(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180657
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】低誘電正接化剤を含む感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241219BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241219BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241219BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20241219BHJP
C08F 4/00 20060101ALI20241219BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 514
C08G73/10
C08F299/02
C08F4/00
C08F2/44 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024184256
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2020102488の分割
【原出願日】2020-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松本 涼香
(57)【要約】
【課題】本発明は、低誘電正接を発現し、保存安定性に優れ、高解像度で硬化レリーフパターン形成可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いたポリイミドの製造方法、硬化レリーフパターンの製造方法、及び該硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】感光性樹脂組成物が、(A)ポリイミド前駆体:100質量部、(B)感光剤:0.1~10質量部、(C)低誘電正接化剤:1~50質量部、及び(D)溶剤:50~300質量部を含み、かつ(C)低誘電正接化剤は、分子量100~3,500である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド前駆体:100質量部、
(B)感光剤:0.1~10質量部、
(C)低誘電正接化剤:1~50質量部、及び
(D)溶剤:50~300質量部
を含む感光性樹脂組成物であって、前記(C)低誘電正接化剤は分子量が100~3,500である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(I)
【化1】
{式中、R
1及びR
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、またはヒドロキシ基、または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数7~80の有機基、またはカルボニル基を含有する炭素数2~15の有機基である。}
で表される構造を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(II):
【化2】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、またはヒドロキシ基、または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の2価の有機基、または炭素数1~75の2価の有機基である。}
で表される構造を有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(III):
【化3】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
9及びR
10及びR
11及びR
12及びR
15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
7及びR
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロキシ基または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の3価の有機基、または炭素数1~50の3価の有機基である。}
で表される構造を有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記Zが、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)低誘電正接化剤が、下記式:
【化4】
{式中、Zは、カルボニル基を含有する炭素数2~15の有機基である。}
中の少なくとも1種で表される構造を有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(IV):
【化5】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
10及びR
11及びR
12及びR
15及びR
16及びR
19及びR
20は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
9及びR
13及びR
14及びR
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロキシ基または炭素数1~50の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の4価の有機基、または炭素数1~50の4価の有機基である。}
で表される構造を有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(1):
【化6】
{式(1)中、X
1は、炭素数6~40の4価の有機基であり、Y
1は、炭素数6~40の2価の有機基であり、n
1は、2~150の整数であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~40の1価の有機基である。ただし、R
1及びR
2の少なくとも一方は、下記一般式(2):
【化7】
(式(2)中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であり、そしてm
1は、2~10の整数である。)
で表される基である。}
で表される、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記Y
1が、下記式(Y1):
【化8】
{式中、Rzは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1~10の1価の有機基を表し、aは0~4の整数を表し、Aは酸素原子または硫黄原子であり、そしてBは下記式:
【化9】
中の1種である。}
で表される、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記Y
1が、下記式:
【化10】
または下記式:
【化11】
または下記式:
【化12】
で表される構造である、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記X
1が、下記式(X1):
【化13】
{式中、Ryは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1~10の1価の有機基を表し、aは0~4の整数を表し、Cは酸素原子または硫黄原子であり、そしてDは下記式:
【化14】
中の1種である。}
で表される、請求項8~10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記X
1が、下記式:
【化15】
または下記式:
【化16】
で表される構造である、請求項11に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記(B)感光剤が、光ラジカル重合開始剤である、請求項1~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
ネガ型感光性樹脂組成物である、請求項1~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
ポリイミド前駆体:100質量部、感光剤:0.1~10質量部、及び溶剤:50~300質量部を含む感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の製造方法であって、該硬化膜が下記数式(i):
0.001<(tanδ40-tanδ10)/tanδ10<0.2 (i)
{式中、tanδ40は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数40GHzでの誘電正接を示し、tanδ10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す}を満たす、硬化膜の製造方法。
【請求項16】
ポリイミド前駆体:100質量部、感光剤:0.1~10質量部、及び溶剤:50~300質量部を含む感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の製造方法であって、該硬化膜が下記数式(ii):
0.001<(tanδ60-tanδ10)/tanδ10<0.29 (ii)
{式中、tanδ60は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数60GHzでの誘電正接を示し、tanδ10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す}を満たす、硬化膜の製造方法。
【請求項17】
ポリイミド前駆体:100質量部、感光剤:0.1~10質量部、及び溶剤:50~300質量部を含む感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の製造方法であって、該硬化膜が下記数式(i)および(ii):
0.001<(tanδ40-tanδ10)/tanδ10<0.2 (i)
0.001<(tanδ60-tanδ10)/tanδ10<0.29 (ii)
{式中、tanδ40は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数40GHzでの誘電正接を示し、tanδ10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示し、tanδ60は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数60GHzでの誘電正接を示す}を満たす、硬化膜の製造方法。
【請求項18】
前記感光性樹脂組成物に含まれる前記感光剤が、光ラジカル重合開始剤である、請求項15~17のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項19】
前記感光性樹脂組成物がネガ型感光性樹脂組成物である、請求項15~18のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項20】
前記感光性樹脂組成物が、低誘電正接化剤を含む、請求項15~19のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電正接化剤を含む感光性樹脂組成物、例えば電子部品の絶縁材料、及び半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜等のレリーフパターンの形成に用いられるネガ型感光性樹脂組成物など、それを用いたポリイミドの製造方法、硬化レリーフパターンの製造方法、及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の絶縁材料、及び半導体装置のパッシベーション膜、表面保護膜、層間絶縁膜等には、優れた耐熱性、電気特性及び機械特性を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。このポリイミド樹脂の中でも、感光性ポリイミド前駆体組成物の形で提供されるものは、該組成物の塗布、露光、現像、及びキュアによる熱イミド化処理によって、耐熱性のレリーフパターン皮膜を容易に形成することができる。このような感光性ポリイミド前駆体組成物は、従来の非感光型ポリイミド材料に比べて、大幅な工程短縮を可能にするという特徴を有している。
【0003】
ところで、半導体装置(以下、「素子」とも言う。)は、目的に合わせて、様々な方法でプリント基板に実装される。従来の素子は、素子の外部端子(パッド)からリードフレームまで細いワイヤで接続するワイヤボンディング法により作製されることが一般的であった。しかし、素子の高速化が進み、動作周波数がGHzまで到達した今日、実装における各端子の配線長さの違いが、素子の動作に影響を及ぼすまでに至った。そのため、ハイエンド用途の素子の実装では、実装配線の長さを正確に制御する必要が生じ、ワイヤボンディングではその要求を満たすことが困難となった。
【0004】
そこで、半導体チップの表面に再配線層を形成し、その上にバンプ(電極)を形成した後、該チップを裏返し(フリップ)て、プリント基板に直接実装する、フリップチップ実装が提案されている。このフリップチップ実装では、配線距離を正確に制御できるため、高速な信号を取り扱うハイエンド用途の素子に、あるいは、実装サイズの小ささから携帯電話等に、それぞれ採用され、需要が急拡大している。さらに最近では、前工程済みのウェハーをダイシングして個片チップを製造し、支持体上に個片チップを再構築してモールド樹脂で封止し、支持体を剥離した後に再配線層を形成するファンアウトウェハーレベルパッケージ(FOWLP)と呼ばれる半導体チップ実装技術が提案されている(例えば特許文献1)。ファンアウトウェハーレベルパッケージでは、パッケージの高さを薄型化できるうえ、高速伝送又は低コスト化できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、新たな通信規格である第5世代移動通信システム(5G)に向けたパッケージの開発が急務である。5Gではミリ波(10Gz~80GHz)の周波数帯を用いることで、従来の通信にはなかった高速大容量化・信号の低遅延・多数端末の同時接続が可能となる。一方で、ミリ波のような高周波数領域では絶縁材の誘電正接(tanδ)が高く、伝送損失が起こることが知られており、伝送損失を低下させるため、電波の送受信を行うフロントエンドモジュール(FEM)とアンテナが一体化したアンテナインパッケージ(AiP)が開発されている。しかし、絶縁材の誘電正接は伝送損失に与える影響が大きく、誘電正接の低い材料が求められている。
【0007】
したがって、本発明は、低誘電正接を発現し、保存安定性に優れ、高解像度で硬化レリーフパターン形成可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いたポリイミドの製造方法、硬化レリーフパターンの製造方法、及び該硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ポリイミド前駆体と、低誘電正接化剤とを組み合わせることにより、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
(A)ポリイミド前駆体:100質量部、
(B)感光剤:0.1~10質量部、
(C)低誘電正接化剤:1~50質量部、及び
(D)溶剤:50~300質量部
を含む感光性樹脂組成物であって、前記(C)低誘電正接化剤は分子量が100~3,500である、感光性樹脂組成物。
[2]
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(I)
【化1】
{式中、R
1及びR
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、またはヒドロキシ基、または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数7~80の有機基、またはカルボニル基を含有する炭素数2~15の有機基である。}
で表される構造を有する、項目1に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(II):
【化2】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、またはヒドロキシ基、または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の2価の有機基、または炭素数1~75の2価の有機基である。}
で表される構造を有する、項目1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
[4]
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(III):
【化3】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
9及びR
10及びR
11及びR
12及びR
15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
7及びR
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロキシ基または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の3価の有機基、または炭素数1~50の3価の有機基である。}
で表される構造を有する、項目1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
[5]
前記Zが、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を有する、項目2~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[6]
(C)低誘電正接化剤が、下記式:
【化4】
{式中、Zは、カルボニル基を含有する炭素数2~15の有機基である。}
中の少なくとも1種で表される構造を有する、項目1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
[7]
前記(C)低誘電正接化剤が、下記式(IV):
【化5】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
10及びR
11及びR
12及びR
15及びR
16及びR
19及びR
20は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
9及びR
13及びR
14及びR
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロキシ基または炭素数1~50の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の4価の有機基、または炭素数1~50の4価の有機基である。}
で表される構造を有する、項目1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
[8]
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(1):
【化6】
{式(1)中、X
1は、炭素数6~40の4価の有機基であり、Y
1は、炭素数6~40の2価の有機基であり、n
1は、2~150の整数であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~40の1価の有機基である。ただし、R
1及びR
2の少なくとも一方は、下記一般式(2):
【化7】
(式(2)中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であり、そしてm
1は、2~10の整数である。)
で表される基である。}
で表される、項目1~7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[9]
前記Y
1が、下記式(Y1):
【化8】
{式中、Rzは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1~10の1価の有機基を表し、aは0~4の整数を表し、Aは酸素原子または硫黄原子であり、そしてBは下記式:
【化9】
中の1種である。}
で表される、項目8に記載の感光性樹脂組成物。
[10]
前記Y
1が、下記式:
【化10】
または下記式:
【化11】
または下記式:
【化12】
で表される構造である、項目9に記載の感光性樹脂組成物。
[11]
前記X
1が、下記式(X1):
【化13】
{式中、Ryは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1~10の1価の有機基を表し、aは0~4の整数を表し、Cは酸素原子または硫黄原子であり、そしてDは下記式:
【化14】
中の1種である。}
で表される、項目8~10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[12]
前記X
1が、下記式:
【化15】
または下記式:
【化16】
で表される構造である、項目11に記載の感光性樹脂組成物。
[13]
前記(B)感光剤が、光ラジカル重合開始剤である、項目1~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[14]
ネガ型感光性樹脂組成物である、項目1~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[15]
ポリイミド前駆体:100質量部、感光剤:0.1~10質量部、及び溶剤:50~300質量部を含む感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の製造方法であって、該硬化膜が下記数式(i):
0.001<(tanδ
40-tanδ
10)/tanδ
10<0.2 (i)
{式中、tanδ
40は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数40GHzでの誘電正接を示し、tanδ
10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す}を満たす、硬化膜の製造方法。
[16]
ポリイミド前駆体:100質量部、感光剤:0.1~10質量部、及び溶剤:50~300質量部を含む感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の製造方法であって、該硬化膜が下記数式(ii):
0.001<(tanδ
60-tanδ
10)/tanδ
10<0.29 (ii)
{式中、tanδ
60は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数60GHzでの誘電正接を示し、tanδ
10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す}を満たす、硬化膜の製造方法。
[17]
ポリイミド前駆体:100質量部、感光剤:0.1~10質量部、及び溶剤:50~300質量部を含む感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の製造方法であって、該硬化膜が下記数式(i)および(ii):
0.001<(tanδ
40-tanδ
10)/tanδ
10<0.2 (i)
0.001<(tanδ
60-tanδ
10)/tanδ
10<0.29 (ii)
{式中、tanδ
40は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数40GHzでの誘電正接を示し、tanδ
10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示し、tanδ
60は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数60GHzでの誘電正接を示す}を満たす、硬化膜の製造方法。
[18]
前記感光性樹脂組成物に含まれる前記感光剤が、光ラジカル重合開始剤である、項目15~17のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。
[19]
前記感光性樹脂組成物がネガ型感光性樹脂組成物である、項目15~18のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。
[20]
前記感光性樹脂組成物が、低誘電正接化剤を含む、項目15~19のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性よく、形成されるレリーフパターンの解像度を維持したまま、誘電正接の低い感光性樹脂組成物を提供することができる。一実施形態において、硬化膜の極性を低下させることで、誘電正接を低下させることができる。また、一実施形態において、樹脂同士の相溶性よく混合させることで、相分離せずに保存することができ、レリーフパターン形成時の解像度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。本明細書を通じ、一般式において同一符号で表されている構造は、分子中に複数存在する場合、別途規定しない限りそれぞれ独立して選択され、互いに同一であっても、異なっていてもよい。また、異なる一般式において共通する符号で表されている構造もまた、別途規定しない限りそれぞれ独立して選択され、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0011】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド前駆体と、(B)感光剤と、(C)低誘電正接化剤と、(D)溶剤とを含む。所望により、感光性樹脂組成物はその他の成分を含む。各成分を以下に順に説明する。
【0012】
感光性樹脂組成物は、所望の用途に応じて、ネガ型又はポジ型のいずれであってもよく、後述される(A)ポリイミド前駆体の物性の観点からネガ型であることが好ましい。
【0013】
(A)ポリイミド前駆体
本実施形態では、(A)ポリイミド前駆体は、感光性樹脂組成物に含まれる樹脂成分であり、下記一般式(1):
【化17】
{式(1)中、X
1は、炭素数6~40の4価の有機基であり、Y
1は、炭素数6~40の2価の有機基であり、n
1は、2~150の整数であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~40の1価の有機基である。ただし、R
1及びR
2の少なくとも一方は、下記一般式(2):
【化18】
(式(2)中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であり、そしてm
1は、2~10の整数である。)
で表される基である。}
で表される構造単位を有することが好ましく、上記一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミドであることがより好ましい。
【0014】
(A)ポリイミド前駆体中に含まれる上記一般式(1)で表される前駆体のR1及びR2の全てに対する、上記一般式(2)で表される1価の有機基の割合は、高解像度の観点から、50モル%~100モル%が好ましく、さらに、高耐薬品性と感度の観点から、75モル%~100モル%がより好ましい。
【0015】
上記一般式(1)におけるn1は、感光性樹脂組成物の感光特性及び機械特性の観点から、3~100の整数が好ましく、5~70の整数がより好ましい。
【0016】
上記一般式(1)中、X
1で表される4価の有機基は、耐熱性と感光特性とを両立するという点で、好ましくは炭素数6~40の有機基であり、より好ましくは、-COOR
1基及び-COOR
2基と-CONH-基とが互いにオルト位置にある芳香族基、又は脂環式脂肪族基である。X
1で表される4価の有機基として、具体的には、芳香族環を含有する炭素原子数6~40の有機基、例えば、下記一般式(20):
【化19】
{式(20)中、R6は水素原子、フッ素原子、C1~C10の炭化水素基、及びC1~C10の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる1価の基であり、lは0~2から選ばれる整数であり、mは0~3から選ばれる整数であり、そしてnは0~4から選ばれる整数である。}
で表される構造を有する基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、X
1の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。上記式(20)で表される構造を有するX
1基は、耐熱性と感光特性とを両立するという点で特に好ましい。
【0017】
また、上記一般式(1)中、X
1で表される4価の有機基は、保存安定性、レリーフパターン解像度、低誘電正接、低極性、樹脂同士の相溶性などの観点から、下記式(X1):
【化20】
{式中、Ryは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1~10の1価の有機基を表し、aは0~4の整数を表し、Cは酸素原子または硫黄原子であり、そしてDは下記式:
【化21】
中の1種である。}
で表されることが好ましく、下記式:
【化22】
または下記式:
【化23】
で表される構造であることがより好ましい。
【0018】
上記一般式(1)中、Y
1で表される2価の有機基は、耐熱性と感光特性とを両立するという点で、好ましくは炭素数6~40の芳香族基であり、例えば、下記式(21):
【化24】
{式(21)中、R6は水素原子、フッ素原子、C1~C10の炭化水素基、及びC1~C10の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる1価の基であり、そしてnは0~4から選ばれる整数である。}
で表される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、Y
1の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。上記式(21)で表される構造を有するY
1基は、耐熱性及び感光特性を両立するという点で特に好ましい。
【0019】
Y
1基としては、上記式(21)で表される構造のなかでも特に、下式:
【化25】
で表される構造は、低温加熱時のイミド化率、脱ガス性、銅密着性、及び耐薬品性の観点から好ましく、さらに下式:
【化26】
で表される構造は、低誘電正接の観点から好ましい。
【0020】
また、上記一般式(1)中、Y
1で表される2価の有機基は、保存安定性、レリーフパターン解像度、低誘電正接、低極性、樹脂同士の相溶性などの観点から、下記式(Y1):
【化27】
{式中、Rzは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1~10の1価の有機基を表し、aは0~4の整数を表し、Aは酸素原子または硫黄原子であり、そしてBは下記式:
【化28】
中の1種である。}
で表されることが好ましく、下記式:
【化29】
または下記式:
【化30】
または下記式:
【化31】
で表される構造であることがより好ましい。
【0021】
上記一般式(2)中のR3は、水素原子又はメチル基であることが好ましく、R4及びR5は、感光特性の観点から水素原子であることが好ましい。また、m1は、感光特性の観点から2以上10以下の整数、好ましくは2以上4以下の整数である。
【0022】
(A)ポリイミド前駆体の調製方法
本実施形態における上記一般式(1)で表される構造を含むポリイミド前駆体は、例えば、前述の炭素数6~40の4価の有機基X1を含むテトラカルボン酸二無水物と、(a)上記一般式(2)で表される1価の有機基と水酸基とが結合した構造を有するアルコール類、及び所望により(b)上記一般式(2)で表される基以外の構造を有するアルコール類とを反応させて、部分的にエステル化したテトラカルボン酸(以下、アシッド/エステル体ともいう)を調製することと;続いて、得られたアシッド/エステル体と、前述の炭素数6~40の2価の有機基Y1を含むジアミン類とを重縮合させることとを含む方法により得られる。
【0023】
(アシッド/エステル体の調製)
本実施形態において、炭素数6~40の4価の有機基X1を含むテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。また、これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して、使用することができる。
【0024】
(b)上記一般式(2)で表される基以外の構造を有するアルコール類として、例えば、炭素数5~30の脂肪族又は炭素数6~30の芳香族アルコール類、例えば、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、1-ノナノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
【0025】
ポリイミド前駆体中の一般式(2)の有機基の含有量は、R1、R2、R6、及びR7の全ての含有量に対し、50モル%以上であることが好ましい。一般式(2)の有機基の含有量が50モル%を超えると、所望の感光特性を得ることができるので好ましい。
感光性樹脂組成物中の一般式(2)の有機基の含有量は、R1、R2、R6、及びR7の全ての含有量に対し、75モル%以上であることが好ましい。
【0026】
上記のテトラカルボン酸二無水物と上記(a)のアルコール類とを、ピリジン等の塩基性触媒の存在下、反応溶媒中に溶解及び混合することにより、酸二無水物のハーフエステル化反応が進行し、所望のアシッド/エステル体を得ることができる。反応条件は、反応温度20~50℃で4~10時間に亘って撹拌することが好ましい。
【0027】
上記反応溶媒としては、該アシッド/エステル体、及び該アシッド/エステル体とジアミン類との重縮合生成物であるポリイミド前駆体を溶解するものが好ましい。反応溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ガンマブチロラクトン、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジクロロブタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは必要に応じて、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0028】
(ポリイミド前駆体の調製)
上記アシッド/エステル体(典型的には上記反応溶媒中の溶液)に、氷冷下、既知の脱水縮合剤を混合してアシッド/エステル体をポリ酸無水物とした後、これに、炭素数6~40の2価の有機基Y1を含むジアミン類を別途溶媒に溶解又は分散させたものを滴下投入し、重縮合させることにより、ポリイミド前駆体を得ることができる。脱水縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、1,1-カルボニルジオキシ-ジ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート等が挙げられる。
【0029】
炭素数6~40の2価の有機基Y1を含むジアミン類としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2-ビス{3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、及びこれらのベンゼン環上の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ハロゲン等で置換されたもの、例えば3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、及びこれらの混合物等も挙げられる。しかしながら、ジアミン類はこれらに限定されるものではない。
【0030】
本実施形態の感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって基板上に形成される感光性樹脂層と各種の基板との密着性を向上させるために、(A)ポリイミド前駆体の調製時に、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン等のジアミノシロキサン類を共重合することもできる。
【0031】
上記重縮合反応終了後、当該反応液中に共存している脱水縮合剤の吸水副生物を、必要に応じて濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はその混合液等の貧溶媒を、反応液に投入して重合体成分を析出させてもよい。さらに、上記再溶解及び再沈析出操作等を繰り返すことにより、重合体を精製してもよい。そして、重合体を真空乾燥して、ポリイミド前駆体を単離することができる。精製度を向上させるために、陰イオン及び/又は陽イオン交換樹脂を適当な有機溶媒で膨潤させて充填したカラムに、この重合体の溶液を通し、イオン性不純物を除去してもよい。
【0032】
(A)ポリイミド前駆体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量で測定した場合に、8,000~150,000であることが好ましく、9,000~50,000であることがより好ましく、18,000~40,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が8,000以上である場合には、機械物性が良好であるため好ましく、一方で、150,000以下である場合には、現像液への分散性及びレリーフパターンの解像性能が良好であるため好ましい。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの展開溶媒としては、テトラヒドロフラン、及びN-メチル-2-ピロリドンが推奨される。また分子量は、標準単分散ポリスチレンを用いて作成した検量線から求める。標準単分散ポリスチレンとしては、昭和電工社製 有機溶媒系標準試料 STANDARD SM-105から選ぶことが推奨される。
【0033】
(B)感光剤
本実施形態の感光性樹脂組成物は感光剤を含有する。一実施形態では、感光剤は、光重合開始剤であってもよい。光重合開始剤は、光照射によるレリーフパターンの硬化を促進するため好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類、ベンゾイルパークロライド等の過酸化物類、芳香族ビイミダゾール類、チタノセン類、α-(n-オクタンスルフォニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニド等の光酸発生剤類等が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の光重合開始剤の中では、特に光感度の点で、オキシム類がより好ましい。
【0034】
光重合開始剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部であり、より好ましくは1質量部以上8質量部以下である。上記配合量は、光感度又はパターニング性の観点で0.1質量部以上であり、感光性樹脂組成物の硬化後の感光性樹脂層の物性の観点から10質量部以下であることが好ましい。
【0035】
(C)低誘電正接化剤
本実施形態の感光性樹脂組成物は低誘電正接化剤を含有する。(C)低誘電正接化剤とは、樹脂組成物に添加剤として用いることで、(C)低誘電正接化剤と樹脂との組成物から得られる硬化膜の40GHzでの誘電正接が、(C)誘電正接化剤を含まない樹脂組成物の誘電正接より5~80%低い値を与えることを特徴とする、化合物である。
【0036】
低誘電正接化剤の分子量は、溶解性の観点で好ましくは5,000以下であり、より好ましくは3,500以下であり、低誘電正接化の観点で好ましくは100以上である。
【0037】
(C)低誘電正接化剤の構造は、誘電正接を低下させるものであれば限りはないが、硬化膜の熱物性の観点から、置換ベンゼン構造が好ましい。置換ベンゼン構造中の置換基構造は限定されないが、アルキル基、エステル基、エーテル基、フェニル基、ヒドロキシ基、ケトン基、カルボキシ基、パーオキシド基、アミノ基、イミノ基、イミド基、アミド基、イソシアネート基、スルホ基、エポキシ基、フルオロ基、ニトロ基、チオール基、ホスホニル基、イソシアヌル基などが挙げられ、低誘電正接の観点から、好ましくはアルキル基、エステル基、エーテル基、アミド基、フェニル基、及びホスホニル基である。中でも、低誘電正接化の観点から、アルキル基を有することがより好ましい。
【0038】
(C)低誘電正接化剤の同一分子内にベンゼン構造を、1つ、2つ以上又は3つ以上有していてもよい。ベンゼン構造が1つの場合、下記式(I)
【化32】
{式中、R
1及びR
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、またはヒドロキシ基、または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数7~80の有機基、またはカルボニル基を含有する炭素数2~15の有機基である。}
で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0039】
ベンゼン構造が1つの場合、(C)低誘電正接化剤は、保存安定性、レリーフパターン解像度、低誘電正接、低極性、樹脂同士の相溶性などの観点から、カルボニル基を含有する炭素数2~15の有機基と、置換基を有していてもよいベンゼン環とを備えることが好ましく、下記式:
【化33】
{式中、Zは、カルボニル基を含有する炭素数2~15の有機基である。}
中の少なくとも1種で表される構造を有することがより好ましい。
【0040】
より具体的に、ベンゼン構造が1つの(C)低誘電正接化剤としては、下記の化合物群が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【化34】
【0041】
(C)低誘電正接化剤の同一分子内にベンゼン構造が2つの場合、下記式(II):
【化35】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、またはヒドロキシ基、または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の2価の有機基、または炭素数1~75の2価の有機基である。}
で表される構造が好ましい。
【0042】
より具体的に、ベンゼン構造が2つの(C)低誘電正接化剤としては、下記の化合物群が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0043】
(C)低誘電正接化剤の同一分子内にベンゼン構造が3つの場合、下記式(III):
【化42】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
9及びR
10及びR
11及びR
12及びR
15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
7及びR
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロキシ基または炭素数1~30の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、及び窒素から成る群から少なくとも1つ選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の3価の有機基、または炭素数1~50の3価の有機基である。}
で表される構造を有することが好ましい。
【0044】
より具体的に、ベンゼン構造が3つの(C)低誘電正接化剤としては、下記の化合物群が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【0045】
(C)低誘電正接化剤の同一分子内にベンゼン構造が4つ以上の場合、下記一般式(IV):
【化47】
{式中、R
1及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
10及びR
11及びR
12及びR
15及びR
16及びR
19及びR
20は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
3及びR
8及びR
9及びR
13及びR
14及びR
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロキシ基または炭素数1~50の有機基であり、Zは、硫黄、リン、酸素、窒素から少なくとも1つ以上選ばれるヘテロ原子を含有する炭素数1~50の4価の有機基、または炭素数1~50の4価の有機基である。)、又は下記一般式(V):
【化48】
{式中、R
1及びR
2及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
9及びR
10及びR
11及びR
12及びR
14及びR
15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
3及びR
8及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10の有機基であり、Xは、酸素原子を含んでもよい炭素数1~5の有機基であり、Zは、水素原子、または硫黄、リン、酸素、窒素から少なくとも1つ以上選ばれるヘテロ原子を含有する3価の有機基、または炭素数1~50の3価の有機基である。}、又は下記一般式(VI):
【化49】
{式中、R
1及びR
3及びR
4及びR
5及びR
6及びR
8及びR
9及びR
10及びR
11及びR
12及びR
13及びR
15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
2及びR
7及びR
14は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10の有機基であり、Xは、酸素原子を含んでもよい炭素数1~5の有機基であり、Zは、水素原子、または硫黄、リン、酸素、窒素から少なくとも1つ以上選ばれるヘテロ原子を含有する3価の有機基、または炭素数1~50の3価の有機基である。}、又は下記一般式(VII):
【化50】
{式中、R
1及びR
2及びR
4及びR
5及びR
6及びR
7及びR
9及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基またはt-ブチル基であり、R
3及びR
8は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロキシ基または炭素数1~30の有機基であり、R
4及びR
7及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10の有機基であり、Xは、酸素原子を含んでもよい炭素数1~5の有機基であり、Zは、水素原子、または硫黄、リン、酸素、窒素から少なくとも1つ以上選ばれるヘテロ原子を含有する2価の有機基、または炭素数1~50の2価の有機基である。}であることが好ましい。
【0046】
(C)低誘電正接化剤の同一分子内にベンゼン構造が4つ以上の場合、下記化合物群が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【化51】
【化52】
【化53】
【0047】
(C)低誘電正接化剤は、合成方法は限定されないが、例えば、フェノール化合物と酸クロリド化合物との反応物として得ることができる。好ましくは、フェノール化合物に、塩基性触媒及び溶媒を投入混合した溶液を得て、当該溶液に酸クロリド化合物を添加し、反応させることにより、(C)低誘電正接化剤を製造してもよい。反応は、液体クロマトグラフィーで反応残差に由来するピークが消失していれば特に限定されないが、例えば反応温度は、-10℃~0℃で酸クロリドを添加した後、30℃まで加温してもよく、-10℃~0℃で一定に保ってもよい。合成後、陽イオン交換樹脂を充填したカラムを通して塩基性触媒を除去した後、溶媒を加えて希釈したものを塩基性溶液及び水で分液精製し、エバポレーターで溶媒を留去することで、(C)低誘電正接化剤を得ることができる。陽イオン交換樹脂としては、特に限定されないが、弱酸性型イオン交換樹脂を用いることがよい。分液に用いる溶媒は、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ベンゼン、ヘキサンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
(C)低誘電正接化剤の合成反応に用いられるフェノール化合物としては、下記一般式で表される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【化54】
【0049】
(C)誘電正接化剤の合成反応に用いられる酸クリロド化合物としては、下記一般式で表される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【化55】
【0050】
低誘電正接化剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上32質量部以下である。上記配合量は、硬化膜の低誘電正接化の観点で0.1質量部以上であり、光感度又はパターニング性の観点から32質量部以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態の感光剤樹脂組成物は、上記低誘電正接化剤を含有することで、解像度及び保存安定性を維持したまま、高周波数領域(10~80GHz)での誘電正接が低く、周波数依存性が低い樹脂膜を提供することができる。理論には拘束されないが、誘電正接が低下する理由としては、(C)低誘電正接化剤自体の双極子モーメントが小さいため、膜全体に占める、イミド基やアミド基などの極性官能基の存在比率を低下させるためであると考えられる。また、理論には拘束されないが、周波数依存性が低い理由としては、膜全体の極性が低くなることで、成膜時の吸水率が低下するためであると考えられる。また、理論には拘束されないが、解像度及び保存安定性を維持する理由としては、分子量100~3,500であり、極性の異なるポリイミド前駆体とも樹脂組成物中及び硬化膜中で相分離することなく混合されるためであると考えられる。
【0052】
(D)溶剤
本実施形態の感光性樹脂組成物は溶剤を含有する。溶剤としては、(A)ポリイミド前駆体に対する溶解性の点から、極性の有機溶剤を用いることが好ましい。溶剤としては、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、2-オクタノン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0053】
上記溶剤は、感光性樹脂組成物の所望の塗布膜厚及び粘度に応じて、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、例えば、30質量部~1500質量部、好ましくは100質量部~1000質量部、更に好ましくは100質量部~860質量部の範囲で用いることができる。
【0054】
感光性樹脂組成物の保存安定性を向上させる観点から、アルコール類を含む溶剤が好ましい。好適に使用できるアルコール類は、典型的には、分子内にアルコール性水酸基を持ち、オレフィン系二重結合を有さないアルコールであり、具体的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルキルアルコール類;乳酸エチル等の乳酸エステル類;プロピレングリコール-1-メチルエーテル、プロピレングリコール-2-メチルエーテル、プロピレングリコール-1-エチルエーテル、プロピレングリコール-2-エチルエーテル、プロピレングリコール-1-(n-プロピル)エーテル、プロピレングリコール-2-(n-プロピル)エーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル等のモノアルコール類;2-ヒドロキシイソ酪酸エステル類;エチレングリコール、及びプロピレングリコール等のジアルコール類を挙げることができる。これらの中では、乳酸エステル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、2-ヒドロキシイソ酪酸エステル類、及びエチルアルコールが好ましく、特に乳酸エチル、プロピレングリコール-1-メチルエーテル、プロピレングリコール-1-エチルエーテル、及びプロピレングリコール-1-(n-プロピル)エーテルがより好ましい。
【0055】
溶剤が、オレフィン系二重結合を有さないアルコールを含有する場合、全溶剤中のオレフィン系二重結合を有さないアルコールの含有量は、全溶剤の質量を基準として、5質量%~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%~30質量%である。オレフィン系二重結合を有さないアルコールの上記含有量が5質量%以上の場合、感光性樹脂組成物の保存安定性が良好になり、一方で、50質量%以下の場合、(A)ポリイミド前駆体の溶解性が良好になるため好ましい。
【0056】
一実施形態では、レリーフパターンの解像度を向上させるために、感光性樹脂組成物は、光重合性の不飽和結合を有するモノマーを任意に含むことができる。このようなモノマーとしては、光重合開始剤によりラジカル重合反応する(メタ)アクリル化合物が好ましく、特に以下に限定するものではないが、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートをはじめとする、エチレングリコール又はポリエチレングリコールのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、グリセロールのモノ、ジ又はトリアクリレート及びメタクリレート、シクロヘキサンジアクリレート及びジメタクリレート、1,4-ブタンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、ネオペンチルグリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ビスフェノールAのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、ベンゼントリメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体、トリメチロールプロパントリアクリレート及びメタクリレート、グリセロールのジ又はトリアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリスリトールのジ、トリ、又はテトラアクリレート及びメタクリレート、並びにこれら化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等の化合物を挙げることができる。
【0057】
光重合性の不飽和結合を有するモノマーの配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、1質量部~50質量部であることが好ましい。
【0058】
一実施形態では、感光性樹脂組成物を用いて形成される膜と基材との接着性を向上させるために、感光性樹脂組成物は、任意に接着助剤を含むことができる。接着助剤としては、例えば、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル-3-ピペリジノプロピルシラン、ジエトキシ-3-グリシドキシプロピルメチルシラン、N-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド、N-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕フタルアミド酸、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-〔3-トリエトキシシリル〕プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4-ビス(N-〔3-トリエトキシシリル〕プロピルアミド)-2,5-ジカルボン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系接着助剤等が挙げられる。
【0059】
これらの接着助剤のうちでは、接着力の点からシランカップリング剤を用いることがより好ましい。接着助剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.5質量部~25質量部の範囲が好ましい。
【0060】
一実施形態では、特に溶剤を含む溶液の状態での保存時の感光性樹脂組成物の粘度及び光感度の安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物は、熱重合禁止剤を任意に含むことができる。熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、N-ニトロソジフェニルアミン、p-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、フェノチアジン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-p-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルフォプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N-ニトロソ-N(1-ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩等が用いられる。
【0061】
熱重合禁止剤の配合量としては、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.005質量部~12質量部の範囲が好ましい。
【0062】
例えば、銅又は銅合金から成る基板を用いる場合には、基板変色を抑制するために、感光性樹脂組成物は、アゾール化合物を任意に含むことができる。アゾール化合物としては、例えば、1H-トリアゾール、5-メチル-1H-トリアゾール、5-エチル-1H-トリアゾール、4,5-ジメチル-1H-トリアゾール、5-フェニル-1H-トリアゾール、4-t-ブチル-5-フェニル-1H-トリアゾール、5-ヒドロキシフェニル-1H-トリアゾール、フェニルトリアゾール、p-エトキシフェニルトリアゾール、5-フェニル-1-(2-ジメチルアミノエチル)トリアゾール、5-ベンジル-1H-トリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアゾール、1,5-ジメチルトリアゾール、4,5-ジエチル-1H-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α―ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-メチル-1H-テトラゾール等が挙げられる。特に好ましくは、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、及び4-メチル-1H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。また、これらのアゾール化合物は、1種で用いても2種以上の混合物で用いてもよい。
【0063】
アゾール化合物の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、光感度特性の観点から0.5質量部~5質量部であることがより好ましい。アゾール化合物の(A)ポリイミド前駆体100質量部に対する配合量が0.1質量部以上である場合には、感光性樹脂組成物を銅又は銅合金の上に形成したときに、銅又は銅合金表面の変色が抑制され、一方、20質量部以下である場合には、光感度に優れるため好ましい。
【0064】
本実施形態では、銅上の変色を抑制するために、感光性樹脂組成物は、ヒンダードフェノール化合物を含むことができる。ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-ハイドロキノン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4、4’-メチレンビス(2、6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-イソプロピルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-s-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-(1-エチルプロピル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-フェニルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5,6-トリメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5,6-ジエチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5‐エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンが特に好ましい。
【0065】
ヒンダードフェノール化合物の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、光感度特性の観点から0.5質量部~10質量部であることがより好ましい。ヒンダードフェノール化合物の(A)ポリイミド前駆体100質量部に対する配合量が0.1質量部以上である場合、例えば銅又は銅合金の上に感光性樹脂組成物を形成した場合に、銅又は銅合金の変色・腐食が防止され、一方、20質量部以下である場合には光感度に優れるため好ましい。
【0066】
一実施形態では、感光性樹脂組成物には、有機チタン化合物を含有させてもよい。有機チタン化合物を含有することにより、約250℃という低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる感光性樹脂層を形成できる。
【0067】
使用可能な有機チタン化合物としては、例えば、チタン原子に有機化学物質が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
【0068】
有機チタン化合物の具体例を以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物としては、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレートが、感光性樹脂組成物の保存安定性及び良好なパターンが得られることからより好ましい。チタンキレート化合物として具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0069】
II)テトラアルコキシチタン化合物としては、例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等が挙げられる。
【0070】
III)チタノセン化合物としては、例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0071】
IV)モノアルコキシチタン化合物としては、例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等が挙げられる。
【0072】
V)チタニウムオキサイド化合物としては、例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等が挙げられる。
【0073】
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物としては、例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0074】
VII)チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等が挙げられる。
【0075】
上記I)~VII)の中でも、有機チタン化合物が、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、より良好な耐薬品性を奏するという観点から好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
【0076】
有機チタン化合物を配合する場合の配合量は、(A)樹脂100質量部に対し、0.05質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~2質量部であることがより好ましい。該配合量が0.05質量部以上である場合には良好な耐熱性及び耐薬品性が発現し、一方10質量部以下である場合には保存安定性に優れるため好ましい。
【0077】
[ポリイミド]
上記ポリイミド前駆体組成物から形成される、硬化レリーフパターンに含まれるポリイミドの構造は、下記一般式(11)で表されることが好ましい。
【化56】
{一般式(11)中、X
1及びY
1は、一般式(1)中のX
1及びY
1と同じであり、mは正の整数である。}
一般式(1)中の好ましいX
1とY
1は、同じ理由により、一般式(11)のポリイミドにおいても好ましい。一般式(11)の繰り返し単位数mは、特に限定は無いが、2~150の整数であってもよい。
本発明によれば、上記で説明された感光性樹脂組成物をポリイミドに変換する工程を含む、ポリイミドの製造方法も提供することができる。
【0078】
[硬化膜及びその製造方法]
本発明の別の実施形態では、上記で説明された感光性樹脂組成物から得られる硬化膜、及びその製造方法が提供され、その硬化膜は下記数式(i)及び/又は(ii):
0.001<(tanδ40-tanδ10)/tanδ10<0.2 (i)
{式中、tanδ40は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数40GHzでの誘電正接を示し、tanδ10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す}
0.001<(tanδ60-tanδ10)/tanδ10<0.29 (ii)
{式中、tanδ60は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数60GHzでの誘電正接を示し、tanδ10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す}
で表される関係を満たす。
【0079】
上記数式(1)及び/又は(ii)を満たすと、硬化膜の極性を低下させることで、誘電正接を低下させることができ、また樹脂同士の相溶性よく混合させることで、相分離せずに保存することができ、レリーフパターン形成時の解像度を維持することができる傾向にある。このような観点から、硬化膜は、
0.002<(tanδ40-tanδ10)/tanδ10<0.1909;及び/又は
0.002<(tanδ60-tanδ10)/tanδ10<0.2789
を満たすことが好ましい。なお、誘電正接は、後述の実施例に示される摂動方式スプリットシリンダ共振器法により測定されることができる。
【0080】
硬化膜の製造方法において使用される感光性樹脂組成物は、上記数式(1)及び/又は(ii)を満たすという観点から、ポリイミド前駆体:100質量部、感光剤:0.1~10質量部、及び溶剤:50~300質量部を含むことが好ましく、感光剤として光ラジカル重合開始剤を含み、かつ/又は低誘電正接化剤を含むことがより好ましく、感光性樹脂組成物がネガ型であることが更に好ましい。
【0081】
硬化膜の製造方法における具体的な工程は、後述される硬化レリーフパターンの製造方法の工程(1)~(4)に従って行われることができる。
【0082】
[硬化レリーフパターン]
本発明によれば、上記で説明された感光性樹脂組成物を用いた硬化レリーフパターン、及びその製造方法を提供することができる。一実施形態では、硬化レリーフパターンを製造する方法は、以下の工程(1)~(4):
(1)本実施形態に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を該基板上に形成する工程、
(2)該感光性樹脂層を露光する工程、
(3)該露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程、及び
(4)該レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程
を含む、方法である。
【0083】
以下、各工程について説明する。
(1)本実施形態の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を該基板上に形成する工程
本工程では、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、必要に応じて、その後に乾燥させて、感光性樹脂層を形成する。塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
【0084】
必要に応じて、感光性樹脂組成物から成る塗膜を乾燥させることができ、そして乾燥方法としては、例えば、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中の(A)ポリイミド前駆体のイミド化が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、風乾又は加熱乾燥を行う場合、20℃~140℃で1分~1時間の条件で乾燥を行うことができる。以上により基板上に感光性樹脂層を形成できる。
【0085】
(2)該感光性樹脂層を露光する工程
本工程では、上記(1)工程で形成した感光性樹脂層を、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスク又はレチクルを介して又は直接に、紫外線光源等により露光する。
【0086】
この後、光感度の向上等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる露光後ベーク(PEB)及び/又は現像前ベークを施してもよい。ベーク条件の範囲は、温度は40℃~120℃であることが好ましく、時間は10秒~240秒であることが好ましいが、ネガ型感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、この範囲に限らない。
【0087】
(3)該露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程
本工程では、感光性樹脂組成物がネガ型である場合に、露光後の感光性樹脂層のうち未露光部を現像除去する。露光(照射)後の感光性樹脂層を現像する現像方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。また、現像の後、レリーフパターンの形状を調整する等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる現像後ベークを施してもよい。現像に使用される現像液としては、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物に対する良溶媒、又は該良溶媒と貧溶媒との組合せが好ましい。良溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等が好ましい。貧溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び水等が好ましい。良溶媒と貧溶媒とを混合して用いる場合には、ネガ型感光性樹脂組成物中のポリマーの溶解性によって良溶媒に対する貧溶媒の割合を調整することが好ましい。また、各溶媒を2種以上、例えば数種類組合せて用いることもできる。
【0088】
(4)該レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程
本工程では、上記現像により得られたレリーフパターンを加熱して感光成分を希散させるとともに、(A)ポリイミド前駆体をイミド化させることによって、ポリイミドから成る硬化レリーフパターンに変換する。加熱硬化の方法としては、例えば、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、例えば、150℃~400℃で30分~5時間の条件で行うことができる。加熱硬化時の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0089】
[半導体装置]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述した硬化レリーフパターンの製造方法により得られる硬化レリーフパターンを有する、半導体装置も提供することができる。したがって、半導体素子である基材と、上述した硬化レリーフパターン製造方法により該基材上に形成されたポリイミドの硬化レリーフパターンとを有する半導体装置が提供されることができる。また、本発明は、基材として半導体素子を用い、上述した硬化レリーフパターンの製造方法を工程の一部として含む半導体装置の製造方法にも適用できる。本発明の半導体装置は、上記硬化レリーフパターン製造方法で形成される硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜等として形成し、既知の半導体装置の製造方法と組合せることで製造することができる。
【0090】
[表示体装置]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、表示体素子と該表示体素子の上部に設けられた硬化膜とを備える表示体装置であって、該硬化膜は上述の硬化レリーフパターンである表示体装置をも提供することができる。ここで、当該硬化レリーフパターンは、当該表示体素子に直接接して積層されていてもよく、別の層を間に挟んで積層されていてもよい。例えば、該硬化膜として、TFT液晶表示素子及びカラーフィルター素子の表面保護膜、絶縁膜、及び平坦化膜、MVA型液晶表示装置用の突起、並びに有機EL素子陰極用の隔壁を挙げることができる。
【0091】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記のような半導体装置への適用の他、多層回路の層間絶縁、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等の用途にも有用である。
【実施例0092】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。実施例、比較例、及び製造例においては、感光性樹脂組成物の物性を以下の方法に従って測定及び評価を行った。
【0093】
[測定及び評価方法]
(1)重量平均分子量
各樹脂の重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(標準ポリスチレン換算)で測定した。測定に用いたカラムは昭和電工(株)製の商標名「Shodex 805M/806M直列」であり、標準単分散ポリスチレンは、昭和電工(株)製の商標名「Shodex STANDARD SM-105」を選択し、展開溶媒はN-メチル-2-ピロリドンであり、検出器は昭和電工(株)製の商標名「Shodex RI-930」を使用した。
【0094】
(2)エステル化率
フェノール化合物と酸クロリドの反応の経過を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定した。測定に用いたカラムは昭和電工(株)製の商標名「Shodex 802/801/801直列」であり、展開溶媒はテトラヒドロフランであり、検出器は昭和電工(株)製の商標名「Shodex RI-930」を使用した。酸クロリドに由来するピークの積分比が全ピーク積分比に対して1%以下になった時点を、反応完了とした。
【0095】
(3)Cu上の硬化レリーフパターンの解像度
6インチシリコンウェハー(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて200nm厚のTi、400nm厚のCuをこの順にスパッタした。続いて、このウェハー上に、後述の方法により調製した感光性樹脂組成物をコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、乾燥することにより10μm厚の塗膜を形成した。この塗膜に、テストパターン付マスクを用いて、i線フィルターを装着したプリズマGHI(ウルトラテック社製)により250mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、この塗膜を、現像液としてシクロペンタノンを用いてコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートでリンスすることにより、Cu上のレリーフパターンを得た。
Cu上に該レリーフパターンを形成したウェハーを、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、230℃で2時間加熱処理することにより、Cu上に約6~7μm厚の樹脂からなる硬化レリーフパターンを得た。
作製したレリーフパターンを、光学顕微鏡下で観察し、最少開口パターンのサイズを求めた。このとき、得られたパターンの開口部の面積が、対応するパターンマスク開口面積の1/2以上であれば解像されたものとみなし、解像された開口部のうち最小面積を有するものに対応するマスク開口辺の長さを解像度とした。
「優」:最小開口パターンのサイズが10μm未満
「良」:最小開口パターンのサイズが10μm以上14μm未満
「可」:最小開口パターンのサイズが14μm以上18μm未満
「不可」:最小開口パターンのサイズが18μm以上
【0096】
(4)保存安定性評価
感光性樹脂組成物を調製後、室温(23.0℃±0.5℃、相対湿度50%±10%)で3日間攪拌した後の状態を評価した。評価結果として、全体が混和した状態のものを「良」、樹脂組成物中で相分離が発生したものを「不良」とした。
【0097】
(5)誘電率、誘電正接測定
6インチシリコンウェハー(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて100nm厚のアルミニウム(Al)をスパッタし、スパッタAlウェハー基板を準備した。
ネガ型感光性樹脂組成物を、スピンコート装置(D-spin60A型、SOKUDO社製)を使用して上記スパッタAlウェハー基板にスピンコートし、110℃で180秒間加熱乾燥して、スピンコート膜を作製した。その後、アライナ(PLA-501F、キャノン社製)を用いて露光量600mJ/cm2のghi線で全面露光し、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ製、形式名VF-2000B)を用いて、窒素雰囲気下、230℃で2時間の加熱硬化処理を施し、硬化膜を作製した。硬化膜の膜厚は、後述する手法にて測定した。この硬化膜を、ダイシングソー(ディスコ製、型式名DAD-2H/6T)を用いて縦80mm、横60mm、もしくは縦40mm、横30mmにカットし、10%塩酸水溶液に浸漬してシリコンウェハー上から剥離し、フィルムサンプルとした。
【0098】
フィルムサンプルを共振器摂動法にて10、28、40、60GHzにおける比誘電率、誘電正接を算出した。測定方法の詳細は以下の通りである。
(測定方法)
摂動方式スプリットシリンダ共振器法
(装置構成)
ネットワークアナライザ:PNA Network analyzer E5224B
(Agilent technologies社製)
スプリットシリンダ共振器:CR-710(関東電子応用開発社製、測定周波数:約10GHz)、CR-728(関東電子応用開発社製、測定周波数:約28GHz)、CR-740(関東電子応用開発社製、測定周波数:約40GHz)、CR-760(関東電子応用開発社製、測定周波数:約60GHz)
【0099】
(6)膜厚測定
6インチシリコンウェハー(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて100nm厚のアルミニウム(Al)をスパッタし、スパッタAlウェハー基板を準備した。
ネガ型感光性樹脂組成物を、スピンコート装置(D-spin60A型、SOKUDO社製)を使用して上記スパッタAlウェハー基板にスピンコートし、110℃で180秒間加熱乾燥して、スピンコート膜を作製した。その後、アライナ(PLA-501F、キャノン社製)を用いて露光量600mJ/cm2のghi線で全面露光し、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ製、形式名VF-2000B)を用いて、窒素雰囲気下、230℃で2時間の加熱硬化処理を施し、硬化膜を作製した。硬化膜の膜厚は、段差計(P-15、KLA-Tenchore社製)を用いて測定した。
【0100】
<製造例1>((A)ポリイミド前駆体(ポリマーA-1)の合成)
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0g及びγ-ブチロラクトン400mlを加えて室温下で攪拌しながらピリジン79.1gを加えて、反応混合物を得た。反応による発熱の終了後、室温まで放冷し、更に16時間静置した。
【0101】
次に、氷冷下において、反応混合物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を、攪拌しながら40分かけて加え、続いて4,4’-オキシジアニリン(ODA)93.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、攪拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌した後に、γ-ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
【0102】
得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾取し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製「アンバーリストTM15」)を用いて精製し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾取した後に真空乾燥することにより、粉末状のポリマーA-1を得た。
このポリマーA-1の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、22,000であった。
【0103】
<製造例2>(ポリイミド前駆体(ポリマーA-2)の合成)
上記製造例1において、ODA93.0gに代えて2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン(BAPP)175.9gを用いた以外は、製造例1に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、ポリマーA-2を得た。
このポリマーA-2の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、24,000であった。
【0104】
<製造例3>(ポリイミド前駆体(ポリマーA-3)の合成)
上記製造例1において、ODA93.0gに代えて、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}ケトン169.9gを用いた以外は、製造例1に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、ポリマーA-3を得た。
このポリマーA-3の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、21,000であった。
【0105】
<製造例4>(ポリイミド前駆体(ポリマーA-4)の合成)
上記製造例1において、ODPA155.1gに代えて、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)酸二無水物260.2gを、ODA93.0gに代えて、BAPP175.9gを用いた以外は、製造例1に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、ポリマーA-4を得た。
このポリマーA-4の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、29,000であった。
【0106】
<製造例5>(ポリイミド前駆体(ポリマーA-5)の合成)
上記製造例2において、ODPA155.1gに代えて、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)酸二無水物260.2gを、ODA93.0gに代えて、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}ケトン169.9gを用いた以外は、製造例1に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、ポリマーA-5を得た。
このポリマーA-5の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、28,000であった。
【0107】
<製造例6>(ポリイミド前駆体(ポリマーA-6)の合成)
上記製造例1において、ODPA155.1gに代えて、ODPA77.6g、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)酸二無水物130.1gを、ODA93.0gに代えて、BAPP175.9gを用いた以外は、製造例1に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、ポリマーA-6を得た。 このポリマーA-6の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、24,000であった。
【0108】
<製造例7>(ポリイミド前駆体(ポリマーA-7)の合成)
上記製造例1において、ODPA155.1gに代えて、BPDA73.6g、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)酸二無水物130.1gを、ODA93.0gに代えて、BAPP175.9gを用いた以外は、製造例1に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、ポリマーA-7を得た。
このポリマーA-7の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、24,000であった。
【0109】
<製造例8>(ポリイミド前駆体(ポリマーA-8)の合成)
上記製造例1において、ODA93.0gに代えて2,2-ビス{3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン(MBAPP)219.3gを用いた以外は、製造例1に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、ポリマーA-8を得た。
このポリマーA-8の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、25,000であった。
【0110】
<製造例9>(低誘電正接化剤C-1の合成)
アデカスタブAO-40(ADEKA製)38.3gを、窒素雰囲気下にした1Lセパらブルフラスコに入れ、トルエン383g及びトリエチルアミン(TEA)60.7gを加えて常温で溶解させた。次に、氷冷下において3,3-ジメチルブチリルクロリドを29.6g加えて、昇温が見られなくなるのを確認した後、30℃まで加温して1時間反応させた。GPCで反応の完了を確認した後、得られた反応溶液を陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製「アンバーリスト
TM15」)を用いて精製した。精製した反応溶液に酢酸エチルを300mL加えて分液漏斗に移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、水で10回分液精製した。得られた有機層はエバポレーターで溶媒を留去し、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-1を得た。
【化57】
【0111】
<製造例10>(低誘電正接化剤C-2の合成)
アデカスタブAO-40(ADEKA)38.3gに代えて、AO-80(ADEKA製)74.1gを用いた以外は、製造例9に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-2を得た。
【化58】
【0112】
<製造例11>(低誘電正接化剤C-3の合成)
アデカスタブAO-30(ADEKA製)54.5gを、窒素雰囲気下にした1Lセパらブルフラスコに入れ、トルエン545g及びトリエチルアミン(TEA)91.1gを加えて常温で溶解させた。次に、氷冷下において3,3-ジメチルブチリルクロリドを44.4g加えて、昇温が見られなくなるのを確認した後、30℃まで加温して1時間反応させた。GPCで反応の完了を確認した後、得られた反応溶液を陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製「アンバーリスト
TM15」)を用いて精製した。精製した反応溶液に酢酸エチルを300mL加えて分液漏斗に移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、水で10回分液精製した。得られた有機層はエバポレーターで溶媒を留去し、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-3を得た。
【化59】
【0113】
<製造例12>(低誘電正接化剤C-4の合成)
アデカスタブAO-30(ADEKA製)54.5gに代えて、cyanox1790 69.9gを用いた以外は、製造例11に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-4を得た。
【化60】
【0114】
<製造例13>(低誘電正接化剤C-5の合成)
アデカスタブAO-30(ADEKA製)54.5gに代えて、cyanox1790 69.9gを、3,3-ジメチルブチリルクロリド44.4gに代えて、ヘプタノイルクロリド49.0gを用いた以外は、製造例11に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-5を得た。
【化61】
【0115】
<製造例14>(低誘電正接化剤C-6の合成)
アデカスタブAO-30(ADEKA製)54.5gに代えて、cyanox1790 69.9gを、3,3-ジメチルブチリルクロリド44.4gに代えて、メタクリロイルクロリド34.5gを用いた以外は、製造例11に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-6を得た。
【化62】
【0116】
<製造例15>(低誘電正接化剤C-7の合成)
アデカスタブAO-30(ADEKA製)54.5gに代えて、cyanox1790 69.9gを、3,3-ジメチルブチリルクロリド44.4gに代えて、ベンゾイルクロリド46.4gを用いた以外は、製造例11に記載の方法と同様にして反応を行うことにより、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-7を得た。
【化63】
【0117】
<製造例16>(低誘電正接化剤C-8の合成)
4,4’,4’’,4’’’-[(1-メチルエチリデン)-1-イリデン]テトラキス[2-メチルフェノール](本州化学工業製)63.3gを、窒素雰囲気下にした1Lセパらブルフラスコに入れ、トルエン63.3g及びトリエチルアミン(TEA)121.4gを加えて常温で溶解させた。次に、氷冷下において3,3-ジメチルブチリルクロリドを44.4g加えて、昇温が見られなくなるのを確認した後、30℃まで加温して1時間反応させた。GPCで反応の完了を確認した後、得られた反応溶液を陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製「アンバーリスト
TM15」)を用いて精製した。精製した反応溶液に酢酸エチル300mLを加えて分液漏斗に移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、水で10回分液精製した。得られた有機層はエバポレーターで溶媒を留去し、下記化合物を主成分とする、低誘電正接化剤C-8を得た。
【化64】
【0118】
(C)低誘電正接化剤として、下記化合物は提供されたものをそのまま用いた。
C-9:SR-3000(大八化学製)
C-10:PX-200(大八化学製)
【0119】
実施例、比較例には下記化合物を用いた。
光重合開始剤B-1:PBG-304(常州強力電子社製)
光重合開始剤B-2:PBG-305(常州強力電子社製)
光重合開始剤B-3:PBG-3057(常州強力電子社製)
溶媒D-1:γ―ブチロラクトン
溶媒D-2:ジメチルスルホキシド(DMSO)
溶媒D-3:N-メチル-2-ピロリドン
ポリマーE-1:ポリスチレン(重量平均分子量:20,000)
【0120】
<実施例1>
(A)成分として、ポリマーA-1を100g及び(B)成分として光重合開始剤B-1(5g)、(C)低誘電正接化剤としてC-1(15g)をγ-ブチロラクトン(200g)に溶解し、感光性樹脂組成物溶液とした。
この組成物について、上述の方法により評価した。評価結果は表1に示した。
【0121】
<実施例2~24、比較例1~3>
表1及び表2に記載の割合で樹脂組成物溶液とした以外は、実施例1と同様の方法で評価を行った。評価結果は表1及び表2に示した。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表1及び表2から明らかなように、実施例の誘電正接は、測定周波数によらず、比較例1よりも低い値を示した。また、比較例2はポリイミド樹脂とポリスチレンが相分離し、現像後のパターンは40μm以上で開口した。比較例3では、(C)低誘電正接化剤がポリイミド樹脂と相分離し、現像後のパターンは30μm以上で開口した。
【0127】
表1及び表2中、実施例1~24の40GHzおよび10GHzで得られる誘電正接の値を下記数式(i):
x=(tanδ40-tanδ10)/tanδ10 (i)
(ここで、tanδ40は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数40GHzでの誘電正接を示し、tanδ10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す)を用いて与えられるxの値は、0.14~0.19であり、比較例1は0.25であった。実施例1、24の結果から明らかなように、異なる膜厚の硬化膜を用いた場合も同じ結果が得られた。
表1及び表2中、実施例1~23の、10μmに成形した硬化膜の、60GHzおよび10GHzで得られる誘電正接の値を下記数式(ii):
x=(tanδ60-tanδ10)/tanδ10(ii)
(ここで、tanδ60は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数60GHzでの誘電正接を示し、tanδ10は摂動方式スプリットシリンダ共振器法による周波数10GHzの誘電正接を示す)に用いて与えられるxの値は、0.25~0.28であり、比較例1は0.34であった。実施例1、24の結果から明らかなように、異なる膜厚の硬化膜を用いた場合も同じ結果が得られた。
【0128】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。