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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018083
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121173
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 章弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 拓馬
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FC31
5E021HA03
5E021HA05
5E021HB05
5E021HB07
(57)【要約】
【課題】嵌合方向と平行な方向における位置ずれを吸収する。
【解決手段】コネクタ装置は、第1ベース部材11に固定された第1ハウジング12と、第2ベース部材21に対して相対変位可能な第2ハウジング50と、第2ベース部材21に取り付けられ、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間で嵌合方向と直交する方向へ移動可能な可動部材30とを備える。可動部材30には、嵌合方向に対して斜め方向に延びる第1ガイド溝42と第2ガイド溝45が形成されている。第1ベース部材11と第2ベース部材21が接近する過程では、第1ガイド溝42と第2ガイド溝45が、可動部材30を嵌合開始位置から嵌合完了位置へ移動させながら、両ハウジング12,50を嵌合させるようにガイドする。可動部材30が嵌合完了位置に到達した状態では、両ハウジング12,50の嵌合が完了し、嵌合完了状態の両ハウジング12,50が一体となって第2ベース部材21に対して嵌合方向と平行な方向へ相対変位することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベース部材と、
前記第1ベース部材に固定された第1ハウジングと、
前記第1ベース部材に対して相対的に接近可能に設けた第2ベース部材と、
前記第2ベース部材に対して相対変位可能であり、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が接近するのに伴って前記第1ハウジングと嵌合することが可能な第2ハウジングと、
前記第2ベース部材に取り付けられ、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間で前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合方向と直交する方向へ移動可能な可動部材と、を備え、
前記可動部材には、前記嵌合方向に対して斜め方向に延びるガイド部が形成され、
前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が接近する過程では、前記ガイド部が、前記可動部材を前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置へ移動させながら、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを互いに嵌合させるようにガイドし、
前記可動部材が前記嵌合完了位置に到達した状態では、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合が完了し、嵌合完了状態の前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが一体となって前記第2ベース部材に対して前記嵌合方向と平行な方向へ相対変位することが可能となるコネクタ装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合過程で前記第1ハウジングの第1カムピンを摺接させる第1ガイド溝を含み、
前記可動部材には、前記第1ガイド溝の終端部に連通する第1逃がし溝が形成され、
前記可動部材が前記嵌合完了位置に到達したときに、前記第1カムピンは、前記第1逃がし溝に進入することによって、前記可動部材に対し前記嵌合方向と平行な方向へ相対移動することが可能になる請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合過程で前記第2ハウジングの第2カムピンを摺接させる第2ガイド溝を含み、
前記可動部材には、前記第2ガイド溝の終端部に連通する第2逃がし溝が形成され、
前記可動部材が前記嵌合完了位置に到達したときに、前記第2カムピンは、前記第2逃がし溝に進入することによって、前記可動部材に対し前記嵌合方向と平行な方向へ相対移動することが可能になる請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記第1ガイド溝は、前記嵌合方向と直交する方向に間隔を空けて一対設けられており、
前記第1カムピンは、前記嵌合方向と直交する方向において前記一対の第1ガイド溝の間隔と同じ間隔を空けて配置されている請求項2又は請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記第2ガイド溝は、前記嵌合方向と直交する方向に間隔を空けて一対設けられており、
前記第2カムピンは、前記嵌合方向と直交する方向において前記一対の第2ガイド溝の間隔と同じ間隔を空けて配置されている請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記第1逃がし溝の終端部と前記第2ガイド溝の始端部とが連通している請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記可動部材には、前記第2カムピンを前記第2ガイド溝の始端部に保持する保持部が設けられている請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項8】
前記保持部は、前記第2ハウジングと前記可動部材のうち一方に形成され、前記第2ハウジングと前記可動部材のうち他方に係止することによって保持機能を発揮する弾性保持片を含んでおり、
前記第1ハウジングには、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合を開始したときに、前記弾性保持片による係止を解除する解除部が設けられている請求項7に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータのケースにアウタハウジングとインナハウジングを取り付けた待ち受けコネクタが開示されている。待ち受けコネクタは、インバータのケースに固定した相手側コネクタと嵌合される。待ち受けコネクタのインナハウジングには、バネ部材が取り付けられている。相手側コネクタとインナハウジングとの間の位置ずれは、バネ部材を弾性変形させることによって吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-009092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の待ち受けコネクタは、相手側コネクタとインナハウジングとの嵌合方向と直交する二次元方向における位置ずれを吸収することができる。しかし、相手側コネクタとインナハウジングの嵌合方向と平行な方向における位置ずれを吸収することはできない。
【0005】
本開示のコネクタ装置は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、嵌合方向と平行な方向における位置ずれを吸収できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタ装置は、
第1ベース部材と、
前記第1ベース部材に固定された第1ハウジングと、
前記第1ベース部材に対して相対的に接近可能に設けた第2ベース部材と、
前記第2ベース部材に対して相対変位可能であり、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が接近するのに伴って前記第1ハウジングと嵌合することが可能な第2ハウジングと、
前記第2ベース部材に取り付けられ、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間で前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合方向と直交する方向へ移動可能な可動部材と、を備え、
前記可動部材には、前記嵌合方向に対して斜め方向に延びるガイド部が形成され、
前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が接近する過程では、前記ガイド部が、前記可動部材を前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置へ移動させながら、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを互いに嵌合させるようにガイドし、
前記可動部材が前記嵌合完了位置に到達した状態では、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合が完了し、嵌合完了状態の前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが一体となって前記第2ベース部材に対して前記嵌合方向と平行な方向へ相対変位することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、嵌合方向と平行な方向における位置ずれを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1コネクタと第2コネクタの嵌合前の状態をあらわす斜視図である。
図2図2は、第2ベース部材の斜視図である。
図3図3は、可動部材の斜視図である。
図4図4は、第2ハウジングを斜め上前方から視た斜視図である。
図5図5は、第2ハウジングを斜め上後方から視た斜視図である。
図6図6は、第1コネクタと第2コネクタの嵌合前の状態をあらわす側面図である。
図7図7は、図6の部分拡大側面図である。
図8図8は、第1ハウジングと第2ハウジングが嵌合を開始した状態をあらわす側面図である。
図9図9は、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が完了した状態をあらわす側面図である。
図10図10は、図9の部分拡大側面図である。
図11図11は、正規嵌合状態の第1ハウジングと第2ハウジングが移動して第1ベース部材と第2ベース部材の嵌合方向の位置ずれが吸収された状態をあらわす側面図である。
図12図12は、図11の部分拡大側面図である。
図13図13は、図6のX-X線断面図である。
図14図14は、図9のY-Y線断面図である。
図15図15は、図1及び図6の状態における第2コネクタの正面図である。
図16図16は、図15の状態を斜め上後方から視た部分拡大斜視図である。
図17図17は、図8の状態における第2コネクタの正面図である
図18図18は、第1ハウジングの連結突起と第2ハウジングの連結溝の係止状態をあらわす部分拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタ装置は、
(1)第1ベース部材と、前記第1ベース部材に固定された第1ハウジングと、前記第1ベース部材に対して相対的に接近可能に設けた第2ベース部材と、前記第2ベース部材に対して相対変位可能であり、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が接近するのに伴って前記第1ハウジングと嵌合することが可能な第2ハウジングと、前記第2ベース部材に取り付けられ、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間で前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合方向と直交する方向へ移動可能な可動部材と、を備えている。前記可動部材には、前記嵌合方向に対して斜め方向に延びるガイド部が形成されている。前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が接近する過程では、前記ガイド部が、前記可動部材を前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置へ移動させながら、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを互いに嵌合させるようにガイドする。前記可動部材が前記嵌合完了位置に到達した状態では、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合が完了し、嵌合完了状態の前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが一体となって前記第2ベース部材に対して前記嵌合方向と平行な方向へ相対変位することが可能となる。
【0010】
本開示によれば、第1ベース部材と第2ベース部材を接近させる過程では、第1ハウジングと第2ハウジングがガイド部によって嵌合され、この間、可動部材が嵌合開始位置から嵌合完了位置へ移動する。可動部材が嵌合完了位置に到達した状態では、第1ハウジングと第2ハウジングが、嵌合完了状態を保ったまま、第2ベース部材に対して嵌合方向と平行な方向へ相対変位することができる。第2ベース部材に対する両ハウジングの相対変位に伴って、第1ベース部材と第2ベース部材が、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合方向と平行な方向へ相対変位する。これにより、両ハウジングの嵌合方向と平行な方向において、第1ベース部材と第2ベース部材の位置ずれを吸収することができる。
【0011】
(2)前記ガイド部は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合過程で前記第1ハウジングの第1カムピンを摺接させる第1ガイド溝を含み、前記可動部材には、前記第1ガイド溝の終端部に連通する第1逃がし溝が形成され、前記可動部材が前記嵌合完了位置に到達したときに、前記第1カムピンは、前記第1逃がし溝に進入することによって、前記可動部材に対し前記嵌合方向と平行な方向へ相対移動することが可能になることが好ましい。この構成によれば、第1ベース部材と第2ベース部材を接近させる過程において、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が完了すると、引き続いて両ハウジングが第2ベース部材に対して相対変位する。これにより、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合と、第1ベース部材と第2ベース部材の位置ずれ吸収を、ワンアクションで行うことができる。
【0012】
(3)(2)において、前記ガイド部は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合過程で前記第2ハウジングの第2カムピンを摺接させる第2ガイド溝を含み、前記可動部材には、前記第2ガイド溝の終端部に連通する第2逃がし溝が形成され、前記可動部材が前記嵌合完了位置に到達したときに、前記第2カムピンは、前記第2逃がし溝に進入することによって、前記可動部材に対し前記嵌合方向と平行な方向へ相対移動することが可能になることが好ましい。この構成によれば、ガイド部は、嵌合方向に対して斜め方向に延びているので、ガイド部に含まれる第2ガイド溝も、嵌合方向に対して斜め方向に延びている。第2ガイド溝を設けずに、嵌合過程で第2ハウジングが第2ベース部材に対して嵌合方向と直交する方向へ相対変位する場合に比べると、両ハウジングの嵌合過程における嵌合方向のストロークが長くなる。これにより、両ハウジング間の嵌合抵抗が急激に上昇することを回避できるので、作業性が良好である。
【0013】
(4)(2)又は(3)において、前記第1ガイド溝は、前記嵌合方向と直交する方向に間隔を空けて一対設けられており、前記第1カムピンは、前記嵌合方向と直交する方向において前記一対の第1ガイド溝の間隔と同じ間隔を空けて配置されていることが好ましい。この構成によれば、一対の第1カムピンを一対の第1ガイド溝に摺接させることによって、可動部材に対する第1ハウジングの傾きを防止することができる。
【0014】
(5)(3)において、前記第2ガイド溝は、前記嵌合方向と直交する方向に間隔を空けて一対設けられており、前記第2カムピンは、前記嵌合方向と直交する方向において前記一対の第2ガイド溝の間隔と同じ間隔を空けて配置されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、一対の第2カムピンを一対の第2ガイド溝に摺接させることによって、可動部材に対する第2ハウジングの傾きを防止することができる。
【0016】
(6)(3)において、前記第1逃がし溝の終端部と前記第2ガイド溝の始端部とが連通していることが好ましい。この構成によれば、第2カムピンを第2ガイド溝に組み付けるときに、第1ガイド溝と第1逃がし溝とによって第2カムピンを第2ガイド溝へ誘導することができる。
【0017】
(7)(3)において、前記可動部材には、前記第2カムピンを前記第2ガイド溝の始端部に保持する保持部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、第2カムピンを第2ガイド溝の始端部に保持しておくことによって、第2ハウジングが可動部材に対して位置決めされるので、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合動作を円滑に開始させることができる。
【0018】
(8)(7)において、前記保持部は、前記第2ハウジングと前記可動部材のうち一方に形成され、前記第2ハウジングと前記可動部材のうち他方に係止することによって保持機能を発揮する弾性保持片を含んでおり、前記第1ハウジングには、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合を開始したときに、前記弾性保持片による係止を解除する解除部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合を開始すると、弾性保持片による保持が解除部によって解除され、第2ハウジングが可動部材に対して相対移動することが可能になる。弾性保持片の保持を解除するだけのための作業が不要なので、作業性が良好である。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のコネクタ装置を、図1図18を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、図1~14,16,17におけるF方向を前方と定義する。左右の方向については、図1~5,13~16におけるR方向を右方と定義する。上下の方向については、図1~12,15~17におけるU方向を上方と定義する。
【0020】
<コネクタ装置の全体構成>
本実施例1のコネクタ装置は、図1に示すように、第1コネクタ10と、第1コネクタ10の下方に配置された第2コネクタ20とを有する。第1コネクタ10と第2コネクタ20は互いに嵌合が可能である。第1コネクタ10は、上下方向へ平行移動し得るようになっている。第2コネクタ20は、待ち受け状態で設けられている。第1コネクタ10と第2コネクタ20の嵌合方向は、上下方向である。第1コネクタ10は、第1ベース部材11と、第1ベース部材11の下面に固定された第1ハウジング12とを備えている。第1コネクタ10における第2コネクタ20との対向面は、下方に面している。
【0021】
第2コネクタ20は、図1に示すように、第2ベース部材21と、可動部材30と、第2ハウジング50とを組み付けて構成されている。第2ベース部材21は固定した状態で設けられている。可動部材30は、第2ベース部材21に対して二次元方向(前後方向及び左右方向)のみへの相対変位を可能に取り付けられている。第2ハウジング50は、可動部材30に対して二次元方向(前後方向及び上下方向)のみへの相対変位を可能に取り付けられている。第2ハウジング50は、第2ベース部材21に対して三次元方向(上下方向、前後方向及び左右方向)への相対変位を可能に設けられている。第2ハウジング50における第1コネクタ10との対向面は、上方に面している。
【0022】
第1ベース部材11と第2ベース部材21は、上下方向に接近させることによって組み付けられ、図示しない嵌合構造や締結構造等によって組付け状態に固定されるようになっている。第1ベース部材11と第2ベース部材21が接近する過程で、第1ハウジング12と第2ハウジング50が嵌合される。第1ハウジング12と第2ハウジング50の嵌合方向(以下、単に「嵌合方向」という)は、第1ベース部材11と第2ベース部材21の組付け方向と平行な方向である。組付け状態に固定された第1ベース部材11と第2ベース部材21の位置関係は、組付け公差の範囲内でばらつきがある。このばらつきの方向は三次元方向である。上記のように第2ハウジング50が第2ベース部材21に対して三次元方向へ相対変位可能に設けられているので、第1ベース部材11と第2ベース部材21の位置ずれを吸収しながら、第1ハウジング12と第2ハウジング50を嵌合させことができる。以下、第1コネクタ10と第2コネクタ20の詳細構造を説明する。
【0023】
<第1コネクタ10の詳細構造>
図1に示す第1ベース部材11は、板厚方向を上下方向に向けた平板形状をなすが、第1ベース部材11は、第2ベース部材21に組み付けるための嵌合部(図示省略)や組付部(図示省略)を有している。第1ハウジング12は、直方形状の端子保持部13と、端子保持部13の下面外周縁から下方へ角筒状に突出したフード部14とを有する。端子保持部13には、雄形をなす複数の第1端子金具15が保持されている。第1端子金具15のタブ(下端部)は、端子保持部13から下向きに突出し、フード部14によって包囲されている。
【0024】
第1ハウジング12には、ガイドピン16が形成されている。ガイドピン16は、端子保持部13の下面から、フード部14の下端よりも下方の位置まで突出している。ガイドピン16の下端部(先端部)には、先細り形状の第1テーパ面16Sが形成されている。フード部14の左右両外側面には、夫々、円柱形の突起状をなす一対の第1カムピン17が形成されている。各外側面において、一対の第1カムピン17は、前後方向に間隔を空けて配置され、且つ上下方向に関しては同じ高さに配置されている。フード部14の外周面における下端部には、左右一対の解除部18が形成されている。一対の解除部18は、左右両外側面と前面とが繋がる出隅部に配置されている。フード部14の外周面における前後両面には、夫々、連結突起19が形成されている。連結突起19は、解除部18よりも上方の位置に配置されている。
【0025】
<第2コネクタ20の詳細構造>
第2ベース部材21は箱形をなす部材である。図2に示すように、第2ベース部材21の内部には、第2ベース部材21の上面と後面とに開放された作動空間22が形成されている。第2ベース部材21の水平な上壁部のうち、作動空間22の開口縁部を構成する部位は、前後方向に延びる左右一対のガイドレール23として機能する。両ガイドレール23には、夫々、嵌合開始位置用凹部24と、嵌合開始位置用凹部24よりも前方に配置された嵌合完了位置用凹部25とが形成されている。
【0026】
図3に示すように、可動部材30は、後壁部31と、左右一対の側壁部32とを有する単一部品である。可動部材30の内部には、可動部材30の上下両面及び前面に開放された嵌合空間33が形成されている。嵌合空間33内では、第1ハウジング12と第2ハウジング50の嵌合が行われる。左右両側壁部32の外側面における下端部には、夫々、前後方向に延びる上下一対のリブ34が、上下方向に間隔を空けて形成されている。一対のリブ34の間には、前後方向に延びる溝部35が形成されている。
【0027】
図3,13,14に示すように、左右両側壁部32のうち溝部35に臨む領域には、夫々、後方へ片持ち状に延出した弾性係止片36が形成されている。弾性係止片36は、左右方向へ弾性的に変位することが可能である。弾性係止片36の外側面における後端部には、係止突起37が形成されている。図3に示すように、可動部材30の前端部には、左右一対の弾性保持片38が形成されている。弾性保持片38は、両側壁部32の前端縁における下端部から上方へ片持ち状に延出した形状をなす。弾性保持片38は、左右方向へ傾くように弾性的に変位することが可能である。左右両弾性保持片38の上端部には、夫々、左右方向内側へ突出した突起部39が形成されている。
【0028】
図3,8に示すように、可動部材30の左右両側壁部32には、夫々、前後一対の進入溝41と、前後一対の第1ガイド溝42と、前後一対の第1逃がし溝43と、前後一対の連通溝44と、前後一対の第2ガイド溝45と、前後一対の第2逃がし溝46とを有する。第1ガイド溝42と第2ガイド溝45は、第1ハウジング12と第2ハウジング50が下方へ変位する過程で両ハウジング12,50を嵌合させる機能を有する。
【0029】
一対の進入溝41は、前後方向に間隔を空け、互いに平行をなして配置されている。進入溝41は、両ハウジング12,50の嵌合方向と平行な上下方向に延びていて、側壁部32の上端面に開口している。一対の第1ガイド溝42は、前後方向に間隔を空け、互いに平行をなして配置されている。第1ガイド溝42は、進入溝41の終端部(下端部)から斜め下方向へ直線状に延びている。第1ガイド溝42の始端部(上端部)は、進入溝41の終端部と同一部位である。一対の第1ガイド溝42は、上下方向(両ハウジング12,50の嵌合方向と平行な方向)及び前後方向(両ハウジング12,50の嵌合方向と直交する方向)の両方向に対して斜めをなす。
【0030】
一対の第1逃がし溝43は、前後方向に間隔を空け、互いに平行をなして配置されている。第1逃がし溝43は、第1ガイド溝42の終端部(下後端部)から下方へ延びている。第1逃がし溝43の始端部(上端部)は、第1ガイド溝42の終端部と同一部位である。第1逃がし溝43の上下方向の寸法は、第1ガイド溝42の上下方向の寸法よりも小さい。一対の進入溝41の前後方向の間隔、一対の第1ガイド溝42の前後方向の間隔、及び一対の第1逃がし溝43の前後方向の間隔は、いずれも、一対の第1カムピン17の間隔と同じ寸法である。
【0031】
一対の連通溝44は、前後方向に間隔を空け、互いに平行をなして配置されている。連通溝44は、第1逃がし溝43の終端部(下端部)から後方(両ハウジング12,50の嵌合方向と直交する方向)へ直線状に延びている。連通溝44の始端部(前端部)は、第1逃がし溝43の終端部と同一部位である。図7に示すように、後側の連通溝44には、保持突起47が形成されている。保持突起47は、連通溝44を構成する上下両面のうち上側の面から下向きに突出している。
【0032】
一対の第2ガイド溝45は、前後方向に間隔を空け、互いに平行をなして配置されている。第2ガイド溝45は、連通溝44の終端部(後端部)から斜め下後方へ直線状に延びている。第2ガイド溝45の始端部(上前端部)は、連通溝44の終端部と同一部位である。一対の第2ガイド溝45は、上下方向及び前後方向の両方向に対して斜めをなす。第2ガイド溝45の前後方向の長さは、第1ガイド溝42の前後方向の長さと同じ寸法である。第2ガイド溝45の上下方向の寸法は、第1ガイド溝42の上下方向の寸法よりも小さい。図8に示すように、可動部材30を側方から視た側面視において、水平方向(前後方向)を基準とする第2ガイド溝45の傾斜角度βは、第1ガイド溝42の傾斜角度αよりも小さい。
【0033】
一対の第2逃がし溝46は、前後方向に間隔を空け、互いに平行をなして配置されている。第2逃がし溝46は、第2ガイド溝45の終端部(下後端部)から下方へ延びている。第2逃がし溝46の始端部(上端部)は、第2ガイド溝45の終端部と同一部位である。第2逃がし溝46の上下方向(両ハウジング12,50の嵌合方向と平行な方向)の寸法は、第2ガイド溝45の上下方向の寸法よりも小さく、第1逃がし溝43の上下方向の寸法と同じ寸法である。第1逃がし溝43と第2逃がし溝46の上下方向の寸法は、第1ベース部材11と第2ベース部材21の想定される上下方向の位置ずれ量よりも大きい寸法に設定されている。
【0034】
第2ハウジング50は、複数の部品を組み付けた構成されたものであり、図4,5に示すように、ハウジング本体51と前板部54と後板部55とを有する。ハウジング本体51の内部には、複数の雌形の第2端子金具(図示省略)が収容されている。第2端子金具に接続された電線(図示省略)は、ハウジング本体51の下方へ導出されている。ハウジング本体51における第1ハウジング12との対向面には、上下方向に延びるガイド孔52が形成されている。ガイド孔52の開口縁部には、上方に向かって拡がる第2テーパ面52Sが形成されている。
【0035】
ハウジング本体51の左右両外側面には、夫々、円柱形の突起状をなす一対の第2カムピン53が形成されている。各外側面において、一対の第2カムピン53は、前後方向に間隔を空けて配置され、且つ上下方向に関しては同じ高さに配置されている。一対の第2カムピン53の間隔は、一対の第1カムピン17の間隔、一対の第2ガイド溝45の前後方向の間隔、及び一対の第2逃がし溝46の前後方向の間隔と同じ寸法である。
【0036】
前板部54は、板厚方向を前後方向に向けた平板状をなす。前板部54は、ハウジング本体51の前面における下端部から、上方へ立ち上がるように形成されている。後板部55は、板厚方向を前後方向に向けた平板状をなす。後板部55は、ハウジング本体51の後面における下端部から、上方へ立ち上がるように形成されている。前板部54の後面にには、前板部54の全幅に亘って左右方向に延びる連結溝56が形成されている。後板部55の後面にも、前板部54と同様、後板部55の全幅に亘って左右方向に延びる連結溝56が形成されている。前板部54に形成した連結溝56の左右両端部には、図16に示すように、一対の保持凹部57が形成されている。前板部54の後面における上端部には、前板部54の上端縁から連結溝56に向かって切り欠いた形態のガイド凹部58が形成されている。後板部55の後面における上端部にも、前板部54と同様、後板部55の上端縁から連結溝56に向かって切り欠いた形態のガイド凹部58が形成されている。
【0037】
次に、コネクタ装置の組付け工程及び嵌合工程を説明する。第1コネクタ10は、第2コネクタ20の上方で待機させておく。第2コネクタ20においては、第2ハウジング50に第2端子金具を取り付け、第2ハウジング50を可動部材30に組み付け、可動部材30を第2ベース部材21に組み付ける。第2ハウジング50を可動部材30に組み付ける際には、第2ハウジング50を可動部材30の上方に配置し、第2ハウジング50の下方へ導出されている電線を、可動部材30の嵌合空間33内に貫通させる。
【0038】
この状態から、第2ハウジング50を下方させて、4つの第2カムピン53を4つの進入溝41に進入させる。その後、第2ハウジング50を嵌合空間33内に進入させながら、4つの第2カムピン53を、第1ガイド溝42と第1逃がし溝43と連通溝44とに順に摺接させ、図6,7に示すように、第2ガイド溝45の始端部まで移動させる。この間、第2ハウジング50は、可動部材30に対して斜め下後方へ相対的に変位する。
【0039】
4つの第2カムピン53が第2ガイド溝45の始端部に到達した状態では、図16に示すように、前板部54の連結溝56の保持凹部57が、弾性保持片38の突起部39に嵌合する。この嵌合によって、第2ハウジング50が、可動部材30に対して後方への相対変位と下方への相対変位を規制される。つまり、第2カムピン53は、第2ガイド溝45の終端側へ移動することができない。第2カムピン53が第2ガイド溝45の始端部に到達した状態では、図7に示すように、後側の第2カムピン53が保持突起47に係止する。この係止によって、第2カムピン53が第1逃がし溝43側(第2ガイド溝45の終端部とは反対側)へ移動することができない。以上により、第2ハウジング50は、第2ガイド溝45の始端部に位置した状態で、可動部材30に対する前後方向及び上下方向への相対変位を規制された状態に保持される。以上により、可動部材30に対する第2ハウジング50の組付けが完了する。
【0040】
第2ハウジング50を可動部材30に組み付けた後、可動部材30を、第2ベース部材21に対して後方から組み付ける。このとき、溝部35をガイドレール23に嵌合して摺接させながら、可動部材30の下端部を作動空間22内に進入させる。図13に示すように、弾性係止片36の係止突起37が嵌合開始位置用凹部24に嵌合したところで、第2ベース部材21に対する可動部材30の組付けが完了する。この状態では、弾性係止片36と嵌合開始位置用凹部24との係止によって、可動部材30が嵌合開始位置に保持される。
【0041】
可動部材30が嵌合開始位置に保持された状態では、図13に示すように、可動部材30の側壁部32の外側面とガイドレール23の内面との間に、第1ベース部材11と第2ベース部材21との間の左右方向の位置ずれを吸収するために必要なクリアランスが確保されている。同じく可動部材30が嵌合開始位置に保持された状態では、係止突起37と嵌合開始位置用凹部24との間には、第1ベース部材11と第2ベース部材21との間の二次元方向(前後方向及び左右方向)の位置ずれを吸収するために必要なクリアランスが確保されている。但し、第2ベース部材21の溝部35の内面(上下で対をなすリブ34)と、ガイドレール23の上下両面との間には、第1ベース部材11と第2ベース部材21との間の上下方向の位置ずれを吸収するためのクリアランスは確保されていない。
【0042】
以上により、第2コネクタ20の組付けが完了すると同時に、第2コネクタ20において第1コネクタ10との嵌合を開始するための準備が完了する。尚、第2ベース部材21に対する可動部材30の組付けは、可動部材30に対する第2ハウジング50の組付けよりも先に行うことができる。
【0043】
この後、第1ベース部材11を下降させて第2ベース部材21に接近させ、ガイドピン16の下端部をガイド孔52に嵌入させる。このとき、第1ハウジング12と第2ハウジング50が水平方向(前後方向又は左右方向)に位置ずれしていると、第1テーパ面16Sと第2テーパ面52Sとが摺接することによって、第2ハウジング50と可動部材30が前後方向又は左右方向へ変位し、両ハウジング12,50の位置ずれが吸収される。可動部材30と第2ベース部材21との間には、水平方向のクリアランスが確保されているので、第2ベース部材21は移動しない。ガイドピン16をガイド孔52に嵌入させながら第1コネクタ10を下降させると、第1ハウジング12の下端部が第2ハウジング50の上端部に外嵌され、図8に示すように、4つの第1カムピン17が進入溝41に進入して第1ガイド溝42の始端部に到達する。
【0044】
第1カムピン17が第1ガイド溝42の始端部に到達した状態では、第1ハウジング12の解除部18が、弾性保持片38の上端部に当接し、図17に示すように、弾性保持片38を左右方向外方へ倒すように弾性変形させる。弾性保持片38が弾性変形すると、突起部39が第2ハウジング50の保持凹部57から外れるので、第2ハウジング50は、可動部材30に対して斜め下後方へ相対的に移動することが可能となる。
【0045】
この状態から、更に第1コネクタ10を下降させると、第1カムピン17が、第1ガイド溝42内を下方へ移動するとともに、第1ガイド溝42の傾斜面を押圧するので、可動部材30は、ガイドレール23に案内されて前方へ押し動かされる。可動部材30が前方へ移動すると、第2ガイド溝45の傾斜面が第2カムピン53を斜め下前方へ押圧する。第2ハウジング50は第1ハウジング12との嵌合によって前後方向への移動を規制されているので、第2ハウジング50は、可動部材30の前方への移動に伴って、下方へ押し動かされる。つまり、第1ハウジング12と第2ハウジング50は、前後方向に関しては相対変位せずに、下方へ移動する。
【0046】
ここで、水平方向(可動部材30の移動方向)に対する第1ガイド溝42の傾斜角度αは第2ガイド溝45の傾斜角度βよりも大きい。したがって、可動部材30が一定距離だけ前方へ移動したときに、第1ハウジング12が下方(第2ハウジング50及び可動部材30に接近する方向)へ移動する距離は、第2ハウジング50が下方(可動部材30に接近する方向)へ移動する距離よりも大きい。これにより、第1コネクタ10が第2ベース部材21に接近する過程では、第1ハウジング12と第2ハウジング50が下方へ移動しながら、第1ハウジング12が第2ハウジング50に接近し、両ハウジング12,50の嵌合動作が進む。
【0047】
両ハウジング12,50が正規嵌合状態に至ると、図9,10に示すように、第1カムピン17が第1ガイド溝42の終端部(第1逃がし溝43の始端部)に到達し、第2カムピン53が第2ガイド溝45の終端部(第2逃がし溝46の始端部)に到達する。両ハウジング12,50が正規嵌合状態に至ると、可動部材30は、嵌合完了位置に到達する。図14に示すように、弾性係止片36の係止突起37と嵌合完了位置用凹部25との係止によって、可動部材30が嵌合完了位置に保持される。
【0048】
両ハウジング12,50が正規嵌合した状態では、第1ベース部材11は、第2ベース部材21に対する正規の組付位置に到達していないので、第1コネクタ10を更に下降させる。この間、第1カムピン17が第1逃がし溝43内を下降するとともに、第2カムピン53が第2逃がし溝46内を下降することによって、第1ベース部材11と第2ベース部材21の上下方向(両ハウジング12,50の嵌合方向と平行な方向)への位置ずれが吸収される。第1ベース部材11が第2ベース部材21に対する正規の組付位置に到達したところで、第1コネクタ10の下降動作が完了する(図11,12参照)。
【0049】
本実施例1とは異なり、第1ベース部材11と第2ベース部材21の上下方向(嵌合方向と平行な方向)の位置ずれを、第1ハウジング12と第2ハウジング50の嵌合の途中で吸収しようとする場合には、両ハウジング12,50の嵌合が完了した時点で両ハウジング12,50の嵌合深さ(両ハウジング12,50の嵌合方向の位置関係)にばらつきが生じる。これに対し、本実施例1のコネクタ装置では、両ハウジング12,50の嵌合が完了した後に、正規嵌合状態の両ハウジング12,50を一体的に移動させることによって、第1ベース部材11と第2ベース部材21の位置ずれを吸収する。したがって、両ハウジング12,50の嵌合深さが安定する。
【0050】
両ハウジング12,50が正規嵌合した状態では、第1ハウジング12の前後両連結突起19と第2ハウジング50の前後両連結溝56とが嵌合する。正規嵌合状態の両ハウジング12,50を離脱する際には、第1コネクタ10を上方へ移動させる。移動の初期は、連結突起19と連結溝56との係止によって、第2ハウジング50が第1ハウジング12と一体となって上昇する。この間、第1カムピン17が第1逃がし溝43内を移動するとともに、第2カムピン53が第2逃がし溝46内を移動する。
【0051】
第1カムピン17が第1ガイド溝42の終端部に到達し、第2カムピン53が第2ガイド溝45の終端部に到達した後、更に第1コネクタ10を上昇させる。第1コネクタ10の上昇過程では、第1ガイド溝42と第2ガイド溝45の傾斜角度の違いによって、第1カムピン17の方が第2カムピン53よりも速く上昇するので、連結突起19と連結溝56の係止が解除される。連結突起19と連結溝56の係止が解除されると、第1ハウジング12と第2ハウジング50の連結が解除されるので、第1ハウジング12のみが上昇し、両ハウジング12,50が離脱する。
【0052】
本実施例1のコネクタ装置は、第1コネクタ10と第2コネクタ20とを有する。第1コネクタ10は、第1ベース部材11と、第1ベース部材11に固定された第1ハウジング12とを有する。第2コネクタ20は、、第1ベース部材11に対して相対的に接近可能に設けた第2ベース部材21と、第2ハウジング50と、可動部材30とを有する。第2ハウジング50は、第2ベース部材21に対して相対変位可能であり、第1ベース部材11と第2ベース部材21が接近するのに伴って第1ハウジング12と嵌合することが可能である。可動部材30は、第2ベース部材21に取り付けられ、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間で移動することが可能である。可動部材30の移動方向は、第1ハウジング12と第2ハウジング50の嵌合方向と直交する方向である。
【0053】
可動部材30には、両ハウジング12,50の嵌合方向に対して斜め方向に延びるガイド部(第1ガイド溝42と第2ガイド溝45)が形成されている。第1ベース部材11と第2ベース部材21が接近する過程では、第1ガイド溝42と第2ガイド溝45が、可動部材30を嵌合開始位置から嵌合完了位置へ移動させながら、第1ハウジング12と第2ハウジング50を互いに嵌合させるようにガイドする。可動部材30が嵌合完了位置に到達した状態では、第1ハウジング12と第2ハウジング50の嵌合が完了しており、嵌合完了状態の両ハウジング12,50が、一体となって、第2ベース部材21に対して嵌合方向と平行な方向へ相対変位することが可能となる。
【0054】
本実施例1のコネクタ装置によれば、第1ベース部材11と第2ベース部材21を接近させる過程では、第1ハウジング12と第2ハウジング50が第1ガイド溝42と第2ガイド溝45によって嵌合され、この間、可動部材30が嵌合開始位置から嵌合完了位置へ移動する。可動部材30が嵌合完了位置に到達した状態では、両ハウジング12,50が、嵌合完了状態を保ったまま、第2ベース部材21に対して嵌合方向と平行な上下方向へ相対変位することができる。第2ベース部材21に対する両ハウジング12,50の相対変位に伴って、第1ベース部材11と第2ベース部材21が、両ハウジング12,50の嵌合方向と平行な方向へ相対変位する。これにより、両ハウジング12,50の嵌合方向と平行な方向において、第1ベース部材11と第2ベース部材21の位置ずれを吸収することができる。
【0055】
可動部材30は、第1ハウジング12と第2ハウジング50を嵌合させるためのガイド機能と、第1ハウジング12と未嵌合状態の第2ハウジング50を第2ベース部材21に対して二次元方向(前後方向及び左右方向)へ相対変位させるための第1の位置ずれ吸収機能と、嵌合状態の両ハウジング12,50が第2ベース部材21に対して上下方向へ相対変位することを許容する第2の位置ずれ吸収機能とを兼ね備えている。
【0056】
可動部材30は第1ハウジング12と第2ハウジング50を嵌合させるためのガイド部を有する。ガイド部は、両ハウジング12,50の嵌合過程で第1ハウジング12の第1カムピン17を摺接させる第1ガイド溝42を含む。可動部材30には、第1ガイド溝42の終端部に連通する第1逃がし溝43が形成されている。可動部材30が嵌合完了位置に到達したときに、第1カムピン17は、第1逃がし溝43に進入することによって、可動部材30に対し嵌合方向と平行な方向へ相対移動することが可能になる。この構成によれば、第1ベース部材11と第2ベース部材21を接近させる過程において、両ハウジング12,50の嵌合が完了すると、引き続いて両ハウジング12,50が第2ベース部材21に対して嵌合方向へ相対変位する。これにより、第1ハウジング12と第2ハウジング50の嵌合と、第1ベース部材11と第2ベース部材21の嵌合方向における位置ずれ吸収を、ワンアクションで行うことができる。
【0057】
可動部材30のガイド部は、両ハウジング12,50の嵌合過程で第2ハウジング50の第2カムピン53を摺接させる第2ガイド溝45を含む。可動部材30には、第2ガイド溝45の終端部に連通する第2逃がし溝46が形成されている。可動部材30が嵌合完了位置に到達したときに、第2カムピン53は、第2逃がし溝46に進入することによって、可動部材30に対し嵌合方向と平行な方向へ相対移動することが可能になる。ガイド部は、嵌合方向に対して斜め方向に延びているので、ガイド部に含まれる第2ガイド溝45も、嵌合方向に対して斜め方向に延びている。第2ガイド溝45を設けずに、嵌合過程で第2ハウジング50が第2ベース部材21に対して嵌合方向と直交する方向へ相対変位する場合に比べると、両ハウジング12,50の嵌合過程における嵌合方向のストロークが長くなる。これにより、両ハウジング12,50間の嵌合抵抗が急激に上昇することを回避できるので、作業性が良好である。
【0058】
第1ガイド溝42は、嵌合方向と直交する方向(可動部材30の移動方向と平行な方向)に間隔を空けて一対設けられている。第1カムピン17は、嵌合方向と直交する前後方向において一対の第1ガイド溝42の間隔と同じ間隔を空けて配置されている。この構成によれば、一対の第1カムピン17を一対の第1ガイド溝42に摺接させることによって、可動部材30に対する第1ハウジング12の傾きを防止することができる。
【0059】
第2ガイド溝45は、嵌合方向と直交する方向(可動部材30の移動方向と平行な方向)に間隔を空けて一対設けられている。第2カムピン53は、嵌合方向と直交する前後方向において一対の第2ガイド溝45の間隔と同じ間隔を空けて配置されている。この構成によれば、一対の第2カムピン53を一対の第2ガイド溝45に摺接させることによって、可動部材30に対する第2ハウジング50の傾きを防止することができる。
【0060】
第1逃がし溝43の終端部と第2ガイド溝45の始端部とが、連通溝44を介して連通している。この構成によれば、第2カムピン53を第2ガイド溝45に組み付けるときに、第1ガイド溝42と第1逃がし溝43と連通溝44とによって、第2カムピン53を第2ガイド溝45へ誘導することができる。
【0061】
可動部材30には、第2カムピン53を第2ガイド溝45の始端部に保持する保持部(弾性保持片38と保持突起47)が設けられている。この構成によれば、第2カムピン53を第2ガイド溝45の始端部に保持しておくことによって、第2ハウジング50が可動部材30に対して位置決めされるので、第1ハウジング12と第2ハウジング50の嵌合動作を円滑に開始させることができる。
【0062】
第2カムピン53を第2ガイド溝45の始端部に保持するための保持部は、弾性保持片38を含む。弾性保持片38は、可動部材30に形成され、第2ハウジング50の前板部54に係止することによって保持機能を発揮する。第1ハウジング12には、両ハウジング12,50の嵌合を開始したときに、弾性保持片38による係止を解除する解除部18が設けられている。この構成によれば、両ハウジング12,50の嵌合を開始すると、弾性保持片38による保持が解除部18によって解除され、第2ハウジング50が可動部材30に対して相対移動することが可能になる。弾性保持片38の保持を解除するだけのための作業が不要なので、作業性が良好である。
【0063】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
上記実施例1では、ガイド部が、第1ガイド溝と第2ガイド溝を含んでいるが、ガイド部を、第1ガイド溝のみを含む構成とし、第2ハウジングが可動部材に対して嵌合方向と直交する方向に相対変位し得るようになっていてもよい。
上記実施例1では、第1ガイド溝が嵌合方向と直交する方向(可動部材の移動方向と平行な方向)に間隔を空けて一対設けられているが、第1ガイド溝の数は、1本だけでもよく、3本以上でもよい。
上記実施例1では、第2ガイド溝が嵌合方向と直交する方向(可動部材の移動方向と平行な方向)に間隔を空けて一対設けられているが、第2ガイド溝の数は、1本だけでもよく、3本以上でもよい。
上記実施例1では、第1逃がし溝の終端部と第2ガイド溝の始端部とが連通溝を介して連通しているが、第1逃がし溝の終端部と第2ガイド溝の始端部は連通していなくてもよい。
上記実施例1では、弾性保持片を可動部材に形成したが、弾性保持片は、第2ハウジングに形成してもよい。
上記実施例1では、第2ベース部材を固定し、第1ベース部材を第2ベース部材に接近させるようにしたが、第1ベース部材を固定し、第2ベース部材を第1ベース部材に接近させるようにしてもよく、第1ベース部材と第2ベース部材の両方を互いに接近させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…第1コネクタ
11…第1ベース部材
12…第1ハウジング
13…端子保持部
14…フード部
15…第1端子金具
16…ガイドピン
16S:第1テーパ面
17…第1カムピン
18…解除部
19…連結突起
20…第2コネクタ
21…第2ベース部材
22…作動空間
23…ガイドレール
24…嵌合開始位置用凹部
25…嵌合完了位置用凹部
30…可動部材
31…後壁部
32…側壁部
33…嵌合空間
34…リブ
35…溝部
36…弾性係止片
37…係止突起
38…弾性保持片(保持部)
39…突起部
41…進入溝
42…第1ガイド溝(ガイド部)
43…第1逃がし溝
44…連通溝
45…第2ガイド溝(ガイド部)
46…第2逃がし溝
47…保持突起(保持部)
50…第2ハウジング
51…ハウジング本体
52…ガイド孔
52S:第2テーパ面
53…第2カムピン
54…前板部
55…後板部
56…連結溝
57…保持凹部
58…ガイド凹部
α…第1ガイド溝の傾斜角度
β…第2ガイド溝の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18