(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180632
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】コネクタ、及びコネクタ構成体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/641 20060101AFI20241219BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01R13/641
H01R13/42 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024182140
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2021175307の分割
【原出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
(57)【要約】
【課題】コネクタの組み立て作業の効率を向上させる。
【解決手段】相手コネクタと前後方向に嵌合するコネクタであって、端子と、ハウジングと、リテーナと、を備え、ハウジングは弾性変形可能であって端子と係止するランスを有し、リテーナはランスが弾性変形する弾性変形空間43に進入してランスの弾性変形を規制する規制部62を有し、リテーナは、規制部62が弾性変形空間43から退避した退避位置と、退避位置よりも後方にある係止位置であってランスが端子と係止した状態で規制部62が弾性変形空間43内に進入した係止位置と、の間を移動可能になっており、退避位置では、リテーナの前端面はハウジングの前端面よりも前方に位置しており、さらにリテーナは、相手コネクタとハウジングとの嵌合に伴い、係止位置と、係止位置よりも後方にある完了位置であってハウジングと相手コネクタとの嵌合が完了したことを示す完了位置との間を移動するコネクタ。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタと前後方向に嵌合するコネクタであって、
端子と、前記端子を収容するハウジングと、前記ハウジングに移動可能に組み付けられるリテーナと、を備え、
前記ハウジングは、弾性変形可能であって前記端子と係止するランスを有し、
前記リテーナは、前記ランスが弾性変形する弾性変形空間に進入して前記ランスの弾性変形を規制する規制部を有し、
前記リテーナは、前記規制部が前記弾性変形空間から退避した退避位置と、前記退避位置よりも後方にある係止位置であって前記ランスが前記端子と係止した状態で前記規制部が前記弾性変形空間内に進入した係止位置と、の間を移動可能になっており、
前記退避位置では、前記リテーナの前端面は前記ハウジングの前端面よりも前方に位置しており、
さらに前記リテーナは、前記相手コネクタと前記ハウジングとの嵌合に伴い、前記係止位置と、前記係止位置よりも後方にある完了位置であって前記ハウジングと前記相手コネクタとの嵌合が完了したことを示す完了位置との間を移動するコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記完了位置における前記リテーナに対応する位置に、前記リテーナの少なくとも一部が露出する検出窓が開口している請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記リテーナは、前記完了位置において前記検出窓から露出する部分に、所定の機械によって検出可能な識別子を有する請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記識別子は、前記リテーナに設けられた配置面に設けられており、
前記配置面は、前記ハウジングのうち前記検出窓が形成された壁部に対して傾いている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングには、前記リテーナが前記係止位置に移動した状態で、前記識別子に対応する位置に、前記識別子が露出する視認窓が開口しており、
前記ハウジングには、前記視認窓を通して前記所定の機械が前記識別子を検出することを阻害する阻害部が設けられている請求項3または請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記阻害部は、前記検出窓の孔縁部から外方に突出したリブである請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコネクタと、
前記コネクタと嵌合する相手コネクタと、を備えたコネクタ構成体。
【請求項8】
前記相手コネクタは、前記コネクタと嵌合する際に、前記コネクタとの嵌合方向から前記リテーナに当接することにより前記リテーナを前記係止位置から前記完了位置にまで移動させる当接部を有する請求項7に記載のコネクタ構成体。
【請求項9】
前記相手コネクタは、前記コネクタに向かって突出するとともに前記リテーナと係止する係止部を有し、
前記相手コネクタと前記コネクタとが離脱する際に、前記係止部が前記リテーナと係止することにより前記リテーナが前記完了位置から前記係止位置にまで移動するようになっており、
前記リテーナが前記係止位置に移動したときに前記係止部と前記リテーナとの係止が解除されるようになっている請求項7または請求項8に記載のコネクタ構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ、及びコネクタ構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相手コネクタとの嵌合が適正に完了したかを検知可能なコネクタが知られている(特開2020-72013号公報)。このコネクタは嵌合保証部品を有する。嵌合保証部品は、コネクタに対して、仮係止位置と、本係止位置との間を移動可能に組み付けられている。相手コネクタとコネクタとが嵌合していない状態では、嵌合保証部品は仮係止位置に保持されており、相手コネクタとコネクタとが嵌合した状態では、嵌合保証部品は本係止位置に移動可能になっている。これにより、嵌合保証部品を仮係止位置から本係止位置に移動することができたことにより、相手コネクタとコネクタとの嵌合が完了したことを確認することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によれば、相手コネクタとコネクタとを嵌合させた後に、嵌合保証部品を仮係止位置から本係止位置に移動させるという操作を行う。このため、コネクタの組み立て作業の効率が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの組み立て作業の効率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、相手コネクタと嵌合するコネクタであって、端子と、前記端子を収容するハウジングと、前記ハウジングに移動可能に組み付けられるリテーナと、を備え、前記ハウジングは、弾性変形可能であって前記端子と係止するランスを有し、前記リテーナは、前記ランスが弾性変形する弾性変形空間に進入して前記ランスの弾性変形を規制する規制部を有し、前記リテーナは、前記規制部が前記弾性変形空間から退避した退避位置と、前記ランスが前記端子と係止した状態で前記規制部が前記弾性変形空間内に進入した係止位置と、の間を移動可能になっており、さらに前記リテーナは、前記相手コネクタと前記ハウジングとの嵌合に伴い、前記係止位置と、前記ハウジングと前記相手コネクタとの嵌合が完了したことを示す完了位置との間を移動する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コネクタの組み立て作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る雌コネクタと、雄コネクタとを示す断面図である。
【
図2】
図2は、雄コネクタを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、雌コネクタを示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、雌リテーナが退避位置に取り付けられた状態の雌コネクタを示す平面図である。
【
図6】
図6は、雌リテーナが退避位置に取り付けられた状態の雌コネクタを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、雌リテーナが退避位置に取り付けられた状態の雌コネクタを示す側面図である。
【
図8】
図8は、雌リテーナが係止位置に取り付けられた状態の雌コネクタを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、雌リテーナが係止位置に取り付けられた状態の雌コネクタを示す平面図である。
【
図10】
図10は、雌リテーナが係止位置に取り付けられた状態の雌コネクタを示す側面図である。
【
図14】
図14は、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合が完了した状態のコネクタ構成体を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合が完了した状態のコネクタ構成体を示す平面図である。
【
図16】
図16は、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合が完了した状態のコネクタ構成体を示す側面図である。
【
図21】
図21は、嵌合途中状態における雄コネクタと雌コネクタとを示す平面図である。
【
図22】
図22は、嵌合途中状態における雄コネクタと雌コネクタとを示す側面図である。
【
図26】
図26は、他の実施形態(5)に係る識別子を示す、
図10におけるXIX-XIX線に対応する断面図である。
【
図27】
図27は、他の実施形態(5)に係る識別子を示す、
図16におけるXX-XX線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0010】
(1)本開示は、相手コネクタと嵌合するコネクタであって、端子と、前記端子を収容するハウジングと、前記ハウジングに移動可能に組み付けられるリテーナと、を備え、前記ハウジングは、弾性変形可能であって前記端子と係止するランスを有し、前記リテーナは、前記ランスが弾性変形する弾性変形空間に進入して前記ランスの弾性変形を規制する規制部を有し、前記リテーナは、前記規制部が前記弾性変形空間から退避した退避位置と、前記ランスが前記端子と係止した状態で前記規制部が前記弾性変形空間内に進入した係止位置と、の間を移動可能になっており、さらに前記リテーナは、前記相手コネクタと前記ハウジングとの嵌合に伴い、前記係止位置と、前記ハウジングと前記相手コネクタとの嵌合が完了したことを示す完了位置との間を移動する。
【0011】
リテーナが、係止位置から完了位置まで移動したことを確認することにより、相手コネクタとコネクタとの嵌合が完了したことを確認できる。これにより、相手コネクタとコネクタとの嵌合動作の後に、嵌合保証部材を別途移動させる操作が不要となるので、コネクタの組み立て作業の効率を向上させることができる。
【0012】
(2)前記ハウジングには、前記完了位置における前記リテーナに対応する位置に、前記リテーナの少なくとも一部が露出する検出窓が開口していることが好ましい。
【0013】
リテーナの少なくとも一部が検出窓から露出したことを確認することにより、相手コネクタとコネクタとの嵌合が完了したことを確認できる。
【0014】
(3)前記リテーナは、前記完了位置において前記検出窓から露出する部分に、所定の機械によって検出可能な識別子を有することが好ましい。
【0015】
識別子が検出窓から露出したことを機械によって検出することにより、相手コネクタとコネクタとの嵌合が完了したことを確認できる。
【0016】
(4)前記識別子は、前記リテーナに設けられた配置面に設けられており、前記配置面は、前記ハウジングのうち前記検出窓が形成された壁部に対して傾いていることが好ましい。
【0017】
配置面が、ハウジングの壁部に対して傾いていることにより、機械によって検出窓を通して識別子を検出する際に、機械と、識別子との焦点距離を、配置面内において部分的に異ならせることができる。
【0018】
(5)前記ハウジングには、前記リテーナが前記係止位置に移動した状態で、前記識別子に対応する位置に、前記識別子が露出する視認窓が開口しており、前記ハウジングには、前記視認窓を通して前記所定の機械が前記識別子を検出することを阻害する阻害部が設けられていることが好ましい。
【0019】
阻害部により、視認窓からは、機械によって識別子を検出することはできないようになっているので、リテーナが係止位置に移動した状態において、識別子が機械によって検出されない。これにより、相手コネクタとコネクタとが正規に嵌合していない状態で、誤って識別子が機械により検出されてしまうことが抑制される。
【0020】
一方、視認窓からは識別子を視認できるので、識別子の位置を予め把握することができる。したがって、完了位置において識別子を確実に見つけることができる。
【0021】
(6)前記阻害部は、前記検出窓の孔縁部から外方に突出したリブであることが好ましい。
【0022】
リブという簡易な構成により阻害部を形成することができる。
【0023】
(7)本開示は、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載のコネクタと、前記コネクタと嵌合する相手コネクタと、を備えたコネクタ構成体である。
【0024】
(8)前記相手コネクタは、前記コネクタと嵌合する際に、前記コネクタとの嵌合方向から前記リテーナに当接することにより前記リテーナを前記係止位置から前記完了位置にまで移動させる当接部を有することが好ましい。
【0025】
相手コネクタとコネクタとを嵌合することにより、リテーナを係止位置から完了位置に移動させることができる。これにより、相手コネクタとコネクタとの嵌合動作の後に、嵌合保証部材を別途移動させる操作が不要となるので、作業効率を向上させることができる。
【0026】
(9)前記相手コネクタは、前記コネクタに向かって突出するとともに前記リテーナと係止する係止部を有し、前記相手コネクタと前記コネクタとが離脱する際に、前記係止部が前記リテーナと係止することにより前記リテーナが前記完了位置から前記係止位置にまで移動するようになっており、前記リテーナが前記係止位置に移動したときに前記係止部と前記リテーナとの係止が解除されるようになっていることが好ましい。
【0027】
相手コネクタとコネクタとを離脱させる操作を行うことにより、リテーナを完了位置から係止位置にまで移動させることができる。これにより、相手コネクタとコネクタとを離脱させた後に、リテーナを完了位置から係止位置にまで移動させる操作が不要となる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<実施形態1>
本開示の実施形態1について、
図1から
図25を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るコネクタ構成体10は、雌コネクタ11(コネクタの一例)と、雄コネクタ12(相手コネクタの一例)とを、有する。
【0030】
以下の説明において、上下方向とは、
図1における上下方向を基準とする。前後方向とは、
図1における雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合方向について、互いに嵌合する方向を前方とする。左右方向については、雄コネクタ12及び雌コネクタ11のそれぞれに対して、雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合方向の前方に向かって左方向及び右方向を基準として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号をふし、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0031】
[雄コネクタ12]
雄コネクタ12は、
図1に示されるように、雄端子13と、雄端子13を収容する雄ハウジング14と、雄ハウジング14に取り付けられる雄リテーナ15と、を備える。
【0032】
雄端子13は、金属板材が所定の形状にプレス加工されることにより形成される。雄端子13は、前方に突出する板状をなすタブ16と、タブ16の後方に連なるとともに電線18が接続される電線接続部17と、を有する。電線接続部17が電線18の外周に圧着することにより、電線18と電線接続部17とが電気的に接続されるようになっている。
【0033】
雄ハウジング14は、全体として直方体形状をなしており、絶縁性の合成樹脂により形成されている。雄ハウジング14は前方に開口するフード部19を有する。フード部19内には、雄端子13のタブ16が前方に突出した状態で配されている。雄ハウジング14には雄端子13が収容される複数(本実施形態では5つ)の雄キャビティ20が、左右方向に間隔を空けて形成されている。雄キャビティ20の内部には、前方に突出して延びるとともに弾性変形可能な雄ランス21が形成されている。雄ランス21の前端部が雄端子13に後方から係止することにより、雄端子13が雄キャビティ20内に抜け止め状態で保持されるようになっている。フード部19の下壁には、後述するロックアーム22のロック部23が嵌入するロック受け部24が、下壁を貫通して設けられている。フード部19の上壁には、後述する雌リテーナ25を上方から押圧する押圧突起26が、下方に突出して設けられている。
【0034】
フード部19の後方に設けられた後壁には、雄リテーナ15が前方から組み付けられている。雄リテーナ15は、全体として上下方向に扁平な板状をなしており、絶縁性の合成樹脂により形成されている。
図2に示されるように、雄リテーナ15の左右両端部には、雄ハウジング14に弾性的に係止するロック部27が設けられている。ロック部27が雄ハウジング14に係止することにより雄リテーナ15が雄ハウジング14に固定されるようになっている。
【0035】
図1に示されるように、フード部19の右側壁の前端部には、後方に凹んだ凹部28が形成されている。この凹部28により、雄コネクタ12と雌コネクタ11とが嵌合した状態で、後述するリブ29とフード部19とが干渉することを避けることができる。凹部28の上下方向の差し渡し寸法は、上側のリブ29の上面と下側のリブ29の下面との間隔よりも大きく形成されている。
【0036】
雄リテーナ15は、雄ハウジング14の雄ランス21が弾性変形する弾性変形空間30内に前方から進入して雄ランス21が弾性変形することを妨げる規制部31を有する。規制部31は、雄ハウジング14の雄ランス21に対応する位置に、雄リテーナ15の後端部から後方に突出して形成されている。
【0037】
雄リテーナ15の前端部であって、且つ上端部には、前方に突出するとともに、後述する雌リテーナ25と当接する当接部32が形成されている。当接部32は上下方向に扁平な板状をなしている。当接部32の前端部には、左右両端部から前方に突出するアーム部33が形成されている。アーム部33は前後方向に細長く延びて形成されている。アーム部33の前端部には、下方に突出する係止部34が形成されている。係止部34は、後述する雌リテーナ25の係止受け部35と係止するようになっている。係止部34の後端面は、アーム部33の下面から切り立った形状に形成されている。一方、係止部34の前端面は、前後方向に緩やかに傾斜して形成されている。
【0038】
[雌コネクタ11]
図4に示されるように、雌コネクタ11は、雌ハウジング36(ハウジングの一例)と、雌ハウジング36に収容される雌端子37(端子の一例)と、雌ハウジング36に前方から装着される雌リテーナ25(リテーナの一例)とを備える。
【0039】
雌端子37は、金属板材が所定の形状にプレス加工されることにより形成される。雌端子37は、雄端子13のタブ16が挿入される接続筒部38と、接続筒部38の後方に連なるとともに電線18が接続される電線接続部39と、を有する。タブ16が接続筒部38内に挿入されると、接続筒部38内に配された弾性接触片(図示せず)とタブ16とが弾性的に接触するようになっている。これにより雄端子13と雌端子37とが電気的に接続されるようになっている。また、電線接続部39が電線18の外周に圧着することにより、電線18と電線接続部39とが電気的に接続されるようになっている。
【0040】
図3に示されるように、雌ハウジング36は全体として直方体形状をなしている。雌ハウジング36は、絶縁性の合成樹脂により形成されている。
図4に示されるように、雌ハウジング36の下面には、前端部から後方に延びるロックアーム22が形成されている。ロックアーム22は上下方向に弾性変形可能になっている。前後方向についてロックアーム22の中央付近には、下方に突出するロック部23が形成されている(
図18参照)。
【0041】
図3に示されるように、雌ハウジング36は前方、及び後方に開口する複数(本実施形態では5つ)の雌キャビティ40を有する。雌キャビティ40内には後方から雌端子37が収容されるようになっている。雌キャビティ40は、上下方向について雌ハウジング36の中央位置付近に、左右方向に間隔を空けて並んで形成されている。
【0042】
雌ハウジング36の前端部であって、雌キャビティ40の上方の位置には、雌リテーナ25が収容されるリテーナ収容部41が前方に開口して形成されている。リテーナ収容部41の孔縁部は、左右方向の細長く延びるとともに、上下方向について偏平な形状に形成されている。リテーナ収容部41と雌キャビティ40とは、上下方向に連通している。
【0043】
図4に示されるように、リテーナ収容部41の上壁には、各雌キャビティ40に対応する位置に、斜め前下方に向かって片持ち状に延出された雌ランス42(ランスの一例)が形成されている。雌ランス42は、雌ランス42の上方に設けられた弾性変形空間43に向かって弾性変位可能とされている。雌端子37が雌キャビティ40の適正な挿入位置まで挿入されると、雌ランス42と雌端子37とが前後方向に係止することで、雌端子37が後方へ抜け止めされた状態で雌ハウジング36内に保持される。雌ランス42の弾性変形空間43は、リテーナ収容部41内に設定されている。
【0044】
雌リテーナ25は、雌ハウジング36のリテーナ収容部41に、前方から取り付けられるようになっている。
図3に示されるように、雌リテーナ25は、全体として上下方向に扁平な板状をなしている。雌リテーナ25は絶縁性の合成樹脂により形成されている。
【0045】
雌リテーナ25の上壁63の後端部寄りの部分は、雌端子37が雌ランス42に係止された状態で、雌ランス42の弾性変形空間30内に進入することにより雌ランス42が弾性変形することを妨げる規制部62となっている。
【0046】
雌リテーナ25の上壁63の上面には、左右両端部寄りの位置に、それぞれ、下方に凹んだ係止凹部44が形成されている。係止凹部44は前後方向に細長く延びて形成されている。2つの係止凹部44は、同形同大に形成されている。なお、同形同大とは、同形同大である場合を含むとともに、同形同大でない場合であっても実質的に同形同大と認定しうる場合を含む。
【0047】
係止凹部44は、前後方向について、後側が深くなるように、二段階に陥没して形成されている。換言すると、係止凹部44のうち、雌リテーナ25の上面からの陥没深さ寸法は、前側の部分よりも後側の部分の方が大きく形成されている。これにより、係止凹部44には、前側の部分と後側の部分との間に段差が形成されており、この段差が、雄リテーナ15の係止部34と係止する係止受け部35とされる。
【0048】
[係止構造]
図3に示されるように、雌リテーナ25の上面には、係止凹部44の後方の位置に、それぞれ、上方に突出する第1係止部45が形成されている。第1係止部45の前端面は雌リテーナ25の上面から上方に切り立って形成されている。第1係止部45の後端面は前後方向に緩やかに傾斜して形成されている。2つの第1係止部45は、同形同大に形成されている。
【0049】
雌リテーナ25の上面には、左右方向について係止凹部44の内方の位置に、それぞれ、上方に突出する第2係止部46が形成されている。換言すると、左側に形成された係止凹部44の右方の位置と、右側に形成された係止凹部44の左方の位置とに、それぞれ、第2係止部46が形成されている。第2係止部46の前端面は雌リテーナ25の上面から上方に立ち上がって形成されている。第2係止部46の前端面の、雌リテーナ25の上面からの傾斜角度は、第1係止部45の前端面の傾斜角度よりも緩やかに形成されている。第2係止部46の後端面は前後方向に緩やかに傾斜して形成されている。2つの第2係止部46は、同形同大に形成されている。
【0050】
雌リテーナ25の後端部には、左右方向の中央位置付近から後方に突出する2つのアーム部47が形成されている。2つのアーム部47は同形同大に形成されている。アーム部47の後端部には上方に突出する第3係止部48が形成されている。第3係止部48の前端面は前後方向に緩やかに傾斜して形成されている。第3係止部48の後端面は、雌リテーナ25の上面に対して直交して形成されている。なお、直交するとは、直交する場合を含むとともに、直交していない場合であっても実質的に直交していると認定しうる場合も含む。
【0051】
図5及び
図6に示されるように、雌ハウジング36の上壁64には、リテーナ収容部41内に雌リテーナ25が収容された状態で、第1係止部45に対応する位置に、前後方向に延びるとともに上下方向に上壁64を貫通する第1係止受け部49が形成されている。第1係止受け部49は、雌ハウジング36の上壁64の左右両端部寄りの位置に形成されている。第1係止受け部49は上方から見て長方形状をなしている。2つの第1係止受け部49は同形同大に形成されている。
【0052】
雌ハウジング36の上壁64には、リテーナ収容部41内に雌リテーナ25が収容された状態で、第2係止部46に対応する位置に、前後方向に延びるとともに上下方向に上壁64を貫通する第2係止受け部50が形成されている。第2係止受け部50は、雌ハウジング36の上壁64のうち、左右方向について第1係止受け部49の内方に形成されている。換言すると、雌ハウジング36の上壁64の左側に形成された第1係止受け部49の右方に第2係止受け部50が形成されていると共に、右側に形成された第1係止受け部49の左方に第2係止受け部50が形成されている。第2係止受け部50は上方から見て長方形状をなしている。2つの第2係止受け部50は同形同大に形成されている。
【0053】
雌ハウジング36の上壁64には、左右方向の中央付近に、上方から見て角張ったC字状をなすスリット51が形成されている。スリット51は、左右方向に間隔を空けて並ぶとともに前後方向に延びる2つの部分と、この2つの部分の後端部を連結する部分と、を有する。このスリット51に囲まれた領域には、前後方向に延びる弾性変形部52が形成されている。弾性変形部52は、リテーナ収容部41内に雌リテーナ25が収容された状態で、雌リテーナ25のアーム部47の上方に形成されている。弾性変形部52の後端部には、上方に突出する突起部53が形成されている。突起部53の前端面、及び後端面は、前後方向について緩やかに傾斜して形成されている。
【0054】
スリット51のうち、左右方向に延びる部分であって、且つ弾性変形部52の後方に位置する部分は、雌リテーナ25の第3係止部48と係止可能な前第3係止受け部54とされる。また、雌ハウジング36の上壁64には、前第3係止受け部54の後方の位置に、左右方向に間隔を空けて並ぶ2つの後第3係止受け部55が、上下方向に上壁64を貫通して形成されている。後第3係止受け部55は上方から見て長方形状をなしている。後第3係止受け部55は、雌リテーナ25の第3係止部48と係止可能になっている。
【0055】
[雌ハウジング36と雌リテーナ25との組み付け構造]
雌リテーナ25は、雌ハウジング36に対して、退避位置(
図3参照)と、退避位置よりも後方の係止位置(
図13参照)と、係止位置よりも後方の完了位置(
図17参照)と、の間を移動可能に取り付けられている。
【0056】
図4から
図7に、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して退避位置に組み付けられた状態を示す。
図4及び
図5に示されるように、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して退避位置に組み付けられた状態においては、第1係止部45の前端面が第1係止受け部49の前壁に後方から当接している。これにより雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して前方へ抜け止めされた状態で保持されている。
図4から
図7に示されるように、第2係止部46の後端面が雌ハウジング36の前面に前方から当接している。これにより、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して後方への移動が規制された状態で保持されている。
図12に示されるように、雌ハウジング36の弾性変形部52の下方には、第3係止部48と弾性変形部52とが干渉することを回避するために逃げ凹部56が上方に凹んで形成されている。これにより、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して退避位置に組み付けられた状態で、第3係止部48と弾性変形部52とが干渉しないようになっている。
図4に示されるように、規制部62は弾性変形空間43の前方に退避した状態になっている。これにより雌ランス42は弾性変形空間43内に弾性変形可能になっている。
【0057】
図8から
図13に、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して係止位置に組み付けられた状態を示す。
図9及び
図11に示されるように、第2係止部46は第2係止受け部50の前壁に後方から当接している。これにより、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して前方へ抜け止めされた状態で保持されている。
図12に示されるように、第3係止部48は前第3係止受け部54の後壁に前方から当接している。これにより、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して後方への移動が規制された状態で保持されている。
図13に示されるように、規制部62は弾性変形空間43内に進入した状態になっている。これにより、雌ランス42が弾性変形することが妨げられるようになっている。
【0058】
図14から
図18に、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して完了位置に組み付けられた状態を示す。
図17及び
図18に示されるように、雌リテーナ25の前端面に、雄リテーナ15の当接部32が前方から当接している。これにより、雌リテーナ25が前方に移動することが規制されるようになっている。
図18に示されるように、第3係止部48は後第3係止受け部55の後壁に前方から当接している。これにより雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して後方への移動が規制された状態で保持されている。
【0059】
[識別子]
図3に示されるように、雌リテーナ25の左側壁65は、左方から右方に向かって斜め上方に傾斜して形成されている。雌リテーナ25の左側壁65は、雌リテーナ25の後端部から後方に延長されている。雌リテーナ25の左側壁65の後端部には、識別子57が形成されている。雌リテーナ25の左側壁65の左側面は、識別子57が設けられた配置面58とされる。識別子57としては、一次元コード、二次元コード、三次元コードのいずれを用いてもよいが、実施形態1では二次元コードが用いられている。また、実施形態1の識別子57は、配置面58にレーザ加工が施されることによって印字されているが、配置面58とは別に形成された板状のコードが配置面58に貼着される構成としてもよい
【0060】
識別子57には、「嵌合完了」や「ロットナンバー」などの情報が二次元コードとして記録されている。この識別子57をリーダー、カメラ等の所定の機械59を用いて読み取ることができ、読み取られた情報を記録装置に記録できる。例えば、雌コネクタ11と雄コネクタ12とを嵌合させた後、機械59が識別子57を検出して情報を読み取ることで雌コネクタ11と雄コネクタ12の嵌合が完了したことを記録装置に記録できるようになっている。本実施形態に係る機械59は、識別子57を読み取る際に、識別子57に対して自動的に焦点を合わせる自動焦点調節機能を有する。機械59は、手持ち式でもよく、また、取り付け式でもよい。
【0061】
[視認窓]
図10に示されるように、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して係止位置に組み付けられた状態で、雌ハウジング36の左側壁66には、雌リテーナ25の識別子57に対応する位置に、左右方向に貫通する視認窓60が形成されている。視認窓60は左方から見て長方形状をなしている。左方から見て、視認窓60からは、識別子57の全部、又は一部が露出している。これにより、視認窓60から識別子57の全部、又は一部を肉眼で視認することができるようになっている。
【0062】
図19に示されるように、雌ハウジング36の左側壁66の外面と、雌リテーナ25の配置面58とのなす角度αは、任意に設定可能であり、0°から45°の範囲が好ましい。本実施形態においては、角度αは30°に設定されている。
【0063】
雌ハウジング36の左側壁66には、視認窓60の上縁部、及び下縁部から左方に突出するリブ29(阻害部の一例)が形成されている。リブ29の前後方向の長さ寸法は、視認窓60の上縁部、及び下縁部の前後方向の長さ寸法と同じに設定されている。リブ29の前端縁は、雌ハウジング36の左側壁66の左側面から切り立って形成されている。リブ29の後端縁は、後方に向かって右方に緩やかに傾斜して形成されている。
【0064】
[検出窓]
図20に示されるように、雌ハウジング36の左側壁66には、視認窓60の後方の位置に、検出窓61が左方に開口して形成されている。検出窓61は左方から見て長方形状をなしている。検出窓61は、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して完了位置に組み付けられた状態で、雌リテーナ25の識別子57に対応する位置に形成されている。左方から見て、検出窓61からは、識別子57の全部が露出している。これにより、検出窓61から識別子57を機械59によって読み取ることができるようになっている。
【0065】
視認窓60と検出窓61とは、前後方向に連通していてもよいし、また、前後方向について間隔を空けて並んで形成されていてもよい。実施形態1においては、視認窓60と検出窓61とは前後方向に連通している。
【0066】
[コネクタ構成体の組み立て工程]
続いて、コネクタ構成体10の組み立て工程について説明する。なお、コネクタ構成体10の組み立て工程は以下の記載に限定されない。
【0067】
雄端子13が、雄ハウジング14の雄キャビティ20内に後方から挿入される。雄端子13が雄ランス21と当接することにより、雄ランス21が弾性変形空間30内に弾性変形する。さらに雄端子13が前方に押圧されると、雄ランス21が復帰変形することにより、雄ランス21の前端部が雄端子13に後方から当接する。これにより、雄端子13が雄ハウジング14内に後方に抜け止めされた状態で収容される。
【0068】
雄リテーナ15が前方から雄キャビティ20内に挿入される。雄リテーナ15の規制部31が雄ランス21の弾性変形空間30内に進入することにより、雄ランス21が弾性変形することが規制される。雄リテーナ15のロック部27が雄ハウジング14と弾性的に係合することにより、雄リテーナ15が雄ハウジング14に前方に抜け止めされた状態で組み付けられる(
図1参照)。
【0069】
雌リテーナ25が、雌ハウジング36のリテーナ収容部41内に前方から挿入される。雌リテーナ25の第1係止部45と雌ハウジング36の上壁64とが当接することにより雌ハウジング36の上壁64が第1係止部45の上に乗り上がるように変形する。さらに雌リテーナ25が後方に押圧されると、雌ハウジング36の上壁64が復帰変形し、第1係止部45が雌ハウジング36の第1係止受け部49内に進入する。第1係止部45の前端部が第1係止受け部49の前壁に後方から当接することにより、雌リテーナ25が前止まり状態で雌ハウジング36に保持される。また、第2係止部46の後端部が雌ハウジング36の上壁64の前端縁に前方から当接することにより、雌リテーナ25が後方に移動することが規制される。このようにして、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して退避位置に組み付けられる。
【0070】
雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して退避位置に組み付けられた状態では、雌リテーナ25の規制部62は雌ハウジング36の弾性変形空間43の前方に位置している。これにより雌ハウジング36の雌ランス42は弾性変形可能になっている。
【0071】
雌端子37が、雌ハウジング36の雌キャビティ40内に後方から挿入される。雌端子37が雌ランス42と当接することにより、雌ランス42が弾性変形空間30内に弾性変形する。さらに雌端子37が前方に押圧されると、雌ランス42が復帰変形することにより、雌ランス42の前端部が雌端子37に後方から当接する。これにより、雌端子37が雌ハウジング36内に後方に抜け止めされた状態で収容される(
図4参照)。
【0072】
雌リテーナ25が後方に押圧されることにより、第2係止部46の後端部が雌ハウジング36の上壁64の前端縁に前方から当接する。これにより、雌ハウジング36の上壁64が第2係止部46の上に乗り上がるように変形する。
【0073】
さらに雌リテーナ25が後方に押圧されると、雌ハウジング36の上壁64が復帰変形し、第2係止部46が雌ハウジング36の第2係止受け部50内に進入する。第2係止部46の前端部が第2係止受け部50の前壁に後方から当接することにより、雌リテーナ25が前止まり状態で雌ハウジング36に保持される。また、第3係止部48の後端部が、前第3係止受け部54の後壁に前方から当接することにより、雌リテーナ25が後方に移動することが規制された状態で雌ハウジング36に保持される。このようにして、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して係止位置に組み付けられる。
【0074】
雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して係止位置に組み付けられた状態では、雌リテーナ25の規制部62は雌ハウジング36の弾性変形空間43内に進入している。これにより雌ハウジング36の雌ランス42が弾性変形することが妨げられるようになっている。この結果、雌端子37は、雌ランス42と雌リテーナ25とにより二重係止される(
図13参照)。
【0075】
続いて、雄コネクタ12と雌コネクタ11とが向い合せになるように配置され、互いに接近するように嵌合される(
図1参照)。
【0076】
図21から
図24に示されるように、雄コネクタ12のフード部19内に雌コネクタ11の前端部が嵌入する。すると、
図23に示されるように、フード部19の下壁の前端縁が雌ハウジング36のロックアーム22のロック部23に前方から当接する。これによりロックアーム22が上方に弾性変形する。さらに雄コネクタ12が前方に押圧されると、ロックアーム22が復帰変形し、ロック部23が、雄コネクタ12のフード部19のロック受け部24内に進入する。これにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11とが抜け止め状態で保持されるようになっている(
図18参照)。
【0077】
図23に示されるように、雄コネクタ12のフード部19内に雌コネクタ11が嵌入すると、フード部19の押圧突起26が、雌ハウジング36の弾性変形部52の突起部53に、前方から当接する。すると、弾性変形部52が下方に弾性変形する。弾性変形部52が下方に弾性変形すると、弾性変形部52の下方に位置する雌リテーナ25のアーム部47が下方に弾性変形する。すると、アーム部47の第3係止部48が下方に移動し、第3係止部48と、前第3係止受け部54の後壁との係合が解除される。
【0078】
さらに雄コネクタ12が前方に押圧されると、雄リテーナ15の当接部32の前端部が、雌リテーナ25の前端部に当接する。これにより、雌リテーナ25は後方に移動する。
【0079】
さらに雄コネクタ12が前方に押圧されると、雌ハウジング36の弾性変形部52が復帰変形し、弾性変形部52の突起部53が、フード部19の押圧突起26の前方に位置するようになる。すると、弾性変形部52の下方に位置する雌リテーナ25のアーム部47も復帰変形し、アーム部47の第3係止部48が、後第3係止受け部55内に進入する。これにより、第3係止部48の後端部が、後第3係止受け部55の後壁に前方から当接し、雌リテーナ25が後方に移動することが規制されるようになっている。このようにして、雌リテーナ25は雌ハウジング36に対して完了位置に組み付けられる(
図18参照)。
【0080】
一方、雄コネクタ12のフード部19内に雌コネクタ11が嵌入すると、雄リテーナ15のアーム部33の前端部が雌リテーナ25の前端縁に当接する。すると、アーム部33が雌リテーナ25の上壁63に乗り上げるように弾性変形する。さらに雄コネクタ12が前方に押圧されると、アーム部33が復帰変形し、アーム部33の係止部34が、雌リテーナ25の係止凹部44内に進入する(
図24参照)。
【0081】
[コネクタ構成体の離脱工程]
続いて、雄コネクタ12と雌コネクタ11との離脱工程について説明する。ロックアーム22が上方に弾性変形されることにより、雌コネクタ11のロック部23と、雄コネクタ12のロック受け部24との係合が解除される。その後、雄コネクタ12と雌コネクタ11とが互いに離れるように、雄コネクタ12と雌コネクタ11とに引っ張り力が加えられる(
図23参照)。
【0082】
すると、雄リテーナ15のアーム部33の係止部34が、雌リテーナ25の係止凹部44の係止部34に後方から当接する。これにより、雌リテーナ25に対して前向きの力が加えられる(
図24参照)。
【0083】
雌リテーナ25が係止部34を介して雄リテーナ15により前方に引っ張られると、雌リテーナ25のアーム部47が、雌ハウジング36の上壁64の下に潜り込むように弾性変形する。これにより、雌リテーナ25の第3係止部48と、雌ハウジング36の後第3係止受け部55との係合が解除される(
図23参照)。
【0084】
さらに雌リテーナ25が前方に引っ張られると、
図25に示されるように、雌リテーナ25の第2係止部46の前端部が第2係止受け部50の前壁に後方から当接する。すると、雌リテーナ25の第2係止部46と雌ハウジング36の第2係止受け部50との間の保持力は、雄リテーナ15の係止部34と雌リテーナ25の係止受け部35との間の保持力よりも大きく設定されているので、雄リテーナ15の係止部34と雌リテーナ25の係止受け部35との係合が解除される。また、雌リテーナ25のアーム部47が復帰変形することにより、第3係止部48が前第3係止受け部54内に進入する。これにより、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して係止位置に移動して、係止位置に保持されるようになっている。
【0085】
さらに、雄コネクタ12と雌コネクタ11とが互いに離れるように、雄コネクタ12と雌コネクタ11とに引っ張り力が加えられることにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合が解除される(
図1参照)。
【0086】
[識別子の視認]
図10に示されるように、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して係止位置に組み付けられている状態においては、識別子57が視認窓60を通じて外部に露出しているため、作業者が視認窓60を通じて識別子57を視認できるようになっている。このため、作業者は、雌ハウジング36における識別子57の位置を概略的に認識することができる。
【0087】
一方、視認窓60を通して機械59によって識別子57を検出することはできないようになっている。これは、
図19に示されるように、視認窓60の上縁部、及び下縁部にはリブ29が形成されているので、矢線Aで示される方向から機械59によって識別子57を検出しようとしても、機械59との距離が近いリブ29の先端部に焦点が合ってしまうためである。換言すると、矢線Aで示される方向から機械59によって識別子57を検出しようとしても、識別子57に焦点が合わないようになっている。
【0088】
[識別子の検出]
図16に示されるように、雌リテーナ25が雌ハウジング36に対して完了位置に組み付けられている状態においては、識別子57が検出窓61を通して外部に露出している。
図20に示されるように、検出窓61には、視認窓60と異なってリブ29が設けられていないので、機械59の自動焦点調節機構により識別子57に焦点が合った状態で、機械59が識別子57を検出できるようになっている。
【0089】
識別子57は、矢線Bで示される方向から検出可能となっている。
図20に示されるように、雌ハウジング36の左側壁66の外面に対して配置面58は傾いている。雌ハウジング36の左側壁66の外面と配置面58とのなす角度βは任意に設定可能であり、0°から45°の範囲が好ましい。本実施形態においては、角度βは30°に設定されている。
【0090】
配置面58が雌ハウジング36の左側壁66に対して傾いていることにより、識別子57の下端部と機械59との間隔は、識別子57の上端部と機械59との間隔よりも小さくなっている。識別子57の下端部と、識別子57の上端部との間の、左右方向についての間隔は、機械59の被写界深度の範囲内に入るようになっている。これにより、機械59によって識別子57を検出する際に、識別子57の全体に焦点を合わせることができるようになっている。
【0091】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、雌リテーナ25は、規制部62が弾性変形空間43から退避した退避位置と、雌ランス42が雌端子37と係止した状態で規制部62が弾性変形空間43内に進入した係止位置と、の間を移動可能になっており、さらに雌リテーナ25は、雄コネクタ12と雌ハウジング36との嵌合に伴い、係止位置と、雌ハウジング36と雄コネクタ12との嵌合が完了したことを示す完了位置との間を移動するようになっている。雌リテーナ25が、係止位置から完了位置まで移動したことを確認することにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合が完了したことを確認できる。これにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合動作の後に、嵌合保証部材を別途移動させる操作が不要となるので、雌コネクタ11の組み立て作業の効率を向上させることができる。
【0092】
雌リテーナ25の少なくとも一部が検出窓61から露出したことを確認することにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合が完了したことを確認できる。
【0093】
識別子57が検出窓61から露出したことを機械59によって検出することにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合が完了したことを確認できる。
【0094】
配置面58が、雌ハウジング36の壁部に対して傾いていることにより、機械59によって検出窓61を通して識別子57を検出する際に、機械59と、識別子57との焦点距離を、配置面58内において部分的に異ならせることができる。
【0095】
リブ29により、視認窓60からは、機械59によって識別子57を検出することはできないようになっているので、雌リテーナ25が係止位置に移動した状態において、識別子57が機械59によって検出されない。これにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11とが正規に嵌合していない状態で、誤って識別子57が機械59により検出されてしまうことが抑制される。
【0096】
一方、視認窓60からは識別子57を視認できるので、識別子57の位置を予め把握することができる。したがって、完了位置において識別子57を確実に見つけることができる。
【0097】
リブ29という簡易な構成により、視認窓60から機械59によって識別子57を検出できないようにすることができる。
【0098】
雄コネクタ12と雌コネクタ11とを嵌合することにより、雌リテーナ25を係止位置から完了位置に移動させることができる。これにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11との嵌合動作の後に、嵌合保証部材を別途移動させる操作が不要となるので、作業効率を向上させることができる。
【0099】
雄コネクタ12と雌コネクタ11とを離脱させる操作を行うことにより、雌リテーナ25を完了位置から係止位置にまで移動させることができる。これにより、雄コネクタ12と雌コネクタ11とを離脱させた後に、雌リテーナ25を完了位置から係止位置にまで移動させる操作が不要となる。
【0100】
<他の実施形態>
(1)雌コネクタ11に取り付けられた雌リテーナ25に識別子57を設ける構成としたが、これに限られず、雄コネクタ12に取り付けられた雄リテーナ15に識別子57を設ける構成としてもよい。また、雌リテーナ25、及び雄リテーナ15の双方に識別子57を設ける構成としてもよい。
【0101】
(2)雄コネクタ12は、当接部32を有する雄リテーナ15を有する構成としたが、これに限られず、雄ハウジング14に当接部32が設けられており、雄リテーナ15が省略される構成としてもよい。
【0102】
(3)検出窓61は省略してもよい。
【0103】
(4)識別子57は省略してもよい。
【0104】
(5)
図26、及び
図27に示されるように、識別子57が設けられた配置面58は、雌ハウジング36の左側壁66の左側面に対して平行に設けられてもよい。
【0105】
(6)視認窓60は省略してもよい。
【0106】
(7)阻害部はリブ29に限られず、円柱、三角柱、四角柱等の柱状でもよい。円錐、三角錐、四角錐等の錐体でもよく、任意の形状を採用し得る。
【0107】
(8)雄コネクタ12に取り付けられた雄リテーナ15の係止部34は省略してもよい。また、係止部34は雄ハウジング14に設けられる構成としてもよい。
【0108】
(9)機械59の自動焦点調節機構は省略してもよい。
【符号の説明】
【0109】
10: コネクタ構成体
11: 雌コネクタ
12: 雄コネクタ
13: 雄端子
14: 雄ハウジング
15: 雄リテーナ
16: タブ
17: 電線接続部
18: 電線
19: フード部
20: 雄キャビティ
21: 雄ランス
22: ロックアーム
23: ロック部
24: ロック受け部
25: 雌リテーナ
26: 押圧突起
27: ロック部
28: 凹部
29: リブ
30: 弾性変形空間
31: 雄リテーナの規制部
32: 当接部
33: 雄リテーナのアーム部
34: 係止部
35: 係止受け部
36: 雌ハウジング
37: 雌端子
38: 接続筒部
39: 電線接続部
40: 雌キャビティ
41: リテーナ収容部
42: 雌ランス
43: 弾性変形空間
44: 係止凹部
45: 第1係止部
46: 第2係止部
47: 雌リテーナのアーム部
48: 第3係止部
49: 第1係止受け部
50: 第2係止受け部
51: スリット
52: 弾性変形部
53: 突起部
54: 前第3係止受け部
55: 後第3係止受け部
56: 逃げ凹部
57: 識別子
58: 配置面
59: 機械
60: 視認窓
61: 検出窓
62: 雌リテーナの規制部
63: 雌リテーナの上壁
64: 雌ハウジングの上壁
65: 雌リテーナの左側壁
66: 雌ハウジングの左側壁