(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180622
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241219BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 113
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/175 169
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181883
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2021011880の分割
【原出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】中澤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓介
(57)【要約】
【課題】中継基板内におけるノイズ干渉を抑制するとともに、中継基板から液体吐出ヘッドに接続する配線、及び、中継基板からバルブに接続する配線が長くなるのを抑制する。
【解決手段】プリンタは、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドよりも上方に配置された電磁バルブと、制御基板7を有する制御部と、中継基板80と、制御基板7と中継基板80とを繋ぐFPC8とを含む。中継基板80は、上下方向A1に沿って垂直に設置されている。FPC8は、複数のヘッド用信号線8aと、バルブ用信号線8bを有する。バルブ用信号線8bの中継基板80に対する接続位置は、ヘッド用信号線8aの中継基板80に対する接続位置よりも上方にある。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
液体を貯留する液体貯留室、前記液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路、及び、前記大気連通路を連通させる連通状態及び前記大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体貯留部と、
前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留室とを、液体が流通可能に接続する液体流路と、
制御基板を有し、前記液体吐出ヘッド、前記バルブ及び前記搬送機構を制御する制御部と、
前記搬送方向に面する垂直面に対して交差して設置された中継基板と、
前記制御基板と前記中継基板とを繋ぐように接続され、前記制御基板からの信号を前記液体吐出ヘッドに送信するためのヘッド用信号線と、
前記制御基板と前記中継基板とを繋ぐように接続され、前記制御基板からの信号を前記バルブに送信するためのバルブ用信号線と、を備えており、
前記バルブは、前記液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の一方に配置されており、
前記バルブ用信号線の前記中継基板に対する接続位置は、前記ヘッド用信号線の前記中継基板に対する接続位置よりも前記搬送方向の前記一方にあることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記中継基板が水平方向に沿って設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記搬送方向の前記一方は、前記搬送方向の上流であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記搬送方向の前記一方は、前記搬送方向の下流であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ノズルからの液体の吐出量に応じて更新される液体カウント値、基準値、及び、前記ノズルに形成された液体メニスカスの耐圧値未満を示す液体閾値を記憶するメモリを有し、
前記バルブが前記連通状態から前記遮断状態を取るときの前記液体カウント値を前記基準値として前記メモリに記憶する記憶処理と、
前記液体カウント値と前記基準値との差分が前記液体閾値に達しているか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において、差分が前記液体閾値に達していると判定されたときに、前記バルブが前記連通状態を取るように、前記バルブを制御する連通処理と、
前記連通処理後に、前記バルブが前記遮断状態を取るように、前記バルブを制御する遮断処理とを実行可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体貯留室の圧力を検出する検出手段をさらに備えており、
前記制御部は、
前記検出手段によって検出された圧力が前記ノズルに形成された液体メニスカスの耐圧値未満である所定値に達しているか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において、圧力が前記所定値に達していると判定されたときに、前記バルブが前記連通状態を取るように、前記バルブを制御する連通処理と、
前記連通処理後に、前記バルブが前記遮断状態を取るように、前記バルブを制御する遮断処理とを実行可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記検出手段が、圧力センサであることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記液体吐出ヘッド、及び、前記液体貯留部を支持するキャリッジと、
前記搬送方向と交差する走査方向にキャリッジを移動させる移動機構と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記バルブは、電磁バルブからなることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記ヘッド用信号線、及び、前記バルブ用信号線は、1つのフレキシブルフラットケーブルに形成された複数の配線を構成していることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記フレキシブルフラットケーブルには、前記ヘッド用信号線と、前記バルブ用信号線との間にグランドに接地されるグランド線が配置されていることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記液体貯留部は、前記液体貯留室と外部とを連通する液体注入口をさらに備えていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに連通する液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路を連通させる連通状態、及び、大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクタンクから供給されたインクがインクバッファに貯留され、キャリッジ上の印字ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録動作を行うインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置においては、インクタンク内のインクがインクバッファ内に供給されるインク供給の間、インクバッファ内の上部空気層と大気との連絡を制御する大気開放用電磁バルブは開放されている。これにより、インク供給時に、インクバッファ内の上部の空気を逃がすことが可能となって、インクバッファ内のインクが加圧されない。また、このインクジェット記録装置においては、パージング時には、大気開放用電磁バルブは閉塞されており、インクタンクから加圧されたインクが供給され、パージング動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように上記特許文献1には、大気開放用電磁バルブを有するインクジェット記録装置について記載されているが、大気開放用電磁バルブ及び印字ヘッドを制御するための制御基板と、大気開放用電磁バルブ及び印字ヘッドとを繋ぐ信号線の配設状況について記載されていない。大気開放用電磁バルブ及び印字ヘッドが中継基板に接続され、その中継基板を介して大気開放用電磁バルブ及び印字ヘッドが制御基板と接続されている場合、制御基板からの信号を大気開放用電磁バルブに送信するためのバルブ用信号線と、制御基板からの信号を印字ヘッドに送信するためのヘッド用信号線とが、制御基板と中継基板とを繋ぐように接続される。
【0005】
例えば、大気開放用電磁バルブが印字ヘッドよりも上方に配置され、中継基板が水平面に対して交差して(例えば、垂直に沿って)設置されている場合、バルブ用信号線の中継基板に対する接続位置が、ヘッド用信号線の中継基板に対する接続位置よりも下方に配置されていると、中継基板内において、バルブ用信号線と接続されるバルブ用配線を大気開放用電磁バルブに近づくように上方に向かって形成し、ヘッド用信号線と接続されるヘッド用配線を印字ヘッドに近づくように下方に向かって形成すると、両配線が交差しやすくなって、ノイズ干渉が生じやすくなる。一方、中継基板内においてバルブ用配線とヘッド用配線とが交差しないように配設すると、中継基板と大気開放用電磁バルブとを接続する配線の中継基板に対する接続位置から大気開放用電磁バルブまでの距離、及び、中継基板と印字ヘッドとを接続する配線の中継基板に対する接続位置から印字ヘッドまでの距離の少なくとも一方が長くなり、当該距離の長いものに対応する配線長も長くなる。
【0006】
また、大気開放用電磁バルブが印字ヘッドよりも記録媒体の搬送方向の上流に配置され、中継基板が搬送方向に面する垂直面に対して交差して(例えば、水平に沿って)設置されている場合、バルブ用信号線の中継基板に対する接続位置が、ヘッド用信号線の中継基板に対する接続位置よりも搬送方向の下流に配置されていると、中継基板内において、バルブ用信号線と接続されるバルブ用配線を大気開放用電磁バルブに近づくように搬送方向の上流に向かって形成し、ヘッド用信号線と接続されるヘッド用配線を印字ヘッドに近づくように搬送方向の下流に向かって形成すると、両配線が交差しやすくなって、ノイズ干渉が生じやすくなる。一方、中継基板内においてバルブ用配線とヘッド用配線とが交差しないように配設すると、中継基板と大気開放用電磁バルブとを接続する配線の中継基板に対する接続位置から大気開放用電磁バルブまでの距離、及び、中継基板と印字ヘッドとを接続する配線の中継基板に対する接続位置から印字ヘッドまでの距離の少なくとも一方が長くなり、当該距離の長いものに対応する配線長も長くなる。
【0007】
このようにバルブ用信号線の中継基板に対する接続位置とヘッド用信号線の中継基板に対する接続位置と、大気開放用電磁バルブ及び印字ヘッドの配置位置との関係によっては、中継基板内においてノイズ干渉が生じる問題、及び、中継基板と大気開放用電磁バルブとを接続する配線及び中継基板と印字ヘッドとを接続する配線の少なくとも一方が長くなる問題の少なくとも一方が生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、中継基板内におけるノイズ干渉を抑制するとともに、中継基板から液体吐出ヘッドに接続する配線、及び、中継基板からバルブに接続する配線が長くなるのを抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体吐出装置は、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、液体を貯留する液体貯留室、前記液体貯留室と外部とを連通させるための大気連通路、及び、前記大気連通路を連通させる連通状態及び前記大気連通路を遮断する遮断状態のいずれか一方を選択的に取ることが可能な電気で駆動するバルブを有する液体貯留部と、前記液体吐出ヘッドと前記液体貯留室とを、液体が流通可能に接続する液体流路と、制御基板を有し、前記液体吐出ヘッド、前記バルブ及び前記搬送機構を制御する制御部と、前記搬送方向に面する垂直面に対して交差して設置された中継基板と、前記制御基板と前記中継基板とを繋ぐように接続され、前記制御基板からの信号を前記液体吐出ヘッドに送信するためのヘッド用信号線と、前記制御基板と前記中継基板とを繋ぐように接続され、前記制御基板からの信号を前記バルブに送信するためのバルブ用信号線と、を備えている。そして、前記バルブは、前記液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の一方に配置されており、前記バルブ用信号線の前記中継基板に対する接続位置は、前記ヘッド用信号線の前記中継基板に対する接続位置よりも前記搬送方向の前記一方にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体吐出装置によると、バルブ用信号線の中継基板に対する接続位置がバルブに近づき、ヘッド用信号線の中継基板に対する接続位置が液体吐出ヘッドに近づく。このため、中継基板内において、バルブ用信号線と接続されるバルブ用配線とヘッド用信号線と接続されるヘッド用配線とを交差させる必要がなくなり、ノイズ干渉を抑制することが可能となる。また、中継基板から液体吐出ヘッドに接続する配線、及び、中継基板からバルブに接続する配線が長くなるのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すプリンタの内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図2に示すインクタンク及びインクジェットヘッドを示しており、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【
図4】
図3に示すインクジェットヘッドの平面図である。
【
図6】制御基板、中継基板、これら両基板を接続するFPCの設置状況を示す概略図である。
【
図7】
図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】プリンタの記録動作を示すフローチャートである。
【
図9】液量センサがエンプティを検出したときのプリンタの動作を示すフローチャートである。
【
図10】(a)は第1変形例に係るプリンタのインクタンク及びインクジェットヘッドの側面図を示しており、(b)は第1変形例に係るプリンタの制御基板、中継基板、これら両基板を接続するFPCの設置状況を示す概略図である。
【
図11】(a)は第2変形例に係るプリンタのインクタンク及びインクジェットヘッドの側面図を示しており、(b)は第2変形例に係るプリンタの制御基板、中継基板、これら両基板を接続するFPCの設置状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るプリンタ1について説明する。プリンタ1は、
図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、
図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向A1、前後方向A2、及び、左右方向A3である。
図2~
図6にも、
図1に示す3つの方向を反映して示す。
【0013】
<プリンタ1の概要>
図1に示すように、プリンタ1は、概ね直方体形状の筐体11を有する。筐体11の前壁11aの略中央には、開口12が形成されている。開口12には、給紙トレイ15及び排紙トレイ16が、上下2段に設けられている。給紙トレイ15は、開口12から前後方向A2に挿抜可能、すなわち、筐体11から着脱可能に構成されている。所望のサイズ(例えば、A4サイズ)の用紙Pが給紙トレイ15に載置される。プリンタ1は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称する)などの外部機器と接続可能である。そして、PCなどからの記録データに基づいて記録動作を実行する。
【0014】
前壁11aの上部には、
図1に示すように、操作部13が設けられている。操作部13は、各種設定のために操作されるボタンや、各種情報が表示される液晶ディスプレイなどによって構成されている。本実施形態において、操作部13は、ボタン及び液晶ディスプレイの双方の機能を有するタッチパネルによって構成されている。
【0015】
筐体11は、
図1及び
図2に示すように、その天井部分を構成する開閉カバー14を有する。開閉カバー14は、後端部において、左右方向A3に沿う回転軸(不図示)を回転中心として回動可能に構成されている。開閉カバー14を開くことで、後述のインクタンク61が露出され、インクタンク61にインクを注入して補充することが可能となる。
【0016】
<プリンタ1の内部構造>
次に、プリンタ1の内部構造について説明する。
図2に示すように、プリンタ1は、給送部20と、搬送ローラ対35と、記録部40と、排紙ローラ対36と、ASF(Auto Sheet Feed)モータ20M(
図7参照)と、LF(Line Feed)モータ35M(
図7参照)と、液量センサ6(
図7参照)と、制御部5(
図7参照)とを含む。
【0017】
給送部20は、
図2に示すように、給紙トレイ15に載置される用紙Pを搬送路25へ給送する。搬送ローラ対35は、給送部20によって給紙された用紙Pを記録部40に搬送する。記録部40は、例えば、インクジェット記録方式の構成を有し、搬送ローラ対35によって搬送された用紙Pに画像を記録する。排紙ローラ対36は、記録部40によって記録された用紙Pを排紙トレイ16に排紙する。
【0018】
<給送部20>
図2に示すように、給送部20が給紙トレイ15の上側に設けられている。給送部20は、給紙ローラ21とアーム22を有する。給紙ローラ21は、アーム22の先端に軸支されている。アーム22は、支軸22aに回動自在に支持され、バネなどにより付勢されて給紙ローラ21が給紙トレイ15に接触するように下側へ回動されている。また、アーム22は、給紙トレイ15を着脱する際に上方へ退避可能に構成されている。給紙ローラ21は、伝達機構(不図示)を介してASFモータ20Mの動力が伝達されて回転し、給紙トレイ15内に積載された用紙Pが、搬送路25へ給送される。
【0019】
<給紙トレイ15>
図2に示すように、給紙トレイ15は、斜壁部15aを有する。斜壁部15aは、給紙トレイ15に載置される用紙Pが給紙ローラ21によって給送されるときに、用紙Pを搬送路25に案内する。
【0020】
<搬送路25>
搬送路25は、筐体11内に構成されており、
図2に示すように、給紙トレイ15の後側の端部から上方且つプリンタ1の前側へ曲がっている。給紙トレイ15から給送された用紙Pは、搬送路25により下方から上方へUターンするように案内されて記録部40に至る。
【0021】
<搬送ローラ対35、及び、排紙ローラ対36>
搬送ローラ対35は、下側に配置された搬送ローラ35aと上側に配置されたピンチローラ35bとを有する。搬送ローラ35aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。ピンチローラ35bは、搬送ローラ35aの回転に伴って連れ回る。搬送ローラ35aとピンチローラ35bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを記録部40へ搬送する。
【0022】
排紙ローラ対36は、下側に配置された排紙ローラ36aと、上側に配置された拍車ローラ36bとを有する。排紙ローラ36aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。拍車ローラ36bは、排紙ローラ36aの回転に伴って連れ回る。排紙ローラ36aと拍車ローラ36bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを排紙トレイ16に搬送する。
【0023】
<記録部40>
図2及び
図3に示すように、記録部40は、インクジェットヘッド41と、インクタンク61と、中継基板80と、キャリッジ70と、移動機構71と、プラテン17とを有する。キャリッジ70は、走査方向(左右方向A3であって、用紙Pの搬送方向と直交する方向)へ往復移動する。インクジェットヘッド41及びインクタンク61は、キャリッジ70に支持されている。つまり、本実施形態におけるプリンタ1は、インクタンク61及びインクジェットヘッド41がキャリッジ70に搭載された所謂オンキャリッジ型である。本実施形態におけるインクタンク61は、その全体がインクジェットヘッド41よりも上方に位置する。しかし、これに限らず、インクタンク61の一部がインクジェットヘッド41の上面よりも上方に位置し、残りの部分が当該上面よりも下方に位置していてもよい。
【0024】
<インクタンク61>
インクタンク61は、
図3に示すように、タンク本体62と、キャップ63と、電磁バルブ64とを有している。タンク本体62は、略直方体形状を有しており、内部にインクを貯留するためのインク貯留室62aが形成されている。インク貯留室62aには、ブラックインクが貯留される。また、タンク本体62は、主に透光性材料(例えば、透明又は半透明樹脂)により作製される。これにより、ユーザがインク貯留室62aにおけるインクの量を視認できる。
【0025】
タンク本体62には、
図3に示すように、その上壁62bを貫通する貫通孔62cが形成されている。貫通孔62cは、上壁62bの左右方向A3の中央であって、やや前方寄りの位置に配置されている。貫通孔62cには、筒体66が嵌め込まれている。筒体66は、その上端部にインク注入口67を有する。インク注入口67は、上方(すなわち、外部)に向かって開放された開口である。筒体66の内周面は、インク注入口67からインク貯留室62aに至るインク供給路66aを区画する。これにより、インク注入口67は、インク貯留室62aと連通する。
【0026】
図3に示すキャップ63は、例えば柔軟性樹脂で作製される。キャップ63は、ユーザ操作により、筒体66の上端部に着脱可能であり、インク注入口67を閉塞または開放する。インク注入口67は、キャップ63によって通常は閉塞されており、インク貯留室62aにインクを注入する際に、筒体66から取り外されて開放される。
【0027】
タンク本体62には、
図3(b)に示すように、その後方側壁62dを貫通し、インク貯留室62aと外部とを連通する大気連通口62eが形成されている。大気連通口62eは、後方側壁62dの上端部付近に配置されている。また、タンク本体62には、
図3に示すように、その前方側壁62fに上側指標62f1及び下側指標62f2が形成されている。なお、大気連通口62eは、上側指標62f1よりも上方に配置されておればよく、例えば、上壁62bに形成されていてもよい。
【0028】
図3において、上側指標62f1は、前方側壁62fの外表面において、上端部付近の位置で、左右に延びる線状形状を有する。また、上側指標62f1は、上下方向A1において、
図3(b)に示すように、大気連通口62eよりも下方に配置されている。上側指標62f1は、インク貯留室62aに貯留可能な最大のインク量の液面の位置を示す指標の一例である。また、下側指標62f2は、前方側壁62fの外表面において、下端部付近の位置で、左右に延びる線状形状を有する。下側指標62f2は、インク貯留室62aにインクの補充、すなわちインク注入が必要となる液面の位置を示す指標である。なお、上側指標62f1および下側指標62f2は、前方側壁62fの外表面に形成された凹凸、または塗料等による着色によっても実現可能である。
【0029】
電磁バルブ64は、
図3(b)に示すように、公知の2方向電磁バルブであって、弁部64aとソレノイド部64bとを有する。電磁バルブ64は、上側指標62f1よりも上方に配置されるように、上壁62bに固定されている。弁部64aは、インク貯留室62aに配置され、大気連通口62eとインク貯留室62aとに連通する内部流路(不図示)と当該内部流路を開閉する弁(不図示)とを有している。ソレノイド部64bは、上壁62b上に配置されており、弁部64aの弁の開閉を行う。電磁バルブ64は、制御部5の制御により、ソレノイド部64bが駆動されることで、弁部64aが、大気連通口62eとインク貯留室62aとを連通させる連通状態(すなわち、弁が内部通路を開とした状態)と、大気連通口62eとインク貯留室62aとの連通を遮断する遮断状態(すなわち、弁が内部通路を閉とした状態)とを選択的にとる。
【0030】
変形例として、電磁バルブ64は、弁部64aがインクタンク61の外部において大気連通口62eと外部とを連通可能に接続されていてもよい。これにおいて、大気連通口62eを外部と連通する連通状態及び外部との連通を遮断する遮断状態を選択的に取ることが可能となる。また、電磁バルブ64全体が、インク貯留室62aに配置されていてもよい。また、電磁バルブ64は、弁部64aの内部流路が大気連通口62eと連通可能に接続されておれば、タンク本体62の上壁62b以外の前後左右の側壁の少なくともいずれかに固定されて設置されていてもよい。
【0031】
また、タンク本体62には、その底壁62gを貫通し、インク貯留室62aのインクをインクジェットヘッド41へ流出する流出口62hが形成されている。流出口62hは、底壁62gの左右方向A3の中央であって、前端部付近の位置に配置されている。
【0032】
タンク本体62の後方側壁62dには、
図3(b)に示すように、後方へ突出する突出部62iが形成されている。突出部62iは、透光性材料からなり、概ね直方体形状を有する。突出部62iは、下側指標62f2より下方の位置から上方の位置に亘って上下方向A1へ延びる。突出部62iの左右寸法は、インク貯留室62aの左右寸法より小さい。突出部62iは、インク貯留室62aと連通する内部空間を区画している。
【0033】
<液量センサ6>
液量センサ6は、透過型光学センサであり、発光素子と、発光素子との間に突出部62iを挟む位置に配置され、発光素子からの光を受光する受光素子とを有する。発光素子は、突出部62iの下側指標62f2とほぼ同じ上下位置の部分に向けて、左右方向A3に平行な光を照射する。液量センサ6は、受光素子の受光量に応じたレベルを示す信号を制御部5に出力する。つまり、液量センサ6は、インク貯留室62aのインク液面が、下側指標62f2よりも下方になるとき(すなわち、インクタンク61のインク量がエンプティとなるとき)と、そうでないときとで異なる信号を制御部5に出力する。このように液量センサ6は、インクの液面高さを検出することで、インクタンク61のインク量がエンプティであるかを検出することが可能である。
【0034】
<インクジェットヘッド41>
インクジェットヘッド41には、インクタンク61からブラックインクが供給される。また、インクジェットヘッド41は、その下面であるノズル面41aに形成された複数のノズル42からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル42は、前後方向A2であって用紙Pの搬送方向に沿ったノズル列を形成している。複数のノズル42からは、ブラックのインクが吐出される。インクジェットヘッド41は、
図4及び
図5に示すように、流路ユニット43と圧電アクチュエータ50とを有している。
【0035】
<流路ユニット43>
流路ユニット43は、
図5に示すように、4枚のプレート43a~43dが上から順に積層されることによって形成されている。プレート43dには、
図4及び
図5に示すように、複数のノズル42が形成されている。プレート43aには複数の圧力室45が形成されている。また、圧力室45は、ノズル42毎に設けられ、右側の端部がノズル42と上下方向A1に重なっている。
【0036】
プレート43bには、
図4及び
図5に示すように、各圧力室45の左側の端部と上下方向A1に重なる部分に円形の貫通孔46aが形成されている。また、プレート43bには、各圧力室45の右側の端部及びノズル10と上下方向A1に重なる部分に、円形の貫通孔46bが形成されている。
【0037】
プレート43cには、
図4及び
図5に示すように、マニホールド流路47が形成されている。マニホールド流路47は、前後方向A2(搬送方向)に延び、複数の圧力室45の左側の部分と上下方向A1に重なっている。これにより、各圧力室45が、貫通孔46aを介してマニホールド流路47と連通する。また、
図4に示すように、マニホールド流路47の搬送方向の下流側の端部には供給口48が設けられている。
【0038】
インクジェットヘッド41は、
図3に示すように、接続部材69を介してインクタンク61と接続されている。接続部材69には、流出口62hと供給口48とを繋ぐ連通路(液体流路)69aが形成されている。これにより、インクタンク61のインク貯留室62aのインクが供給口48を介してマニホールド流路47に供給される。
【0039】
また、プレート43cには、
図4及び
図5に示すように、各貫通孔46b及びノズル42と上下方向A1に重なる部分に、円形の貫通孔49が形成されている。これにより、各ノズル42が貫通孔46b,49を介して圧力室45と連通する。
【0040】
そして、流路ユニット43では、ノズル42と、圧力室45と、ノズル42と圧力室45とを接続する貫通孔46b、49と、圧力室45をマニホールド流路47に接続する貫通孔46aとによって、個別流路44が形成される。個別流路44は、複数のノズル42に対応して、複数形成されている。
【0041】
<圧電アクチュエータ50>
圧電アクチュエータ50は、
図4及び
図5に示すように、振動板51と、圧電層52と、共通電極53と、複数の個別電極54とを有している。振動板51は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、流路ユニット43の上面に配置され、複数の圧力室45を覆っている。なお、振動板51は、圧電層52とは異なり、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0042】
圧電層52は、圧電材料からなり、
図4に示すように、振動板51の上面に配置され、複数の圧力室45にわたって連続的に延びている。共通電極53は、
図5に示すように、振動板51と圧電層52との間に配置され、複数の圧力室45にわたって連続的に延びている。共通電極53は、後述の配線部材(FPC92、COF92)などを介して図示しない電源回路に接続され、グランド電位に保持されている。
【0043】
複数の個別電極54は、
図4に示すように、複数の圧力室45に対して個別に対応するものである。個別電極54は、圧力室45よりも一回り小さい楕円の平面形状を有し、圧電層52の上面に配置され、圧力室45の中央部と上下方向a1に重なっている。また、個別電極54の右側の端部は、圧力室45と上下方向A1に重ならない位置まで右側まで延び、その先端部が接続端子54aとなっている。接続端子54aには後述のCOF91が接続され、個別電極54は、COF(Chip On Film)91に実装されたドライバIC59(
図7参照)に接続されている。そして、ドライバIC59により、複数の個別電極54に個別に、グランド電位及び所定の駆動電位(例えば20V程度)のいずれかが選択的に印加される。
【0044】
また、圧電層52の共通電極53と各個別電極54とに挟まれた部分が、それぞれ、上下方向A1に分極されている。そして、以上のような構造の圧電アクチュエータ50では、振動板51、圧電層52及び共通電極53の、各圧力室45と上下方向に重なる部分と、個別電極54とによって形成される部分が、それぞれ、圧力室45内のインクに圧力を付与する駆動素子55となっている。
【0045】
ここで、圧電アクチュエータ50を駆動して、ノズル42からインクを吐出させる方法について説明する。圧電アクチュエータ50では、予め、全ての個別電極54が、共通電極53と同じグランド電位に保持されている。あるノズル42からインクを吐出させるときには、そのノズル42に対応する駆動素子55における個別電極54の電位を、グランド電位から駆動電位に切り換える。すると、個別電極54と共通電極53との間の電位差により、振動板51及び圧電層52の圧力室45と上下方向A1に重なる部分が全体として圧力室45側に凸となるように変形する。これにより、圧力室45の容積が小さくなって圧力室45内のインクの圧力が上昇し、圧力室45に連通するノズル42からインクが吐出される。
【0046】
<プラテン17>
プラテン17は、インクジェットヘッド41の下方に配設されており、搬送ローラ対35によって搬送される用紙Pを支持する。プラテン17は、キャリッジ70の往復移動範囲のうち、用紙Pが通過する部分に配設されている。プラテン17の幅は、搬送可能な用紙Pの最大幅より十分に大きいので、搬送路25を搬送される用紙Pは常にプラテン17上を通過する。
【0047】
<移動機構71>
移動機構71は、
図2に示すように、一対のガイドレール72、及び、ベルト伝達機構(不図示)を含む。一対のガイドレール72は、前後方向A2に離隔して配置され、左右方向A3に互いに平行に延在している。キャリッジ70は、これら一対のガイドレール72を跨ぐように配置されている。キャリッジ70は、ベルト伝達機構を介してキャリッジモータ70M(
図7参照)に接続されており、キャリッジモータ70Mを駆動させると、ベルト伝達機構が駆動される。これにより、キャリッジ70が一対のガイドレール72に沿って走査方向(左右方向A3)に移動し、メンテナンスキャップ(不図示)と対向するメンテナンス位置と当該メンテナンスキャップと対向しない非メンテナンス位置との間においてインクジェットヘッド41を移動させる。
【0048】
インクジェットヘッド41は、記録データに基づく制御部5の制御により、ノズル42からインクを吐出する。つまり、キャリッジ70が左右方向A3へ往復移動することにより、インクジェットヘッド41が用紙Pに対して走査されると共に、ノズル42から、インクを吐出することで、プラテン17上を搬送される用紙Pに画像が記録される。なお、プリンタ1内には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ(不図示)が設けられている。一方、キャリッジ70には、発光素子と受光素子とを有する透過型の位置検出センサ(不図示)が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ70の移動中に位置検出センサが検出したリニアエンコーダの透光部の計数値から、キャリッジ51の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっており、キャリッジモータ70Mの回転駆動が制御される。
【0049】
<中継基板80>
中継基板80は、
図6に示すように、制御部5の制御基板7とFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブルフラットケーブル)8を介して接続されている。また、中継基板80は、キャリッジ70に支持されており、
図3(b)に示すように、上下方向A1に沿って立設された状態で、インクタンク61の後方に配置されている。つまり、中継基板80は、インクジェットヘッド41よりも搬送方向の上流において、水平面に対して交差して設置されている。中継基板80は、
図6に示すように、矩形平面形状を有する基板本体81と、4つの接続部82~85と、複数のヘッド用配線86と、バルブ用配線88と、センサ用配線89とを有する。これら4つの接続部82~85、複数のヘッド用配線86、バルブ用配線88及びセンサ用配線89は、基板本体81の表面上に形成されている。
【0050】
接続部82は、
図6に示すように、基板本体81の右端部において、上下方向A1に沿って延在して形成されている。接続部82には、上下方向A1に沿って立設された状態で、FPC8の一端が接続されている。接続部83は、基板本体81の下端部の中央部分において、左右方向A3に沿って延在して形成されている。接続部83には、
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド41の圧電アクチュエータ50に接続されたCOF91に接続されたFPC92が接続されている。COF91には、上述のドライバIC59が実装されている。
【0051】
接続部84は、
図6に示すように、基板本体81の上端部の中央付近に配置されている。接続部84には、
図3(b)に示すように、電磁バルブ64に接続された配線93が接続されている。接続部85は、
図6に示すように、基板本体81の左端部の下方部分に配置されている。接続部85には、
図3(b)に示すように、液量センサ6に接続された配線94が接続されている。
【0052】
複数のヘッド用配線86は、
図6に示すように、接続部82と接続部83とを繋ぐようにして形成されている。バルブ用配線88は、接続部82と接続部84とを繋ぐようにして形成されている。センサ用配線89は、接続部82と接続部85とを繋ぐようにして形成されている。複数のヘッド用配線86は、接続部82において、センサ用配線89よりも下方に配置されている。バルブ用配線88は、接続部82において、センサ用配線89よりも上方に配置されている。
【0053】
<FPC8>
FPC8は、
図6に示すように、一端が接続部82に接続され、他端が制御基板7の接続部7aに接続されている。FPC8は、複数のヘッド用信号線8aと、グランド線8gと、センサ用信号線8cと、バルブ用信号線8bとを有している。複数のヘッド用信号線8aは、制御基板7からの信号をインクジェットヘッド41に送信するための線である。グランド線8gは、インクジェットヘッド4の共通電極53をグランド電位に保持するための線である。センサ用信号線8cは、液量センサ6からの信号を制御基板7に送信するための線である。バルブ用信号線8bは、制御基板7からの信号を電磁バルブ64に送信するための線である。これら複数のヘッド用信号線8aと、グランド線8gと、センサ用信号線8cと、バルブ用信号線8bとが、下方から上方に向かって順に配置されている。つまり、複数のヘッド用信号線8aの中継基板80に対する接続位置は、センサ用信号線8c及びバルブ用信号線8bの中継基板80に対する接続位置よりも下方に配置されている。また、グランド線8gは、ヘッド用信号線8aとバルブ用信号線8bとの間に配置されている。
【0054】
<制御部5>
図7に示すように、制御部5は、CPU(Central Processing Unit)131、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)135、メモリ140及びこれらが実装された制御基板7を含む。これらCPU131、ASIC135、メモリ140は内部バス137によって接続される。メモリ140は、ROM(Read Only Memory)132、RAM(Random Access Memory)133、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)134を含む。ROM132には、プリンタ1の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。CPU131は、プログラムをRAM133やEEPROM134を使いつつ実行する。なお、制御基板7には、CPU131及びメモリ140の少なくともいずれかが実装されずに、別に設けられていてもよい。
【0055】
ASIC135は、ASFモータ20M、LFモータ35M、キャリッジモータ70M、電磁バルブ64、インクジェットヘッド41等に制御信号を出力し、これらの動作を制御する。例えば、制御部5は、外部機器(例えばPCやスマートフォン)から送信された記録データに基づいて、インクジェットヘッド41、ASFモータ20M、LFモータ35M、キャリッジモータ70M等を制御して、搬送処理と記録処理とを交互に実行し、用紙Pに画像等を記録させる。また、ASIC135は、液量センサ6からの信号を受信する。
【0056】
搬送処理は、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に所定改行量だけ用紙Pを搬送させる処理である。制御部5は、LFモータ35Mを制御することによって、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に搬送処理を実行させる。記録処理は、キャリッジ70を左右方向A3に沿って移動させながら、駆動素子55への給電を制御して、ノズル42からインク滴を吐出させる処理である。そして、制御部5は、今回の搬送処理と次回の搬送処理との間、用紙Pの搬送を一定期間停止させ、用紙Pの搬送が停止している間に記録処理を実行する。つまり、制御部5は、記録処理において、キャリッジ70を右向きまたは左向きに移動させながら、ノズル42からインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。これにより、用紙Pに対して1パス分の画像記録が実行される。制御部5は、搬送処理と記録処理とを交互に繰り返し実行することによって、用紙Pの画像記録可能な全領域に、画像記録することが可能である。つまり、制御部5は、複数回のパスで1枚の用紙Pに画像記録させる。
【0057】
なお、本実施形態の制御部5では、CPU及びASICを1つずつ有しているが、制御部5は、ASICを1つだけ含み、この1つのASICが必要な処理を一括して行うものであってもよいし、ASICを複数含み、これら複数のASICが必要な処理を分担して行うものであってもよい。
【0058】
メモリ140には、インクカウント値(液体カウント値)、基準値、インク閾値(液体閾値)が記憶される。インクカウント値は、インクジェットヘッド41からのインクの吐出量に応じて更新される値であり、RAM133またはEEPROM134に記憶される。インクカウント値は、用紙Pへ記録される画像のデータである記録データに基づいて算出される。
【0059】
詳述すると、制御部5は、外部機器(例えばPCやスマートフォン)などから送信されてきた記録データを参照する。記録データは、外部機器から逐次送信されてくる。制御部5は、記録データに基づいて、次回の記録処理において吐出されるインク量を推定して、当該インク量に対応するインクカウント値を決定する。つまり、制御部5は、記録データに基づいて、次の記録処理の際に吐出される領域内の各ドットについて、インク滴の吐出回数を決定する。これにより、当該領域内の全ドットの吐出回数が各ドットの吐出回数の合算によって算出される。算出された当該領域内の全ドットの吐出回数が、次回の記録処理において吐出されるインク量に対応するインクカウント値である。
【0060】
後述するように、インクカウント値は、記録データに基づいて積算されることによって更新される。また、インクカウント値は、制御部5の制御によって所定のタイミング(インク補充のタイミング)で初期値にリセットされる。初期値は、インクカウント値の初期値であって予め設定された値がROM132またはEEPROM134に記憶される。本実施形態において、初期値はゼロである。なお、本実施形態において、インクカウント値は、初期値のゼロからカウントアップされるが、これに限らない。例えば、インクカウント値は、ゼロではない初期値からカウントダウンされてもよい。
【0061】
インク閾値は、インク貯留室62aに貯留されたインクの消費量と比較される値であって、電磁バルブ64を開放するタイミングを決めるための値である。詳述すると、インク閾値は、インク貯留室62aの負圧上昇によってノズル42に形成されたインクメニスカスの破損が発生する前に、インクカウント値と基準値の差分が当該インク閾値に達するように予め設定された値である。インク閾値は、インクメニスカス耐圧に対して設計的に決められる値であり、当該耐圧値未満を示す値である。つまり、差分がインク閾値に達していない場合は、インク貯留室62aの負圧がそれほど大きくない状態であり、ノズル42に形成されたインクメニスカスが破損しない。一方、差分がインク閾値に達している場合は、負圧の上昇によって、ノズル42に形成されたインクメニスカスが破損しやすい状態となる。また、インク閾値は、インク貯留室62aにインクが最大量貯留されたときのインク部分の空間の体積と空気部分の空間の体積との比率によって決定される。本実施形態においてインク閾値は、ROM132またはEEPROM134に記憶される。
【0062】
続いて、プリンタ1の記録動作について、
図8を参照しつつ以下に説明する。プリンタ1では、待機時(記録動作が実行されていないとき)に、インクジェットヘッド41はメンテナンス位置に位置している。このとき、電磁バルブ64は、大気連通口62eの連通を遮断する遮断状態を取る。このため、インク貯留室62aのインクの蒸発が抑制される。
【0063】
プリンタ1の操作部13や外部機器などから、記録コマンドが制御部5へ送られる。記録コマンドは、記録動作を開始する旨のコマンドと、用紙Pのサイズに関する情報と、用紙Pへ画像記録される記録データとを含んでいる。
【0064】
制御部5は、S1において、記録コマンドを取得していない場合(NO)はS1を繰り返して待機し、記録コマンドを取得した場合(Yes)、S2に進む。
【0065】
制御部5は、S2において、ASF20Mを駆動させ、給紙トレイ15の用紙Pの給送を実行する。また、制御部5は、S2において、LFモータ35Mを駆動させ、用紙Pの先端が搬送ローラ対35へ到達したときに、当該用紙Pを搬送し、頭出しを実行する。頭出しにおいて、制御部5は、用紙Pを画像記録開始位置で停止させる。画像記録開始位置とは、用紙Pにおける画像記録領域の搬送方向の先端(下流端)が、複数のノズル42のうち搬送方向の最下流に配置されたノズル42と対向する位置である。
【0066】
また、S2において、制御部5は、キャリッジモータ70Mを駆動させて、キャリッジ70(インクジェットヘッド41)をメンテナンス位置から開始位置へ移動させる。開始位置は、記録処理(S7)が実行されるときのキャリッジ70の移動開始位置であり、記録データに基づいて決定される。なお、S2において、用紙Pの給送から頭出しまでの動作と、キャリッジ70の移動動作とは、並行して実行される。
【0067】
次に、制御部5は、S3において、記録データを参照して、次に実行されるパスにおいて、つまり次回の記録処理(S7)において吐出されるインク量に対応するインクカウント値を決定する。そして、制御部5は、決定したインクカウント値を現在メモリ140に記憶されているインクカウント値に加算して、加算した結果を新たなインカウント値としてメモリ140に記憶する。これにより、インクカウント値が更新される。
【0068】
次に、制御部5は、S4において、インクカウント値と基準値との差分がインク閾値に達しているかを判定する(判定処理)。なお、基準値は、電磁バルブ64が連通状態から遮断状態を取る前回の遮断処理のときに、制御部5が、そのときにメモリ140に記憶されているインクカウント値を基準値として、メモリ140に記憶している。そして、後述のS7の記録処理が繰り返し実行されインクカウント値が更新されていくことで、インクカウント値と基準値との差分がインク閾値に達することがある。この場合(YES)、S5に進む。一方、差分がインク閾値に達していない場合(NO)、S7に進む。
【0069】
次に、制御部5は、S5において、連通処理を実行する。つまり、制御部5は、電磁バルブ64を駆動させ、遮断状態から連通状態を取らせる。これにより、大気連通口62eが連通し、インク貯留室62aが大気に対して開放された状態となる。したがって、インク貯留室62aの負圧が小さくなる(圧力が大気圧と平衡した状態となる)。この結果、ノズル42に形成されたインクメニスカスの破損が抑制され、ノズル42内に空気が侵入したり、ノズル42からインクが漏れるのを抑制することが可能となる。
【0070】
次に、制御部5は、S6おいて、遮断処理を実行する。つまり、制御部5は、電磁バルブ64を駆動させ、連通状態から遮断状態を取らせる。これにより、大気連通口62eの連通が遮断され、インク貯留室62aが大気に対して閉鎖された状態となる。このとき、制御部5は、現在メモリ140に記憶されているインクカウント値を基準値として、メモリ140に記憶する(記憶処理)。
【0071】
次に、制御部5は、S7において、記録処理を実行する。つまり、制御部5は、キャリッジ70を開始位置から移動させながら、ノズル42からインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。
【0072】
次に、制御部5は、S8において、記録コマンドに含まれる用紙Pのサイズに関する情報や記録データに基づいて、用紙Pへの画像記録が終了したか否かを判定する。用紙Pへの画像記録が終了していない場合(NO)、S9に進み、搬送処理が実行される。用紙Pへの画像記録が終了した場合(YES)、S10に進む。
【0073】
次に、制御部5は、S9において、LFモータ35Mを駆動させて、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に用紙Pを所定改行量だけ搬送させる。この後、S3に戻り、制御部5は、次回の記録処理(S7)において吐出されるインク量に対応するインクカウント値を決定し、当該決定したインクカウント値をそれまでのインクカウント値に加算する。その後、ステップS4~S8の処理が再び実行される。なお、S3のインクカウント値の更新は搬送処理と並行して実行されてもよい。
【0074】
次に、制御部5は、S10において、LFモータ35Mを駆動させて、搬送ローラ対35及び排紙ローラ対36に、用紙Pを搬送させて、排紙トレイ16へ排紙する。
【0075】
次に、制御部5は、S11において、記録コマンドに含まれる画像データに用紙Pに記録されていない画像データがあるか否か、すなわち、次ページの画像記録があるか否かを判定する。次ページの画像記録がある場合(YES)、S2に戻る。一方、次ページの画像記録がない場合(NO)、制御部5は、一連の記録動作を終了する。
【0076】
続いて、液量センサ6がエンプティを検出したときのプリンタ1の動作について、
図9を参照しつつ以下に説明する。プリンタ1では、インクの蒸発や記録動作などでノズル42からインクが排出されることでインクタンク61のインク量が減少する。このとき、電磁バルブ64は大気連通口62eの連通が遮断された遮断状態を取る。
【0077】
制御部5は、S101において、液量センサ6からインク量がエンプティを示す信号が出力されていないか否かを判定する。エンプティを示す信号が出力されていない場合(NO)、S101が繰り返し実行される。一方、インクの蒸発やノズル42からのインク排出により、インク貯留室62aのインク液面が下側指標62f2よりも下方となり、液量センサ6からエンプティを示す信号が出力されている場合(YES)、S102に進む。
【0078】
制御部5は、S102において、報知処理を実行する。つまり、制御部5は、操作部13の液晶ディスプレイにインクタンク61のインクがエンプティであることを示すメッセージを表示して、ユーザに報知する。
【0079】
次に、制御部5は、S103において、連通処理を実行する。つまり、制御部5は、上述のS5と同様に、電磁バルブ64を駆動させ連通状態を取らせる。これにより、大気連通口62eが連通し、インク貯留室62aが大気に対して開放された状態となる。この後、ユーザが、筐体11の開閉カバー14を開いて、キャップ63を取り外して、インク注入口67を開放する。そして、インク注入口67にインクボトル(不図示)を差し込んで、インク貯留室62aにブラックインクを注入する。このとき、電磁バルブ64が連通状態を取り、インク貯留室62aが大気に開放された状態であるため、インク注入時にインク貯留室62aの内圧が高くなるのを抑制することが可能となる。このため、ノズル42に形成されたインクメニスカスの破損が抑制され、ノズル42からインクが漏れにくくなる。
【0080】
次に、制御部5は、S104において、液量センサ6からインク量がエンプティを示す信号が出力されていないか否かを判定する。エンプティを示す信号が出力されている場合(YES)、S104を繰り返し待機する。一方、インクタンク61へのインク注入が完了し、液量センサ6からエンプティを示す信号が出力されていない場合(NO)、S105に進む。
【0081】
次に、制御部5は、S105おいて、遮断処理を実行する。つまり、制御部5は、上述のS6と同様に、電磁バルブ64を駆動させ連通状態から遮断状態を取らせる。このとき、制御部5は、現在メモリ140に記憶されているインクカウント値を初期値にリセットするとともに、このインクカウント値を基準値として、メモリ140に記憶する(記憶処理)。こうして、フローが終了する。
【0082】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、FPC8の複数のヘッド用信号線8aの中継基板80に対する接続位置が、センサ用信号線8c及びバルブ用信号線8bの中継基板80に対する接続位置よりも下方に配置されている。このため、バルブ用信号線8bの中継基板80に対する接続位置が電磁バルブ64に近づき、ヘッド用信号線8aの中継基板80に対する接続位置がインクジェットヘッド41に近づく。したがって、中継基板80内において、バルブ用信号線8bと接続されるバルブ用配線88とヘッド用信号線8aと接続されるヘッド用配線86とを交差させる必要がなくなり、ノイズ干渉を抑制することが可能となる。また、中継基板80からインクジェットヘッド41の圧電アクチュエータ50に接続する配線部材(COF91及びFPC92)、及び、中継基板80から電磁バルブ64に接続される配線93が長くなるのを抑制することが可能となる。
【0083】
また、中継基板80が上下方向A1に沿って立設されて設置されているため、バルブ用信号線8bの中継基板80に対する接続位置が電磁バルブ64により近づき、ヘッド用信号線8aの中継基板80に対する接続位置がインクジェットヘッド41により近づく。このため、配線部材(COF91及びFPC92)、及び、配線93が長くなるのをより一層抑制することが可能となる。
【0084】
また、中継基板80は、インクジェットヘッド41よりも搬送方向の上流に配置されている。電磁バルブ64がインクジェットヘッド41よりも搬送方向の上流に配置されている。これにより、配線93が長くなるのを抑制することが可能となる。
【0085】
制御部5は、S4において、差分がインク閾値に達していると判定されたときに、S5において、連通処理を実行する。これにより、ノズル42に形成されたインクメニスカスが破損するのを抑制することが可能となる。
【0086】
上述の実施形態においては、インク貯留室62aの負圧が許容範囲内であるかを、インクカウント値と基準値との差分がインク閾値に達しているかで判定していたが、
図3(b)中二点鎖線で示すように、インクタンク61に圧力センサ400を設け、当該圧力センサ400でインク貯留室62aの圧力を検出し、圧力に応じた信号を制御部5に出力してもよい。この変形例においては、制御部5が、S4の判定処理に代えて、圧力センサ400によって検出された圧力が所定値に達しているか否かを判定する判定処理を実行すればよい。なお、所定値は、ノズル42に形成されたインクメニスカスの耐圧値未満の値とすればよい。そして、判定処理において、圧力が所定値に達している場合、S5と同様の連通処理を実行し、その後にS6と同様の遮断処理を実行すればよい。この変形例においても、上述の実施形態と同様に、ノズル42のインクメニスカスが破損するのを抑制することが可能となる。また、圧力センサ400により、インク貯留室62aの圧力を検出しているため、圧力を精度よく検出することが可能となる。
【0087】
また、別の変形例として、圧力センサ以外のセンサ、例えば、インク貯留室62aの液量の増減を検出する液量増減センサ、温度センサ、湿度センサの少なくとも1つを用いて、インク貯留室62aの圧力を検出してもよい。液量増減センサにより、インク量が所定量、低下する又は増加することで、インク貯留室62aの圧力を検出してもよい。また、温度センサ又は湿度センサを用いて、その環境温度又は湿度の変化により、インク貯留室62aの圧力を検出してもよい。また、これらのセンサを複数組み合わせて、インク貯留室62aの圧力を精度よく検出してもよい。そして、上述の圧力センサ400を用いたときと同様な処理を実行することで、上述の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0088】
インクジェットヘッド41及びインクタンク61がキャリッジ70によって支持されているため、オンキャリッジ型のプリンタ1となる。
【0089】
大気連通口62eを連通させる連通状態と連通を遮断する遮断状態を選択的に取るバルブが電磁バルブ64から構成されているため、プリンタ1の製造コストが比較的安価になる。変形例として、バルブが、電動ボールバルブや電動バタフライバルブなどから構成されていてもよい。すなわち、電気で駆動することが可能であればよい。
【0090】
ヘッド用信号線8a及びバルブ用信号線8bが、1つのFPC8に形成された複数の配線を構成している。これにより、1つのFPC8にヘッド用信号線8a及びバルブ用信号線8bが形成されたものとなり、ヘッド用信号線8a及びバルブ用信号線8bが個別の配線部材として形成されているよりも、これら信号線8a,8bを配設しやすくなるとともに、ヘッド用信号線8a及びバルブ用信号線8bが交差することも防ぐことができる。
【0091】
FPC8には、ヘッド用信号線8aと、バルブ用信号線8bとの間にグランド線8gが配置されている。これにより、ヘッド用信号線8a及びバルブ用信号線8b間の離隔距離が比較的大きくなり、クロストークを抑制することが可能となる。
【0092】
インクタンク61がインク注入口67を有していることで、インク注入口67を介してインク貯留室62aにインクを注入することが可能となる。
【0093】
第1変形例として、
図10に示すように、中継基板280は、水平に沿って設置されていてもよい。なお、上述の実施形態と同様な構成ついては、同符号で示し説明を省略する。本変形例における中継基板280も、制御部5の制御基板7とFPC8を介して接続されている。また、中継基板280は、インクタンク61の上方に配置されている。つまり、中継基板280は、搬送方向(前後方向A2)に面する垂直面に対して交差して設置されている。中継基板280は、矩形平面形状を有する基板本体281と、4つの接続部282~285と、複数のヘッド用配線286と、バルブ用配線288と、センサ用配線289とを有する。これら4つの接続部282~285、複数のヘッド用配線286、バルブ用配線288及びセンサ用配線289は、基板本体281の表面上に形成されている。
【0094】
接続部282は、
図10(b)に示すように、基板本体281の右端部において、前後方向A2に沿って延在して形成されている。接続部282には、水平面に沿って配置されたFPC8の一端が接続されている。接続部283は、基板本体281の左端部において、前後方向A2に沿って延在して形成されている。接続部283には、インクジェットヘッド41の圧電アクチュエータ50に接続されたCOF91に接続されたFPC92が接続されている。
【0095】
接続部284は、
図10に示すように、基板本体281の後端部の中央付近に配置されている。接続部284には、電磁バルブ64に接続された配線93が接続されている。接続部285は、基板本体281の後端部付近であって、左右方向A3において接続部283と接続部284との間に配置されている。接続部285には、液量センサ6に接続された配線94が接続されている。
【0096】
複数のヘッド用配線286は、
図10(b)に示すように、接続部282と接続部283とを繋ぐように左右方向A3に延在して形成されている。バルブ用配線288は、接続部282と接続部284とを繋ぐようにして形成されている。センサ用配線289は、接続部282と接続部285とを繋ぐようにして形成されている。複数のヘッド用配線286は、接続部282において、センサ用配線289よりも前方(搬送方向の下流)に配置されている。バルブ用配線288は、接続部282において、センサ用配線289よりも後方(搬送方向の上流)に配置されている。
【0097】
このような中継基板280によると、FPC8の複数のヘッド用信号線8aの中継基板280に対する接続位置が、センサ用信号線8c及びバルブ用信号線8bの中継基板280に対する接続位置よりも前方(搬送方向の下流)に配置されている。そして、電磁バルブ64が、インクジェットヘッド41よりも後方、すなわち、搬送方向の上流に配置されている。このため、搬送方向において、バルブ用信号線8bの中継基板280に対する接続位置が電磁バルブ64に近づき、ヘッド用信号線8aの中継基板280に対する接続位置がインクジェットヘッド41に近づく。したがって、中継基板280内において、バルブ用信号線8bと接続されるバルブ用配線288とヘッド用信号線8aと接続されるヘッド用配線286とを交差させる必要がなくなり、ノイズ干渉を抑制することが可能となる。また、中継基板280からインクジェットヘッド41の圧電アクチュエータ50に接続する配線部材(COF91及びFPC92)、及び、中継基板280から電磁バルブ64に接続される配線93が長くなるのを抑制することが可能となる。
【0098】
また、中継基板280が水平方向(前後方向A2及び左右方向A3)に沿って設置されているため、バルブ用信号線8bの中継基板280に対する接続位置が電磁バルブ64により近づき、ヘッド用信号線8aの中継基板280に対する接続位置がインクジェットヘッド41により近づく。このため、配線部材(COF91及びFPC92)、及び、配線93が長くなるのをより一層抑制することが可能となる。
【0099】
また、第2変形例として、
図11に示すように、前方側壁62fに大気連通口が形成され、その大気連通口を連通する連通状態及び連通を遮断する遮断状態の選択的に取ることが可能な電磁バルブ64が、インクジェットヘッド41よりも搬送方向の下流に配置されていてもよい。なお、上述の実施形態及び変形例と同様な構成ついては、同符号で示し説明を省略する。また、本変形例においては、液量センサ6及びこれに係る構成要素については省略している。
【0100】
本変形例において、中継基板380は、
図11に示すように、水平に沿って設置され、制御部5の制御基板7とFPC8を介して接続されている。また、中継基板380は、インクタンク61の上方に配置されている。つまり、中継基板380は、搬送方向(前後方向A2)に面する垂直面に対して交差して設置されている。中継基板380は、矩形平面形状を有する基板本体381と、3つの接続部382~384と、複数のヘッド用配線386と、バルブ用配線388とを有する。これら3つの接続部382~384、複数のヘッド用配線386及びバルブ用配線388は、基板本体381の表面上に形成されている。
【0101】
接続部382は、
図11(b)に示すように、基板本体381の右端部において、前後方向A2に沿って延在して形成されている。接続部382には、水平面に沿って配置されたFPC8の一端が接続されている。接続部383は、基板本体381の左端部において、前後方向A2に沿って延在して形成されている。接続部383には、インクジェットヘッド41の圧電アクチュエータ50に接続されたCOF91に接続されたFPC92が接続されている。
【0102】
接続部384は、
図11に示すように、基板本体381の前端部の中央付近に配置されている。接続部384には、電磁バルブ64に接続された配線93が接続されている。
【0103】
複数のヘッド用配線386は、
図11(b)に示すように、接続部382と接続部383とを繋ぐように左右方向A3に延在して形成されている。バルブ用配線388は、接続部382と接続部384とを繋ぐようにして形成されている。複数のヘッド用配線386は、接続部382において、バルブ用配線388よりも後方(搬送方向の上流)に配置されている。
【0104】
このような中継基板380によると、FPC8の複数のヘッド用信号線8aの中継基板280に対する接続位置が、バルブ用信号線8bの中継基板280に対する接続位置よりも後方(搬送方向の上流)に配置されている。そして、電磁バルブ64が、インクジェットヘッド41よりも前方、すなわち、搬送方向の下流に配置されている。このため、搬送方向において、バルブ用信号線8bの中継基板380に対する接続位置が電磁バルブ64に近づき、ヘッド用信号線8aの中継基板380に対する接続位置がインクジェットヘッド41に近づく。したがって、中継基板380内において、バルブ用信号線8bと接続されるバルブ用配線388とヘッド用信号線8aと接続されるヘッド用配線386とを交差させる必要がなくなり、ノイズ干渉を抑制することが可能となる。また、中継基板380からインクジェットヘッド41の圧電アクチュエータ50に接続する配線部材(COF91及びFPC92)、及び、中継基板380から電磁バルブ64に接続される配線93が長くなるのを抑制することが可能となる。
【0105】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態においては、中継基板80が上下方向A1に沿って垂直に設置されているが、水平面に対して交差しておれば、垂直に設置されていなくてもよい。また、中継基板80は、インクタンク61の後方以外の位置に配置されていてもよい。上述の第1及び第2変形例においては、中継基板280,380が水平に沿って設置されているが、搬送方向に面する垂直面に対して交差しておれば、水平に設置されていなくてもよい。また、中継基板280,380は、インクタンク61の上方以外の位置に配置されていてもよい。
【0106】
上述の実施形態、第1及び第2変形例においては、ヘッド用信号線8a及びバルブ用信号線8bが、1つのFPC8に形成された複数の配線を構成しているが、ヘッド用信号線8a及びバルブ用信号線8bが個別の配線部材から構成されていてもよい。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。また、グランド線8gは、FPC8において、ヘッド用信号線8aと、バルブ用信号線8bとの間に配置されていなくてもよい。
【0107】
上述の実施形態、第1及び第2変形例においては、モノクロプリンタに採用しているが、カラープリンタに採用してもよい。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。また、インクタンク61には、大気連通口62eとインク貯留室62aとを繋ぐ連通路を有していてもよい。この場合、電磁バルブ64は、当該連通路及び大気連通口62eから構成される大気連通路を、外部と連通する連通状態及び外部との連通を遮断する遮断状態を選択的に取ることが可能であればよい。また、インクタンク61にインク注入口67が設けられていなくてもよい。
【0108】
上述の実施形態、第1及び第2変形例においては、インクタンク61及びインクジェットヘッド41がキャリッジ70に搭載されたオンキャリッジ型であるが、キャリッジ70が設けられておらず、インクジェットヘッドが固定されたライン型インクジェットヘッドにおいても、本発明を採用することが可能である。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0109】
また、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。また、制御部5からの信号に基づいて駆動されることで、ノズルから液体を吐出させることが可能であれば、圧電アクチュエータ50以外の吐出エネルギー付与手段を採用することも可能である。この場合、例えば、発熱素子でノズル内の液状インクを熱し、泡を発生させて、ノズルからインクを押し出して記録するサーマル方式の吐出エネルギー付与手段を採用してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 プリンタ(液体吐出装置)
5 制御部
7 制御基板
8 FPC
8a ヘッド用信号線
8b バルブ用信号線
8g グランド線
20 給送部(搬送機構)
35 搬送ローラ対(搬送機構)
36 排紙ローラ対(搬送機構)
41 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
42 ノズル
61 インクタンク(液体貯留部)
62a インク貯留室(液体貯留室)
62e 大気連通口(大気連通路)
64 電磁バルブ(バルブ)
67 インク注入口(液体注入口)
69a 連通路(液体流路)
70 キャリッジ
71 移動機構
80,280,380 中継基板
140 メモリ
400 圧力センサ(検出手段)