(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180628
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】血漿解毒方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20241219BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20241219BHJP
A61M 1/38 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61M1/02 103
A61M1/36 165
A61M1/38
【審査請求】有
【請求項の数】56
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024182050
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2021539946の分割
【原出願日】2020-01-13
(31)【優先権主張番号】62/791,617
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521299581
【氏名又は名称】マーカー ホールディングス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェントホールド、ランディー
(57)【要約】
【課題】閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するための方法、システム、およびデバイス。
【解決手段】(i)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、血液を血球と血漿に分離するステップと;(ii)処理済み血漿を形成するステップと;(iii)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するステップと;(iv)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するためのシステムであって、前記システムは、
前記被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって前記血液を血球と血漿に分離するステップと、
処理済み血漿を形成するために、前記血漿分離器から受け取った前記血漿を前記回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、前記吸着チャンバ内の材料が前記血漿中のサイトカインを吸着して前記処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと、
前記血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、前記吸着チャンバから直接受け取った前記処理済み血漿を、結合チャンバ内の前記血球と結合させるステップと、
前記回路からの前記処理済み血液を前記被検体に直接輸血するステップであって、前記被検体への前記処理済み血液の前記輸血が完了する前に、前記被検体の血液以外の流体が前記回路に添加されない、ステップと、
を実行するのに効果的な構成要素を備える、システム。
【請求項2】
前記非イオン性樹脂が、非イオン性脂肪族エステル樹脂、非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるアガロース媒体、および他の非生物吸着性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非イオン性脂肪族エステル樹脂が、AMBERLITE(登録商標)XAD-7HPである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂が、AMBERCHROM(登録商標)GC300Cである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記活性炭が、コーティングされていないヤシ殻粒炭、コーティングされていない有機粒炭、およびコーティングされていない合成炭素からなる群から選択される少なくとも1つの活性炭材料を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記吸着チャンバが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、レキサンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および射出またはブロー成形に適した他の医療グレードのポリマーからなる群から選択されるポリマーから構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記吸着チャンバが、
対向する開口端を有する中空管を備えるハウジングであって、前記ハウジングは前記活性炭および非イオン性樹脂を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの各端部を覆う多孔質膜フィルタであって、各多孔質膜フィルタは、前記ステップの実行中に前記血漿の通過を可能にしながら、前記ハウジング内に前記活性炭および非イオン性樹脂を維持するためのバリアを形成する、多孔質膜フィルタと、
前記ハウジングの各端部に取り付けられたエンドキャップであって、各エンドキャップは、その対応する多孔質膜フィルタを所定の位置に保持し、前記エンドキャップと前記ハウジングの対応する端部との間のシールを維持するように構成されている、エンドキャップと
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
各エンドキャップが、その内周全体に成形された溝を含み、前記溝は、各エンドキャップと前記ハウジングの前記対応する端部との嵌合を容易にするように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記溝が、ある量の接着剤を受け入れるように構成され、前記接着剤は、前記多孔質膜フィルタを前記エンドキャップに接着するのを助けるように前記溝内に堆積される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
別の量の接着剤が、各エンドキャップとその対応する多孔質膜フィルタとの間に堆積されて、前記エンドキャップと前記ハウジングの前記対応する端部との間にさらなる接着を提供する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ハウジングの前記端部がねじ切りされ、対応する前記エンドキャップも互いに嵌合するようにねじ切りされている、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記ハウジングが、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、または他の医療グレードのチューブ材料のうちの少なくとも1つを含むチューブの形態である、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記吸着チャンバおよび/または前記吸着チャンバ内の材料が、臨床使用前に送達溶液として生理食塩水に添加されたヒト血清アルブミンおよび抗凝固剤でコーティングされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記抗凝固剤が、ヘパリンナトリウムおよびクエン酸デキストロース溶液ACD-Aからなる群から選択される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記吸着チャンバが、前記被検体の血液からサイトカイン以外の毒素を除去するのに有効である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、傷害または外傷の任意の形態の結果としての合併症、および癌または癌治療の任意の形態の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の治療的処置に使用するためのシステムであって、
前記システムは、血漿分離器、吸着チャンバ、および結合チャンバを含み、
前記システムは、閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去することによって前記疾患または状態の前記治療的処置に使用され、前記システムは、
(i)前記被検体からの静脈血を前記血漿分離器に通し、それによって前記血液を血球と血漿に分離するステップと、
(ii)処理済み血漿を形成するために、前記血漿分離器から受け取った前記血漿を前記回路内に配置された前記吸着チャンバに通すステップであって、前記吸着チャンバ内の材料が前記血漿中のサイトカインを吸着して前記処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと、
(iii)前記血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、前記吸着チャンバから直接受け取った前記処理済み血漿を、前記結合チャンバ内の前記血球と結合させるステップと、
(iv)前記回路からの前記処理済み血液を前記被検体に直接輸血するステップであって、前記被検体への前記処理済み血液の前記輸血が完了する前に、前記被検体の血液以外の流体が前記回路に添加されない、ステップと、
を実行するのに有効である、
システム。
【請求項17】
前記自己免疫疾患が、炎症性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびブドウ膜炎からなる群から選択される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記非イオン性樹脂が、非イオン性脂肪族エステル樹脂、非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるアガロース媒体、および他の非生物吸着性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂材料を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記非イオン性脂肪族エステル樹脂が、AMBERLITE(登録商標)XAD-7HPである、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂が、AMBERCHROM(登録商標)GC300Cである、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記活性炭が、コーティングされていないヤシ殻粒炭、コーティングされていない有機粒炭、およびコーティングされていない合成炭素からなる群から選択される少なくとも1つの活性炭材料を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記吸着チャンバが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、レキサンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および射出またはブロー成形に適した他の医療グレードのポリマーからなる群から選択されるポリマーから構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記吸着チャンバが、
対向する開口端を有する中空管を備えるハウジングであって、前記ハウジングは前記活性炭および非イオン性樹脂を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの各端部を覆う多孔質膜フィルタであって、各多孔質膜フィルタは、前記ステップの実行中に前記血漿の通過を可能にしながら、前記ハウジング内に前記活性炭および非イオン性樹脂を維持するためのバリアを形成する、多孔質膜フィルタと、
前記ハウジングの各端部に取り付けられたエンドキャップであって、各エンドキャップは、その対応する多孔質膜フィルタを所定の位置に保持し、前記エンドキャップと前記ハウジングの対応する端部との間のシールを維持するように構成されている、エンドキャップと
を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
各エンドキャップが、その内周全体に成形された溝を含み、前記溝は、各エンドキャップと前記ハウジングの前記対応する端部との嵌合を容易にするように構成されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記溝が、ある量の接着剤を受け入れるように構成され、前記接着剤は、前記多孔質膜フィルタを前記エンドキャップに接着するのを助けるように前記溝内に堆積される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
別の量の接着剤が、各エンドキャップとその対応する多孔質膜フィルタとの間に堆積されて、前記エンドキャップと前記ハウジングの前記対応する端部との間にさらなる接着を提供する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記ハウジングの前記端部がねじ切りされ、対応する前記エンドキャップも互いに嵌合するようにねじ切りされている、請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
前記ハウジングが、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、または他の医療グレードのチューブ材料のうちの少なくとも1つを含むチューブの形態である、請求項23に記載のシステム。
【請求項29】
前記吸着チャンバおよび/または前記吸着チャンバ内の材料が、臨床使用前に送達溶液として生理食塩水に添加されたヒト血清アルブミンおよび抗凝固剤でコーティングされている、請求項16に記載のシステム。
【請求項30】
前記抗凝固剤が、ヘパリンナトリウムおよびクエン酸デキストロース溶液ACD-Aからなる群から選択される、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記吸着チャンバが、前記被検体の血液からサイトカイン以外の毒素を除去するのに有効である、請求項16に記載のシステム。
【請求項32】
敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、任意の形態の傷害または外傷の結果としての合併症、および任意の形態の癌または癌治療の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の前記治療的処置のための請求項16から31のいずれか一項に記載のシステムを製造するための吸着チャンバの使用。
【請求項33】
前記自己免疫疾患が、炎症性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびブドウ膜炎からなる群から選択される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するための方法であって、前記方法は、
前記被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって前記血液を血球と血漿に分離するステップと、
処理済み血漿を形成するために、前記血漿分離器から受け取った前記血漿を前記回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、前記吸着チャンバ内の材料が前記血漿中のサイトカインを吸着して前記処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと、
前記血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、前記吸着チャンバから直接受け取った前記処理済み血漿を、結合チャンバ内の前記血球と結合させるステップと、
前記回路からの前記処理済み血液を前記被検体に直接輸血するステップであって、前記被検体への前記処理済み血液の前記輸血が完了する前に、前記被検体の血液以外の流体が前記回路に添加されない、ステップと
を含む、方法。
【請求項35】
前記非イオン性樹脂が、非イオン性脂肪族エステル樹脂、非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるアガロース媒体、および他の非生物吸着性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂材料を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記非イオン性脂肪族エステル樹脂が、AMBERLITE(登録商標)XAD-7HPである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂が、AMBERCHROM(登録商標)GC300Cである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記活性炭が、コーティングされていないヤシ殻粒炭、コーティングされていない有機粒炭、およびコーティングされていない合成炭素からなる群から選択される少なくとも1つの活性炭材料を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記吸着チャンバが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、レキサンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および射出またはブロー成形に適した他の医療グレードのポリマーからなる群から選択されるポリマーから構成される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記吸着チャンバが、
対向する開口端を有する中空管を備えるハウジングであって、前記ハウジングは前記活性炭および非イオン性樹脂を含む、ハウジングと、
前記ハウジングの各端部を覆う多孔質膜フィルタであって、各多孔質膜フィルタは、前記方法の実行中に前記血漿の通過を可能にしながら、前記ハウジング内に前記活性炭および非イオン性樹脂を維持するためのバリアを形成する、多孔質膜フィルタと、
前記ハウジングの各端部に取り付けられたエンドキャップであって、各エンドキャップは、その対応する多孔質膜フィルタを所定の位置に保持し、前記エンドキャップと前記ハウジングの対応する端部との間のシールを維持するように構成されている、エンドキャップと
を備える、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
各エンドキャップが、その内周全体に成形された溝を含み、前記溝は、各エンドキャップと前記ハウジングの前記対応する端部との嵌合を容易にするように構成されている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記溝が、ある量の接着剤を受け入れるように構成され、前記接着剤は、前記多孔質膜フィルタを前記エンドキャップに接着するのを助けるように前記溝内に堆積される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
別の量の接着剤が、各エンドキャップとその対応する多孔質膜フィルタとの間に堆積されて、前記エンドキャップと前記ハウジングの前記対応する端部との間にさらなる接着を提供する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ハウジングの前記端部がねじ切りされ、対応する前記エンドキャップも互いに嵌合するようにねじ切りされている、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記ハウジングが、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、または他の医療グレードのチューブ材料のうちの少なくとも1つを含むチューブの形態である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記吸着チャンバおよび/または前記吸着チャンバ内の材料が、臨床使用前に溶液として生理食塩水に添加されたヒト血清アルブミンおよび抗凝固剤でコーティングされている、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記抗凝固剤が、ヘパリンナトリウムおよびクエン酸デキストロース溶液ACD-Aからなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記吸着チャンバが、前記被検体の血液からサイトカイン以外の毒素を除去するのに有効である、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
被検体の治療的処置のための方法であって、前記方法は、
前記被検体の前記血液からサイトカインおよび他の物質を除去するために、請求項34から47のいずれか一項に記載の方法を実行し、それによって前記被検体に前記治療的処置を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項50】
前記治療的処置が、敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、任意の形態の傷害または外傷の結果としての合併症、および任意の形態の癌または癌治療の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態に対するものである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記自己免疫疾患が、炎症性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびブドウ膜炎からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記炎症が、化粧品アプリケーション、疼痛アプリケーション、および不快感アプリケーションからなる群から選択される年齢に反する抗炎症アプリケーションを使用して治療される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記治療的処置が、外来患者処置設定における標準的な静脈アクセスの使用を介して施される、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
抗凝固剤を前記回路に導入するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記抗凝固剤がクエン酸デキストロース溶液ACD-Dである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記吸着チャンバを用いて前記被検体の前記血液から毒素を除去するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月11日に出願された米国仮特許出願第62/791617号の優先権利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、とりわけ、閉じた流体回路を使用する血漿解毒のための方法、システム、およびデバイスを提供する。
【背景技術】
【0003】
敗血症は集中治療室での主な死因であり、患者の35%超が敗血症で入院するか、集中治療室での滞在中に敗血症を発症する。院内死亡率は27%であり、敗血症性ショックの場合には54%に達する。体外血液浄化療法は、敗血症患者の転帰を改善するために提案されている。これらの治療は、血液からの炎症性メディエータまたは細菌毒素(またはその両方)の除去が宿主炎症応答を有利に調節するという原理に基づいている。近年、著しい技術的進歩により、血液浄化に利用可能な技術の範囲が大幅に広がっている。大量血液ろ過(HVHF)、カスケード血液ろ過、血液吸着、血漿交換、結合血漿ろ過吸着(CPFA)、高吸着血液ろ過、および高カットオフ(HCO)血液透析/血液ろ過で有望な結果が報告されている。しかしながら、これらの技術は、世界中で主流の臨床診療に入っていない。
【0004】
多くの医師は、敗血症を、敗血症から始まり、重症敗血症を経て敗血症性ショックに進行する三段階症候群と見なしている。目標は、敗血症がより危険になる前に、敗血症の初期段階で処置することである。
【0005】
血漿フィルタデバイスが組み込まれた体外回路を備えた血漿解毒システムは、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第8038638号明細書(Hemolife Medical)(以下「‘638特許」)および欧州特許出願公開第0787500号明細書(Bellco)(以下「‘500特許」)を参照されたい。これらの血漿解毒システムは、敗血症、腎不全、および肝不全を治療するのに有効であると記載されている。これらのシステムにはいくつかの欠点がある。例えば、血漿分離フィルタデバイスおよび吸着毒素除去デバイスと組み合わせて、血漿吸着モードを有さなければならない急性腎不全ポンプが必要とされる。これらのシステムはまた、効果的であるために複雑なチューブ接続を必要とする。さらに、これらのシステムは、機能するために抗凝固とともに使用されなければならない。これらのシステムで使用される抗凝固剤であるヘパリンナトリウムは、高価であり、治療中に投与することが困難であり、出血を起こしやすい患者にとって問題となり得る。
【0006】
当技術分野で知られている体外システムは、治療を管理するために使用される難解なチューブ要件およびヘパリンナトリウム抗凝固要件のために市場で成功していない。以前のシステムはまた、血液ろ過デバイスを介して流体除去を組み合わせることを試みることによって敗血症治療を管理することをより困難にしている。過剰な血漿流体除去を伴わない患者の血液の抗凝固制御自体が困難である。したがって、ヘパリンナトリウム抗凝固を介して患者の血液凝固を同時に制御しながら過剰な血漿流体除去を追加することは、困難な臨床診療であり、当技術分野で知られている現在のシステムが市場で成功していない理由である。治療のために導入されたすべての既存の体外デバイスに関連する集中治療室(ICU)治療は、以前のシステムが市場で成功していない別の理由である。したがって、血漿解毒のための安全で効果的な体外システムが依然として必要とされている。
【0007】
本発明は、当技術分野におけるこれらおよび他の欠点を克服することに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8038638号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0787500号明細書
【発明の概要】
【0009】
本開示は、とりわけ、閉じた流体回路を使用する血漿解毒のための方法、システム、およびデバイスを提供する。本明細書に記載されるように、本開示の方法、システム、およびデバイスは、多くの形態の敗血症、肝不全、急性呼吸窮迫、ウイルス感染、中毒、炎症、ならびに血漿解毒によって治療可能な多くの他の疾患および状態に罹患している患者の血漿から毒素を安全に除去するために使用することができる体外システムを提供する。本開示によれば、本明細書で提供される方法、システム、およびデバイスは、それらが遠心アフェレーシスポンプまたは同様のデバイスによる標準的な静脈血アクセスを使用することができ、それによって、治療的処置が、ICU処置に限定されるのではなく、外来患者型のサービスとして施されることを可能にするので、既存の技術に対する改善である。
【0010】
一態様では、本開示は、閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するためのシステムを提供する。このシステムは、以下の方法ステップ、すなわち:(i)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと;(ii)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと;(iii)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと;(iv)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと、を実行するのに有効な構成要素を含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、傷害または外傷の任意の形態の結果としての合併症、および癌または癌治療の任意の形態の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の治療的処置に使用するためのシステムを提供し、前記システムは、血漿分離器、吸着チャンバ、および結合チャンバを含み、前記システムは、閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去することによって疾患または状態の前記治療的処置に使用され、前記システムは、以下の方法ステップ、すなわち:(i)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと;(ii)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと;(iii)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと;(iv)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと、を実行するのに有効である。
【0012】
別の態様では、本開示は、敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、任意の形態の傷害または外傷の結果としての合併症、および任意の形態の癌または癌治療の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の治療的処置のための本開示によるシステムを製造するための吸着チャンバの使用を提供する。
【0013】
別の態様において、本開示は、閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去する方法を提供する。この方法は:(i)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと;(ii)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと;(iii)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと;(iv)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと、を含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、被検体の治療的処置のための方法を提供する。この方法は、本明細書中に記載されるような閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去する方法を実行し、それによって、被検体に治療的処置を提供するステップを含む。
【0015】
特定の実施形態では、本開示の方法、システム、およびデバイスは、様々な疾患に罹患している患者の血漿を効果的に解毒するために、遠心アフェレーシスポンプを備えた吸着毒素除去デバイスの使用を含む。本明細書でより詳細に説明するように、本開示の方法、システム、およびデバイスは、治療に必要なデバイス、チューブ、および構成要素の数および複雑さを低減するという点で、既存の技術よりも有利である。さらに、本開示の方法、システム、およびデバイスは、抗凝固剤にヘパリンナトリウムを使用することに限定されるのではなく、抗凝固剤クエン酸デキストロース溶液ACD-Aを使用することができる。本開示の方法、システム、およびデバイスはまた、それらが容易な製造のための効果的なデバイス設計を組み込み、価値のあるスケールアップ実験室研究のための、または子供を含む小から中サイズの患者での使用のための小規模デバイスを製造する組み立て方法を可能にするという点で有利である。
【0016】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとされよう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の範囲および趣旨の範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、単なる例示として与えられることを理解されたい。
【0017】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
添付の図面は、いくつかの例示的な実施形態を示し、本明細書の一部である。以下の説明と共に、これらの図面は、本開示の様々な原理を実証し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示で提供されるように、閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するためのシステムの例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】本開示で提供されるように、閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するための方法、システム、およびデバイスで使用するための吸着チャンバの例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を通して、同一の参照符号および説明は、類似しているが必ずしも同一ではない要素を示す。本明細書に記載の例示的な実施形態は、様々な修正および代替形態の影響を受けやすいが、特定の実施形態は、例として図面に示されており、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本明細書に記載された例示的な実施形態は、開示された特定の形態に限定されることを意図しない。むしろ、本開示は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての修正、等価物、および代替物を包含する。
【0021】
本開示は、とりわけ、閉じた流体回路を使用する血漿解毒のための方法、システム、およびデバイスに関する。本明細書に記載されるように、本開示の方法、システム、およびデバイスは、本明細書でより詳細に記載されるようなものを含む、様々な疾患および状態に罹患している患者の血漿からサイトカインおよび他の毒素ならびに望ましくない物質を安全に除去するために使用することができる体外システムを提供する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「サイトカイン」という用語は、細胞シグナル伝達において重要な小タンパク質(約5~20kDa)の広いカテゴリーを指す。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が含まれ得るが、これらに限定されない。サイトカインは、例えば、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球およびマスト細胞などの免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞、および様々な間質細胞を含む広範囲の細胞によって産生され得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「毒素」および「物質」(「望ましくない物質」とも呼ばれる)という用語は、被検体の血液中に許容閾値を超えて存在する場合、被検体に有害作用を引き起こす任意の有機または無機化合物を指す。本開示による毒素の代表的な例には、インターロイキン(IL-3を含むがこれに限定されない)を含むサイトカイン、インターフェロン、腫瘍壊死因子アルファまたはガンマ、可溶性タンパク質、ビリルビン、クレアチニン、アミノ酸、核酸、エンドトキシンを含む細菌毒素、外毒素、リポ多糖、細胞酵素、細菌細胞壁成分およびアセトアミノフェンなどの医薬品が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本開示によれば、本明細書で提供される方法、システム、およびデバイスは、遠心アフェレーシスポンプまたは同様のデバイスによる標準的な静脈血アクセスを可能にし、それにより、そのような治療的処置がICU設定に限定されるのではなく、治療的処置が外来患者型の方法で施されることを可能にする。
【0025】
一態様では、本開示は、閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するためのシステムに関する。本明細書でより詳細に説明するように、システムは、本開示の方法を実行するのに有効な構成要素およびデバイスを含む体外血漿解毒システムである。少なくとも、本開示のシステムは、以下の構成要素および/またはデバイス、すなわち:血漿分離器;吸着チャンバ;および結合チャンバを含み、各々が本明細書でより詳細に説明される。本開示のシステムは、本開示の以下の方法ステップ、すなわち:(i)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと;(ii)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと;(iii)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと;(iv)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと、の実行を支援することにより、被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するのに効果的である。
【0026】
別の態様では、本開示は、敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、傷害または外傷の任意の形態の結果としての合併症、および癌または癌治療の任意の形態の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の治療的処置に使用するためのシステムに関し、前記システムは、血漿分離器、吸着チャンバ、および結合チャンバを含み、前記システムは、閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去することによって疾患または状態の前記治療的処置に使用され、前記システムは、以下の方法ステップ、すなわち:(i)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと;(ii)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと;(iii)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと;(iv)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと、を実行するのに有効である。
【0027】
別の態様では、本開示は、敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、任意の形態の傷害または外傷の結果としての合併症、および任意の形態の癌または癌治療の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の治療的処置のための本開示によるシステムを製造するための吸着チャンバの使用に関する。
【0028】
別の態様において、本開示は、閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去する方法に関する。この方法は、被検体からの静脈血を血漿分離器に通すステップを含む。このステップにより、血液を血球と血漿に分離する。血漿分離器から受け取った血漿は、回路内に配置された吸着チャンバを通過して処理済み血漿を形成する。吸着チャンバは、血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成する材料を含むように構成される。より具体的には、吸着チャンバに含まれるこれらの吸着材料は、50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む。吸着チャンバを通過した後、処理済み血漿は、吸着チャンバから直接受け取れられ、結合チャンバ内で被検体の血球と結合されて処理済み血液を形成する。これは、血漿のいずれも別の流体と交換することなく行われる。次いで、この方法は、回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップを含む。輸血するステップの間、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体は回路に添加されない。
【0029】
図1は、本開示で提供されるように、閉じた流体回路内で被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するためのシステムの例示的な実施形態を示している。
図1に示すように、システム1は、血漿分離器20と、吸着チャンバ30と、結合チャンバ40とを含む。システム1の動作中、静脈血12は、被検体10から採取され、血漿分離器20を通過し、それによって静脈血12を血球22と血漿24とに分離する。血漿24は、血漿分離器20から受け取られ、吸着チャンバ30を通過して処理済み血漿32を形成する。吸着チャンバ30は、血漿24中のサイトカインおよび任意選択的に他の物質を吸着して処理済み血漿32を形成する材料を含む。本明細書で提供されるように、吸着材料は、50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む。処理済み血漿32は、吸着チャンバ30から直接受け取られ、血漿24または処理済み血漿32のいずれも別の流体と交換することなく、結合チャンバ40内で血球22と結合されて処理済み血液50を形成する。次いで、処理済み血液50は、システム1の閉じた流体回路から被検体10に直接輸血される。処理済み血液50の被検体10への輸血が完了する前に、被検体10の静脈血12以外の流体はシステム1の閉じた流体回路に添加されない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「閉じた流体回路」は、本明細書に記載の一連のデバイスを通して血液を処理した後、被検体から静脈血を受け取り、処理済み血液を同じ被検体に戻すための閉ループとして構成された体外血漿解毒システムを指す。これらのデバイスは、本明細書に記載の血漿分離器、吸着チャンバ、および結合チャンバを含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「血漿分離器」は、被検体からの静脈血を血球と血漿とに分離する際の使用に適したデバイスを指す。本開示の方法、システム、およびデバイスで使用するための血漿分離器の適切な例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:HAEMOSELECT(登録商標)M0.3血漿フィルタ(B.Braun Medical Inc.)、HAEMOSELECT(登録商標)L0.5血漿フィルタ(B.Braun Medical Inc.)、PLASMAFLUX(登録商標)P1ドライ血漿フィルタ(Fresenius Medical Care)、PLASMAFLUX(登録商標)P2ドライ血漿フィルタ(Fresenius Medical Care)、PLASMART(商標)50血漿フィルタ(MEDICA S.p.A.)、PLASMART(商標)100血漿フィルタ(MEDICA S.p.A.)、PLASMART(商標)200血漿フィルタ(MEDICA S.p.A.)、PLASMART(商標)400血漿フィルタ(MEDICA S.p.A.)、PLASMART(商標)600血漿フィルタ(MEDICA S.p.A.)、PLASMART(商標)700血漿フィルタ(MEDICA S.p.A.)、PLASMART(商標)1000血漿フィルタ(MEDICA S.p.A.)、PLASMAFLO(商標)OP-02W(L)中空糸血漿分離器(旭化成メディカル株式会社)、PLASMAFLO(商標)OP-05W(L)中空糸血漿分離器(旭化成メディカル株式会社)、PLASMAFLO(商標)OP-08W(L)中空糸血漿分離器(旭化成メディカル株式会社)、PRISMAFLEX(登録商標)TPE1000セット血漿フィルタシステム(Baxter/Gambro)、およびPRISMAFLEX(登録商標)TPE2000セット血漿フィルタシステム(Baxter/Gambro)。
【0032】
本明細書で使用される場合、「吸着チャンバ」は、被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去する際の使用に適したデバイスを指す。本明細書に記載されるように、本開示の吸着チャンバは、血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成する吸着材料を含む。本明細書でより詳細に説明するように、吸着チャンバはまた、被検体の血液からサイトカイン以外の毒素を除去するように構成され得る。
【0033】
より具体的には、本開示の吸着チャンバは、本明細書でより詳細に説明するように、50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む吸着材料を含む。吸着チャンバは、上述の活性炭および非イオン性樹脂を含まなければならないが、本明細書に記載の吸着チャンバの機能を妨げない限り、他の構成要素を含むこともできる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「吸着材料」という用語は、被検体の血液からサイトカインおよび他の目的の物質を除去するのに有効な吸着チャンバに含まれる材料を指す。特定の事例では、「材料」という用語は、本開示の「吸着材料」を示すために使用され得る。より具体的には、本開示の吸着材料は、活性炭および非イオン性樹脂を含む。本開示の吸着チャンバ内で使用される場合、吸着材料は、50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂の量で存在する。一実施形態では、活性炭は、例えば、コーティングされていないヤシ殻粒炭、コーティングされていない有機粒炭、コーティングされていない合成炭素などから選択される少なくとも1つの活性炭材料を含む。適切な非イオン性樹脂は、非イオン性脂肪族エステル樹脂、非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるアガロース媒体、および他の非生物吸着性樹脂から選択される少なくとも1つの樹脂材料を含むことができるが、これらに限定されない。適切な非イオン性脂肪族エステル樹脂は、AMBERLITE(登録商標)XAD-7HPを含むことができるが、これらに限定されない。適切な非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂は、AMBERCHROM(登録商標)GC300Cを含むことができるが、これらに限定されない。
【0035】
本開示の方法、システム、およびデバイスでの使用に適した非イオン性樹脂を以下でさらに説明する。
【0036】
本開示の方法、システム、およびデバイスの特定の実施形態では、非イオン交換樹脂は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、炭酸塩、および他のイオン種などの必須の陽イオンおよび陰イオンに結合しない(したがって、血液から除去されない)ので、本開示の教示に従って排他的に使用される。電解質の変化は、望ましくない患者の血液化学の重量オスモル濃度の変化をもたらすので、これは、吸着デバイスを通して患者の血漿を再循環させる場合に重要である。
【0037】
本開示の方法、システム、およびデバイスでの使用に適した非イオン交換樹脂の特定の非限定的な例には、AMBERLITE(商標)XAD-7HP、AMBERCHROM(商標)CG300-C、および疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂(Butyl-S Sepharose 6,Butyl Sepharose 4,Capto Pheno,Capto Butyl,Capto Octyl,Capto Phenyl ImRes,Capto Butyl ImpRes,Phenyl Sepharose High Performance,Butyl Sepharose High Performance,Phenyl Sepharose 6 FastFlow low-sub,Phenyl Sepharose 6 FastFlow high-sub)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0038】
AMBERLITE(商標)は、100 Independence Mall West Philadelphia,PA 19106-2399に北米本社があるRohm and Haas Companyによって製造されたポリマー合成樹脂のグループである。AMBERLITE(商標)樹脂は、当業者に知られている販売業者ネットワークを通じて世界中で入手可能である。特定の一実施形態では、本開示は、約500m2/gの平均表面積および約450オングストロームの平均孔径および約560ミクロンの平均直径を有する脂肪族エステル樹脂であるAMBERLITE(商標)XAD-7HPの使用を含む。
【0039】
AMBERCHROME(商標)CG300-Gは、合成非イオン交換樹脂であり、Rohm and Haasによっても製造され、約700m2/gの平均表面積を有し、300オングストロームの平均孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンから製造され;平均粒径は、約35ミクロン~約120ミクロンの範囲である。
【0040】
本明細書で使用される場合、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂は、30~200ミクロンの粒径を有し、GE Healthcare Bio Sciences AB,Bjorkgaten 30,75184 Uppsala Swedenによって製造された媒体である。
【0041】
一実施形態では、吸着チャンバは、ポリカーボネート、ポリプロピレン、レキサンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および射出またはブロー成形に適した他の医療グレードのポリマーを含むがこれらに限定されないポリマーから構成される。
【0042】
別の実施形態では、吸着チャンバおよび/または吸着チャンバに含まれる材料は、臨床使用前に溶液として生理食塩水に添加されたヒト血清アルブミンおよび抗凝固剤でコーティングされている。
【0043】
本開示の方法、システム、およびデバイスで使用するのに適した抗凝固剤は、ヘパリンナトリウムおよびクエン酸デキストロース溶液ACD-Aを含むが、これらに限定されない。
【0044】
図2は、本開示の方法、システム、およびデバイスで使用するための吸着チャンバの例示的な実施形態を示している。
図2に示すように、吸着チャンバ100は、ハウジング200と、多孔質膜300a,300bと、エンドキャップ400a,400bとを含む。ハウジング200は、対向する開口端220a,220bを有する中空管210を含む。ハウジング200は、活性炭230と、1つまたは複数の非イオン性樹脂240とを含む。多孔質膜フィルタ300a,300bは、ハウジング200の端部220a,220bの各々を覆い、各多孔質膜フィルタ300a,300bは、本開示の方法の実施中に血漿の通過を可能にしながら、活性炭230および非イオン性樹脂240をハウジング200内に維持するためのバリアを形成する。エンドキャップ400a,400bは、ハウジング200の端部220a,220bの各々に取り付けられ、各エンドキャップ400a,400bは、その対応する多孔質膜フィルタ300a,300bを所定の位置に保持し、各エンドキャップ400a,400bとハウジング200の対応する端部220a,220bとの間のシールを維持するように構成される。
【0045】
本開示の吸着チャンバの特定の実施形態では、各エンドキャップは、その内周全体に成形された溝を含む。本明細書で提供されるように、溝は、各エンドキャップとハウジングの対応する端部との嵌合を容易にするように構成される。
【0046】
特定の実施形態では、溝は、ある量の接着剤を受け入れるように構成される。
図2の例示的な実施形態の吸着チャンバ100に示すように、接着剤500a,500bは、多孔質膜フィルタ300a,300bをエンドキャップ400a,400bに接着するのを助けるように溝内に堆積される。特定の実施形態では、別の量の接着剤501a,501bが各エンドキャップ400a,400bとその対応する多孔質膜フィルタ300a,300bとの間に堆積されて、エンドキャップ400a,400bとハウジング200の対応する端部220a,220bとの間にさらなる接着を提供する。
【0047】
特定の実施形態では、ハウジングの端部はねじ切りされ、対応するエンドキャップも互いに嵌合するようにねじ切りされている。
【0048】
特定の実施形態では、ハウジングは、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、または他の医療グレードのチューブ材料のうちの少なくとも1つを含むチューブの形態である。
【0049】
別の態様では、本開示は、被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去し、それによって被検体に治療的処置を提供するための本開示の方法、システム、およびデバイスの使用を含む、被検体の治療的処置のための方法に関する。一実施形態では、本開示の治療的処置は、外来患者処置設定における標準的な静脈アクセスの使用を介して施されることができる。
【0050】
本開示の治療的処置のための方法によれば、治療的処置は、限定されないが、敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、任意の形態の傷害または外傷の結果としての合併症、および任意の形態の癌または癌治療の結果としての合併症を含むことができる疾患または状態に対するものであり得る。
【0051】
本明細書で提供されるように、自己免疫疾患には、炎症性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎などが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で提供されるように、炎症は、化粧品アプリケーション、疼痛アプリケーション、および不快感アプリケーションなどの年齢に反する抗炎症アプリケーションを使用して治療することができるが、これらに限定されない。
【0053】
特定の実施形態では、本開示は体外血漿解毒システムを提供し、体外血漿解毒システムは、敗血症、肝不全、腎不全、急性呼吸窮迫、自己免疫、ウイルス、毒、ダニ、膵臓癌ビリルビン管理、術後炎症管理、および他の炎症性疾患に関連し、それらから生じる毒素を、治療的処置を必要とする患者の血漿から除去することができる。本開示のシステムの一実施形態は、限定するものではないが、血漿解毒を必要とする患者からカテーテル、AV瘻孔または移植片を介して血液を除去するために一般に使用され得る体外システムを含むことができる。血液は、血液の血漿分画から血球が分離される遠心アフェレーシスポンプに接続された従来の二重管腔カテーテルの1つの管腔を介して患者の大静脈から除去される。分離された血液は、遠心アフェレーシスポンプを出て、2つの経路のうちの一方で継続することができる。分離された血漿が、吸着材料の混合物を含む本開示の毒素除去デバイスである吸着カラムに入って通過する間に、血球は患者に戻される。吸着毒素除去デバイスは、タンパク質結合毒素および可溶性毒素の両方を除去する。吸着剤カラムを出た後、血漿流は患者の血球と再結合される。
【0054】
例示的な実施形態
以下の実施形態は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0055】
実施形態1.閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するためのシステムであって、前記システムは、
(a)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと、
(b)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと、
(c)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと、
(d)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと、
を実行するのに効果的な構成要素を備える、システム。
【0056】
実施形態2.非イオン性樹脂が、非イオン性脂肪族エステル樹脂、非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるアガロース媒体、および他の非生物吸着性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂材料を含む、実施形態1に記載のシステム。
【0057】
実施形態3.非イオン性脂肪族エステル樹脂が、AMBERLITE(登録商標)XAD-7HPである、実施形態2に記載のシステム。
【0058】
実施形態4.非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂が、AMBERCHROM(登録商標)GC300Cである、実施形態2に記載のシステム。
【0059】
実施形態5.活性炭が、コーティングされていないヤシ殻粒炭、コーティングされていない有機粒炭、およびコーティングされていない合成炭素からなる群から選択される少なくとも1つの活性炭材料を含む、実施形態2に記載のシステム。
【0060】
実施形態6.吸着チャンバが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、レキサンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および射出またはブロー成形に適した他の医療グレードのポリマーからなる群から選択されるポリマーから構成される、実施形態1に記載のシステム。
【0061】
実施形態7.吸着チャンバが、
(a)対向する開口端を有する中空管を備えるハウジングであって、前記ハウジングは活性炭および非イオン性樹脂を含む、ハウジングと、
(b)ハウジングの各端部を覆う多孔質膜フィルタであって、各多孔質膜フィルタは、方法ステップの実行中に血漿の通過を可能にしながら、ハウジング内に活性炭および非イオン性樹脂を維持するためのバリアを形成する、多孔質膜フィルタと、
(c)ハウジングの各端部に取り付けられたエンドキャップであって、各エンドキャップは、その対応する多孔質膜フィルタを所定の位置に保持し、エンドキャップとハウジングの対応する端部との間のシールを維持するように構成されている、エンドキャップと
を備える、実施形態1に記載のシステム。
【0062】
実施形態8.各エンドキャップが、その内周全体に成形された溝を含み、前記溝は、各エンドキャップとハウジングの対応する端部との嵌合を容易にするように構成されている、実施形態7に記載のシステム。
【0063】
実施形態9.前記溝が、ある量の接着剤を受け入れるように構成され、前記接着剤は、多孔質膜フィルタをエンドキャップに接着するのを助けるように溝内に堆積される、実施形態8に記載のシステム。
【0064】
実施形態10.別の量の接着剤が、各エンドキャップとその対応する多孔質膜フィルタとの間に堆積されて、エンドキャップとハウジングの対応する端部との間にさらなる接着を提供する、実施形態9に記載のシステム。
【0065】
実施形態11.ハウジングの端部がねじ切りされ、対応するエンドキャップも互いに嵌合するようにねじ切りされている、実施形態7に記載のシステム。
【0066】
実施形態12.ハウジングが、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、または他の医療グレードのチューブ材料のうちの少なくとも1つを含むチューブの形態である、実施形態7に記載のシステム。
【0067】
実施形態13.吸着チャンバおよび/または吸着チャンバ内の材料が、臨床使用前に送達溶液として生理食塩水に添加されたヒト血清アルブミンおよび抗凝固剤でコーティングされている、実施形態1に記載のシステム。
【0068】
実施形態14.抗凝固剤が、ヘパリンナトリウムおよびクエン酸デキストロース溶液ACD-Aからなる群から選択される、実施形態13に記載のシステム。
【0069】
実施形態15.前記吸着チャンバが、被検体の血液からサイトカイン以外の毒素を除去するのに有効である、実施形態1に記載のシステム。
【0070】
実施形態16.敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、傷害または外傷の任意の形態の結果としての合併症、および癌または癌治療の任意の形態の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の治療的処置に使用するためのシステムであって、
前記システムは、血漿分離器、吸着チャンバ、および結合チャンバを含み、
前記システムは、閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去することによって疾患または状態の前記治療的処置に使用され、前記システムは、
(i)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと、
(ii)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと、
(iii)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと、
(iv)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと、
を実行するのに有効である、
システム。
【0071】
実施形態17.前記自己免疫疾患が、炎症性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびブドウ膜炎からなる群から選択される、実施形態16に記載のシステム。
【0072】
実施形態18.非イオン性樹脂が、非イオン性脂肪族エステル樹脂、非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるアガロース媒体、および他の非生物吸着性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂材料を含む、実施形態16に記載のシステム。
【0073】
実施形態19.非イオン性脂肪族エステル樹脂が、AMBERLITE(登録商標)XAD-7HPである、実施形態18に記載のシステム。
【0074】
実施形態20.非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂が、AMBERCHROM(登録商標)GC300Cである、実施形態18に記載のシステム。
【0075】
実施形態21.活性炭が、コーティングされていないヤシ殻粒炭、コーティングされていない有機粒炭、およびコーティングされていない合成炭素からなる群から選択される少なくとも1つの活性炭材料を含む、実施形態18に記載のシステム。
【0076】
実施形態22.吸着チャンバが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、レキサンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および射出またはブロー成形に適した他の医療グレードのポリマーからなる群から選択されるポリマーから構成される、実施形態16に記載のシステム。
【0077】
実施形態23.吸着チャンバが、
(a)対向する開口端を有する中空管を備えるハウジングであって、前記ハウジングは活性炭および非イオン性樹脂を含む、ハウジングと、
(b)ハウジングの各端部を覆う多孔質膜フィルタであって、各多孔質膜フィルタは、方法ステップの実行中に血漿の通過を可能にしながら、ハウジング内に活性炭および非イオン性樹脂を維持するためのバリアを形成する、多孔質膜フィルタと、
(c)ハウジングの各端部に取り付けられたエンドキャップであって、各エンドキャップは、その対応する多孔質膜フィルタを所定の位置に保持し、エンドキャップとハウジングの対応する端部との間のシールを維持するように構成されている、エンドキャップと
を備える、実施形態16に記載のシステム。
【0078】
実施形態24.各エンドキャップが、その内周全体に成形された溝を含み、前記溝は、各エンドキャップとハウジングの対応する端部との嵌合を容易にするように構成されている、実施形態23に記載のシステム。
【0079】
実施形態25.前記溝が、ある量の接着剤を受け入れるように構成され、前記接着剤は、多孔質膜フィルタをエンドキャップに接着するのを助けるように溝内に堆積される、実施形態24に記載のシステム。
【0080】
実施形態26.別の量の接着剤が、各エンドキャップとその対応する多孔質膜フィルタとの間に堆積されて、エンドキャップとハウジングの対応する端部との間にさらなる接着を提供する、実施形態25に記載のシステム。
【0081】
実施形態27.ハウジングの端部がねじ切りされ、対応するエンドキャップも互いに嵌合するようにねじ切りされている、実施形態23に記載のシステム。
【0082】
実施形態28.ハウジングが、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、または他の医療グレードのチューブ材料のうちの少なくとも1つを含むチューブの形態である、実施形態23に記載のシステム。
【0083】
実施形態29.吸着チャンバおよび/または吸着チャンバ内の材料が、臨床使用前に送達溶液として生理食塩水に添加されたヒト血清アルブミンおよび抗凝固剤でコーティングされている、実施形態16に記載のシステム。
【0084】
実施形態30.抗凝固剤が、ヘパリンナトリウムおよびクエン酸デキストロース溶液ACD-Aからなる群から選択される、実施形態29に記載のシステム。
【0085】
実施形態31.前記吸着チャンバが、被検体の血液からサイトカイン以外の毒素を除去するのに有効である、実施形態16に記載のシステム。
【0086】
実施形態32.敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、任意の形態の傷害または外傷の結果としての合併症、および任意の形態の癌または癌治療の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態の治療的処置のための実施形態16から31のいずれかに記載のシステムを製造するための吸着チャンバの使用。
【0087】
実施形態33.前記自己免疫疾患が、炎症性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびブドウ膜炎からなる群から選択される、実施形態32に記載の使用。
【0088】
実施形態34.閉じた流体回路内の被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去する方法であって、前記方法は、
(a)被検体からの静脈血を血漿分離器に通し、それによって血液を血球と血漿に分離するステップと、
(b)処理済み血漿を形成するために、血漿分離器から受け取った血漿を回路内に配置された吸着チャンバに通すステップであって、吸着チャンバ内の材料が血漿中のサイトカインを吸着して処理済み血漿を形成し、前記材料は50~70重量%の活性炭および30~50重量%の非イオン性樹脂を含む、ステップと、
(c)血漿のいずれも別の流体と交換することなく、処理済み血液を形成するために、吸着チャンバから直接受け取った処理済み血漿を、結合チャンバ内の血球と結合させるステップと、
(d)回路からの処理済み血液を被検体に直接輸血するステップであって、被検体への処理済み血液の輸血が完了する前に、被検体の血液以外の流体が回路に添加されない、ステップと
を含む、方法。
【0089】
実施形態35.非イオン性樹脂が、非イオン性脂肪族エステル樹脂、非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるアガロース媒体、および他の非生物吸着性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂材料を含む、実施形態34に記載の方法。
【0090】
実施形態36.非イオン性脂肪族エステル樹脂が、AMBERLITE(登録商標)XAD-7HPである、実施形態35に記載の方法。
【0091】
実施形態37.非イオン性ポリスチレンジビニルベンゼン樹脂が、AMBERCHROM(登録商標)GC300Cである、実施形態35に記載の方法。
【0092】
実施形態38.活性炭が、コーティングされていないヤシ殻粒炭、コーティングされていない有機粒炭、およびコーティングされていない合成炭素からなる群から選択される少なくとも1つの活性炭材料を含む、実施形態35に記載の方法。
【0093】
実施形態39.吸着チャンバが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、レキサンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および射出またはブロー成形に適した他の医療グレードのポリマーからなる群から選択されるポリマーから構成される、実施形態34に記載の方法。
【0094】
実施形態40.吸着チャンバが、
(a)対向する開口端を有する中空管を備えるハウジングであって、前記ハウジングは活性炭および非イオン性樹脂を含む、ハウジングと、
(b)ハウジングの各端部を覆う多孔質膜フィルタであって、各多孔質膜フィルタは、方法の実行中に血漿の通過を可能にしながら、ハウジング内に活性炭および非イオン性樹脂を維持するためのバリアを形成する、多孔質膜フィルタと、
(c)ハウジングの各端部に取り付けられたエンドキャップであって、各エンドキャップは、その対応する多孔質膜フィルタを所定の位置に保持し、エンドキャップとハウジングの対応する端部との間のシールを維持するように構成されている、エンドキャップと
を備える、実施形態34に記載の方法。
【0095】
実施形態41.各エンドキャップが、その内周全体に成形された溝を含み、前記溝は、各エンドキャップとハウジングの対応する端部との嵌合を容易にするように構成されている、実施形態40に記載の方法。
【0096】
実施形態42.前記溝が、ある量の接着剤を受け入れるように構成され、前記接着剤は、多孔質膜フィルタをエンドキャップに接着するのを助けるように溝内に堆積される、実施形態41に記載の方法。
【0097】
実施形態43.別の量の接着剤が、各エンドキャップとその対応する多孔質膜フィルタとの間に堆積されて、エンドキャップとハウジングの対応する端部との間にさらなる接着を提供する、実施形態42に記載の方法。
【0098】
実施形態44.ハウジングの端部がねじ切りされ、対応するエンドキャップも互いに嵌合するようにねじ切りされている、実施形態41に記載の方法。
【0099】
実施形態45.ハウジングが、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、または他の医療グレードのチューブ材料のうちの少なくとも1つを含むチューブの形態である、実施形態40に記載の方法。
【0100】
実施形態46.吸着チャンバおよび/または吸着チャンバ内の材料が、臨床使用前に溶液として生理食塩水に添加されたヒト血清アルブミンおよび抗凝固剤でコーティングされている、実施形態34に記載の方法。
【0101】
実施形態47.抗凝固剤が、ヘパリンナトリウムおよびクエン酸デキストロース溶液ACD-Aからなる群から選択される、実施形態46に記載の方法。
【0102】
実施形態48.前記吸着チャンバが、被検体の血液からサイトカイン以外の毒素を除去するのに有効である、実施形態34に記載の方法。
【0103】
実施形態49.被検体の治療的処置のための方法であって、前記方法は、被検体の血液からサイトカインおよび他の物質を除去するために、実施形態34から47のいずれかに記載の方法を実行し、それによって被検体に治療的処置を提供するステップを含む、方法。
【0104】
実施形態50.治療的処置が、敗血症、肝不全、ウイルス感染、急性呼吸窮迫、腎不全、炎症、中毒、薬物過剰摂取、自己免疫疾患、ダニ媒介疾患、化学剤または神経剤曝露、熱傷胆管閉塞、術後炎症、細菌感染、煙吸入によって引き起こされる合併症、任意の形態の傷害または外傷の結果としての合併症、および任意の形態の癌または癌治療の結果としての合併症からなる群から選択される疾患または状態に対するものである、実施形態49に記載の方法。
【0105】
実施形態51.前記自己免疫疾患が、炎症性関節炎、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、およびブドウ膜炎からなる群から選択される、実施形態50に記載の方法。
【0106】
実施形態52.前記炎症が、化粧品アプリケーション、疼痛アプリケーション、および不快感アプリケーションからなる群から選択される年齢に反する抗炎症アプリケーションを使用して治療される、実施形態50に記載の方法。
【0107】
実施形態53.前記治療的処置が、外来患者処置設定における標準的な静脈アクセスの使用を介して施される、実施形態49に記載の方法。
【0108】
実施形態54.抗凝固剤を回路に導入するステップをさらに含む、実施形態49に記載の方法。
【0109】
実施形態55.抗凝固剤がクエン酸デキストロース溶液ACD-Dである、実施形態54に記載の方法。
【0110】
実施形態56.吸着チャンバを用いて被検体の血液から毒素を除去するステップをさらに含む、実施形態49に記載の方法。
【0111】
数値範囲は、範囲を定義する数を含む。約という用語は、本明細書では、値の±10%までを意味するために使用される。例えば、「約100」は、90から110の間の任意の数を指す。
【0112】
本明細書で提供される見出しは、本発明の様々な態様または実施形態の限定ではなく、全体として本明細書を参照することで得ることができる。したがって、以下に定義される用語は、全体として本明細書を参照することによってより完全に定義される。
【0113】
本発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示対象は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各別個の値を個別に参照する簡略方法として役立つことを意図している。本明細書に別段の指示がない限り、各個々の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(例えば、「such as」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図しており、特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0114】
本明細書に開示された方法、システム、およびデバイスの代替的な要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバは、個々に、またはグループの他のメンバもしくは本明細書に見られる他の要素と任意に組み合わせて参照され、特許請求され得る。グループの1つまたは複数のメンバは、利便性および/または特許性の理由から、グループに含まれ得るか、またはグループから削除され得ることが予想される。
【0115】
本発明を実施するための本発明者らに知られている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。当然ながら、これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかとされよう。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に列挙された主題のすべての修正および均等物を含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、そのすべての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0116】
最後に、本明細書に開示された本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることを理解されたい。使用され得る他の修正は、本発明の範囲内である。したがって、限定ではなく例として、本明細書の教示に従って本発明の代替構成を利用することができる。したがって、本発明は、正確に図示および説明されたものに限定されない。
【0117】
明らかであり、本開示に固有の他の利点は、当業者には明らかとされよう。特定の特徴および部分的組み合わせは有用であり、他の特徴および部分的組み合わせを参照せずに採用され得ることが理解されよう。これは、特許請求の範囲によって企図され、特許請求の範囲内である。本開示の範囲から逸脱することなく、多くの可能な実施形態が本開示から作成され得るので、添付の図面に記載または図示されたすべての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。