(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180620
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】硝酸レダクターゼの突然変異による植物における硝酸塩レベルの調節
(51)【国際特許分類】
C12N 5/04 20060101AFI20241219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C12N5/04 ZNA
C12N5/10
C12N5/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181810
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2021537080の分割
【原出願日】2019-12-16
(31)【優先権主張番号】18215913.7
(32)【優先日】2018-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ボヴェ ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】カンパノーニ プリスカ
(72)【発明者】
【氏名】ゲプフェルト シモン
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物中の硝酸塩レベルを低減する技術を提供することを目的としている。
【解決手段】(a) 配列番号5または配列番号7の連続するポリペプチド配列を含む硝酸レダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、メチオニンが、対照植物細胞と比較して、植物細胞中の硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換される、ポリヌクレオチド配列、(b) (a)に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、ポリペプチド配列、または(c) (b)に記載されるポリヌクレオチド配列を含む構築物、ベクターまたは発現ベクターを含む、植物細胞。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞であって、
(a) 配列番号5または配列番号7の連続するポリペプチド配列を含む硝酸レダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、メチオニンが、対照植物細胞と比較して前記植物細胞中の硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換されている、ポリヌクレオチド配列、
(b) (a)に記載した前記ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列、または
(c) (b)に記載した前記ポリヌクレオチド配列を含む構築物、ベクター、または発現ベクター
を含む、植物細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸塩レベルが低下した植物、植物に由来する植物細胞、植物から生成された製品、および硝酸レダクターゼ酵素を突然変異させることによる植物中の硝酸塩レベルを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ植物等の特定の植物は葉に高レベルの遊離硝酸塩を蓄積する。このことは高レベルの硝酸塩がたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)と称される発がん性化合物の形成に関係するので好ましくない。TSNAは主にたばこ葉の乾燥時に生成される化合物のクラスであるが、葉のその後の加工および保存で発生し得、また燃焼の間で熱合成を介して生成する可能性がある。乾燥葉で発見される二つのTSNA、N-ニトロソノルニコチン(NNN)および4-(メチルニトロソアミノ)-l-(3-ピリジル)-l-ブタノン(NNK)は国際がん研究機関によるグループI発がん物質(最高表示)に分類される。様々なたばこ関連がんとこれらの化合物を意味づける証拠を理由に、世界保健機関が将来のたばこ製品がこれらの毒物の低減されたレベルを有することを確保する実施を強制することを推奨した。TSNAは代表的なたばこアルカロイドのニトロソ化産物である。空気乾燥したたばこでは亜硝酸塩がTSNA形成の直接的に関与する物質であるとした一般的合意がある。しかし、その細胞毒性から、一般的に植物組織の内因性亜硝酸塩レベルは非常に低い。代わりに、TSNA形成に関与する大部分の亜硝酸塩は、6~10週間の乾燥工程の間に葉面に生息する微生物の硝酸レダクターゼ活性から誘導されると考えられており、この間に細胞膜およびオルガネラが分解されてくるにつれて葉の硝酸塩プールの一部が亜硝酸塩に変換する。
【0003】
TSNAは主に葉の乾燥処理の間に形成され、たばこアルカロイドのニトロソ化を伴う。乾燥処理済み葉のTSNA含有量およびレベルを低下させるための遺伝的戦略は、(1)アルカロイド前駆体、または(2)関与するニトロソ化剤のいずれかを標的化することに焦点を置いた。たばこの遺伝学を変えるレベルでTSNAを低減する取り組みのほとんどがTSNAへのアルカロイド前駆体を標的化してきた。そのような戦略は、アルカロイド前駆体ノルニコチン合成に関与する遺伝子ファミリーのダウンレギュレーションによってNNNの大幅な減少を提供する。
【0004】
硝酸塩レベルが低下した修飾たばこ植物は、本出願人によってWO2016/046288に記載されている。本明細書に記載されるように、硝酸レダクターゼ酵素の発現または活性は、緩和される。緩和した硝酸レダクターゼ酵素は、硝酸レダクターゼをコードするポリペプチドの位置523に相当する位置にアミノ酸置換を有する。突然変異はS523Dと呼ばれる。突然変異型硝酸レダクターゼ酵素の過剰発現は、硝酸同化の劇的な増加をもたらし、結果として、硝酸塩/TSNA含有量が低下し、アミノ酸レベルが上昇した。植物は対照と比較して90%少ない硝酸塩を示した。
【0005】
硝酸塩の蓄積を低減させる、非遺伝子組み換え生物体(非GMO)手法の開発が望ましい場合がある。ヨーロッパを含めた国々では遺伝子組み換え作物を栽培し市場に出すことが困難になっているため、遺伝子工学技術の使用を介して得る突然変異体よりも、一塩基多型を特徴とする突然変異体を扱うのが有利である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特に非遺伝子組み換え手法を介して、植物中の硝酸塩レベルを低減するための当技術分野における継続的な必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非遺伝子組み換え手法を介してNicotiana tabacum硝酸レダクターゼ(NIA2)を突然変異させることにより、その乾燥処理済み葉が、対照植物に由来する乾燥処理済み葉と比較して、調節された(例えば、低減された)レベルの硝酸塩を含有する植物または植物材料を得ることができるという所見に、少なくとも部分的に基づく。本明細書に記載されるそのような突然変異の一つは、Nicotiana tabacum硝酸レダクターゼのヒンジ1ドメイン内の硝酸レダクターゼキナーゼ認識部位に位置する。
【0008】
Hardin et al.(2009)Biochem.J.422:305-312は、シロイヌナズナのNIA2タンパク質における538位のメチオニンの酸化が、NIAタンパク質のリン酸化を阻害する機序であることを教示している。酸化は、14-3-3が硝酸レダクターゼに結合するのを防止し、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種(ROS)に曝露された場合に、硝酸レダクターゼが不活性化するのを防止する。硝酸レダクターゼは硝酸塩を亜硝酸塩に変換し、アンモニアおよびアミノ酸の産生をもたらすため、WO2016/046288で実証されたように、硝酸レダクターゼの活性化が高いと、硝酸塩レベルが低下すると予想される。したがって、シロイヌナズナのNIA2タンパク質中のM538のメチオニンスルホキシドへの酸化は、硝酸塩レベルの低下につながると予想される。Nicotiana tabacumNIA2タンパク質中のM527は、Arabidopsis thalianaNIA2中のM538に相当する。本明細書に記載される突然変異型Nicotiana tabacum植物の特性は、予想外である。Nicotiana tabacumNIA2突然変異型M527I(当技術分野でよく理解されているように、M527Iは、527位のメチオニン(M)がイソロイシン(I)に置換されることを意味する)は、537位のメチオニンを酸化できないイソロイシンで置換することを含む。メチオニンは、硫黄残基上で酸化されてメチオニンスルホキシドになることが知られているが、イソロイシンは、その構造にいかなる硫黄残基も有していない。この違いに基づいて、Nicotiana tabacumNIA2突然変異型M527Iは、ROSへの曝露時に硝酸レダクターゼ活性化を刺激するとは予想されず、結果として、植物の硝酸塩レベルを低下させる機序が排除される。しかしながら、驚くべきことに、メチオニンの置換にもかかわらず、本開示の突然変異型植物は、硝酸塩レベルの低下を示すことが見出されている。
【0009】
本開示に記載の植物を生成することには、数多くの他の利点がある。例えば、本明細書に記載の植物は非遺伝子組み換え植物とすることができ、これは遺伝子組み換え作物を栽培かつ市場に出すことに伴う問題を克服するものである。さらなる例として、硝酸塩レベルの低下は、植物の総収穫バイオマス、およびニコチン、総アルカロイド、アンモニアに影響を与えたり、または葉の糖含有量を低下させたりすることなく達成することができる。これにより、植物、植物材料、または植物製品の商業的受容性を向上させることができる。
【0010】
一態様では、開示されているのは、(a) 配列番号5または配列番号7の連続するポリペプチド配列を含む硝酸レダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、メチオニンが、対照植物細胞と比較して、植物細胞中の硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換される、ポリヌクレオチド配列、(b) (a)に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、ポリペプチド配列、または(c) (b)に記載されるポリヌクレオチド配列を含む構築物、ベクターまたは発現ベクターを含む、植物細胞。
【0011】
好適には、メチオニンは、異なるアミノ酸に置換され、より好適には、置換アミノ酸はイソロイシンであり、より好適には、ポリペプチドは、配列番号6または配列番号8の連続するポリペプチド配列を含む。
【0012】
好適には、硝酸レダクターゼポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列の527位に対応する位置にアミノ酸置換を含む。
【0013】
好適には、硝酸レダクターゼポリペプチドは、配列番号3に記載されるポリペプチド配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0014】
好適には、ポリヌクレオチド配列は、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0015】
好適には、ポリヌクレオチド配列は、配列番号4に記載のポリヌクレオチド配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0016】
好適には、植物細胞は、Nicotiana tabacum植物細胞である。
【0017】
好適には、植物細胞は、Nicotiana tabacum AA37栽培品種の植物細胞である。
【0018】
別の態様では、先行する請求項のいずれかに記載の植物細胞を含む植物またはその部分が開示されており、好適には、植物またはその部分の乾燥処理済み葉が、対照植物またはその部分と比較して、低いレベルの硝酸塩を含有し、好適には、硝酸塩のレベルは、対照植物またはその部分と比較して、約37%以上減少する。
【0019】
別の態様では、本明細書に記述される植物またはその部分に由来する、開示された植物材料、乾燥処理済み植物材料、または均質化した植物材料が存在し、好適には、乾燥処理済み植物材料は、空気乾燥または日光乾燥または熱風送管乾燥された(flue-cured)植物材料であり、好適には、植物材料、乾燥処理済み植物材料、または均質化した植物材料は、植物またはその部分のバイオマス、種子、茎、花、または葉を含む。
【0020】
別の態様では、本明細書に記載される植物細胞、本明細書に記載される植物の一部、または本明細書に記載される植物材料を含むたばこ製品が開示される。
【0021】
別の態様では、(a)本明細書に記載される植物細胞を提供する工程、および(b)植物細胞を植物中に増殖させる(propagate)工程を含む、本明細書に記載の植物を生成するための方法が開示されている。
【0022】
別の態様では、対照植物材料と比較して変化した量の硝酸塩を有する乾燥処理済み植物材料を生成するための方法が開示され、(a)本明細書に記載の植物もしくはその部分または本明細書に記載の植物材料を提供する工程と、(b)植物またはその部分から植物材料を任意に収穫する工程と、(c)植物材料を乾燥処理する工程と、を含む。
【0023】
好適には、植物材料は、乾燥処理済み葉を含む。
【0024】
好適には、乾燥処理方法は、空気乾燥処理、火力乾燥処理、燻煙乾燥処理、および熱風送管乾燥処理からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、NtNIA2タンパク質配列のドメインおよびコンセンサス配列を示す。(A)Nicotiana tabacum硝酸レダクターゼ NIA2タンパク質(GenBank:X14059)の主要ドメイン。(B)NtNIA2のヒンジ1内の硝酸レダクターゼキナーゼ認識部位(LKKSISTPFM)および14-3-3認識部位。WO2016/046288からのS523D突然変異および本明細書に記載されるM527I突然変異の位置が示されている。
【
図2-1】
図2は、二回目の収穫からの乾燥処理済み葉の化学的プロファイリングおよび未乾燥葉の総バイオマスを示す一連の棒グラフである。(A)植物当たりのグラムとして表される総収穫葉の未乾燥質量(FW)、(B)乾燥処理済み材料のグラム当たりのマイクログラムとして表される乾燥処理済み葉のニコチン含有量、(C)乾燥処理済み材料の乾燥質量の割合として表される総アルカロイド含有率、(D)乾燥処理済み材料の乾燥質量の割合として表されるアンモニア含有率、(E)乾燥処理済み材料の乾燥質量の割合として表される還元糖含有率、および(F)乾燥処理済み材料の乾燥質量の割合として表される硝酸塩含有率。AA37対照は、EMS処置を受けなかった系統(n=6プロット)を示し、NIA2_M527I_WTはAA37のout-segregant野生型系統(n=15プロット)を示し、NIA2_M527I_HOMOはNtNIA2 M527Iホモ接合系統(n=11プロット)を示す。エラーバーは、tスチューデント検定を使用して計算された95%の信頼区間を示す。
【0026】
定義
他に断りがない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含めて本文書が適用される。好ましい方法および材料を以下に説明するが、本明細書に説明されるものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができる。本明細書に開示される材料、方法、および例は単なる例示であり、制限することを意図していない。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有している」、「有する」、「できる」、「含有する」、およびそれらの変形は、付加的な作用または構成の可能性を除外しないオープンエンド移行句、用語、または言葉であることが意図されている。
【0028】
単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈が別段明白に指示しない限り、複数形の言及を含む。
【0029】
「および/または」という用語は、(a)もしくは(b)、または(a)および(b)の両方を意味する。
【0030】
本開示は、明示的な記載または非記載にかかわらず、本明細書に提示した実施形態または要素を「備える」、「からなる」および「から本質的になる」他の実施形態も意図する。
【0031】
本明細書の数値範囲の詳細説明として、その間の中間の各数字も同程度の精度で明確に意図される。例えば、6-9の範囲では、数字6と9に加えて数字7と8が意図されており、6.0-7.0の範囲では、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0が明確に意図される。
【0032】
明細書および特許請求の範囲全体で使用される場合、以下の用語は次の意味を有する。
【0033】
「コード配列」または「ポリヌクレオチドをコードする」とは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むヌクレオチド(RNAまたはDNA分子)を意味する。コード配列は、ポリヌクレオチドが投与される個体または哺乳動物の細胞において発現を導くことが可能なプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む、制御要素に動作可能に連結された開始および終結シグナルをさらに含むことができる。コード配列はコドン最適化であり得る。
【0034】
「相補体」または「相補的」は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体間のワトソン-クリック(例えば、A-T/UおよびC-G)またはフーグスティーン塩基対合を意味することができる。「相補性」は、例えば、相互に逆平行に整列している場合に、各位置のヌクレオチド塩基が相補的であるような、二つのポリヌクレオチド間で共有される特性を指す。
【0035】
「構築物」は、一つまたは複数のポリヌクレオチドを含む、二本鎖の組み換えポリヌクレオチド断片を指す。構築物は、相補的「センス鎖またはコード鎖」と塩基対合した「鋳型鎖」塩基を含む。所定の構築物は、可能性のある二つの配向性、すなわち、ベクター(例えば、発現ベクター)内に配置されているプロモーターの配向に対して同一の(またはセンス)配向性または反対の(またはアンチセンス)配向性のいずれかで、ベクターに挿入することができる。
【0036】
対照植物または対照植物細胞の文脈における「対照」という用語は、一つまたは複数の遺伝子またはポリペプチドの発現、機能、もしくは活性が改変(例えば、増加または低下)されておらず、それゆえに一つまたは複数の遺伝子またはポリペプチドの発現、機能、もしくは活性が改変されている植物との比較を提供することができる、植物または植物細胞を意味する。本明細書で使用される場合、「対照植物」は、試験パラメータを除いたすべてのパラメータにおいて試験植物または改変植物と実質的に同等である植物である。例えば、突然変異が導入された植物に言及する場合、対照植物は突然変異が導入されていない同等の植物である。対照植物は、out-segregant対照植物とすることができる。
【0037】
「発現」は、機能性産物の生成を指す。例えば、ポリヌクレオチド断片の発現は、ポリヌクレオチド断片の転写(例えば、mRNAもしくは機能性RNAが生じる転写)、および/またはmRNAの前駆体または成熟ポリペプチドへの翻訳を指し得る。
【0038】
「機能性」および「完全機能性」は、生物学的機能または活性を有するポリペプチドを説明する。「機能性遺伝子」は、機能性または活性ポリペプチドに翻訳される、mRNAに転写される遺伝子を指す。
【0039】
「遺伝子構築物」とは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、DNAまたはRNA分子を指す。コード配列は、発現を導くことが可能なプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む制御要素に動作可能に連結される開始および終結シグナルを含むことができる。
【0040】
「相同性」または「類似性」という用語は、配列整列によって比較される二つのポリペプチド分子間または二つのポリヌクレオチド分子間の配列類似性の度合いを指す。比較される二つの不連続ポリヌクレオチド間の相同性の度合いは、比較可能な位置での同一または一致するヌクレオチドの数の関数である。
【0041】
二つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの文脈における「同一」または「同一性」は、配列が特定の領域にわたって同じである残基の特定の比率を有することを意味する。比率は、二つの配列を最適に整列し、二つの配列を特定の領域にわたって比較し、両方の配列において同一の残基が存在する位置の数を決定して一致した位置の数を得、一致した位置の数を特定の領域における位置の総数で除し、その結果に100を乗じることによって算出され、配列同一性の比率を得ることができる。二つの配列が異なる長さを有する場合、または整列によって一つまたは複数の互い違いの末端が生じ、比較対象の特定の領域が単一配列しか含まない場合には、単一配列の残基は計算の分母に含まれるが、分子には含まれない。DNAとRNAを比較するとき、チミン(T)とウラシル(U)は同等と見なされ得る。同一性は、手動で、またはClustalW、ClustalX、BLAST、FASTA、もしくはSmith-Watermanなどのコンピュータ配列アルゴリズムを使用することによって決定され得る。一般的な多重整列プログラムClustalW(Nucleic Acids Research(1994)22,4673-4680、Nucleic Acids Research(1997),24,4876-4882)は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの多重整列を作成するのに好適な方法である。ClustalWの好適なパラメータは、以下の通りであり得る。ポリヌクレオチド整列について:ギャップオープンペナルティ=15.0、ギャップ伸長ペナルティ=6.66、およびマトリックス=Identity。ポリペプチド整列について:ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップ伸長ペナルティ=0.2、およびマトリックス=Gonnet。DNAおよびタンパク質の整列について:ENDGAP=-1、およびGAPDIST=4。当業者であれば、最適な配列整列のためにこれらのパラメータおよび他のパラメータを変動させる必要があり得ることに気が付くであろう。次いで、好適には、同一性の比率の計算は、そのような整列から(N/T)として算出され、Nは、配列が同一の残基を共有している位置の数であり、Tは、ギャップを含むがオーバーハングを含まない、比較される位置の総数である。
【0042】
「単離された」または「精製された」という用語は、その天然の状態で発見された場合通常それに付随する構成要素を実質的または本質的に含まない材料を指す。純度および均一性は、典型的にはポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィー等の分析化学技法を使用して決定される。調製物中に存在する優勢種であるポリペプチドは、十分に精製される。特に、単離ポリヌクレオチドは、所望の遺伝子に隣接し、所望のポリペプチド以外のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームから分離される。本明細書で使用される場合、「精製される」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが電気泳動ゲルにおいて本質的に一つのバンドを引き起こすことを意味する。具体的には、これは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。単離ポリヌクレオチドは、天然に存在する宿主細胞から精製され得る。当業者に公知の従来的なポリヌクレオチド精製方法を使用して、単離ポリヌクレオチドを得ることができる。また、この用語は組み換えポリヌクレオチドおよび化学的に合成されたポリヌクレオチドも包含する。
【0043】
「調節する」または「調節」とは、対象のプロセス、経路、機能、もしくは活性における定性的または定量的な変化、変更、もしくは改変を引き起こすか、または促進することを指す。限定されないが、そのような変化、変更、または改変は、対象の相対的なプロセス、経路、機能、または活性の増加または減少であり得る。例えば、遺伝子発現もしくはポリペプチド発現、またはポリペプチド機能もしくは活性は、調節することができる。典型的には、相対的な変化、変更、または改変は、対照と比較することによって決定されるであろう。
【0044】
「非天然型」という用語は、天然では形成されないか、または天然には存在しないポリヌクレオチド、遺伝子突然変異、ポリペプチド、植物、植物細胞、および植物材料などの実体を説明する。このような非天然型実体または人工的実体は、本明細書に説明されるか、または当該技術分野において公知である方法によって、作成、合成、開始、改変、介入、または操作され得る。このような非天然型実体または人工的実体は、人間によって作成、合成、開始、改変、介入、または操作され得る。例証として、非天然である実体は、突然変異誘発を誘導することが公知である方法によって突然変異した実体であり得、これらの方法には、部位特異的突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、化学誘発型突然変異誘発、放射線誘発型突然変異誘発、改変された塩基を利用した突然変異誘発、ギャップ二重鎖DNAを利用した突然変異誘発、二本鎖分解突然変異誘発、修復欠損宿主系統を利用した突然変異誘発、全遺伝子合成による突然変異誘発、DNAシャフリング、および他の同等な方法が含まれる。例えば、突然変異を誘発するための、突然変異誘発性、催奇形性、または発癌性有機化合物などの外因的に付加された化学物質の使用が関与する化学的突然変異誘発を使用することができる。次いで、有利な特性を有する突然変異体を選択し、特定することができる。
【0045】
「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、一緒に共有結合される少なくとも二つのヌクレオチドを意味する。一本鎖の描写はまた、相補鎖の配列も定義する。したがって、ポリヌクレオチドはまた、描写された一本鎖の相補鎖も包含する。ポリヌクレオチドの多くの変異体は、所与のポリヌクレオチドと同じ目的で使用され得る。したがって、ポリヌクレオチドはまた、実質的に同一のポリヌクレオチドおよびその相補体も包含する。一本鎖は、厳密なハイブリッド形成条件下で所定の配列にハイブリッド形成し得るプローブを提供する。したがって、ポリヌクレオチドは、厳密なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成するプローブも包含する。ポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖であり得るか、または二本鎖および一本鎖配列の両方の部分を含有し得る。ポリヌクレオチドは、DNA、ゲノムおよびcDNAの両方、RNA、または混成体であり得、ポリヌクレオチドは、デオキシリボ-ヌクレオチドとリボ-ヌクレオチドの組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、およびイソグアニンを含む塩基の組み合わせを含有し得る。ポリヌクレオチドは、化学的合成法によって、または組み換え法によって得ることができる。
【0046】
相補的断片をハイブリッド形成するための一本鎖DNAの特異性は、反応条件の「厳密性」によって決定される(Sambrook et al.,Molecular Cloning and Laboratory Manual,Second Ed.,Cold Spring Harbor(1989))。ハイブリッド形成の厳密性は、DNA二重鎖を形成する傾向が減少するにつれて増加する。ポリヌクレオチドのハイブリッド形成反応では、厳密性は、例えば、ライブラリから完全長クローンを特定するために使用することができる特異的ハイブリッド形成(高度厳密性)を支持するように選択することができる。低特異性のハイブリッド形成(低度厳密性)を使用して、正確に同じではないが関連した(相同であるが同一ではない)DNA分子またはセグメントを特定することができる。DNA二本鎖は、(1)相補的塩基対の数、(2)塩基対の種類、(3)反応混合物の塩分濃度(イオン強度)、(4)反応温度、および(5)DNA二重鎖の安定性を減少させるホルムアミドなどの特定の有機溶媒の存在によって安定化される。一般に、プローブが長くなるにつれて、適切なアニーリングに必要な温度は高くなる。一般的な手法は温度を変動させることであり、相対温度が高くなるにつれて、反応条件はより厳密になる。「厳密な条件」下でハイブリッド形成するということは、互いに少なくとも60%相同であるポリヌクレオチド配列がハイブリッド形成されたままである、ハイブリッド形成プロトコルを説明する。一般に、厳密な条件は、定義されたイオン強度およびpHで、特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、所与の配列に相補的なプローブの50%が所与の配列に平衡状態でハイブリッド形成する(定義されたイオン強度、pH、およびポリヌクレオチド濃度下での)温度である。所与の配列は一般にTmで過剰に存在するため、プローブの50%は平衡状態で占められる。
【0047】
「厳密なハイブリッド形成条件」は、プローブ、プライマー、またはオリゴヌクレオチドがその特異的配列にのみハイブリッド形成することを可能にする条件である。厳密な条件は配列依存的であり、かつ相違する。厳密な条件は、典型的には、(1)低イオン強度および高温洗浄、例えば、50℃で、15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、(2)ハイブリッド形成中の変性剤、例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%Ficoll、0.1%ポリビニルピロリドン、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム、pH6.5)、または(3)50%ホルムアミドを含む。また、洗浄液は典型的には、42℃で、5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/mL)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを含み、42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃で50%ホルムアミド中での洗浄、続いて55℃でEDTA含有0.1×SSCからなる高度厳密性洗浄液を含む。好適には、この条件は、互いに少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列が、典型的には互いにハイブリッド形成されたままであるようなものである。
【0048】
「中程度に厳密な条件」は、洗浄溶液、およびポリヌクレオチドがポリヌクレオチドの全体、断片、誘導体、または類似体にハイブリッド形成するような、厳密性が低いハイブリッド形成条件を使用する。一例には、55℃で、6×SSC、5×Denhardt液、0.5%SDS、および100μg/mLの変性サケ精子DNA中でのハイブリッド形成、続いて、37℃で、1×SSC、0.1%SDS中での一回または複数回の洗浄が含まれる。温度、イオン強度等は、プローブの長さ等の実験的要因に適合するように調節することができる。他の中程度厳密性条件が説明されている(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Volumes 1-3,John Wiley & Sons,Inc.,Hoboken,N.J.(1993)、Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual,Stockton Press,New York,N.Y.(1990)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,2nd edition,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(1988)を参照)。
【0049】
「低度に厳密な条件」は、洗浄溶液、およびポリヌクレオチドがポリヌクレオチドの全体、断片、誘導体、または類似体にハイブリッド形成するような、中程度厳密性よりも厳密性が低いハイブリッド形成条件を使用する。低度厳密性ハイブリッド形成条件の非限定的な例には、40℃で、35%ホルムアミド、5×SSC、50mMのTris HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.2%BSA、100μg/mLの変性サケ精子DNA、10%(重量/体積)硫酸デキストラン中でのハイブリッド形成、続いて、50℃で、2×SSC、25mMのTris HCl(pH7.4)、5mMのEDTA、および0.1%SDS中での一回または複数回の洗浄が含まれる。
【0050】
「植物」という用語は、そのライフサイクルまたは発育の任意の段階にある任意の植物、およびその子孫を指す。一実施形態では、植物はたばこ植物であり、これはNicotiana属に属する植物を指す。この用語は、植物全体、植物器官、植物組織、植物珠芽、植物種子、植物細胞、およびその子孫への言及を含む。植物細胞としては、これらに限定されないが、種子、懸濁培養、胚、分裂組織部位、カルス組織、葉、根、苗条、配偶体、胞子体、花粉、および花粉粒の細胞が挙げられる。好適な種、栽培品種、混成体、および品種のたばこ植物が本明細書に説明される。
【0051】
「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、または「ポリヌクレオチド断片」は、本明細書において互換的に使用され、合成、非天然、または変更されたヌクレオチド塩基を任意に含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを指す。ヌクレオチド(通常、5’‐一リン酸塩形態で発見される)は、以下の一文字表示:アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNAの)に対しては「A」、シチジル酸またはデオキシシチジル酸に対しては「C」、グアニル酸またはデオキシグアニル酸に対しては「G」、ウリジル酸に対しては「U」、デオキシチミジル酸に対しては「T」、プリン(AまたはG)に対しては「R」、ピリミジン(CまたはT)に対しては「Y」、GまたはTに対しては「K」、AまたはCまたはTに対しては「H」、イノシンに対しては「I」、および任意のヌクレオチドに対しては「N」で示される。ポリヌクレオチドは、これらに限定されないが、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、mRNA、もしくはアンチセンスRNA、またはそれらの断片であり得る。その上、ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖、一本鎖および二本鎖の領域の混合物、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子、または一本鎖および二本鎖領域もしくはそれらの断片の混合物を有するハイブリッド分子であり得る。さらに、ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、もしくはそれらの両方、またはそれらの断片を含む、三重鎖領域で構成され得る。ポリヌクレオチドは、ホスホチオアートなどの一つまたは複数の改変された塩基を含有することができ、かつペプチド核酸(PNA)であり得る。一般的に、ポリヌクレオチドは、単離されたかもしくはクローン化されたcDNAの断片、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチド、または個々のヌクレオチド、あるいは前述の組み合わせから組み立てることができる。本明細書に説明されるポリヌクレオチドはDNA配列として示されているが、ポリヌクレオチドは、それらの対応するRNA配列、およびそれらの逆相補体を含むそれらの相補的な(例えば、完全に相補的な)DNAまたはRNA配列を含む。本開示のポリヌクレオチドは、添付の配列表に記載されている。
【0052】
「ポリペプチド」または「ポリペプチド配列」は、一つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然型アミノ酸の人工化学的類似体であるアミノ酸のポリマー、ならびにアミノ酸の天然型ポリマーを指す。これらの用語は、これらに限定されないが、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、水酸化、およびADPリボース化を含む改変も含む。本開示のポリペプチドは、添付の配列表に記載されている。
【0053】
本明細書で使用される場合、「組み換え」は、例えば、化学的合成によるか、または遺伝子組み換え技法によるポリヌクレオチドの単離セグメントの操作による、二つの、そうでなければ分離した配列セグメントの人工的な組み合わせを指す。この用語はまた、異種ポリヌクレオチドの導入によって改変されている細胞もしくはベクター、またはそのように改変された細胞由来の細胞への言及も含むが、意図的な人間の介入なしに発生するものなどの、天然型事象(例えば、偶発突然変異、自然形質転換または形質導入または転位)による細胞またはベクターの変更を包含しない。
【0054】
「たばこ」という用語は集合的な意味で使用され、本明細書に説明されるように調製および/または取得される、たばこ作物(例えば、圃場で栽培され、水耕栽培たばこではない複数のたばこ植物)、たばこ植物、ならびに根、茎、葉、花、および種子を含むがこれらに限定されないその部分を指す。「たばこ」は、Nicotiana tabacum植物およびその製品を指すことが理解される。
【0055】
「たばこ製品」という用語は、これらに限定されないが、喫煙材料(例えば、紙巻たばこ、葉巻たばこ、およびパイプたばこ)、嗅ぎたばこ、噛みたばこ、ガム、およびトローチ剤、ならびに消費者用たばこ製品の製造のための構成要素、材料、および成分を含む、消費者用たばこ製品を指す。好適には、これらのたばこ製品は、たばこから収穫されるたばこ葉および葉柄から製造され、たばこ調製における従来的な技法に従って切断、乾燥、乾燥処理、および/または発酵される。
【0056】
ペプチドまたはポリペプチドに関する「変異体」は、アミノ酸の挿入、欠失、または保存的置換によって配列が相違するが、少なくとも一つの生物学的機能または活性を保持するペプチドまたはポリペプチドを意味する。変異体はまた、少なくとも一つの生物学的機能または活性を保持するポリペプチドを意味し得る。アミノ酸の保存的置換、すなわち、あるアミノ酸を類似した特性(例えば、荷電領域の親水性、程度、および分布)を有する異なるアミノ酸で置き換えることは、典型的には軽微な変化を伴うと当該技術分野で認識されている。
【0057】
「品種」という用語は、同じ種の他の植物から区別される一定の特性を共有する植物の集団を指す。一つまたは複数の特有の形質を有しながらも、品種は、その品種内の個体間の非常に軽微な全体的変化によってさらに特性付けられる。品種は、しばしば市販されている。
【0058】
「ベクター」とは、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド構築物、およびポリヌクレオチド共役体などの輸送を可能にするためのポリヌクレオチド構成要素の組み合わせを含むポリヌクレオチド媒体を指す。ベクターは、ウイルスベクター、バクテリオファージ、細菌人工染色体または酵母人工染色体であり得る。ベクターは、DNAまたはRNAベクターであり得る。好適なベクターには、円形の二本鎖ヌクレオチドプラスミド、線形の二本鎖ヌクレオチドプラスミド、および他の任意の起源のベクターなど、染色体外の複製が可能なエピソームが含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド構築物、およびポリヌクレオチド共役体などの発現を可能にするためのポリヌクレオチド構成要素の組み合わせを含むポリヌクレオチド媒体である。好適な発現ベクターには、円形の二本鎖ヌクレオチドプラスミド、線形の二本鎖ヌクレオチドプラスミド、および他の任意の起源の機能的に同等な発現ベクターなど、染色体外の複製が可能なエピソームが含まれる。発現ベクターは、以下に定義されるように、上流に位置し、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド構築物、またはポリヌクレオチド共役体に動作可能に連結された、少なくともプロモーターを含む。
【0060】
本明細書に別段定義されない限り、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって通常理解されている意味を有するものとする。例えば、本明細書に説明される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにポリペプチドおよびポリヌクレオチド化学およびハイブリッド形成に関連して使用される任意の命名および技術は、当該技術分野において周知であり、通常使用されているものである。用語の意味および範囲は明確でなければならないが、あらゆる潜在的な曖昧性が発生した場合には、本明細書に提供される定義がいかなる辞書または外部の定義を越えて優先される。さらに、文脈によって別段指定されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0061】
「ゲノム編集」は、置換などのアミノ酸修飾を有する切断型内在性ポリペプチドまたは内在性ポリペプチドのポリペプチド発現が得られるような、内在性ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の変化を指す。ゲノム編集は、相同組み換え修復等の修復機構による切断またはアミノ酸置換を持つコピー遺伝子を用いて、標的化内在性遺伝子領域を置換する、または内在性遺伝子全体を置換することを含むことができる。ゲノム編集は、NHEJを使用して次いで修復される内在性遺伝子における二本鎖切断を発生させることによる、内在性遺伝子におけるアミノ酸置換の発生も含み得る。NHEJは、アミノ酸置換が発生し得る修復中に、少なくとも一つの塩基対を追加または削除できる。ゲノム編集は、二つのヌクレアーゼ標的部位間の切断およびNHEJによるDNA切断の修復を作り出すために、同じDNA鎖上の二つのヌクレアーゼの同時作用によって遺伝子セグメントを削除することも含み得る。
【0062】
「相同組み換え修復」または「HDR」は、一片の相同DNAが、主に細胞周期のG2およびS期に核中に存在する場合、二本鎖DNA損傷を修復する細胞の機構を指す。HDRはドナーDNAまたはドナー鋳型を使用して修復を導き、かつ遺伝子全体の標的化付加を含めたゲノムへの特異的配列変化を作り出すために使用され得る。ドナー鋳型が部位特異的ヌクレアーゼと共に提供される場合、次いで細胞機構が相同組み換えによって切断を修復し、これはDNA切断の存在下で桁違いに増大される。相同DNA片が存在しない場合、代わりにNHEJが行われ得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「非相同末端結合(NHEJ)経路」は、相同鋳型を必要とせずに切断末端を直接連結することによってDNAにおける二重鎖切断を修復する経路を指す。NHEJによるDNA末端の鋳型非依存性再連結は、DNA切断点に無作為な微小挿入および微小欠失(挿入欠失)を導入する、確率論的な、エラーが発生しやすい修復プロセスである。この方法を使用して、標的遺伝子配列のリーディングフレームを意図的に破壊、削除、または変更し得る。NHEJは、典型的には、マイクロホモロジーと呼ばれる短い相同DNA配列を使用して修復を導く。これらのマイクロホモロジーは、しばしば二重鎖切断の末端上の一本鎖オーバーハングに存在する。オーバーハングが完全に適合性である場合、通常はNHEJが正確に切断を修復し、ヌクレオチドの損失に至る不正確な修復も起こり得るが、オーバーハングが適合性でない場合はさらにより一般的である。
【0064】
「部位特異的ヌクレアーゼ」は、DNA配列を特異的に認識および切断することができる酵素を指す。部位特異的ヌクレアーゼは操作され得る。操作された部位特異的ヌクレアーゼの例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas9系システム、およびメガヌクレアーゼが挙げられる。
【0065】
「転写活性化因子様エフェクター」または「TALE」は、特定のDNA配列を認識して結合するポリペプチド構造を指す。「TALE DNA結合ドメイン」は、RVDモジュールとしても公知であり、その各々がDNAの単一塩基対を特異的に認識する、縦列型33~35アミノ酸反復アレイを含むDNA結合ドメインを指す。定義された配列を認識するアレイを組み立てるために、RVDモジュールを任意の順序に配置することができる。TALE DNA結合ドメインの結合特異性は、RVDアレイに続いて20個のアミノ酸の単一短縮型反復によって決定される。TALE DNA結合ドメインは、12~27個のRVDモジュールを有し得、その各々がRVDを含有し、DNAの単一塩基対を認識する。四つの可能性のあるDNAヌクレオチド(A、T、C、およびG)の各々を認識する特異的RVDが特定されている。TALE DNA結合ドメインはモジュール式であるため、四つの異なるDNAヌクレオチド認識する反復を一緒に連結して任意の特定のDNA配列を認識し得る。次いで、これらの標的化DNA結合ドメインを触媒ドメインと組み合わせて、人工転写因子、メチルトランスフェラーゼ、インテグラーゼ、ヌクレアーゼ、およびリコンビナーゼを含む、機能性酵素を作り出すことができる。
【0066】
本明細書で互換的に使用される場合、「転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ」または「TALEN」は、エンドヌクレアーゼFokIなどのヌクレアーゼの触媒ドメイン、および通常のDNA配列を標的化し得る設計されたTALE DNA結合ドメインの、操作された融合ポリペプチドを指す。
【0067】
「TALENモノマー」は、触媒ヌクレアーゼドメインおよび設計されたTALE DNA結合ドメインを有する操作された融合ポリペプチドを指す。二つのTALENモノマーを設計して、TALEN標的領域を標的化および切断し得る。
【0068】
「ジンクフィンガー」」は、DNA配列を認識し結合するポリペプチド構造を指す。ジンクフィンガードメインは、ヒトプロテオームにおける最も一般的なDNA結合モチーフである。単一ジンクフィンガーは約30個のアミノ酸を含有し、ドメインは、典型的には、1塩基対あたり一つのアミノ酸側鎖の相互作用を介して3つの連続するDNA塩基対に結合することによって機能する。
【0069】
「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」または「ZFN」は、完全に組み立てられたときにDNAを切断できる少なくとも一つのヌクレアーゼまたはヌクレアーゼの部分に効果的に連結される少なくとも一つのジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む、キメラポリペプチド分子を指す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
一態様では、配列番号5の連続するポリペプチド配列を含む硝酸レダクターゼポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列が提供され、メチオニンは、対照植物細胞と比較して、硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換されている。
【0071】
好適には、硝酸レダクターゼポリペプチドは、配列番号7の連続するポリペプチド配列を有し、メチオニンは、対照植物細胞と比較して、硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換されている。
【0072】
好適には、単離されたポリヌクレオチド配列は、メチオニンが、異なるアミノ酸、好ましくは脂肪族非極性アミノ酸、より好ましくはイソロイシンに置換されている硝酸レダクターゼポリペプチドをコードする。
【0073】
好適には、脂肪族非極性アミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、イソロイシン、ロイシン、またはバリンからなるアミノ酸の群から選択される。
【0074】
好適には、脂肪族非極性アミノ酸はイソロイシンである。この実施形態によると、硝酸レダクターゼは、配列番号6または配列番号8の置換された連続するポリペプチド配列を有する。
【0075】
好適には、単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列の527位に対応する位置で、アミノ酸置換を含む、それからなる、または本質的にそれからなる硝酸レダクターゼポリペプチドをコードする。
【0076】
好適には、単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号3に記載の配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる硝酸レダクターゼポリペプチドをコードする。
【0077】
好適には、単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号2に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0078】
好適には、ポリヌクレオチド配列は、配列番号4に記載のポリヌクレオチド配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0079】
本開示による例示的な置換型突然変異を表1に記載する。
【0080】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、配列表に示される任意のポリヌクレオチドを含む、本明細書に記載の任意の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。好適には、単離されたポリヌクレオチドは、それに対して少なくとも80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を持つ配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0081】
好適には、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、配列表に示されるポリペプチドの機能または活性の少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を有する活性硝酸レダクターゼポリペプチドをコードする。
【0082】
別の実施形態では、配列番号4の対応する断片に対して少なくとも約80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%の配列同一性を有する、それらに対して実質的な相同性(すなわち、配列類似性)または実質的な同一性を有する、M527I突然変異を含むポリペプチド配列をコードする配列番号4のポリヌクレオチド断片を提供する。
【0083】
本明細書に記載される突然変異を組み込んだポリヌクレオチドの断片も開示される。ポリヌクレオチド断片は、典型的には、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも100個、または少なくとも200個の連続するヌクレオチドを含む。
【0084】
本明細書で説明したポリヌクレオチドは、未変性または変性のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)としうるヌクレオチドの重合体を含めることができる。したがって、ポリヌクレオチドは、これらに限定されないが、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、mRNA、もしくはアンチセンスRNA、またはそれらの断片もしくは切断片であり得る。その上、ポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子、または一本鎖および二本鎖領域の混合物もしくはそれらの断片を含むハイブリッド分子であり得る。さらに、ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、もしくはそれらの両方、またはそれらの断片を含む、三重鎖領域で構成され得る。一般的に、ポリヌクレオチドは、単離されたかもしくはクローン化されたcDNAの断片、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチド、または個々のヌクレオチド、あるいは前述の組み合わせから組み立てることができる。本明細書に説明されるポリヌクレオチドはDNA配列として示されているが、それらは、それらの対応するRNA配列、およびそれらの逆相補体を含むそれらの相補的な(例えば、完全に相補的な)DNAまたはRNA配列を含む。
【0085】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、概してリン酸ジエステル結合を含有する。他の類似体ポリヌクレオチドには、陽性骨格、非イオン性骨格、および非リボース骨格を有するものが含まれる。リボース-リン酸骨格の改変は、様々な理由で、例えば、このような分子の生理学的環境における、またはバイオチップ上のプローブとしての安定性および半減期を増大させるために行われ得る。天然型ポリヌクレオチドおよび類似体の混合物、あるいは、異なるポリヌクレオチド類似物の混合物、ならびに天然型ポリヌクレオチドおよび類似体の混合物を作製し得る。
【0086】
類似体ポリヌクレオチドには、陽性骨格、非イオン性骨格、および非リボース骨格を有するものが含まれ得る。一つまたは複数の炭素環式糖を含有するポリヌクレオチドも含まれる。
【0087】
他の類似体には、ペプチドポリヌクレオチド類似体であるペプチドポリヌクレオチドが含まれる。これらの骨格は、天然型ポリヌクレオチドの多価のリン酸ジエステル骨格とは対照的に、中性条件下で実質的に非イオン性である。これは結果的に有利となり得る。まず、ペプチドポリヌクレオチド骨格は、改善されたハイブリッド形成動態学を呈し得る。ペプチドポリヌクレオチドは、完全マッチ塩基対と比較して、ミスマッチ塩基の融解温度においてより大きな変化を有する。DNAおよびRNAは、典型的に、内部ミスマッチの融解温度において2~4℃の低下を示す。非イオン性ペプチドポリヌクレオチド骨格では、この低下は7~9℃に近似する。同様に、それらの非イオン性に起因して、これらの骨格に付着した塩基のハイブリッド形成は、塩分濃度に対して比較的鈍感である。さらに、ペプチドポリヌクレオチドは、細胞の酵素によって分解されないか、またはより低い程度に分解されない場合があり、したがってより安定性であり得る。
【0088】
開示されるポリヌクレオチドおよびその断片の用途の中には、ハイブリッド形成アッセイにおけるプローブ、または増幅アッセイにおいて使用するためのプライマーとしての断片の用途がある。このような断片は、一般的に、DNA配列の少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20以上の連続するヌクレオチドを含む。他の実施形態では、DNA断片は、DNA配列の少なくとも約10、15、20、30、40、50または60以上の連続するヌクレオチドを含む。したがって、一態様では、プローブもしくはプライマーまたは両方の使用を含む、ポリヌクレオチドを検出するための方法も提供される。例示的なプライマーが本明細書に説明される。
【0089】
ハイブリッド形成条件の選択に影響を及ぼす基本的なパラメータ、および好適な条件を考案するための手引きについては、Sambrook,J.,E.F.Fritsch,and T.Maniatis(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)によって説明されている。遺伝子コードを本明細書に説明されるポリペプチド配列と組み合わせた知識を用いて、縮重オリゴヌクレオチドの組を調製することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、DNA断片が単離され増幅されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、プライマーとして有用である。特定の実施形態では、縮重プライマーは、遺伝的ライブラリのためのプローブとして使用することができる。そのようなライブラリには、cDNAライブラリ、ゲノムライブラリ、およびさらには電子的な発現配列タグまたはDNAライブラリが含まれる。次いで、この方法によって特定された相同配列をプローブとして使用して、本明細書で特定された配列の相同体を特定し得る。
【0090】
また、潜在的な用途は、本明細書に説明されるように、低度厳密性条件下で、典型的には中程度厳密性条件下で、および通常は高度厳密性条件下でポリヌクレオチドに対してハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド(例えば、プライマーまたはプローブ)の用途である。ハイブリッド形成条件の選択に影響を及ぼす基本的なパラメータ、および好適な条件を考案するための手引きについては、Sambrook,J.,E.F.Fritsch,and T.Maniatis(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)に記載されており、当業者であれば、例えば、ポリヌクレオチドの長さまたは塩基組成に基づいて、容易に決定することができる。
【0091】
中程度および高度に厳密な条件を達成する一つの方法が本明細書に定義される。当然のことながら、洗浄する温度および洗浄する塩分濃度は、当業者に公知であり、以下にさらに記載される、ハイブリッド形成反応および二重鎖安定性を支配する基本原理を適用することによって、所望の程度の厳密性を達成するために必要に応じて調整することができる(例えば、Sambrook,J.,E.F.Fritsch,and T.Maniatis (1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y)を参照)。ポリヌクレオチドを未知の配列のポリヌクレオチドにハイブリッド形成する場合、混成体の長さは、ハイブリッド形成ポリヌクレオチドの長さであると想定される。公知の配列のポリヌクレオチドをハイブリッド形成する場合、混成体の長さは、ポリヌクレオチドの配列を整列させ、最適な配列の補完性のある領域を識別することにより決定できる。長さが50塩基対未満であると予想される混成体についてのハイブリッド形成温度は、混成体の融解温度よりも5~10℃低いべきだが、ここで、融解温度は以下の等式によって決定される。長さが18塩基対未満の混成体では、融解温度(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)である。長さが18塩基対を超える混成体では、融解温度(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)であり、式中、Nは混成体中の塩基の数、[Na+]はハイブリッド形成緩衝液中のナトリウムイオン濃度(1×標準クエン酸ナトリウムの[Na+]=0.165M)である。典型的には、このようなハイブリッド形成ポリヌクレオチドの各々は、ハイブリッド形成の対象となるポリヌクレオチドの長さの少なくとも25%(一般的には、少なくとも50%、60%、または70%、最も一般的には、少なくとも80%)である長さを有し、ハイブリッド形成の対象となるポリヌクレオチドと少なくとも60%(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の配列同一性を有する。
【0092】
当業者であれば理解できるように、直鎖DNAは、可能性のある二つの配向性:5’-3’方向および3’-5’方向を有する。例えば、第一の配列が5’-3’方向に配置されており、かつ第二の配列が同一のポリヌクレオチド分子/鎖内で5’-3’方向に配置されている場合には、第一の配列および第二の配列は同一の方向に配向されており、すなわち同一の配向性を有する。典型的には、所定のプロモーターの制御下にある関心のプロモーター配列および遺伝子は、同一の配向性で配置される。しかしながら、5’-3’方向に配置されている第一の配列に対して、第二の配列が同一のポリヌクレオチド分子/鎖内で3’-5’方向に配置されている場合には、第一の配列および第二の配列は、アンチセンスの方向に配向されており、すなわちアンチセンス配向性を有する。あるいは、互いに対してアンチセンス配向性を有する二つの配列は、第一の配列(5’-3’方向)および第一の配列の逆相補的配列(5’-3’方向に配置されている第一の配列)が同一のポリヌクレオチド分子/鎖内に配置されている場合に、同一の配向性を有すると説明することができる。本明細書に記載される配列は、5’-3’方向で示されている。
【0093】
本明細書に説明されるものなど、組み換えポリヌクレオチド構築物を含有するベクターも提供される。好適なベクター骨格としては、例えば、プラスミド、ウイルス、人工染色体、細菌人工染色体、酵母人工染色体、またはバクテリオファージ人工染色体など、当該技術分野で日常的に使用されているものが挙げられる。好適な発現ベクターとしては、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、およびレトロウイルスに由来するプラスミドおよびウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。多数のベクターおよび発現システムが市販されている。
【0094】
一態様では、配列表に示される任意のポリペプチドを含む、本明細書に説明される任意のポリペプチドに対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる単離ポリペプチドが提供される。好適には、単離されたポリペプチドは、それに対して少なくとも80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%の配列同一性を有する配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0095】
別の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列が開示されている。
【0096】
別の態様では、配列番号5の連続するポリペプチド配列を含む硝酸レダクターゼポリペプチドが開示され、メチオニンは、対照植物細胞と比較して、硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換されている。配列番号5の配列は、NtNIA2アミノ酸S523のリン酸化に関与する硝酸レダクターゼキナーゼの結合のための認識部位として作用する。
【0097】
好適には、硝酸レダクターゼは、配列番号7の連続するポリペプチド配列を含み、メチオニンは、対照植物細胞と比較して、硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換されている。
【0098】
好適には、メチオニンは、例えば、グリシン、アラニン、プロリン、イソロイシン、ロイシン、またはバリンからなるアミノ酸の群から選択することができる脂肪族非極性アミノ酸などの異なるアミノ酸に置換される。
【0099】
好適には、脂肪族非極性アミノ酸はIである。この実施形態によると、硝酸レダクターゼは、配列番号6または配列番号8の連続するポリペプチド配列を含む。
【0100】
好適には、硝酸レダクターゼポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列の527位に対応する位置で、アミノ酸置換を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0101】
好適には、硝酸レダクターゼポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列にアミノ酸置換M527Iを含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0102】
好適には、硝酸レダクターゼポリペプチドは、配列番号3に記載される配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0103】
本明細書に記載される突然変異を組み込んだポリペプチドの断片も開示される。ポリペプチドの断片は、典型的には、完全長配列の機能または活性の一部または全てを保持する。ポリペプチド断片は、典型的には、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも100個、または少なくとも200個の連続するアミノ酸を含む。本明細書に開示されるポリペプチドは、自然単離され得る、任意のタイプの一つまたは複数の改変を導入することによって生成される少なくとも一つの突然変異を含む。好適には、突然変異が導入される硝酸レダクターゼポリペプチドの機能または活性は、突然変異の導入によって調節される(例えば、低減される)。好適には、突然変異は置換である。置換は、硝酸レダクターゼポリペプチドの少なくとも一つのアミノ酸を、類似の特性(例えば、類似の疎水性、親水性、抗原性、アルファヘリックス構造もしくはβシート構造などを形成または破損する傾向)を有する別のアミノ酸で置き換えることを指す。
【0104】
好適なことに、突然変異は、配列番号5または配列番号7の連続するポリペプチド配列におけるメチオニンの置換であり、メチオニンは、その置換を有する植物が、対照植物と比較して硝酸レダクターゼ活性を低下させているアミノ酸に置換される。一実施形態では、メチオニンは、脂肪族非極性アミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、プロリン、イソロイシン、ロイシン、またはバリンに置換される。一実施形態では、脂肪族非極性アミノ酸はイソロイシンであり、好適には、連続するポリペプチド配列は、配列番号6または配列番号8である。一実施形態では、置換はM527Iである。M527I突然変異を有する例示的な硝酸レダクターゼポリペプチド配列は、配列番号3である。
【0105】
本明細書に記載の一つまたは複数のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに突然変異を含むかまたは有する植物または植物細胞が開示され、該突然変異は、硝酸レダクターゼの調節された機能または活性をもたらす。本明細書に記載される突然変異は、人工突然変異または合成突然変異を含み得る。本明細書に説明されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドにおける突然変異は、生体外または生体内の操作工程を含むプロセスによって獲得されるか、または獲得可能である突然変異であり得る。本明細書に説明されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドにおける突然変異は、人間による介入を含むプロセスによって獲得されるか、または獲得可能である突然変異であり得る。(乾燥処理済みの)植物内または(乾燥処理済みの)植物材料内のポリペプチドのレベルを調節するための方法が提供されており、前述の方法は、前述の植物のゲノム中に、少なくとも一つの遺伝子の発現を調節する一つまたは複数の突然変異を導入することを含み、前述の少なくとも一つの突然変異は、本開示に従った配列、例えばM527Iから選択される。好適には、遺伝子は、本明細書に記載のNicotiana tabacum硝酸レダクターゼポリペプチドをコードする。
【0106】
また、本開示による一つまたは複数の突然変異に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である植物または植物細胞も開示され、該突然変異は、遺伝子の発現またはそれによりコードされるポリペプチドの機能もしくは活性の調節をもたらす。
【0107】
植物における一つまたは複数の本開示のポリペプチドの機能または活性は、そのポリペプチドの機能または活性を抑制するように改変されておらず、かつ同一のプロトコルを使用して栽培、収穫、および乾燥処理されている植物における同一のポリペプチドの機能または活性よりも機能または活性が低いまたは高い場合に、増加または減少している。
【0108】
本明細書に記載の突然変異型ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを獲得するための方法も開示される。植物細胞または植物材料を含めた、たばこなどの関心の植物は、突然変異誘発を誘導することが公知である様々な方法によって遺伝的に改変することができ、これらの方法には、部位特異的突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、化学誘発型突然変異誘発、放射線誘発型突然変異誘発、改変された塩基を利用した突然変異誘発、ギャップ二重鎖DNAを利用した突然変異誘発、二本鎖分解突然変異誘発、修復欠損宿主系統を利用した突然変異誘発、全遺伝子合成による突然変異誘発、DNAシャフリング、および以下で考察する他の方法が含まれる。
【0109】
突然変異をポリヌクレオチド内に無作為に導入する方法には、化学的突然変異誘発および放射線突然変異誘発が含まれ得る。化学的突然変異誘発には、突然変異を誘発するための、突然変異誘発性、催奇形性、または発癌性有機化合物などの外因的に付加された化学物質の使用が関与する。主に点突然変異、ならびに短い欠失、挿入、ミスセンス突然変異、単純配列反復、塩基転換、および/または遷移を引き起こす突然変異原は、化学的突然変異原または放射線を含めて、突然変異を引き起こすために使用され得る。突然変異原は、エチルメタンスルホン酸塩、メチルメタンスルホン酸塩、N-エチル-N-ニトロソウレア、トリエチルメラミン、N-メチル-N-ニトロソウレア、プロカルバジン、クロランブシル、シクロホスファミド、ジエチル硫酸塩、アクリルアミドモノマー、メルファラン、ナイトロジェン・マスタード、ビンクリスチン、ジメチルニトロソアミン、N-メチル-N’-ニトロ-ニトロソグアニジン、ニトロソグアニジン、2-アミノプリン、7,12ジメチル-ベンズ(a)アントラセン、酸化エチレン、ヘキサメチルホスホルアミド、ビスルファン、ジエポキシアルカン(ジエポキシオクタン、ジエポキシブタン等)、2-メトキシ-6-クロロ-9[3-(エチル-2-クロロ-エチル)アミノプロピルアミノ]アクリジン二塩酸塩、およびホルムアルデヒドを含む。
【0110】
一つまたは複数の標的の突然変異をポリヌクレオチド配列内に導入する方法には、ゲノム編集技術、特にジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介の突然変異誘発、TILLING(targeting induced local lesions in genomes:ゲノム中の標的化誘発局所的損傷)、相同的組み換え、オリゴヌクレオチドを標的とした変異誘発、およびメガヌクレアーゼ媒介の突然変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
ジンクフィンガーポリペプチドを使用して、一つまたは複数の標的突然変異をポリヌクレオチド配列に導入することができる。様々な実施形態では、ポリヌクレオチドのコード配列の一部またはすべてを含むゲノムDNA配列は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介突然変異誘発によって改変される。ゲノムDNA配列で、ジンクフィンガーポリペプチド結合のための一意の部位が検索される。あるいは、ゲノムDNA配列で、ジンクフィンガーポリペプチド結合のための二つの一意の部位が検索されるが、ここで、両方の部位は対向する鎖上にあり、例えば、1、2、3、4、5、6つ以上の塩基対だけ離れた互いに近い場所にある。したがって、ポリヌクレオチドに結合するジンクフィンガーポリペプチドが提供される。ジンクフィンガーポリペプチドは、遺伝子内の選択した標的部位を認識するよう操作され得る。ジンクフィンガーポリペプチドは、これらに限定されないが、ファージディスプレイ選択、細菌性ツーハイブリッド選択、または細菌性ワンハイブリッド選択などの選択方法に連結された、切断もしくは拡張または部位特異的突然変異誘発のプロセスによって、天然のジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび非天然のジンクフィンガーDNA結合ドメインから得られたモチーフの任意の組み合わせを含むことができる。「非天然のジンクフィンガーDNA結合ドメイン」という用語は、ポリヌクレオチド標的内にあり、かつ改変の対象となるポリヌクレオチドを含む細胞または生物においては発生しない、3塩基対配列を結合するジンクフィンガーDNA結合ドメインを指す。標的遺伝子に対して一意である特定のポリヌクレオチドを結合するジンクフィンガーポリペプチドの設計のための方法は、当該技術分野において公知である。ジンクフィンガーポリペプチドおよびジンクフィンガーヌクレアーゼを植物に送達するための方法は、メガヌクレアーゼの送達について以下に説明する方法と類似している。
【0112】
I-CreIなどのメガヌクレアーゼを使用して、一つまたは複数の標的突然変異をポリヌクレオチド配列に導入することができる。天然型メガヌクレアーゼならびに組み換えメガヌクレアーゼを使用して、植物のゲノムDNA内の単一の部位で、または比較的少ない部位で、特異的に二本鎖切断を引き起こし、一つまたは複数の本明細書に説明されるポリヌクレオチドの分裂を可能にすることができる。メガヌクレアーゼは、変更されたDNA認識特性を有する操作されたメガヌクレアーゼであり得る。メガヌクレアーゼポリペプチドは、当該技術分野において公知の様々な異なる機構によって、植物細胞に送達することができる。メガヌクレアーゼを使用して、ポリヌクレオチドのコード領域内のメガヌクレアーゼ認識部位を切断することができる。このような切断は、非相同末端結合による突然変異誘発性DNA修復の後で、メガヌクレアーゼ認識部位でのDNAの欠失を頻繁にもたらす。遺伝子コード配列内でのこのような突然変異は、典型的には遺伝子を不活性化するのに十分である。植物細胞を改変するためのこの方法には、まず、好適な形質転換方法を使用した、メガヌクレアーゼ発現カセットの植物細胞への送達が関与する。最高の効率を得るためには、メガヌクレアーゼ発現カセットを選択マーカーに連結し、選択物質の存在下で、首尾よく形質転換された細胞を選択することが望ましい。この手法は、メガヌクレアーゼ発現カセットのゲノムへの統合をもたらすが、これは、植物が規制当局の許可を必要とする可能性が高い場合には望ましくない場合がある。そのような場合には、メガヌクレアーゼ発現カセット(および連結された選択マーカー遺伝子)は、従来的な育種技法を使用して後続する植物の世代において分離し得る。メガヌクレアーゼ発現カセットの送達後、植物細胞は、当初、使用された特定の形質転換手順にとって典型的である条件下で培養される。これは、形質転換された細胞を、26℃未満の温度の培地において、しばしば暗所において、培養することを意味し得る。このような標準的な条件を、ある期間にわたって、好ましくは1~4日間使用して、植物細胞を形質転換プロセスから回復させることができる。この当初の回復期間後の任意の時点で培養温度を上昇させ、操作されたメガヌクレアーゼの活性を刺激して、メガヌクレアーゼ認識部位を切断し、突然変異を起こさせ得る。
【0113】
ゲノム編集の一つの方法には、細胞が修復機構を用いて応答できる二本鎖の分解を誘導する、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の使用が関与する。NHEJは、アニーリングのための配列重複が非常に少ないかまたは全くない二本鎖切断のうちのいずれかの側からDNAを再結合する。この修復機構は、挿入もしくは欠失、または染色体の再配列によるゲノム内のエラーを誘発する。このようなエラーがあると、遺伝子産物はその位置で非機能性にコードされ得る。特定の用途では、ポリヌクレオチドを植物のゲノムから正確に除去することが望ましい場合がある。このような用途は、操作されたメガヌクレアーゼの対を使用して可能であり、その各々が意図された欠失のいずれかの側にあるメガヌクレアーゼ認識部位を切断する。また、遺伝子を認識してそれに結合し、二本鎖切断をゲノムに導入することができるTALENも使用することができる。
【0114】
ゲノム編集の別の方法には、細菌性CRISPR/Casシステムの使用が関与する。細菌および古細菌は、ウイルスおよびプラスミドDNAの侵入から保護する適応免疫系の一部である、クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文の反復(CRISPR)と呼ばれる染色体要素を示す。II型CRISPRシステムでは、CRISPR RNA(crRNA)がトランス活性化crRNA(tracrRNA)およびCRISPR関連(Cas)ポリペプチドで機能し、標的DNA中に二本鎖切断を導入する。Cas9による標的切断は、crRNAとtracrRNAとの間の塩基対合、およびcrRNAと標的DNAとの間の塩基対合を必要とする。標的認識は、配列NGGと一致する、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフの存在によって促進される。このシステムは、ゲノム編集のために利用できる。Cas9は通常、crRNAおよびtracrRNAで構成される二重RNAによってプログラムされる。しかしながら、これらのRNAのコア構成要素は、Cas9標的化のために単一の混成体「ガイドRNA」に組み合わせることができる。部位特異的切断のためにDNAを標的化する非コードRNAガイドの使用は、TALENなどの既存の技術よりもはるかに簡単であることが約束される。CRISPR/Cas戦略を使用して、ヌクレアーゼ複合体を再標的化するには、新しいRNA配列の導入のみを必要とし、ポリペプチド転写因子の特異性を再設計する必要がない。CRISPR/Cas技術を、植物種にわたって広く適用可能なウイルス媒介ゲノム編集プラットフォームを開示している国際出願第WO2015/189693号の方法において、植物において実施した。たばこラットルウイルス(TRV)のRNA2ゲノムを、Cas9エンドヌクレアーゼを過剰発現するNicotiana benthamiana植物にガイドRNAを保有および送達するように操作した。本開示の文脈では、ガイドRNAは本明細書に開示される配列のいずれかに由来し得、WO2015/189693の教示を適用して植物細胞のゲノムを編集し、所望の突然変異型植物を得ることができる。ペースの速い技術の開発は、植物界において広範な適用性を有する多種多様なプロトコルを生み出しており、これは多くの最近の科学評論記事において十分に分類されている(例えば、Plant Methods(2016)12:8、およびFront Plant Sci.(2016)7:506)。その用途に特に焦点を当てたCRISPR/Casシステムの評論については、Biotechnology Advances(2015)33,1,41-52)に記載されている。植物ゲノムを操作するためのCRISPR/Casの使用におけるより最近の開発については、Acta Pharmaceutica Sinica B(2017)7,3,292-302、およびCurr.Op.in Plant Biol.(2017)36,1-8に考察されている。植物で使用するためのCRISPR/Cas9プラスミドは、「addgene」、非営利プラスミドリポジトリ(addgene.org)に列挙されており、CRISPR/Casプラスミドは市販されている。
【0115】
本明細書に記載される突然変異などの一つまたは複数の導入突然変異は、サザンブロット分析、DNA配列決定、PCR分析、または表現型分析などの当業者に公知の方法を使用して、特定または選択することができる。遺伝子発現に影響を与えるか、またはコードされたポリペプチドの機能を妨げる突然変異は、当該技術分野において周知である方法を使用して決定することができる。
【0116】
本開示による植物または植物細胞は、記載される突然変異、および任意で一つまたは複数の遺伝子中の一つまたは複数のさらなる突然変異の任意の組み合わせを含む。例えば、植物または植物細胞は、単一の遺伝子における単一の突然変異、単一の遺伝子における複数の突然変異、二つ以上、三つ以上、もしくは四つ以上の遺伝子における単一の突然変異、または二つ以上、三つ以上、もしくは四つ以上の遺伝子における複数の突然変異を有し得る。そのような突然変異の一例が本明細書に説明されている。
【0117】
一実施形態では、植物からの種子は突然変異誘発され、次いで第一世代突然変異型植物に成長する。次いで、第一世代植物は自家受粉がなされ、第一世代植物からの種子が第二世代植物に成長し、次いでこれがその座位で本明細書に記載の突然変異などの突然変異についてスクリーニングされる。突然変異誘発された植物材料を突然変異についてスクリーニングすることができるが、第二世代植物をスクリーニングすることの利点は、すべての体細胞系突然変異が生殖細胞系突然変異に対応することである。当業者であれば、突然変異型植物を作り出すために、種子、花粉、植物組織または植物細胞を含むがこれらに限定されない様々な植物材料が突然変異誘発され得ることを理解するであろう。しかしながら、突然変異誘発された植物材料の種類は、植物のポリヌクレオチドが突然変異についてスクリーニングされる場合に影響を及ぼし得る。例えば、非突然変異誘発性植物の受粉前に花粉が突然変異誘発の対象となる場合、その受粉の結果生じる種子は第一世代植物に成長する。第一世代植物のすべての細胞は、花粉において作り出された突然変異を含有することになり、したがってこれらの第一世代植物は、次いで、第二世代まで待たずに突然変異についてスクリーニングされ得る。
【0118】
個々の植物、植物細胞、または植物材料から調製されたポリヌクレオチドは、突然変異誘発された植物組織、細胞、または材料を起源とする植物の集団における少なくとも本明細書に記載の突然変異についてのスクリーニングを促進するために任意にプールすることができる。植物、植物細胞、または植物材料の、後続する一つまたは複数の世代をスクリーニングすることができる。任意にプールされる群のサイズは、使用するスクリーニング方法の感受性に依存する。
【0119】
試料を任意にプールした後、それらを、PCRなどのポリヌクレオチド特異的増幅技法の対象とすることができる。遺伝子のすぐ隣にある遺伝子または配列に特異的な一つまたは複数の任意のプライマーまたはプローブを利用して、任意にプールされた試料内で配列を増幅し得る。好適には、一つまたは複数のプライマーまたはプローブは、有用な突然変異が最も発生する可能性の高い遺伝子座の領域を増幅するように設計される。最も好ましくは、プライマーは、ポリヌクレオチドの領域内での突然変異を検出するように設計される。さらに、プライマーおよびプローブは、点突然変異についてのスクリーニングを容易にするために、公知の多型部位を避けることが好ましい。増幅産物の検出を促進するために、一つまたは複数のプライマーまたはプローブを任意の従来的な標識付け方法を使用して標識付けし得る。プライマーまたはプローブは、当該技術分野でよく理解されている方法を使用して、本明細書に説明される配列に基づいて設計することができる。
【0120】
増幅産物の検出を促進するために、プライマーまたはプローブを任意の従来的な標識付け方法を使用して標識付けし得る。これらは、当該技術分野でよく理解されている方法を使用して、本明細書に説明される配列に基づいて設計することができる。
【0121】
多型は、当該技術分野において公知の手段によって識別し得、いくつかは文献に記載されている。
【0122】
したがって、さらなる態様では、本明細書に記載の突然変異を含む植物を調製する方法が提供される。方法は、機能的な硝酸レダクターゼポリヌクレオチドをコードする遺伝子を含む植物の少なくとも一つの細胞を提供することを含む。次に、植物の少なくとも一つの細胞が、硝酸レダクターゼポリヌクレオチドの機能を調節するのに効果的な条件下で処理される。続いて、少なくとも一つの突然変異型植物細胞は、突然変異型植物内で増殖するが、そこで突然変異型植物は、対照植物と比較して調節されたレベルの硝酸レダクターゼポリペプチドを有する。一実施形態では、処理工程は、本明細書に記載の、および少なくとも一つの突然変異型植物細胞を得るのに効果的な条件下で、少なくとも一つの細胞を化学的突然変異誘発物質に供することに関与する。本方法の別の実施形態では、処理工程は、少なくとも一つの突然変異型植物細胞を得るのに効果的な条件下で、少なくとも一つの細胞を放射線源に供することに関与する。「突然変異型植物」という用語は、対照植物と比較して遺伝子型が改変されており、好適にはそれが遺伝子工学または遺伝的改変以外の手段によって改変されている、突然変異型植物を含む。
【0123】
特定の実施形態では、突然変異型植物、突然変異型植物細胞、または突然変異型植物材料は、別の植物、植物細胞、または植物材料において天然に発生し、かつ所望の特性を付与する一つまたは複数の突然変異を含み得る。この突然変異を、別の植物、植物細胞、または植物材料(例えば、突然変異が誘導された植物とは異なる遺伝的背景を有する植物、植物細胞、または植物材料)に組み込んで(例えば、遺伝子移入して)、それに対する特性を付与することができる。したがって、一例として、第一の植物において天然に発生した突然変異は、第二の植物(例えば、第一の植物とは異なる遺伝的背景を有する第二の植物)に導入され得る。したがって、当業者は、所望の特性を付与する本明細書に説明される遺伝子の一つまたは複数の突然変異対立遺伝子をそのゲノム内に天然に保有する植物を検索および特定することができる。天然に発生する突然変異対立遺伝子を、育種、戻し交雑、および遺伝子移入を含む様々な方法によって第二の植物に移入させて、本明細書に説明される遺伝子において一つまたは複数の突然変異を有する系統、品種、または混成体を生成することができる。同じ技法は、第一の植物から第二の植物への一つまたは複数の非天然型突然変異の遺伝子移入にも適用することができる。所望の特性を示す植物は、突然変異型植物のプールからスクリーニングして除外し得る。好適には、選択は、本明細書に説明されるポリヌクレオチド配列の知識を利用して実施される。結果的に、対照と比較した遺伝的特性についてのスクリーニングが可能である。このようなスクリーニングの手法には、本明細書に考察されるような従来的な増幅および/またはハイブリッド形成技法の適用が関与し得る。したがって、本開示のさらなる態様は、突然変異型植物を特定するための方法に関し、方法は、(a)植物からのポリヌクレオチドを含む試料を提供する工程、および(b)ポリヌクレオチドの配列を決定する工程を含み、対照植物のポリヌクレオチドと比較したポリヌクレオチドの配列における差異は、該植物が突然変異型植物であることを示す。別の態様では、対照植物と比較して減少したレベルの硝酸塩を蓄積する、突然変異植物を特定するための方法が提供されており、方法は、(a)スクリーニングされる植物からの試料を提供する工程と、(b)該試料が、硝酸レダクターゼポリヌクレオチドに本明細書に記載の一つまたは複数の突然変異を含むかどうかを決定する工程と、(c)前述の植物中の硝酸塩のレベルを決定する工程とを含む。好適には、硝酸塩のレベルは、乾燥処理済み葉で決定される。別の態様では、対照植物と比較して減少したレベルの硝酸塩を有する突然変異型植物を調製するための方法が提供され、方法は、(a)第一の植物からの試料を提供する工程と、(b)該試料が、減少したレベルの硝酸塩をもたらす、硝酸レダクターゼポリヌクレオチドに本明細書に記載の一つまたは複数の突然変異を含むかどうかを決定する工程と、(c)第二の植物に一つまたは複数の突然変異を移入する工程とを含む。好適には、硝酸塩のレベルは、乾燥処理済み葉で決定される。突然変異は、遺伝子組み換え、遺伝子操作、遺伝子移入、植物育種、戻し交雑などの、当該技術分野において公知の様々な方法を使用して、第二の植物に移入することができる。一実施形態では、第一の植物は、天然型植物である。一実施形態では、第二の植物は、第一の植物とは異なる遺伝的背景を有する。別の態様では、対照植物と比較して減少したレベルの硝酸塩を有する突然変異型植物を調製するための方法が提供され、方法は、(a)第一の植物からの試料を提供する工程と、(b)該試料が、減少したレベルの硝酸塩をもたらす、硝酸レダクターゼポリヌクレオチドに本明細書に記載の一つまたは複数の突然変異を含むかどうかを決定する工程と、(c)第一の植物から第二の植物に一つまたは複数の突然変異を遺伝子移入する工程とを含む。好適には、硝酸塩のレベルは、乾燥処理済み葉で決定される。一実施形態では、遺伝子移入の工程は、任意に戻し交雑等を含む、植物育種を含む。一実施形態では、第一の植物は、天然型植物である。一実施形態では、第二の植物は、第一の植物とは異なる遺伝的背景を有する。一実施形態では、第一の植物は、栽培品種または優良栽培品種ではない。一実施形態では、第二の植物は、栽培品種または優良栽培品種である。さらなる態様は、本明細書に説明される方法によって獲得されたか、または獲得可能である突然変異型植物(栽培品種または優良栽培品種の突然変異型植物を含む)に関する。特定の実施形態では、「突然変異型植物」は、一つまたは複数の本明細書に説明されるポリヌクレオチドの配列内など、植物の特定の領域にのみ局所化された一つまたは複数の突然変異を有し得る。この実施形態によれば、突然変異型植物の残りのゲノム配列は、突然変異誘発前の植物と同一となるか、または実質的に同一となる。
【0124】
さらなる態様では、硝酸レダクターゼポリヌクレオチドをコードする遺伝子における突然変異を含む植物、植物細胞、または植物材料を特定する方法が提供され、方法は、(a)植物、植物細胞、または植物材料を突然変異誘発に供すること、(b)該植物、植物細胞、もしくは植物材料、またはそれらの子孫から試料を得ること、および(c)本明細書に記載の突然変異を有する突然変異したポリヌクレオチド配列の存在を決定することを含む。
【0125】
開示される組成物および方法は、N.rusticaおよびN.tabacumを含む、Nicotiana属に属する任意の種(例えば、LA B21、LN KY171、TI 1406、Basma、Galpao、Perique、Beinhart 1000-1、およびPetico)に適用することができる。その他の種は、N.アカウリス(N.acaulis)、N.アクミナタ(N.acuminata)、N.アフリカナ(N.africana)、N.アラタ(N.alata)、N.アメギノイ(N.ameghinoi)、N.アムプレキシカウリス(N.amplexicaulis)、N.アレントシイ(N.arentsii)、N.アッテニュアタ(N.attenuata)、N.アゼンブジェ(N.azambujae)、N.ベナヴィデシイ(N.benavidesii)、N.ベンタミアナ(N.benthamiana)、N.ビゲロビイ(N.bigelovii)、N.ボラリエンシス(N.bonariensis)、N.カヴィコラ(N.cavicola)、N.クレベランヂイ(N.clevelandii)、N.コルジフォリア(N.cordifolia)、N.コリムボサ(N.corymbosa)、N.デブネイ(N.debneyi)、N.エクセルシオル(N.excelsior)、N.フォルゲチアナ(N.forgetiana)、N.フラグランス(N.fragrans)、N.グラウカ(N.glauca)、N.グルチノサ(N.glutinosa)、N.グッドスピーディイ(N.goodspeedii)、N.ゴッセイ(N.gossei)、N.ハイブリッド(N.hybrid)、N.イングルバ(N.ingulba)、N.カワカミイ(N.kawakamii)、N.ナイチアナ(N.knightiana)、N.ラングスドルフィイ(N.langsdorffii)、N.リネアリス(N.linearis)、N.ロンギフロラ(N.longiflora)、N.マリチマ(N.maritima)、N.メガロシフォン(N.megalosiphon)、N.ミエルシイ(N.miersii)、N.ノクチフロラ(N.noctiflora)、N.ヌヂカウリス(N.nudicaulis)、N.オブツシフォリア(N.obtusifolia)、N.オクシデンタリス(N.occidentalis)、N.オクシデンタリス亜種ヘスペリス(N.occidentalis subsp.hesperis)、N.オトフォラ(N.otophora)、N.パニキュラタ(N.paniculata)、N.パウシフロラ(N.pauciflora)、N.ペツニオイデス(N.petunioides)、N.プルムバギニフォリア(N.plumbaginifolia)、N.クアドリヴァルヴィス(N.quadrivalvis)、N.ライモンジイ(N.raimondii)、N.レパンダ(N.repanda)、N.ロスラタ(N.rosulata)、N.ロスラタ亜種イングルバ(N.rosulata subsp.ingulba)、N.ロツンヂフォリア(N.rotundifolia)、N.セッシェリイ(N.setchellii)、N.シムランス(N.simulans)、N.ソラニフォリア(N.solanifolia)、N.スペガッジニイ(N.spegazzinii)、N.ストックトニイ(N.stocktonii)、N.スアヴェオレンス(N.suaveolens)、N.シルヴェストリス(N.sylvestris)、N.サイルシフロラ(N.thyrsiflora)、N.トメトサ(N.tomentosa)、N.トメトシフォルミス(N.tomentosiformis)、N.トリゴノフィラ(N.trigonophylla)、N.ウムブラチカ(N.umbratica)、N.ウンジュラタ(N.undulata)、N.ヴェルチナ(N.velutina)、N.ウィガンディオイデス(N.wigandioides)およびN.キサンデラエ(N.x sanderae)を含む。
【0126】
一実施形態では、植物は、N.tabacumである。
【0127】
たばこ栽培品種および優良たばこ栽培品種の使用も、本明細書で意図されている。したがって、植物は、一つまたは複数の遺伝子突然変異を含む、たばこ品種または優良たばこ栽培品種であり得る。遺伝子突然変異(例えば、一つまたは複数の多型)は、個々のたばこ品種またはたばこ栽培品種(例えば、優良たばこ栽培品種)において天然には存在しない突然変異であり得るか、または突然変異が個々のたばこ品種またはたばこ栽培品種(例えば、優良たばこ栽培品種)において天然に発生しない場合には、天然に発生する遺伝子突然変異であり得る。
【0128】
Nicotiana tabacum品種には、バーレー種、ダーク種、熱風送管乾燥処理種、およびオリエント種のたばこが含まれる。品種または栽培品種の非限定的な例は、AA37、BD 64、CC 101、CC 200、CC 27、CC 301、CC 400、CC 500、CC 600、CC 700、CC 800、CC 900、Coker 176、Coker 319、Coker 371 Gold、Coker 48、CD 263、DF911、DT 538 LC Galpao tobacco、GL 26H、GL 350、GL 600、GL 737、GL 939、GL 973、HB 04P、HB 04P LC、HB3307PLC、Hybrid 403LC、Hybrid 404LC、Hybrid 501 LC、K 149、K 326、K 346、K 358、K394、K 399、K 730、KDH 959、KT 200、KT204LC、KY10、KY14、KY 160、KY 17、KY 171、KY 907、KY907LC、KY14xL8 LC、Little Crittenden、McNair 373、McNair 944、msKY 14xL8、Narrow Leaf Madole、Narrow Leaf Madole LC、NBH 98、N-126、N-777LC、N-7371LC、NC 100、NC 102、NC 2000、NC 291、NC 297、NC 299、NC 3、NC 4、NC 5、NC 6、NC7、NC 606、NC 71、NC 72、NC 810、NC BH 129、NC 2002、Neal Smith Madole、OXFORD 207、PD 7302 LC、PD 7309 LC、PD 7312 LC、’Perique’ tobacco、PVH03、PVH09、PVH19、PVH50、PVH51、R 610、R 630、R 7-11、R 7-12、RG 17、RG 81、RG H51、RGH 4、RGH 51、RS 1410、Speight 168、Speight 172、Speight 179、Speight 210、Speight 220、Speight 225、Speight 227、Speight 234、Speight G-28、Speight G-70、Speight H-6、Speight H20、Speight NF3、TI 1406、TI 1269、TN 86、TN86LC、TN 90、TN 97、TN97LC、TN D94、TN D950、TR(Tom Rosson)Madole、VA 309、VA359、AA 37-1、B13P、Xanthi(Mitchell-Mor)、Bel-W3、79-615、Samsun Holmes NN、KTRDC number 2 Hybrid 49、Burley 21、KY8959、KY9、MD 609、PG01、PG04、PO1、PO2、PO3、RG11、RG 8、VA509、AS44、Banket A1、Basma Drama B84/31、Basma I Zichna ZP4/B、Basma Xanthi BX 2A、Batek、Besuki Jember、C104、Coker 347、Criollo Misionero、Delcrest、Djebel 81、DVH 405、Galpao Comum、HB04P、Hicks Broadleaf、Kabakulak Elassona、Kutsage E1、LA BU 21、NC 2326、NC 297、PVH 2110、Red Russian、Samsun、Saplak、Simmaba、Talgar 28、Wislica、Yayaldag、Prilep HC-72、Prilep P23、Prilep PB 156/1、Prilep P12-2/1、Yaka JK-48、Yaka JB 125/3、TI-1068、KDH-960、TI-1070、TW136、Basma、TKF 4028、L8、TKF 2002、GR141、Basma xanthi、GR149、GR153、Petit Havanaである。本明細書で具体的に識別されていない場合であっても、上記の低コンバーター亜種も企図されている。
【0129】
一実施形態では、栽培品種はAA37であり、これは概して、南米のダークたばこと米国のバーリー生殖質との間の交雑であると理解される。
【0130】
実施形態は、本明細書に記載のポリヌクレオチド(または本明細書に記載のその任意の組み合わせ)の発現または機能を調節するために修飾された、植物を生成する組成物および方法も対象とする。有利なことに、得られる植物は、全体的な外観において対照植物と類似しているか、または実質的に同一でありうる。成熟度、植物当たりの葉の数、茎の高さ、葉の挿入角度、葉のサイズ(幅および長さ)、節間の距離、および葉身と中央脈の比率など、様々な表現型特性を圃場観察によって評価することができる。
【0131】
一態様は、本明細書に記載される植物の種子に関する。好ましくは、種子はたばこ種子である。さらなる態様は、本明細書に記載された植物の花粉または胚珠に関連する。さらに、雄性不稔性を与えるポリヌクレオチドをさらに含む、本明細書に記載の植物が提供されている。
【0132】
また、本明細書に記載の植物の再生可能な細胞の組織培養も提供されており、その培養によって、親の全ての形態学的特性および生理学的特性を発現する能力を持つ植物が再生される。再生可能な細胞には、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、根、根端、葯、花およびそれらの部分、胚珠、苗条、幹、茎、随、およびさくに由来する細胞、またはそれらに由来するカルスもしくはプロトプラストが含まれるが、これに限定されない。
【0133】
一つの目的は、例えば、乾燥処理済みの葉中などの植物材料内の調節された硝酸塩のレベルを示す植物またはその部分を提供することである。好適には、植物またはその部分は、対照植物と比較して、調節されたレベルの硝酸塩を示す。
【0134】
好適には、植物またはその部分は、対照植物と実質的に同じ総収穫バイオマス(植物当たりの未乾燥葉のバイオマスとして示される)を有する。
【0135】
好適には、植物またはその部分は、対照植物と実質的に同じレベルのニコチン葉含有量を有する。
【0136】
好適には、植物またはその部分は、対照植物と実質的に同じレベルの総アルカロイド葉含有量を有する。
【0137】
好適には、植物またはその部分は、対照植物と実質的に同じレベルのアンモニア葉含有量を有する。
【0138】
好適には、植物またはその部分は、対照植物と実質的に同じレベルの還元糖葉含有量を有する。
【0139】
したがって、対照細胞または対照植物と比較して硝酸塩の調節されたレベルを有する植物もしくはその部分または植物細胞が本明細書に説明される。植物または植物細胞は、対応する一つまたは複数の本明細書に説明されるポリヌクレオチドの発現を調節することにより、一つまたは複数の本明細書に説明されるポリペプチドの合成または機能を調節するように改変される。好適には、調節されたレベルの硝酸塩が、乾燥処理済み葉で観察される。特定の実施形態では、乾燥処理済み葉または乾燥処理済みたばこなどの植物内の硝酸塩のレベルは低減し得る。
【0140】
さらなる態様は、植物または植物細胞に関連し、本明細書に記載の一つまたは複数のポリペプチドの発現または機能は、調節され、植物の一部(例えば、乾燥処理済み葉、または乾燥処理済みたばこ)は、該ポリペプチドの発現または機能が調節されていない対照植物と比較して、その中の硝酸塩のレベルが少なくとも約37%減少した。特定の実施形態では、乾燥処理済み葉または乾燥処理済みたばこなどの植物内の硝酸塩のレベルは、少なくとも約30%以上、または約35%以上、または約37%以上、または約40%以上減少し得る。
【0141】
なおさらなる態様は、本明細書に記載の植物または植物細胞から誘導されるかまたは誘導可能な乾燥処理済み葉または乾燥処理済みたばこなどの乾燥処理済み植物材料に関連し、本明細書に記載の一つまたは複数のポリヌクレオチドの発現またはそれによりコードされるポリペプチドの機能は調節され、硝酸塩のレベルは、対照植物と比較して、少なくとも約37%、例えば少なくとも約30%以上、または約35%以上、または約40%以上調節される。
【0142】
実施形態は、本明細書に記載の一つまたは複数のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現または機能を調節するために改変されている植物または植物細胞を生成するための組成物および方法も対象とし、これは、調節された硝酸塩含有量を有する植物または植物成分(例えば、乾燥処理済み葉などの葉、またはたばこ)または植物細胞をもたらすことができる。
【0143】
対照と比較した機能もしくは活性の増加は約5%~約100%であるか、または少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは100%以上、例えば、200%、300%、500%、1000%以上の増加であり得る。
【0144】
対照と比較した機能または活性の減少は約5%~約100%であるか、または少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは100%の減少であり得る。
【0145】
硝酸レダクターゼポリヌクレオチドに本明細書に記載の突然変異を有する植物を植物育種プログラムで使用して、有用な系統、品種、および混成体を作製することができる。特に、突然変異は、上述した商業的に重要な品種に遺伝子移入され得る。こうして、本明細書に記載の植物を異なる遺伝的同一性を備えた植物と交雑することを含む、植物を育種するための方法が提供されている。本方法は、子孫植物を別の植物と交雑すること、および任意で遺伝的形質または遺伝的背景を有する子孫が得られるまで交雑を繰り返すことをさらに含み得る。こうした育種方法が果たしている一つの目的は、望ましい遺伝的特性を他の品種、育種系統、混成体、または栽培品種、特に商業的利害のあるものに導入することである。別の目的は、単一植物品種、系統、混成体、または栽培品種における異なる遺伝子の遺伝的改変のスタッキングを容易にすることである。種内ならびに種間の交雑が企図される。このような交雑から発生した子孫植物は、育種系統とも称され、本開示の植物の例である。
【0146】
一実施形態では、(a)本開示の植物を第二の植物と交雑して、子孫たばこ種子を得ること、(b)植物栽培条件下で子孫たばこ種子を栽培して、非天然型植物を得ること、を含む植物を生産するための方法が提供される。方法は、(c)前世代の非天然型植物をそれ自体または別の植物と交雑して、子孫たばこ種子を得ることと、(d)工程(c)の子孫たばこ種子を植物栽培条件下で栽培して、さらなる非天然型植物を得ることと、(e)(c)および(d)の交雑および栽培工程を複数回繰り返して、非天然型植物のさらなる世代を生成することと、をさらに含み得る。この方法は、任意選択的に、工程(a)の前に、特性付けられた遺伝的同一性を備え、本開示の植物とは同一ではない親植物を提供する工程を含み得る。いくつかの実施形態では、育種プログラムに応じて、交雑および栽培工程は、非天然型植物の世代を生成するために、0~2回、0~3回、0~4回、0~5回、0~6回、0~7回、0~8回、0~9回、または0~10回繰り返される。戻し交雑は、親の一つに近い遺伝的同一性を有する次世代の子孫植物を得るために、子孫がその親の一つまたはその親と遺伝的に類似する別の植物と交雑される、そのような方法の例である。植物育種、特に植物育種の技法は周知であり、本開示の方法において使用することができる。特定の実施形態では、植物を選択する工程は除外される。
【0147】
本開示によれば、育種プログラムにおいて、成功した交雑種は、稔性であるF1植物を産み出す。選択されたF1植物は親の一つと交雑することができ、戻し交雑の第一世代の植物は自家受粉して、変異体遺伝子発現(例えば、ヌルバージョンの遺伝子)について再度スクリーニングされる集団を生成する。戻し交雑、自家受粉、およびスクリーニングのプロセスは、例えば、最終的なスクリーニングによって稔性であり、かつ反復親と合理的に類似した植物が生成されるまで少なくとも4回繰り返される。所望する場合、この植物を自家受粉し、その後子孫を再度スクリーニングして、植物が変異体遺伝子発現を示すことを確認する。いくつかの実施形態では、F2世代の植物集団は、変異体遺伝子発現についてスクリーニングされ、例えば、標準的な方法に従って、例えば本明細書に説明されるポリヌクレオチド(または本明細書に説明されるそれらの任意の組み合わせ)のポリヌクレオチド配列情報に基づくプライマーを用いたPCR法を使用することにより、遺伝子の欠損のためにポリペプチドを発現しない植物が特定される。
【0148】
本明細書に記載の突然変異は別として、本明細書に記載の植物または植物細胞は、本明細書に説明されるものと同一のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドにおいて、またはゲノム内の一つまたは複数の他のポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおいて、のいずれかで、一つまたは複数のさらなる突然変異を有することができる。
【0149】
限定はされないが、本明細書に説明される植物およびその部分は、本開示による一つまたは複数のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現、機能、または活性が調節される前または後のいずれかに改変することができる。
【0150】
一つまたは複数の以下のさらなる遺伝的改変(例えば、突然変異)が、植物およびその部分において存在し得る。
【0151】
窒素代謝中間体の変換に関与する一つまたは複数の遺伝子を改変(例えば、突然変異)して、少なくとも一つのたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)のレベルの低下をもたらすことができる。そのような遺伝子の非限定的な例としては、WO2006/091194、WO2008/070274、WO2009/064771、およびWO2011/088180に記載されるCYP82E4、CYP82E5、およびCYP82E10などのニコチンデメチラーゼ、ならびにWO2016046288に記載される硝酸レダクターゼをコードするもの含む。
【0152】
重金属の取り込みまたは重金属の輸送に関与する一つまたは複数の遺伝子を改変(例えば、突然変異)して、重金属含有量の低下をもたらすことができる。非限定的な例には、多剤耐性に関連するポリペプチドファミリー、陽イオン拡散促進物質(CDF)ファミリー、Zrt-Irt様ポリペプチド(ZIP)ファミリー、陽イオン交換体(CAX)ファミリー、銅輸送体(COPT)ファミリー、重金属ATPasesファミリー(例えば、WO2009/074325およびWO2017/129739に記載されるHMA)、自然耐性に関連するマクロファージポリペプチド(例えば、NRAMP)の相同体ファミリー、およびカドミウムなどの重金属の輸送に関与する、WO2012/028309に記載されるようなATP結合カセット(ABC)輸送体ファミリー(例えば、MRP)の他のメンバーに属する遺伝子が含まれる。
【0153】
他の例示的な改変(例えば、突然変異)は、イソプロピルリンゴ酸シンターゼの調節された発現または機能を有する植物をもたらすことができ、これは風味プロファイルを変更するために使用することができるスクロースエステル組成物における変化をもたらす(WO2013029799を参照)。
【0154】
他の例示的な改変(例えば、突然変異)は、メチオナールのレベルを調整することができる、トレオニンシンターゼの調節された発現または機能を有する植物をもたらすことができる(WO2013029800を参照)。
【0155】
他の例示的な改変(例えば、突然変異)は、ベータ-ダマセノン含有量を調節して風味プロファイルを変更するための、ネオキサンチンシンターゼ、リコピンベータシクラーゼ、および9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼのうちの一つまたは複数の調節された発現または機能を有する植物をもたらすことができる(WO2013064499を参照)。
【0156】
他の例示的な改変(例えば、突然変異)は、その中の硝酸塩レベルを調整するための、塩素チャネルのCLCファミリーメンバーの調節された発現または機能を有する植物をもたらすことができる(WO2014096283およびWO2015197727を参照)。
【0157】
他の例示的な改変(例えば、突然変異)により、葉中のアスパラギンのレベルを調節するために一つまたは複数のアスパラギンシンテターゼの発現または機能が調節され、かつ葉の加熱または燃焼時に生成されるエアロゾル中のアクリルアミドのレベルが調節された植物をもたらすことができる(WO2017042162を参照)。
【0158】
他の改変の例(例えば、突然変異)には除草剤耐性が含まれ、例えば、グリホサートは、多数の広範囲な除草剤の有効成分である。
【0159】
別の例示的な改変(例えば、突然変異)は、昆虫に対して耐性のある植物をもたらす。Bacillus thuringiensis(Bt)毒素は、最近ブロッコリにおいて例証されたように、Bt耐性害虫の発生を遅らせる効果的な方法を提供することができ、錐体のcry1Acおよびcry1CBt遺伝子は、いずれかの単一ポリペプチドに対して耐性のあるコナガ(diamondback moth)を駆除し、かつ耐性昆虫の進化を有意に遅らせた。
【0160】
別の例示的な改変(例えば、突然変異)は、病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌類)によって生じた疾患に対して耐性のある植物をもたらす。Xa21遺伝子(斑点細菌病に対して耐性)を発現する植物が、Bt融合遺伝子およびキチナーゼ遺伝子(イッテンオオメイガに対して耐性かつ鞘翅目に対して耐性)の両方を発現する植物と共に操作されている。
【0161】
別の例示的な改変(例えば、突然変異)は、雄性不稔性などの生殖能力の変更をもたらす。
【0162】
別の例示的な改変(例えば、突然変異)は、非生物的ストレス(例えば、乾燥、温度、塩分)に耐性のある植物をもたらす。
【0163】
別の例示的な改変(例えば、突然変異)は、一つまたは複数のグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β(1,2)-キシロシルトランスフェラーゼ、およびa(1,3)-フコシルトランスフェラーゼ)の活性が調節される植物をもたらす(WO/2011/117249を参照)。
【0164】
別の例示的な改変(例えば、突然変異)は、乾燥処理中に形成されるノルニコチンおよびノルニコチンの代謝産物のレベルが調節できるように、一つまたは複数のニコチンN-デメチラーゼの活性が調節される植物をもたらす(WO2015169927を参照)。
【0165】
他の例示的な改変(例えば、突然変異)は、ポリペプチドおよび油の貯蔵能力が改善された植物、光合成効率が高められた植物、貯蔵寿命が延長された植物、炭水化物含有量が増加した植物、および真菌類に対して耐性のある植物をもたらすことができる。
【0166】
ニコチン合成経路に関与する一つまたは複数の遺伝子を改変(例えば、突然変異)して、乾燥処理された場合にニコチンのレベルが調節される植物または植物の部分をもたらすことができる。ニコチン合成遺伝子は、A622、BBLa、BBLb、JRE5L1、JRE5L2、MATE1、MATE2、MPO1、MPO2、MYC2a、MYC2b、NBB1、nic1、nic2、NUP1、NUP2、PMT1、PMT2、PMT3、PMT4、およびQPT、またはそれらの一つまたは複数の組み合わせからなる群から選択することができる。
【0167】
一つまたは複数のアルカロイドの量の制御に関与する一つまたは複数の遺伝子を改変(例えば、突然変異)して、調節されたレベルのアルカロイドを生成する植物または植物の部分をもたらすことができる。アルカロイドレベル制御遺伝子は、BBLa、BBLb、JRE5L1、JRE5L2、MATE1、MATE2、MYC2a、MYC2b、nic1、nic2、NUP1、およびNUP2、またはそれらうちの二つ以上の組み合わせからなる群から選択することができる。
【0168】
本明細書に説明される植物の部分、特にそのような植物の葉身および中央脈は、様々な消費可能製品に組み込むか、またはそれらの製造に使用することができ、エアロゾル形成材料、エアロゾル形成デバイス、喫煙物品、喫煙可能物品、無煙製品、医療もしくは化粧品、静脈内投与製剤、錠剤、散剤、およびたばこ製品が挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾル形成材料の例としては、たばこ組成物、たばこ、たばこ抽出物、刻みたばこ、刻みフィラー、乾燥処理たばこ、膨化たばこ、均質化たばこ、再構成たばこ、およびパイプたばこが挙げられる。喫煙物品および喫煙可能物品は、エアロゾル形成デバイスの種類である。喫煙物品または喫煙可能物品の例としては、紙巻たばこ、シガリロ、および葉巻たばこが挙げられる。無煙製品の例には、噛みたばこ、および嗅ぎたばこが含まれる。特定のエアロゾル形成デバイスでは、燃焼ではなく、たばこ組成物または別のエアロゾル形成材料が、一つまたは複数の電気発熱体によって加熱されて、エアロゾルを生成する。別の種類の加熱式エアロゾル形成デバイスでは、エアロゾルは、可燃性燃料要素または熱源からの熱を、熱源の内部、周囲、または下流に位置し得る物理的に分離されたエアロゾル形成材料に伝達させることによって生成される。無煙たばこ製品および様々なたばこ含有エアロゾル形成材料は、乾燥粒子、断片、顆粒、粉末、またはスラリーのほか、薄片、フィルム、タブ、発泡体、またはビーズなど任意の形式の他の成分への蒸着、それへの混合、それによる包囲、あるいはそれとの組み合わせを含めた、任意の形態のたばこを含有し得る。本明細書で使用される場合、「煙」という用語は、紙巻たばこなどの喫煙物品によって、またはエアロゾル形成材料を燃焼することによって生成されるエアロゾルの種類を説明するために使用される。
【0169】
一実施形態では、本明細書に記載の植物に由来する乾燥処理済み植物材料も提供されている。たばこ生葉を乾燥処理するプロセスは当業者にとって公知であり、本明細書に説明されるような空気乾燥処理、火力乾燥処理、熱風送管乾燥処理、および日光乾燥処理が含まれるが、これらに限定されない。
【0170】
別の実施形態では、本明細書に記載のたばこ植物に由来する葉、好ましくは乾燥処理済み葉などの植物材料を含む、たばこ含有エアロゾル形成材料を含むたばこ製品が記載されている。本明細書説明されるたばこ製品は、未改変たばこをさらに含み得る、ブレンドたばこ製品であり得る。
【0171】
作物管理および農業のための製品および方法
【0172】
植物は、例えば、農業における他の用途を有してもよい。例えば、本明細書に記載の植物を使用して、動物用の飼料および人間用の食品を製造することができる。
【0173】
本開示はまた、本明細書に記載の植物を栽培すること、および栽培された植物から種子を収集することを含む、種子を生産するための方法も提供する。本明細書に説明される植物由来の種子を、当該技術分野において公知の手段によって調整し、包装材料内に袋詰めして、製造物品を形成することができる。紙および布などの包装材料は、当該技術分野で周知である。種子のパッケージは、標識、例えば、包装材料に固定されたタグまたは標識、その中に入っている種子の性質を説明するパッケージに印刷された標識などを有することができる。
【0174】
識別、選択、または育種のために植物の遺伝子型判別をするための組成物、方法、およびキットは、ポリヌクレオチドの試料中のポリヌクレオチド(または本明細書に説明されるようなその任意の組み合わせ)の存在を検出する手段を含むことができる。したがって、組成物は、増幅または検出を行うための、一つまたは複数のポリヌクレオチド、および任意に一つまたは複数のプローブ、および任意に一つまたは複数の試薬の少なくとも一部分を特異的に増幅するための一つまたは複数のプライマーを含むものとして説明される。
【0175】
したがって、本明細書に説明されるポリヌクレオチドに対応する約10個以上の連続するポリヌクレオチドを含む、遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブが開示される。該プライマーまたはプローブは、本明細書で説明したポリヌクレオチドにハイブリッド形成(例えば、特異的にハイブリッド形成)する約15個、20個、25個、30個、40個、45個または50個超の連続するポリヌクレオチドを含み得るか、またはそれらからなり得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、プライマーまたはプローブは、遺伝子識別(例えば、サザンハイブリッド形成)または単離(例えば、細菌性コロニーまたはバクテリオファージプラークの原位置ハイブリッド形成)、または遺伝子検出(例えば、増幅または検出における一つまたは複数の増幅プライマーとして)の配列依存性方法において使用し得る、約10~50個の連続するヌクレオチド、約10~40個の連続するヌクレオチド、約10~30個の連続するヌクレオチド、または約15~30個の連続するヌクレオチドを含み得るか、またはそれらからなり得る。一つまたは複数の特異的なプライマーまたはプローブを設計して、一部またはすべてのポリヌクレオチドを増幅または検出するために使用することができる。特定の例として、二つのプライマーをPCRプロトコルにおいて使用して、ポリヌクレオチド断片を増幅してもよい。また、PCRは、ポリヌクレオチド配列に由来する一つのプライマーと、ポリヌクレオチド配列の上流または下流の配列(例えば、プロモーター配列、mRNA前駆体の3’端またはベクターに由来する配列)にハイブリッド形成する第二のプライマーとを使用しても実施し得る。ポリヌクレオチドの生体外増幅に有用な温度および等温技法の例は、当該技術分野で周知である。試料は、植物、植物細胞、または植物材料、あるいは本明細書に説明されるような植物、植物細胞、もしくは植物材料から製造されたか、またはそれらに由来するたばこ製品であり得るか、それらに由来し得る。
【0177】
さらなる態様では、試料中の本明細書に説明されるポリヌクレオチド(または本明細書に説明されるようなその任意の組み合わせ)を検出する方法も提供されており、その方法は、(a)ポリヌクレオチドを含むか、またはそれを含むとみられている試料を提供する工程、(b)ポリヌクレオチドの少なくとも一部分を特異的に検出するために、試料を一つまたは複数のプライマーまたは一つまたは複数のプローブと接触させる工程、(c)増幅産物の存在を検出する工程を含み、ここで、増幅産物の存在は、試料中のポリヌクレオチドの存在を示すものである。さらなる態様では、ポリヌクレオチドの少なくとも一部分を特異的に検出するための一つまたは複数のプライマーまたはプローブの使用も提供される。ポリヌクレオチドの少なくとも一部分を検出するためのキットも提供され、これは、ポリヌクレオチドの少なくとも一部分を特異的に検出するための一つまたは複数のプライマーまたはプローブを含む。キットは、ポリヌクレオチド増幅(例えば、PCR)のための試薬、またはプローブハイブリッド形成検出技術(例えば、サザンブロット、ノーザンブロット、インサイチュハイブリッド形成、またはマイクロアレイ)のための試薬を含み得る。キットは、ウエスタンブロット、ELISA、SELDI質量分析法、または試験片などの抗体結合検出技術のための試薬を含み得る。キットは、DNA配列決定のための試薬を含み得る。キットは、試薬およびキットを使用するための説明書を含み得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、キットは、一つまたは複数の説明される方法についての説明書を含み得る。説明されるキットは、遺伝的同一性の決定、系統学的研究、遺伝子型判別、ハプロタイプ、系図分析、または植物育種に関して、特に共優性評価で有用であり得る。
【0179】
本開示は、本明細書に説明されるポリヌクレオチドを含む植物、植物細胞、または植物材料の遺伝子型判別の方法も提供する。遺伝子型判別は、染色体対の相同体を区別する手段を提供し、植物の集団において分離体を識別するために使用することができる。分子マーカー法は、系統学的研究、作物品種間の遺伝的関係の特徴付け、交雑種または体細胞混成体の識別、単一遺伝形質に影響を及ぼす染色体のセグメントの局所化、マップベースのクローン化、および定量的継承の研究のために使用することができる。遺伝子型判別の具体的な方法は、増幅断片長多型(AFLP)を含む、任意の数の分子マーカー分析技法を援用し得る。AFLPは、ポリヌクレオチドの可変性に起因する増幅断片間の対立遺伝子の差異の産物である。したがって、本開示は、一つまたは複数の遺伝子またはポリヌクレオチド、ならびにこれらの遺伝子またはポリヌクレオチドに遺伝的に関連した染色体配列の分離を、AFLP分析などの技法を使用して追跡する手段をさらに提供する。
【0180】
本発明は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される、以下の実施例においてさらに説明される。これらの実施例は、本発明を実施するために現時点で企図されている好ましい様式について記載しており、本発明を例証することを意図し、限定することを意図していない。
【実施例0181】
無作為な点突然変異を持つ植物の母集団を形成するために、エチル-メタンスルホン酸塩(EMS)を用いて、Nicotiana tabacumAA37のM0種子を、異なる濃度および露光時間で処理する。殺菌曲線は、死亡率、稔性およびキメラ化のレートと共に、各処理についてM1世代で予測される。M1植物は、自家受粉して、種子のM2系統を生成し、劣性の対立形質が同型接合として回復し、致命的な対立形質が異型接合として回復されるようにした。EMS変異誘発させた母集団のファミリーにつき八個のM2植物に由来するゲノムDNAを抽出して突然変異体についてスクリーニングし、M2植物材料およびM3種子を回収し、将来的な分析用に貯蔵した。突然変異体を特定し特性付けするために、M2植物に由来するゲノムDNA試料をグループでプールし、標的とされた遺伝子断片の配列決定によってスクリーニングした。標的遺伝子の断片は、表2に示すたばこNIA2遺伝子に特異的なプライマーを使用して増幅させた。標的遺伝子内の突然変異が、個別DNA断片の配列決定により引き出された。たばこNIA2突然変異M527Iを表1に記載する。突然変異植物をAA37野生型と交雑させ、ヘテロ接合性のF1を自家受粉させた。F2分離体は、定量的核酸増幅法(TaqMan)によって分析される。
【0182】
圃場試験では、三つのNIA2 M527Iホモ接合性突然変異系統を、5つのout-segregantホモ接合性野生型系統およびEMS処理を受けていない1つのAA37対照系統に対して試験した。圃場設計では、圃場の不均一性による位置効果を最小限にするために、ランダムに分散された20の植物プロットに植物を表示した。植物は、スイスの標準的なバーレー種たばこの適正農業規範に従って栽培された。収穫時に、未乾燥葉の総バイオマスを測定した。植物葉のバイオマスの測定は、収穫時に葉を切断し、その未乾燥重量を記録することによって行われる。
【0183】
次いで、第二の収穫の葉(茎の中ほどの位置)を、空気乾燥させ、標準的なSkalar法を介してサンプルの化学プロファイリングを分析した。
【0184】
結果を
図2に報告する。突然変異植物系統NtNIA2 M527Iは、圃場試験で、out-segregant野生型対照植物と比較して、乾燥処理済み葉の硝酸塩レベルが37%減少したことを実証している。植物の総収穫バイオマス(植物当たりの未乾燥葉バイオマスとして示される)、およびニコチン、総アルカロイド、アンモニア、ならびに還元糖の葉の含有量への影響は観察されなかった。
【0185】
本明細書に引用または記載されるあらゆる刊行物は、本出願の出願日以前に開示された関連情報を提供する。本明細書における記述は、本発明者らがそのような開示に先だって権利を与えられないことの承認としては解釈されないものとする。上記の明細書で言及したすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な改変および変形が、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。特定の好ましい実施形態に関連付けて本発明を説明してきたが、特許請求される本発明は、このような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、本発明を実施するための記述された方法の様々な改変は、細胞生物学、分子生物学、および植物生物学、または関連分野の当業者には明らかであり、特許請求の範囲の範囲内に収まるものであることが意図される。
【0186】
配列表
配列番号1硝酸レダクターゼに対するNicotiana tabacumNIA2遺伝子の野生型ポリペプチド配列、GenBank登録番号X14059。NtNIA2アミノ酸S523のリン酸化に関与する硝酸レダクターゼキナーゼの結合のための認識部位として作用する配列は、太字および下線で強調表示される。
【0187】
【0188】
配列番号2 硝酸レダクターゼに対するNicotiana tabacumNIA2遺伝子の野生型ポリヌクレオチド配列、GenBank登録番号X14059。NtNIA2アミノ酸S523のリン酸化に関与する硝酸レダクターゼキナーゼの結合のための認識部位として作用する配列は、太字および下線で強調表示される。
【0189】
配列番号3 硝酸レダクターゼに対するNicotiana tabacumNIA2遺伝子の突然変異ポリペプチド配列。硝酸レダクターゼキナーゼの結合に対する認識部位における突然変異ポリペプチドは、太字および下線で強調表示される。
【0190】
配列番号4 硝酸レダクターゼに対するNicotiana tabacumNIA2遺伝子の突然変異ポリヌクレオチド配列。NtNIA2アミノ酸S523のリン酸化に関与する硝酸レダクターゼキナーゼの結合のための認識部位として作用する配列は、太字で強調表示される。gからaへの突然変異には下線が引かれている。
【0191】
配列番号5 硝酸レダクターゼに対するNicotiana tabacumNIA2遺伝子の野生型ポリペプチド配列からのNtNIA2アミノ酸S523のリン酸化に関与する硝酸レダクターゼキナーゼの結合に対する認識部位として作用するポリペプチド配列、GenBank登録番号X14059。
LK(KまたはR)(SまたはT)(IまたはVまたはA)S(TまたはS)PFM
【0192】
配列番号6 配列番号5の突然変異ポリペプチド配列。
LK(KまたはR)(SまたはT)(IまたはVまたはA)S(TまたはS)PFI
【0193】
配列番号7 硝酸レダクターゼに対するNicotiana tabacumNIA2遺伝子の野生型ポリペプチド配列からのNtNIA2アミノ酸S523のリン酸化に関与する硝酸レダクターゼキナーゼの結合に対する認識部位として作用する野生型ポリペプチド配列、GenBank登録番号X14059。
LKKSISTPFM
【0194】
配列番号8 (配列番号7の突然変異ポリペプチド配列)。
LKKSISTPFI
【0195】
表1
NtNIA2 M527I突然変異の詳細
【表1】
突然変異NtNIA2 M527Iの配列情報を示す。二列目と三列目は、突然変異したヌクレオチドの直前の10個のヌクレオチドと、突然変異したヌクレオチドの直後の10個のヌクレオチドを示す。四列目と五列目は、野生型配列に見られる、元のコドンと元のアミノ酸を(それぞれ)報告する。最後の二列は、突然変異した配列中のコドンおよびアミノ酸を(それぞれ)報告する。太字で下線が引かれているのは、GからAへの突然変異である。
【0196】
表2
NtNIA2特異的プライマーの詳細
【表2】
報告されるのは、NtNIA2特異的プライマーの配列詳細である。二列目は、プライマーのDNA配列を示す。
【0197】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕植物細胞であって、
(a) 配列番号5または配列番号7の連続するポリペプチド配列を含む硝酸レダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、メチオニンが、対照植物細胞と比較して前記植物細胞中の硝酸レダクターゼ活性を低下させるアミノ酸に置換されている、ポリヌクレオチド配列、
(b) (a)に記載した前記ポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列、または
(c) (b)に記載した前記ポリヌクレオチド配列を含む構築物、ベクター、または発現ベクター
を含む、植物細胞。
〔2〕メチオニンが、異なるアミノ酸に置換され、好適には、前記置換アミノ酸がイソロイシンであり、好適には、前記ポリペプチドが、配列番号6または配列番号8の連続するポリペプチド配列を含む、前記〔1〕に記載の植物細胞。
〔3〕前記硝酸レダクターゼポリペプチドが、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列の527位に対応する位置にアミノ酸置換を含む、前記〔1〕または前記〔2〕に記載の植物細胞。
〔4〕前記硝酸レダクターゼポリペプチドが、配列番号3に記載されるポリペプチド配列を含む、配列番号3に記載されるポリペプチド配列からなる、または配列番号3に記載されるポリペプチド配列から本質的になる、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の植物細胞。
〔5〕前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列からなる、または配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列から本質的になる、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の植物細胞。
〔6〕前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号4に記載されるポリヌクレオチド配列を含む、配列番号4に記載されるポリヌクレオチド配列からなる、または配列番号4に記載されるポリヌクレオチド配列から本質的になる、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の植物細胞。
〔7〕前記植物細胞が、Nicotiana tabacum植物細胞である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の植物細胞。
〔8〕前記植物細胞が、Nicotiana tabacum AA37栽培品種の植物細胞である、前記〔7〕に記載の植物細胞。
〔9〕好適には、前記植物またはその部分の乾燥処理済み葉が、対照植物またはその部分と比較して、低いレベルの硝酸塩を含有し、好適には、硝酸塩の前記レベルは、前記対照植物またはその部分と比較して減少する、前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の植物細胞を含む植物またはその部分。
〔10〕前記〔9〕の植物またはその部分に由来する、植物材料、乾燥処理済み植物材料、または均質化した植物材料であって、好適には、前記乾燥処理済み植物材料が、空気乾燥または日光乾燥または熱風送管乾燥された植物材料であり、好適には、前記植物材料、乾燥処理済み植物材料、または均質化した植物材料が、前記〔9〕の植物またはその部分のバイオマス、種子、茎、花、または葉を含む、植物材料、乾燥処理済み植物材料、または均質化した植物材料。
〔11〕前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の植物細胞、前記〔9〕に記載の植物の一部、または前記〔10〕に記載の植物材料を含む、たばこ製品。
〔12〕前記〔9〕に記載の植物を生成するための方法であって、
(a) 前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の植物細胞を提供する工程、および
(b) 前記植物細胞を植物中に増殖させる工程
を含む、方法。
〔13〕対照植物材料と比較して変化した量の硝酸塩を有する乾燥処理済み植物材料を生成するための方法であって、
(a) 前記〔9〕に記載の植物もしくはその部分、または前記〔10〕に記載の植物材料を提供する工程、
(b) 任意に、前記植物材料を前記植物またはその部分から収穫する工程、および
(c) 前記植物材料を乾燥処理する工程
を含む、方法。
〔14〕前記植物材料が、乾燥処理済み葉を含む、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕前記乾燥処理方法が、空気乾燥処理、火力乾燥処理、燻煙乾燥処理、および熱風送管乾燥処理からなる群から選択される、前記〔14〕に記載の方法。