(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180695
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 21/08 20060101AFI20241219BHJP
F25D 17/08 20060101ALI20241219BHJP
F25D 25/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F25D21/08 Z
F25D17/08 307
F25D25/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024186148
(22)【出願日】2024-10-22
(62)【分割の表示】P 2023049451の分割
【原出願日】2017-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
(72)【発明者】
【氏名】額賀 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】岡留 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 真申
(72)【発明者】
【氏名】小沼 智史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 福太郎
(72)【発明者】
【氏名】板倉 大
(72)【発明者】
【氏名】塩野 謙治
(72)【発明者】
【氏名】門傳 陽平
(57)【要約】
【課題】野菜室戻り風路で生じた結露水が除霜ヒータに影響を及ぼし難い冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷蔵庫1は、野菜室6と、野菜室6を冷却する冷凍用蒸発器14bを収納する冷凍用蒸発器室8bと野菜室6とを連通して野菜室6の冷気を冷凍用蒸発器室8bに流すとともに、野菜室6の上面を形成する断熱仕切壁29の下面から、断熱仕切壁28の内部を通りながら上方又は水平方向に向かって冷凍用蒸発器室8bに至る野菜室戻り風路18と、冷凍用蒸発器室8bの内側下部であって、野菜室戻り風路18のうちの冷凍用蒸発器室8bに開口する野菜室戻り流出口18bよりも上方に全部が位置する除霜ヒータ21と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵温度帯の貯蔵室と、
前記貯蔵室を冷却する冷却器を収納する収納室と前記貯蔵室とを連通して前記貯蔵室の冷気を前記収納室に流すとともに、前記貯蔵室の上面を形成する第1断熱仕切壁の下面から、前記第1断熱仕切壁の内部を通りながら上方又は水平方向に向かって前記収納室に至る第1風路と、
前記収納室の内側下部であって、前記第1風路のうちの前記収納室に開口する戻り口よりも上方に全部が位置する除霜ヒータと、を備える
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫であって、
前記冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室に吐出するとともに、前記冷蔵庫の正面視で前記除霜ヒータ及び前記戻り口の側方に配置される吐出口を更に備える
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷蔵庫であって、
前記収納室と前記貯蔵室とを連通して、前記冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室に流すとともに、第2断熱仕切壁を通過して上下方向に延在する第2風路と、
前記第2風路の下端近傍に設けられ、前記貯蔵室への送風量を制御する手段と、を更に備え、
前記第2風路の側方には、冷凍温度帯の貯蔵室が配置される
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3に記載の冷蔵庫であって、
前記手段は、前記第2断熱仕切壁の内部に配置される
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1に記載の冷蔵庫であって、
飲料のボトルを収納するボトル収納スペースを、前記貯蔵室の内部に配置された容器の内部に備え、
前記ボトル収納スペースの上方には、前記第1風路の入口が配置される
ことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として,例えば特開2006-64256号公報(特許文献1)及び特開2006-250406号公報(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1には,本体である外郭が断熱箱体で構成されており,この断熱箱体の内部空間(すなわち庫内)は,上方から冷蔵室,アイス室,冷凍や冷蔵を選べるセレクト室,冷凍室,野菜室を備え,冷蔵室は冷蔵室用蒸発器である第一蒸発器で,また,アイス室,セレクト室および冷凍室は冷凍室用蒸発器である第二蒸発器で冷却され,野菜室は,冷凍室との間の隔壁などを介して,冷凍室の冷気で間接的に冷却される冷蔵庫が開示されている(例えば特許文献1の
図3)。
【0004】
特許文献2には,上から冷蔵室 ,冷凍室,野菜室が形成され,冷蔵室に設けられた冷
却器で,冷蔵室及び野菜室を冷却する冷蔵庫が開示されている(例えば特許文献2の段落0011)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-64256号公報
【特許文献2】特開2006-250406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の冷蔵庫は,冷蔵室用蒸発器によって冷蔵室を冷却し,冷凍室用蒸発器によって,アイス室,セレクト室および冷凍室を冷却し,冷凍室の下方に設けられた野菜室は,冷凍室との間の隔壁などを介して,冷凍室の冷気で間接的に冷却する。
【0007】
野菜室を間接的に冷却する場合,野菜室の冷却能力を高めるためには隔壁を介した熱移動を促進する必要がある。一般に隔壁を介した熱移動の促進には,隔壁によって隔てられた空間(冷凍室と野菜室)の温度差を拡大することが有効となる。したがって,周囲環境温度が高い,野菜室に温度が高い食品を収納した,あるいは,食品等を挟み込むことにより野菜室扉と箱体の間に隙間が生じているといった事由により野菜室の負荷が大きく,冷却能力を十分高める必要がある場合には,冷凍室を過度に低温に維持する必要があり,省エネルギー性能が低下するといった問題が生じていた。
【0008】
また,特許文献2に記載の冷蔵庫は,冷蔵室に設けられた冷却器で,冷蔵室及び野菜室を冷却するので,冷蔵室からの冷気を野菜室に送るための経路や,野菜室から冷蔵室に冷気を戻す経路が必要になるため,スペース効率が低い,すなわち,内容積が減少することが問題となっていた。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり,外気温度の高低によらず高い省エネルギー性能を発揮でき,さらにスペース効率も高い冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために,例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが,その一例を挙げるならば,冷蔵温度帯の貯蔵室と,前記貯蔵室を冷却する冷却器を収納する収納室と前記貯蔵室とを連通して前記貯蔵室の冷気を前記収納室に流すとともに,前記貯蔵室の上面を形成する第1断熱仕切壁の下面から,前記第1断熱仕切壁の内部を通りながら上方又は水平方向に向かって前記収納室に至る第1風路と,前記収納室の内側下部であって,前記第1風路のうちの前記収納室に開口する戻り口よりも上方に全部が位置する除霜ヒータと,を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,外気温度の高低によらず高い省エネルギー性能を発揮でき,さらにスペース効率も高い冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクル構成を表す概略図
【
図5】実施例1に係る冷蔵庫の制御を表すフローチャート
【
図6】実施例1に係る冷蔵庫の制御を表すタイムチャートの一例
【
図7】実施例1に係る冷蔵庫の冷媒の状態を示すモリエル線図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明の実施例について,適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0014】
本発明に係る冷蔵庫の第一の実施例(実施例1)について説明する。まず,実施例1に係る冷蔵庫の構成を
図1~
図4を参照しながら説明する。
図1は実施例1に係る冷蔵庫の正面図,
図2は
図1のA-A断面図,
図3は
図2のB-B断面図,
図4は実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を表す概略図である。冷蔵庫1の箱体10は,前方に開口しており,上方から冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),左右に並設された製氷室3と上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)の順に貯蔵室を形成している。冷蔵室2の前方の開口は,左右に分割された回転式の冷蔵室扉2a,2bにより開閉され,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6の前方の開口は,引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aによってそれぞれ開閉される。各扉は庫内側外周にパッキン(不図示)を備えており,扉を閉状態とした場合に,箱体10の前縁部と接触することにより庫内外の空気の流通を抑制するようにしている。以下では,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5は,まとめて冷凍温度帯室7と呼ぶ。
【0015】
冷蔵庫1の外形寸法は幅685mm,奥行き738mm,高さ1833mmであり,JIS9801-3:2015に基づく定格内容積は,冷蔵室308L,冷凍室180L,野菜室114Lである。
【0016】
冷凍温度帯室7は,基本的に庫内を冷凍温度帯(0℃未満)の例えば平均的に-18℃程度にした貯蔵室であり,冷蔵室2及び野菜室は庫内を冷蔵温度帯(0℃以上)とし,例えば冷蔵室2は平均的に4℃程度,野菜室は平均的に7℃程度にした貯蔵室である。
【0017】
ドア2aには庫内の温度設定の操作を行う操作部26を設けている。冷蔵庫1とドア2a,2bを固定するためにドアヒンジ(図示せず)が冷蔵室2上部及び下部に設けてあり,上部のドアヒンジはドアヒンジカバー16で覆われている。
【0018】
図2に示すように,外箱10aと内箱10bとの間に発泡断熱材(例えば発泡ウレタン)を充填して形成される箱体10により,冷蔵庫1の庫外と庫内は隔てられている。箱体10には発泡断熱材に加えて複数の真空断熱材36を,鋼板製の外箱10aと合成樹脂製の内箱10bとの間に実装している。冷蔵室2と,上段冷凍室4及び製氷室3は断熱仕切壁28によって隔てられ,同様に下段冷凍室5と野菜室6は断熱仕切壁29によって隔てられている。また,製氷室3,上段冷凍室4,及び下段冷凍室5の各貯蔵室の前面側には,ドア3a,4a,5aの隙間を介した庫内外の空気の流通を防ぐために,断熱仕切壁30を設けている。
【0019】
冷蔵室2のドア2a,2bの庫内側には複数のドアポケット33a,33b,33cと,複数の棚34a,34b,34c,34dを設け,複数の貯蔵スペースに区画されている。冷凍温度帯室7及び野菜室6には,それぞれドア3a,4a,5a,6aと一体に引き出される製氷室容器(図示せず),上段冷凍室容器4b,下段冷凍室容器5b,野菜室容器6bを備えている。野菜室容器6bは,上下2段に分かれており,下段側の前方には飲料のボトル類を収納できるボトル収納スペース6cを備えている。ボトル収納スペース6cの高さ寸法は,1.5Lや2Lの飲料のボトルを立てて収納できるように305mm以上確保している(本実施例では315mm)。また,飲料用のボトルを収納可能なことは,カタログや取扱説明書,広告媒体等の文面,図,写真,映像を通じてユーザーに周知される。
【0020】
断熱仕切壁28の上方には,冷蔵室2の温度帯より低めに設定可能なチルドルーム35を設けている。チルドルーム35は,ユーザーが操作部26を介して設定温度を選択することができる。例えば後述する冷蔵用蒸発器14aと冷蔵用ファン9aの制御,及び断熱仕切壁28内に設けたヒータ(図示せず)により,冷蔵温度帯の例えば約0~3℃にするモードと冷凍温度帯の例えば約-3~0℃にするモードに切換えることができる。
【0021】
冷蔵室2の略背部には冷蔵用蒸発器室8aを備えており,冷蔵用蒸発器室8a内には,冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)が収納されている。冷蔵用蒸発器14aの上方には冷蔵用ファン9aを備えている。また,冷蔵室2背部の幅方向の略中心には冷蔵室送風路11を備えており,冷蔵室送風路11の上部には冷蔵室2への冷気が吹き出す冷蔵室吐出口11aを備えている。冷蔵用蒸発器室8aの下部前方と右側上方には冷蔵室2に送られた空気が戻る冷蔵室戻り口15a及び15b(
図3参照)を備えている。冷蔵用蒸発器14aと熱交換して低温になった空気は,冷蔵用ファン9aを駆動することにより,冷蔵室送風路11,冷蔵室吐出口11aを介して冷蔵室2に送風され,冷蔵室2内を冷却する。冷蔵室2に送られた空気は,第一戻り経路を構成する冷蔵室戻り口15a及び15b(
図3参照)から冷蔵用蒸発器室8aに戻る。
【0022】
冷凍温度帯室7の略背部には冷凍用蒸発器室8bを備えており,冷凍用蒸発器室8b内には,冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)が収納されている。冷凍用蒸発器14bの上方には冷凍用ファン9bを備えている。また,冷凍温度帯室7の背部には冷凍室送風路12を備えており,冷凍用ファン9bの前方の冷凍室送風路12には複数の冷凍室吐出口12aを備えている。冷凍室用蒸発器室8bの下部前方には冷凍温度帯室7に送られた空気が戻る冷凍室戻り口17(
図2及び
図3参照)を備えている。
【0023】
野菜室6への風路となる野菜室送風路13(第一連通経路)は,冷凍室送風路12の右下から分岐形成され,断熱仕切壁29を通過している。野菜室送風路13の出口となる野菜室吐出口13aは,野菜室6背部右上の断熱仕切壁29下面の高さと略一致するように設けられ,下方に開口している。野菜室送風路13には,野菜室6の冷却制御手段である野菜室ダンパ19を備えている(
図3参照)。野菜室6と冷凍温度帯室7の間の断熱仕切壁29の左下部前方には,野菜室戻り流入口18aを備えており,断熱仕切壁29内を通過する野菜室戻り風路18(第二連通経路)を介して冷凍用蒸発器室8bの下部前方に設けられた野菜室戻り流出口18bに至る流路が形成されている。
【0024】
冷凍用蒸発器14bと熱交換して低温になった空気は,冷凍用ファン9bを駆動することにより,冷凍室送風路12,冷凍室吐出口12aを介して冷凍温度帯室7に送風され,冷凍温度帯室7内を冷却する。冷凍温度帯室7に送られた空気は,第二戻り経路を構成する冷凍室戻り口17から冷凍用蒸発器室8bに戻る。また,野菜室ダンパ19が開放状態の場合には,冷凍室送風路12に流入した冷気の一部が野菜室送風路13を流れ,野菜室吐出口13aを介して野菜室6に至り,野菜室6内を冷却する。野菜室6に送られた空気は,第三戻り経路を構成する野菜室戻り流入口18aから野菜室戻り風路18に入り,野菜室戻り流出口18bから冷凍用蒸発器室8bに戻る。
【0025】
本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用ファン9aは翼径が100mmの遠心ファン(後向きファン)であり,冷凍用ファン9bは翼径が110mmの軸流ファン(プロペラファン)である。通常の冷却運転時における冷蔵室ファンの回転速度は1000min-1以上であり,冷蔵室2を冷却する空気の風量は0.3m3/min以上である。また,冷凍室ファン9bの回転速度は約1300min-1であり,野菜室ダンパ19が開放状態では,冷凍温度帯室7を冷却する空気の風量は約0.6m3/minであり,野菜室6を冷却する空気の風量は約0.1m3/minである。遠心ファンは軸方向から吸込んだ空気を90度転向して径方向に吹き出す特性を有する。一方,軸流ファンは軸方向から吸込んだ空気を軸方向に吹き出す特性を有する。したがって,軸方向に吸込んだ流れを90度転向させる風路では,遠心ファンが実装性に優れ,軸方向に吸込んだ流れを軸方向に吹き出す風路では軸流ファンが実装性に優れる。従って,冷蔵用ファン9aとしては,前方から吸込んだ空気を,90度転向して上方の冷蔵室送風路11に吹き出す構成となるため,遠心ファンである後向きファンを採用し,冷凍用ファン9bとしては,後方から吸込んだ空気を前方の冷凍室送風路12に吹き出す構成となるために,軸流ファンであるプロペラファンを採用してスペース効率が高い冷蔵庫としている。
【0026】
冷蔵室2,冷凍温度帯室7,野菜室6の庫内背面側には,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43を備え,それぞれ冷蔵室2,冷凍温度帯室7,野菜室6の温度を検知している。また,冷蔵用蒸発器14aの上部には冷蔵用蒸発器温度センサ40a,冷凍用蒸発器14bの上部には冷凍用蒸発器温度センサ40bを備え,冷蔵用蒸発器14a,及び冷凍用蒸発器14bの温度を検知している。また,冷蔵庫1の天井部のドアヒンジカバー16の内部には,外気(庫外空気)の温度,湿度を検知する外気温湿度センサ37を備え,ドア2a,2b,3a,4a,5a,6aには,開閉状態をそれぞれ検知するドアセンサ(不図示)を備えている。
【0027】
図2及び
図3に示すように,冷凍用蒸発器室8bの下部には,冷凍用蒸発器14bを加熱する除霜ヒータ21を備えている。除霜ヒータ21は,例えば50W~200Wの電気ヒータで,本実施例では150Wのラジアントヒータを設けている。冷凍用蒸発器14bの除霜時に発生した除霜水(融解水)は,冷凍用蒸発器室8bの下部に備えた樋23bに流下し,排水口22b,冷凍用排水管27bを介して冷蔵庫1の後方(背面側)下部に設けられた機械室39に至り、機械室39内に設置された圧縮機24の上部の蒸発皿32に排出される。
【0028】
また,冷蔵用蒸発器14aの除霜方法については後述するが,冷蔵用蒸発器14aの除霜時に発生した除霜水は,冷蔵用蒸発器室8aの下部に備えた樋23aに流下し,排水口22a,冷蔵用排水管27aを介して圧縮機24の上部に備えた蒸発皿32に排出される。
【0029】
機械室39内には、上述の圧縮機24、蒸発皿32とともに、フィンチューブ式熱交換器である庫外放熱器50a、庫外ファン26を備えている。庫外ファン26の駆動により圧縮機24、庫外放熱器50a蒸発皿32に空気が流れ、圧縮機24と庫外放熱器50aからの放熱が促進され、省エネルギー性能を高めるとともに、蒸発皿32に通風することで、蒸発皿32に溜まった除霜水の蒸発を促進して溢水を抑制し、信頼性を高めている。
【0030】
図3に示すように,樋23aには,樋23aにおいて凍結した除霜水を融解させる樋ヒータ101を備えている。また,冷蔵用排水管27aには排水管上部ヒータ102及び排水管下部ヒータ103を備えている。なお,樋ヒータ101,排水管上部ヒータ102,排水管下部ヒータ103は,何れも除霜ヒータ21よりも容量が低いヒータであり,本実施例では樋ヒータ101を6W,排水管上部ヒータ102を3W,排水管下部ヒータ103を1Wとしている。
【0031】
ここで,冷蔵用ファン9aを駆動すると,冷蔵用蒸発器室8aの右上に設けられた冷蔵室戻り口15bを介して,冷蔵室2からの戻り空気を樋23aに向けて下方に流し,樋23aを加熱して温度を上げるようにしている。これにより,樋23aにおいて凍結した除霜水を融解させる樋ヒータ101の加熱量を低減する効果が得られ,省エネルギー性能を高めることができる。
【0032】
また,排水管27a下部は,冷凍温度帯室7及び冷凍用蒸発器室8bよりも外箱10aに近接させている。これにより,排水管27aにおいて凍結した除霜水を融解させる排水管下部ヒータ103の加熱量を低減することができ,省エネルギー性能が高くなる。
【0033】
冷蔵庫1の天井部(
図2参照)には,制御装置の一部であるCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板31を配置している。制御基板31は,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43,蒸発器温度センサ40a,40b等と接続され,前述のCPUは,これらの出力値や操作部26の設定,前述のROMに予め記録されたプログラム等を基に,圧縮機24や冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9bのON/OFFや回転速度制御,除霜ヒータ21,樋ヒータ101,排水管上部ヒータ102,排水管下部ヒータ103,及び,後述する三方弁52の制御等を行っている。
【0034】
図4は,実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクル(冷媒流路)である。本実施例の冷蔵庫1では,圧縮機24,冷媒の放熱を行う庫外放熱器50aと壁面放熱配管50b,断熱仕切壁28,29,30の前縁部への結露を抑制する結露抑制配管50c(庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを放熱手段と呼ぶ),冷媒流制御手段である三方弁52,冷媒を減圧させる減圧手段である冷蔵用キャピラリチューブ53a,冷凍用キャピラリチューブ53b,冷媒と庫内の空気を熱交換させて,庫内の熱を吸熱する冷蔵用蒸発器14a,及び,冷凍用蒸発器14bを備えている。また,三方弁52の上流には,冷凍サイクル中の水分を除去するドライヤ51を備え,冷蔵用蒸発器14aの下流と,冷凍用蒸発器14bの下流には,それぞれ液冷媒が圧縮機24に流入するのを防止する気液分離器54a,54bをそれぞれ備えている。さらに気液分離器54bの下流には逆止弁56を備えている。これらの構成要素を冷媒配管により接続することで冷凍サイクルを構成している。 なお本実施例の冷蔵庫は,冷媒に可燃性冷媒のイソブタンを用いており,冷媒量封入量は88gである。
【0035】
三方弁52は,流出口52aと,流出口52bを備えており,流出口52aを開放状態,流出口52bを閉鎖状態として,冷蔵用キャピラリチューブ53a側に冷媒を流す状態1(冷蔵モード),流出口52aを閉鎖状態,流出口52bを開放状態として,冷凍用キャピラリチューブ53b側に冷媒を流す状態2(冷凍モード),及び,流出口52a,52bの何れも閉鎖状態とする状態3(全閉モード)を備えた冷媒流制御弁である。
【0036】
三方弁52が状態1(冷蔵モード)に制御されている場合,圧縮機24から吐出した冷媒は,庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを流れて放熱し,ドライヤ51を介して三方弁52に至る。三方弁52は状態1(流出口52aが開放状態,流出口52bが閉鎖状態)となっているため,続いて,冷媒は冷蔵用キャピラリチューブ53aを流れて減圧され冷蔵用蒸発器14aに至り,冷蔵室2の戻り空気と熱交換する。冷蔵用蒸発器14aを出た冷媒は,気液分離器54aを通り,キャピラリチューブ53aとの接触部57aを流れることでキャピラリチューブ53a内を流れる冷媒と熱交換した後に圧縮機24に戻る。
【0037】
三方弁52が状態2(冷凍モード)に制御されている場合,圧縮機24から吐出した冷媒は,庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを流れて放熱し,ドライヤ51を介して三方弁52に至る。三方弁52は状態2(流出口52aが閉鎖状態,流出口52bが開放状態)となっているため,続いて,冷媒は冷凍用キャピラリチューブ53bを流れて減圧されて低温化し,冷凍用蒸発器14bで,冷凍温度帯室7の戻り空気及び野菜室6の戻り空気(野菜室ダンパ19が開放状態の場合)と熱交換する。冷凍用蒸発器14bを出た冷媒は,気液分離器54bを通り,キャピラリチューブ53bとの接触部57bを流れることでキャピラリチューブ53b内を流れる冷媒と熱交換した後に圧縮機24に戻る。
【0038】
三方弁52が状態3(全閉モード)に制御されている場合,圧縮機24を駆動すると,冷蔵用キャピラリチューブ53a,冷凍用キャピラリチューブ53bから冷媒が供給されない状態となるため,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒,または,冷凍用蒸発器14b内の冷媒が放熱手段側に回収される(詳細は後述)。
【0039】
本実施例の冷蔵庫は,三方弁52を状態1(冷蔵モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態,冷凍用ファン9bを停止状態とすることで冷蔵室2を冷却する「冷蔵運転」,三方弁52を状態2(冷凍モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,野菜室ダンパ19を開放状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態または停止状態,冷凍用ファン9bを駆動状態とすることで冷凍温度帯室7と野菜室6を冷却する「冷凍野菜運転」,三方弁52を状態2(冷凍モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,野菜室ダンパ19を閉鎖状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態または停止状態,冷凍用ファン9bを駆動状態とすることで冷凍温度帯室7を冷却する「冷凍運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態として,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒,または,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する「冷媒回収運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)として圧縮機24を停止状態,冷蔵用ファン9aを停止状態,冷凍用ファン9bを停止状態とする「運転停止」,三方弁52を状態2(冷凍モード)且つ圧縮機24を駆動状態に制御,または,三方弁52を状態3(全閉モード)且つ圧縮機24を停止状態に制御して,冷蔵用蒸発器14aに冷媒が流れない状態として冷蔵用ファンを駆動状態として,冷蔵用蒸発器14aの表面に成長した霜や蒸発器自体の蓄冷熱で冷蔵室2を冷却しつつ冷蔵用蒸発器14aの除霜を行う「冷蔵用蒸発器除霜運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)として圧縮機24を停止状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態または停止状態,冷凍用ファン9bを停止状態,除霜ヒータ21を通電状態とすることで,冷凍用蒸発器14bの除霜を行う「冷凍用蒸発器除霜運転」の各運転を適宜実施することで,冷蔵庫1の庫内各貯蔵室を良好に冷却するようにしている。
【0040】
以上で,本実施例に係る冷蔵庫の構成を説明したが,次に本実施例に係る冷蔵庫の制御について,
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は,本実施例に係る冷蔵庫の制御を表すフローチャート,
図6は,本実施例に係る冷蔵庫の制御を表すタイムチャートである。
【0041】
図5に示すように,本実施例の冷蔵庫は,電源の投入により(スタート),三方弁52を状態1(冷蔵モード),圧縮機24を低速駆動(800min
-1),冷蔵用ファン9aを駆動,冷凍用ファン9bを停止,野菜室ダンパ19を閉鎖して,冷蔵運転を開始する(ステップS101)。続いて,冷蔵運転終了条件が成立しているか否かが判定され(ステップS102),ステップS102が成立するまで冷蔵運転が継続される。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度センサ41が検知する冷蔵室温度T
Rが,冷蔵運転終了温度T
Roff以下(T
R≦T
Roff)の場合にステップS102が成立する。ステップS102が成立した場合(Yes),圧縮機24を低速駆動(継続),三方弁52を状態3(全閉モード)として,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行う(ステップS103)。このとき,冷蔵用ファン9aは駆動を継続し,冷媒回収運転中も冷蔵室2の冷却を行う。冷媒回収運転を所定時間実施し(本実施例の冷蔵庫では2分間)(ステップS104),続いて三方弁を状態2(冷凍モード),圧縮機24を高速駆動(1400min-1),冷蔵用ファン9aを駆動(継続),冷凍用ファン9bを駆動,野菜室ダンパ19を開放して,冷凍野菜運転,及び,冷蔵用蒸発器除霜運転を実施する(ステップS105)。
【0042】
次に,野菜室ダンパ閉条件が成立しているか否かが判定される(ステップS106)。本実施例の冷蔵庫では,野菜室温度センサ43が検知する野菜室温度TVが,野菜室ダンパ閉温度TVoff以下(TV≦TVoff)の場合にステップS106が成立する。ステップS106が成立していない場合(No),続いて冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件が成立しているか否かが判定される(ステップS107)。ステップS106が成立した場合(Yes),野菜室ダンパ19が閉鎖され(ステップS201),冷凍運転に移行後,ステップS107の判定に移る。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用蒸発器温度センサ40aが検知する冷蔵用蒸発器温度TRevpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度TRDoff以上(TRevp≧TRDoff)の場合にステップS107が成立する。ステップS107が成立していない場合(No),続いて冷凍運転終了条件が成立しているか否かが判定される(ステップS108)。ステップS107が成立した場合(Yes),冷蔵用ファン9aが停止され(ステップS202),冷蔵用蒸発器除霜運転終了後,ステップS108の判定に移る。本実施例の冷蔵庫では,野菜室ダンパ19が閉鎖状態,且つ,冷凍室温度TFが冷凍運転終了温度TFoff以下(TF≧TFoff)の場合にステップS108が成立する。ステップS108が成立していない場合(No),ステップS106の判定に戻る。ステップS108が成立した場合(Yes),圧縮機24を高速駆動(継続),三方弁52を状態3(全閉モード)として,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する冷媒回収運転を行う(ステップS109)。このとき,冷凍用ファン9bは駆動を継続し,冷媒回収運転中も冷凍温度帯室7の冷却を行う。
【0043】
冷媒回収運転を所定時間実施し(本実施例の冷蔵庫では1.5分間)(ステップS110),続いて冷蔵運転開始条件が成立しているか否かが判定される(ステップS111)。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵室温度TRが冷蔵運転開始温度TRon以上(TR≧TRon)の場合にステップS111が成立する。ステップS111が成立した場合(Yes),ステップS101に戻り,冷蔵運転が行われる。ステップS111が成立していない場合(No),圧縮機24を停止,冷凍用ファン9bを停止し(ステップS112),冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件の判定に移行する(ステップS113)。冷蔵用蒸発器除霜運転終了条件は,冷蔵用蒸発器温度TRevpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度TRDoff以上(TRevp≧TRDoff)の場合に成立する(ステップS107と同様の条件)。ステップS113が成立していない場合(No),続いて冷蔵運転開始条件が成立しているか否かが判定される(ステップS114)。ステップS113が成立した場合(Yes),冷蔵用ファン9aが停止され(ステップS203),冷蔵用蒸発器除霜運転終了後ステップS114の判定に移行する。ステップS114は冷蔵室温度TRが冷蔵運転開始温度TRon以上(TR≧TRon)の場合に成立する(ステップS111と同様の条件)。ステップS114が成立していない場合(No),ステップS113の判定に戻り,ステップS114が成立した場合,ステップS101に戻り冷蔵運転が行われる。
【0044】
図6は本実施例に係る冷蔵庫を,32℃,相対湿度70%に設置した場合の運転状態を表すタイムチャートである。時刻t
0は冷蔵室2を冷却する冷蔵運転を開始(
図5のステップS101)した時刻である。冷蔵運転では,三方弁52を状態1(冷蔵モード)に制御し,圧縮機24を低速(800min
-1)で駆動して冷蔵用蒸発器14aに冷媒を流し,冷蔵用蒸発器14aを低温にする。この状態で冷蔵用ファン9aを運転することで,冷蔵用蒸発器14aを通過して低温になった空気により冷蔵室2を冷却する。ここで,冷蔵運転中の冷蔵用蒸発器14aの温度は,後述する冷凍運転中の冷凍用蒸発器14bの温度よりも高くしている。一般に蒸発器の温度(蒸発温度)が高い方が,冷凍サイクル成績係数(圧縮機24の入力に対する吸熱量の割合)が高く,省エネルギー性能が高い。冷凍温度帯室7は冷凍温度に維持するために冷凍用蒸発器14bの温度を低温にする必要があるが,冷蔵室2は冷蔵温度に維持すれば良いので,冷蔵用蒸発器14aの温度を高めて省エネルギー性能を向上している。なお,本実施例の冷蔵庫1では,冷蔵運転中の冷蔵用蒸発器14aの温度が高くなるよう,冷蔵運転中の圧縮機24の回転速度を冷凍運転中よりも低速(800min
-1)にしている。
【0045】
冷蔵運転により冷蔵室2が冷却され,時刻t
1で冷蔵室温度センサ42により検知する冷蔵室温度T
Rが冷蔵運転終了温度T
Roffまで低下したことで,冷蔵運転から冷媒回収運転に切換わる(
図5のステップS102)。冷媒回収運転では三方弁52を状態3(全閉モード)に制御し,圧縮機24を低速駆動状態(800min
-1)で,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒を2分間回収する(
図5のステップS103,S104)。これにより,次の冷凍野菜運転及び冷凍運転での冷媒不足による冷却効率低下を抑制することができる。なお,このとき冷蔵用ファン9aを駆動させることで,冷蔵用蒸発器14a内の残留冷媒を冷蔵室2の冷却に活用するとともに,冷蔵室2内の空気による加熱で,冷蔵用蒸発器14a内の圧力低下が緩和される。これにより,圧縮機24の吸込冷媒の比体積増加が抑制され,比較的短い時間で多くの冷媒を回収できるようになり,冷却効率を高めることができる。
【0046】
冷媒回収運転が終わると(時刻t
2),続いて冷凍温度帯室7を冷却する冷凍野菜運転に切換わる(
図5のステップS105)。冷凍野菜運転では,三方弁52を状態2(冷凍モード)に制御し,圧縮機24を高速駆動状態(1400min
-1)とし,冷凍用蒸発器14bに冷媒を流し,冷凍用蒸発器14bを低温にする。この状態で野菜室ダンパ19を開放して,冷凍用ファン9bを運転することで,冷凍用蒸発器14bを通過して低温になった空気で冷凍温度帯室7と野菜室6を冷却する。このとき冷蔵用ファン9aの運転を継続することで,冷蔵用蒸発器除霜運転を実施している。これにより冷蔵用蒸発器14aの温度が上昇するとともに,霜や冷蔵用蒸発器の蓄冷熱による冷却効果によって,冷蔵室2の温度上昇が緩和される。
【0047】
時刻t
3で野菜室温度センサ43により検知する野菜室温度T
Vが野菜室ダンパ閉温度T
Voffに到達したことにより,野菜室ダンパ19が閉鎖され(
図5のステップS106,S201),冷凍運転に移行している。
【0048】
続いて時刻t
4に冷蔵用蒸発器温度センサ40aが検知する冷蔵用蒸発器14aの温度T
Revpが冷蔵用蒸発器除霜運転終了温度T
RDoffに到達したことにより,冷蔵用ファン9aが停止され,冷蔵用蒸発器除霜運転が終了している(
図5のステップS107,S202)。
【0049】
時刻t
5で冷凍室温度センサ41が検知する冷凍室温度T
Fが冷凍運転終了温度T
Foffに到達し,且つ,野菜室ダンパ19が閉鎖されていることから,冷凍運転が終了し(
図5のステップS108),三方弁52を状態3(全閉モード)に制御し,圧縮機24を高速駆動状態(1400min
-1)で,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を1.5分間回収する(
図5のステップS109,S110)。これにより,次の冷蔵運転での冷媒不足による冷却効率低下を抑制することができる。なお,このとき冷凍用ファン9bを駆動させることで,冷凍用蒸発器14b内の残留冷媒を冷凍温度帯室7の冷却に活用するとともに,冷凍温度帯室7内の空気による加熱で,冷凍用蒸発器14b内の圧力低下が緩和される。これにより圧縮機24の吸込冷媒の比体積増加が抑制され,比較的短い時間で多くの冷媒を回収できるようになり,冷却効率を高めることができる。
【0050】
冷媒回収運転が終了した時刻t
6において,冷蔵室温度T
Rが冷蔵運転開始温度T
Ron以上に達していることから,冷蔵運転開始条件が成立し(
図7のステップS111),再び冷蔵運転が開始される(
図7のステップS101)。
【0051】
以上で,本実施例の冷蔵庫の構成と,制御方法の説明をしたが,次に,本実施形態の冷蔵庫の奏する効果について説明する。
【0052】
本実施例の冷蔵庫は,上方から冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),冷凍温度帯室7,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)を備え,冷蔵室2の背部に冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)及び冷蔵用ファン9a,冷凍室の背部に冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)及び冷凍用ファン9bを備え,冷蔵用蒸発器14aと熱交換した空気を,冷蔵用ファン9aの駆動により送風して冷蔵室2を冷却し,冷凍用蒸発器14bと熱交換した空気を,冷凍用ファン9bの駆動により送風して冷凍温度帯室7及び野菜室6を冷却している。これにより高い省エネルギー性能を発揮でき,さらにスペース効率も高い冷蔵庫を提供することができる。理由を,
図7及び
図8を参照しながら以下で説明する。
【0053】
図7は本実施例の冷蔵庫に係る蒸発器の温度と成績係数の関係を示すモリエル線図,
図8は比較例を示す冷蔵庫の模式図である。
【0054】
まず,
図4及び
図7を参照しながら本実施例の冷蔵庫における冷凍サイクルの冷媒状態を説明する。本実施例の冷蔵庫では,冷蔵運転においては,圧縮機24の入口における低圧の冷媒(状態R1)が圧縮機24により圧縮され,高圧の状態R2で吐出される。その後,圧縮機24の筐体からの放熱及び放熱手段である庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cにおける放熱によって比エンタルピが低下し,状態R3(液状態)となる。冷蔵運転では,三方弁は状態1(冷蔵モード)となっているので,続いて,冷蔵用キャピラリチューブ53aを流れて減圧され,低温低圧の状態R4となって冷蔵用蒸発器14aに流入する。冷蔵用蒸発器14aでは,冷蔵室2からの戻り空気と熱交換して比エンタルピが上昇し冷蔵用蒸発器14aの出口において状態R5(ガス状態)となる。冷蔵用蒸発器14aから流れ出た冷媒は,冷蔵用キャピラリチューブ53aを流れる冷媒と熱交換することで比エンタルピが上昇し圧縮機24の入口(状態R1)に至る。冷蔵運転における冷蔵用蒸発器14aの吸熱量をQ1,冷蔵運転における圧縮機動力をW1,冷蔵運転時の冷凍サイクル成績係数COP1は,COP1=Q1/W1となる。
【0055】
また,冷凍温度帯室7を冷却する冷凍運転または冷凍野菜運転においては,圧縮機24の入口における低圧の冷媒(状態F1)が圧縮機24により圧縮され,高圧の状態F2で吐出される。その後,圧縮機24の筐体からの放熱及び放熱手段である庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cにおける放熱によって比エンタルピが低下し,状態F3(液状態)となる。冷凍運転または冷凍野菜運転では,三方弁は状態2(冷凍モード)となっているので,続いて,冷凍用キャピラリチューブ53bを流れて減圧され,低温低圧の状態F4となって冷凍用蒸発器14bに流入する。冷凍用蒸発器14bでは,冷凍温度帯室7あるいは野菜室6からの戻り空気と熱交換して比エンタルピが上昇し冷凍用蒸発器14bの出口において状態F5(ガス状態)となる。冷凍用蒸発器14bから流
れ出た冷媒は,冷凍用キャピラリチューブ53bを流れる冷媒と熱交換することで比エンタルピが上昇し圧縮機24の入口(状態F1)に至る。冷凍運転または冷凍野菜運転における冷凍用蒸発器14bの吸熱量をQ2,冷凍運転または冷凍野菜運転における圧縮機動力をW2とすると,冷凍運転時の冷凍サイクル成績係数COP2は,COP2=Q2/W2となる。
【0056】
このとき,冷蔵室2を冷却する冷蔵運転における冷蔵用蒸発器14aの温度(蒸発温度)と,冷凍温度帯室7を冷却する冷凍運転または冷凍野菜運転における冷凍用蒸発器14bの温度(蒸発温度)を比較すると,冷蔵運転における冷蔵用蒸発器14aの温度が高くなるようにしている。これは,冷蔵温度帯に維持される冷蔵室2を流れる空気の循環経路と,低温の冷凍温度帯に維持される冷凍温度帯室7を流れる空気の循環経路を分離することによって,冷蔵用蒸発器14aに低温の冷凍温度帯室7の空気が戻らないようにすることにより実現している。このように,冷蔵用蒸発器14aの温度を高くすることで,冷凍サイクル成績係数が向上するので,省エネルギー性能が高い冷蔵庫となる。
【0057】
図8(a),(b)は比較例の冷蔵庫であり,何れも上方から冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),冷凍温度帯室7,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)を備え,冷蔵温度帯に維持される冷蔵室2を流れる空気の循環経路と,低温の冷凍温度帯に維持される冷凍温度帯室7を流れる空気の循環経路が分離され,冷蔵室2の背部に冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)及び冷蔵用ファン9a,冷凍室の背部に冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)及び冷凍用ファン9bを備えた冷蔵庫である。
【0058】
図8(a)は,特許文献1に記載の冷蔵庫の構成を採用するものであり,冷蔵用蒸発器14aと熱交換した空気を,冷蔵用ファン9aの駆動により送風して冷蔵室2を冷却し,冷凍用蒸発器14bと熱交換した空気を,冷凍用ファン9bの駆動により送風して冷凍温度帯室7を冷却するものである。野菜室6は,冷凍温度帯室7の冷気により断熱仕切壁29を介して間接的に冷却される。一般に,仕切壁を介した熱移動量は温度差に比例するため,熱移動量を増加させ,野菜室6の冷却能力を高める必要がある場合は,温度差を拡大するように制御することが有効となる。従って,外気温度が高い場合や,野菜室に温度が高い食品を収納した場合,あるいは,食品等を挟み込むことにより野菜室扉と箱体の間に隙間が生じている等により野菜室の負荷が大きく,冷却能力を十分高める必要がある場合には,冷凍室を過度に低温に維持する必要があり,省エネルギー性能が低下するといった問題が生じる。尚,野菜室の負荷が大きい条件に合わせて仕切壁の断熱性能を低くすることも考えられるが,この場合は,外気温度が低く負荷が小さくなった場合に,野菜室6が過度に冷却され野菜が凍結するといった不具合が生じるため,電気ヒータによる加温(温度補償)が必要となり省エネルギー性能が低下する。
【0059】
図8(b)は,特許文献2に記載の冷蔵庫の構成を採用するものであり,冷蔵用蒸発器14aと熱交換した空気を,冷蔵用ファン9aの駆動により送風して冷蔵室2及び野菜室6を冷却し,冷凍用蒸発器14bと熱交換した空気を,冷凍用ファン9bの駆動により送風して冷凍温度帯室7を冷却するものである。この構成では,冷蔵用ファン9aにより送り出された空気を野菜室6に送風する野菜室送風路13と,野菜室6を冷却した空気を冷蔵室用蒸発器室8aに戻す野菜室戻り風路18が低温の冷凍室2または冷凍用蒸発器室8bを通過する。野菜室送風路13及び野菜室戻り風路18を流れる空気の温度は比較的高いため,絶対湿度も高くなりやすく,野菜室送風路13及び野菜室戻り風路18内には霜が成長しやすい。霜による風路の閉塞を防ぐためには,野菜室送風路13及び野菜室戻り風路18と冷凍室2または冷凍用蒸発器室8bの間に断熱壁(断熱部材)を設けて,野菜室送風路13及び野菜室戻り風路18の内側表面の温度が低下しすぎないようにする必要がある。従って風路のスペースと,断熱壁(断熱部材)のスペースが必要となるため冷凍室2または冷凍用蒸発器室8bの縮小を伴う。冷凍室2を縮小する場合,有効内容積が減少するためスペース効率が悪化し,冷凍用蒸発器室8bを縮小する場合,収納される冷凍用蒸発器14bの縮小を伴うため,熱交換性能低下による省エネルギー性能の低下を招く。
【0060】
一方,本実施例の冷蔵庫は,
図3に示すように,冷蔵用蒸発器14aと熱交換した空気を,冷蔵用ファン9aの駆動により送風して冷蔵室2を冷却し,冷凍用蒸発器14bと熱交換した空気を,冷凍用ファン9bの駆動により送風して冷凍温度帯室7及び野菜室6を冷却している。これにより,冷蔵室2は冷蔵用ファン9a,冷凍温度帯室7及び野菜室6は冷凍用ファン9bにより冷却能力を制御できるので,野菜室の負荷の大小に依らず冷蔵室2,冷凍温度帯室7及び野菜室6を効率良く冷却でき,省エネルギー性能が高い冷蔵庫となる。また,冷蔵温度帯の貯蔵室を流れる空気が冷凍室2または冷凍用蒸発器室8bを通過する構成とならないため,スペース効率が高くなる。すなわち省エネルギー性能が高く,スペース効率も高い冷蔵庫となる。
【0061】
本実施例の冷蔵庫は,野菜室送風路13が断熱仕切壁29を通過するように設けている。これにより,冷凍用蒸発器室8b,冷凍室送風路12,冷凍温度帯室7または冷凍室戻り口17の何れかと野菜室6とが連通される。その結果,送風経路の長さを短く抑えることができ,スペース効率を高めることができるとともに,風路抵抗も低く抑えることができるので,送風効率が高く省エネルギー性能に優れた冷蔵庫になる。
【0062】
本実施例の冷蔵庫は,野菜室戻り風路18が断熱仕切壁29内を流れるように設けている。これにより,冷蔵温度帯の野菜室6からの温度が比較的高い戻り冷気が冷凍温度帯室7に影響することを抑制するための断熱手段として,別体の断熱部材を用いる必要がなくなるため,スペース効率に優れた冷蔵庫となる。
本実施例の冷蔵庫は,野菜室送風路13の下端の開口(野菜室吐出口13a)の高さ位置を,断熱仕切壁29の高さ位置と略一致させ,野菜室6の上方から冷却空気を吹き出すようにしている(
図3参照)。冷凍用蒸発器14bと熱交換した低温冷気を野菜室6内(例えば背面)に導く場合は,風路の野菜室6側の表面が低温となり,結露が生じやすくなるため,野菜室6と風路の間に断熱壁(断熱部材)を設ける必要がある。また,低温空気は密度が大きいことから,下方に向かって流れる性質があるため,上方の空間に低温空気を供給することが冷却効率向上には有効となる。本実施例の冷蔵庫では,野菜室送風路13の下端の開口(野菜室吐出口13a)の高さ位置を,断熱仕切壁29の高さ位置と略一致させることで,野菜室送風路13の下端近傍の断熱壁を断熱仕切壁29で兼ね,送風経路の長さも短く抑えることで,野菜室6内に断熱壁(断熱部材)や風路を設けることによるスペース効率低下を抑制しつつ,野菜室6の上方から冷却空気を吹き出すことで,野菜室6の冷却効率を高めている。
【0063】
本実施例の冷蔵庫は野菜室6の温度を検知する野菜室温度センサ43を備え,野菜室送風路13に野菜室ダンパ19を備えている。これにより,野菜室の冷却の過不足に応じて,野菜室ダンパ19を開閉して野菜室への送風を制御することができるので,冷却効率が高い省エネ性に優れた冷蔵庫となる。
【0064】
本実施例の冷蔵庫は,野菜室ダンパ19を野菜室送風路13の下端近傍に設けている。例えば,野菜室送風路13の上端近傍(冷凍室6の内部)に野菜室ダンパ19を設けた場合,野菜室ダンパ19を閉鎖状態としても野菜室ダンパ19より下流(野菜室6側)の空気が冷凍室6によって冷却されて低温になり,下降流を形成することがある。このように野菜室ダンパ19を閉塞しても野菜室6に低温空気が供給されると,特に野菜室6の負荷が小さい場合などには野菜室6の温度が下がりすぎる場合があるため,本実施例の冷蔵庫では,野菜室ダンパ19を野菜室送風路13の下端近傍に設けることで,野菜室ダンパ19を閉鎖状態としても野菜室送風路13から低温空気が野菜室6に流れ込み野菜室6が冷えすぎることを抑制できるので,野菜室6を効率良く冷却できる。
【0065】
本実施例の冷蔵庫は,野菜室6内に飲料のボトルを収納するボトル収納スペース6cを備えており,野菜室6に低温の冷凍室6からの冷気を供給するようにしている。これにより飲料のボトルを効率良く冷却することができる。
冷凍温度帯室7の略背部には冷凍用蒸発器室8bが備えられており,冷凍用蒸発器室8b内には,冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)が収納されている。冷凍用蒸発器14bの上方には冷凍用ファン9bが設けられている。また,冷凍用ファン9bの下流には,冷凍温度帯室7への送風量を制御する手段である冷凍室ダンパ20が設けられている。また,野菜室6への風路となる野菜室送風路13は,冷凍室送風路12から分岐形成され,野菜室背部右上の野菜室吐出口13aに至る。野菜室送風路13には,野菜室6への送風量を制御する手段である野菜室ダンパ19が設けられている。このように,冷凍用ファン9bの下流における風路は,冷凍室ダンパ20へ向かう冷凍室送風路12と,野菜室ダンパ19へ向かう野菜室送風路13とに分岐している。野菜室6と冷凍温度帯室7の間の断熱仕切壁29には,野菜室戻り流入口18aが設けられており,野菜室戻り風路18を介して冷凍用蒸発器室8bの下部に空気が戻る流路が形成されている。
冷凍用蒸発器14bと熱交換して低温になった空気は,冷凍室ダンパ20が開放状態の場合には,冷凍用ファン9bを駆動することにより,冷凍室送風路12,冷凍室吐出口12aを介して冷凍温度帯室7に送風され,冷凍温度帯室7内を冷却する。冷凍温度帯室7に送られた空気は冷凍室戻り口17から冷凍用蒸発器室8bに戻る。また,野菜室ダンパ19が開放状態の場合には,冷凍室送風路12に流入した冷気の一部が野菜室送風路13を流れ,野菜室吐出口13aを介して野菜室6に送風され,野菜室6内を冷却する。野菜室6に送られた空気は野菜室戻り流入口18aから野菜室戻り風路18に入り,野菜室戻り流出口18bから冷凍用蒸発器室8bに戻る。
以上のように本実施例の冷蔵庫は,本実施例の冷蔵庫は,上方から冷蔵室2(第一冷蔵温度帯室),冷凍温度帯室7,野菜室6(第二冷蔵温度帯室)を備え,冷蔵室2の背部に冷蔵用蒸発器14a(第一蒸発器)及び冷蔵用ファン9a,冷凍室の背部に冷凍用蒸発器14b(第二蒸発器)及び冷凍用ファン9bを備え,冷蔵用蒸発器14aと熱交換した空気を,冷蔵用ファン9aの駆動により送風して冷蔵室2を冷却し,冷凍用蒸発器14bと熱交換した空気を,冷凍室ダンパ20が開放状態の場合には,冷凍用ファン9bの駆動により冷凍温度帯室7に送風し,野菜室ダンパ19が開放状態の場合には,冷凍用ファン9bの駆動により野菜室6に送風して冷却することができる。また,冷凍室ダンパ20と野菜室ダンパ19が何れも開放状態の場合には,冷凍用ファン9bの駆動により冷凍温度帯室7と野菜室6の双方に送風して冷却することができる。これにより,例えば冷凍温度帯室7のみに温度が高い食品を収納した,あるいは,野菜室6のみに温度が高い食品を収納したといった事由により,冷凍温度帯室7または野菜室6の一方の負荷が高く,他方は十分冷却されている場合においては,冷凍室ダンパ20または野菜室ダンパ19のうち負荷が高い側の貯蔵室に向かう送風路に設けられたダンパのみを開放状態として冷却を行うことができる。従って,十分冷却されている貯蔵室を過度に冷却することを抑制できるので,省エネルギー性能の高い冷蔵庫となる。