(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180709
(43)【公開日】2024-12-27
(54)【発明の名称】インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 107
B41J2/01 121
B41J2/01 451
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200359
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 公二
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】大友 信哉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA08
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC34
2C056EC42
2C056EC74
2C056EC79
2C056EC80
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA44
2C056HA46
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合を低減又は抑制し得るインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置の提供。
【解決手段】本開示の一実施態様のインクジェット印刷方法は、印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する印刷方法であって、画像の画像データから、1つ又は複数の画像の構成部を抽出することと、複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドにおけるノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出し、印刷媒体が送り出された回数に対応して、印刷ヘッドが主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンすることであって、印刷ヘッドが印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して画像の構成部の全体を印刷する、スキャンすることと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する、インクジェット印刷方法であって、
前記画像の画像データから、1つ又は複数の画像の構成部を抽出することと、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドにおける前記ノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、前記印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出し、前記印刷媒体が送り出された回数に対応して、前記印刷ヘッドが主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンすることであって、
前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に前記画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して前記画像の構成部の全体を印刷する、
前記スキャンすることと、
を含む、インクジェット印刷方法。
【請求項2】
前記スキャンすることにおいて、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に前記画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在しない場合には、当該画像の構成部に対してはインクを吐出しない、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記スキャンすることにおいて、前記画像の構成部の全体を複数回のスキャンで印刷可能な場合には、少なくとも1回のスキャンにおいて当該画像の構成部の全体を印刷する、請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記スキャンすることにおいて、前記画像の構成部の全体がスキャン可能な印刷パス領域内に複数存在し、かつ、当該画像の構成部の全体が続くスキャンの印刷パス領域内にも存在する場合には、前記画像の構成部の全体は個々に各スキャンにおいてランダムに印刷される、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記画像の構成部を抽出することが、ブロブラベリング法、エッジ検出法、閾値法、及びあらかじめ指定した領域を抽出する方法からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記画像の構成部の副走査方向における長さの最大値及び最小値を取得し、該最大値及び最小値から導出した前記画像の構成部の副走査方向の構成部長さが、前記印刷ヘッドのノズル列の副走査方向のノズル列長さ以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記インクが硬化型インクであって、印刷後に吐出したインクを硬化させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記印刷が、二次元印刷、立体印刷、及び光沢印刷からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項9】
印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する、インクジェット印刷装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドにおける前記ノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、前記印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出す、送り出し部と、
前記画像の画像データから抽出した1つ又は複数の画像の構成部の信号を受信する受信部と、
前記印刷媒体が前記送り出し部によって送り出された回数に対応して、前記印刷ヘッドを主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンさせる、スキャン制御部であって、
前記受信部で受信した画像の構成部が、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して前記画像の構成部の全体を印刷するように実行させる、
前記スキャン制御部と、
を備える、インクジェット印刷装置。
【請求項10】
前記スキャン制御部は、前記受信部で受信した画像の構成部が、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在しない場合には、当該画像の構成部に対してはスキャンにおいてインクを吐出しないように実行させる、請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記画像の構成部の全体を複数回のスキャンで印刷可能な場合には、前記スキャン制御部が、少なくとも1回のスキャンにおいて当該画像の構成部の全体を印刷するように実行させる、請求項9又は10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記画像の構成部の全体がスキャン可能な印刷パス領域内に複数存在し、かつ、当該画像の構成部の全体が続くスキャンの印刷パス領域内にも存在する場合には、前記スキャン制御部が、前記画像の構成部の全体を個々に各スキャンにおいてランダムに印刷するように実行させる、請求項9~11のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記画像の構成部の抽出処理が、前記印刷装置の内部又は外部で実施される、請求項9~12のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記画像の構成部の抽出処理が、ブロブラベリング法、エッジ検出法、閾値法、及びあらかじめ指定した領域を抽出する方法からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項9~13のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記受信部で受信した画像の構成部において、当該画像の構成部の副走査方向における長さの最大値及び最小値を取得し、該最大値及び最小値から導出した前記画像の構成部の副走査方向の構成部長さが、前記印刷ヘッドのノズル列の副走査方向のノズル列長さ以下である、請求項9~14のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記インクが硬化型インクであって、印刷後に吐出したインクを硬化させる硬化部を備える、請求項9~15のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記印刷媒体及び前記印刷ヘッドのうちの少なくも一方を、z方向に移動させることが可能な構造を有する、請求項9~16のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々のインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置が開発されている。
【0003】
特許文献1(特開2011-240530号公報)には、紫外線硬化型インクを被記録媒体上に吐出して最表層にグロス調の領域を形成するグロス形成工程を有し、前記グロス形成工程は、前記最表層における前記紫外線硬化型インクのドット径を、前記紫外線硬化型インクの隣り合うドットのドット中心間の距離の21/2倍以上の距離として、少なくとも前記被記録媒体の一部の領域に前記グロス調の領域を形成する工程である、インクジェット記録方法が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2006-015691号公報)には、UV硬化型インク使用のインクジェットプリンタを用いて記録メディア表面にUV硬化型の複数のインクのドットの配列からなる絵図又は/及び文字をプリントした後、その絵図又は/及び文字がプリントされたメディア表面を、前記UV硬化型の複数のインクのドットに含まれるインク主成分の樹脂と屈折率が同じか又は±0.5の誤差範囲内でほぼ同じ樹脂を主成分とする透明又は半透明のクリアインクからなるクリアコート層により覆う、UV硬化型インク使用のインクジェットプリンタを用いたプリント方法が記載されている。
【0005】
特許文献3(特開2021-062531号公報)には、被印刷面上に、三次元的テクスチャを持つ装飾印刷層を形成するためのインクジェットプリント方法であって、印刷されるドットの前記被印刷面上での印刷位置を示すドットパターンデータに基づき、所定の条件で硬化する硬化型インクのドットを印刷する工程と、印刷されたドットを硬化する工程と、を有し、前記ドットパターンデータは、第1の領域内では、隣接する前記ドット間の距離は、硬化前の隣接する前記ドット同士が互いに結合することなく独立に維持できる距離になっていることを示し、前記第1の領域と異なる第2の領域内では、隣接する前記ドット間の距離は、硬化前の隣接する前記ドット同士が互いに結合する距離になっていることを示す、インクジェットプリント方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-240530号公報
【特許文献2】特開2006-015691号公報
【特許文献3】特開2021-062531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する従来のインクジェット印刷方法は、印刷媒体を所定の間隔で送り出した後、印刷ヘッドが印刷パス領域を通過しながらスキャンしていくが、このときに、印刷すべき画像が印刷パス領域内に存在する場合には、かかる画像が印刷パス領域内に一部しか存在しなかったとしても、その一部の画像をスキャン中に印刷していた。
【0008】
例えば、
図1に示すように、スキャン1では、印刷パス領域1内に画像の構成部1の一部が存在している。このとき、スキャン1によって、印刷パス領域1内の構成部1の一部が印刷され、続くスキャン2によって、印刷パス領域2内の構成部1の全てと、構成部2の一部が印刷される。このような従来の印刷方法では、
図1に示すように、画像に対し、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合が発生する場合があった。
【0009】
本開示は、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合を低減又は抑制し得るインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施態様によれば、印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷するインクジェット印刷方法であって、
画像の画像データから、1つ又は複数の画像の構成部を抽出することと、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドにおけるノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出し、印刷媒体が送り出された回数に対応して、印刷ヘッドが主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンすることであって、
印刷ヘッドが印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して画像の構成部の全体を印刷する、スキャンすることと、を含む、インクジェット印刷方法が提供される。
【0011】
本開示の別の実施態様によれば、印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する、インクジェット印刷装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドと、
印刷ヘッドにおけるノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出す、送り出し部と、
画像の画像データから抽出した1つ又は複数の画像の構成部の信号を受信する受信部と、
印刷媒体が送り出し部によって送り出された回数に対応して、印刷ヘッドを主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンさせる、スキャン制御部であって、
受信部で受信した画像の構成部が、印刷ヘッドが印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体が印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して画像の構成部の全体を印刷するように実行させる、スキャン制御部と、を備える、インクジェット印刷装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合を低減又は抑制し得るインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置を提供することができる。
【0013】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、従来のスキャン方式のインクジェット印刷方法及び印刷装置でスキャンして印刷したときに得られる画像の模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施態様のスキャン方式のインクジェット印刷方法及び印刷装置でスキャンして印刷したときに得られる画像の模式図である。
【
図4】
図4(a)は、従来のスキャン方式のインクジェット印刷方法及び印刷装置を用いて印刷した画像の写真であり、
図4(b)は、本開示の一実施態様のスキャン方式のインクジェット印刷方法及び印刷装置を用いて印刷した画像の写真である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施態様のインクジェット印刷方法の内容を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の一実施態様のインクジェット印刷方法を用いて画像を印刷するときの模式図であって、各印刷パス領域において画像の構成部をランダムに印刷する構成の印刷方法の模式図である。
【
図7】
図7は、画像データから画像の構成部をブロブラベリング法によって抽出したときの図である。
【
図8】
図8は、画像データから画像の構成部を抽出する図であって、
図8(a)は、画像データから画像の構成部をブロブラベリング法によって抽出したときの図であり、
図8(b)は、画像データからあらかじめ指定した領域を抽出したときの図である。
【
図9】
図9は、画像データから画像の構成部をエッジ検出法によって抽出したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、必要に応じて図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0016】
本開示において「画像の構成部」とは、印刷媒体に印刷する画像のうち、一つのまとまりとして識別することが可能な1つ又は複数の部分を意味する。例えば、
図7では、印刷媒体に印刷する左側の画像は、右側に示すように、12個の画像のブロックに分割することができ、これら12個に分割された画像の各々が、画像の構成部に該当する。ここで、「構成部」は「塊」と称することもできる。
【0017】
本開示において「印刷パス領域」とは、印刷ヘッドが、印刷媒体上を通過して印刷することが可能な領域を意図する。例えば、
図1によれば、印刷ヘッドは、主走査方向に移動することができるが、スキャン1では、印刷媒体の送り出し方向の上方に示される数字1で示される領域が、印刷パス領域に該当し、スキャン2では、印刷媒体の数字2で示される領域が、印刷パス領域に該当する。ここで、「主走査方向」とは、
図3に示すように複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドにおけるノズル列の方向、又は
図1に示すように印刷媒体の送り出し方向(±y方向)を副走査方向としたときに、この副走査方向に対して略垂直な方向(例えば
図1の±x方向)を意味する。
【0018】
本開示において「略」とは、製造誤差などによって生じるバラつきを含むことを意味し、±約20%程度の変動が許容されることを意味する。
【0019】
本開示において「スキャン」とは、印刷ヘッドが移動するときにインクを吐出したり、吐出しなかったりする動作を意味する。例えば、
図2によれば、スキャン1では、印刷ヘッドは主走査方向に移動し得るが、インクは吐出しない。一方、スキャン2では、印刷ヘッドは主走査方向に移動しながら、構成部1の箇所に対してインクを吐出し得るが、構成部2の箇所に対してはインクを吐出しない。なお、例えば、
図2のスキャン1のように、インクを全く吐出させる必要がない場合には、スキャン1をスキップさせる、すなわち、スキャン1では印刷ヘッドを移動させなくてもよい。このようなスキャンをスキップさせる動作も、本開示の「スキャン」に包含される。
【0020】
本開示において「立体印刷」とは、印刷媒体から所定の高さを有するように画像の構成部を盛り上げるように印刷する印刷法である。本開示における「立体印刷」には、一般に、2.5次元印刷、及び3次元印刷と称する印刷法が包含され得る。
【0021】
本開示において「光沢印刷」とは、画像の構成部が光沢性を呈するように印刷する印刷法である。ここで光沢性は、例えば、JIS Z8741に準拠した、村上色彩研究所製のポータブル光沢計GMX-202で測定した任意の3点の60度光沢度の平均値で評価することができる。かかる60度光沢度としては、例えば、30以上、40以上、50以上、又は60以上とすることができ、100以下、又は100未満とすることができる。
【0022】
本開示において「透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%以上をいい、望ましくは約85%以上、又は約90%以上であってよい。平均透過率の上限値については特に制限はないが、例えば、約100%未満、約99%以下、又は約98%以下とすることができる。
【0023】
本開示において「半透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%未満をいい、望ましくは約75%以下であってよく、下地を完全に隠蔽しないことを意図する。
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照し、本開示のインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置について説明する。本開示では、インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置を、単に「印刷方法」及び「印刷装置」と称する場合がある。
【0025】
本開示のインクジェット印刷方法は、印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する方法であって、少なくとも以下の(1)及び(2)の工程を含む:
(1)画像の画像データから、1つ又は複数の画像の構成部を抽出する工程(単に「抽出工程」と称する場合がある。)。
(2)複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドにおけるノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出し、印刷媒体が送り出された回数に対応して、印刷ヘッドが主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンする工程であって、
印刷ヘッドが印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して当該画像の構成部の全体を印刷する、スキャンする工程(単に「スキャン工程」と称する場合がある。)。
【0026】
ここで、
図5のフローチャートによれば、上述の抽出工程は、ステップS100に対応し、上述のスキャン工程はステップS110~ステップS150に対応し得る。フローチャートの構成部kの「k」とは、抽出した構成部の番号(例えば
図1の構成部1の「1」等)を意図し、フローチャートのスキャンiの「i」とは、スキャンの番号(例えば
図1のスキャン1の「1」等)を意図する。
【0027】
従来のインクジェット印刷方法は、例えば、
図1に示すように、印刷パス領域1内に画像の構成部1の一部が存在している場合、スキャン1によって、印刷パス領域1内の構成部1の一部が印刷され、続くスキャン2によって、印刷パス領域2内の構成部1の全てと、構成部2の一部が印刷されていた。その結果、
図1に示すように、印刷すべき画像に対し、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合(「バンディング」と称する場合もある。)が発生しやすかった。
【0028】
一方、本開示のインクジェット印刷方法は、スキャン時に印刷パス領域内に印刷すべき画像が存在していたとしても、その画像の構成部を1つのスキャンで一度に印刷できない場合には、かかる画像の構成部をあえて印刷せず、一度に印刷できるタイミングのスキャン時に、画像の構成部全体を印刷するように実施される。その結果、本開示の印刷方法によれば、印刷すべき画像に対し、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合を好適に改善することができる。
【0029】
本開示のインクジェット印刷方法は、印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する方法である。ここで本開示において「スキャン方式」とは、印刷ヘッドを固定して印刷媒体を移動させて1パスで印刷するシングルパス方式、又は、
図1及び
図2に示されるように、印刷ヘッドを往復させながら印刷するマルチパス方式を包含する。なかでも、バンディングが発生しやすいマルチパス方式に対して本開示のインクジェット印刷方法を採用することが有利である。
【0030】
本開示の印刷方法及び印刷装置で使用し得る印刷媒体の材料としては特に制限はなく、例えば、紙、樹脂、無機材料(例えばガラス、セラミックス)、金属、木材などを挙げることができる。印刷媒体の形状は、フィルム、布帛及び板などの略平坦な形状に限らず、建築用部材(例えばサイディング材)などの凹凸表面を有するような立体形状であってもよい。印刷媒体のインク適用面には、インク受容層が設けられていてもよい。印刷媒体の厚さとしては特に制限はなく、使用用途等に応じて適宜設定することができる。ここで、本開示における「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も包含される。
【0031】
本開示の印刷方法及び印刷装置で使用し得るインクとしては特に制限はなく、例えば、透明インク、半透明インク、及び不透明インクを挙げることができる。透明インク及び半透明インクは、無色であってもよく、又は有色であってもよい。有色の透明インク及び半透明インク、並びに不透明インクに対しては、典型的には、着色インクを使用することができる。着色インクとしては、例えば、CMYKインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク)、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、レッドインク、グリーンインク、オレンジインクなどを挙げることができる。
【0032】
インクとして、硬化型インクを採用することができる。硬化型インクとしては、例えば、放射線硬化型インク及び熱硬化型インクを挙げることができる。硬化型インクは、吐出したインクが印刷媒体に濡れ広がる前に硬化させることができるため、立体印刷などにおいて好適に使用することができる。放射線硬化型インクとしては、例えば、(メタ)アクリルモノマー、及び光重合開始剤を含んだ組成物が挙げられる。ここで、本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0033】
印刷ヘッドには、1つ又は複数のインクを搭載することができる。印刷ヘッドが、複数のインクを搭載する場合には、そのうちの少なくとも1つのインクが、本開示の印刷方法に従って吐出され得る。例えば、印刷ヘッドに、透明インクと着色インクの2種類が搭載されている場合には、透明インクのみ、または着色インクのみが本開示の印刷方法に従って吐出されてもよく、或いは、透明インクと着色インクの両方が本開示の印刷方法に従って吐出されてもよい。
【0034】
本開示の印刷方法で実施される印刷としては特に制限はなく、例えば、二次元印刷、立体印刷、及び光沢印刷からなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。立体印刷及び光沢印刷は、高い表現性などが求められる印刷方法であり、このような印刷方法の場合には、筋状の不具合が大きく影響する。本開示のインクジェット印刷方法は、筋状の不具合(バンディング)が発生しやすい又は目立ちやすい光沢印刷及び立体印刷においてもかかる不具合を低減又は抑制することができる。
【0035】
本開示の抽出工程で画像の構成部を抽出する方法としては特に制限はなく、例えば、ブロブラベリング法、エッジ検出法、閾値法、及びあらかじめ指定した領域を抽出する方法からなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0036】
本開示の抽出工程では、公知のブロブラベリング法を採用することができる。ブロブラベリング法とは、二値化画像処理された画像において、白の部分(又は黒の部分)が連続した画素に対して同じ番号を割り振る処理(「ラベリング」と称する場合がある。)を実施し、画像を1つ又は複数の構成部として識別する方法である。ブロブラベリング法には、二値化された画像の縦及び横方向に連続している部分を同じとしてラベリングする4連結(「4近傍」と称する場合もある。)と、縦、横、及び斜め方向に連続している部分を同じとしてラベリングする8連結(「8近傍」と称する場合もある。)との2種類の処理がある。本開示の抽出工程では、4連結又は8連結のいずれも採用し得るが、より細かく構成部(塊)を分けられるという観点から、4連結が好ましい。例えば、
図7及び
図8に示されるような画像データはブロブラベリング法で処理することができ、
図7では、画像データから12個の構成部が抽出され、
図8では、
図8(a)に示されるように、画像データから3個の構成部が抽出される。
【0037】
本開示の抽出工程では、公知のエッジ検出法も採用することができる。エッジ検出法とは、画像の明るさが鋭敏に変化している箇所、より形式的に言えば画像の明るさが不連続に変化している箇所を特定するアルゴリズムを採用する方法である。エッジ検出法には、例えば、探索ベースの手法と、ゼロ交差法をベースとした手法があるが、本開示の抽出工程では、いずれを採用してもよい。例えば、
図9に示されるような画像データに対しては、エッジ検出法を採用することが好ましい。
【0038】
本開示の抽出工程では、公知の閾値法も採用することができる。閾値法は、対象となる画像データを白と黒の二色のみに変換し、その結果から、画像を1つ又は複数の構成部として識別する方法である。例えば、
図7に示されるような画像データはブロブラベリング法で処理することもできるが、閾値法で処理することもできる。
【0039】
本開示の抽出工程では、あらかじめ指定した領域を抽出する方法を採用することもできる。つまり、本開示の印刷方法では、画像において意図的に筋を形成する場合(例えばデザインの一部として筋を形成する場合)には、その筋は許容されることを意図する。具体的には、例えば、
図8の画像データの場合、ブロブラベリング法によると、
図8(a)に示されるように3つの構成部が抽出されるが、
図8(b)に示すように、左側の文字を意図的に2つに分割して4つの構成部が抽出されてもよい。あらかじめ指定した領域は、例えば、画像の作成者(例えばデザイナー)、印刷オペレータ(例えば実際の印刷作業者)、AI(人工知能)などによって指定することができる。
【0040】
あらかじめ指定した領域を抽出する方法は、画像の構成部の構成部長さが、印刷ヘッドのノズル列長さよりも大きい場合に好適に使用することができる。ここで、「構成部長さ」とは、画像の構成部の副走査方向(y方向)における長さの最大値及び最小値を取得し、かかる最大値及び最小値から導出した画像の構成部の副走査方向(y方向)の長さ(y)を意図し、「ノズル列長さ」とは、
図3に示されるように、複数のノズルが並ぶノズル列の副走査方向(y方向)のノズル列におけるノズルの最高部から最底部までの長さ(y)を意図する。
【0041】
本開示の印刷方法では、画像の構成部長さは、印刷ヘッドのノズル列長さ以下であることが好ましい。画像の構成部長さがこのような長さであると、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合をより低減又は抑制することができる。
【0042】
本開示のスキャン工程は、少なくとも上述した(2)に示す工程を含む。ここで、本開示における「略垂直」とは、垂直(90度)に対し、±約20度以下、±約15度以下、±約10度以下、±約5度以下、又は±約1度以下の変動が許容され得る。
【0043】
印刷媒体の送り出しの間隔及び回数は特に制限はなく、例えば、印刷媒体の大きさ、画像の構成部の大きさ、印刷ヘッドの大きさなどに応じて適宜設定することができる。例えば、送り出しの間隔は、
図2に示されるように一定の間隔で設定されてもよく、或いは、異なっていてもよい。送り出し回数のn回とは、整数回であって、1回又は複数回を意味する。
【0044】
典型的には、印刷媒体が送り出された回数と、印刷ヘッドが主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンする回数は対応し得る。本開示では、上述したように、例えば、
図2のスキャン1のように、インクを全く吐出させる必要がない場合には、スキャン1では、印刷ヘッドを移動させずにスキップさせてもよいが、このような場合のスキャンも1回のスキャンとカウントすることができる。
【0045】
本開示のスキャン工程では、印刷ヘッドが印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して画像の構成部の全体を印刷する。ここで、「画像の構成部の全体を印刷する」とは、画像の構成部の全体を実質的に印刷することを意図する。つまり、画像の構成部を構成する全画素(ドット)に対し、インクを吐出して印刷すること以外に、例えば、全画素のうちの数画素が、ノズル詰まりなどの影響で、インクを吐出して印刷できなかったとしても、品質として合格レベルな場合(例えば、印刷後の画像の構成部の全体が目視観察で印刷されていると評価し得る場合)には、このような場合も、画像の構成部の全体が印刷されているといえる。
【0046】
印刷ヘッドは、1回のスキャンで、印刷パス領域内を少なくとも1回通過すればよいが、典型的には、印刷パス領域内を2回通過し得る(往復し得る)。例えば、
図2によれば、印刷ヘッドを、印刷パス領域内において-x方向に通過させて左端で停止させてもよく、或いは、印刷パス領域内において-x方向に通過させ、続いて+x方向に通過させて右端で停止させてもよい。印刷ヘッドが、1回のスキャンで印刷パス領域内を複数回移動する場合には、印刷ヘッドの任意の1回の移動時に画像の構成部の全体を印刷し、残りの移動時には印刷を実施しなくてもよく;印刷パス領域内を印刷ヘッドが通過するごとに、画像の構成部の全体を印刷してもよく;或いは、印刷ヘッドの任意の1回の移動時に画像の構成部の一部を印刷し、残りの移動時に画像の構成部の残部を印刷してもよい。
【0047】
いくつかの実施態様では、本開示のスキャン工程はさらに、印刷ヘッドが印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が印刷パス領域内に存在しない場合には、当該画像の構成部に対してはインクを吐出しないように実施される。このようなスキャン工程を採用することによって、バンディングをより改善することができる。ここで、「画像の構成部に対してはインクを吐出しない」とは、画像の構成部に対してインクを実質的に吐出しないことを意図する。つまり、印刷パス領域内に画像の構成部の一部が存在する場合、かかる構成部を構成する画素(ドット)の全てに対してインクを吐出しないこと以外に、例えば、何らかの影響で数画素分のインクが吐出されたとしても、品質として合格レベルな場合(例えば、目視観察でインクが吐出されていないと評価し得る場合)には、このような場合も、画像の構成部に対してインクが吐出されていないといえる。
【0048】
いくつかの実施態様では、本開示のスキャン工程はさらに、画像の構成部の全体を複数回のスキャンで印刷可能な場合には、少なくとも1回のスキャンにおいて当該画像の構成部の全体を印刷するように実施される。具体的には、
図2によれば、例えば、画像の構成部1は、スキャン2~4で印刷することができる。このとき、構成部1は、スキャン2~4のうちのいずれか1回若しくはいずれか2回、又はスキャン2~4の全ての回で印刷されていればよい。このような印刷回数は、構成部の印刷品質等に応じて適宜設定することができるが、印刷回数は2回以上であることが好ましい。印刷ヘッドは、一般に、
図3に示されるように、複数のノズルがy方向に並ぶノズル列(y)を有しているが、例えば、使用に伴い複数のノズルのうちのいくつかが詰まる場合がある。したがって、印刷を複数回にわたって実施すると、仮に1回目の印刷時にノズル詰まりに伴う印刷不良箇所が存在したとしても、続く印刷時には、かかる箇所は印刷ヘッドの異なるノズルで印刷される結果、印刷不良が改善され得る。
【0049】
いくつかの実施態様では、本開示のスキャン工程はさらに、画像の構成部の全体がスキャン可能な印刷パス領域内に複数存在し、かつ、当該画像の構成部の全体が続くスキャンの印刷パス領域内にも存在する場合には、画像の構成部の全体は個々に各スキャンにおいてランダムに印刷されるように実施される。具体的には、
図6によれば、画像データから、a~lまでの12個の構成部が抽出される。このとき、例えば、同一の印刷パス領域内に存在するa~dの4個の構成部は、スキャン7及び8で構成部の全体を印刷することができる。この場合、かかる4個の構成部は、スキャン7又は8のいずれかで一度に印刷してもよく、或いは、例えば、
図6に示されるように、スキャン7で構成部b及びcを印刷し、続くスキャン8で構成部a及びdを印刷してもよい。このとき、スキャン8では、少なくとも構成部a及びdを印刷すればよいが、構成部a及びd以外に、構成部b及び/又はcを印刷してもよい。
図6に示されるように、複数の構成部をランダムに印刷すると、仮にスキャン7の印刷時にノズル詰まりに伴う印刷不良箇所が存在したとしても、続くスキャン8の印刷時には、ノズル詰まりが生じていた箇所とは異なる印刷ヘッドのノズルで印刷される結果、複数の構成部の全てをスキャン7で印刷する場合に比べ、印刷不良を低減又は改善することができる。
【0050】
いくつかの実施態様では、本開示の印刷方法は、印刷後に吐出したインクを硬化させる工程(単に「硬化工程」と称する場合がある。)をさらに含む。硬化工程を採用する場合には、インクとして硬化型インクを使用する。硬化型インクを硬化させる手段としては特に制限はなく、例えば、放射線(紫外線、電子線など)を照射する手段及び/又は加熱手段を採用することができる。これらの手段における各条件は、使用する硬化型インクの種類等に応じて適宜設定することができる。
【0051】
本開示の印刷方法は、任意に、追加の工程を1つ又は複数含んでもよい。追加の工程としては、例えば、印刷媒体の巻き出し工程、乾燥工程、欠点検出工程、印刷物の巻き取り工程などを挙げることができる。
【0052】
本開示のインクジェット印刷装置は、上述したインクジェット印刷方法を実施し得る装置であり、少なくとも以下の(a)~(d)の構成を備える。かかる構成以外の構成(例えば、装置を動作させるための各種情報を記憶するメモリ、ディスプレイ等)に関しては、従来のインクジェット印刷装置で使用されている公知の構成を適宜採用することができる:
(a)複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッド。
(b)印刷ヘッドにおけるノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出す、送り出し部。
(c)画像の画像データから抽出した1つ又は複数の画像の構成部の信号を受信する受信部。
(d)印刷媒体が送り出し部によって送り出された回数に対応して、印刷ヘッドを主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンさせる、スキャン制御部であって、
受信部で受信した画像の構成部が、印刷ヘッドが印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体が印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して画像の構成部の全体を印刷するように実行させる、スキャン制御部。
【0053】
本開示の印刷装置で使用する印刷ヘッドとしては特に制限はなく、公知の印刷ヘッドを使用することができる。本開示の印刷装置では、1つ又は複数の印刷ヘッドを採用することができる。印刷ヘッドは、一般的には、
図3に示されるように、複数のノズルが並ぶノズル列を有している。例えば、
図3のC(シアン)のノズル列は、分割されていないが、ノズル列は、2つ以上に分割されていてもよく、分割された領域毎に、インクの吐出量などが調整され得るように構成されていてもよい。ノズルの大きさ、数、ピッチ間隔、及び配置パターン等は特に制限はなく、印刷性能(例えば印刷品質、印刷速度)等に応じて適宜設定することができる。
【0054】
一例として示す
図3の印刷ヘッドは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)のインクが吐出されるようにノズル列が各々構成されているが、印刷ヘッドはかかる構成に限定されない。例えば、透明インク、又はライトシアン、ライトマゼンタ、レッド、グリーン、及びオレンジなどの着色インクを吐出するノズル列なども採用することができる。印刷ヘッドはノズル列を1つ以上有していればよく、ノズル列の数は特に制限はない。印刷ヘッドが複数のノズル列を有している場合、各ノズル列から吐出されるインクは、同一であってもよく(例えば2つのノズル列の両方が透明インク用のノズル列)、或いは異なっていてもよい(例えば2つのノズル列の一方が透明インク用のノズル列、他方が黒色インク用のノズル列)。印刷ヘッドに適用可能なインクとしては、上述した印刷方法におけるインクを同様に採用することができる。
【0055】
本開示では、
図3に示すように、ノズル列におけるノズルの最高部から最底部までの長さをノズル列長さと称する。ノズル列長さとしては特に制限はなく、印刷媒体又は印刷装置の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。ノズル列長さは、一般的には、例えば、約30cm以下、約20cm以下、又は約10cm以下とすることができ、また、約1cm以上、約3cm以上、又は約5cm以上とすることができる。後述する受信部で受信した画像の構成部長さが、印刷ヘッドのノズル列長さ以下であると、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合をより低減又は抑制することができるため有利である。
【0056】
本開示の印刷装置は、印刷媒体を副走査方向(+y方向)に所定の間隔でn回にわたって順次送り出す、送り出し部を備えている。かかる送り出し部としては、上述した印刷方法における送り出し操作を実施し得る限り特に制限はなく、例えば、従来のインクジェット印刷装置で使用されている公知の送り出し部を採用することができる。
【0057】
本開示の印刷装置は、画像の画像データから抽出した1つ又は複数の画像の構成部の信号を受信する受信部を備えている。かかる受信部としては、抽出した画像の構成部の信号を受信し、その受信した信号に基づく画像構成部の情報を続くスキャン制御部に提供し得る構成である限り特に制限はなく、例えば、従来のインクジェット印刷装置で使用されている画像データを受信し得る公知の受信部を採用することができる。受信部は、印刷装置において、スキャン制御部と別体で備わっていてもよく、或いは、スキャン制御部と一体化されていてもよい。
【0058】
受信部に提供される画像構成部の信号は、抽出処理を実施することによって得られる。かかる抽出処理としては、例えば、上述した、ブロブラベリング法、エッジ検出法、閾値法、及びあらかじめ指定した領域を抽出する方法からなる群から選択される少なくとも一種で実施され得る。
【0059】
画像の構成部の抽出処理は、印刷装置の内部又は外部で実施され得る。抽出処理が印刷装置の内部で実施される場合には、抽出処理を実施する抽出処理部は、上述した受信部と別体で備わっていてもよく、或いは、受信部と一体化されていてもよい。抽出処理が印刷装置の外部で実施される場合には、抽出処理は、例えば、抽出処理を実施し得るようにシステムが構築された、パソコン、タブレット、スマートフォン(携帯電話)、クラウドシステムなどを用いて実施することができる。印刷装置の外部で実施される抽出処理によって得られた画像構成部の信号は、有線又は無線で受信部に提供され得る。
【0060】
本開示の印刷装置は、印刷媒体が送り出し部によって送り出された回数に対応して、印刷ヘッドを主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンさせる、スキャン制御部を備えている。かかるスキャン制御部としては、上述した印刷方法におけるスキャン工程を実施し得る限り特に制限はない。
【0061】
本開示のスキャン制御部は、受信部で受信した画像の構成部が、印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体がかかる印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して画像の構成部の全体を印刷するように、印刷装置を制御することができる。
【0062】
いくつかの実施態様では、本開示のスキャン制御部はさらに、受信部で受信した画像の構成部が、印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体がかかる印刷パス領域内に存在しない場合には、当該画像の構成部に対してはスキャンにおいてインクを吐出しないように、印刷装置を制御する。このようなスキャン制御部を採用することによって、バンディングをより改善することができる。
【0063】
いくつかの実施態様では、本開示のスキャン制御部はさらに、画像の構成部の全体を複数回のスキャンで印刷可能な場合には、スキャン制御部が、少なくとも1回のスキャンにおいて当該画像の構成部の全体を印刷するように、印刷装置を制御する。印刷を複数回にわたって実施した場合には、仮に1回目の印刷時にノズル詰まりに伴う印刷不良箇所が存在したとしても、続く印刷時には、かかる箇所は印刷ヘッドの異なるノズルで印刷される結果、印刷不良が改善され得る。
【0064】
いくつかの実施態様では、本開示のスキャン制御部はさらに、画像の構成部の全体がスキャン可能な印刷パス領域内に複数存在し、かつ、当該画像の構成部の全体が続くスキャンの印刷パス領域内にも存在する場合には、スキャン制御部が、画像の構成部の全体を個々に各スキャンにおいてランダムに印刷するように、印刷装置を制御する。例えば、
図6に示されるように、同一の印刷パス領域内に存在する複数の構成部をランダムに印刷すると、仮にスキャン7の印刷時にノズル詰まりに伴う印刷不良箇所が存在したとしても、続くスキャン8の印刷時には、ノズル詰まりが生じていた箇所とは異なる印刷ヘッドのノズルで印刷される結果、複数の構成部の全てをスキャン7で印刷する場合に比べ、印刷不良を低減又は改善することができる。
【0065】
いくつかの実施態様では、本開示の印刷装置は、印刷後に吐出したインクを硬化させる硬化部をさらに備える。硬化部を採用する場合には、インクとして硬化型インクを使用する。硬化部は、印刷装置において、スキャン制御部と別体で備わっていてもよく、或いは、スキャン制御部と一体化されていてもよい。
【0066】
硬化部において硬化型インクを硬化させる手段としては特に制限はなく、例えば、放射線(紫外線、電子線など)を照射する手段及び/又は加熱手段を採用することができる。これらの手段における各条件は、使用する硬化型インクの種類等に応じて適宜設定することができる。
【0067】
いくつかの実施態様では、本開示の印刷装置は、印刷媒体及び印刷ヘッドのうちの少なくも一方を、z方向に移動させることが可能な構造を有する。ここで「z方向」とは、x方向及びy方向にそれぞれ略垂直な方向を意図し、+z方向及び-z方向を包含する。つまり、「z方向に移動させることが可能」とは、+z方向及び-z方向のいずれの方向にも移動させ得ることを意図する。「+z方向」及び「-z方向」は、例えば、印刷媒体を地面に対して水平に配置したときに、印刷媒体の上方向を+z方向、下方向を-z方向と規定することができる。
【0068】
z方向に移動させることが可能な構造を採用することで、例えば、立体印刷時において、印刷媒体に吐出されて盛り上がったインクに伴う装置内の汚染などを低減又は防止することができる。また、凹凸表面を有するような立体形状の印刷媒体を印刷するときに、かかる構造を採用すると、かかる構造を有さない印刷装置で印刷した場合に比べ、印刷品質を向上させることができる。立体印刷では、印刷媒体を-z方向に移動させることが好ましく、印刷ヘッドを+z方向に移動させることが好ましい。かかる移動は、所定の間隔を一度に移動させてもよく、段階的に移動させてもよい。立体形状の印刷媒体の印刷では、印刷媒体及び/又は印刷ヘッドを、印刷媒体の立体形状に応じて+z方向及び/又は-z方向に移動させることが好ましい。
【0069】
本開示の印刷装置は、任意に、追加の構成を1つ又は複数含んでもよい。追加の構成としては、例えば、印刷媒体の巻き出し部、乾燥部、欠点検出部、印刷物の巻き取り部などを挙げることができる。
【0070】
図4(a)は、従来のスキャン方式のインクジェット印刷方法及び印刷装置を用いて印刷した画像の写真であり、
図4(b)は、本開示の一実施態様のスキャン方式のインクジェット印刷方法及び印刷装置を用いて印刷した画像の写真である。これらの写真を見れば明らかなように、本開示のスキャン方式のインクジェット印刷方法及び印刷装置を用いて画像を印刷すると、印刷ヘッドの移動方向に対応する意図していない筋状の不具合(バンディング)を好適に改善し得ることが分かる。
【0071】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0072】
1 印刷パス領域(スキャン1の印刷パス領域)
2 印刷パス領域(スキャン2の印刷パス領域)
【手続補正書】
【提出日】2024-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
1 印刷パス領域(スキャン1の印刷パス領域)
2 印刷パス領域(スキャン2の印刷パス領域)
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目17]に記載する。
[項目1]
印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する、インクジェット印刷方法であって、
前記画像の画像データから、1つ又は複数の画像の構成部を抽出することと、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドにおける前記ノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、前記印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出し、前記印刷媒体が送り出された回数に対応して、前記印刷ヘッドが主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンすることであって、
前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に前記画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して前記画像の構成部の全体を印刷する、
前記スキャンすることと、
を含む、インクジェット印刷方法。
[項目2]
前記スキャンすることにおいて、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に前記画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在しない場合には、当該画像の構成部に対してはインクを吐出しない、請求項1に記載の印刷方法。
[項目3]
前記スキャンすることにおいて、前記画像の構成部の全体を複数回のスキャンで印刷可能な場合には、少なくとも1回のスキャンにおいて当該画像の構成部の全体を印刷する、請求項1又は2に記載の印刷方法。
[項目4]
前記スキャンすることにおいて、前記画像の構成部の全体がスキャン可能な印刷パス領域内に複数存在し、かつ、当該画像の構成部の全体が続くスキャンの印刷パス領域内にも存在する場合には、前記画像の構成部の全体は個々に各スキャンにおいてランダムに印刷される、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目5]
前記画像の構成部を抽出することが、ブロブラベリング法、エッジ検出法、閾値法、及びあらかじめ指定した領域を抽出する方法からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目6]
前記画像の構成部の副走査方向における長さの最大値及び最小値を取得し、該最大値及び最小値から導出した前記画像の構成部の副走査方向の構成部長さが、前記印刷ヘッドのノズル列の副走査方向のノズル列長さ以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目7]
前記インクが硬化型インクであって、印刷後に吐出したインクを硬化させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目8]
前記印刷が、二次元印刷、立体印刷、及び光沢印刷からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目9]
印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する、インクジェット印刷装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドにおける前記ノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、前記印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出す、送り出し部と、
前記画像の画像データから抽出した1つ又は複数の画像の構成部の信号を受信する受信部と、
前記印刷媒体が前記送り出し部によって送り出された回数に対応して、前記印刷ヘッドを主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンさせる、スキャン制御部であって、
前記受信部で受信した画像の構成部が、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して前記画像の構成部の全体を印刷するように実行させる、
前記スキャン制御部と、
を備える、インクジェット印刷装置。
[項目10]
前記スキャン制御部は、前記受信部で受信した画像の構成部が、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在しない場合には、当該画像の構成部に対してはスキャンにおいてインクを吐出しないように実行させる、請求項9に記載の印刷装置。
[項目11]
前記画像の構成部の全体を複数回のスキャンで印刷可能な場合には、前記スキャン制御部が、少なくとも1回のスキャンにおいて当該画像の構成部の全体を印刷するように実行させる、請求項9又は10に記載の印刷装置。
[項目12]
前記画像の構成部の全体がスキャン可能な印刷パス領域内に複数存在し、かつ、当該画像の構成部の全体が続くスキャンの印刷パス領域内にも存在する場合には、前記スキャン制御部が、前記画像の構成部の全体を個々に各スキャンにおいてランダムに印刷するように実行させる、請求項9~11のいずれか一項に記載の印刷装置。
[項目13]
前記画像の構成部の抽出処理が、前記印刷装置の内部又は外部で実施される、請求項9~12のいずれか一項に記載の印刷装置。
[項目14]
前記画像の構成部の抽出処理が、ブロブラベリング法、エッジ検出法、閾値法、及びあらかじめ指定した領域を抽出する方法からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項9~13のいずれか一項に記載の印刷装置。
[項目15]
前記受信部で受信した画像の構成部において、当該画像の構成部の副走査方向における長さの最大値及び最小値を取得し、該最大値及び最小値から導出した前記画像の構成部の副走査方向の構成部長さが、前記印刷ヘッドのノズル列の副走査方向のノズル列長さ以下である、請求項9~14のいずれか一項に記載の印刷装置。
[項目16]
前記インクが硬化型インクであって、印刷後に吐出したインクを硬化させる硬化部を備える、請求項9~15のいずれか一項に記載の印刷装置。
[項目17]
前記印刷媒体及び前記印刷ヘッドのうちの少なくも一方を、z方向に移動させることが可能な構造を有する、請求項9~16のいずれか一項に記載の印刷装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する、インクジェット印刷方法であって、
前記画像の画像データから、1つ又は複数の画像の構成部を抽出することと、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドにおける前記ノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、前記印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出し、前記印刷媒体が送り出された回数に対応して、前記印刷ヘッドが主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンすることであって、
前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に前記画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して前記画像の構成部の全体を印刷する、
前記スキャンすることと、
を含む、インクジェット印刷方法。
【請求項2】
前記スキャンすることにおいて、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に前記画像の構成部が存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在しない場合には、当該画像の構成部に対してはインクを吐出しない、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記スキャンすることにおいて、前記画像の構成部の全体を複数回のスキャンで印刷可能な場合には、少なくとも1回のスキャンにおいて当該画像の構成部の全体を印刷する、請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記スキャンすることにおいて、前記画像の構成部の全体がスキャン可能な印刷パス領域内に複数存在し、かつ、当該画像の構成部の全体が続くスキャンの印刷パス領域内にも存在する場合には、前記画像の構成部の全体は個々に各スキャンにおいてランダムに印刷される、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記画像の構成部を抽出することが、ブロブラベリング法、エッジ検出法、閾値法、及びあらかじめ指定した領域を抽出する方法からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記画像の構成部の副走査方向における長さの最大値及び最小値を取得し、該最大値及び最小値から導出した前記画像の構成部の副走査方向の構成部長さが、前記印刷ヘッドのノズル列の副走査方向のノズル列長さ以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記インクが硬化型インクであって、印刷後に吐出したインクを硬化させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記印刷が、二次元印刷、立体印刷、及び光沢印刷からなる群から選択される少なくとも一種で実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項9】
印刷媒体にスキャン方式で画像を印刷する、インクジェット印刷装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドにおける前記ノズル列の方向を副走査方向、及び当該副走査方向に対して略垂直な方向を主走査方向としたときに、前記印刷媒体を副走査方向に所定の間隔でn回にわたって順次送り出す、送り出し部と、
前記画像の画像データから抽出した1つ又は複数の画像の構成部の信号を受信する受信部と、
前記印刷媒体が前記送り出し部によって送り出された回数に対応して、前記印刷ヘッドを主走査方向に印刷パス領域にわたってスキャンさせる、スキャン制御部であって、
前記受信部で受信した画像の構成部が、前記印刷ヘッドが前記印刷媒体上を通過するスキャン可能な印刷パス領域に存在するときに、当該画像の構成部の全体が前記印刷パス領域内に存在する場合には、スキャンにおいてインクを吐出して前記画像の構成部の全体を印刷するように実行させる、
前記スキャン制御部と、
を備える、インクジェット印刷装置。
【請求項10】
前記画像の構成部の抽出処理が、前記印刷装置の内部又は外部で実施される、請求項9に記載の印刷装置。