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  • 特開-ブレード付き内径コレットチャック 図1
  • 特開-ブレード付き内径コレットチャック 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018070
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ブレード付き内径コレットチャック
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240201BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B23Q11/00 T
B23B31/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121137
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】赤津 典孝
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB39
(57)【要約】
【課題】簡単な構成によって線状の切屑を切断するブレード付き内径コレットチャックを提供すること。
【解決手段】筒形状の部材に放射状のスリットが複数形成され、そのスリットによって周方向に分割されたコレットが径方向外側に広がることによりワークを把持するチャック機構と、前記チャック機構に把持されるワークを位置決めするための着座面が形成された着座ブロックと、前記着座面の径方向外側に配置され、ワークの旋削によって発生する線状の切屑を切断するための一または二以上のブレードと、を有するブレード付き内径コレットチャック。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の部材に放射状のスリットが複数形成され、そのスリットによって周方向に分割されたコレットが径方向外側に広がることによりワークを把持するチャック機構と、
前記チャック機構に把持されるワークを位置決めするための着座面が形成された着座ブロックと、
前記着座面の径方向外側に配置され、ワークの旋削によって発生する線状の切屑を切断するための一または二以上のブレードと、
を有するブレード付き内径コレットチャック。
【請求項2】
前記ブレードは、薄板の鉄板が折り曲げられてネジ止めされたものである請求項1に記載のブレード付き内径コレットチャック。
【請求項3】
前記ブレードは、前記着座ブロックの着座面よりも正面側に突き出さない寸法で形成された請求項2に記載のブレード付き内径コレットチャック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工時に発生する線状の切屑を切断するブレードを備えたブレード付き内径コレットチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤で行われるワークの外周面の丸削りや端面削りなどでは切りくずが連続して線状になって発生する。このような切屑はワークや工具に巻き付いてしまい、旋盤における加工動作の妨げになってしまう。そのため、下記特許文献1には、切屑を工具に巻きつかせないようにするための提案がなされている。具体的には、ワークを把持または開放する複数のチャック爪に対し、風を発生させる羽根が形成され、ワーク加工時に回転する羽根から工具側に風が流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-193503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、それでは確実に線状の切屑を切断することが困難であるほか、十分な風圧を得るには羽根を大きくしなければならないため、チャック自体が大型化してしまう。また、風を発生させる形状をした羽根が、線状の切屑を新たに巻き付かせてしまう対象になりかねないとも考えられる。更に、前記従来例のチャックでは、旋盤加工する際の風速を切削する位置で一定範囲になるように加工条件を設定する必要があるなど、使い勝手がよくないほかコストもかかってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、簡単な構成によって線状の切屑を切断するブレード付き内径コレットチャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブレード付き内径コレットチャックは、筒形状の部材に放射状のスリットが複数形成され、そのスリットによって周方向に分割されたコレットが径方向外側に広がることによりワークを把持するチャック機構と、前記チャック機構に把持されるワークを位置決めするための着座面が形成された着座ブロックと、前記着座面の径方向外側に配置され、ワークの旋削によって発生する線状の切屑を切断するための一または二以上のブレードと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、着座面に当てられて位置決めされた円筒部を有するワークは、その内径側がチャック機構によって把持され回転が与えられることにより、当該ワークの外周面、バイトなどの工具が当てられ、旋削が行われることで線状の切屑が発生するが、その切屑は着座面の径方向外側に配置され同じく回転する一または二以上のブレードによって切断される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ブレード付き内径コレットチャックの一実施形態を示した側面の一部断面図である。
図2】ブレード付き内径コレットチャックの一実施形態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るブレード付き内径コレットチャックの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態のブレード付き内径コレットチャックを示した側面の一部断面図であり、図2は、同じブレード付き内径コレットチャックの正面図である。工作機械にはワークを把持して回転を与える主軸装置が設けられ、そこには対象とするワークや加工内容に応じて各種のチャック装置が組付けられる。チャック装置の一つに、ワークの外径を旋削するため、ワークを内側から把持する内径コレットチャックがある。
【0010】
本実施形態の内径コレットチャック1は、回転するスピンドル80の端部に固定され、工作機械の主軸装置を構成するものである。具体的には、スピンドル80の端部にスペーサ3を介して本体ブロック4が軸方向に重ねられてネジ止め固定されて一体になり、内径コレットチャック1の中心線Oがスピンドル80の回転軸に重なっている。そして、内径コレットチャック1は、その本体ブロック4に対してチャック機構が組付けられている。そのチャック機構は、中心位置に円柱形状のマンドレル5が固定され、その径方向外側には軸方向に移動可能なコレット6が設けられている。
【0011】
コレット6は、筒形状の部材に放射状のスリットが複数形成され、そのスリットによって周方向に分割された各先端部に把持部61が形成されている。マンドレル5の先端部分には正面側(図1の右側)に向けて径が小さくなる円錐台形状の外側テーパ面51が形成され、コレット6の把持部61がそのマンドレル5の先端部分にテーパ面同士が接触している。把持部61の内側には外側テーパ面51の角度に合わせた内側テーパ面が形成され、接したテーパ面同士が摺動するよう構成されている。
【0012】
また、コレット6は、把持部61の径方向外側に中心線Oと平行な把持面が形成され、ワークの筒状部内周面に当てられるよう構成されている。主軸装置は、中空部材であるスピンドル80の中に、中心線Oと同軸に配置されたドローバが通され、その中心線Oに沿って伸縮作動する油圧シリンダに連結されている。コレット6は、そのドローバに対して連結され、油圧シリンダの伸縮作動によって中心線Oに沿った方向に変位するよう構成されている。
【0013】
コレット6の径方向外側には着座ブロック7が配置され、コレット6に嵌められたワークの端部が突き当てられるようになっている。着座ブロック7には、ワークが当てられる着座面71が形成され、その着座面71に開口したエア流路を流れるエアによって、着座したワークWに対する着座チェックが可能な構成がとられている。そして、本実施形態にはチャック正面側に突き立てられるようにブレード8が取り付けられている。ブレード8は、加工時に発生する線状の切屑を切断するためのものであり、着座ブロック7の外周部において同一円周上に等間隔で3箇所に設けられている。
【0014】
ブレード8は、薄板の鉄板を90度に折り曲げたものであり、一方の面が着座ブロック7にネジ止めされ、突き立てられた他の面がワークWから延びる線状の切屑を切断する切断部81として構成されている。ブレード8は、切断部81が径方向に対して直交するように取り付けられているが、例えば、回転方向に向いた前側が中心方向に傾くよう傾斜をつけるようにしてもよい。
【0015】
ブレード8は、把持されるワークWの径方向外側に位置するように、着座面71から離れた着座ブロック7の外周部分に配置されている。また、ブレード8の切断部81は、ワークWに対して外径切削を行う工具と干渉しない大きさで形成されている。具体的には、中心線Oに平行な起立した切断部81の高さが、着座ブロック7の着座面71に揃えられている。すなわち、切断部81の先端は、ワークWの端部の位置となる着座面71よりも正面側へ突き出さない寸法で形成されている。
【0016】
内径コレットチャック1は、図1に示すように筒状のワークWに対して内側に入り込んだ状態で把持動作が行われる。油圧シリンダの作動によってドローバを介してコレット6が本体ブロック4の内部側(図1の左側)へと引き込まれる。引き込まれたコレット6は、その把持部61がマンドレル5の外側テーパ面51を摺動し、テーパ角度に従って径方向外側へと拡開する。そして、ワークWは、その円筒部分が拡開した把持部61によって内側から掴まれるようにしてクランプされる。
【0017】
ワークWを把持した内径コレットチャック1はスピンドル80と一体になって回転し、ワークWの外周にバイトが当てられることにより外径加工が行われる。そのとき、削られたワークWの外周面からは、バイトの当てられた位置から線状の切屑が発生して延びるが、その切屑は径方向外側で回転するブレード8の切断部81に当たって短く切られる。
【0018】
従って、ブレード付きの内径コレットチャック1は、これまでのように長くなった線状の切屑が工具に巻き付いてしまうことなどが防止できる。また、ブレード8は、薄板の鉄板を90度に折り曲げた簡単なものであるため、コストをかけることなく効果を達成することができる。そして、そのブレード8は、着座ブロック7にタップを切ってネジ止めするだけでよいため、従来の内径コレットチャックに対して簡単な改良によって前記効果を達成することができる。
【0019】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、内径コレットチャックの構造は、前記実施形態で示したマンドレル5とコレット6との構成に限るものでもない。また、ブレードの形状を前記実施形態とは異なるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1…内径コレットチャック 5…マンドレル 6…コレット 7…着座ブロック 8…ブレード 81…切断部

図1
図2