(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018081
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】乳化剤の分離回収方法、乳化剤濃縮組成物及びその製造方法、並びに乳化組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 23/52 20220101AFI20240201BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240201BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240201BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240201BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240201BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09K23/52
A61K8/81
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121170
(22)【出願日】2022-07-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】加治 恵
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 啓一郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AD091
4C083BB01
4C083CC03
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD31
4C083EE50
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】本発明は、乳化組成物の新規の分離回収及びリサイクル技術を提供することを課題とする。
【解決手段】乳化剤によって乳化されてなる乳化組成物の水相及び/又は油相を構成する成分の一部又は全部を蒸発又は昇華によって除去し、前記乳化剤の濃縮組成物を分離回収する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤によって乳化されてなる乳化組成物の水相及び/又は油相を構成する成分の一部又は全部を蒸発又は昇華によって除去し、前記乳化剤の濃縮組成物を分離回収する方法。
【請求項2】
前記乳化剤を再利用した新たな乳化組成物を調製するために、前記乳化剤の濃縮組成物を分離回収することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳化組成物が化粧料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乳化剤が高分子乳化剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子乳化剤が、両親媒性コポリマーであり、
前記乳化組成物は、前記両親媒性コポリマーからなる微粒子がヘテロ凝集によって分散滴の表面に吸着してなるものであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高分子乳化剤が、溶液中で相対的に低濃度の領域においては前記微粒子を形成し、相対的に高濃度の領域においては前記微粒子が複数集合してなる高次構造を形成するものであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記高次構造が、非連続ミセルキュービック構造であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記高分子乳化剤が、以下の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含む両親媒性コポリマーであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
一般式(I)
【化1】
(一般式(I)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R
1は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
2は炭素数6~30の炭化水素基を表す。)
一般式(II)
【化2】
(一般式(II)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R
3は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
4,R
5は同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
一般式(III)
【化3】
(一般式(III)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R
6は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
7、R
8、R
9は同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Yは四価アルコールからOH基が脱離した基を表す。)
【請求項9】
前記両親媒性コポリマーが、重合性カルボン酸、下記一般式(VIII)で表されるビニル系単量体、下記一般式(IX)で表されるビニル系単量体、下記一般式(X)で表されるビニル系単量体又は下記一般式(XI)で表されるビニル系単量体から選ばれる単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
一般式(VIII)
【化4】
(一般式(VIII)中、Bは-O-又は-COO-を表し、R
13は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
14は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
15は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。)
一般式(IX)
【化5】
(一般式(IX)中、BはBは-O-又は-COO-を表し、R
16は水素原子またはメチル基をあらわす。)
一般式(X)
【化6】
(一般式(X)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表し、R
17は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
一般式(XI)
【化7】
(一般式(XI)中R
18は水素原子またはメチル基を、R
19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の方法によって、前記乳化剤の濃縮組成物を製造する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法で製造された、前記乳化剤の濃縮組成物。
【請求項12】
両親媒性コポリマーからなる微粒子が集合してなる非連続ミセルキュービック構造を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の濃縮組成物又は両親媒性コポリマーからなる微粒子が集合してなる非連続ミセルキュービック構造を含む組成物と、油相成分及び水相成分を混合し、乳化組成物を製造する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により製造された乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化組成物の成分の分離回収及びリサイクル技術に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物は、ある液体のなかに、その液体とまじり合わないほかの液体が微小な液滴として分散している組成物のことをいう。乳化技術の応用分野は化粧品、食品、医薬品など多岐にわたり、新規乳化剤の開発など乳化組成物を製造するための技術発展は著しい。
【0003】
一方で乳化組成物の乳化状態を解除し(解乳化)、構成成分を分離回収することが行われている。特許文献1には、乳化組成物に塩を添加して解乳化し、油相及び水相を分離回収する技術が開示されている。特許文献2には凍結解凍処理によって解乳化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-140020号公報
【特許文献2】特開2013-013344号公報
【特許文献3】特開2019-026593号公報
【特許文献4】特開2019-043901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
持続可能な社会を実現するために、さまざまな産業で、限りある資源を繰り返し使う「循環型社会」への取り組みが行われている。化粧品業界では、使用済み容器の回収・再利用など、リサイクルが推進されている。乳化組成物もその容器も自然由来の素材を使用する傾向にあるが、現状では容器のみがリサイクル可能であるとされている。これは、高い安定性のエマルションを実現するために、従来の乳化剤は加熱工程を経て油水界面に強固に吸着していることから、その分離回収が困難であり、廃棄を余儀なくされているからである。
【0006】
以上の問題に鑑み、本発明は、乳化組成物の新規の分離回収及びリサイクル技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、乳化剤によって乳化されてなる乳化組成物の水相及び/又は油相を構成する成分の一部又は全部を蒸発又は昇華によって除去し、前記乳化剤の濃縮組成物を分離回収する方法である。
本発明によれば、乳化剤を濃縮して分離回収することが可能となる。
【0008】
本発明は、乳化剤の濃縮組成物を分離回収することで、前記乳化剤を再利用した新たな乳化組成物を調製するために応用することができる。
【0009】
本発明は、乳化化粧料における乳化剤の分離回収に応用することができる。
【0010】
近年、高分子乳化剤を用いた乳化組成物の研究開発が盛んである。本発明は、高分子乳化剤により乳化された乳化組成物に対しても応用することができる。
【0011】
近年、両親媒性の高分子乳化剤からなる微粒子がヘテロ凝集によって分散滴の表面に吸着してなる乳化組成物が提案されている(例えば、特許文献3、4など)。本発明はこのような乳化組成物に対しても応用できる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記高分子乳化剤が、溶液中で相対的に低濃度の領域においては前記微粒子を形成し、相対的に高濃度の領域においては前記微粒子が複数集合してなる高次構造を形成するものである。
本形態においては、乳化組成物を構成する成分を蒸発等により除去すると、組成物における高分子乳化剤の濃度が上昇することで高次構造を形成する。そうすると、高分子乳化剤と乳化滴との相対的な大小関係が崩れ、ヘテロ凝集による乳化界面への吸着状態を維持できなくなる。つまり、本形態においては、蒸発等の工程が、高分子乳化剤の乳化能のスイッチとして働くことで解乳化を引き起こし、分離回収が極めて容易となる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記高次構造が、非連続ミセルキュービック構造である。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記高分子乳化剤が、以下の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含む両親媒性コポリマーである。
【0015】
一般式(I)
【化1】
(一般式(I)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R
1は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
2は炭素数6~30の炭化水素基を表す。)
【0016】
一般式(II)
【化2】
(一般式(II)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R
3は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
4,R
5は同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
【0017】
一般式(III)
【化3】
(一般式(III)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R
6は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
7、R
8、R
9は同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Yは四価アルコールからOH基が脱離した基を表す。)
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記両親媒性コポリマーが、重合性カルボン酸、下記一般式(VIII)で表されるビニル系単量体、下記一般式(IX)で表されるビニル系単量体、下記一般式(X)で表されるビニル系単量体又は下記一般式(XI)で表されるビニル系単量体から選ばれる単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含む。
【0019】
一般式(VIII)
【化4】
(一般式(VIII)中、Bは-O-又は-COO-を表し、R
13は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R
14は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
15は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。)
【0020】
一般式(IX)
【化5】
(一般式(IX)中、BはBは-O-又は-COO-を表し、R
16は水素原子またはメチル基をあらわす。)
【0021】
一般式(X)
【化6】
(一般式(X)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表し、R
17は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
【0022】
一般式(XI)
【化7】
(一般式(XI)中R
18は水素原子またはメチル基を、R
19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【0023】
上記一般式で表される両親媒性コポリマーは、微粒子を形成し、乳化滴にヘテロ凝集により吸着することで乳化組成物の安定性をもたらす高分子乳化剤である。当該両親媒性コポリマーは、溶液中で相対的に低濃度の領域においては微粒子を形成し、相対的に高濃度の領域においては微粒子が複数集合してなる非連続ミセルキュービック構造を形成する。
したがって前記両親媒性コポリマーからなる微粒子により乳化されてなる乳化組成物において、その構成成分を蒸発等させると、組成物中における前記両親媒性コポリマーの濃度が上昇し、非連続ミセルキュービック構造を形成する。これにより、ヘテロ凝集による乳化滴への吸着が維持できなくなり、解乳化が起こり、油相及び水相と区別しての前記両親媒性コポリマーの分離回収が極めて容易となる。
【0024】
本発明は、上述の方法によって、前記乳化剤の濃縮組成物を製造する方法にも関する。
【0025】
また、本発明は、上述の製造方法で製造された、前記乳化剤の濃縮組成物にも関する。
【0026】
また、本発明は、両親媒性コポリマーからなる微粒子が集合してなる非連続ミセルキュービック構造を含むことを特徴とする、組成物にも関する。
【0027】
また、本発明は、上述の濃縮組成物又は組成物と、油相成分及び水相成分を混合し、乳化組成物を製造する方法にも関する。本発明は乳化剤のリサイクルの実現を可能とする。
【0028】
そして、本発明は、上述の方法により製造された乳化組成物にも関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、乳化組成物に含まれる乳化剤の新規の分離回収方法を提供する。また、当該分離回収方法は乳化組成物に含まれる乳化剤のリサイクルの実現を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】試験例1における両親媒性コポリマー1による乳化組成物の凍結破壊法(FF-TEM)による透過型電子顕微鏡像を示す。
【
図2】試験例2における乾燥被膜の3Dマッピングのラマン分光画像を示す。
【
図3】試験例3における各原料と回収物のNMR測定の結果を示すチャートである。
【
図4】試験例4の結果を示す光学顕微鏡の写真と箱ひげ図である。
【
図5】試験例5の結果を示すSAXSのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<1>乳化剤の分離回収方法
本発明は、乳化剤によって乳化されてなる乳化組成物の構成成分を蒸発又は昇華によって除去する気化除去工程を有する。気化除去工程によって乳化剤を濃縮し、その濃縮組成物を分離回収する。
【0032】
本発明は、前記乳化剤を再利用した新たな乳化組成物の調製のために応用することが好ましい。乳化剤を再利用することで、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成に寄与することができる。
【0033】
本発明は、化粧分野、食品分野、医薬分野などいずれの技術分野にも応用できる。特に本発明は、化粧分野への応用、すなわち、乳化化粧料における乳化剤の分離回収のために応用することが好ましい。
【0034】
気化除去工程においては、乳化組成物を構成する乳化剤以外の成分の一部又は全部を蒸発又は昇華によって除去する。蒸発又は昇華によって除去する成分は、油相を構成する成分と水相を構成する成分の何れか一方又は両方である。気化除去工程で除去される成分としては、蒸発又は昇華を生じさせるために適用する具体的手段によって変動するが、以下に例示するような揮発性の成分を挙げることができる。
【0035】
水相を構成する成分のうち、気化除去工程において除去する成分としては、水や揮発性アルコールなどの揮発性成分が挙げられる。
揮発性アルコールは好ましくは、モノアルコール、特にアルキルモノアルコール、特にC1~C5低級アルキルモノアルコール、すなわち、炭素数1~5のアルキルモノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどが挙げられる。
【0036】
また、油相を構成する成分のうち、気化除去工程において除去する成分としては、揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素油が挙げられる。
揮発性シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(1cs)、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等の直鎖状ジメチルポリシロキサン;メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の分岐状シロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0037】
揮発性炭化水素油としては、例えば、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等のパラフィン系炭化水素油;イソデカン、イソドデカン、水添ポリイソブテン等のイソパラフィン系炭化水素油;シクロデカン、シクロドデカン等の環状パラフィン炭化水素油が挙げられる。
【0038】
言い換えると本発明を適用すべき乳化組成物としては、上述したような揮発性成分の何れかを水相及び/又は油相の構成成分として含むものが挙げられる。
【0039】
気化除去工程は、乳化組成物を構成する成分の少なくとも一部を蒸発又は昇華できるものであれば限定されない。
蒸発のための具体的手段としては、常温・常圧に放置することによる自然蒸発や、加熱などを挙げることができるが、時間及びエネルギー効率の観点から、減圧することによって固体または液体を積極的に蒸発させるエバポレーションが好適に例示できる。
また、昇華のための具体的手段としては、凍結乾燥が好適に例示できる。
【0040】
乳化剤として高分子乳化剤、特に好ましくは、微粒子の形態で乳化界面に吸着するタイプの高分子乳化剤により乳化されてなる乳化組成物に本発明の方法を適用する場合には、気化除去工程の後に遠心分離によって前記微粒子を沈殿させ、他の成分と分離して前記微粒子を回収する実施形態としてもよい。
このような実施形態とすることで、気化除去工程によって除去できない成分と分離して、より高純度にて乳化剤を回収することが可能となる。
【0041】
本発明を適用する乳化組成物は、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、リキッドファンデーション等の化粧料、皮膚外用剤、医薬部外品や医薬品であってもよい。
この場合、本発明を適用する乳化組成物には、通常化粧料や医薬品等に配合される任意添加成分が含まれていてもよい。このような添加成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の保湿剤;エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤;パラアミノ安息香酸(以下「PABA」と略記)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABA2-エチルヘキシルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル〕-3,4-ジメトキシシンナメート等のシリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3’ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等の紫外線吸収剤;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体〔トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス-4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’-ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2-(トランス-4-アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)-5-ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス-4-アミノメチルシコロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス-4-(P-メトキシビンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス-4-グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、等)〕、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤;ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の植物の抽出物;色素;多孔質および/または吸水性の粉末(例えば、トウモロコシやバレイショ等から得られるスターチ類、無水ケイ酸、タルク、カオリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸カルシウム等の粉末);中和剤;防腐剤;香料;顔料等が挙げられる。
【0042】
気化除去工程を経たのちに得られる濃縮組成物には、前記乳化剤に加え、気化除去工程によっても気化除去できなかった不揮発性成分又は難揮発性成分が残留することになる。
【0043】
例えば、油相成分として揮発性油を含み、水相成分として水と保湿剤を含む乳化化粧料に本発明を適用する場合、気化除去工程を経ることで、乳化剤と保湿剤とを含む濃縮組成物が得られる。
【0044】
<2>乳化剤
本発明はアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、天然界面活性剤、高分子乳化剤など、いずれの乳化剤によって安定化された乳化組成物にも応用可能である。
【0045】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩(例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン等);アルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等);α-オレフィンスルホン酸塩(例えば、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸カリウム等);N-アシルアミノ酸塩(例えば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸アンモニウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシルサルコシンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチルβ-アラニンカリウム等);アシルイセチオン酸塩(例えば、N-ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、N-ラウロイルイセチオン酸カリウム等);N-アシルアルキルタウリン塩(例えば、N-ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、N-ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム等);スルホコハク酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等);N-アシルポリペプチド塩(例えば、ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンカリウム等);アルキルエーテルリン酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等);ヒドロキシエーテルカルボン酸塩(例えば、ドデカン-1,2-ジオール酢酸エーテルナトリウム等);アルキルエーテルカルボン酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩等)等が挙げられる。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、酢酸ラウリン酸アミドブチルグアニジン、酢酸ミリスチン酸アミドブチルグアニジン、酢酸パルミチン酸アミドブチルグアニジン、ジステアリルジメチルアンモニウムサルフェート、ステアリルエチルジヒドロキシエチルアンモニウムエチルサルフェート、N-ヤシ油脂肪酸L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0047】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボベタイン型両性界面活性剤(例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、オクチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等);スルホベタイン型両性界面活性剤(例えば、ヤシ油アルキルスルホベタイン、ラウリルスルホベタイン等);アンホ(ジ)酢酸型両性界面活性剤(例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム等);アルキルイミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤(例えば、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、ヤシ油アルキルアミノジ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム等);アミノ酸系両性界面活性剤(例えば、N-[3-アルキル(12,14)オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩等)等が挙げられる。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、POEソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等);POEグリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等);POE脂肪酸エステル類(例えば、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等)、POEアルキルエーテル類(例えば、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(例えば、POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)類(例えば、プルロニック(登録商標)等)、テトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等)、POEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等)、POEミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POEソルビットミツロウ等)、アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等)、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸、オレイン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
【0049】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基分岐型ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。
【0050】
天然界面活性剤としては、例えば、リン脂質、レシチン、リゾレシチン、ラノリン、コレステロール、サポニン(例えば、キラヤサポニン、ダイズサポニン、ユッカサポニン、エンジュサポニン、ビートサポニン、アズキサポニン、ニンジンサポニン、茶種サポニン、ヘチマサポニン、ツボクササポニン等)、ペクチン、グリチルリチン酸またはその塩等が挙げられる。
【0051】
高分子乳化剤としては、例えば、アクリル系単量体、メタアクリル系単量体、スチレン系単量体、ビニル系単量体、カルボキシル含有エチレン性不飽和単量体などの単量体の共重合体で構成されるものが挙げられる。前記単量体の具体例としては、例えば、アクリル系、メタアクリル系単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシ(メタ)アクリレート、エトキシ(メタ)アクリレート、ブトキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリル(メタ)アミド類が挙げられる。スチレン系単量体としては、例えばスチレン、αメチルスチレン、スチレンスルフォン酸等が挙げられる。ビニル系単量体としては、例えば酢酸ビニル、ビニルエーテル類が挙げられる。カルボキシ含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸が挙げられる。
【0052】
高分子乳化剤は両親媒性コポリマーであることが好ましい。また、本発明を好ましく適用できる乳化組成物として、両親媒性コポリマーからなる微粒子がヘテロ凝集によって分散滴の表面に吸着してなる乳化組成物が挙げられる。
さらには、高分子乳化剤が、溶液中で相対的に低濃度の領域においては前記微粒子を形成し、相対的に高濃度の領域においては前記微粒子が複数集合してなる高次構造を形成するものであることが好ましい。
本実施形態においては、乳化組成物を構成する成分が気化除去工程により除去されると、組成物における高分子乳化剤の濃度が上昇することで高次構造を形成する。そうすると、高分子乳化剤と乳化滴との相対的な大小関係が崩れ、ヘテロ凝集による乳化界面への吸着状態を維持できなくなる。つまり、本実施形態においては、気化除去工程が、高分子乳化剤の乳化能のスイッチとして働くことで解乳化を引き起こし、分離回収が極めて容易となる。
上述の高次構造としては、非連続ミセルキュービック構造が挙げられる。
【0053】
以下、溶液中で相対的に低濃度の領域においては乳化滴にヘテロ凝集によって吸着可能な微粒子を形成し、相対的に高濃度の領域においては微粒子が複数集合してなる高次構造を形成する高分子乳化剤である両親媒性コポリマーの例について説明する。
【0054】
両親媒性コポリマーは、以下の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位(以下、単に、「構成単位I」などと呼ぶこともある)を含むことが好ましい。
【0055】
【0056】
前記一般式(I)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R1は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R2は炭素数6~30の炭化水素基を表す。
【0057】
ここで、R1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、R1は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0058】
R2は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよい。
R2は、より具体的には炭素数13~30の分岐状炭化水素基、及び2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を例示することができる。
【0059】
R2は環構造を有していてもよいが、環構造を含まないことがより好ましい。
【0060】
R2の炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。
【0061】
R2としては炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、又は環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基が好ましい。
【0062】
炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基としては、1-メチルドデカニル基、11-メチルドデカニル基、3-エチルウンデカニル基、3-エチル-4,5,6-トリメチルオクチル基、1-メチルトリデカニル基、1-ヘキシルオクチル基、2-ブチルデカニル基、2-ヘキシルオクチル基、4-エチル-1-イソブチルオクチル基、1-メチルペンタデカニル基、2-ヘキシルデカニル基、2-オクチルデカニル基、2-ヘキシルドデカニル基、16-メチルヘプタデカニル基、9-メチルヘプタデカニル基、7-メチル-2-(3-メチルヘキシル)デカニル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカニル基、2-オクチルドデカニル基、2-デシルテトラデカニル基、2-ドデシルヘキサデカニル基等を例示することができる。
【0063】
環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基としては2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルペンタニル基、1-イソプロピルブチル基、1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチル-1-イソプロピルプロピル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、1-プロピル-2,2-ジメチルプロピル基、1,1、2-トリメチル-ペンチル基、1-イソプロピル-3-メチルブチル基、1,2-ジメチル-1-エチルブチル基、1,3-ジメチル-1-エチルブチル基、1-エチル-1-イソプロピル-プロピル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1-メチル-1-エチルペンチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,4―ジメチルヘキシル基、1-エチル-3―メチルペンチル基、1,5―ジメチルヘキシル基、1-エチル-6-メチルヘプチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1,2-ジメチル-1-イソプロピルプロピル基、3-メチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ブチル基、1-イソプロピルヘキシル基、3.5.5-トリメチルヘキシル基、2-イソプロピル-5-メチルヘキシル基、1,5-ジメチル-1-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2,4,5-トリメチルヘプチル基、2,4,6-トリメチルヘプチル基、3,5-ジメチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ヘキシル基等を例示することができる。
【0064】
【0065】
【0066】
前記一般式(II)及び(III)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R3、R6は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R4,R5、R7、R8、R9は同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。Yは四価アルコールからOH基が脱離した基を表す。
【0067】
ここで、R3、R6で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、R3、R6は水素原子又はメチル基であることが好ましく、特にメチル基であることが好ましい。
【0068】
一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9のアシル基の炭素数は12~22、より好ましくは14~20、さらに好ましくは16~20である。
【0069】
一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9のアシル基は分岐鎖状であっても直鎖状であってもよいが、好ましくは分岐鎖状である。
【0070】
また、一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9が分岐鎖状のアシル基である場合、主鎖の炭素数は、好ましくは9~21、より好ましくは12~20、さらに好ましくは16~18である。
【0071】
また、一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9が分岐鎖状のアシル基である場合、分岐の数は好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
【0072】
さらに、一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9が分岐鎖状のアシル基である場合において、分岐鎖が結合する主鎖の炭素の位置番号は大きいほど好ましい。具体的には、分岐鎖は主鎖端部の炭素から、好ましくは1~3個目の炭素、より好ましくは1又は2個目の炭素、さらに好ましくは1個目の炭素に結合していることが好ましい。
【0073】
R4,R5、R7、R8、R9のアシル基は環状構造を含んでいてもよいが、環状構造を含まないことが好ましい。
【0074】
R4,R5、R7、R8、R9のアシル基の炭化水素鎖部分は、飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。
【0075】
また、R4、R5、R7、R8、R9で表される環構造を含まない、分岐を有する炭素数6~22のアシル基としては、2-メチルペンタノイル基、3-メチルペンタノイル基、4-メチルペンタノイル基、2-エチルブタノイル基、2-エチルブタノイル基、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2-メチルヘキサノイル基、4-メチルヘキサノイル基、5-メチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2-メチルヘプタノイル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、2-メチルオクタノイル基、3,3,5-トリメチルヘキサノイル基、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
【0076】
また、本発明の好ましい実施の形態では、一般式(II)及び(III)において、R4、R5、R7、R8、R9は同一でも異なっていてもよく、分岐を有する、炭素数10~22のアシル基、または、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基である。
この場合、環状構造を含んでいてもよいが、環状構造を含まない方が好ましい。
【0077】
このような、好ましい実施の形態におけるR4、R5、R7、R8、R9で表される、環構造を含まない、分岐を有する炭素数10~22のアシル基としては、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基)、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基)、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
【0078】
また、好ましい実施の形態におけるR4、R5、R7、R8、R9で表される、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基としては、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、3,5,5-トリメチルヘキサノイル基等を例示することができる。
【0079】
一般式(II)においてXで表される、三価アルコールから誘導される基は、三価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンからなる群から選択される三価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
【0080】
また、一般式(III)においてYで表される、四価アルコールから誘導される基は、四価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、D-トレイトール、L-トレイトールからなる群から選択される四価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
【0081】
両親媒性コポリマーは、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基などの親水性官能基若しくはこれを有する側鎖や、-O-、-NH-、-SO2-、-CO-NH-などの結合を繰り返し有する重合性の側鎖などの親水性側鎖を有することが好ましい。
【0082】
親水性側鎖としては、下に示す一般式(IV)~(VII)で表される置換基を例示することができる。
【0083】
一般式(IV)
【化11】
(一般式(IV)中R
10は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
11は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。)
【0084】
また、R10で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、1-ヒドロキシ-2-メチルエチレン基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
【0085】
また、R11で表される基のうち、炭素数6~10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき;炭素数1~14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき;炭素数1~12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R11で表される基として好ましくは炭素数1~14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基である。
【0086】
さらに、一般式(IV)におけるnは6~40の数値範囲である。
【0087】
【0088】
一般式(VI)
【化13】
(一般式(VI)中G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
【0089】
一般式(VI)で表される置換基において、G-O-で表される還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基の還元糖としては、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボースなどの単糖、マルトース、ラクトース、セロビオース等の2糖、マルトトリオース等の3糖、マルトオリゴ糖等のオリゴ糖からなる群から選択される一種または二種以上が例示されるが、中でも、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、マルトース、ラクトースセロビオースからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、グルコースが特に好ましい。
【0090】
一般式(VII)
【化14】
(一般式(VII)中R
12はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【0091】
一般式(VII)の置換基において、R12で表されるアミノ酸残基のアミノ酸としては、通常知られているアミノ酸であれば、特に限定されず、具体的には、グリシン、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニン等が例示される。
【0092】
また、R12で表されるポリアミン残基におけるポリアミンとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基を2個以上有するアミンを意味し、具体的には、ジアミン、トリアミン、テトラアミン又はこれらのアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されているアミンが例示される。これらのうちでは、得られる両親媒性コポリマーを含有する皮膚外用剤の使用感が特に優れることから、ジアミンが好ましく、特に好ましい具体例として、合成する際の原料の入手の容易さから、エチレンジアミン、1,4-ジアミノ-n-ブタン、1,6-ジアミノ-n-ヘキサン等が挙げられる。
【0093】
さらに、R12で表されるアミノアルコール残基におけるアミノアルコールとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基及びアルコール性の水酸基を有する化合物を意味する。アミノアルコールとしては、通常知られているものであれば、特に限定はされないが、具体例としては、エタノールアミン、トリエチルアミノエタノール等が例示される。
【0094】
一般式(VII)で表される置換基の塩としては、特に限定はされないが、具体的には、酸部分を塩基で中和した、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等、また、アミノ基部分を酸で中和した、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩等が例示できる。
【0095】
一般式(VII)で表される置換基、その塩の具体例としては、以下の構造を有する置換基、その塩が好適に例示できる。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
両親媒性コポリマーにおいては、上述した親水性側鎖が結合する主鎖骨格の構造は限定されない。
【0103】
両親媒性コポリマーは、重合性カルボン酸又はその塩から誘導される構成単位を有していても良い。重合性カルボン酸又はその塩としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が例示できる。これらの中では、重合性が高いことから、アクリル酸、メタクリル酸及びその塩が特に好ましい。両親媒性コポリマーに重合性のカルボン酸の塩から誘導される構成単位を導入する場合は重合性カルボン酸を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、重合性カルボン酸から誘導される構成単位を両親媒性コポリマーに誘導した後、塩基により中和して塩となしてもよい。
【0104】
また、両親媒性コポリマーとしては、以下の一般式(VIII)~(XI)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含むポリビニル系重合体を好ましく例示することができる。
【0105】
【0106】
前記一般式(VIII)中、Bは-O-又は-COO-を表し、R13は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R14は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R15は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。
【0107】
前記一般式(VIII)中、Bは-O-又は-COO-を表すが、特に好ましくは-COO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
【0108】
前記一般式(VIII)においてR13で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が例示できる。本発明において、R13は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0109】
また、R14で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、1-ヒドロキシ-2-メチルエチレン基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
【0110】
また、R15で表される基のうち、炭素数6~10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき;炭素数1~14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき;炭素数1~12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R15で表される基として好ましくは炭素数1~14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基である。
【0111】
さらに、一般式(VIII)におけるnは6~40の数値範囲である。
【0112】
前記一般式(VIII)で表されるモノマーのうち、R14がプロピレン基であるモノマーとして具体的には、ポリプロピレングリコール(9)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(9)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノメタクリレート等が挙げられる。なお、括弧内の数字はnを表す。これらのポリマーの多くは市販品として入手可能である。これら市販品としては、具体的には、商品名「ブレンマー」AP-400、AP-550、AP-800、PP-500、PP-800(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
【0113】
前記一般式(VIII)で表されるモノマーのうち、R14がエチレン基であるモノマーとして具体的には、ポリエチレングリコール(10)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(8)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート、オレイロキシポリエチレングリコール(18)メタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(18)アクリレート、ラウロイロキシポリエチレングリコール(10)メタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート等が挙げられる。
【0114】
上述のアクリル系単量体は、対応するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールモノエステルとアクリル酸又はメタクリル酸のクロライド又は無水物とのエステル化反応により高収率で得ることができる。また、既に市販品も多数存在するので、かかる市販品を利用することも可能である。このような市販品としては、具体的に、商品名ブレンマー、AE-400、PE-350、AME-400、PME-400、PME-1000、ALE-800、PSE-1300等(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
【0115】
【0116】
一般式(IX)中、BはBは-O-又は-COO-を表し、R16は水素原子またはメチル基をあらわす。
【0117】
前記一般式(IX)中、Bは-O-又は-COO-を表すが、特に好ましくは-COO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
【0118】
前記一般式(IX)で表されるアクリル系単量体として具体的には、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(APC)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)が挙げられる。これらのモノマーは、例えば、Polymer Journal, Vol22, No.5 記載の以下の方法により、合成が可能である。
<合成法>
2-ブロモエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルメタクリレート又は2-ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させ、2-メタクリロイルオキシエチル-2‘-ブロモエチルリン酸又は2-アクリロイルオキシエチル-2‘-ブロモエチルリン酸を得た後、これら化合物とトリエチルアミンをメタノール中で反応させる。
【0119】
【0120】
一般式(X)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表し、R17は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。
【0121】
前記一般式(X)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表すが、特に好ましくは-CO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
【0122】
一般式(X)で表される親水性モノマーにおいて、G-O-で表される還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基の還元糖としては、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボースなどの単糖、マルトース、ラクトース、セロビオース等の2糖、マルトトリオース等の3糖、マルトオリゴ糖等のオリゴ糖からなる群から選択される一種または二種以上が例示されるが、中でも、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、マルトース、ラクトースセロビオースからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、グルコースが特に好ましい。また、一般式(X)で表される単量体としては、グルコシルオキシエチルメタクリレート(以下GEMAと省略する。)またはグルコシルオキシエチルアクリレート(以下GEAと省略する。)が好ましい。
【0123】
【0124】
一般式(XI)中R18は水素原子またはメチル基を、R19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。
【0125】
前記一般式(XI)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表すが、特に好ましくは-CO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
【0126】
一般式(XI)のモノマーにおいて、R19で表されるアミノ酸残基のアミノ酸としては、通常知られているアミノ酸であれば、特に限定されず、具体的には、グリシン、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニン等が例示される。
【0127】
また、R19で表されるポリアミン残基におけるポリアミンとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基を2個以上有するアミンを意味し、具体的には、ジアミン、トリアミン、テトラアミン又はこれらのアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されているアミンが例示される。これらのうちでジアミンが好ましく、特に好ましい具体例として、合成する際の原料の入手の容易さから、エチレンジアミン、1,4-ジアミノ-n-ブタン、1,6-ジアミノ-n-ヘキサン等が挙げられる。
【0128】
さらに、R19で表されるアミノアルコール残基におけるアミノアルコールとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基及びアルコール性の水酸基を有する化合物を意味する。アミノアルコールとしては、通常知られているものであれば、特に限定はされないが、具体例としては、エタノールアミン、トリエチルアミノエタノール等が例示される。
【0129】
一般式(XI)で表される単量体の塩としては、特に限定はされないが、具体的には、酸部分を塩基で中和した、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等、また、アミノ基部分を酸で中和した、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩等が例示できる。両親媒性コポリマーに一般式(XI)で表される単量体の塩から誘導される構成単位を導入する場合は一般式(XI)で表される単量体を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、一般式(XI)で表される単量体から誘導される構成単位を両親媒性コポリマーに誘導した後、中和して塩となしてもよい。
【0130】
一般式(XI)で表される単量体、その塩の具体例としては、以下の構造を有する化合物、その塩が好適に例示できる。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
一般式(XI)で表される単量体は、例えば、下記に示すように(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドを用いたエステル化反応、アミド化反応により合成可能である。
【化37】
【化38】
(反応式中R
18は水素原子またはメチル基を、R
19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【0143】
両親媒性コポリマーは電離基を有さないものであってもよい。微粒子を形成した両親媒性コポリマーのファンデルワールス力によるヘテロ凝集によって乳化滴に吸着する実施形態とすることで、乳化剤(両親媒性コポリマー)の分離回収が容易になる。
【0144】
一般的に疎水性の高い界面活性剤は油中水型の乳化組成物の形成に適しており、反対に親水性の高い界面活性剤は水中油型の乳化組成物の形成に適している。両親媒性コポリマーについても同様に、疎水性構成単位(疎水性側鎖を有する構成単位)の占める割合が高い場合には油中水型の乳化組成物を形成することに適しており、また、親水性構成単位(親水性側鎖を有する構成単位)の占める割合が高い場合には水中油型の乳化組成物を形成することに適している。
このように、疎水性構成単位及び親水性構成単位の占める割合と比率を適宜調整することによって、形成する乳化組成物の乳化形態を調整することができる。
本発明は、水中油型及び油中水型のいずれの乳化形態をとる乳化組成物にも適用可能である。
【0145】
以下、上記一般式で表される両親媒性コポリマーに限らず、乳化剤として両親媒性コポリマー一般を用いる場合に妥当する技術事項について説明する。
【0146】
本発明においては両親媒性コポリマーにおける、疎水性構成単位の全構成単位に占める割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは20~50質量%、30~40質量%である。
両親媒性コポリマーにおける、疎水性構成単位が占める割合を前記範囲とすることによって、両親媒性コポリマーが高濃度で存在する際に、非連続ミセルキュービック構造を形成しやすくなる。つまり、気化除去工程の過程で組成物中における両親媒性コポリマーの濃度が上昇するにしたがって、解乳化を起こしやすくなる。
【0147】
本発明においては、両親媒性コポリマーにおける、親水性構成単位の全構成単位に占める割合は、好ましくは50~99質量%、より好ましくは50~80質量%、60~70質量%である。
両親媒性コポリマーにおける、親水性構成単位が占める割合を前記範囲とすることによって、両親媒性コポリマーが高濃度で存在する際に、非連続ミセルキュービック構造を形成しやすくなる。つまり、気化除去工程の過程で組成物中における両親媒性コポリマーの濃度が上昇するにしたがって、解乳化を起こしやすくなる。つまり、気化除去工程の過程で組成物中における両親媒性コポリマーの濃度が上昇するにしたがって、解乳化を起こしやすくなる。
【0148】
本発明においては、両親媒性コポリマーを構成する、疎水性構成単位と親水性構成単位の質量比は、好ましくは10:90~50:50、より好ましくは20:80~50:50、さらに好ましくは30:70~40:60である。
【0149】
また、両親媒性コポリマーを構成する、疎水性構成単位と親水性構成単位のモル比は、好ましくは15:85~62:38、より好ましくは29:71~62:38、さらに好ましくは41:59~52:48、さらに好ましくは27:73~38:62、さらに好ましくは44:56~49:51である。
両親媒性コポリマーにおける疎水性構成単位及び親水性構成単位の質量比及びモル比を前記範囲とすることによって、両親媒性コポリマーが高濃度で存在する際に、非連続ミセルキュービック構造を形成しやすくなる。つまり、気化除去工程の過程で組成物中における両親媒性コポリマーの濃度が上昇するにしたがって、解乳化を起こしやすくなる。
【0150】
本発明においては、両親媒性コポリマーの平均分子量は、好ましくは2,000~110,000、より好ましくは20,000~80,000、より好ましくは30,000~80,000、より好ましくは40,000~70,000、さらに好ましくは50,000~70,000、さらに好ましくは57,000~66,000である。
なお、ここで平均分子量とは、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
【0151】
両親媒性コポリマーは、濃度上昇に伴う解乳化を実現する観点から、以下の(A)の条件を満たすことが好ましい。
【0152】
(A)水に分散させたときに微粒子を形成する。
両親媒性コポリマーは、水に分散させたときに微粒子を形成することが好ましい。該微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1nm~1000nm、より好ましくは5~500nm、さらに好ましくは10~200nm、さらに好ましくは15~100nm、さらに好ましくは15~50nm、さらに好ましくは20~30nmである。
【0153】
なお、水に分散させたときの微粒子の平均粒子径は、Zetasizer Nano-Z ZEN3600、Malvern社(レーザードップラー法)を基本原理とした、動的光散乱測定法を用いて測定することができる。
【0154】
乳化界面に吸着している状態における両親媒性コポリマーの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1nm~1000nm、より好ましくは5~500nm、さらに好ましくは10~200nm、さらに好ましくは15~100nm、さらに好ましくは15~50nm、さらに好ましくは20~30nmである。
【0155】
なお、水に分散させたときの微粒子の平均粒子径は、乳化界面に吸着している状態における高分子微粒子の平均粒子径であると推定することができる。
【0156】
また、両親媒性コポリマーは、濃度上昇に伴う解乳化を実現する観点から、以下の(B)の条件を満たすものであることが好ましい。
(B)前記両親媒性コポリマーを0.5質量%の濃度で含む水溶液の25℃、1気圧における粘度が3000mPa・S以下である。
【0157】
両親媒性コポリマーを0.5質量%の濃度で含む水溶液の粘度は、25℃、1気圧において、より好ましくは2500mPa・S以下、さらに好ましくは2000mPa・S以下である。
【0158】
また、両親媒性コポリマーは、濃度上昇に伴う解乳化を実現する観点から、以下の(C)の条件を充足することが好ましい。
(C)両親媒性コポリマーは、0.1質量%~1.0質量%の濃度の水溶液としたときに、濃度依存的な増粘効果を示さない。
【0159】
特に、上記濃度範囲において、25℃、1気圧における水溶液の粘度が、3000mPa・S以下、より好ましくは2500mPa・S以下、さらに好ましくは2000mPa・S以下となるような両親媒性コポリマーであることが好ましい。
【0160】
なお、粘度は25℃、1気圧において定法(例えば、B型粘度計(DIGITAL VISMETRON VDA:芝浦システム株式会社製)を用いて測定することができる。
【0161】
上述の両親媒性コポリマーにより乳化されてなる乳化組成物は、以下の製造方法により製造することができる。すなわち、両親媒性コポリマーを水相に分散させ微粒子を形成させてから、次いで、微粒子が分散している水相に油相成分を添加し、攪拌混合することにより製造することができる。
【0162】
本発明の好ましい実施の形態では、水相に分散させた水両親媒性コポリマーが全て微粒子となってから、油相を添加することが好ましい。
【0163】
<3>製造方法(1)
本発明は、上述した分離回収方法によって、乳化剤の濃縮組成物を製造する方法にも関する。その実施形態は上記<1>及び<2>に記載したとおりである。
【0164】
<4>組成物(1)
本発明は、上述の製造方法で製造された乳化剤の濃縮組成物にも関する。
当該濃縮組成物における乳化剤の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
その他、当該濃縮組成物の実施形態については、上記<1>及び<2>に記載した事項を適用することができる。
【0165】
<5>組成物(2)
本発明は、両親媒性コポリマーからなる微粒子が集合してなる非連続ミセルキュービック構造を含む組成物にも関する。
当該組成物は、以下の条件を満たす乳化組成物に対して、上記<1>で説明した分離回収方法を適用することで得ることができる。
(a)両親媒性コポリマーからなる微粒子がヘテロ凝集によって分散滴の表面に吸着してなる乳化組成物である。
(b)前記両親媒性コポリマーが、溶液中で相対的に低濃度の領域においては前記微粒子を形成し、相対的に高濃度の領域においては前記微粒子が複数集合してなる非連続ミセルキュービック構造を形成するものである。
【0166】
当該組成物における乳化剤の含有量は、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
その他、当該組成物の実施形態については、上記<1>及び<2>に記載した事項を適用することができる。
【0167】
<6>製造方法(2)
本発明は、上記<4>又は上記<5>で説明した組成物(以下、説明の便宜上、「中間組成物」ということもある)と、油相成分及び水相成分を混合し、乳化組成物(以下、説明の便宜上、「新規乳化組成物」ということもある)を製造する方法にも関する。
中間組成物は、乳化剤を高濃度で含む組成物である。中間組成物に含まれる乳化剤を利用することで、新規乳化組成物を製造することができる。
【0168】
中間組成物と油相成分及び水相成分との混合方法は特に限定されず、例えば撹拌機、ホモジナイザーなどを用いて混合することができる。
混合する油相成分及び水相成分は、調製したい新規乳化組成物の組成に応じて適宜選択することができる。
【0169】
一つの実施形態では、上記<1>の分離回収方法を適用する乳化組成物(以下、説明の便宜上、「原乳化組成物」ということもある)と成分が同一の新規乳化組成物を製造する。つまり、中間組成物と混合する油相成分及び水相成分として、原乳化組成物に含まれる油相成分及び水相成分を選択することができる。
この場合、原乳化組成物と新規乳化組成物の成分含有比率が一致するように、中間組成物と混合する油相成分及び水相成分の組成及び量を調整してもよい。
【0170】
別の実施形態では、原乳化組成物と成分が異なる新規乳化組成物を調製してもよい。この場合、原乳化組成物の成分と異なる成分を含む油相成分及び水相成分と中間組成物を混合する。
【0171】
新規乳化組成物は、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、リキッドファンデーション等の化粧料、皮膚外用剤、医薬部外品や医薬品であってもよい。
【0172】
油相成分又は水相成分として、上記<1>に列挙する任意添加成分が含まれていてもよい。
その他、当該組成物の実施形態については、上記<1>~<5>に記載した事項を適用することができる。
【0173】
<7>乳化組成物
本発明は、上記<6>で説明した製造方法により製造された乳化組成物(つまり新規乳化組成物)にも関する。本発明の新規乳化組成物の実施形態については、上記<1>~<6>に記載した事項を適用することができる。
【実施例0174】
<材料と方法>
乳化剤として、日油株式会社製のMETHOXY-PEG-23-METHACRYLATE/GLYCERYL-DIISOSTATE-METHACRYLATE COPOLYMER(以下、「両親媒性コポリマー1」という)を使用した。両親媒性コポリマー1は以下の親水性単量体と疎水性単量体を7:3の質量比で共重合させたものである。
【0175】
【0176】
【0177】
両親媒性コポリマー1は、ポリスチレン換算の重量平均分子量をGPCにより測定すると、平均分子量は61,000である。
【0178】
保湿剤として、ダイセル株式会社製の1,3-ブタンジオール(1,3-BG)、エメリーオレオケミカルズ社製のグリセリンを使用した。
粘度調整剤としては、3V Sigma社製のコルボキシビニルポリマーを用いた。
ジメチコンは信越化学工業社製、スクワランは日光ケミカルズ社製、イソドデカンはPresperse社製を使用した。
これらの試料は精製せずに実験に使用した。
また水としてイオン交換水を使用した。
【0179】
<試験例1>両親媒性コポリマー1による乳化粒子の観察
水中油型(O/W)乳化組成物を調製するために、室温で両親媒性コポリマー1の水溶液にジメチコンを加えて、両親媒性コポリマー1を1wt%、ジメチコン30wt%、水69wt%の乳化組成とし、PRIMIX ROBOMIXを用いて7000rpmで15分攪拌を行った。
【0180】
調製したエマルションの乳化粒子を凍結破壊法(FF-TEM)により透過電子顕微鏡で観察した。ライカマイクロシステムズの急速凍結試料作製装置(Leica EM CPC)を用いて、乳化組成物を液体プロパン(-170℃以下)中に突っ込み、急速凍結させた。次に、凍結した試料を日立ハイテクノロジーズ社製の凍結レプリカ作製装置(FR-7000A)を用いてガラスナイフで破壊し、試料の破壊面にレプリカである白金と炭素を成膜した。このレプリカ膜をアセトンと水で洗浄した後、観察用のTEMグリッドに貼り付け、乾燥させた。その後、日立ハイテクノロジーズ製透過電子顕微鏡(H-7650)を用いて、印加電圧100kVで試料を観察した。
【0181】
図1に両親媒性コポリマー1を用いて調製した乳化組成物のFF-TEM像を示す。画像の下側に油相、上側に水相が観察され、両者の界面に層が存在することが確認された。この層構造に着目すると、両親媒性コポリマー1からなる10~20nm程度の微粒子が観察される。また、結果は示していないが、動的光散乱測定により、両親媒性コポリマー1は50wt%までの濃度領域で粒子径10nmの凝集体を形成していることがわかった。
【0182】
<試験例2>高濃度領域における両親媒性コポリマー1の特性の観察
乳化組成物の組成が、両親媒性コポリマー1を2wt%、スクワラン20wt%、グリセリン20wt%、コルボキシビニルポリマー0.1wt%、水57.9wt%となるように、室温にて両親媒性コポリマー1とグリセリンを混合した。グリセリンを加えた後、スクワランを加え、PRIMIX ROBOMIXを用いて7000rpmの速度で15分間攪拌し、O/W乳化組成物を調製した。
【0183】
調製した乳化組成物を数滴、クレンザーで洗浄した松浪硝子社製の疎水性基板(APS01)上に滴下し、厚さ76.2mの吉光精機のドクターブレードで均一に塗布し、35℃で2時間保存して水分を蒸発させた。
乾燥した被膜を、WITecラマン顕微鏡(α300)、ラマン散乱光を分光するWITecスペクトロメーター(UHTS300)、検出にはANDORスペクトロカメラ(Newton DU970N-BV)を用いて測定した。被膜の3次元画像化は、WITec社のソフトウェア(Project FIVE)のBasis解析により行った。画像解析は、成分のラマンスペクトルのフィッティングアルゴリズムに基づき、x、y、z方向にそれぞれ500nm/pixel、500nm/pixel、750nm/pixelの解像度で行った。
【0184】
図2(a~d)に乾燥した被膜のラマン顕微鏡画像を示す。
図2(a)はスクワランを示し、
図2(b)はグリセリンを示し、
図2(c)は両親媒性コポリマー1を示す。
図2(d)はスクワランと両親媒性コポリマー1を合成したイメージング画像である。
【0185】
各成分は平面上に広がって存在し、油剤、スクワラン、両親媒性コポリマー1は層分離していることが確認された。特にスクワランは油滴として分布しておらず、両親媒性コポリマー1が高濃度である条件下で解乳化していることがわかる。
【0186】
以上の結果から、乳化組成物の構成成分を気化除去することによって、両親媒性コポリマー1を相対的に高濃度となる条件下に置くと、両親媒性コポリマー1による乳化が解除(解乳化)され、乳化組成物の油相及び水相が分離することが示された。
【0187】
<試験例3>乳化組成物からの両親媒性コポリマー1の回収
両親媒性コポリマー1を1wt%、イソドデカン65wt%、グリセリン6wt%、1,3-BG6wt%、水22wt%の組成で、試験例1と同様の手順でO/W乳化組成物を調製した。
調製した乳化組成物を60℃に設定したヤマト科学社製恒温槽(DKM600)に2週間入れ、20℃環境下での3年保存に相当する熱エネルギーを付与した。その後、BUCHI社製エバポレーター(R-300)を用いて、乳化組成物の重量が両親媒性コポリマー1、グリセリン及び1,3-BGの重量の合計と等しくなるまで濃縮した。濃縮の条件を表1に示す。
【0188】
【0189】
濃縮物は、ブルカー社製 核磁気共鳴装置(AVANCE III 600)を用いて定性分析および定量分析を行った。分析のための溶媒としてシグマアルドリッチ社製の重水素化アセトンを使用した。調製した試料の13C NMRスペクトルは、観測周波数150.91MHz、パルス幅12秒、繰り返し待ち時間20秒の条件で測定した。総走査回数は、濃縮物、両親媒性コポリマー1、グリセリンで1024回、イソドデカン、1,3-BGで512回であった。定量分析にはinverse-gated-decoupling法を用いた。
【0190】
図3(a~d)に乳化組成物中の各成分のNMRスペクトルを示す。
図3(e)は、エバポレーターを用いて乳化組成物から得られた回収物のNMRスペクトルを示す。表2に、回収物の定量分析結果を示す。
【0191】
【0192】
図3(a~d)の結果から、δ=70ppm付近に両親媒性コポリマー1の一部であるポリエチレングリコール(PEG)由来の信号が確認され、他の成分とのスペクトルの重なりがないことが確認された。この化学シフト値を用いて、回収物中の両親媒性コポリマー1の定量分析を行った(グリセリンは=73.4ppm、1,3-BGは42.1ppm)。定量分析の結果、回収物には油分は検出されず、両親媒性コポリマー1と水溶性成分(グリセリン、1、3-BG)の混合物が確認された。すなわち,乳化組成物から両親媒性コポリマー1と水溶性成分を油分の混入なく回収することができた。
【0193】
<試験例4>両親媒性コポリマー1のリサイクル特性
試験例3で得られた濃縮液に室温で22wt%の水を加えて両親媒性コポリマー1の溶液を調製した後、65wt%のイソドデカンを加え、PRIMIX ROBOMIXを用いて7000rpmの速度で15分間撹拌し、O/W乳化組成物(リサイクル乳化組成物)を調製した。同時に、回収実験に使用しなかった新たな原料を用いて、試験例3の組成の乳化組成物(バージン乳化組成物)を調製した。
【0194】
リサイクル乳化組成物とバージン乳化組成物を20℃で1日、60℃で2週間置いた後、オリンパス光学顕微鏡(BX63)を用いて異なる視野で400倍の画像を3枚撮影し、乳化粒子径の経時安定性を評価した。1画像あたり100個の乳化粒子をランダムに選択し、オリンパス社製画像処理ソフト(cellSens)を用いて乳化粒子径分布の箱ひげ図を作成し、20℃で1日後、60℃で2週間後における乳化粒子径の経時変化を評価した。
【0195】
その結果を
図4に示す。
図4に示すとおり、リサイクル乳化組成物とバージン乳化組成物の乳化粒子径に有意差はなかった。また、目視観察により乳化不良(油分の分離)がないことを確認した。
【0196】
また、60℃で2週間置いたリサイクル乳化組成物(R)とバージン乳化組成物(V)について、トライアングルテストによる官能評価を行った。評価者は社内の専門パネラー10名であり、パネラーに提示したサンプルは(R、R、V)の3種の組み合わせと、(V、V、R)の3種の組み合わせであった。トライアングルテストの結果を表3に示す。なお、表3(a)は試験結果、表3(b)はトライアングル試験の有意差判定のための参考表である。
【0197】
【0198】
表3に示すとおり、両者に有意差はなかった。このことから、両親媒性コポリマー1の品質をリサイクル前後で維持できることがわかった。
【0199】
<試験例5>両親媒性コポリマー1の濃度依存的な構造変化
両親媒性コポリマー1を1wt%、5wt%、10wt%、20wt%、30wt%、40wt%、50wt%、60wt%、70wt%、80wt%、90wt%の濃度で含む水溶液を調製した。当該水溶液をX線小角散乱法(SAXS)によって分析し、モデルフィッティングを行った。SAXSの結果を
図5に示す。
モデルフィッティングの結果、両親媒性コポリマー1は、50%以上の濃度において非連続ミセルキュービック構造を形成することがわかった。
試験例1の結果も併せると、両親媒性コポリマー1は、水溶液中の濃度が低い場合(50%以下)には、内側の疎水性部分と外側の親水性部分を持つコアシェル型の微粒子を形成し、濃度が高い場合(50%以上)には非連続ミセルキュービック構造を形成することがわかった。
【0200】
<まとめ>
両親媒性コポリマー1を乳化剤として適用した乳化組成物では、両親媒性コポリマー1の低濃度領域では乳化状態が観察され、両親媒性コポリマー1の高濃度領域では両親媒性コポリマー1とオイルが2層に分離するという興味深い結果が得られた。この理由を両親媒性コポリマー1の構造的な特性から考察した。
【0201】
両親媒性コポリマー1の疎水性部分はイソステアリン酸、親水性部分はPEG、主鎖はメタクリル酸である。両親媒性コポリマー1は水溶液中の濃度が低い場合(50%以下)には、内側の疎水性部分と外側の親水性部分を持つコアシェル型の微粒子を形成し、濃度が高い場合(50%以上)には、非連続ミセルキュービック構造を形成する。
【0202】
したがって、両親媒性コポリマー1の濃度の低い乳化組成物では両親媒性コポリマー1が微粒子となるため、油滴と微粒子の間でヘテロ凝集が起こり、油水界面での両親媒性コポリマー1微粒子の吸着により乳化が実現されると考えられる。
【0203】
一方、乳化組成物の乾燥により両親媒性コポリマー1の濃度が上昇すると両親媒性コポリマー1は微粒子から非連続ミセルキュービック構造に相転移し、ヘテロ凝集による凝集力がミセル外部の親水部と油滴界面の間に生じる反発力より小さくなり両親媒性コポリマー1が油滴界面に吸着できなくなる。これが解乳化の原因であると考えられる。解乳化後は油相と水相に分離するが、両親媒性コポリマー1は水溶性成分であるため、水相に存在する。
【0204】
そのため、蒸発による濃縮によって、油分を含まない両親媒性コポリマー1の濃縮組成物を得ることができた。また、不揮発性の油であるスクワランを用いた場合でも、蒸発後の遠心分離により、両親媒性コポリマー1を含む油相と水相を分離できることが目視で確認できた。
したがって、両親媒性コポリマー1を用いた乳化組成物の分離メカニズムは、どのような油でも同じように適用できると考えられる。
【0205】
また、蒸発による濃縮による回収物を用いて、再度乳化組成物を調製することができた。これは、回収物に水を加えることで回収物中の両親媒性コポリマー1が希釈され、非連続ミセルキュービック構造から微粒子への相転移が起こり、油滴と微粒子間のヘテロ凝集による凝集力が再び発生したためであると考えられる。
【0206】
このように、両親媒性コポリマー1を用いた乳化組成物の分離・再乳化は、両親媒性コポリマー1が作るリオトロピック液晶を利用しており、両親媒性コポリマー1が自身の分子構造を維持する限り、分離・再乳化は繰り返し可能である。これを裏付けるように、リサイクル乳化組成物はバージン乳化組成物と比較して、感触や乳化粒子径に大きな変化は見られなかった。すなわち、両親媒性コポリマー1の乳化剤としての特性は、リサイクルの前後で変化していないと考えられる。
【0207】
以上のことから、以下の条件を満たす乳化組成物に対して、気化除去工程を適用すれば、解乳化によって乳化剤の分離回収が容易となるものと結論付けられる。
(a)両親媒性コポリマーからなる微粒子がヘテロ凝集によって分散滴の表面に吸着してなる乳化組成物である。
(b)前記両親媒性コポリマーが、溶液中で相対的に低濃度の領域においては前記微粒子を形成し、相対的に高濃度の領域においては前記微粒子が複数集合してなる高次構造(例えば非連続ミセルキュービック構造)を形成するものである。
【0208】
なお、上記(a)及び(b)の条件を満たさない乳化組成物であっても、蒸発又は昇華によって乳化組成物の構成成分を除去し、残余として乳化剤の濃縮組成物を回収可能であることは自明であり、当該方法を乳化剤のリサイクル技術に応用できる。