのSi基板上にSiO膜の成膜を行った。この溝が形成されたSi基板は、次のようにして作製した。まず、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM)を用いてスピン洗浄を行うことによりSi基板表面に付着した有機物を除去した後、Si基板を90℃で90分間維持することにより乾燥させた。次に、スピンコート技術を利用してヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)をSi基板表面に塗布した後、ポジ型のフォトレジストをSi基板表面に塗布した。続いて、フォトレジストにおける溝を形成する部分に対応する箇所にレーザ光を照射した後、フォトレジストを110℃で90分間維持した。そして、Si基板を現像液に浸漬させることによりレーザ光が照射された部分を除去してから、フォトレジストをマスクとしてドライエッチングを行いSi基板に溝を形成し、その後、レジストを除去することで溝が形成されたSi基板を得た。
【0025】
実施例並びに比較例に係る成膜方法では、溝が形成されたSi基板を、前述のステージ190に保持させてから、チャンバ101内にSiHガス、Oガス、Nガスを導入するとともに、バイアス印加部106によりSi基板に高周波バイアスを印加しつつSiOの成膜を行った。ここで、実施例1並びに比較例1乃至7に係る成膜方法では、いずれもチャンバ101内の圧力を1Paで維持した。実施例1並びに比較例1乃至7に係る成膜方法それぞれにおける各原料ガスのガス流量、高周波印加部102から出力される高周波電力(RF電力(ICP))、バイアス印加部106から出力される高周波電力(RF電力(Bias))並びに成膜時間は、下記表1に示す通りである。
【0026】
【表1】
【0027】
なお、比較例4に係る成膜方法では、表1の「比較例4」に対応する上段の条件でSiO膜の成膜を行った後、下段の条件でSiO膜の成膜を行った。また、比較例5に係る成膜方法では、表1の「比較例5」に対応する条件でSiO膜の成膜を行った後、エッチャントガスであるCFガスを200sccmの流量でチャンバ101内に供給してチャンバ101内の圧力を1Paで維持した状態で10分間SiO膜をエッチングする処理を12回繰り返した。
【0028】
比較例1乃至3に係る成膜方法によりSiO膜の成膜を行った後の前述のSi基板の断面をSEMで観察した結果を、それぞれ、図7A乃至図7Cに示す。図7A乃至図7Cの破線で囲んだ部分PA11、PA21、PA31に示すように、いずれの成膜方法においても溝の上端がSiO膜で塞がれた状態となった。また、溝の底部には、破線で囲んだ部分PA12、PA22、PA32に示すように、いずれの成膜方法においても高さ約300nm乃至400nmのSiO膜の堆積が確認された。
【0029】
実施例1並びに比較例4、5に係る成膜方法によりSiO膜の成膜を行った後の前述のSi基板の断面をSEMで観察した結果を、それぞれ、図8A乃至図8Cに示す。図8Aに示すように、実施例1に係る成膜方法では、溝の上端がSiO膜で塞がれておらず、且つ、溝の底部にもSiO膜の堆積が確認されなかった。即ち、SiO膜が、溝の側壁のみに選択的に形成されていることが確認された。一方、図8Bおよび図8Cの破線で囲んだ部分PA41、PA42に示すように、比較例4、5に係る成膜方法では、溝の一部がSiO膜で塞がれた状態となった。なお、比較例4、5のいずれの成膜方法においても溝の底部にSiO膜の堆積は確認されなかった。
【0030】
比較例6、7に係る成膜方法によりSiO膜の成膜を行った後の前述のSi基板の断面をSEMで観察した結果を、それぞれ、図9Aおよび図9Bに示す。図9Aおよび図9Bに示すように、比較例6、7に係る成膜方法では、溝の側壁から底部に亘ってSiO膜が堆積した状態が確認された。
【0031】
これらの結果から、溝の側壁に選択的にSiO膜を成膜する場合、成膜時にチャンバ101内へ導入されるSiHガスの流量が、5sccmよりも大きく且つ30sccm未満であり、チャンバ101内へ導入されるOガスの流量が、10sccmよりも大きく且つ30sccm未満であることが好ましいことが判った。特に、実施例1に係る成膜方法に対応する結果から、成膜時において、バイアス印加部106によりSi基板に1000Wの高周波電力を印加しつつ、チャンバ101内へ導入されるSiHガスの流量を10sccmとし、チャンバ101内へ導入されるOガスの流量を、20sccmとすることがより好ましいことが判った。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係る成膜装置1によれば、チャンバ101の導入口1012aからチャンバ101内に導入された原料ガスが、複合基板の表面に沿ってチャンバ101の排気口1011aに向かって流れる。従って、例えば図4Bに示すように、複合基板に貫通孔TR1が形成されている場合、貫通孔TR1の底の金属層P2が露出した部分への膜形成が抑制され、貫通孔TR1の側壁に高い確度で選択的にライナ層L5を成膜することができる。
【0033】
また、本実施の形態に係る誘導コイル1023は、サブコイル10231、10232を有し、サブコイル10231の渦巻き部10231aの巻回方向が、渦巻き部10231bの巻回方向と逆向きになっている。また、サブコイル10232の渦巻き部10232aの巻回方向も、渦巻き部10232bの巻回方向と逆向きになっている。これにより、サブコイル10231、10232それぞれで発生する磁場の分布を均一にすることができるので、チャンバ101内に比較的均一なプラズマPLMを発生させることができる。
【0034】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る成膜方法は、成膜対象物の成膜対象部分側基板上に絶縁体層を成膜する成膜工程の前に、Arガスをチャンバ内へ導入した状態で、チャンバ内に供給されたArガスに高周波の電磁場を印加することによりチャンバ内にArプラズマを発生させ、成膜対象物の成膜対象部分側を、Arイオンを含むArプラズマに曝露させるArプラズマ曝露工程を含む点で実施の形態1と相違する。
【0035】
図10に示すように、本実施の形態に係る成膜装置2001は、チャンバ101と、ステージ190と、高周波印加部102と、バイアス印加部106と、原料ガス供給部121、122、123と、Arガス供給部2124と、を備える。なお、図10において、実施の形態1と同様の構成については図1と同一の符号を付している。Arガス供給部2124は、チャンバ101内へArガスを導入する。Arガス供給部2124は、例えばArガスを貯留するガス貯留部124aと、ガス貯留部124aからArガスが供給される供給管124bと、を有する。また、Arガス供給部2124は、供給管124bに接続され供給管124bを流れるArガスを希釈するための希釈用ガスを供給管124b内へ供給する供給管124eを有する。希釈用ガスとしては、例えばHガスを採用することができる。更に、Arガス供給部2124は、供給管124bを流れるArガスの流量を調節するための流量調節バルブ124cと、供給管124eを流れる希釈用ガスの流量を調節するための流量調節バルブ124dと、を有する。また、供給管124bは、蓋体1012に配設された導入口(図示せず)を介してチャンバ101内に連通している。
【0036】
本実施の形態に係る配線層の製造方法は、実施の形態1に係る配線層の製造方法と略同様であり、図5Aに示すように、貫通孔TR1の内側壁並びに絶縁体層L2の上面にライナ層L5を形成する工程のみが実施の形態1と相違する。本実施の形態では、まず、成膜装置2001において、Arガスをチャンバ101内へ導入した状態で、チャンバ101内に供給されたArガスに高周波の電磁場を印加することによりチャンバ101内にプラズマを発生させる。そして、チャンバ101内において、複合基板における貫通孔TR1が開口する側を、Arイオンを含むプラズマに2min以上且つ10min以下の時間だけ曝露させるArプラズマ曝露工程を行う。ここで、チャンバ101内へ導入されるArガスの流量は、300sccm以上且つ500sccm以下に設定される。また、チャンバ101内の圧力は、2Paで維持される。Arプラズマ曝露工程において、プラズマに含まれるArが貫通孔TR1の側壁に照射され、貫通孔TR1の開口端部がエッチングされる。次に、成膜装置2001は、チャンバ101内からArガスを排出した後、ステージ190により絶縁体層L2側とは反対側から支持された複合基板成にバイアス印加部106により高周波電圧を印加しながら、SiHガスおよびOガスをチャンバ101内に導入して、SiHガスおよびOガスに高周波の電磁場を印加することによりプラズマを発生させることで、貫通孔TR1の側壁にSiOから形成されたライナ層L5を成膜する成膜工程を行う。このとき、チャンバ101内の圧力を、1Paで維持する。
【0037】
ここで、本実施の形態に係る成膜方法の実施例2および実施例3の成膜方法について説明する。各実施例に係る成膜方法では、前述の実施例1と同様に、幅1μm、深さ3μm、長さ50mmの溝を5μm間隔で5本形成された直径4インチのSi基板上にSiO膜の成膜を行った。この溝が形成されたSi基板の作製方法は、前述の実施例1の場合と同様である。実施例2、3に係る成膜方法では、溝が形成されたSi基板を、前述のステージ190に保持させてから、前述のArプラズマ曝露工程を行った後、チャンバ101内にSiHガス、Oガス、Nガスを導入するとともに、バイアス印加部106によりSi基板に高周波バイアスを印加しつつSiOの成膜を行う成膜工程を行った。ここで、実施例2および実施例3に係る成膜方法では、いずれもArプラズマ曝露工程におけるチャンバ101内の圧力を2Paで維持し、Arガスの流量を400sccmに設定した。また、Arプラズマ曝露工程におけるSi基板の溝が形成された面側のArイオンを含むプラズマへの曝露時間は、実施例2では10minに設定し、実施例3では5minに設定した。また、実施例2および実施例3に係る成膜工程におけるSiHガス、Oガス、Nガスそれぞれのガス流量は、いずれも10sccm、100sccm、100sccmに設定し、チャンバ101内の圧力を1Paで維持した。更に、高周波印加部102から出力される高周波電力(RF電力(ICP))、バイアス印加部106から出力される高周波電力(RF電力(Bias))は、いずれも100W、500Wに設定した。また、実施例2に係る成膜工程における成膜時間は、60minに設定し、実施例3に係る成膜工程における成膜時間は、100minに設定した。
【0038】
実施例2に係る成膜方法によりSiO膜の成膜を行った後の前述のSi基板の断面をSEMで観察した結果を、それぞれ、図11Aおよび図11Bに示す。なお、図11Bの写真は、図11Aの写真における破線で囲んだ部分AP201を拡大した写真である。図11Aおよび図11Bに示すように、実施例2に係る成膜方法では、溝の上端がSiO膜で塞がれておらず、且つ、溝の底部にもSiO膜の堆積が確認されなかった。即ち、SiO膜が、溝の側壁のみに選択的に形成されていることが確認された。また、実施例3に係る成膜方法によりSiO膜の成膜を行った後の前述のSi基板の断面をSEMで観察した結果を、それぞれ、図12Aおよび図12Bに示す。なお、図12Bの写真は、図12Aの写真における破線で囲んだ部分AP202を拡大した写真である。図12Aおよび図12Bに示すように、実施例2に係る成膜方法においても、溝の上端がSiO膜で塞がれておらず、且つ、溝の底部にもSiO膜の堆積が確認されなかった。即ち、SiO膜が、溝の側壁のみに選択的に形成されていることが確認された。また、図8Aの写真と、図11A乃至図12Bの写真との比較結果から、実施例2および実施例3に係る成膜方法では、実施例1に係る成膜方法に比べて、SiO膜が溝の側壁に選択的に成膜されていることが確認できる。
【0039】
これらの結果から、溝の側壁に選択的にSiO膜を成膜する場合、成膜工程の前に、Si基板の溝が形成された面側を、Arイオンを含むプラズマに曝露することが好ましいことが判った。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態に係る成膜方法によれば、SiO膜を成膜する成膜工程の前に、Arガスをチャンバ101内へ導入した状態で、チャンバ101内に供給されたArガスに高周波の電磁場を印加することによりチャンバ101内にプラズマを発生させ、複合基板をプラズマに曝露させるArプラズマ曝露工程を含む。これにより、例えば図4Bに示すように、複合基板に貫通孔TR1が形成されている場合、貫通孔TR1の底の金属層P2が露出した部分への膜形成が抑制され、貫通孔TR1の側壁に高い確度で選択的にライナ層L5を成膜することができる。
【0041】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば基板W上にSiN膜、AlN膜等の他の種類の膜を成膜するものであってもよい。
【0042】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0043】
本出願は、2022年10月19日に出願された日本国特許出願特願2022-167462号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2022-167462号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、MEMS(Micro Electron Mechanical System)、MOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)等の電子デバイスの製造に好適である。
【符号の説明】
【0045】
1,2001:成膜装置、101:チャンバ、102:高周波印加部、106:バイアス印加部、109:支持台、121、122、123:原料ガス供給部、181:真空ポンプ、182:排気管、190:ステージ、121a,122a、123a、124a:ガス貯留部、121b,121e,122b,123b,124b,124e,125:供給管、121c,121d,122c,123c、124c、124d:流量調節バルブ、141:誘電体窓、142:窓固定部材、190:ステージ、191:ヒータ、1011:チャンバ本体、1011a:排気口、1012:蓋体、1012a:導入口、1012b:開口部、1021,1061:高周波発生源、1022,1062:整合器、1023:誘導コイル、1024a,1024b:筐体、1024c:遮蔽板、1024c1:貫通孔、1025:枠体、1091:支持フレーム、1092:ベース部材、1251:第1部位、1252:第2部位、1253:結合部、2124:Arガス供給部、10231,10232:サブコイル、10231a,10231b,10232a,10232b:渦巻き部、10231c,10232c:連結部、10233,10234:固定部材、10234a:絶縁ブロック、10234b:固定片、10235:絶縁保持部、L1,L2,L3:絶縁体層、L5:ライナ層、P1,P2:金属層、P3:メタライズ層、PLM:プラズマ、TR1:貫通孔、W1,W2:基板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B