IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スーパー ソニック イマジンの特許一覧

特開2024-180780被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置
<>
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図1
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図2
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図3
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図4
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図5
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図6
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図7
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図8
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図9
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図10
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図11
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図12
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図13
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図14
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図15
  • 特開-被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180780
(43)【公開日】2024-12-27
(54)【発明の名称】被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078657
(22)【出願日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】FR2306223
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】508291928
【氏名又は名称】スーパー ソニック イマジン
【氏名又は名称原語表記】SUPER SONIC IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ランベール,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ボゥ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴォー,ジョナタン
(57)【要約】
【課題】被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】本開示は、被験者(UR1)の肝臓(3)の状態を決定するための方法及び装置(10)に関する。本方法は、肝臓の第1のスキャン構成(CF1)に従って伝搬する超音波(W)から第1のグループのスキャンデータ(DT1a)を取得することと、被験者の組織のグループの第2のスキャン構成(CF2)に従って伝搬する超音波(W)から第2のグループのスキャンデータ(DT1b)を取得することと、第1及び第2のグループのスキャンデータ(DT1a,DT1b)の組み合わせによって、肝臓の状態を表す指標S3を決定することとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者(UR1)の肝臓(3)の状態を決定する方法であって、上記方法は、
- 上記肝臓の第1のスキャン構成(CF1)に従って伝搬する超音波から第1のグループのスキャンデータ(DT1a)を取得(E2a)することと、
- 上記被験者の組織(5)のグループの第2のスキャン構成(CF2)に従って伝搬する超音波から第2のグループのスキャンデータ(DT1b)を取得(E2b)することと、
- 上記第1及び第2のグループのスキャンデータの組み合わせによって、上記肝臓(3)の状態を表す指標S3を決定(E6)することとを含む、
方法。
【請求項2】
- 上記被験者の組織(5)のグループは、上記肝臓(3)以外の上記被験者の部分に対応する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
- 上記第1のスキャン構成(CF1)は、上記肝臓の肋間スキャン構成であり、
- 上記第2のスキャン構成(CF2)は、上記肝臓の肋骨下スキャン構成である、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
- 上記指標S3を基準値(RF1)に対して比較する、
請求項1~3のうちの1つに記載の方法。
【請求項5】
上記方法は、
- 上記第1のグループのスキャンデータ(DT1a)から第1のスコア(S1)を評価(E4a)することと、
- 上記第2のグループのスキャンデータ(DT1b)から第2のスコア(S2)を評価(E4b)することとを含み、
上記指標S3は、上記第1及び第2のスコアから決定される、
請求項1~4のうちの1つに記載の方法。
【請求項6】
上記第1の指標S1及び/又は上記第2の指標S2は、
- 減衰係数を定義する指標、
- 音速を定義する指標、
- 後方散乱係数を定義する指標、
- 上記肝臓の弾性の指標、
- 上記肝臓の粘弾性を定義する指標、
- 伝搬非線形性の指標、
- 超音波の散乱の指標、及び、
- 超音波スペックル分布の指標
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
- 上記第1のスコア(S1)は第1の減衰係数であり、
- 上記第2のスコア(S2)は第2の減衰係数であり、
上記指標S3は、上記肝臓の生理病理学的状態のバイオマーカーを定義する、
請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
上記第1及び第2のグループのスキャンデータ(DT1a,DT1b)のうちの一方は、前スキャン構成によるスキャン、いわゆる前スキャンから取得され、他方は、後スキャン構成により実行されるスキャン、いわゆる後スキャンから取得され、上記前スキャンは上記後スキャンの前に実行され、
上記前スキャン構成は、上記第1及び第2のスキャン構成(CF1,CF2)のうちの一方であり、上記後スキャン構成は、上記第1及び第2のスキャン構成のうちの他方である、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記後スキャン構成は、上記前スキャンから取得された上記第1又は第2のスコア(S1,S2)のうちから選択される、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
上記指標S3は、上記第1及び第2のスコア(S1,S2)の平均から決定される、
請求項6~9のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
上記平均は、上記第1及び第2のスコア(S1,S2)の線形結合によって決定される、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
上記平均は、最小平均二乗平均である、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
上記平均は、上記第1及び第2のスコア(S1,S2)の非線形結合によって決定される、
請求項10記載の方法。
【請求項14】
上記指標S3を決定することは、
- トレーニングデータ(DT0)からトレーニングされたニューラルネットワーク(RN1)と、基準スコア(RF0)とを用いて取得された処理モデルに従って、上記第1及び第2のグループのデータ(DT1a,DT1b)を処理する、又は、上記第1及び第2のグループのデータから取得されたデータを処理することを含み、
上記トレーニングデータは、超音波スキャンデータを含む、又は、上記超音波スキャンデータから取得されたデータを含む、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
上記処理の前に、上記ニューラルネットワーク(RN1)は、トレーニングフェーズ中の機械学習によってトレーニングされ、
上記トレーニングフェーズは、
- テスト被験者における上記第1及び第2のスキャン構成に従って伝搬する波を表す超音波スキャンデータを取得(E40)することと、
- 上記超音波スキャンデータから上記トレーニングデータを決定(E42)することと、
- 上記テスト被験者に対して実行されたMRIイメージングから、上記テスト被験者の肝臓の状態を表す基準スコアを取得(E44)することと、
- 上記トレーニングデータを上記基準スコアに対して比較することによって、上記第1及び第2のグループのスキャンデータの組み合わせから上記指標S3を推定するために使用される処理モデル(ML1)を決定(E46)することとを含む、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
上記方法は、
- 上記指標S3から、上記被験者の肝臓の体脂肪比を評価することを含む、
請求項1~15のうちの1つに記載の方法。
【請求項17】
プロセッサによって実行されるときに請求項1~16のうちのいずれか1つに記載の方法を実施するための命令を含むコンピュータプログラム(PG1)。
【請求項18】
被験者(UR1)の肝臓(3)の状態を決定するための装置(30)であって、上記装置は、
- 上記肝臓の第1のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第1のグループのスキャンデータを取得するように構成された第1の取得モジュール(MD2)と、
- 上記被験者の組織のグループの第2のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第2のグループのスキャンデータを取得するように構成された第2の取得モジュール(MD4)と、
- 上記第1及び第2のグループのスキャンデータの組み合わせによって、上記肝臓の状態を表す指標S3を決定するように構成された分析モジュール(MD6)とを備えた。
装置。
【請求項19】
被験者の肝臓の状態を決定(SY2)するためのシステムであって、
- 請求項18記載の決定装置(30)と、
- 上記決定装置に接続された超音波システム(SY1)とを備える、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、ヒト又は動物のような被験者の肝臓の状態を決定することに関し、特に、非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)とも呼ばれる、非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic hepatic steatosis:NASH)のような肝障害のスクリーニング又は診断の支援をカバーするが、それらに限定されない。
【0003】
脂肪肝は、肝細胞における脂肪の蓄積を特徴とする肝障害である。脂肪肝には、特にアルコール及びメタボリックシンドロームを含む、多数の原因が存在する。非アルコール性脂肪肝、いわゆるNASHは、アルコールを過度に飲まない人に影響する。肝細胞の5%以上が脂質滴を含む場合、病理学的脂肪肝について話すことができる。簡単な脂肪肝、いわゆる脂肪過多症は概して良性であり、従って、肝臓に大きなダメージをもたらさない。他方、この状態は、肝実質内の炎症の出現を特徴とする侵襲性の疾患に対応する、非アルコール性脂肪性肝炎、いわゆるNASHのような、より重大な障害に発展する可能性があった。脂肪性肝炎自体は、瘢痕組織(繊維症)の蓄積を引き起こす可能性があり、それは、肝臓の潜在的に重篤な疾患、すなわち肝硬変をおそらくはもたらす可能性がある。
【0004】
脂肪肝、特にNASHは、最近になって、世界的に主要な公衆衛生の関心事とみなされている。現在、約2百万個の新たな肝臓病の症例が、毎年、世界中のいたる所で特定されている。このとき、2015年及び2030年の間にNAFLD及びNASHの罹患率が21%及び63%ずつそれぞれ増大すると考えられる。この肝臓の状態は、行動的(身体活動、食事)及び遺伝的なファクタに関連する。特に、それは、太り過ぎ又は肥満の人に影響する。非アルコール性脂肪肝が、全罹患率と、心血管の状態に関連する罹患率とを増大させ、様々な病理、特に、肝障害、腫瘍の形成、などをもたらしうることが研究により実証されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cassinotto, C., Jacq, T., Anselme, S., Ursic-Bedoya, J., Blanc, P., Faure, S., Belgour, A., & Guiu, B. (2022). Diagnostic Performance of Attenuation to Stage Liver Steatosis with MRI Proton Density Fat Fraction as Reference: A Prospective Comparison of Three US Machines. Radiology, 305(2), 353-361. https://doi.org/10.1148/radiol.212846.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、脂肪肝は、比較的に遅い可逆的な過程であり、特にそれは、特に、より良好な食事を介して、より一般的には、より良好な健康上の実践を介して、ただし早期にケアされれば、効果的に治療されうる。従って、脂肪肝の症例、特にNASHをできるだけ早期にスクリーニング及び診断できることが重要である。しかし、最近になって、診断のための、より一般的には肝臓の状態のモニタリングのための複数の異なる技術が存在するが、これらは、満足な結果を常に提供するとは限らない。
【0007】
MRI検査は、現在、肝臓の状態を評価するための、特に脂肪肝を診断及び定量化するための、基準となる非侵襲性方法のうちの1つである。特に、それは、肝臓全体の一様かつ非侵襲性の検査を可能にする。したがって、この技術のおかげで、肝臓の脂肪率の全体値を決定することができ、この値は、いわゆるプロトン密度脂肪率(Proton Density Fat Fraction:PDFF)である。しかしながら、この技術は、(コスト、製造の複雑性、稀少性、保守、トレーニングなどの問題で)いまだ広く利用可能ではない機器及びスキルを必要とするほど、何らかの制約及び制限をともない、複雑な設定を必要とする可能性さえあり、この結果、十分に早期に検出されればこれらの病理は多くの場合には潜在的に可逆であるので被験者が上流の治療から利益を得るために、それは、肝臓の何らかの検査にはほとんど不適切になり、特に、可能な場合には潜在的な疾患の発現のかなり前における、症例を大規模にモニタリングする、日常検査にはほとんど不適切になる。
【0008】
肝臓の生検はまた、このタイプの医療モニタリング及び診断のための基準技術であるが、特に、この検査の本質的に非常に局所的な性質に関連する信頼性のその潜在的な欠如に起因して、大きなリスク及び制約を有する。したがって、この技術は、特に、生検が肝臓をその最も影響を受けた部分において標的としなかった場合、診断エラーをもたらす可能性がある。その侵襲性の性質に起因して、肝臓の生検は、出血のような実質的に深刻な合併症をもたらす可能性があることにも注意すべきである。信頼性及び起こりうる合併症リスクの問題に加えて、生検は、財務的に、また、被験者及び医療スタッフによって費やされる時間に関して、高いコストを有する。
【0009】
超音波技術は、脂肪肝の非侵襲性診断のために、特に、複数の異なるステージのNASHのために提案されている。それにもかかわらず、その効率に反して、とてもしばしば実証されるように、この検査技術は、昨今では、時々、不十分にマスターされることがあり、従って、それは、特に、取得及び処理されるデータの関連性、精度、及び信頼性に関して、常に満足な結果を提供するとは限らない。この技術の1つの制限は、特に、エコー検査技師のスキルにおける結果の関連の強い依存性にある。このことは、特に、この技術が解剖学的及び定性的なアプローチを基礎とし、多数のパラメータの実装を必要とするという事実によって説明されうるが、それは、結果の評価をより主観的にし、従って、ユーザに依存するので、より困難にする。ユーザに対するこの依存性は、後者が十分にトレーニングされない場合、及び/又は、良好な状態で検査を行うのに十分な時間がない場合、クリティカルになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的のうちの1つは、上述の問題又は欠点のうちの少なくとも1つに取り組むことにある。
【0011】
特に、例えばヒト被験者のような、被験者又は患者の肝臓の状態の正確かつ信頼できる決定(又は評価)を実行することが望ましい可能性がある。
【0012】
特に、機能障害又はその徴候を早期にスクリーニングするために、又は、脂肪肝、特に、非アルコール性脂肪肝(又は脂肪性肝炎)(NASH))又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のような、肝障害を診断するために、被験者の肝臓の状態を評価することが望ましい可能性がある。
【0013】
この目的で、第1の態様によれば、本開示は、被験者の肝臓の状態を決定するための方法に関し、上記方法は、
- 肝臓の第1のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第1のグループのスキャンデータを取得することと、
- 被験者の組織のグループの第2のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第2のグループのスキャンデータを取得することと、
- 第1及び第2のグループのスキャンデータの組み合わせによって、肝臓の状態を表す指標S3を決定することとを含む。
【0014】
本発明に係る方法は、特に下記の実施形態のうち、別個に又は組み合わせて採用可能な他の特徴を含んでもよい。下記の実施形態は、純粋に例示として説明され、別途言及しない限り、組み合わせ又は関連付け可能である。
【0015】
一例によれば、被験者の組織のグループは、肝臓以外の被験者の部分に対応する。
【0016】
一例によれば、本方法は、
- 第1のスキャン構成は、肝臓の肋間スキャン構成であり、
- 第2のスキャン構成は、肝臓の肋骨下スキャン構成であるようにされる。
【0017】
一例によれば、本方法は、
- 指標S3を基準値に対して比較することを含む。
【0018】
一例によれば、本方法は、
- 第1のグループのスキャンデータから第1のスコア(S1)を評価することと、
- 第2のグループのスキャンデータから第2のスコア(S2)を評価することとを含み、
指標S3は、第1及び第2のスコアから決定される。
【0019】
一例によれば、第1の指標S1及び/又は第2の指標S2は、
- 減衰係数を定義する指標、
- 音速を定義する指標、
- 後方散乱係数を定義する指標、
- 上記肝臓の弾性の指標、
- 上記肝臓の粘弾性を定義する指標、
- 伝搬非線形性の指標、
- 超音波の散乱の指標、及び、
- 超音波スペックル分布の指標
のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
一例によれば、本方法は、
- 第1のスコアは第1の減衰係数であり、
- 第2のスコアは第2の減衰係数であるようにされ、
指標S3は、肝臓の生理病理学的状態のバイオマーカーを定義する、
【0021】
一例によれば、
第1及び第2のグループのスキャンデータのうちの一方は、前スキャン構成によるスキャン、いわゆる前スキャンから取得され、他方は、後スキャン構成により実行されるスキャン、いわゆる後スキャンから取得され、前スキャンは後スキャンの前に実行され、
前スキャン構成は、第1及び第2のスキャン構成のうちの一方であり、後スキャン構成は、第1及び第2のスキャン構成のうちの他方である。
【0022】
一例によれば、後スキャンの構成は、前スキャンから得られた第1又は第2のスコアのうちから選択される。
【0023】
一例によれば、指標S3は、第1及び第2のスコアの平均から決定される。
【0024】
一例によれば、平均は、第1及び第2のスコアS1,S2の線形結合によって決定される。
【0025】
一例によれば、平均は、最小平均二乗平均である。
【0026】
一例によれば、平均は、第1及び第2のスコアS1,S2の非線形結合によって決定される。
【0027】
一例によれば、指標S3の決定は、
- トレーニングデータからトレーニングされたニューラルネットワークと、基準スコアとを用いて取得された処理モデルに従って、第1及び第2のグループのデータを処理する、又は、第1及び第2のグループのデータから取得されたデータを処理することを含み、
トレーニングデータは、超音波スキャンデータを含む、又は、上記超音波スキャンデータから取得されたデータを含む。
【0028】
一例によれば、処理する前に、ニューラルネットワークは、トレーニングフェーズ中の機械学習によってトレーニングされ、
トレーニングフェーズは、
- テスト被験者における第1及び第2のスキャン構成に従って伝搬する波を表す超音波スキャンデータを取得することと、
- 超音波スキャンデータからトレーニングデータを決定することと、
- テスト被験者に対して実行されたMRIイメージングから、テスト被験者の肝臓の状態を表す基準スコアを取得することと、
- トレーニングデータを基準スコアに対して比較することによって、第1及び第2のグループのスキャンデータの組み合わせから指標S3を推定するために使用される処理モデルを決定することとを含む。
【0029】
一例によれば、本方法は、
- 指標S3から、被験者の肝臓の体脂肪比を評価することを含む。
【0030】
第2の態様によれば、本開示は、コンピュータによってプログラムが実行されたときに第1の態様に係る方法を実施することに寄与する命令を備えるコンピュータプログラムによって実施されてもよい(又はそれに関連してもよい)。特に、第1の態様に係る方法の複数の異なるステップは、コンピュータプログラムの命令を含んでもよい。
【0031】
そのようなコンピュータプログラムは任意のプログラミング言語又は等価物を使用してもよく、それは、ソースコード、オブジェクトコード、又は部分的にコンパイルされた形式のようなソースコード及びオブジェクトコードの間の中間コードの形式、又は他の任意の望ましい形式を有してもよい。
【0032】
第3の態様によれば、本開示は、本開示の第2の態様に係るコンピュータプログラムを記録する、コンピュータ(又はプロセッサ)によって読み出し可能である記録媒体(又は情報媒体)に関する。
【0033】
一方では、記録媒体は、少なくとも1つの揮発性及び/又は不揮発性メモリのような、プログラムを格納できる任意のエンティティ又はデバイスであってもよい。例えば、媒体は、書きかえ可能な不揮発性メモリ、ROM、CD-ROM、又は超小型電子回路タイプのROM、又は磁気記録媒体、又はハードディスクのような記憶手段を備えてもよい。このメモリは、例えば、グラフィックスカード(又はビデオカード)メモリを備えてもよく、このタイプのメモリは、特に、画像データ(又はビデオデータ)を処理するように設計される。
【0034】
他方では、この記録媒体は、電気又は光ケーブルを介して、従来の又はヘルツ的な無線を介して、又は自発レーザビームによって、又は他の手段によって伝送可能である信号のような、電気又は光信号のような伝送可能な媒体であってもよい。本発明に係るコンピュータプログラムは、特に、有線又は無線ネットワークを用いて、ローカルに又はその他でダウンロードされてもよい(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、イーサネット(登録商標)、インターネット、4G、5G、又はその他)。
【0035】
代替として、記録媒体は、コンピュータプログラムが組み込まれた集積回路であって、説明している方法を実行できる、又は、実行に使用できる集積回路であってもよい。
【0036】
第4の態様によれば、本開示は、本開示の第1の態様に係る決定方法を実施することにより被験者の肝臓の状態を決定するように構成された決定装置(又はモニタ装置)に関する。この目的で、決定装置は、本開示の第1の態様に係る方法の複数の異なるステップをそれぞれ実施するように構成されたモジュールを備えてもよい。
【0037】
一例によれば、決定装置は、プロセッサに関連付けられたメモリであって、本開示の第2の態様に係るコンピュータプログラムを備えるメモリを備える。
【0038】
一例によれば、被験者の肝臓の状態を決定するための装置は、
- 肝臓の第1のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第1のグループのスキャンデータを取得するように構成された第1の取得モジュールと、
- 被験者の組織のグループの第2のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第2のグループのスキャンデータを取得するように構成された第2の取得モジュールと、
- 第1及び第2のグループのスキャンデータの組み合わせによって、肝臓の状態を表す指標S3を決定するように構成された分析モジュールとを備える。
【0039】
一実施形態によれば、本発明は、ソフトウェア及び/又はハードウェア構成要素によって実施される。特に、決定装置は、本開示の第1の態様に係る方法のステップを実施するように構成されたモジュールを備えてもよい。したがって、本開示の第1の態様に係る方法に関連して本明細書で言及した複数の異なる実施形態と、関連付けられた優位点とは、本開示の第4の態様に係る決定装置にも同様にあてはまりうる。
【0040】
この点で、用語「モジュール」は、本開示では、ソフトウェア構成要素、ハードウェア構成要素、又は1組のハードウェア及びソフトウェア構成要素に対応してもよい。ソフトウェア構成要素は、1つ又は複数のコンピュータプログラム、プログラムの1つ又は複数のサブプログラム、又はより一般的には、考慮されるモジュールに関して下記に説明されるものに係る、1つの機能又は1組の機能を実施できるプログラム又はソフトウェアの任意の要素に対応する。
【0041】
同様に、ハードウェア構成要素は、考慮にされるモジュールに関して下記に説明されるものに係る、1つの機能又は1組の機能を実施できるように設定されたハードウェアの任意の要素に対応する。
【0042】
第5の態様によれば、本開示は、被験者の肝臓の状態を決定するための装置に関し、本システムは、
- 本開示の第4の態様に係る決定装置と、
- 決定装置に接続された超音波システムとを備える。
【0043】
優位点として、本開示の決定方法及び装置は、健康であるか又は肝臓の任意の生理病理学的状態を有する被験者の肝臓の状態を、信頼でき、反復可能であり、効果的な方法で決定することを可能にする。そうするために、本開示は、2つの別個のスキャン構成に従って、すなわち、肝臓を目標とする第1のスキャン構成CF1と、肝臓又は被験者の他の組織のグループを標的とする第2のスキャン構成CF2とにそれぞれ従って取得されたスキャンデータ(又は超音波データ)の組み合わせに基づく。優位点として、これらのスキャンデータの組み合わせは、ただ1つのスキャン構成が使用された場合よりも信頼できかつ頑健な方法で、考慮される被験者の肝臓の状態を表す指標S3を取得することを可能にする。
【0044】
従って、決定方法及び装置は、複数の異なるスキャン構成に従ってスキャンデータを取得することをともなう。本開示のコンテキストにおいて、スキャンは、超音波検査(又は超音波)スキャン、超音波検査(又は超音波)観察、又は超音波検査(又は超音波)による観察のフェーズに対応する。そのようなスキャンは、媒体、すなわち検査される被験者における超音波の伝搬と、返信される、被験者の肝臓の状態を表す超音波検査エコー(又は超音波エコー)の復元とを含む。各スキャンは、被験者の1つ又は複数の目標領域(又は1つ又は複数の関心対象エリア)を表すスキャンデータを取得(又は生成)することを可能にする。
【0045】
超音波検査スキャン中に超音波によって検査(又はスキャン)される被験者の1つ又は複数の目標領域は、使用されるスキャン構成に依存する。特に、超音波検査スキャン中における放射器装置の向き及び/又は位置を含む、様々なパラメータが、この構成を定義してもよい。
【0046】
2つの別個の取得モードの組み合わせ、例えば、肋間モード及び肋骨下モードは、優位点として、肋間モードで取得された超音波データのみが考慮される従来技術と比較して、取得データの関連性を向上させることを可能にする。そのように取得されうる超音波データは、肝臓の状態をいっそう表す。優位点として、2つの別個のスキャン構成を使用することは、測定を多様化させ、したがって、結果の信頼性及び精度を向上することを可能にする。
【0047】
さらに、例えば、脂肪肝の場合には、被験者の肝臓のすべての領域が複数の異なる方法で影響を受ける可能性がある。したがって、ヘテロジニアスな脂肪症のいくつかの症例が注目されている。複数の異なるスキャン構成に従って超音波スキャンを増やすことは、被験者の肝臓の全体状態をいっそう表す推定を取得することを可能にする。
【0048】
したがって、本開示は、優位点として、(例えばNASHタイプの)脂肪肝、炎症性の脂肪症、などのような、肝臓の何らかの生理病理学的状態の診断又はモニタリングの支援を提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】特定の実施例に係る、被験者の肝臓の超音波スキャンの肋間スキャン構成を概略的に示す。
図2】肋間取得モードでの被験者の肝臓の超音波検査中における陰影エリアの表示を示す超音波検査画像である。
図3】本開示の実施形態に係る決定装置及び超音波システムを概略的に示す。
図4】本開示の実施形態に係る超音波システムを概略的に示す。
図5】本開示の実施形態に係る決定装置を概略的に示す。
図6】本開示の実施形態に係る、超音波スキャンを実行するスキャン構成を概略的に示す。
図7】本開示の実施形態に係る、超音波スキャンを実行するスキャン構成を概略的に示す。
図8】本開示の実施形態に係る、図3の決定装置によって実行される決定方法を概略的に示す。
図9】本開示の実施形態に係る、肋間取得モードで得られた結果を概略的に示す。
図10】本開示の実施形態に係る、肋骨下取得モードで得られた結果を概略的に示す。
図11】本開示の実施形態に係る、図9及び図10の結果を組み合わせることによって決定方法に従って取得された結果を概略的に示す。
図12】本開示の実施形態に係る、決定方法の効率を検証する研究の間における、被験者の肝臓のPDFFスコアの分布を概略的に示す。
図13】本開示の実施形態に係る決定方法を概略的に示す。
図14】本開示の実施形態に係る決定方法を概略的に示す。
図15】本開示の実施形態に係る、図3の決定装置によって実装されるニューラルネットワークを概略的に示す。
図16】本開示の実施形態に係る、図15のニューラルネットワークによって実行されるトレーニングフェーズを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、純粋に非限定的な例示として提供される下記の説明を読むことで、より明らかになるであろう。特に、言及した又は明らかな矛盾がなければ、図面に示した実施例をともに組み合わせてもよい。
【0051】
本開示の他の特徴及び利点は、添付した図1図16を参照して、下記の本開示の非限定的な実施形態の説明から明らかになるであろう、
【0052】
本開示は、特に、例えば、スクリーニングキャンペーン、医療モニタリング、又は診断支援のために、被験者の肝臓の状態を決定するための装置及び方法をカバーする。
【0053】
特に、(例えばNAFLDタイプの)脂肪肝又はNASHタイプの脂肪性肝炎のような、肝障害をスクリーニング又は診断するために、超音波検査により被験者の肝臓の検査を行なうことが知られている。この技術に頼ることは、特に、その非侵襲性の性質と、医的検査のための超音波検査装置の分野における相対的な利用可能性と、必要に応じてそれらを移動させることの容易さと、例えばMRI及び生検と比較して、投資及び検査のコスト及びリスクがより低いこととを理由として、有利である。
【0054】
それにもかかわらず、この検査技術の結果の関連性は、実施者の資格のレベルによって大幅に左右され、この検査技術は、なおその初期段階にあり、特に性能及び信頼性に関して、満足な結果を常に提供するとは限らない。これらの課題は、下記に説明するようないくつかの起源を有する可能性がある。
【0055】
図1に示すように、世界的に広く確立されている実施は、現在、SCx(図1)で示すいわゆる「肋間」スキャン構成に従って、すなわち、超音波が被験者の肋骨2の間を伝搬して返信される被験者の肝臓3を表す超音波エコーを復元するように、超音波プローブを配置することによって、肝臓のそのような超音波検査を行うことにある。そうするために、おそらくは適切なゲルでコーティングされた超音波プローブは、「肋骨の全体にわたって」、すなわち肋骨間をスキャンするように、彼/彼女の胸郭のレベルにおいて被験者の皮膚に接するように配置される。
【0056】
この肋間スキャン構成は、特に、被験者の肋骨が下方の組織を保護し、従って、プローブが患者に接するときに生じうる変形を制限することを可能にするという事実を理由として、最も信頼できるものとみなされる。実際に、そのような変形は、観察の結果を歪ませる可能性があり、そして、圧迫された組織は異なる挙動を有する。肋間構成はまた、特に検査困難な一部の被験者(特に、高い皮下脂肪レベルを有するもの)に関して、これが検査を容易にする程度だけ好適である。超音波検査技術者は、被験者の肋骨を基準とみなして、超音波検査システムのプローブを最良の向き及び位置に設定してもよい。
【0057】
特に前述した理由のため、臨床研究は、現在、肝臓の検査を行なうために、特に、前述したもののような肝障害をスクリーニング又は診断するために、肋間スキャン構成を採用することを推奨している。
【0058】
しかしながら、肋間技術による肝臓の超音波検査が、いくつかの課題を提起し、取り組まれるべき制限を含意することが注目されている。図2に一例として示すように、特に、肋間スキャン構成によって取得された超音波検査画像7における陰影エリア8の表示が観察されている。観察の妨げとなるこれらの暗いエリア8は、全体的に凸形状の超音波プローブによって説明され、それは、特に、プローブの形状にほとんど適合しない凹凸を形成する被験者の肋骨に起因して、検査中に被験者の皮膚に後者が完全に接触することを常に可能にするとは限らない。超音波検査の観察中におけるプローブ及び被験者の皮膚の間の非接触エリアは、超音波の伝搬を妨げ、そして、画像において暗く見えるこれらのエリア8の形成をもたらす可能性がある。
【0059】
それにもかかわらず、特に、超音波検査システムの視野を最大化してプローブの何らかの多用途性を保証するように現在の構成が設計され、これにより後者が様々な超音波検査を行なうように適応されることを可能にしているので、肋骨のプロファイルに良好に合致するようにプローブの形状を変更することは困難であり、望ましいことでもない。
【0060】
陰影エリアに係る前述した課題に加えて、従来の肋間スキャン構成による肝臓の超音波検査による観察は、概して、時おり不満足な結果からの影響を受ける。いくつかのバイオマーカーのような、肝臓のいくつかの特性の評価は、そのような使用の場合、常に十分に効果的又は信頼できるとは限らないことが注目されている。
【0061】
従って、本開示は、特に前述した課題及び欠点の解決方法を提供することを目的とし、人間又は動物のような被験者の肝臓の状態、又はより一般的には、生物の肝臓の状態を、より高い信頼性及びより良好な性能で決定することで、例えば、特に、ただし排他的にでなく、肝障害のスクリーニング又は診断を支援すること、又はより一般的には、被験者の肝臓の状態を評価することを可能にする。特に、この解決方法は、被験者の肝臓の状態を決定するための方法及び装置に基づく。
【0062】
決定方法及び決定装置(「方法」及び「装置」ともいう)は、図3図16を参照して、本開示の特定の実施形態に従って下記に説明される。別途言及していない限り、いくつかの図面に共通又は類似の構成要素は、同じ参照番号を有し、同じ又は同様の特徴を有し、簡潔さのために、概して、これらの共通の構成要素については再び説明しない。
【0063】
用語「第1」(又は「第1、第2」、など)は、本明細書では、下記に説明する実施形態において実施又は使用される複数の異なる構成要素(例えば動作、装置など)が識別又は区別されることを可能にするように、任意の慣例によって使用される。
【0064】
図3に示すように、本開示の実施形態を下記に例示として説明し、ここでは、被験者UR1の肝臓3が、SY1で示す超音波システムによる超音波検査によって観察される。そうするために、超音波Wは、肝臓3の状態を表す超音波データを取得するために、超音波システムSY1により被験者UR1の複数の異なる領域(又は関心対象エリア)において放射される。この観察は、いくつかの超音波検査スキャン、すなわち、超音波が伝搬し、返信される、肝臓3の状態を表す超音波エコーが復元される、いくつかのフェーズを含む。言いかえると、各スキャン中に、肝臓の1つ又は複数の領域に入射超音波が照射されて、返信される肝臓のこれらの領域による後方散乱エコーが、超音波プローブによって取り込まれる。次に、われわれは、用語「スキャン」、「超音波検査的(又は超音波)スキャン」、「超音波検査(又は超音波)観察」、「超音波検査(又は超音波)による観察のフェーズ」、又は「取得フェーズ」を、交換可能に使用する。
【0065】
考慮される実施例では、被験者は、生物、すなわち哺乳動物、例えば人間である。それにもかかわらず、本開示の概念は、より一般的に、肝臓の状態を評価すべき、肝臓を有する任意の被験者、(人又は動物)、生体又は死体に適用可能であることに注意すべきである。
【0066】
本開示を説明するために使用される被験者UR1は、特に肝臓のレベルにおいて、任意の生理学的状態にある本体を有する可能性があることに注意すべきである。特に、被験者の肝臓3は、健康であるか(例えば、特定の肝障害がない)、又は、任意の肝障害又は病態の影響を受けている可能性がある。
【0067】
本開示の方法及び装置は、特に、少なくとも1つが肝臓のスキャン構成である、複数の異なるスキャン構成に従って、同じ被験者に係る2グループのデータであって、それぞれ超音波スキャン中に伝搬する超音波Wからの2グループのデータを取得することと、これらの2グループのデータを組み合わせて、被験者UR1の肝臓3の状態を表す、S3で示す指標(全体指標、全体スコア、又はパラメータともいう)を決定することとに基づく。優位点として、これらの2グループのデータを組み合わせることは、被験者の肝臓の状態を表す指標を決定することを可能にする。
【0068】
本開示において、肝臓のスキャン構成は、被験者の肝臓を表す超音波検査データを取得する際に使用するスキャン構成を示す。言いかえると、肝臓のスキャン構成によって実行される超音波検査スキャンは、上記肝臓を表す超音波検査データを取得するように、少なくとも部分的に、被験者の肝臓を詳細に調べる(又はそれを目的又は目標とする)。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、決定方法は
- 肝臓の第1のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第1のグループのスキャンデータを取得することと、
- 被験者の組織のグループの第2のスキャン構成に従って伝搬する超音波から第2のグループのスキャンデータを取得することと、
- 第1及び第2のグループのスキャンデータの組み合わせによって、肝臓の状態を表す指標S3を決定することとを含む。
【0070】
図3に例示的に示すように、下記では、被験者UR1の肝臓3の状態を決定するために、複数の異なる超音波検査スキャン(又は観察)、すなわち、CF1及びCF2でそれぞれ示す複数の異なるスキャン構成(又はモード)に従って被験者UR1に対して超音波システムSY1によって実行される第1のスキャンSC1及び第2のスキャンSC2が考慮される。スキャン構成CF1及びCF2は、特に、被験者に関するスキャン方向及び/又は位置に関して、これらの構成が互いにわずかに又はより一般的に異なる程度になりうるまで、変化してもよい。
【0071】
決定装置(処理装置ともいう)30は、第1及び第2のスキャンSC1及びSC2(図3)からそれぞれ超音波システムSY1によって生成されるスキャンデータ(又は超音波データ)DT1a及びDT1bを取得及び処理するようにさらに構成される。そうするために、決定装置30は、少なくとも1つの特定の実施形態に係る決定方法を実施するように超音波システムSY1と協働する(接続される)。
【0072】
図3に示すように、決定装置30及び超音波システムSY1はともに、決定システム(又は分析システム)SY2を形成し、このシステムは、被験者の肝臓の状態を決定するように構成される。
【0073】
一例によれば、決定装置30は、超音波システムSY1の不可欠な部分である。1つの変形例によれば、決定装置30は、超音波システムSY1の外部にある(それとは別個である)。
【0074】
システムSY1は、医療用超音波システムであってもよい。従って、放射器装置20は、医療用及び/又は超音波プローブであってもよい(又は、少なくとも部分的に、その部分であってもよい)。
【0075】
超音波システムSY1の実施形態は、ここでは、単に例示目的で説明される。
【0076】
図3は、制御装置(又は操縦装置)10及び放射器装置20を備える超音波システムSY1の実施形態を概略的に示す。制御装置10は、放射器装置20を操縦するように構成される。放射器装置20は、研究される媒体、すなわち、考慮される実施例における被験者UR1に対して超音波Wを放射及び受信するように構成され、制御装置10の制御下でそうなる。
【0077】
特定の実施例によれば、決定装置30の全体又は部分は、制御装置10の部分である。一例によれば、装置10及び30は、同じ装置を形成する。
【0078】
例えば、放射器装置20は、超音波Wを放射及び/又は受信するように構成された超音波トランスデューサ装置(又は超音波プローブ)である。例えば、この放射器装置20は、被験者の肝臓3の状態を決定するための超音波検査スキャン中に被験者UR1に接するように意図された超音波プローブに含まれる。
【0079】
それにもかかわらず、放射器装置20の様々な構成が可能であることに注意すべきである。特に、制御装置10のすべて又は部分は、放射器装置20に(例えばプローブに)実装されてもよい。制御装置10のすべて又は部分は、放射器装置20(又はプローブ)の外部にあってもよい。
【0080】
制御システム10は、この実施例では、処理装置(又はモジュール)11と、制御装置(又はモジュール)12とを備えてもよい。制御装置12(パワー制御装置ともいう)は、システム10及びトランスデューサ装置20の間で交換(又は送信)される電気信号により、放射器装置20を操縦するように構成される。したがって、制御装置12は電気信号を発生し、それはトランスデューサ装置20に送信され、上記トランスデューサ装置20により、被験者UR1に位置した関心対象エリアの方向に超音波W1を放射させる。このように生成された電気信号SG1は、媒体に投写される超音波W1を表す(又は定義する)。この目的で、制御装置12は、例えば、「パルサー」とも呼ばれる、少なくとも1つの電子的パルサーからなってもよく又は備えてもよい。
【0081】
制御装置12は、おそらくは、トランスデューサ装置20から発信される電気信号を受信するように構成された受信機装置又は受信機回路(図示せず)を備えてもよい。
【0082】
処理装置11は、例えば電気信号を制御することで、制御装置12を制御するように構成されてもよい。例えば、処理装置11は、少なくとも1つのプロセッサからなるか又は備えてもよい。
【0083】
一例によれば、処理装置11及び/又は操縦装置12は、図4に例示的に示したシステムSY1の本体31(中心構成要素)に含まれる。
【0084】
より詳しくは、処理装置11は、制御装置12によって生成された電気信号を制御するように構成されてもよい。処理装置11はまた、放射器装置20から発信されて制御装置12によって受信されうる電気信号を処理(及び/又は解釈)するように構成されてもよい。これらの信号SG1は、被験者UR1から発信されてトランスデューサ装置20によって受信される波W2を表す(図3)。例えば、これらの波W2は、1つ又は複数の超音波エコー、すなわち、上記媒体の方向に放射された超音波に対する研究される媒体(すなわち、被験者UR1の肝臓)の応答)を形成する。受信信号に対して処理装置11によって実行される処理は、場合に依存して変化し、例えば、信号増幅、フィルタリング、ディジタル化、及び調節動作のうちの少なくとも任意の1つを含んでもよい。
【0085】
本開示において、用語「媒体」は、被験者UR1の1つ又は複数の関心対象エリア(又は領域)、すなわち、超音波によって照射されるか又は詳細に調べられるエリア、すなわち、肝臓3の関心対象エリア及びおそらくは被験者UR1の他の部分に対応する関心対象エリアを示す。
【0086】
図3に示すように、放射器装置20は、例えば、制御装置10から受信された電気信号を超音波に(及びおそらくは相互に)変換するようにそれぞれ構成された、1つ又は複数の超音波トランスデューサ(トランスデューサ素子ともいう)22を備えてもよい。したがって、トランスデューサ22は、媒体において波(又は超音波インパルス、又は超音波ビーム)W1を放射するように構成されてもよく、これは放射動作に対応する。
【0087】
トランスデューサ22はまた、おそらくは、例えば送信された波W1に応答して、受信動作中に、被験者UR1の1つ又は複数の関心対象エリアから発信される超音波信号W2を受信するように構成されてもよい。これらの受信信号W2は、以前に放射された信号W1に応答して後方散乱された、1組のエコー信号の形式を有してもよい。例えば、各トランスデューサ22は、受信されたエコー信号W2を電気信号に変換してもよい。その後、信号は、制御装置10によって(例えば処理装置11によって)処理されてもよく、又は、直接的に接続されていてもいなくてもよい、任意の関連付けられた(専用の)システムによって処理されてもよい。例えば、信号W2は増幅、フィルタリング、ディジタル化されてもよく、及び/又は、信号を調節する動作が実行されてもよい。トランスデューサ素子は、複数のトランスデューサからなる行、アレイ、又は、複数のトランスデューサからなるネットワーク、又は、他の任意の構成に従って配置されてもよい。
【0088】
波(又はインパルス)W1を放射し、適切な場合には、媒体の応答を形成するW2を受信するために、1つ又は複数の同じトランスデューサ22が使用されてもよく、波を送信及び受信するために異なるトランスデューサが使用されてもよいことに注意すべきである。1つ又は複数の放射器トランスデューサが存在してもよく、おそらくは、複数の受信機トランスデューサが存在してもよい。もう1つの変形例において、超音波の放射及び受信のために同じトランスデューサ22が使用されてもよい。トランスデューサ22は、圧電結晶、及び/又は、信号を発生、記録、及び/又は受信するように構成されうる他の構成要素を備えてもよい。
【0089】
制御装置10は放射器装置20を備えてもよい。代替として、放射器装置20は制御装置10の外部にあってもよい。例えば、放射器装置20は、ケーブルによって制御装置10に接続されてもよく、又は、それと無線通信してもよい。後者の場合において、放射器装置10は、例えば、バッテリーを備え、制御装置10から通信信号を受信してもよい。それは、電気信号(例えば、電気信号に含まれる操縦周波数及び/又は任意の情報)を表す。次いで、放射器装置20は、内部的に、受信された通信信号から電気信号を複製してもよい。
【0090】
例えば、放射器装置20は、従来の超音波放射器装置であってもよい。したがって、本開示に係る相違は、詳細後述するように、被験者UR1の肝臓3の状態を決定するために、決定装置30によって超音波データDT1a及びDT1bが取得及び処理される方法にあるかもしれない。
【0091】
制御装置10は、固定されていてもよく、又は、可動であってもよい。放射器装置20もまた、固定されていてもよく、又は、可動であってもよい。例えば、制御装置10は、固定されたシステム(例えば、後述するように、処理装置及びディスプレイ装置を備える)であってもよく、放射器装置20は、可動(例えば、センサ装置、測定装置、又はプローブ)であってもよい。それにもかかわらず、放射器装置20が制御装置10へ一体化され、装置10が可動システムであることもまた可能である。例えば、制御装置10は、例えば内蔵バッテリーのおかげで、スタンドアロンの方法で操縦されるように構成されてもよい。他の実施例を下記に説明する。
【0092】
一例によれば、制御装置10は、制御装置12を制御するために処理装置11によって使用される少なくとも1つのメモリ(図示せず)を備えてもよい。このメモリは、おそらくは、処理装置11の一部であってもよい。いくつかの実施例では、処理装置11のプロセッサ及びメモリは、図3に示す制御装置10に組み込まれてもよく、又は、後者に通信可能に接続されたコンピュータ又はコンピュータ装置に組み込まれてもよい。
【0093】
考慮されるコンピュータ装置の構成及びタイプに依存して、制御装置10のメモリは、揮発性(例えばRAM)、不揮発性(例えば、ROMメモリ、フラッシュ、EEPROMなど、又は、後述する他の任意の記憶装置及び/又はコンピュータ可読媒体)、又は両方の組み合わせであってもよい。例えば、このメモリは、DMA(「Direct Memory Access」を表す)モードで生成されてもよい。例えば、処理装置11によって用いられるメモリは、グラフィカルカード(又はビデオカード)メモリのすべて又は部分を含んでもよく、このタイプのメモリは、特に、ディスプレイ画面(又は装置)上に1つ又は複数の画像を表示するように使用されうる画像データを処理及び/又は送信することができる。
【0094】
より一般的には、制御装置10は、磁気又は光ディスク又はテープを含むが、それらに限定されない、(リムーバブル及び/又は非リムーバブルの)記憶装置を備えてもよい。
【0095】
さらに、制御装置10は、キーボード、マウス、スタイレット、音声入力などのような1つ又は複数の入力装置、及び/又は、1つ又は複数の画面、ラウドスピーカ、プリンタなどのような1つ又は複数の出力装置を含んでもよい。環境はまた、LAN、WAN、ポイントツーポイント接続などのような1つ又は複数の通信接続を備えてもよい。いくつかの実施形態では、接続は、ポイントツーポイント通信、有線通信、無線通信などを確立するために使用されてもよい。
【0096】
制御装置10は、1つ以上の遠隔のコンピュータに対する論理接続を用いて、ネットワーク化された環境において動作する一意のコンピュータであってもよい。遠隔のコンピュータは、レビューステーション、パーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、同様の装置、又は他の共用ネットワークノードであってもよく、概して、上述した要素の複数又はすべてを備えてもよく、言及していない他のものを含んでもよい。論理接続は、利用可能な通信媒体によってサポートされる任意の方法を含んでもよい。
【0097】
既に示したように、超音波システムSY1の実施形態は、単に例示目的で先に説明され、他の実施例もまた、本開示のコンテキストにおいて可能である。
【0098】
また、決定装置30は、超音波システムSY1(図3)によって生成されたスキャンデータ(又は超音波データ)DT1a及びDT1bを取得及び処理するための処理手段を備える。システムSY1によって生成されたスキャンデータは、例えば人工知能アルゴリズム及び/又はモジュールによって、決定装置30によってリアルタイムで分析されてもよく、又は、超音波システムSY1が位置した場所とは異なる場所の上及び/又は中において後に分析されてもよい。
【0099】
詳細後述するように、超音波検査システムSY1によって決定装置30に提供されるスキャンデータDT1a及びDT1bの性質は、場合に応じて、変化する可能性がある。例えば、これらのデータは、画像データ(又はビデオデータ)、及び/又はスキャンデータから取得された他のデータ、又はスキャンデータ自体を含んでもよい。
【0100】
より具体的には、図3に示す実施例において、決定装置30は、少なくとも1つのプロセッサ31と、不揮発性メモリ32のような少なくとも1つのコンピュータ可読媒体とを備える。書きかえ可能又はROMタイプのこのメモリ32は、プロセッサ31によって読み出し可能である、特定の実施形態に係る記録媒体(又は情報媒体)を形成し、その上に、特定の実施形態に係るコンピュータプログラムPG1が記録される。このコンピュータプログラムPG1は、少なくとも1つの特定の実施形態に係る決定方法のステップを実行するためための命令を含む。特に、このプログラムは、超音波データを処理するための命令、及び/又は、観察される媒体の例示的な画像を構築するための命令を定義してもよい。
【0101】
例えば、コンピュータプログラムPG1は、本開示の特定の実施形態に係る決定方法を実施するためにプロセッサ31によって実行されうる少なくとも1つの人工知能(AI)アルゴリズムを備えてもよい。特に、コンピュータプログラムPG1は、本開示の決定方法に従って取得された超音波データを処理するように、特に、下記にいくつかの実施形態において説明するように1つ又は複数の指標(又はスコア)を決定するように、データをトレーニングすることによってトレーニングされた人工知能モデル(又は予測モデル)を定義してもよい。
【0102】
メモリ32のような、決定装置30のコンピュータ可読媒体は、プロセッサ31又はその動作する環境がアクセス可能である任意の利用可能な媒体からなってもよい。例えば、限定することなく、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を備えてもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータのような、任意の情報記憶方法又は技術で実装された、固定的及び非固定的な揮発性及び不揮発性媒体を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体は通信媒体を含まない。
【0103】
一例によれば、決定装置30は、超音波システムSY1によって提供された、データDT1a及びDT1bのようなスキャンデータを受信し、これらのデータを処理し、おそらくは、この処理の結果を、例えば、記憶装置、ディスプレイ装置、サーバ、又は他の任意の外部装置のような外部装置に送信するように構成される。
【0104】
決定装置30及び超音波システムSY1の間の通信は、場合に応じて有線又は無線である、任意の通信リンクによって実行されてもよい。
【0105】
図4は、図3を参照して上述したような超音波システムSY1の実施形態、すなわち、考慮される実施例では超音波イメージングシステムを概略的に示す。
【0106】
したがって、図4に示すような超音波イメージングシステム10は、
- 超音波プローブの形式を有する放射器装置20と、
- プローブ20から受信された超音波信号に基づいて画像を処理又は生成するように構成された処理装置40(この装置40は、例えば、図3の処理装置11に対応する)、
- 処理装置40に関連付けられ、リンクされ、又は接続された制御パネル42であって、少なくともボタン41及び接触タブレット42のうちの一方を備えうる上記制御パネルと、
- 処理装置40によって生成された1つ又は複数の画像を表示するように構成された1つ又は複数の画面50を備える。
【0107】
プローブ20は、ケーブル21又は無線接続のような任意の適切な接続手段によって、処理装置40に接続されてもよい。プローブ20はまた、超音波Wを媒体Mに放射することができ、また、おそらくは、媒体Mから超音波Wを受信することができ、そして、上記受信された超音波は、上記媒体の内部における散乱粒子に対する上記放射された超音波の反射の実質又は結果である可能性がある。
【0108】
処理装置40は、プローブ20から受信された電気信号を処理(例えば、増幅及び/又はフィルタリング)するように構成された、例えば受信機回路を備える(又は受信機回路である)、受信機装置(図示せず)を備えてもよい。例えば、これらの受信機装置は、受信信号を、信号を表すデータに変換するためのコンバータ(例えば、電圧をディジタルコードに変換するように構成されたアナログ・ディジタル変換器(ADC))を備えてもよい。取得された超音波データは、様々な方法で処理されてもよく、特に、それらは、処理装置によりアクセス可能なメモリに一時的に格納されてもよく、又は、中間処理されたデータ(経路形成処理から導出されるデータ、いわゆる「ビームフォーミングされたデータ」)を計算するように直接的に処理されてもよい。処理装置30は、ルートの形成のような、プローブから受信された信号に基づいて、1つ又は複数の画像又はマップ又はデータを生成及び/又は処理するための任意の既知の処理方法を実装してもよい。
【0109】
処理されたデータは、複数の異なる性質の超音波画像に関連付けられてもよく、それらは、
- 概してグレーの陰影で示され、媒体の内部の器官を視覚化することを可能にする、媒体のBモード画像、及び/又は、
- 観察される媒体における流体の動き、例えば、媒体(カラーコードを用いる場合の多い画像)における移動速度及び/又は流体フローを示す、例えば、血管及び媒体におけるそれらの活動を視覚化するのに有用である、いわゆるドップラー画像、及び/又は、
- 媒体の力学的特性(弾性)を示し、例えば、媒体の内部に存在する病変であることが判明しうる複数の異なる硬さのエリアを識別するのに有用である、画像(例えば剪断波のエラストグラフィー画像データ(ShearWave(商標)エラストグラフィー))
であってもよい。
【0110】
ディスプレイ画面50(例えば、サポートアーム51に取り付けられる)は、処理装置30によって処理される画像を表示するための画面であってもよく、及び/又は、ユースケースに依存して様々な情報、特に、タッチパッド42に適応化されたか又は適応化可能であるアシスタンス情報又はコンテキスト依存のジェスチャアシスタンスを表示してもよい。
【0111】
一例に係る図5に概略的に示すように、コンピュータプログラムPG1(図3)によって操縦される、決定方法30のプロセッサ31は、所与の個数のモジュール、すなわち、第1の取得モジュールMD2、第2の取得モジュールMD4、及び決定モジュール(又は分析モジュール)MD6を実装する。
【0112】
より具体的には、第1の取得モジュールMD2は、肝臓3(図3)の第1のスキャン構成CF1に従って伝搬する超音波W1から、第1のグループのスキャンデータDT1aを取得するように構成される。第1の超音波スキャンSC1の間に取得される、これらの第1のスキャンデータDT1aは、被験者UR1の肝臓3を表す。
【0113】
第2の取得モジュールMD4は、被験者3(図3)の組織のグループの第2のスキャン構成CF2に従って伝搬する超音波W1から、第2のグループのスキャンデータDT1bを取得するように構成される。後述するように、第2の超音波スキャンSC2の間に取得される、これらの第2のスキャンデータDT1aは、任意のグループの組織を表し、それは、被験者UR1の肝臓3のすべて又は部分、又は、被験者UR1の肝臓3以外の彼/彼女の一部(又は領域)(例えば、膵臓及び/又は胆嚢のような、肝臓以外の腹部の器官)を含んでもよい。
【0114】
決定モジュールMD6は、第1及び第2のグループのスキャンデータDT1a及びDT1bの組み合わせによって、被験者UR1の肝臓3の状態を表す指標(又は全体指標)S3を決定するように構成される。いくつかの実施例において後述するように、指標S3を取得するためにデータDT1a及びDT1bに適用される処理は、様々な種類を有する可能性がある。同様に、場合に応じて、指標S3の性質は変化する可能性がある。
【0115】
本開示の実施形態は、ここで、図6図12を参照して説明される。これらの実施例では、上述した決定装置30は、プログラムPG1(図3)を実行することで、いくつかの実施形態に係る決定方法を実施する。そうするために、決定装置30は超音波システムSY1と協働する。
【0116】
例えば、被験者UR1の肝臓3の状態を決定することが望まれると仮定される(図6図8)。そうするために、実施者、医師、資格のある技術者、エコー検査技師、又はより一般的にはユーザは、超音波システムSY1(図3)によって、被験者UR1に対する2つの超音波スキャン、すなわち、
- 肝臓3の第1のスキャン構成CF1に従って超音波が伝搬する際の第1の超音波スキャンSC1と、
- 被験者UR1の組織5の第2のスキャン構成CF2に従って超音波が伝搬する際の第2の超音波スキャンSC2と
を実行する。
【0117】
各超音波スキャンSC1及びSC2の間に、超音波システムSY1は、目標とされる媒体(観察されている被験者UR1の部分)に向かって超音波W1を放射し、返信される、波W2(図3)の形式を有する超音波エコーを受信する。これらの超音波W2は、放射された波W1及び受信された波W2が伝搬する被験者UR1の領域を表す。したがって、超音波システムSY1(より詳しくは制御装置10)は、超音波スキャンSC1及びSC2の間に取り込まれた超音波エコーから、超音波データ、いわゆる第1及び第2のスキャンデータDT1a及びDT1bをそれぞれ生成する。
【0118】
超音波による観察の対象となる被験者UR1の1つ又は複数の領域と、この観察の間に取得される超音波エコーW2とは、完了される超音波スキャンSC1及びSC2の構成に依存する。特に、超音波スキャン中における放射器装置20の向き及び/又は位置を含む、様々なパラメータが、これらの構成を定義してもよい。
【0119】
例えば、第1の超音波スキャンSC1は、被験者UR1の肝臓3のすべて又は部分をスキャンする(詳細に調べる)ように構成されると仮定される。言いかえると、スキャン構成CF1は、第1のスキャンSC1の間に伝搬する超音波が肝臓3の関心対象エリア(又は領域)を表すようになる。従って、第1の超音波スキャンSC1は、肝臓の1つ又は複数の関心対象エリアのスキャンである。
【0120】
さらに、例えば、第2の超音波スキャンSC2は、被験者UR1の組織5のグループ(図6)を目標とする(又は詳細に調べる)ように構成されると仮定される。これらの組織の性質は、場合に応じて変化する可能性がある。言いかえると、スキャン構成CF2は、第2のスキャンSC2の間に伝搬する超音波が組織5のグループを表すようになる。
【0121】
一例によれば、第2のスキャンSC2の間に詳細に調べられる組織5のグループは、肝臓のすべて又は部分を含む(肝臓のスキャン)。したがって、スキャン構成(又はモード)CF1及びCF2は、肝臓のスキャン構成である。
【0122】
一例によれば、組織5の詳細に調べられるグループは、被験者UR1の肝臓3以外の彼/彼女の部分(又は領域)、例えば、彼/彼女の胆嚢のすべて又は部分、腹部の器官、及び/又は被験者UR1の内臓脂肪を含む(又は対応する)。
【0123】
下記に説明するように、特に、肝臓3の状態と被験者の他の領域のそれとは相関される可能性があるので、被験者の肝臓3以外の領域の状態に関する情報を考慮することは、肝臓3の状態の分析及び理解を支援しうる。
【0124】
例えば、内臓脂肪が肝臓の病理学的状態のバイオマーカーを形成しうるので、被験者UR1の内臓脂肪の超音波観察は、特に、肝障害をスクリーニング又は診断することを支援する目的で、肝臓3の状態を決定するための有用な情報を提供しうる。例えば、内臓脂肪が過度に存在することは、(例えばNASHタイプの)脂肪肝、肝臓の中毒、又は肝臓の他の状態の徴候である可能性がある。
【0125】
組織5のグループは、考慮される検査タイプに従って、及び/又は、われわれが研究又は確認したい肝臓の想定される状態、又は、時間的な又は治療に関する、例えば医療検査の間における、われわれが研究したいその進行に従って選択されてもよい。第2の超音波スキャンSC2の間に詳細に調べられる被験者の領域5とは無関係に、第1及び第2のスキャン構成CF1及びCF2は、異なりかつ相補的な情報を伝送する超音波データを取得するために、互いに異なる。
【0126】
図7に概略的に示すように、下記では、単に例示目的のために、超音波スキャンSC1及びSC2は、
- 第1の超音波スキャンSC1を行う際に使用される第1のスキャン構成CF1が肋間タイプであるように、すなわち、被験者UR1の肋骨の全体にわたって(又はその間に)超音波を伝搬することによって(位置P1)、かつ、
- 第2のスキャンSC2を行う際に使用される第2のスキャン構成CF2が肋骨下タイプであるように、すなわち、腹部の全体にわたって胸郭の下に超音波を伝搬することによって(位置P2)、
構成されると仮定される。
【0127】
したがって、被験者の腹部において超音波プローブ20を位置決めすることによって、他の切断面に従って被験者の肝臓を観察し、したがって、取得される結果の関連性を向上させることができる。
【0128】
したがって、ステップE2a(図8)の間に、決定装置30は、肝臓3の第1のスキャン構成CF1による第1の超音波スキャンSC1の間に伝搬する超音波から、第1のグループのスキャンデータDT1aを取得する。
【0129】
同様に、ステップE2b(図8)の間に、決定装置30は、組織5のグループの第2のスキャン構成CF2による第2の超音波スキャンSC2の間に伝搬する超音波から、第2のグループのスキャンデータDT1bを取得する。
【0130】
そうするために、超音波システムSY1(及びより詳しくは制御装置10)は、第1及び第2の超音波スキャンSC1及びSC2の間にそれぞれ受信された超音波エコーから、スキャンデータDT1a及びDT1bを生成する。これらのスキャンデータDT1a及びDT1bは、決定方法に従って処理するために処理装置30に送信される。
【0131】
各超音波スキャンSC1及びSC2は、対応するスキャン構成CF1及びCF2における1つ又は複数のスキャンをそれぞれ備えてもよい。
【0132】
取得ステップE2a及びE2bは、E2で示す取得フェーズに含まれる(図8)。それにもかかわらず、ステップE2a及び2bの様々な構成が時間的に可能であることに注意すべきである。ステップE2a及びE2bは、同時に(少なくとも部分的に)、又は逐次に、直後にもしくは後ほど(例えば、異なる検査セッションの間に)、実行されてもよい。一例によれば、第1のグループのスキャンデータDT1aは、第2のグループのスキャンデータDT1bの前に(又はその逆に)受信される。
【0133】
さらに、決定装置30は、スキャンSC1及びSC2を実行している間にリアルタイムで、又は後に、グループ化された方法で又は別個に、スキャンデータDT1a及びDT1bを受信してもよい。
【0134】
決定ステップE6(図8)の間に、決定装置30は、第1及び第2のグループのスキャンデータDT1a及びDT1bの組み合わせによって、被験者UR1の肝臓3の状態を表す指標(又はスコア)S3を決定する。この組み合わせは、データDT1a及びDT1bを考慮した処理を含んでもよく、、この処理の性質は、いくつかの実施例において後述するように、場合に応じて適応されてもよい。
【0135】
ステップE2~E6は、E6において決定される指標S3を向上又は更新するように反復的に繰り返されてもよい。
【0136】
一例によれば、指標S3は、肝臓の生理病理学的状態の(又は少なくとも1つ)バイオマーカーを定義する。例えば、指標S3は、被験者UR1の肝臓3に影響する肝障害、例えば、(例えばNASHタイプの)脂肪肝、脂肪性肝炎、肝臓の中毒、などについて通知してもよい。
【0137】
一例によれば、E6(図8)において決定される指標S3は、第1及び第2の超音波スキャンSC1及びSC2の間の、被験者UR1の関心対象エリアにおける伝搬中の超音波の減衰を表す減衰係数をそれぞれ含む。
【0138】
一例によれば、E6(図8)において決定される指標S3は、例えば、肝臓(又はPDFF)の体脂肪量百分率(又は比)を定義する指標を含む。この百分率は、被験者UR1の肝臓3に存在する脂肪の平均量について通知する。
【0139】
図11は、本願出願人によって行われた研究ET1の間に被験者のグループに関して決定(E6)された指標S3を、点群70の形式で示す。指標S3は、研究ET1の各被験者に関してそれぞれ決定された体脂肪量の比(又はPDFF)を定義する。
【0140】
図12は、参照のために、決定方法のものとは異なる技術、すなわちMRIイメージングによって、研究ET1の同一の被験者に関して決定されたPDFF値を示す。MRIイメージングによるPDFFの評価は、現在、脂肪肝を予測又は診断するための基準である。この研究ET1が、この場合、限界値、すなわち25%より低いPDFFを有する被験者をカバーすることに注意すべきである。
【0141】
E6(図8)において決定される指標S3は、超音波スキャンSC1及びSC2の間に超音波によって詳細に調べられる肝臓3及び/又は組織5の任意の生理学的、力学的、及び/又は組織特性(弾性、硬さ、など)を表しうる。指標S3は、1つの指標(又はスコア)又は複数の指標(又はスコア)を含んでもよい。
【0142】
一例によれば、決定方法(図8)の間に、決定装置30は、E6において取得された指標S3を基準値RF1に対して比較(E8)する。この基準値RF1は、肝臓の予め決められた状態(健康な肝臓、特定の肝障害、など)を示す任意の基準であってもよい。例えば、装置30が、E6において取得された指標S3の値が基準値を超過する(又はそれよりも低い)ことを検出(E8)する場合、このことは、被験者UR1の肝臓3の状態が少なくとも1つの予め定義された基準に準拠する(又は準拠しない)ことを意味する。
【0143】
一例によれば、指標S3は、被験者UR1の肝臓3のPDFFを定義する。比較ステップE8の間に、指標S3の値はしきい値RF1と比較される。PDFFの取得された値がしきい値RF1を超過する(又は予め定義された値の範囲内にある)場合、肝臓3の予め定義された状態が検出される。例えば、PDFFの値は下記のように解釈されてもよい。
- S1グレード以上の脂肪症に関して5.5%;
- S2グレード以上の脂肪症に関して15.5%;及び、
- S3グレード以上の脂肪症に関して20.5%。
例えば、非特許文献1に示すとおりである。
【0144】
決定ステップE6(図8)の間に、指標S3は、超音波スキャンSC1及びSC2から得られるスキャンデータDT1a及びDT1bを組み合わせることで、様々な方法で決定されうることに注意すべきである。
【0145】
一例によれば、スキャンデータDT1a及びDT1bは、そこから指標S3を導出するために決定装置30によって直接的に組み合わされるデータである。そうするために、決定方法30は、例えば、指標S3を生成するように、スキャンデータDT1a及びDT1bに対して、「f1」で示す計算関数を適用する。言いかえると、関数f1は、f1(DT1a;DT1b)=S3であるように適用される。
【0146】
もう1つの実施例によれば、決定装置30は、指標S3を決定する前に、スキャンデータDT1a及びDT1bに対して第1の処理を実行する。そうするために、装置30は、例えば、中間スコア(又は指標)S1及びS2を生成するように、スキャンデータDT1a及びDT1bに対して関数f2及びf3をそれぞれ適用する。言いかえると、決定装置30は、第1のグループのスキャンデータDT1aから第1のスコアS1(E4a、図8)を評価(又は決定)し、第2のグループのスキャンデータDT1bから第2のスコアS2(E4b、図8)を評価(又は決定)する。その後、決定装置30は、例えば、中間スコアS1及びS2に対して関数f4を適用することで、第1及び第2のスコアS1及びS2からスコアS3を決定(E6)してもよい。
【0147】
次いで、指標S3の決定E6は、次式になる。
- f2(DT1a)=S1;
- f3(DT1b)=S2;及び、
- f4(S1;S2)=S3。
【0148】
中間スコアS1及びS2のタイプは場合に応じて変化しうることに注意すべきである。特に、指標S1及び/又はS2の各々は、下記に定義するような指標タイプの任意のもののうちの少なくとも1つを含んでもよい。本開示の提示の簡単化のために、下記の実施例では、第1及び第2の指標S1及びS2のそれぞれは、特定の実施例において下記で定義されるような少なくとも1つの指標を含むことが考慮される。
【0149】
一例によれば、E4(図8)において決定される指標S1及びS2の各々は、対応する超音波スキャンSC1及びSC2の間に、音速、すなわち、被験者UR1の肝臓において、又はより具体的には、超音波が照射される1つ又は複数のエリアにおいて伝搬する超音波の速度を定義する各指標を含む。
【0150】
一例によれば、E4(図8)において決定される指標S1及びS2の各々は、後方散乱係数、すなわち、対応する超音波スキャンSC1及びSC2中の媒体における超音波の伝搬によって引き起こされる後方散乱のレベルを表す係数を定義する各指標を含む。この後方散乱係数は、超音波プローブに向かって伝搬するエコーを生じる検査下媒体の能力に関連する物理的パラメータのうちの1つである。
【0151】
一例によれば、E4(図8)において決定される指標S1及びS2の各々は、印加される力学的応力に応答して変形する肝臓の組織の能力を表す指標を含む。
【0152】
一例によれば、E4(図8)において決定される指標S1及びS2の各々は、肝臓の粘弾性、すなわち、肝臓の粘性及び弾性能力を表す係数を定義する各指標(又はスコア)を含む。
【0153】
一例によれば、E4(図8)において決定される指標S1及びS2の各々は、各散乱非線形(又は伝搬非線形)指標、すなわち、超音波スキャンSC1及びSC2中の媒体における(肝臓における)超音波の伝搬非線形を表す指標(又はスコア)を含む。
【0154】
一例によれば、E4(図8)において決定される指標S1及びS2の各々は、各散乱指標(又はスコア)、すなわち、対応する超音波スキャンSC1及びSC2の間の媒体における超音波の伝搬によって生じた散乱のレベルを表す指標を含む。この散乱係数は、超音波が照射される組織の能力であって、多重散乱現象に起因するエコーを生成する能力に依存する、散乱平均経路(又は「平均自由行程」)を定義しうる。
【0155】
1つ又は複数の超音波画像における「スペックル」現象を利用して、被験者の肝臓の状態を決定することも可能である。超音波画像における超音波スペックル(時々、「干渉パターン」又は「スパッタリング」ともいう)は、関心対象の媒体における組織内の様々なサイズの構造物と相互動作するときの超音波のコヒーレンスから生じる、見かけの粒度又はテクスチャ現象である。これらの粒状パターンは、組織内の複数の散乱体によって反映された超音波の強め合う重畳及び弱め合う重畳による生成物であり、受信信号の強度におけるランダム変動をもたらす。この特徴は、観察される組織のテクスチャ、それらの均質性、及び/又は他の材料特性のような、被験者の肝臓の状態を表す情報を抽出するために使用されうる。
【0156】
したがって、一例によれば、E4(図8)において決定される指標S1及びS2の各々は、各超音波スペックル分布指標(又はスコア)(又は干渉パターン分布指標)を含む。これらの指標(超音波スペックル統計指標ともいう)は、第1及び第2のグループのスキャンデータDT1a及びDT1bからそれぞれ生成(E2、図8)された1つ又は複数の超音波画像におけるスペックル現象(又は、より簡単に、スペックル又はグレーの陰影)の分布を特徴づけてもよい。より詳しくは、第1及び/又は第2のグループのスキャンデータ(ステップE2a及びE2b)に基づいて、Bモード超音波画像が生成されてもよく、各画像について、画像におけるグレーの陰影の分布が決定されてもよい。したがって、スペックルの統計的特性は、少なくとも1つのスペックル統計指標の形式で表されてもよく、適切な場合には、被験者の肝臓の状態を評価するために使用されてもよい。
【0157】
一例によれば、第1のスコアS1は第1の減衰係数であり(又はそれを含み)、第2のスコアS2は第2の減衰スコアである(又はそれを含む)。したがって、中間スコアS1及びS2は、超音波スキャンSC1及びSC2の間に媒体(関心対象エリア)において伝搬する超音波の減衰をそれぞれ表す。この場合、スキャンデータDT1a及びDT1bの組み合わせからE6(図8)において決定される(及び、より具体的には、スコアS1及びS2を組み合わせることによる)指標S3は、例えば、肝臓の生理病理学的状態のバイオマーカーを定義しうる。
【0158】
中間スコアS1及びS2から指標S3を決定するために装置30によって使用される関数f4の性質は、場合に応じて適応されてもよい。
【0159】
一例によれば、指標S3は、第1及び第2のスコアS1及びS2の平均から決定される。例えば、この平均は、第1及び第2のスコアS1及びS2の線形結合によって決定される。それは単純平均又は加重平均からなってもよい。言いかえると、指標S3は、S3=aS1+bS2であるように計算されてもよく、ここで、重みa及びbは、S1及びS2の値には無関係に設定される。
【0160】
一例によれば、S3を決定するために使用される平均は、S1及びS2の最小平均二乗平均(LSM(Least mean-square)平均ともいう)である。
【0161】
一例によれば、指標S3を決定(E6、図8)するために使用されるS1及びS2の平均は、スコアS1及びS2の非線形組み合わせである。言いかえると、指標S3は、S3=aS1+bS2であるように計算されてもよく、ここで、重みa及びbは、S1及びS2の値に従って可変である。一例によれば、重みa又はbの一方は、非ゼロの重みを有する中間スコアS1又はS2のみがS3を決定するために選択及び使用されるように、ペア(S1,S2)のうちの少なくとも1つの値に関してゼロであってもよい。
【0162】
一例によれば、スコアS1及びS2の非線形結合は、f(S1,S2)又はf(DT1a,DT1b)として定義されてもよい。ここで、fは非線形関数を示す。
【0163】
図9は、本願出願人によって実行されたET1で示す研究の被験者に関する第1のスキャンデータDT1aからE4a(図8)において決定された中間スコアS1を点群62の形式で示す。同様に、図10は、研究ET1の被験者に関する第2のスキャンデータDT1bからE4b(図8)において決定された中間スコアS2を点群66の形式で示す。この実施例では、中間スコアS1及びS2は、第1及び第2の超音波スキャンSC1及びSC2の間に被験者UR1において伝搬する超音波の減衰を特徴づける減衰係数を定義する。
【0164】
線形回帰62a及び66aは、超音波スキャンSC1及びSC2(図9及び図10)から生じるスコアS1及びS2に対応する点62及び66からそれぞれ決定されている。これらの線形回帰62a及び66aは、各患者の推定されたPDFFスコアの関数として、肋間及び肋骨下の位置においてそれぞれ測定された減衰係数の概略変化を表す。
【0165】
研究ET1を読むことからわかるように、この実施例において肋間及び肋骨下の超音波スキャン構成で達成される性能は互いに近接する。r CF1及びr CF2でそれぞれ示す決定係数は、肋間及び肋骨下の位置(又はモード)において取得された減衰値(指標S3)に基づいて決定されている。したがって、われわれは、r CF1=0.51及びr CF2=0.50を得る。相関係数は、PDFFスコア及び減衰指標の間の相関を反映する。この係数が1に等しい場合、すべての点が同じライン上に位置する。したがって、この場合、われわれは、肋間構成より肋骨下構成においてわずかに高い相関を得る。
【0166】
注意として、ピアソン線形決定係数ともいう決定係数rは、線形回帰の予測の品質を表す。
【0167】
図11は、研究ET1の間に評価された、被験者のグループに関する決定(E6)された指標S3を、点群70の形式で示す。指標S3は、グループの各被験者に係る肋骨下及び肋間の減衰係数の組み合わせから、研究ET1の各被験者に関してそれぞれ決定された減衰指標を定義する。
【0168】
図12は、参照のために、決定方法のものとは異なる技術、すなわちMRIイメージングによって決定された、研究ET1の被験者に係るPDFFスコアの決定を示す。MRIイメージングによるPDFFの評価は、現在、脂肪肝を予測又は診断するための基準である。この研究ET1が、この場合、限界値、すなわち25%より低いPDFFを有する被験者をカバーすることに注意すべきである。
【0169】
図11に示すように、線形回帰70aはまた、研究ET1の各被験者に関してE6(図8)において決定された指標S3に対応する点70から決定されている。この線形回帰70aは、被験者のPDFFの関数として、全体減衰係数の概略変化を表す。優位点として、この実施例では、総計線形回帰70aの場合に0.55までに達する決定係数rの実質的な改善に注目するかもしれない。言いかえると、線形回帰70aは、肋間モードのみの場合(図9)又は肋骨下モードのみの場合(図10に)得られる結果と比較して、被験者のPDFFに関する全体減衰係数S3の(S1及びS2と比較して)より良好な相関レベルを有する。このことは、この実施例に関して、1つの取得モード(肋間か肋骨下)のみが使用された場合よりも、精度及び信頼性に関してより良好な結果を生じる決定方法の有効性を検証する。
【0170】
図8に示す実施例によれば、いったんE6において指標S3が決定されると、決定装置30は、指標S3から、被験者UR1の肝臓3の体脂肪率の比又はPDFFを評価(E10)する。その後、装置30は、おそらくは、取得されたPDFFを基準値RF2に対して比較(E12)してもよい。この基準値は、例えば、MRIイメージング技術又は他の技術によって決定される。
【0171】
また、第1のスキャンデータDT1aは、第2のスキャンデータDT1bの前に、又は同時に、又は後で取得されてもよい。特に、第1及び第2の超音波スキャンSC1及びSC2は、同時に実行されてもよく、又は、同じスキャンセッション又は異なるセッションの間に、任意の順序に従って(SC2の前にSC1又はSC1の前にSC2)、逐次に実行されてもよい。
【0172】
一例によれば、第1及び第2のグループのスキャンデータDT1a及びDT1bのうちの一方は、前スキャン構成に従って実行されるスキャン、いわゆる前スキャンから取得され、他方は、後スキャン構成に従って実行されるスキャン、いわゆる後スキャンから取得され、前スキャンは後スキャンの前に実行される。次いで、前スキャン構成は、第1及び第2のスキャン構成CF1及びCF2のうちの一方であり、後スキャン構成は、第1及び第2のスキャン構成CF1及びCF2のうちの他方である。
【0173】
したがって、図13に示す第1の実施例では、前スキャンは、前スキャン構成(すなわちCF1)に従って実行される第1の超音波スキャンSC1であり、後スキャンは、スキャン構成(すなわちCF2)に従って実行される第2の超音波スキャンSC2である。例えば、前スキャン構成は肋間構成であり、後スキャン構成は肋骨下構成である(逆も可能である)。
【0174】
第2の実施例によれば、前スキャンは、前スキャン構成(すなわちCF2)に従って実行される第2の超音波スキャンSC2であり、後スキャンは、スキャン構成(すなわちCF1)に従って実行される第1の超音波スキャンSC1である。
【0175】
したがって、例えば、同じ医療検査の間に、又は、異なる時間における別個の医療検査の間に(例えば、第1の検査及びその後の医療モニタリングの間に)、前スキャンを実行し、次いでその後、後スキャンを実行することが可能である。特に、決定装置30が、前スキャンから得られるスキャンデータのグループから第1の結果(例えばS1又はS2)を生成し、次いで、この結果を後スキャンから得られるスキャンデータにより完成させることで全体指標S3を取得するように、本開示の決定方法をインクリメンタルに実行することが可能である。このように、優位点として、被験者UR1の肝臓3の状態に関する第1の結果をすぐに取得し、次いでその後、後スキャンによりこの結果を向上させることが可能である。
【0176】
図14に示す実施例によれば、後スキャンの後スキャン構成(すなわち、この実施例では、スキャンSC2の構成CF2)は、前スキャン(すなわち、この実施例ではS1)から取得された第1又は第2のスコアS1又はS2(すなわち、この実施例ではSC1)から選択(E25)される。したがって、優位点として、前スキャンに関して以前に取得された結果に従って、後スキャンが実行される方法を適応することが可能である。前スキャンの結果に依存して、最も良好に超音波観察を方向付けるように特定のスキャン構成を選好することが得策である可能性がある。
【0177】
図15に示す実施例によれば、決定装置30(図3)は、決定ステップE6(図8)の間に、第1及び第2のグループのスキャンデータDT1a及びDT1b、又は、これらのデータDT1a及びDT1bから得られたデータの処理を実行することで、全体指標S3を決定する。この処理は、トレーニングデータDT0及び基準スコア(又は指標、又は値)RF0からトレーニングされた1つの(又は少なくとも1つの)ニューラルネットワークRN1を用いて取得された処理モデルML1に従って実行される。そうするために、ニューラルネットワークRN1は、人工知能モジュールに基づくアルゴリズムを実行してもよい。ニューラルネットワークRN1がトレーニングされる際に使用されるトレーニングデータは、超音波スキャンデータ、又は、そのような超音波スキャンデータから得られたデータを含んでもよい。
【0178】
図16に示す実施例によれば、前述した処理の前に、ニューラルネットワークRN1は、トレーニングフェーズE40~E46の間に機械学習によってトレーニングされる。このトレーニングフェーズの間に、ニューラルネットワークRN1は、被験者における第1及び第2のスキャン構成CF1及びCF2に従ってそれぞれ伝搬する波を表す超音波スキャンデータDT0a及びDT0bを取得(E40)する。その後、ニューラルネットワークRN1は、超音波スキャンデータDT0a及びDT0bからトレーニングデータDT0を決定(E42)する。これらのトレーニングデータDT0は、これらのデータDT0a及び/又はDT0bから得られたデータのスキャンデータDT0a及び/又はDT0b自体を含んでもよい。ニューラルネットワークRN1はさらに、被験者に対して実行されるMRIイメージングから、被験者の肝臓の状態の表す基準スコアRF0を取得(E44)する。したがって、ニューラルネットワークRN1は、トレーニングデータDT0を基準スコアRF0に対して比較することによって、第1及び第2のグループのスキャンデータDT1a及びDT1bの組み合わせから指標S3を推定するために使用される処理モデルML1を決定(E46)してもよい。
【0179】
一例によれば、決定ステップE6(図8)の間に、決定装置30は、被験者UR1の肝臓3の状態を評価するために、第1のアルゴリズム及び次いで第2のアルゴリズムを連続的に実行する。第1のアルゴリズムは、肋間モード及び肋骨下モードでそれぞれ取得された、第1及び第2のグループのスキャンデータDT1a及びDT1bから全体減衰係数S3を決定するように構成された推定アルゴリズムである。例えば、この第1の推定は、上述したように、肋間又は肋骨下に関して取得された減衰係数S1及びS2の平均を計算することによって行われる。第2のアルゴリズムは、全体減衰係数S3から、例えば、モデルML1又は上述した線形回帰から被験者UR1の肝臓3のPDFFを推定するために、ニューラルネットワーク(ネットワークRN1のような)によって実行される。したがって、第2のアルゴリズムにおいて使用される統計モデルは、出力において、全体指標S3(例えば、前述したパラメータ、減衰係数、音速、などのうちの少なくとも1つを表す)と、PDFFの推定とを相関させてもよい。
【0180】
一例によれば、決定装置30は、一方で、入力において超音波スキャンSC1及びSC2から取得される超音波画像と、出力において取得される指標S3又はPDFFとを相関させるモデルML1を生成するためのニューラルネットワークRN1を実装してもよい。
【0181】
優位点として、本開示の決定方法及び装置は、健康であるか又は肝臓の任意の生理病理学的状態を有する被験者の肝臓の状態を、高い信頼性を有して効果的に決定することを可能にする。そうするために、本開示の概念は、2つの別個のスキャン構成に従って、すなわち、肝臓を目標とする第1のスキャン構成CF1と、肝臓又は被験者の他の組織のグループを標的とする第2のスキャン構成CF2とにそれぞれ従って取得されたスキャンデータ(又は超音波データ)の組み合わせに基づく。優位点として、これらのスキャンデータの組み合わせは、ただ1つのスキャン構成が使用された場合よりも頑健な方法で、被験者の肝臓の状態を表す指標S3を取得することを可能にする。
【0182】
2つの別個の取得モードの組み合わせ、例えば、肋間及び肋骨下位置(又はモード)は、優位点として、肋間モードで取得された超音波データのみが考慮される従来技術と比較して、(複数の異なる種類のデータを用いて)取得データの品質を向上させることを可能にする。このように取得される超音波データは、互いにより低い相関性を有する。優位点として、2つの別個のスキャン構成を使用することは、測定を多様化させ、したがって、結果の信頼性及び精度を向上することを可能にする。
【0183】
さらに、例えば、脂肪肝の場合には、被験者の肝臓のすべての領域が異なる方法で影響を受ける可能性がある。したがって、非一様な脂肪症のいくつかの症例が注目された。
複数の異なる構成に従って超音波スキャンを増やすことは、被験者の肝臓の全体状態をいっそう表す推定を取得することを可能にする。
【0184】
したがって、本開示は、優位点として、(例えばNASHタイプの)脂肪肝、脂肪性肝炎症、などのような、肝臓の何らかの生理病理学的状態の診断又はモニタリングの支援を提供してもよい。
【0185】
当業者が理解するように、上述した実施形態及び変形例のすべては、本発明の非限定的な実施形態のみを構成し、それらの一部は、それらの説明を容易にするために意図的に簡単化されている。特に、当業者は、特定の必要性に対処するために、上述した実施形態及び変形例を適応又は組み合わせることを想像しうる。
【0186】
従って、本開示は、先に説明した実施形態に限定されず、特に、本開示の範囲から離れることなく、二次的なステップを含む操縦方法をカバーする。同じことは、そのような方法を実施するための操縦システムにも当てはまる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】