(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018078
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】壁高欄及び、壁高欄の設置構造
(51)【国際特許分類】
E01D 19/10 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E01D19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121162
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591006520
【氏名又は名称】株式会社興和工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 康晴
(72)【発明者】
【氏名】大場 誠道
(72)【発明者】
【氏名】岩城 孝之
(72)【発明者】
【氏名】仲田 宇史
(72)【発明者】
【氏名】玉田 和法
(72)【発明者】
【氏名】梅田 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】金田 和男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤根 信寛
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智崇
(72)【発明者】
【氏名】川尻 克利
(72)【発明者】
【氏名】金田 遥
(72)【発明者】
【氏名】大竹 智貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進
(72)【発明者】
【氏名】権藤 太郎
(72)【発明者】
【氏名】早川 美則
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA21
2D059BB37
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】橋桁の変動や伸縮を効果的に吸収する。
【解決手段】橋梁に設置される鋼製の壁高欄1であって、橋梁の橋軸方向に離間して対向する左右一対の側面プレート(12,13)を有する中空箱型に形成されるとともに、内部に線状体(80)を収容可能な壁本体(10)と、壁本体(10)の内部を上下方向に延びる板状の補強リブ(40)と、側面プレートを貫通するとともに、線状体(80)を挿入可能な側面孔(12B,13B)と、補強リブ(40)を貫通するとともに、線状体(80)を挿入可能なリブ孔(44)とを備えており、側面孔(12B,13B及び、前リブ孔(44)の少なくとも一方又は両方が、上下方向に長い長孔状に形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に設置される鋼製の壁高欄であって、
前記橋梁の橋軸方向に離間して対向する左右一対の側面プレートを有する中空箱型に形成されるとともに、内部に線状体を収容可能な壁本体と、
前記壁本体の内部を上下方向に延びる板状の補強リブと、
前記側面プレートを板厚方向に貫通するとともに、前記線状体を挿入可能な側面孔と、
前記補強リブを板厚方向に貫通するとともに、前記線状体を挿入可能なリブ孔と、を備えており、
前記側面孔及び、前記リブ孔の少なくとも一方又は両方が、上下方向に長い長孔状に形成されている
ことを特徴とする壁高欄。
【請求項2】
前記側面孔が、前記長孔状に形成されており、
前記リブ孔が、円形孔状に形成されるとともに、前記補強リブの上下方向の中間位置から上側の部分に設けられており、
前記側面孔に挿入されて前記壁本体の内部に収容される前記線状体が、前記リブ孔によって上方に持ち上げられて支持される
請求項1に記載の壁高欄。
【請求項3】
前記補強リブを複数枚備えており、
該複数枚の補強リブのうち、少なくとも1枚の補強リブのリブ孔が円形孔状に形成されるとともに、他の補強リブのリブ孔が前記長孔状に形成されており、
前記長孔状に形成された前記側面孔及び、前記長孔状に形成された前記リブ孔に挿入される前記線状体が、前記円形孔状に形成された前記リブ孔によって上方に持ち上げられて支持される
請求項2に記載の壁高欄。
【請求項4】
前記壁本体が、前記橋梁の道路側に臨むとともに、前記壁本体に着脱可能に取り付けられる前面プレートを有する
請求項1から3の何れか一項に記載の壁高欄。
【請求項5】
前記橋軸方向に離間して対向する左右一対の側板を有する中空箱型に形成されるとともに、前記補強リブを切り欠いた部分に嵌め込んで固定されており、内部に前記線状体を収容可能な箱体と、
前記側板を板厚方向に貫通するとともに、前記線状体を挿入可能な円形孔状の側板孔と、
前記一対の側板にそれぞれ設けられた前記側板孔のうち、一方の側板孔が他方の側板孔よりも上方に位置しており、
前記箱体の内部に収容される前記線状体が、前記他方の側板孔から前記一方の側板孔に向かうに従い上方に持ち上げられる
請求項1から4の何れか一項に記載の壁高欄。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の壁高欄の設置構造であって、
一対の前記壁高欄を、前記橋梁の床版同士を接続する伸縮装置を挟んで橋軸方向に離間配置するとともに、一対の前記壁高欄の前記側面孔に前記線状体を挿入することにより、該線状体を一対の前記壁高欄の壁本体内にそれぞれ収容し、一対の前記壁本体内で前記線状体を上方に持ち上げて支持することにより、該線状体を一対の前記壁本体の間にて下方に撓ませる
ことを特徴とする壁高欄の設置構造。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載の前記壁高欄に橋軸方向に連結される鋼製の第二壁高欄であって、
前記橋軸方向に離間して対向する左右一対の第二側面プレートを有する中空箱型に形成されるとともに、前記線状体を収容可能な第二壁本体と、
前記第二側面プレートを板厚方向に貫通するとともに、前記線状体を挿入可能な第二側面孔と、
前記第二壁本体の内部を上下方向に延びる板状の第二補強リブと、
前記橋軸方向に離間して対向する左右一対の第二側板を有する中空箱型に形成されるとともに、前記第二補強リブを切り欠いた部分に嵌め込んで固定されており、内部に前記線状体を収容可能な第二箱体と、
前記第二側板を板厚方向に貫通するとともに、前記線状体を挿入可能な第二側板孔と、を備えており、
前記一対の第二側板にそれぞれ設けられた前記第二側板孔のうち、前記第二壁高欄を前記壁高欄に連結した場合に、該壁高欄に近い一方の第二側板孔が他方の第二側板孔よりも上方に位置しており、
前記第二箱体の内部に収容される前記線状体が、前記他方の第二側板孔から前記一方の第二側板孔に向かうに従い上方に持ち上げられる
ことを特徴とする第二壁高欄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、壁高欄及び、壁高欄の設置構造に関し、特に、鋼製壁高欄の設置に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高架高速道路等の橋梁の側部には、防護柵として機能する壁高欄が設けられる。このような壁高欄の内部には、電線用や通信用の配線、該配線を挿入するための配管等といった線状体が収容される場合がある。例えば、特許文献1には、橋梁等に設置される高欄の笠木の内部に配線を収容するとともに、配線の両端にコネクタを設け、複数の高欄を橋軸方向に連結する際は、コネクタを互いに接続することにより、電気工事を不要にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
橋梁の床版同士を互いに橋軸方向に接続する接続部には、温度変化や地震、車両等の通行に伴う桁の変動及び伸縮を吸収するための伸縮装置が設けられている。また、橋梁の接続部においては、一対の壁高欄が伸縮装置を挟んで橋軸方向に離間して設置される。このような壁高欄の内部に配線や配管を収容する場合、配線や配管は接続部において橋梁の変動及び伸縮を吸収できる構造にする必要がある。
【0005】
上記特許文献1記載の技術では、配線が笠木の内部に略直線状に配策されており、配線同士をコネクタによって接続する構造のため、これら配線やコネクタが橋梁の変動及び伸縮を吸収することができずに破損してしまう虞がある。
【0006】
橋梁の変動及び伸縮を吸収するには、伸縮装置を挟んで離間する壁高欄同士を橋軸方向に伸縮可能な配管によって接続し、該配管の内部に配線を挿入する構造が考えられる。しかしながら、橋軸方向のみに伸縮可能な配管では、地震等によって鉛直方向や橋軸方向と直行する方向の振動が作用した際に配管が追従変形することができず、配管の破損を招くといった課題がある。
【0007】
このような鉛直方向や橋軸方向と直行する方向の振動に対応するには、壁高欄の背面にプルボックスをそれぞれ設置するとともに、プルボックス同士をフレキシブル管によって接続し、該フレキシブル管の内部に配線を挿入する構造が考えられる。しかしながら、プルボックスを壁高欄の背面に設置すると、メンテナンス時に、橋梁の道路側から高所作業車を用いてプルボックスにアクセスするか、或は、プルボックスにアクセスできる検査路を橋梁の外側に別途設ける必要があり、メンテナンス性の悪化を招くといった課題がある。また、積雪地では、プルボックス上面の積雪や氷柱が下方に落下する虞があり、橋梁の下部を通行する車両や人に対する安全対策を行わなければならないといった課題もある。
【0008】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、壁高欄に関し、橋桁の変動や伸縮を効果的に吸収しつつ、メンテナンス性を効果的に向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の壁高欄は、
橋梁に設置される鋼製の壁高欄(1A,1B)であって、
前記橋梁の橋軸方向に離間して対向する左右一対の側面プレート(12,13)を有する中空箱型に形成されるとともに、内部に線状体(80)を収容可能な壁本体(10)と、
前記壁本体(10)の内部を上下方向に延びる板状の補強リブ(40)と、
前記側面プレート(12,13)を板厚方向に貫通するとともに、前記線状体(80)を挿入可能な側面孔(12B,13B)と、
前記補強リブ(40)を板厚方向に貫通するとともに、前記線状体(80)を挿入可能なリブ孔(44)と、を備えており、
前記側面孔(12B,13B)及び、前記リブ孔(44)の少なくとも一方又は両方が、上下方向に長い長孔状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本開示の壁高欄の他の態様において、
前記側面孔(12B,13B)が、前記長孔状に形成されており、
前記リブ孔(44)が、円形孔状に形成されるとともに、前記補強リブ(40)の上下方向の中間位置から上側の部分に設けられており、
前記側面孔(12B,13B)に挿入されて前記壁本体(10)の内部に収容される前記線状体(80)が、前記リブ孔(44)によって上方に持ち上げられて支持されることが好ましい。
【0011】
本開示の壁高欄の他の態様において、
前記補強リブ(40)を複数枚備えており、
該複数枚の補強リブ(40)のうち、少なくとも1枚の補強リブ(40M)のリブ孔(44M)が円形孔状に形成されるとともに、他の補強リブ(40L,40R)のリブ孔(44L,44R)が前記長孔状に形成されており、
前記長孔状に形成された前記側面孔(12B,13B)及び、前記長孔状に形成された前記リブ孔(44L,44R)に挿入される前記線状体(80)が、前記円形孔状に形成された前記リブ孔(44M)によって上方に持ち上げられて支持されることが好ましい。
【0012】
本開示の壁高欄の他の態様において、
前記壁本体(10)が、前記橋梁の道路側に臨むとともに、前記壁本体(10)に着脱可能に取り付けられる前面プレート(20)を有することが好ましい。
【0013】
本開示の壁高欄の他の態様において、
前記橋軸方向に離間して対向する左右一対の側板(72,73)を有する中空箱型に形成されるとともに、前記補強リブ(40)を切り欠いた部分に嵌め込んで固定されており、内部に前記線状体(80)を収容可能な箱体(70)と、
前記側板(72,73)を板厚方向に貫通するとともに、前記線状体(80)を挿入可能な円形孔状の側板孔(72A,73A)と、
前記一対の側板(72,73)にそれぞれ設けられた前記側板孔(72A,73A)のうち、一方の側板孔(73A)が他方の側板孔(72A)よりも上方に位置しており、
前記箱体(70)の内部に収容される前記線状体(80)が、前記他方の側板孔(72A)から前記一方の側板孔(73A)に向かうに従い上方に持ち上げられることが好ましい。
【0014】
本開示の壁高欄の設置構造は、
一対の前記壁高欄(1A,1B)を、前記橋梁の床版同士を接続する伸縮装置(600)を挟んで橋軸方向に離間配置するとともに、一対の前記壁高欄(1A,1B)の前記側面孔(12B,13B)に前記線状体(80)を挿入することにより、該線状体(80)を一対の前記壁高欄(1A,1B)の壁本体(10)内にそれぞれ収容し、一対の前記壁本体(10)内で前記線状体(80)を上方に持ち上げて支持することにより、該線状体(80)を一対の前記壁本体(10)の間にて下方に撓ませることを特徴とする。
【0015】
本開示の他の態様は、前記壁高欄(1A,1B)に橋軸方向に連結される鋼製の第二壁高欄(1C)であって、
前記橋軸方向に離間して対向する左右一対の第二側面プレート(12,13)を有する中空箱型に形成されるとともに、前記線状体(80)を収容可能な第二壁本体(10)と、
前記第二側面プレート(12,13)を板厚方向に貫通するとともに、前記線状体を挿入可能な第二側面孔(12B,13B)と、
前記第二壁本体(10)の内部を上下方向に延びる板状の第二補強リブ(40C)と、
前記橋軸方向に離間して対向する左右一対の第二側板(72,73)を有する中空箱型に形成されるとともに、前記第二補強リブ(40C)を切り欠いた部分に嵌め込んで固定されており、内部に前記線状体(80)を収容可能な第二箱体(70)と、
前記第二側板(72,73)を板厚方向に貫通するとともに、前記線状体(80)を挿入可能な第二側板孔(72A,73A)と、を備えており、
前記一対の第二側板(72,73)にそれぞれ設けられた前記第二側板孔(72A,73A)のうち、前記第二壁高欄(1C)を前記壁高欄(1A,1B)に連結した場合に、該壁高欄(1A,1B)に近い一方の第二側板孔(73A)が他方の第二側板孔(72A)よりも上方に位置しており、
前記第二箱体(70)の内部に収容される前記線状体(80)が、前記他方の第二側板孔(72A)から前記一方の第二側板孔(73A)に向かうに従い上方に持ち上げられることを特徴とする。
【0016】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。また、本開示の壁高欄は、道路の上下線を隔てる中央分離帯の壁高欄にも適用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本開示の技術によれば、壁高欄に関し、橋桁の変動や伸縮を効果的に吸収しつつ、メンテナンス性を効果的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る壁高欄を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に示す壁高欄の模式的な分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る壁高欄を橋梁の道路幅方向に切断した模式的な縦断面図である。
【
図4】第一実施形態に係る壁高欄を橋梁の橋軸方向に切断した模式的な縦断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る壁高欄の設置構造を説明する模式的な正視図である。
【
図6】変形例の壁高欄を示す模式的な斜視図である。
【
図7】変形例の壁高欄を示す模式的な斜視図である。
【
図8】変形例の壁高欄を示す模式的な正視図である。
【
図9】第二実施形態に係る壁高欄の模式的な分解斜視図である。
【
図10】第二実施形態に係る壁高欄の模式的な分解斜視図である。
【
図11】第二実施形態に係る壁高欄の模式的な分解斜視図である。
【
図12】第二実施形態に係る壁高欄の設置構造を説明する模式的な正視図である。
【
図13】変形例の壁高欄を示す模式的な正視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る壁高欄及び、壁高欄の設置構造について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0020】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る壁高欄1を示す模式的な斜視図であり、
図2は、
図1に示す壁高欄1の分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係る壁高欄1の模式的な縦断面図である。
【0021】
図1及び、
図2に示す壁高欄1は、複数の鋼材を組み付けることにより構成される鋼製壁高欄である。鋼製壁高欄は、現場打ちコンクリート製の壁高欄の設置で行う型枠組立、鉄筋組立、コンクリート打設等の工程が不要であり、工期を大幅に短縮することができる利点を有する。また、鋼製壁高欄は、中空構造であることから、現場打ちコンクリート製或いはプレキャストコンクリート製の壁高欄に比べ、重量を大幅に低減でき、橋梁への負荷も軽減することできる利点を有する。
【0022】
図1及び、
図2に示すように、壁高欄1は、本体部10、本体カバー部20及び、地覆カバー部30を備えている。本体部10及び、本体カバー部20は、本開示の壁本体を構成する。これら本体部10、本体カバー部20及び、地覆カバー部30のそれぞれは、鋼板等の金属製のプレート材を曲げ加工や溶接加工することにより形成される。
【0023】
なお、以下では、壁高欄1が橋梁の側部に設置された場合の上下方向を壁高欄1の「上下方向」とする。また、橋梁の橋軸方向を壁高欄1の「左右方向」、橋軸方向と直交する水平方向を壁高欄1の「前後方向」とする。このため、以下の説明では、壁高欄1の各側面のうち、橋梁の道路側に臨む面を壁高欄1の「前面」、道路とは反対側の面を壁高欄1の「後面」、道路側から視て左側の端面を壁高欄1の「左面」、道路側から視て右側の端面を壁高欄1の「右面」と称する。
【0024】
本体部10は、壁高欄1の底部を構成するベースプレート11を備えている。ベースプレート11は、左右方向に長い矩形板状に形成されている。ベースプレート11の寸法は、特に限定されないが、標準的な壁高欄の底部の寸法を基準に設定すればよい。本実施形態において、ベースプレート11の左右方向の長さ(幅)は、例えば100cm~200cmであり、ベースプレート11の前後方向の長さ(奥行)は、例えば40cm~50cmである。
【0025】
ベースプレート11には、ベースプレート11を板厚方向に貫通する複数の挿入孔11A(
図3参照)が設けられている。挿入孔11Aを設ける位置や個数は特に制限されないが、床版FSから上方に突出するスタッドボルトB1(又はアンカーボルト)の位置や本数に応じて適宜に設定することができる。壁高欄1を床版FSに設置する際は、挿入孔11AにスタッドボルトB1を挿入し、スタッドボルトB1にナットN1を螺合して締め付ける。この際、床版FSとベースプレート11との間にはモルタル(図示せず)が敷設されてもよい。
【0026】
ベースプレート11の前端部には、左右方向に所定間隔で配置された複数のブラケット11Bが設けられている。ブラケット11Bは、好ましくは、ベースプレート11の上面に溶接等で固定される。なお、ブラケット11Bの固定は、溶接に限定されず、ボルトナット等の締結具を用いて固定してもよい。ブラケット11Bには、ボルトB2(
図3参照)を挿入するための挿入孔11Cが設けられている。ボルトB2をナットN2に螺合して締め付けることにより、地覆カバー部30の下端側がブラケット11Bに取り付けられるようになっている。ナットN2は、ブラケット11Bの背面に予め溶接等で固定してもよく、或いは、ボルトB2を挿入する際に、ボルトB2に螺合させてもよい。なお、壁高欄1が地覆カバー部30を必要としない場合、ブラケット11Bは省略すればよい。
【0027】
本体部10は、さらに、壁高欄1の左面をなす左側面プレート12及び、壁高欄1の右面をなす右側面プレート13を備えている。左側面プレート12は、ベースプレート11の左端部から上方に延び、右側面プレート13は、ベースプレート11の右端部から上方に延びる。すなわち、左側面プレート12及び、右側面プレート13は、ベースプレート11を挟んで左右方向に離間して対向する。なお、以下では、左側面プレート12及び、右側面プレート13は、特に区別する必要がない場合、それらを単に「側面プレート12,13」とも称する。
【0028】
側面プレート12,13は、上下方向に長い略矩形板状に形成されている。側面プレート12,13の前後方向の長さは、好ましくは、ベースプレート11の前後方向の長さよりも短く形成されている。側面プレート12,13の寸法は、特に限定されないが、標準的な壁高欄の側面の寸法を基準に設定すればよい。本実施形態において、側面プレート12,13の上下方向の長さ(高さ)は、例えば90cm~100cmであり、前後方向の長さ(奥行)は、例えば20cm~40cmである。
【0029】
側面プレート12,13は、下側縁部の後端がベースプレート11の後側角部と略一致するように、ベースプレート11の上面に溶接等で固定される。なお、側面プレート12,13の固定は、溶接に限定されず、ボルトナット等の締結具を用いて固定することもできる。側面プレート12,13には、他の壁高欄に連結する際にボルトを挿入するための複数のボルト挿入孔12A,13Aが板厚方向に貫通形成されている。また、側面プレート12,13には、後述するフレキシブル管80(
図4,5参照)を挿入するための管挿入孔12B,13Bが設けられている。管挿入孔12B,13Bは、本開示の側面孔の一例である。管挿入孔12B,13Bの詳細については後述する。
【0030】
本体部10は、さらに、本体カバー部20の下端側を取り付けるためのカバー固定用プレート14を備えている。カバー固定用プレート14は、側面プレート12,13の前側縁部の下側部分及び、ベースプレート11の上面に溶接等で固定される。カバー固定用プレート14の左右方向の長さ(幅)は、ベースプレート11の左右方向と同程度の長さであり、カバー固定用プレート14の上下方向の長さ(高さ)は、側面プレート12,13の上下方向よりも短い長さで形成されている。カバー固定用プレート14の上下方向の長さ(高さ)は、特に限定されないが、本体カバー部20を固定するのに必要な長さを確保すればよい。
【0031】
カバー固定用プレート14には、ボルトB3(
図3参照)を挿入するための複数の挿入孔14Aが設けられている。ボルトB3をナットN3に螺合して締め付けることにより、本体カバー部20の下端側が本体部10に取り付けられるようになっている。ナットN3は、カバー固定用プレート14の背面に予め溶接等で固定されていてもよく、或いは、ボルトB3を挿入する際に、ボルトB3に螺合させてもよい。
【0032】
本体部10は、さらに、壁高欄1の後面をなす後面プレート15と、後面プレート15の上端から前方に向けて略直角に折れ曲がる上板部16とを備えている。
【0033】
後面プレート15の左右方向の長さ(幅)は、ベースプレート11の左右方向と同程度の長さであり、後面プレート15の上下方向の長さ(高さ)は、側面プレート12,13の上下方向と同程度の長さである。後面プレート15は、側面プレート12,13の後側縁部及び、ベースプレート11の後側縁部に溶接等で固定されている。なお、これら部材11,12,13、15の固定は、溶接に限定されず、ボルトナット等の締結具を用いて固定してもよい。
【0034】
上板部16の左右方向の長さ(幅)は、ベースプレート11の左右方向と同程度の長さであり、上板部16の前後方向の長さ(奥行)は、側面プレート12,13の前後方向と同程度の長さである。上板部16は、左右方向の両端を側面プレート12,13の上側縁部に溶接等で固定されている。なお、これら部材12,13、16の固定は、溶接に限定されず、ボルトナット等の締結具を用いて固定してもよい。
【0035】
上板部16には、ボルトB4(
図3参照)を挿入するための複数の挿入孔16Aが設けられている。ボルトB4をナットN4に螺合して締め付けることにより、本体カバー部20の上端側が本体部10に取り付けられるようになっている。ナットN4は、上板部16の下面に予め溶接等で固定されていてもよく、或いは、ボルトB4を挿入する際に、ボルトB3に螺合させてもよい。
【0036】
本体カバー部20は、壁高欄1の前面をなす前面プレート21と、壁高欄1の上面をなす上面プレート22とを有する。上面プレート22は、前面プレート21の上端から後方に向けて略直角に折れ曲がる。上面プレート22の左右方向の長さ(幅)は、上板部16の左右方向と同程度の長さであり、上面プレート22の前後方向の長さ(奥行)は、上板部16の前後方向と同程度の長さである。上面プレート22には、ボルトB4(
図3参照)を挿入するための複数の挿入孔22Aが設けられている。上面プレート22は、上板部16の上面に重ね合わされた状態でボルトB4を締め付けることにより固定される。
【0037】
前面プレート21の左右方向の長さ(幅)は、ベースプレート11の左右方向と同程度の長さであり、前面プレート21の上下方向の長さ(高さ)は、側面プレート12,13の上下方向と同程度の長さである。前面プレート21の下端側には、ボルトB3(
図3参照)を挿入するための複数の挿入孔21Aが設けられている。前面プレート21は、カバー固定用プレート14の前面に重ね合わされた状態でボルトB3を締め付けることにより固定される。前面プレート21の挿入孔21Aよりも上側の所定部分には、地覆カバー部30の上端側を保持する複数の係合突起23が設けられている。
【0038】
地覆カバー部30は、壁高欄1の前面と路面との境界部分に傾斜面を形成する傾斜プレート31を備えている。傾斜プレート31の左右両端には、ベースプレート11との隙間を埋める略三角状の側板35が溶接などによって固定されている。傾斜プレート31の上端部背面には、係合突起23と係合する複数の被係合片33(
図3参照)が設けられている。また、傾斜プレート31の下端側には、ブラケット11Bに取り付けられる被取り付け板部34が設けられている。被取り付け板部34には、ボルトB2を挿入するための複数の挿入孔34Aが設けられている。覆カバー部30は、被係合片33を係合突起23に係合させるとともに、挿入孔34AにボルトB2を挿入してブラケット11Bの背面のナットN2と螺合させることにより、本体部10に組み付けられる。
【0039】
本体部10には、複数枚の補強リブ40が設けられている。補強リブ40は、上下方向に長い矩形板状をなしており、前後方向の長さ(奥行)及び、上下方向の長さ(高さ)は、側面プレート12,13と同程度の長さで形成されている。複数枚の補強リブ40は、ベースプレート11、左側面プレート12、右側面プレート13、後面プレート15、上板部16及び、前面プレート21によって画定される空間内に、左右方向に所定の間隔を置いて並列に配置されている。補強リブ40は、好ましくは、下側縁部をベースプレート11の上面、後側縁部を後面プレート15の前面、上側縁部を上板部16の下面に溶接等で固定されている。なお、補強リブ40は、ベースプレート11、後面プレート15、上板部16の全てに固定される必要はなく、これらの何れか二つに固定されていればよい。
【0040】
補強リブ40は、横断面が略L字状の鋼製プレートであって、前後方向に延びるリブ本体部41と、リブ本体部41の前端から左右方向に向けて折れ曲がるフランジ部42とを一体に有する。フランジ部41の前面は、本体部10に取り付けられた前面プレート21の後面を支持する。これにより、例えば、橋梁を走行中の車両等が前面プレート21に衝突した際に、衝突に伴う衝撃を前面プレート21及びフランジ部41によって面で受け止めることができ、壁高欄1の強度を効果的に確保することが可能になる。
【0041】
リブ本体部41には、リブ本体部41を板厚方向に貫通する管挿入孔44が設けられている。管挿入孔44は、本開示のリブ孔の一例である。リブ本体部41に管挿入孔44を設けることにより、補強リブ40の軽量化が図られるようになる。管挿入孔44の具体的な形状や配置位置等の詳細については後述する。リブ本体部41の管挿入孔44には、フレキシブル管80(
図4,5参照)が挿入される。また、フレキシブル管80の内部には、通信用や電線用の配線(光ファイバを含む)が挿入される。すなわち、壁高欄1の内部空間に配線や配管を効果的に収容できるように構成されている。
【0042】
ところで、橋梁の床版を互いに橋軸方向に接続する接続部には、桁の変動や伸縮を吸収するための伸縮装置が設けられている。このため、伸縮装置を挟んで橋軸方向に離間する一対の壁高欄内に収容される配線や配管も、橋梁の変動及び伸縮に追従して変形できるようにする必要がある。このような変動や伸縮に対応するようにした従来構造を
図14,15に示す。
【0043】
図14は、伸縮装置600を挟んで対向する一対の壁高欄500を橋軸方向に伸縮可能な配管700によって接続し、該配管700の内部に配線を挿入した従来構造である。壁高欄500は、コンクリート製又は鋼製の何れでもよい。このような構造の場合、橋梁の橋軸方向の変動や伸縮に対しては、配管700が追従して伸縮することはできる。しかしながら、橋梁に橋軸方向と略直交する方向の変形や変動が生じた場合には、配管700が追従変形するとこができず、配管700、或は、配管700内の配線が破損するといった課題がある。
【0044】
図15は、伸縮装置600を挟んで対向する一対の壁高欄500の背面側にプルボックス550をそれぞれ設けるとともに、プルボックス550同士をフレキシブル管710によって接続し、該フレキシブル管710の内部に配線を挿入した従来構造である。
図14に示す例と同様、壁高欄500は、コンクリート製又は鋼製の何れでもよい。このような構造の場合、橋梁の橋軸方向の変動や伸縮、さらには、橋軸方向と略直交する方向の変動に対して、フレキシブル管710が追従変形するため、破損等を防止することは可能である。
【0045】
しかしながら、プルボックス550を壁高欄500の背面に設置すると、プルボックス550内の配線のメンテナンス時に、高所作業車を用いる必要があり、橋梁の下部に道路や第三者が立ち入り可能な構造物等がある場合は、橋梁側の道路の車線規制を行わなければならないといった課題がある。或は、プルボックス550にアクセスできる検査路等を橋梁の外側に別途設けることも考えられるが、スペース上の制約を受けるといった課題もある。また、橋梁と並走する他の道路や構造物等が隣接している場合には、壁高欄500の背面側からの点検が困難になるといった課題もある。また、積雪地では、プルボックス550の上面の積雪や氷柱が下方に落下する虞があり、橋梁の下部を通行する車両や人に対する安全対策を行わなければならないといった課題もある。すなわち、
図15に示す従来構造では、メンテナンス性や利便性の悪化を招くといった課題がある。
【0046】
そこで、本開示の壁高欄1では、側面プレート12,13の管挿入孔12B,13B及び、補強リブ40の管挿入孔44の形状や配置位置に工夫を施すことにより、上述の課題を解決するようにした。すなわち、橋梁の変動や伸縮を効果的に吸収しつつ、メンテナンス性や利便性の向上を実現するようにした。以下、本実施形態の壁高欄1の要部について説明する。
【0047】
[第一実施形態]
図4は、第一実施形態に係る壁高欄1Aを橋梁の橋軸方向に切断した模式的な縦断面図である。
図5は、一対の壁高欄1Aを、伸縮装置600を挟んで設置するとともに、これら壁高欄1Aの伸縮装置600とは反対側にプレキャストコンクリート製の壁高欄400を連結した状態を示す模式的な正視図である。
【0048】
図4に示すように、第一実施形態において、壁高欄1Aの側面プレート12,13に設けられた管挿入孔12B,13Bは長孔であり、補強リブ40に設けられた管挿入孔44は長孔又は円形孔である。
【0049】
具体的には、側面プレート12,13の管挿入孔12B,13Bは、側面プレート12,13の下端側から上端側に亘って上下方向に延びる長孔状に形成されており、長手方向と直交する短手方向(前後方向)の開口幅は、フレキシブル管80の外径よりも大きく形成されている。
【0050】
すなわち、複数本のフレキシブル管80を、長孔状の管挿入孔12B,13Bに軸方向に移動自在、且つ、上下方向に移動自在に挿入できるように構成されている。管挿入孔12B,13Bの開口寸法は、特に制限されないが、本実施形態では、短手方向が約10cm、長手方向が約70cmである。
【0051】
なお、図示例において、左側面プレート12の挿入孔12B及び、右側面プレート13の挿入孔13Bは、何れも長孔で示されているが、後述するコンクリート製の壁高欄400(
図5参照)に接する側の側面プレート12,13(
図5中において、左側の壁高欄1Aは左側面プレート12、右側の壁高欄1は右側面プレート13)の管挿入孔12B,13Bは、壁高欄400の配管420の位置に対応して設けられる円形孔であってもよい。
【0052】
補強リブ40の管挿入孔44は、補強リブ40の配置位置に応じて長孔又は円形孔とされる。本実施形態において、補強リブ40は、3枚が左右方向に所定間隔で配置されている。このため、以下では、3枚の補強リブ40のうち、中間の補強リブを「中間補強リブ40M」、左側の補強リブを「左側補強リブ40L」、右側の補強リブを「右側補強リブ40R」と称する。また、中間補強リブ40Mの管挿入孔を「中間管挿入孔44M」、左側補強リブ40Lの挿入孔を「左側管挿入孔44L」、右側補強リブ40Rの挿入孔を「右側管挿入孔44R」と称する。
【0053】
左側管挿入孔44Lは、左側補強リブ40Lの下端側から上端側に亘って上下方向に延びる長孔状に形成されており、長手方向と直交する短手方向の開口幅は、フレキシブル管80の外径よりも大きく形成されている。同様に、右側管挿入孔44Rは、右側補強リブ40Rの下端側から上端側に亘って上下方向に延びる長孔状に形成されており、長手方向と直交する短手方向の開口幅は、フレキシブル管80の外径よりも大きく形成されている。
【0054】
すなわち、複数本のフレキシブル管80を、左側管挿入孔44L及び、右側管挿入孔44Rに軸方向に移動自在、且つ、上下方向に移動自在に挿入できるように構成されている。これら左側管挿入孔44L及び、右側管挿入孔44Rの開口寸法は、特に制限されないが、本実施形態では、短手方向が約10cm、長手方向が約70cmである。
【0055】
中間管挿入孔44Mは、円形孔状に形成されている。中間管挿入孔44Mは、好ましくは、中間補強リブ40Mの上下方向の中間位置から上側の部分に設けられている。本実施形態において、中間管挿入孔44Mは、フレキシブル管80の本数に応じて複数(図示例では4個)設けられており、上下方向に所定間隔で配列されている。中間管挿入孔44Mの開口径は、フレキシブル管80の外径よりも大きく形成されており、中間管挿入孔44Mに挿入されたフレキシブル管80が、自重によって中間挿入孔44Mの下側内周面に着座するようになっている。
【0056】
すなわち、中間管挿入孔44Mがフレキシブル管80を下方から支持する支持部として機能するように構成されている。なお、中間管挿入孔44Mの開口径は、特に制限されないが、本実施形態では、約7~8cmである。また、中間挿入孔44Mの個数も、複数に限定されず、フレキシブル管80が一本であれば、中間挿入孔44Mは一個であってもよい。
【0057】
図5に示すように、一対の壁高欄1Aは、伸縮装置600を挟んで橋軸方向に離間して対向するように設置される。これら壁高欄1Aの伸縮装置600とは反対側の側部には、プレキャストコンクリート製の壁高欄400が連結される。壁高欄400の壁本体410には、配線を挿入するための配管420が埋設されている。配管420は、フレキシブル管80の本数に応じて複数(図示例では4本)設けられており、上下方向に所定間隔で配列されている。また、壁本体410には、他のプレキャストコンクリート製の壁高欄と連結する際に、円弧状の連結ボルト(図示せず)を挿入するための孔等を有する連結部430が設けられている。
【0058】
配管420は、壁本体410の連結部430よりも下側の部分に埋設されている。また、壁本体410の壁高欄1A側には、雌ねじ穴を有する複数のインサート440が埋設される。インサート440は、側面プレート12,13のボルト挿入孔12A,13A(
図2参照)に対応して設けられており、壁高欄1Aと壁高欄400とを互いに連結する際は、ボルトBをボルト挿入孔12A,13Aに挿入し、該ボルトBをインサート440の雌ねじ穴と螺合させるのみで組み付けられるようになっている。この際、壁高欄1Aのフレキシブル管80は、壁高欄400内の配管420の端部に不図示の接続部材等を介して接続される。
【0059】
ここで、中間管挿入孔44M及び、配管420の上下方向の位置関係は、中間管挿入孔44Mが配管420よりも上方となるように設定される。具体的には、最も下の中間管挿入孔44Mは、少なくとも最も下の配管420よりも上方に位置するように設けられている。また、下から二番目の中間管挿入孔44Mは、少なくとも下から二番目の配管420よりも上方に位置するように設けられている。また、下から三番目の中間管挿入孔44Mは、少なくとも下から三番目の配管420よりも上方に位置するように設けられている。また、最も上の中間管挿入孔44Mは、最も上の配管420よりも上方に位置するように設けられている。
【0060】
このように、壁高欄1Aの各中間管挿入孔44Mを対応する壁高欄400の配管420よりも上方に設けることにより、フレキシブル管80は壁高欄400側から中間補強リブ40Mに向かうに従い上方に持ち上げられるようになる。すなわち、伸縮装置600を挟んで左右に対向する一対の壁高欄1Aの内部に左右方向に架け渡されるフレキシブル管80が、これら一対の壁高欄1Aの各中間管挿入孔44Mによって2箇所を持ち上げられた状態で支持されるように構成されている。
【0061】
本実施形態において、一対の壁高欄1Aの内部に架け渡されるフレキシブル管80の管軸方向の長さ(全長)は、左側に配された壁高欄1Aの左端から右側に配された壁高欄1Aの右端までの距離Dよりも十分に長く形成されている。このように、フレキシブル管80の長さに余裕を持たせることで、左右の2箇所を持ち上げられたフレキシブル管80は、それら2箇所の間で下方に撓んだ状態となる。また、フレキシブル管80の下方に撓んだ部分は、長孔状の管挿入孔44R,13B,12B,44L内に移動自在に挿入される。
【0062】
すなわち、橋梁の変動や伸縮に伴い、左右の壁高欄1Aが互いに橋軸方向又は上下方向に相対変位したとしても、フレキシブル管80が管挿入孔44R,13B,12B,44Lに干渉することなく追従変形できるようになっている。これにより、フレキシブル管80が橋梁の変動や伸縮を効果的に吸収できるようになり、フレキシブル管80の破損、さらには、フレキシブル管80内に挿入された配線の破損を効果的に防止することが可能になる。
【0063】
また、補強リブ40L,40M,40Rの管挿入孔44L,44M,44Rにフレキシブル管80を挿入することにより、壁高欄1Aの内部空間を配線や配管の収容スペースとして有効に活用できるようになり、利便性を確実に向上することも可能になる。
【0064】
また、壁高欄1A内に収容した配線や配管は、本体カバー部20を取り外すのみで容易にアクセスできるため、メンテナンス作業を路肩で行うことが可能になる。すなわち、壁高欄の後面にプルボックスを取り付けた従来構造(
図15参照)においてメンテナンス時に必要となる高所作業車が不要となり、橋梁上の道路の車線規制を伴うことなく、メンテナンス作業を効率的に行うことが可能になる。
【0065】
また、メンテナンス作業を路肩で容易に行えるため、壁高欄1Aの後面側での作業が不要となる。すなわち、橋梁と並走する他の道路や、橋梁と隣接する他の構造物が存在しても、それらの影響を受けることなく、配線の点検保守を容易に行うことができ、メンテナンス性を確実に向上することが可能になる。
【0066】
また、壁高欄1Aの内部を配線や配管の収容スペースとして有効に活用できるため、従来構造のような壁高欄の後面に取り付けるプルボックスが不要となり、さらには、橋梁の外側でプルボックス同士を接続する配管も不要となる。これにより、積雪地においては、プルボックスや配管からの落雪、さらには、氷柱の落下といったリスクを効果的に回避できるようになり、橋梁の下部を通行する車両や人に対する安全性を効果的に確保することも可能になる。
【0067】
また、橋軸方向に連結される複数の壁高欄のうち、端部に設置される壁高欄は、端部以外の部分に設置される他の壁高欄よりも、床版との接合強度や壁本体自体の強度に関し高強度な仕様が求められる。このような端部に設置される壁高欄を、本開示の鋼製の壁高欄1Aとすれば、要求仕様に容易に対応することも可能になる。
【0068】
[第一実施形態の変形例]
図6に示すように、壁高欄1Aの左右方向の長さが比較的短く、補強リブ40が一枚の場合が考えられる。このような場合は、一枚の補強リブ40の管挿入孔44を円形孔とすればよい。
図6に示す構造においても、フレキシブル管80を管挿入孔44によって持ち上げて支持することにより、フレキシブル管80が一対の壁高欄1Aの間で下方に撓むようになり、橋梁の変動や伸縮を効果的に吸収することが可能になる。
【0069】
図7に示すように、補強リブ40の枚数が奇数ではなく、偶数の場合(図示例では4枚)が考えられる。このような場合、補強リブ40の枚数が4枚以上の偶数であれば、中間の2枚の補強リブ40M1,40M2の管挿入孔44M1,44M2を円形孔とすればよく、補強リブ40の枚数が2枚であれば、何れか一方の補強リブ40の管挿入孔44を円形孔とすればよい。係る構造の場合も、フレキシブル管80が一対の壁高欄1Aの間で下方に撓むようになり、橋梁の変動や伸縮を効果的に吸収することが可能になる。
【0070】
図8に示すように、壁高欄1Aに連結される壁高欄400は、プレキャストコンクリート製ではなく、現場打ちコンクリート製であってもよい。壁高欄400が現場打ちコンクリート製の場合、配管420は壁本体410の上側に埋設することもできる。この場合、壁高欄400に連結される側の側面プレート12,13の管挿入孔12B,13Bを配管420の位置に応じた円形孔とし、それ以外の管挿入孔44L,44M,44R,12B,13Bは全て長孔としてもよい。
図8に示す構造においても、配管420に接続されたフレキシブル管80が一対の壁高欄1Aの間で下方に撓むようになり、橋梁の変動や伸縮を効果的に吸収することが可能になる。
【0071】
[第二実施形態]
次に、
図9~12に基づいて、第二実施形態に係る壁高欄1B,1C,1Dの詳細について説明する。
図9は、第二実施形態に係る壁高欄1Bを、本体部10から本体カバー部20及び、地覆カバー部30を取り外した状態で示す斜視図である。
図10は、
図9に示す壁高欄1Bに連結される壁高欄1Cを、本体カバー部20を取り外した状態で示す斜視図である。
図11は、
図10に示す壁高欄1Cに連結される壁高欄1Dを、本体カバー部20を取り外した状態で示す斜視図である。
図11は、第二実施形態に係る壁高欄1B,1C,1Dを橋軸方向に連結した状態を示す模式的な正視図である。
【0072】
第二実施形態は、壁高欄1B,1C,1Dを何れも鋼製の壁高欄としたものである。本体部10、本体カバー部20及び、地覆カバー部30の基本的な構造は、第一実施形態の壁高欄1Aと略同様に構成されるため、それらについての詳細な説明は省略する。また、
図10及び、
図11において、地覆カバー部30は図示を省略している。
【0073】
図9に示すように、第二実施形態の壁高欄1Bにおいて、側面プレート12,13に設けられる管挿入孔12B,13B及び、補強リブ40L,40M,40Rに設けられる管挿入孔44L,44M,44Rは、何れも長孔である。すなわち、複数本のフレキシブル管80(
図12参照)を、全ての管挿入孔12B,13B,44L,44M,44Rに軸方向に移動自在、且つ、上下方向に移動自在に挿入できるように構成されている。壁高欄1Bの側面プレート12,13には、第一実施形態の壁高欄1Aと同様、他の壁高欄に連結する際にボルトを挿入するボルト挿入孔12A,13Aが設けられている。
【0074】
図10に示す壁高欄1Cは、本開示の第二壁高欄の一例であって、左右方向の長さを
図9に示す壁高欄1Bよりも長く形成されている。壁高欄1Cは、壁高欄1Bよりも多い枚数の補強リブ40Cを備えている。具体的には、壁高欄1Cの本体部10の内部には、5枚の補強リブ40Cが左右方向に所定間隔で配置されている。なお、補強リブ40Cの枚数はこれには限定されず、壁高欄1Cの左右方向の長さ等、具体的な寸法に応じた適宜の枚数とすることができる。
【0075】
壁高欄1Cの本体部10の内部には、配線の点検作業等を行う際に作業用空間として機能するハンドホール70が設けられている。ハンドホール70は、本開示の箱体の一例である。
【0076】
ハンドホール70は、鋼板等の金属製のプレートを溶接加工することにより、壁高欄1Cの前面側に開放する略箱型状に形成されている。具体的には、ハンドホール70は、奥面を形成する矩形板状の奥側板71と、左面を形成する矩形板状の左側板72と、右面を形成する矩形板状の右側板73と、上面を形成する矩形板状の上側板74と、下面を形成する矩形板状の下側板75とを有する。本体カバー部20のハンドホール70の開口に対応する部分には、本体カバー部20に着脱可能な蓋材76が取り付けられている。蓋材76を本体カバー部20から取り外せば、ハンドホール70内の配線の点検作業等を容易に行えるようになっている。
【0077】
ハンドホール70は、補強リブ40Cを略コ字状(角部が直角の略U字状)に切り欠いた部分に嵌め込むことにより取り付けられる。ハンドホール70の奥側板71、左側板72、右側板73、上側板74及び、下側板75のそれぞれは、好ましくは、補強リブ40Cを切り欠いた部分の縁部と溶接等によって接合することにより固定されており、補強リブ40Cの強度を維持できるようになっている。壁高欄1Cにおいて、ハンドホール70は、補強リブ40Cの上下方向の略中間位置から下側の部分に設けられている。
【0078】
補強リブ40Cのハンドホール70よりも上側の部分には、フレキシブル管80(
図12参照)を挿入するための管挿入孔44Cが設けられている。管挿入孔44Cは、円形孔状に形成されており、壁高欄1Cのハンドホール70よりも上側の空間内でフレキシブル管80を左右方向(略水平方向)に架け渡すように支持する。
【0079】
ハンドホール70の左側板72及び、右側板73にも、フレキシブル管80を挿入するための円形孔状の管挿入孔72A,73Aがそれぞれ設けられている。壁高欄1Cにおいて、右側板73の管挿入孔73Aは、左側板72の管挿入孔72Aよりも上方に位置するように設けられている。すなわち、ハンドホール70の空間内で、フレキシブル管80が左側板72から右側板73に向かうに従い上方に持ち上げられるようになっている。なお、管挿入孔72A,73Aの上下方向の位置関係は、壁高欄1Cの左側に壁高欄1Bが連結される場合は、左側板72の管挿入孔72Aが右側板73の管挿入孔73Aよりも上方に位置するように入れ替えればよい。
【0080】
壁高欄1Cの側面プレート12,13には、壁高欄1Bと同様、他の壁高欄に連結する際にボルトを挿入するためのボルト挿入孔12A,13Aがそれぞれ設けられている。
【0081】
図11に示す壁高欄1Dは、左右方向の長さを
図10に示す壁高欄1Cと同等の長さで形成されており、壁高欄1Cと同様に5枚の補強リブ40Dを備えている。なお、補強リブ40Dの枚数はこれには限定されず、壁高欄1Dの左右方向の長さ等、具体的な寸法に応じた適宜の枚数とすることができる。
【0082】
壁高欄1Dの本体部10の内部には、ハンドホール70が設けられている。壁高欄1Dのハンドホール70は、上述した壁高欄1Cのハンドホール70と同様に構成されるため、詳細な説明は省略する。壁高欄1Dにおいて、ハンドホール70は、補強リブ40Dの上下方向の略中間位置から上側の部分に設けられている。
【0083】
補強リブ40Dのハンドホール70よりも下側の部分には、フレキシブル管80を挿入する円形孔状の管挿入孔44Dが設けられている。管挿入孔44Dは壁高欄1Dのハンドホール70よりも下側の空間内で、フレキシブル管80(
図12参照)を左右方向(略水平方向)に架け渡すように支持する。
【0084】
ハンドホール70の左側板72及び、右側板73にも、フレキシブル管80を挿入するための円形孔状の管挿入孔72A,73Aがそれぞれ設けられている。壁高欄1Dにおいて、右側板73の管挿入孔73Aは、左側板72の管挿入孔72Aよりも上方に位置するように設けられている。すなわち、ハンドホール70の空間内で、フレキシブル管80が左側板72から右側板73に向かうに従い上方に持ち上げられるようになっている。
【0085】
図12に示すように、一対の壁高欄1Bは、伸縮装置600を挟んで橋軸方向に離間して対向するように設置される。これら壁高欄1Bの伸縮装置600とは反対側の側部には、壁高欄1Cが連結される。また、壁高欄1Cの壁高欄1Bとは反対側の側部には、壁高欄1Dが連結される。
【0086】
壁高欄1Dの内部において、複数本のフレキシブル管80のうち、上側のフレキシブル管80(図示例では上側2本)は、壁高欄1D内に設けられたハンドホール70の管挿入孔72A,73Aによって、壁高欄1Cに向かうに従い上方に持ち上げられる。壁高欄1D内で持ち上げられたフレキシブル管80は、壁高欄1C内で補強リブ40Cの管挿入孔44Cに挿入されることにより、壁高欄1Cのハンドホール70よりも上側の空間内を左右方向に架け渡される。
【0087】
また、壁高欄1Dのハンドホール70よりも下側の空間内に左右方向に架け渡されたフレキシブル管80(図示例では下側2本)は、壁高欄1C内に設けられたハンドホール70の管挿入孔72A,73Aによって、壁高欄1Bに向かうに従い上方に持ち上げられる。
【0088】
すなわち、壁高欄1D及び壁高欄1Cの内部に収容された複数本のフレキシブル管80が、これら壁高欄1D及び壁高欄1Cの内部に設けられたハンドホール70の管挿入孔72A,73Aによって壁高欄1B側に向かうに従い上方に持ち上げられるように構成されている。ハンドホール70の管挿入孔72A,73Aによって持ち上げられたフレキシブル管80は、壁高欄1Bと接する壁高欄1Cの側面プレート12,13の管挿入孔12B,13B(図中左側の壁高欄1Cは右側面プレート13の管挿入孔13B、図中右側の壁高欄1Cは左側面プレート12の管挿入孔12B)によって上方に持ち上げられた状態で支持される。
【0089】
本実施形態において、壁高欄1Bの管挿入孔12B,13B及び、管挿入孔44L,44M,44Rは、何れもフレキシブル管80を移動自在に挿入できる長孔状に形成されている。このため、壁高欄1Cの管挿入孔12B,13Bに支持されたフレキシブル管80は、伸縮装置600を挟んで対向する一対の壁高欄1Aの内部にて、下方に撓んだ状態となる。このように、フレキシブル管80を下方に撓ませて支持することにより、橋梁の変動や伸縮に伴い、左右の壁高欄1Bが互いに橋軸方向又は上下方向に相対変位したとしても、フレキシブル管80が橋梁の変動や伸縮を効果的に吸収できるようになり、フレキシブル管80の破損、さらには、フレキシブル管80内に挿入された配線の破損も効果的に防止することが可能になる。
【0090】
また、壁高欄1Bについては、本体カバー部20を取り外すのみで配線に容易にアクセスでき、壁高欄1C,1Dについては、蓋材76を取り外すのみで配線に容易にアクセスできる。これにより、第一実施形態と同様、配線の点検保守を路肩で行うことができるようになり、メンテナンス性を確実に向上することも可能になる。また、第一実施形態と同様、プルボックスが不要となるため、落雪や氷柱の落下によるリスクを回避できるようになり、安全性を確実に向上することも可能になる。
【0091】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0092】
例えば、
図13に示すように、第二実施形態のハンドホール70を、第一実施形態の壁高欄1Aに適用することも可能である。この場合、ハンドホール70の側板72,73に設けられた管挿入孔72A,73Aによってフレキシブル管80を上方に持ち上げて支持するように構成すればよい。
【0093】
また、第一実施形態において、鋼製の壁高欄1Aには、コンクリート製の壁高欄が連結されるものとして説明したが、壁高欄1Aに第二実施形態の壁高欄1C,1Dを連結することも可能である。また、第二実施形態の壁高欄1C,1Dは、コンクリート製の壁高欄と組み合わせて使用(例えば、交互に配置)することも可能である。第二実施形態の壁高欄1C,1Dをコンクリート製の壁高欄と組み合わせて使用すれば、全てをコンクリート製にする場合に比べ重量を効果的に低減することができ、全てを鋼製にする場合に比べコストを抑えることができる。
【0094】
また、上記実施形態において、壁高欄1A~1D内には、配線をフレキシブル管80に挿入して収容するものとしたが、フレキシブル管80を用いずに、配線そのものを直接的に収容することも可能である。また、本開示の壁高欄1A~1Dは、道路の上下線を隔てる中央分離帯等、橋梁の側部以外の場所に設置される壁高欄にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…壁高欄,10…本体部,11…ベースプレート,12…左側面プレート,13…右側面プレート,12B,13B…管挿入孔,14…カバー固定用プレート,15…後面プレート,16…上板部,20…本体カバー部,21…前面プレート,22…上面プレート,30…地覆カバー部,40…補強リブ,44…管挿入孔,80…フレキシブル管,600…伸縮装置