(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180702
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】芯材付き柱状改良体
(51)【国際特許分類】
E02D 5/20 20060101AFI20241219BHJP
E02D 5/46 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E02D5/20 101
E02D5/46
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024186590
(22)【出願日】2024-10-23
(62)【分割の表示】P 2021036423の分割
【原出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井畔 文彦
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】濱田 純次
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅路
(72)【発明者】
【氏名】奥村 豪悠
(72)【発明者】
【氏名】杉本 南
(57)【要約】
【課題】柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれを低減することを目的とする。
【解決手段】芯材付き柱状改良体10は、地盤Gに設けられた柱状改良体10と、柱状改良体10に埋設される芯材12と、を備え、芯材12は、複数の棒状鋼材22と、複数の棒状鋼材22を連結する波形せん断補強筋24と、を有する第一壁状筋20と、複数の棒状鋼材22と、複数の棒状鋼材22を連結する波形せん断補強筋24と、を有し、第一壁状筋20と対向する第二壁状筋20と、第一壁状筋20の棒状鋼材22の下部と、第二壁状筋20の棒状鋼材22の下部とを接続する接続鉄筋26と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けられた柱状改良体と、
前記柱状改良体に埋設される芯材と、
を備え、
前記芯材は、
複数の棒状鋼材と、複数の前記棒状鋼材を連結するせん断補強筋と、を有する第一壁状筋と、
複数の棒状鋼材と、複数の前記棒状鋼材を連結するせん断補強筋と、を有し、前記第一壁状筋と対向する第二壁状筋と、
前記第一壁状筋の前記棒状鋼材の下部と、前記第二壁状筋の前記棒状鋼材の下部とを接続する接続鉄筋と、
を有する、
芯材付き柱状改良体。
【請求項2】
前記第一壁状筋及び前記第二壁状筋の前記せん断補強筋は、波形せん断補強筋とされる、
請求項1に記載の芯材付き柱状改良体。
【請求項3】
前記接続鉄筋は、上側が開口したU字形状のU字状鉄筋とされる、
請求項1又は請求項2に記載の芯材付き柱状改良体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材付き柱状改良体に関する。
【背景技術】
【0002】
柱状改良体(ソイルセメント柱体)に芯材を埋設した山留めが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。また、鉄筋コンクリート部材において、主筋に対して斜めに配筋されたせん断補強筋が知られている(例えば、特許文献3,4参照)。
【0003】
特許文献2に開示された技術では、芯材としての鉄筋かごが取り付けられたH形鋼を加振しながら、硬化前の柱状改良体に落とし込んだ後、H形鋼のみを引き上げることにより、柱状改良体の内部に鉄筋かごを埋設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-182055号公報
【特許文献2】特開平3-191113号公報
【特許文献3】特開2002-115369号公報
【特許文献4】特開2002-266473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された技術において、鉄筋かごを構成する鉄筋等の棒状鋼材が柱状改良体に対して位置ずれすると、柱状改良体のせん断耐力が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法は、複数の棒状鋼材をせん断補強筋で連結した壁状筋がウェブの両側にそれぞれ配置されるとともに、前記棒状鋼材の上部が取り付けられたH形鋼を加振しながら硬化前の柱状改良体に落とし込む落とし込み工程と、前記H形鋼から前記棒状鋼材の上部を取り外した状態で、硬化前の前記柱状改良体から前記H形鋼を引き上げる引き上げ工程と、を備える。
【0008】
第1態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法によれば、落とし込み工程において、複数の棒状鋼材をせん断補強筋で連結した壁状筋がウェブの両側にそれぞれ配置されるとともに、棒状鋼材の上部が取り付けられたH形鋼を加振しながら硬化前の柱状改良体に落とし込む。
【0009】
次に、引き上げ工程において、H形鋼から棒状鋼材の上部を取り外した状態で、硬化前の柱状改良体からH形鋼を引き上げる。これにより、柱状改良体の内部に壁状筋が埋設(残置)される。
【0010】
ここで、本発明では、複数の棒状鋼材をせん断補強筋で連結し、壁状筋とすることにより、柱状改良体のせん断耐力を確保することができる。また、棒状鋼材の上部をH形鋼に取り付けることにより、柱状改良体に対する複数の棒状鋼材の位置ずれを低減することができる。
【0011】
このように本発明では、柱状改良体のせん断耐力を確保しつつ、柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれを抑制することができる。
【0012】
第2態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法は、第1態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法において、前記H形鋼の下端部には、互いに対向する一対の位置決め部が設けられ、前記落とし込み工程において、前記ウェブの両側にそれぞれ配置された前記壁状筋の前記棒状鋼材同士を、一対の前記位置決め部の間に挿入された接続鉄筋で接続した状態で、前記H形鋼を加振しながら硬化前の前記柱状改良体に落とし込み、前記引き上げ工程において、硬化前の前記柱状改良体から前記H形鋼を引き上げ、一対の前記位置決め部の間から前記接続鉄筋を抜く。
【0013】
第2態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法によれば、H形鋼の下端部には、互いに対向する一対の位置決め部が設けられる。そして、落とし込み工程において、H形鋼のウェブの両側にそれぞれ配置された壁状筋の棒状鋼材同士を、一対の位置決め部の間に挿入された接続鉄筋で接続した状態で、H形鋼を加振しながら硬化前の柱状改良体に落とし込む。
【0014】
次に、引き上げ工程において、硬化前の柱状改良体からH形鋼を引き上げ、一対の位置決め部の間から接続鉄筋を抜く。これにより、柱状改良体の内部に一対の棒状鋼材が埋設(残置)される。
【0015】
このように本発明では、落とし込み工程において、一対の位置決め部の間に接続鉄筋を挿入することにより、接続鉄筋、及び接続鉄筋によって接続された複数の棒状鋼材の移動が制限される。したがって、柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれがさらに抑制される。
【0016】
また、引き上げ工程において、H形鋼を引き上げることにより、一対の位置決め部から接続鉄筋が抜ける。したがって、硬化前の柱状改良体からH形鋼を容易に引き上げることができる。
【0017】
第3態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法は、第1態様又は第2態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法において、前記落とし込み工程において、前記H形鋼から突出するブラケットに前記棒状鋼材の上部を取り付けた状態で、前記H形鋼を加振しながら硬化前の前記柱状改良体に落とし込み、前記引き上げ工程において、前記ブラケットから前記棒状鋼材の上部を取り外した状態で、硬化前の前記柱状改良体から前記H形鋼を引き上げる。
【0018】
第3態様に係る芯材付き柱状改良体の施工方法によれば、落とし込み工程において、H形鋼から突出するブラケットに棒状鋼材の上部を取り付けた状態で、H形鋼を加振しながら硬化前の柱状改良体に落とし込む。
【0019】
次に、引き上げ工程において、ブラケットから棒状鋼材の上部を取り外した状態で、硬化前の柱状改良体からH形鋼を引き上げる。
【0020】
このようにH形鋼から突出するブラケットに棒状鋼材の上部を取り付けることにより、H形鋼に棒状鋼材の上部をより強固に固定することができる。したがって、落とし込み工程において、H形鋼を加振した際に、壁状筋の振動が低減されるため、柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれがさらに低減される。
【0021】
第4態様に係る芯材付き柱状改良体は、柱状改良体と、前記柱状改良体に埋設される芯材と、を備え、前記芯材は、複数の棒状鋼材と、複数の前記棒状鋼材を連結するせん断補強筋と、を有する第一壁状筋と、複数の棒状鋼材と、複数の前記棒状鋼材を連結するせん断補強筋と、を有し、前記第一壁状筋と対向する第二壁状筋と、前記第一壁状筋の前記棒状鋼材の下部と、前記第二壁状筋の前記棒状鋼材の下部とを接続する接続鉄筋と、を有する。
【0022】
第4態様に係る芯材付き柱状改良体によれば、地盤に設けられた柱状改良体と、柱状改良体に埋設される芯材とを備える。芯材は、第一壁状筋と、第二壁状筋と、接続鉄筋とを有する。
【0023】
第一壁状筋は、複数の棒状鋼材と、複数の棒状鋼材を連結するせん断補強筋とを有する。これと同様に、第二壁状筋は、複数の棒状鋼材と、複数の棒状鋼材を連結するせん断補強筋とを有し、第一壁状筋と対向する。これらの第一壁状筋の棒状鋼材の下部と、第二壁状筋の棒状鋼材の下部とは、接続鉄筋によって接続される。
【0024】
ここで、第一壁状筋では、複数の棒状鋼材がせん断補強筋によって連結される。また、第二壁状筋では、複数の棒状鋼材がせん断補強筋によって連結される。これらの第一壁状筋及び第二壁状筋を柱状改良体に埋設することにより、柱状改良体のせん断耐力を確保することができる。
【0025】
また、第一壁状筋の棒状鋼材の下部と、第二壁状筋の棒状鋼材の下部とを接続鉄筋によって接続することにより、柱状改良体に芯材を埋設する際に、柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれを低減することができる。
【0026】
このように本発明では、柱状改良体のせん断耐力を確保しつつ、柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、柱状改良体に対する棒状鋼材の位置ずれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係る柱状改良体、及び芯材を示す立断面図である。
【
図4】一実施形態に係る柱状改良体の施工過程を示す立断面図である。
【
図6】
図4に示されるH形鋼、及び芯材の下部を示す斜視図である。
【
図7】
図4に示されるH形鋼、及び芯材の上部を示す斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る柱状改良体の施工過程を示す立断面図である。
【
図9】(A)及び(B)は、一実施形態に係る芯材の変形例を示す
図5に対応する断面図である。
【
図10】載荷実験における載荷方法を説明する立面図である。
【
図11】(A)~(C)は、載荷実験で用いた実験モデルを示す立面図、及び横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0030】
(芯材付き柱状改良体)
図1には、本実施形態に係る芯材付き柱状改良体が示されている。芯材付き柱状改良体は、柱状改良体10と、柱状改良体10に埋設された芯材12とを有している。
【0031】
(柱状改良体)
柱状改良体(柱状地盤改良体)10は、例えば、地盤G中に壁状に連接され、図示しない山留め壁を構成する。この柱状改良体10は、例えば、硬化したソイルセメントによって形成される。
【0032】
具体的には、柱状改良体10は、掘削オーガによって地盤Gを掘削しながら、掘削オーガの先端部からセメントミルク等のセメント系硬化材を地盤Gに注入し、掘削土とセメント系硬化材とを地中で撹拌及び混合して形成したソイルセメントを硬化させることにより造成される。
【0033】
なお、柱状改良体10に対して土圧が作用する側と反対側には、図示しない地下空間や地下構造物が形成される。また、各図に適宜示される矢印Pは、柱状改良体10に対する土圧の作用方向(柱状改良体10(山留め壁)の厚み方向)を示し、矢印Wは、柱状改良体10(山留め壁)の横幅方向を示している。また、土圧の作用方向は、平面視にて、柱状改良体10の横幅方向と交差(本実施形態では、略直交)している。
【0034】
(芯材)
柱状改良体10の内部には、芯材(柱状改良体用芯材)12が埋設されている。芯材12は、硬化前の柱状改良体10(ソイルセメント)に、後述するH形鋼30(
図4参照)と共に落とし込まれる。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、芯材12は、一対の壁状筋20を備えている。一対の壁状筋20は、平面視にて、土圧の作用方向(矢印P方向)に沿って配置されている。この一対の壁状筋20は、柱状改良体10(
図2参照)の横幅方向に互いに対向して配置されている。なお、一対の壁状筋20は、第一壁状筋及び第二壁状筋の一例である。
【0036】
図3に示されるように、各壁状筋20は、一対の棒状鋼材22と、一対の棒状鋼材22を連結する波形せん断補強筋24とを有している。一対の棒状鋼材22の各々は、直線状の鉄筋によって形成されている。また、一対の棒状鋼材22は、柱状改良体10に沿って上下方向に延びるとともに、土圧の作用方向に間隔を空けて配置されている。この一対の棒状鋼材22は、波形せん断補強筋24によって連結されている。
【0037】
波形せん断補強筋24は、直線状の鉄筋を、互いに反対向きの山部が交互に繰り返す波形形状に湾曲させることにより形成されている。この波形せん断補強筋24は、柱状改良体10に沿って配置されるとともに、一対の棒状鋼材22に亘って配置されている。また、波形せん断補強筋24の山部の頂部24Tは、一対の棒状鋼材22に溶接等によって接合されている。この波形せん断補強筋24によって、一対の棒状鋼材22が連結されている。
【0038】
なお、本実施形態では、一方の壁状筋20と他方の壁状筋20とで、波形せん断補強筋24の位相が逆位相になっているが、波形せん断補強筋24の位相は、例えば、同位相であっても良い。また、波形せん断補強筋24は、せん断補強筋の一例である。
【0039】
一方の壁状筋20における一対の棒状鋼材22の下部と、他方の壁状筋20における一対の棒状鋼材22の下部とは、一対の接続鉄筋26によって接続されている。具体的には、一方の壁状筋20における一対の棒状鋼材22と、他方の壁状筋20における一対の棒状鋼材22とは、柱状改良体10の横幅方向(矢印W方向)にそれぞれ対向している。
【0040】
一対の接続鉄筋26の各々は、上側が開口したU字形状のU字状鉄筋によって形成されている。この一対の接続鉄筋26は、土圧の作用方向に互いに対向して配置されている。各接続鉄筋26は、柱状改良体10の横幅方向に対向する棒状鋼材22の下部に亘って配置されており、これらの棒状鋼材22の下部に溶接等によってそれぞれ接合されている。この接続鉄筋26によって、一方の壁状筋20における一対の棒状鋼材22の下部と、他方の壁状筋20における一対の棒状鋼材22の下部とがそれぞれ接続されている。
【0041】
(芯材付き柱状改良体の施工方法)
次に、芯材付き柱状改良体の施工方法の一例について説明する。
【0042】
図4に示されるように、本実施形態では、芯材12をH形鋼30に取り付け、バイブロハンマ等の加振機80によってH形鋼30の上端部を加振しながら、H形鋼30及び芯材12を硬化前の柱状改良体10(ソイルセメント)の内部に落とし込む。そのため、先ず、H形鋼30に対する芯材12の取付構造について説明する。
【0043】
(H形鋼に対する芯材の取付構造)
図5に示されるように、H形鋼30は、土圧の作用方向に互いに対向する一対のフランジ32と、一対のフランジ32を接続するウェブ34とを有している。このH形鋼30は、長手方向を上下方向とし、かつ、フランジ32の対向方向を土圧の作用方向として、硬化前の柱状改良体10の内部に落とし込まれる。
【0044】
H形鋼(仮設H形鋼)30のウェブ34の両側には、一対の壁状筋20が配置されている。
図6に示されるように、一対の壁状筋20は、H形鋼30のフランジ32間に収まるように配置されている。このH形鋼30のウェブ34の下端部には、一対の接続鉄筋26がそれぞれ挿入される一対のスリット40が形成されている。一対のスリット40は、フランジ32の対向方向(矢印P方向)に間隔を空けて配置されている。
【0045】
各スリット40は、ウェブ34の下端部から上方へ延びるとともに、ウェブ34を厚み方向(矢印W方向)に貫通している。また、各スリット40は、フランジ32の対向方向に互いに対向する一対の内壁面40Aを有している。このスリット40に接続鉄筋26が挿入される。これにより、スリット40の一対の内壁面40Aによって、フランジ32の対向方向の接続鉄筋26の移動が制限される。なお、一対の内壁面40Aは、一対の位置決め部の一例である。
【0046】
図7に示されるように、H形鋼30のウェブ34の両面には、一対の棒状鋼材22の上部が取り付けられる一対のブラケット50がそれぞれ設けられている。一対のブラケット50は、平面視にて、L字形状のアングルによって形成されている。この一対のブラケット50は、フランジ32の対向方向に間隔を空けて配置されている。
【0047】
一対のブラケット50の各々は、ウェブ34の表面に重ねられた状態で溶接等によって接合されるベース部52と、ベース部52の一端部からウェブ34の面外方向に突出する突出部54とを有している。突出部54は、フランジ32と対向する壁状に形成されている。この突出部54の表面には、取付用鉄筋60が溶接等によって接合されている。
【0048】
取付用鉄筋60は、直線状の鉄筋によって形成されており、上下方向に沿って配置されている。また、取付用鉄筋60の下端部は、一対のブラケット50の突出部54から下方へそれぞれ延出している。これらの取付用鉄筋60の下端部に、ネジ式の機械式継手62を介して壁状筋20における一対の棒状鋼材22の上端部が着脱可能に連結されている。これにより、棒状鋼材22の上部が、取付用鉄筋60、及びブラケット50を介してH形鋼30の上部に固定されている。
【0049】
(位置決め方法)
次に、柱状改良体10に対する芯材12の位置決め方法について説明する。
【0050】
図4には、地盤Gに形成された硬化前の柱状改良体10(ソイルセメント)が示されている。地盤Gにおける柱状改良体10の周囲には、架台70が設けられている。架台70は、柱状改良体10に対して当該柱状改良体10の横幅方向にH形鋼30を位置決めする一対のガイド梁72と、柱状改良体10に対して土圧の作用方向にH形鋼30を位置決めする一対のガイド片74とを有している。
【0051】
一対のガイド梁72は、例えば、H形鋼等によって形成される。また、一対のガイド梁72は、柱状改良体10の横幅方向に間隔を空けるとともに、互いに平行に配置されている。この一対のガイド梁72の間に、芯材12が取り付けられたH形鋼30を挿入することにより、柱状改良体10に対してH形鋼30が柱状改良体10の横幅方向に位置決められる。
【0052】
一対のガイド片74は、例えば、アングル等によって形成されており、一対のガイド梁72の上面に架設されている。また、一対のガイド片74は、土圧の作用方向(矢印P方向)に間隔を空けるとともに、互いに平行に配置されている。この一対のガイド片74の間に、芯材12が取り付けられたH形鋼30を挿入することにより、柱状改良体10に対してH形鋼30が土圧の作用方向に位置決められる。
【0053】
(落とし込み工程)
次に、落とし込み工程について説明する。落とし込み工程では、前述したように、柱状改良体10に対してH形鋼30を位置決めした状態で、H形鋼30の上端部に取り付けられたバイブロハンマ等の加振機80を作動し、当該加振機80によってH形鋼30を上下方向に加振する。これにより、H形鋼30及び芯材12が、一対のガイド梁72及び一対のガイド片74にガイドされながら、硬化前の柱状改良体10の内部に落とし込まれる(打ち込まれる)。
【0054】
次に、H形鋼30及び芯材12の下端部が所定深度に達したら、加振機80を停止する。なお、一対の壁状筋20の各棒状鋼材22は、柱状改良体10の内部に埋設せず、地上に露出させておく。
【0055】
(引き上げ工程)
次に、引き上げ工程について説明する。
図8に示されるように、引き上げ工程では、先ず、ネジ式の機械式継手62を操作し、取付用鉄筋60と棒状鋼材22との連結を解除し、H形鋼30から各棒状鋼材22の上部を取り外す。これにより、H形鋼30に対する一対の壁状筋20の固定が解除される。
【0056】
次に、加振機80を作動し、H形鋼30の上端部を加振しながら、H形鋼30を引き上げる。この際、H形鋼30のウェブ34の下端部に形成された一対のスリット40から接続鉄筋26が抜ける。これにより、柱状改良体10からH形鋼30のみが取り除かれ、柱状改良体10の内部に芯材12が埋設される。
【0057】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る芯材付き柱状改良体の施工方法によれば、
図4に示されるように、落とし込み工程において、壁状筋20がウェブ34の両側にそれぞれ配置されるとともに、壁状筋20の各棒状鋼材22の上部が取り付けられたH形鋼30を加振しながら硬化前の柱状改良体10に落とし込む。
【0059】
次に、
図8に示されるように、引き上げ工程において、H形鋼30から壁状筋20の各棒状鋼材22の上部を取り外した状態で、硬化前の柱状改良体10からH形鋼30を引き上げる。これにより、柱状改良体10の内部に一対の壁状筋20が埋設(残置)される。この一対の壁状筋20によって柱状改良体10を補強することにより、土圧による柱状改良体10の破損等が抑制される。
【0060】
また、一対の棒状鋼材22を波形せん断補強筋24で連結して壁状筋20とすることにより、柱状改良体10のせん断耐力を確保することができる。また、本実施形態では、柱状改良体10の芯材としてH形鋼等の鉄骨部材を用いる場合と比較して、鋼材コストを削減することができる。
【0061】
さらに、壁状筋20の各棒状鋼材22の上部をH形鋼30に取り付けることにより、落とし込み工程において、H形鋼30を加振した際に、H形鋼30、及びH形鋼30に取り付けられた一対の壁状筋20の振動が低減されるため、柱状改良体10に対する各棒状鋼材22の位置ずれが低減される。
【0062】
このように本実施形態では、柱状改良体10のせん断耐力を確保しつつ、柱状改良体10に対する各棒状鋼材22の位置ずれを抑制することができる。
【0063】
また、
図6に示されるように、一方の壁状筋20における棒状鋼材22の下部と、他方の壁状筋20における棒状鋼材22の下部とは、接続鉄筋26によって接続されている。これにより、落とし込み工程において、柱状改良体10に対する各棒状鋼材22の位置ずれがさらに低減される。
【0064】
また、落とし込み工程では、H形鋼30のウェブ34の下端部に形成されたスリット40に接続鉄筋26を挿入した状態で、H形鋼30を加振しながら硬化前の柱状改良体10に落とし込む。
【0065】
これにより、スリット40の一対の内壁面40Aによって、フランジ32の対向方向の接続鉄筋26の移動が制限される。したがって、柱状改良体10に対する各棒状鋼材22の下部の位置ずれが低減される。
【0066】
さらに、
図7に示されるように、落とし込み工程では、H形鋼30のウェブ34から突出するブラケット50に固定された取付用鉄筋60に棒状鋼材22の上部を取り付けた状態で、H形鋼30を加振しながら硬化前の柱状改良体10に落とし込む。
【0067】
このようにH形鋼30のウェブ34から突出するブラケット50に棒状鋼材22の上部を取り付けることにより、H形鋼30に棒状鋼材22の上部をより強固に固定することができる。したがって、落とし込み工程において、H形鋼30を加振した際に、壁状筋20の振動がさらに低減されるため、柱状改良体10に対する棒状鋼材22の位置ずれがさらに低減される。
【0068】
また、棒状鋼材22の上端部は、ネジ式の機械式継手62を介して取付用鉄筋60の下端部に着脱可能に連結される。したがって、引き上げ工程において、取付用鉄筋60から棒状鋼材22の上部を容易に取り外すことができる。
【0069】
さらに、
図5に示されるように、一対の壁状筋20は、H形鋼30のフランジ32間に収まるように配置されている。これにより、仮に、棒状鋼材22の振動(振幅)が大きくなったとしても、棒状鋼材22がH形鋼30のウェブ34又はフランジ32に接触するため、棒状鋼材22の振動が制限される。
【0070】
また、
図6に示されるように、引き上げ工程では、硬化前の柱状改良体からH形鋼30を引き上げることにより、スリット40から接続鉄筋26を容易に抜くことができる。したがって、柱状改良体10からH形鋼30を容易に引き上げることができる。
【0071】
また、
図3に示されるように、本実施形態では、1本の波形せん断補強筋24によって一対の棒状鋼材22を連結する。ここで、例えば、複数の直線状のせん断補強筋によって、一対の棒状鋼材22を梯子状に連結する場合、一対の棒状鋼材22に対して複数の直線状のせん断補強筋を所定の間隔を空けてそれぞれ位置決めする必要があるため、せん断補強筋の位置決め作業に手間がかかる。
【0072】
これに対して本実施形態では、一対の棒状鋼材22に対して1本の波形せん断補強筋24を位置決めするため、一対の棒状鋼材22に対して波形せん断補強筋24を容易に位置決めすることができる。また、一対の棒状鋼材22に対して波形せん断補強筋24の頂部24Tを溶接することにより、一対の棒状鋼材22に対して波形せん断補強筋24を容易に取り付けることができる。
【0073】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0074】
上記実施形態では、2本の棒状鋼材22を波形せん断補強筋24によって連結した。しかし、棒状鋼材22の本数は、2本に限らず、3本以上の棒状鋼材22を波形せん断補強筋24によって連結しても良い。例えば、
図9(A)に示される変形例では、土圧の作用方向(矢印P方向)に配列された3本の棒状鋼材22が、波形せん断補強筋24によって連結されている。
【0075】
また、上記実施形態では、一対の壁状筋20がH形鋼30のフランジ32間に収まるように配置される。しかし、例えば、
図9(B)に示される変形例のように、H形鋼30のフランジ32間の外側に、一対の壁状筋20を配置しても良い。この場合、例えば、ブラケット50の突出部54をH形鋼30のフランジ32よりも外側へ突出させ、突出部54の先端側に、取付用鉄筋60が固定される。
【0076】
また、上記実施形態では、落とし込み工程において、取付用鉄筋60にネジ式の機械式継手62を介して棒状鋼材22を着脱可能に連結した。しかし、例えば、落とし込み工程において、機械式継手62にグラウト等の充填材を充填し、取付用鉄筋60に棒状鋼材22を着脱不能に連結しても良い。この場合、引き上げ工程において、例えば、取付用鉄筋60又は棒状鋼材22を切断することにより、H形鋼30から棒状鋼材22の上部が取り外される。
【0077】
また、例えば、落とし込み工程において、ブラケット50の突出部54に棒状鋼材22の上部を溶接等によって直接固定し、引き上げ工程において、棒状鋼材22を切断することにより、H形鋼30から棒状鋼材22の上部を取り外しても良い。
【0078】
また、ブラケット50は、アングルに限らず、例えば、C形鋼やT形鋼等であっても良い。また、ブラケット50は、H形鋼30のウェブ34に限らず、フランジ32に固定しても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、一対の棒状鋼材22を波形せん断補強筋24によって連結した。しかし、一対の棒状鋼材22は、複数の直線状のせん断補強筋によって梯子状に連結しても良い。
【0080】
また、上記実施形態では、棒状鋼材22が直線状の鉄筋とされている。しかし、棒状鋼材は、フラットバーやアングル等であっても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、一対の位置決め部として、H形鋼30のウェブ34の下端部にスリット40を形成した。しかし、一対の位置決め部は、スリット40に限らず、例えば、H形鋼30の下端部に取り付けられ、フランジ32の対向方向に互いに対向する一対のアングルとしても良い。この場合、一対のアングルの間に、接続鉄筋26が配置される。また、接続鉄筋26は、U字状鉄筋に限らず、例えば、C字状鉄筋や、直線状鉄筋等であっても良い。
【0082】
なお、一対のスリット40は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。これと同様に、一対の接続鉄筋26は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0083】
(載荷実験)
次に、柱状改良体の載荷実験について説明する。
【0084】
本載荷実験では、波形せん断補強筋24のせん断補強効果を確認するために、芯材12が埋設された柱状改良体10の実験モデルに対して載荷実験を行った。
【0085】
(実験概要)
図10に示されるように、本載荷実験では、実験モデルの長手方向の両端部を下から支持点Sでピン支持した状態で、実験モデルの長手方向の中央部に、土圧としての鉛直荷重Nを載荷し、各実験モデルの中央部の変位量(たわみ量)を測定した。なお、
図10には、後述する実験モデルM2が示されている。
【0086】
(実験モデル)
図11(A)~
図11(C)には、実験モデルM1~M3が示されている。各実験モデルM1~M3では、ソイルセメントで形成された角柱状の柱状改良体90の内部に、複数の棒状鋼材92が埋設されている。なお、複数の棒状鋼材92の両端部は、位置決め用の帯筋100でそれぞれ結束されている。これらの帯筋100は、各実験モデルM1~M3のせん断耐力に影響しないように、支持点Sの外側に配置されている。
【0087】
図11(A)に示される実験モデルM1では、せん断補強筋が設けられてない。また、
図11(B)に示される実験モデルM2では、上下方向(土圧の作用方向)に対向する一対の棒状鋼材92が、波形せん断補強筋94によってそれぞれ連結されている。
図11(C)に示される実験モデルM3では、複数の棒状鋼材92が、帯状せん断補強筋(フープ筋)96によって囲まれている。
【0088】
(実験結果)
図12には、実験モデルM1~M3の実験結果が示されている。なお、
図12に示されるグラフの縦軸は、各実験モデルM1~M3の中央部に載荷した鉛直荷重Nを示し、横軸は、各実験モデルM1~M3の中央部の変形量を示している。
【0089】
図12から分かるように、せん断補強筋が設けられてない実験モデルM1では、実験モデルM1が早期にせん断破壊した。これに対して、波形せん断補強筋94が設けられた実験モデルM2、及び帯状せん断補強筋96が設けられた実験モデルM3では、早期のせん断破壊が防止された。このことから、波形せん断補強筋94及び帯状せん断補強筋96のせん断補強効果が確認された。
【0090】
また、波形せん断補強筋94が設けられた実験モデルM2のせん断耐力は、帯状せん断補強筋96が設けられた実験モデルM3のせん断耐力よりも若干小さくなったが、実験モデルM3のせん断耐力と遜色ない結果となった。このことから、波形せん断補強筋94の有用性が確認された。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
10 柱状改良体
12 芯材
20 壁状筋(第一壁状筋、第二壁状筋)
22 棒状鋼材
24 波形せん断補強筋(せん断補強筋)
26 接続鉄筋
G 地盤