(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018064
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240201BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121128
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】加藤 立奨
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770AA22
5H770AA24
5H770BA02
5H770KA05X
5H770QA01
5H770QA04
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA22
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】インダクタンスを低減することができ、パワー半導体素子のスイッチング動作時のリンギングを抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】絶縁回路基板1と、絶縁回路基板1の一方の主面に設けられた半導体チップ3a~3lと、主面を有し、その主面から立ち上がる第1スナバ接続部を有し、半導体チップ3a~3lに電気的に接続した第1外部端子81と、第1外部端子81と隣接して配置され、第1外部端子81の主面と同じ方向の主面を有し、その主面から立ち上がる第2スナバ接続部を有し、半導体チップ3a~3lに電気的に接続した第2外部端子82と、第1スナバ接続部に一端が接続され、第2スナバ接続部に他端が接続されたコンデンサ4a,4bと、半導体チップ3a~3lを封止する封止部材9と、半導体チップ3a~3lを内側に収容し、第1外部端子81及び第2外部端子82が取り付けられたケース7を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁回路基板と、
前記絶縁回路基板の一方の主面に設けられた半導体チップと、
主面を有し、該主面から立ち上がる第1スナバ接続部を有し、前記半導体チップに電気的に接続した第1外部端子と、
前記第1外部端子と隣接して配置され、前記第1外部端子の前記主面と同じ方向の主面を有し、該主面から立ち上がる第2スナバ接続部を有し、前記半導体チップに電気的に接続した第2外部端子と、
前記第1スナバ接続部に一端が接続され、前記第2スナバ接続部に他端が接続されたコンデンサと、
前記半導体チップを封止する封止部材と、
前記半導体チップを内側に収容し、前記第1外部端子及び前記第2外部端子が取り付けられたケースと、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部が、前記第1外部端子の前記主面と直交する方向に延伸し、
前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部の互いに離間する距離が、前記第1外部端子及び前記第2外部端子の互いに離間する距離よりも大きい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部が、前記第1外部端子の前記主面と直交する方向に対して斜め方向に延伸し、
前記第1外部端子の前記主面から離れるほど、前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部の互いに離間する距離が大きくなる
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部の高さが互いに同一である
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1外部端子及び前記第2外部端子の水平レベルが互いに異なり、
前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部の高さが互いに異なる
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記コンデンサが、前記封止部材の内部に設けられている
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップを駆動する駆動回路基板を更に備え、
前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部の一部が前記封止部材から露出し、前記駆動回路基板を貫通し、
前記コンデンサが前記駆動回路基板を介して前記第1スナバ接続部及び前記第2スナバ接続部に接続されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップが第1主電極及び第2主電極を有し、
前記絶縁回路基板が、前記第2主電極と電気的に接続された第1導電板と、前記第1主電極と電気的に接続された第2導電板を一方の主面に配置した絶縁板を有し、
前記第1外部端子が、前記第1導電板に電気的に接続され
前記第2外部端子が、前記第2導電板に電気的に接続されている
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1外部端子と前記第2外部端子の間に配置された絶縁シートを更に備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体素子を搭載する半導体装置(パワー半導体モジュール)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な脱炭素の動向から電気自動車や電鉄車両等の電動車両が注目されている。電動車両には、インバータやコンバータ等の電力変換装置による効率的なモータ制御が求められ、その電力変換装置には一般的にパワー半導体モジュールが用いられている。パワー半導体モジュールは、直流電力を交流電力に変換或いはその逆に変換するものである。パワー半導体モジュールには、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)及びダイオード等のパワー半導体素子(スイッチング素子)が複数搭載されており、これらのパワー半導体素子をオン、オフのスイッチングすることで電力変換を行う。
【0003】
従来のパワー半導体モジュールにおいて、パワー半導体素子のスイッチング動作時に発生するリンギングを低減するために、正極端子及び負極端子の間にコンデンサ(スナバコンデンサ)を接続することが知られている。
【0004】
特許文献1の
図10には、入力端子間に接続されたコンデンサが開示されている。特許文献2の
図3には、配線層の間に薄膜状スナバコンデンサを配置することが開示されている。特許文献3の
図5には、端子にスナバ回路を収容しているアタッチメントを配置することが開示されている。特許文献4の
図15には、スナバ回路が開示されている。特許文献5の
図25には、入力端子にコンデンサを接続することが開示されている。
【0005】
特許文献6には、絶縁基板上のスナバ用回路導体パターン間にスナバ回路を形成することが開示されている。特許文献7及び特許文献8には、正極ラインと負極ラインとの間にスナバ回路を備えることが開示されている。特許文献9には、絶縁回路基板上の金属板間にスナバ回路を配置した半導体モジュールが開示されている。特許文献10には、モジュール内にコンデンサを封止することが開示されている。
【0006】
特許文献11には、コンデンサが開示されている。特許文献12及び特許文献13には、パワー半導体モジュールの上方に配置したプリント配線板にスナバ回路を有することが開示されている。特許文献14には、第1パワー端子、第1絶縁シート及び第2パワー端子が順に重なっている端子積層部を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-4929号公報
【特許文献2】特開2019-186983号公報
【特許文献3】特開2018-196267号公報
【特許文献4】国際公開第2016/067835号
【特許文献5】国際公開第2020/045263号
【特許文献6】国際公開第2018/194153号
【特許文献7】国際公開第2019/163205号
【特許文献8】国際公開第2018/143429号
【特許文献9】特開2021-77764号公報
【特許文献10】特開2010-74935号公報
【特許文献11】国際公開第2021/200166号
【特許文献12】特開平7-122708号公報
【特許文献13】特開平8-32021号公報
【特許文献14】特開2021-106235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のパワー半導体モジュールにおいて、パワー半導体素子を内側に収容したケースの外側で、正極端子及び負極端子にバスバーを介してレーザ溶接やボルト締結等によりコンデンサを接合している。このため、正極端子及び負極端子とコンデンサの間の配線長が長くなり、インダクタンスが増大するという課題がある。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、インダクタンスを低減することができ、パワー半導体素子のスイッチング動作時のリンギングを抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、(a)絶縁回路基板と、(b)絶縁回路基板の一方の主面に設けられた半導体チップと、(c)主面を有し、その主面から立ち上がる第1スナバ接続部を有し、半導体チップに電気的に接続した第1外部端子と、(d)第1外部端子と隣接して配置され、第1外部端子の主面と同じ方向の主面を有し、その主面から立ち上がる第2スナバ接続部を有し、半導体チップに電気的に接続した第2外部端子と、(e)第1スナバ接続部に一端が接続され、第2スナバ接続部に他端が接続されたコンデンサと、(f)半導体チップを封止する封止部材と、(g)半導体チップを内側に収容し、第1外部端子及び第2外部端子が取り付けられたケースを備える半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インダクタンスを低減することができ、パワー半導体素子のスイッチング動作時のリンギングを抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置の正極端子の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体装置の負極端子の平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る半導体装置の正極端子及び負極端子を重ねた平面図である。
【
図7】第1実施形態に係る半導体装置の一部の側面図である。
【
図8】第1実施形態に係る半導体装置の回路図である。
【
図9】端子高さとインダクタンスの関係を示すグラフである。
【
図10】第2実施形態に係る半導体装置の一部の側面図である。
【
図11】第3実施形態に係る半導体装置の一部の側面図である。
【
図12】第4実施形態に係る半導体装置の
図1のA-A方向から見た断面に対応する断面図である。
【
図13】第4実施形態に係る半導体装置の
図1のB-B方向から見た断面に対応する断面図である。
【
図14】第4実施形態に係る半導体装置の一部の側面図である。
【
図15】第5実施形態に係る半導体装置の一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、図面を参照して本発明の第1~第5実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
また、以下の説明における「上」、「下」、「上下」、「左」、「右」、「左右」等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば「上下」は「左右」に変換して読まれ、180°回転して観察すれば「上下」は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」及び「下面」をそれぞれ「おもて面」及び「裏面」と読み替えてもよい。
【0015】
また、本明細書において、「第1外部端子」は、パワー半導体モジュールの正極端子及び負極端子のいずれか一方を意味し、「第2外部端子」は、パワー半導体モジュールの正極端子及び負極端子の「第1外部端子」とは異なる他方を意味する。即ち、「第1外部端子」がパワー半導体モジュールの正極端子であれば、「第2外部端子」はパワー半導体モジュールの負極端子となり、「第1外部端子」がパワー半導体モジュールの負極端子であれば、「第2外部端子」はパワー半導体モジュールの正極端子となる。また、各部材の「第1主面」及び「第2主面」は互いに対向する主面であり、例えば「第1主面」が上面であれば、「第2主面」は下面である。
【0016】
(第1実施形態)
<半導体装置の構造>
第1実施形態に係る半導体装置(パワー半導体モジュール)は、
図1に示すように、絶縁回路基板1と、絶縁回路基板1上に搭載されたパワー半導体素子(半導体チップ)3a~3lと、絶縁回路基板1及び半導体チップ3a~3lを内側に収容するケース7を備える。
図1では、ケース7の内側に配置され、半導体チップ3a~3l等を封止する封止部材の図示を省略している。また、
図1では、半導体チップ3a~3l等に接続されるボンディングワイヤの接続点を黒い丸で模式的に示している。
【0017】
図1に示す平面視において、第1実施形態に係る半導体装置の長手方向をX軸と定義し、
図1の右方向をX軸の正方向と定義する。また、X軸に直交する実施形態に係る半導体装置の短手方向をY軸と定義し、
図1の上方向をY軸の正方向と定義する。また、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸と定義し、
図1の手前側をZ軸の正方向と定義する。
図2以降も同様とする。
【0018】
図1では、半導体チップ3a~3lとして、6並列のMOSFETを2対直列に接続した2イン1型のパワー半導体モジュールを例示している。半導体チップ3a~3fが3相のインバータ回路の1相分の上アームを構成し、半導体チップ3g~3lが下アームを構成する。なお、第1実施形態に係る半導体装置は、正極端子81及び負極端子82を有するパワー半導体モジュールであればよく、2イン1型の半導体モジュールに限定されず、例えば1イン1型や6イン1型の半導体モジュールであってもよい。
【0019】
半導体チップ3a~3lは、半導体基板と、半導体基板の下面側に設けられた第1主電極(ドレイン電極)と、半導体基板の上面側に設けられた第2主電極(ソース電極)及び制御電極(ゲート電極)を有する。半導体基板は、例えばシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)等で構成されている。半導体チップ3a~3lの配置位置や数は特に限定されない。半導体チップ3a~3lは、MOSFET等の電界効果トランジスタ(FET)の他にも、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、静電誘導(SI)サイリスタ又はゲートターンオフ(GTO)サイリスタ等であってもよい。
【0020】
絶縁回路基板1は、例えば直接銅接合(DCB)基板又は活性ろう付け(AMD)基板等で構成されている。絶縁回路基板1は、絶縁板10と、絶縁板10の上面に配置された導電板(導体箔)11a~11jと、絶縁板10の下面に配置された放熱板(導体箔)12とを備える(放熱板12は
図5及び
図6参照)。絶縁板10は、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si
3N
4)、窒化ホウ素(BN)等を主剤としたセラミクス板や、高分子材料等を用いた樹脂絶縁層を使用可能である。絶縁板10として樹脂絶縁層を用いる場合には、絶縁板10の下面側の放熱板12は無くてもよい。導電板11a~11j及び放熱板12は、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等で構成されている。導電板11a~11jは任意のパターンで形成されており、回路パターンを構成している。
【0021】
図1に示すように、半導体チップ3a~3fは、絶縁回路基板1の導電板11b上に、はんだ又は焼結材等の接合材を介して接合されている。半導体チップ3g~3lは、絶縁回路基板1の導電板11h上に、はんだ又は焼結材等の接合材を介して接合されている。
【0022】
半導体チップ3a~3f及び絶縁回路基板1の周囲を囲むように略矩形形状の外形を有するケース7が配置されている。ケース7の材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、エポキシ、フェノール等の樹脂材料が使用可能である。
【0023】
ケース7には、制御端子7a~7iが設けられている。制御端子7cは、ボンディングワイヤを介して導電板11fに接続されている。導電板11fは、ボンディングワイヤを介して半導体チップ3a~3fのそれぞれのソース電極に電気的に接続されている。制御端子7cは、半導体チップ3a~3fのソース電極に流れる電流を検出する。
【0024】
制御端子7dは、ボンディングワイヤを介して導電板11gに接続されている。導電板11gは、ボンディングワイヤを介して半導体チップ3a~3fのそれぞれのゲート電極に電気的に接続されている。制御端子7dは、半導体チップ3a~3fのそれぞれのゲート電極に制御信号を印加する。
【0025】
制御端子7gは、ボンディングワイヤを介して導電板11iに接続されている。導電板11iは、ボンディングワイヤを介して半導体チップ3g~3lのそれぞれのソース電極に接続されている。制御端子7gは、半導体チップ3g~3lのソース電極に流れる電流を検出する。
【0026】
制御端子7hは、ボンディングワイヤを介して導電板11jに接続されている。導電板11jは、ボンディングワイヤを介して半導体チップ3g~3lのそれぞれのゲート電極に電気的に接続されている。制御端子7hを介して、半導体チップ3g~3lのそれぞれのゲート電極に制御信号を印加する。
【0027】
ケース7の長手方向の一端側には、板状の外部端子(出力端子)80が設けられている。また、ケース7の長手方向の他端側には、出力端子80と対向するように板状の外部端子(正極端子)81及び外部端子(負極端子)82が設けられている。出力端子80、正極端子81及び負極端子82の材料としては、銅(Cu)、Cu合金、アルミニウム(Al)又はAl合金等が使用可能である。出力端子80は、導電板11bに接続されている。導電板11bは、半導体チップ3a~3fのそれぞれのドレイン電極に電気的に接続されている。また、導電板11bは、リードフレーム6g~6lを介して半導体チップ3g~3lのそれぞれのソース電極に電気的に接続されている。
【0028】
正極端子81及び負極端子82は、互いに異なる電位の端子として用いられている。正極端子81は、導電板11hに電気的に接続されている。導電板11hは、半導体チップ3e~3hのそれぞれのドレイン電極に電気的に接続されている。負極端子82は、導電板11a,11eに電気的に接続されている。導電板11aは、リードフレーム6a~6cを介して半導体チップ3a~3cのそれぞれのソース電極に電気的に接続されている。導電板11eは、リードフレーム6d~6fを介して半導体チップ3d~3fのそれぞれのソース電極に電気的に接続されている。
【0029】
図2は、正極端子81の平面パターンを示す。
図2に示すように、正極端子81は、平面パターン上、互いに離間して平行に延伸する突出部81a,81bと、突出部81a,81bに接続された本体部81cを有する。
【0030】
突出部81aの延伸方向に直交する方向(短手方向)の突出部81bに対向する側とは反対側の側面には、突出部81aの主面から立ち上がるようにスナバ接続部(コンデンサ接続用端子)81xが設けられている。スナバ接続部81xは、例えば、突出部81aと一体的に形成されており、突出部81aに切り込みを入れて上面側に折り曲げることにより形成可能である。
【0031】
突出部81bの延伸方向に直交する方向(短手方向)の突出部81aに対向する側とは反対側の側面には、突出部81bの主面から立ち上がるようにスナバ接続部81yが設けられている。スナバ接続部81yは、例えば、突出部81bと一体的に形成されており、突出部81bに切り込みを入れて上面側に折り曲げることにより形成可能である。
【0032】
図3は、負極端子82の平面パターンを示す。
図3に示すように、負極端子82は、平面パターン上、互いに離間して平行に延伸する突出部82a,82bと、突出部82a,82bに接続された本体部82cを有する。負極端子82の突出部82a,82bには、N字状又はZ字状に折れ曲がる段差部82m,82nが設けられている。段差部82m,82nにより、突出部82a,82bの水平レベルは、突出部81a,81bの水平レベルと一致する。「水平レベル」とは、絶縁回路基板1の上面から、絶縁回路基板1の上面に対して垂直方向(法線方向)の距離と定義できる。
【0033】
突出部82aの延伸方向に直交する方向(短手方向)の突出部82bに対向する側の側面には、突出部82aの主面から立ち上がるようにスナバ接続部82xが設けられている。スナバ接続部82xは、例えば、突出部82aと一体的に形成されており、突出部82aに基地込みを入れて上面側に折り曲げることにより形成可能である。
【0034】
突出部82bの延伸方向に直交する方向(短手方向)の突出部82aに対向する側の側面には、突出部82bの主面から立ち上がるようにスナバ接続部82yが設けられている。スナバ接続部82yは、例えば、突出部82bと一体的に形成されており、突出部82bに切り込みを入れて上面側に折り曲げることにより形成可能である。
【0035】
図4は、正極端子81及び負極端子82を重ね合わせた平面パターンを示し、更に、正極端子81及び負極端子82の間に配置される絶縁シート83を一点鎖線で模式的に示している。
図4に示すように、絶縁シート83の外縁(端部)は、正極端子81及び負極端子82の外縁(端部)よりも大きい寸法を有しており、正極端子81と負極端子82との必要な絶縁沿面距離を確保する。
【0036】
図4に示すように、正極端子81の突出部81aと負極端子82の突出部82aは、互いに隣接して配置され、互いに同じ方向の主面を有し、互いに平行に延伸する。突出部81aのスナバ接続部81xは、突出部82aのスナバ接続部82xと対向する。突出部81aのスナバ接続部81xが設けられていない部分と、突出部82aのスナバ接続部82xが設けられていない部分とは、距離D1で互いに離間している。突出部81aのスナバ接続部81xと、突出部82aのスナバ接続部82xとは、距離D1よりも大きい距離D2で互いに離間している。
【0037】
正極端子81の突出部81bと負極端子82の突出部82bは、互いに隣接して配置され、互いに同じ方向の主面を有し、互いに平行に延伸する。突出部81bのスナバ接続部81yは、突出部82bのスナバ接続部82yと対向する。突出部81bのスナバ接続部81yが設けられていない部分と、突出部82bのスナバ接続部82yが設けられていない部分とは、距離D3で互いに離間している。突出部81bのスナバ接続部81yと、突出部82bのスナバ接続部82yとは、距離D3よりも大きい距離D4で互いに離間している。距離D1及び距離D3は互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。距離D2及び距離D4は互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。
【0038】
図1に示すように、正極端子81の突出部81a,81bは、ケース7の内側において絶縁シート83の端部よりも内側に突出して延伸し、導電板11hに電気的に接続される。負極端子82の突出部82a,82bは、ケース7の内側において絶縁シート83の端部よりも内側に突出して延伸し、導電板11eに電気的に接続される。
【0039】
突出部81a上にはコンデンサ4aの一端が接続され、突出部82a上にはコンデンサ4aの他端が接続されている。突出部81b上にはコンデンサ4bの一端が接続され、突出部82b上にはコンデンサ4bの他端が接続されている。コンデンサ4a,4bは、半導体チップ3a~3lのスイッチング動作時に発生するリンギングノイズを低減するスナバ回路として機能する。コンデンサ4a,4bとしては、例えばマイカコンデンサや、立方体型のセラミックコンデンサを採用可能である。
【0040】
図1の正極端子81の突出部81a及びコンデンサ4aを通過するA-A方向から見た断面を
図5に示す。
図5に示すように、ケース7の内側の絶縁回路基板1及び半導体チップ3a~3l等は、封止部材9により封止されている。封止部材9は、熱硬化型のシリコーンゲルやエポキシ系樹脂等の絶縁性の封止樹脂が使用可能である。絶縁回路基板1の下面側には、冷却体(ベース)2が配置されている。冷却体2の材料としては、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、Alと炭化珪素の複合材料(AlSiC)、マグネシウム(Mg)と炭化珪素の複合材料(MgSiC)等の熱伝導が大きい材料が使用可能である。
【0041】
図5に示すように、正極端子81の上面と負極端子82の下面との間には、絶縁シート83が配置されている。即ち、正極端子81及び負極端子82は、パワー半導体モジュールの内部から外部へ、絶縁シート83を介して積層されたラミネート配線構造を構成している。正極端子81の本体部81cの少なくとも一部と、負極端子82の本体部82cの少なくとも一部が、絶縁シート83を介して互いに対向する。正極端子81と負極端子82の対向する距離は絶縁シート83の厚みで一定である。正極端子81及び負極端子82には、逆方向に電流が流れるため、配線の寄生インダクタンスを低減することができる。
【0042】
絶縁シート83としては、絶縁紙やポリイミド又はポリアミド等の絶縁性及び耐熱性の高いシートが使用可能である。絶縁シート83の厚みは、パワー半導体モジュールの定格電圧に依存するが、定格電圧が1200Vの場合、0.1mm以上、1.0mm以下とする。より好ましくは、0.2mm以上、0.6mm以下とすることで、正極端子81と負極端子82の配線インダクタンスを大幅に低減することができる。
【0043】
正極端子81の突出部81aは、高さ調整のための銅(Cu)材等の導電ブロック(スペーサ)5aにレーザ溶接等により接合されている。正極端子81の突出部81aは、スペーサ5aを介して、導電板11hに電気的に接続されている。なお、正極端子81の突出部81aが段差部を有して折れ曲がる場合には、突出部81aがスペーサを介さずに、超音波接合又はレーザ溶接等により、導電板11hに直接接合していてもよい。
【0044】
突出部81aには、突出部81aの上面に対して垂直方向に延伸するようにスナバ接続部81xが設けられている。スナバ接続部81xは、スペーサ5aの直上に設けられているが、スペーサ5aの直上よりもケース7側に設けられていてもよい。スナバ接続部81xは、突出部81aの絶縁回路基板1側の端部に設けられていてもよい。スナバ接続部81xの上端には、コンデンサ4aの一方の端子41がはんだ又は焼結材等の接合材を介して接合されている。
【0045】
図1の負極端子82の突出部82a及びコンデンサ4aを通過するB-B方向から見た断面を
図6に示す。
図6に示すように、負極端子82の突出部82aには段差部82mが設けられており、負極端子82の突出部82aの水平レベルは、
図5に示した正極端子81の突出部81aの水平レベルと略一致している。
【0046】
負極端子82の突出部82aは、高さ調整のための銅(Cu)材等の導電ブロック(スペーサ)5bにレーザ溶接等により接合されている。負極端子82の突出部82aは、スペーサ5bを介して、導電板11eに電気的に接続されている。スペーサ5bの高さは、
図5に示した正極端子81の突出部81aに接続されるスペーサ5aの高さと等しい。
【0047】
なお、負極端子82の突出部82aに段差部82mが設けられず、負極端子82の突出部82aの水平レベルが、
図5に示した正極端子81の突出部81aの水平レベルよりも高くてもよい。その場合、負極端子82の突出部82aに接続されるスペーサ5bの高さは、
図5に示した正極端子81の突出部81aに接続されるスペーサ5aの高さよりも高くてもよい。
【0048】
また、負極端子82の突出部82aが段差部82mよりも大きな段差部を有して折れ曲がる場合には、負極端子82の突出部82aがスペーサを介さずに、超音波接合又はレーザ溶接等により、導電板11eに直接接合していてもよい。
【0049】
突出部82aには、突出部82aの上面に対して垂直方向に延伸するようにスナバ接続部82xが設けられている。スナバ接続部82xは、スペーサ5bの直上に設けられているが、スペーサ5bの直上よりもケース7側に設けられていてもよい。スナバ接続部82xは、突出部82aの絶縁回路基板1側の端部に設けられていてもよい。スナバ接続部82xの上端には、コンデンサ4aの他方の端子42がはんだ又は焼結材等の接合材を介して接合されている。
【0050】
図7は、第1実施形態に係る半導体装置の構成要素である正極端子81の突出部81a、負極端子82の突出部82a、及びコンデンサ4aを抜き出して、Z軸の負方向に見た側面図である。
図7に示すように、正極端子81の突出部81aと負極端子82の突出部82aは、距離D1で互いに離間する。突出部81aのスナバ接続部81xと突出部82aのスナバ接続部82xは、互いに平行に延伸し、距離D1よりも広い距離D2で互いに離間する。スナバ接続部81xは、突出部81aの上面に対して垂直方向に延伸し、高さH1を有する。スナバ接続部82xは、突出部82aの上面に対して垂直方向に延伸し、高さH2を有する。高さH1,H2は互いに同一であり、適宜調整可能である。
【0051】
なお、
図1に示した正極端子81の突出部81b、負極端子82の突出部82b、及びコンデンサ4bは、
図7に示した正極端子81の突出部81a、負極端子82の突出部82a、及びコンデンサ4aの構造と同様である。
【0052】
第1実施形態に係る半導体装置の等価回路を
図8に示す。
図8に示すように、第1実施形態に係る半導体装置は、3相ブリッジ回路の一部を構成する。正極端子Pに、上アーム側のトランジスタT1のドレイン電極が接続され、負極端子Nに、下アーム側のトランジスタT2のソース電極が接続されている。トランジスタT1のソース電極及びトランジスタT2のドレイン電極が出力端子U及び補助ソース端子S1に接続されている。トランジスタT2のソース電極には、補助ソース端子S2が接続されている。
【0053】
トランジスタT1,T2のゲート電極にはゲート制御端子G1,G2が接続されている。トランジスタT1,T2には、還流ダイオード(FWD)となるボディーダイオードD11,D12が逆並列に接続して内蔵されている。正極端子Pと負極端子Nの間には、コンデンサC1,C2が並列に接続されている。
【0054】
図8に示した出力端子U、正極端子P及び負極端子Nが、
図1に示した出力端子80、正極端子81及び負極端子82に対応する。
図8に示したトランジスタT1及びボディーダイオードD11が、
図1に示した半導体チップ3a~3fに対応する。
図8に示したトランジスタT2及びボディーダイオードD12が、
図1に示した半導体チップ3g~3lに対応する。
図8に示したゲート制御端子G1,G2が、
図1に示した制御端子7d,7hに対応し、
図8に示した補助ソース端子S1,S2が、
図1に示した制御端子7c,7gに対応する。
【0055】
図8に示したコンデンサC1は、
図1では図示を省略するが、ケース7の外側において、正極端子81及び負極端子82にボルト締結又はレーザ溶接等により接合されるコンデンサに対応する。
図8に示したコンデンサC2は、
図1に示したコンデンサ4a,4bに対応する。
図8に示すように、第1実施形態に係る半導体装置では、コンデンサC2を追加することにより、コンデンサC1とトランジスタT1,T2の経路(ループ)よりもコンデンサC2とトランジスタT1,T2の経路(ループ)が小さくなり、配線長が短くなるため、インダクタンスを低減することができる。
【0056】
第1実施形態に係る半導体装置によれば、ケース7の内側において、正極端子81及び負極端子82の間に接続されるコンデンサ4a,4bを設けることにより、コンデンサ4a,4bを絶縁回路基板1の近傍に配置することができるので、インダクタンスを低減することができ、半導体チップ3a~3lのスイッチング動作時に発生するリンギングを抑制することができる。更に、コンデンサ4a,4bが絶縁回路基板1の上方に配置されるため、絶縁回路基板1の上面に配置する場合と比較して、絶縁回路基板1の面積を削減することができる。
【0057】
更に、正極端子81の突出部81aと、負極端子82の突出部82aの距離D1とは個別に、突出部81aのスナバ接続部81xと、突出部82aのスナバ接続部82xとの距離D2を調整することができるため、コンデンサ4aの長さ及び正極端子81の突出部81a及び負極端子82の突出部82aの配置と、コンデンサ4aの配置の自由度を向上させることができる。
【0058】
図9は、スナバ接続部81x,81y,82x,82yの高さ(端子高さ)とインダクタンスの関係を示す。
図9に示すように、スナバ接続部81x,81y,82x,82yの高さが低いほど、インダクタンスを低減することができる。
【0059】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図1~
図8を参照して、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。
図5及び
図6に示した絶縁回路基板1の放熱板12を、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて冷却体2に接合する。また、
図1に示した絶縁回路基板1の導電板11b,11hに、半導体チップ3a~3lの下面側のドレイン電極を、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。
【0060】
次に、半導体チップ3a~3lの上面側のソース電極と導電板11a,11b,11eとを、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等のリードフレーム6a~6lを用いて、はんだ又は焼結材等の接合材で電気的に接続する。この電気的な接続は、ワイヤやリボン等の超音波ボンディング等を用いてもよい。半導体チップ3a~3lの上面側のゲート電極は、電流容量が小さいため、アルミニウム(Al)等のワイヤボンディングにより、導電板11g,11jと電気的に接続する。
【0061】
次に、絶縁シート83を用意し、金型等を用いて、絶縁シート83を正極端子81及び負極端子82の形状に対応した形状に形成する。正極端子81及び負極端子82は、銅(Cu)板等から金型により打ち抜き形成する。この際、正極端子81の突出部81a,81bのスナバ接続部81x,81yと、負極端子82の突出部82a,82bのスナバ接続部82x,82yも形成する。
【0062】
次に、絶縁シート83を、正極端子81及び負極端子82で挟んで積層し、成形金型に取付け、同時に、出力端子80及び制御端子7a~7iを成形金型に取付ける。そして、樹脂材料を用いて、正極端子81、負極端子82、出力端子80及び制御端子7a~7iがインサートされたケース7を成形し、正極端子81、負極端子82、出力端子80及び制御端子7a~7iをケース7と一体化する。
【0063】
次に、正極端子81、負極端子82及び出力端子80等をインサート成形したケース7と冷却体2を、絶縁回路基板1及び半導体チップ3a~3lを囲むように接着する。正極端子81、負極端子82及び出力端子80は、導電板11a,11b,11e,11hに、スペーサ5a,5b等を介して接合する。例えば、スペーサ5a,5b等と導電板11a,11b,11e,11hの接合にははんだ又は焼結材等の接合材を用い、スペーサ5a,5b等と正極端子81、負極端子82及び出力端子80との接合にはレーザ溶接を用いてよい。制御端子7c,7d,7g,7hと導電板11f,11g,11i,11jは、ワイヤボンディング等で電気的に接続する。
【0064】
次に、正極端子81の突出部81aのスナバ接続部81xに、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて、コンデンサ4aの一端を接合する。負極端子82の突出部82aのスナバ接続部82xに、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて、コンデンサ4aの他端を接合する。正極端子81の突出部81bのスナバ接続部81yに、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて、コンデンサ4bの一端を接合する。負極端子82の突出部82bのスナバ接続部82yに、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて、コンデンサ4bの他端を接合する。
【0065】
次に、冷却体2及びケース7で囲まれた範囲を、絶縁回路基板1及び半導体チップ3a~3l等が保護されるように、封止樹脂等の封止部材9で封止する。この際、コンデンサ4a,4bも、封止部材9により封止される。これにより、第1実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0066】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る半導体装置の構成要素である正極端子81の突出部81a、負極端子82の突出部82a、及びコンデンサ4aを抜き出して、Z軸の負方向に見た側面図である。
図10に示すように、第2実施形態に係る半導体装置は、スナバ接続部81x,82xが、突出部81a,82aの上面の垂直方向に対して斜め方向に延伸する点が、
図7に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0067】
スナバ接続部81xは、高さH1を有する。スナバ接続部81xは、突出部81aの上面から離れるほど、スナバ接続部82xから離れる方向に延伸する。スナバ接続部81xの側面と突出部81aの上面とがなす角度θ1は、例えば30°以上、90°未満程度である。
【0068】
スナバ接続部82xは、スナバ接続部81xの高さH1と同じ高さH2を有する。スナバ接続部82xは、突出部82aの上面から離れるほど、スナバ接続部81xから離れる方向に延伸する。スナバ接続部82xの側面と突出部82aの上面とがなす角度θ2は、角度θ1と同一である。
【0069】
突出部81a,82aの間、及びスナバ接続部81xの下端とスナバ接続部82xの下端の間は、距離D1で離間する。スナバ接続部81xの上端とスナバ接続部82xの上端の間は、距離D1よりも大きい距離D2で離間する。第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0070】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ケース7の内側にコンデンサ4a,4bを設けることにより、インダクタンスを低減することができ、半導体チップ3a~3lのスイッチング動作時に発生するリンギングを抑制することができる。
【0071】
更に、第2実施形態に係る半導体装置によれば、スナバ接続部81x,82xが、突出部81a,82aの上面に対して斜め方向に延伸するので、突出部81a,82aの離間する距離D1とは個別に、スナバ接続部81xの上端と、スナバ接続部82xの上端との距離D2を調整することができる。よって、正極端子81の突出部81a及び負極端子82の突出部82aの配置と、コンデンサ4aの配置の自由度を向上させることができる。
【0072】
なお、角度θ1,θ2を鈍角とし、スナバ接続部81xを、突出部81aの上面から離れるほど、スナバ接続部82xに近づく方向に延伸するように設けると共に、スナバ接続部82xを、突出部82aの上面から離れるほど、スナバ接続部81xに近づく方向に延伸するように設けてもよい。
【0073】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態に係る半導体装置の構成要素である正極端子81の突出部81a、負極端子82の突出部82a、及びコンデンサ4aを抜き出して、Z軸の負方向に見た側面図である。
図11に示すように、第3実施形態に係る半導体装置は、突出部81a,82aの水平レベルが互いに異なり、スナバ接続部81x,82xの高さH1,H2が互いに異なる点が、
図7に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0074】
例えば、正極端子81と負極端子82の間に絶縁シート83を挟むため、正極端子81及び負極端子82に段差部等を設けない場合には、
図11に示すように、突出部81aの水平レベルは、突出部82aの水平レベルよりも低くなる。このため、スナバ接続部81xの高さH1を、スナバ接続部82xの高さH2よりも高くすることにより、スナバ接続部81xの上端の水平レベルと、スナバ接続部82xの上端の水平レベルを一致させることができる。第3実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0075】
第3実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ケース7の内側にコンデンサ4a,4bを設けることにより、インダクタンスを低減することができ、半導体チップ3a~3lのスイッチング動作時に発生するリンギングを抑制することができる。更に、第3実施形態に係る半導体装置によれば、突出部81a,82aの水平レベルが互いに異なる場合には、スナバ接続部81x,82xの高さH1,H2を互いに異ならせることにより、スナバ接続部81x,82xの上端の水平レベルを揃えることができ、コンデンサ4aを容易に接続することができる。
【0076】
(第4実施形態)
図12は、
図1のA-A方向から見た断面に対応する第4実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図13は、
図1のB-B方向から見た断面に対応する第4実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図14は、第4実施形態に係る半導体装置の構成要素である正極端子81の突出部81a、負極端子82の突出部82a、コンデンサ4a、駆動回路基板20を抜き出して、Z軸の負方向に見た側面図である。
【0077】
図12~
図14に示すように、第4実施形態に係る半導体装置は、ケース7の上面側に設けられた駆動回路基板20を更に備え、コンデンサ4aが駆動回路基板20上に設けられている点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。駆動回路基板20は、半導体チップ3a~3lのゲート電極に制御信号を印加することにより、半導体チップ3a~3lを駆動する。なお、駆動回路基板20は、第1~第3実施形態に係る半導体装置においても設けられていてもよい。
【0078】
図12及び
図13に示すように、スナバ接続部81x,82xの上部は、封止部材9の上面から突出して露出している。スナバ接続部81x,82xの高さH1,H2は、
図7に示した第1実施形態に係る半導体装置のスナバ接続部81x,82xの高さH1,H2よりも高い。
図12~
図14に示すように、駆動回路基板20には、スナバ接続部81x,82xの上部が貫通する貫通穴20a,20bが設けられている。コンデンサ4aは、駆動回路基板20を介して、スナバ接続部81x,82xに接続されている。
【0079】
なお、スナバ接続部81x,82xは、突出部81a,82aの主面に対して垂直方向に延伸する代わりに、突出部81a,82aの主面の垂直方向に対して斜め方向に延伸していてもよい。また、突出部81a,82aの主面の水平レベルが互いに異なる場合には、スナバ接続部81x,82xの高さH1,H2を互いに異ならせることで、スナバ接続部81x,82xの上端の水平レベルを一致させてもよい。第4実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0080】
第4実施形態に係る半導体装置の製造時には、封止部材9を形成する際に、封止部材9の上面からスナバ接続部81x,82xの上部を突出させる。そして、駆動回路基板20を配置する際に、スナバ接続部81x,82xを貫通穴20a,20bに挿入し、スナバ接続部81x,82xの上端にコンデンサ4aをはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。コンデンサ4aは、駆動回路基板20上に予め搭載されていてもよく、或いはスナバ接続部81x,82xを貫通穴20a,20bに挿入した後に、駆動回路基板20上に搭載してもよい。第4実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の手順は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0081】
第4実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ケース7の内側にコンデンサ4a,4bを設けることにより、インダクタンスを低減することができ、半導体チップ3a~3lのスイッチング動作時に発生するリンギングを抑制することができる。更に、第4実施形態に係る半導体装置によれば、コンデンサ4aを駆動回路基板20上に設けるので、コンデンサ4aの脱着が容易となる。
【0082】
更に、第4実施形態に係る半導体装置によれば、正極端子81の突出部81aと、負極端子82の突出部82aの距離D1とは個別に、突出部81aのスナバ接続部81xと、突出部82aのスナバ接続部82xとの距離D2を調整することができるため、コンデンサ4aの長さ及び正極端子81の突出部81a及び負極端子82の突出部82aの配置と、コンデンサ4aの配置の自由度を向上させることができる。
【0083】
(第5実施形態)
図15は、第5実施形態に係る半導体装置の構成要素である正極端子81の突出部81a、負極端子82の突出部82a、コンデンサ4a、駆動回路基板20を抜き出して、Z軸の負方向に見た側面図である。
図15に示すように、第5実施形態に係る半導体装置は、ケース7の上面側に設けられた駆動回路基板20を更に備え、コンデンサ4aが駆動回路基板20上に設けられている点は、
図14に示した第4実施形態に係る半導体装置と共通する。しかし、第5実施形態に係る半導体装置は、突出部81a,82aの距離D1と、スナバ接続部81x,82xの距離D2が互いに同一である点が、第4実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0084】
なお、スナバ接続部81x,82xは、突出部81a,82aの主面に対して垂直方向に延伸する代わりに、突出部81a,82aの主面の垂直方向に対して斜め方向に延伸していてもよい。また、突出部81a,82aの主面の水平レベルが互いに異なる場合には、スナバ接続部81x,82xの高さH1,H2を互いに異ならせることで、スナバ接続部81x,82xの上端の水平レベルを一致させてもよい。第5実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0085】
第5実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、ケース7の内側にコンデンサ4a,4bを設けることにより、インダクタンスを低減することができ、半導体チップ3a~3lのスイッチング動作時に発生するリンギングを抑制することができる。更に、第5実施形態に係る半導体装置によれば、コンデンサ4aを駆動回路基板20上に設けるので、コンデンサ4aの脱着が容易となる。
【0086】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第5実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0087】
例えば、第1~第5実施形態において、正極端子81が下側、負極端子82が上側のラミネート配線構造を例示したが、正極端子81及び負極端子82の位置関係が逆でもよい。即ち、正極端子81が上側、負極端子82が下側のラミネート配線構造であってもよい。
【0088】
また、第1~第5実施形態において、正極端子81及び負極端子82のラミネート配線構造を例示したが、ラミネート配線構造でなくてもよい。例えば、ボルト締結端子構造のように、絶縁シート83を有さずに、平面視で正極端子81及び負極端子82が互いに重ならず、互いに離間して配置されていてもよい。
【0089】
また、第1~第5実施形態において、正極端子81の突出部81aのスナバ接続部81xと、負極端子82の突出部82aのスナバ接続部82xにコンデンサ4aを接続すると共に、正極端子81の突出部81bのスナバ接続部81yと、負極端子82の突出部82bのスナバ接続部82yにコンデンサ4bを接続する場合を例示したが、コンデンサ4a,4bの一方を設けなくてもよい。また、コンデンサ4a,4bを設けない突出部にはスナバ接続部を設けなくてもよい。
【0090】
また、第1~第5実施形態において、正極端子81が2本の突出部81a,81bを有し、負極端子82が2本の突出部82a,82bを有する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、正極端子81が1本の突出部81aのみを有していてもよく、負極端子82が1本の突出部82aのみを有していてもよい。即ち、正極端子81の1本の突出部と、負極端子82の1本の突出端子の組み合わせがあればよい。例えば、正極端子81が1本の突出部81aのみを有し、負極端子82が1本の突出部82aのみを有し、突出部81a,82aにスナバ接続部81x,82xが設けられ、スナバ接続部81x,82xにコンデンサ4aが接続されていてよい。
【0091】
また、第1~第5実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0092】
1…絶縁回路基板
2…冷却体(ベース)
3a~3l…パワー半導体素子(半導体チップ)
4a,4b…コンデンサ
5a,5b…導電ブロック(スペーサ)
6a~6l…リードフレーム
7…ケース
7a~7i…制御端子
9…封止部材
10…絶縁板
11a~11j…導電板
12…放熱板
20…駆動回路基板
20a,20b…貫通穴
41,42…端子
80…外部端子(出力端子)
81…外部端子(正極端子)
81a,81b…突出部
81c…本体部
81x,81y…スナバ接続部
82…外部端子(負極端子)
82a,82b…突出部
82c…本体部
82m,82n…段差部
82x,82y…スナバ接続部
83…絶縁シート
C1,C2…コンデンサ
D11,D12…ボディーダイオード
G1,G2…ゲート制御端子
N…負極端子
P…正極端子
S1,S2…補助ソース端子
T1,T2…トランジスタ
U…出力端子
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
図1に示す平面視において、第1実施形態に係る半導体装置の長手方向をX軸と定義し、
図1の右方向をX軸の正方向と定義する。また、X軸に直交する
第1実施形態に係る半導体装置の短手方向をY軸と定義し、
図1の上方向をY軸の正方向と定義する。また、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸と定義し、
図1の手前側をZ軸の正方向と定義する。
図2以降も同様とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
絶縁回路基板1は、例えば直接銅接合(DCB)基板又は活性ろう付け(AM
B)基板等で構成されている。絶縁回路基板1は、絶縁板10と、絶縁板10の上面に配置された導電板(導体箔)11a~11jと、絶縁板10の下面に配置された放熱板(導体箔)12とを備える(放熱板12は
図5及び
図6参照)。絶縁板10は、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si
3N
4)、窒化ホウ素(BN)等を主剤としたセラミクス板や、高分子材料等を用いた樹脂絶縁層を使用可能である。絶縁板10として樹脂絶縁層を用いる場合には、絶縁板10の下面側の放熱板12は無くてもよい。導電板11a~11j及び放熱板12は、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等で構成されている。導電板11a~11jは任意のパターンで形成されており、回路パターンを構成している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
半導体チップ3a~3l及び絶縁回路基板1の周囲を囲むように略矩形形状の外形を有するケース7が配置されている。ケース7の材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、エポキシ、フェノール等の樹脂材料が使用可能である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
突出部82aの延伸方向に直交する方向(短手方向)の突出部82bに対向する側の側面には、突出部82aの主面から立ち上がるようにスナバ接続部82xが設けられている。スナバ接続部82xは、例えば、突出部82aと一体的に形成されており、突出部82aに切り込みを入れて上面側に折り曲げることにより形成可能である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
また、第1~第5実施形態において、正極端子81が2本の突出部81a,81bを有し、負極端子82が2本の突出部82a,82bを有する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、正極端子81が1本の突出部81aのみを有していてもよく、負極端子82が1本の突出部82aのみを有していてもよい。即ち、正極端子81の1本の突出部と、負極端子82の1本の突出部の組み合わせがあればよい。例えば、正極端子81が1本の突出部81aのみを有し、負極端子82が1本の突出部82aのみを有し、突出部81a,82aにスナバ接続部81x,82xが設けられ、スナバ接続部81x,82xにコンデンサ4aが接続されていてよい。