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  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018098
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240201BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240201BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121192
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋平
【テーマコード(参考)】
2H199
3D020
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA29
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA44
3D020BA04
3D020BD03
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】部材の寸法ばらつきを低減したヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置は、表示光Liを出射するディスプレイ20と、ディスプレイ20を収容するケース40と、ケース40に形成され、ケース40を車両へ固定するためのステー41と、ステー41に形成され、ケース40と車両Cとの間の相対位置を規定する位置決め手段41pと、を備え、位置決め手段41pのうち、1つは測定基準位置決め手段41mであり、ケース40は、測定基準位置決め手段41mに対して車両Cの前後方向と左右方向のどちらか一方に設けられる第一の測定基準点42mと、測定基準位置決め手段41mに対して車両Cの前後方向と左右方向のどちらか他方に設けられる第二の測定基準点43mと、を更に形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備わる反射透過部材へ表示光を投射することで、虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示光を出射するディスプレイと、
前記ディスプレイを収容するケースと、
前記ケースに形成され、前記ケースを前記車両へ固定するためのステーと、
前記ステーに形成され、前記ケースと前記車両との間の相対位置を規定する位置決め手段と、
を備え、
前記位置決め手段のうち、1つは測定基準位置決め手段であり、
前記ケースは、
前記測定基準位置決め手段に対して前記車両の前後方向と左右方向のどちらか一方に設けられる第一の測定基準点と、
前記測定基準位置決め手段に対して前記車両の前後方向と左右方向のどちらか他方に設けられる第二の測定基準点と、
を更に形成する
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示光を反射し、回転軸を中心に回転可能に保持される反射鏡
を備え、
前記回転軸は、前記車両に設置された状態を鉛直上方向から平面視した場合に、延長線上に、前記第一の測定基準点、前記第二の測定基準点、前記測定基準位置決め手段の何れかが形成されている
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイ装置としては、特許文献1に示される構成が知られている。特許文献1に示されるヘッドアップディスプレイ装置は、表示装置(3)、反射鏡(4,5)等が下ケース(20)に収容されることで構成される。特に、下ケース(20)は、取付ステー(30)に形成されたステー側ケースねじ孔(32)を介して、車両へ締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-46146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、ヘッドアップディスプレイの開発の中で、従来のヘッドアップディスプレイ装置には未だ部材の位置精度に改善の余地があることを見出した。
具体的には、特許文献1に示されるような下ケース(20)は、ステー側ケースねじ孔(32)が車両の前後左右方向に対応した位置に複数箇所設けられている。このようなヘッドアップディスプレイ装置では、部材の成形精度を測定するには車両に対するねじ孔や車両に対する位置決めピンが用いられる。しかし、このそれぞれのねじ孔や位置決めピンが、車両の前後左右方向に対応しない位置に設けられる場合、ヘッドアップディスプレイ装置単体で見た場合に、車両の前後左右方向を定める基準が、仮想点となり、測定精度が悪化し、ひいては部材の位置精度の低下を招いていた。
【0005】
そこで本開示は、位置決めピンの設定箇所の成約に因らずに、部材の寸法ばらつきを低減したヘッドアップディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本開示のヘッドアップディスプレイ装置は、車両に備わる反射透過部材へ表示光を投射することで、虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、前記表示光を出射するディスプレイと、前記ディスプレイを収容するケースと、前記ケースに形成され、前記ケースを前記車両へ固定するためのステーと、前記ステーに形成され、前記ケースと前記車両との間の相対位置を規定する位置決め手段と、を備え、前記位置決め手段のうち、1つは測定基準位置決め手段であり、前記ケースは、前記測定基準位置決め手段に対して前記車両の前後方向と左右方向のどちらか一方に設けられる第一の測定基準点と、前記測定基準位置決め手段に対して前記車両の前後方向と左右方向のどちらか他方に設けられる第二の測定基準点と、を更に形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示のヘッドアップディスプレイ1(HUD1)が車両Cに搭載された態様の一例を示す図。
図2】HUD1の外観を示す図。
図3】車両Cに搭載された状態のHUD1を鉛直上方向から平面視した場合の外観を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示のヘッドアップディスプレイ装置を、ヘッドアップディスプレイ1(HUD1)が車両Cに搭載された実施形態及び変形例として例にあげ、添付図面を用いて次の順序で説明する。
【0009】
[第一実施形態]
<1-1.構成の説明>
<1-2.形状測定の説明>
<1-3.凹面鏡30の説明>
[変形例]
【0010】
[第一実施形態]
<1.構成の説明>
図1は、本開示のヘッドアップディスプレイ1が車両Cに搭載された態様の一例を示す図である。図1に示す通り、本開示のHUD1は車両Cに設けられたウインドシールドWSの下方に組み付けることができる。車両Cは自動車であるが、自動二輪、作業用車両等の他の形態の車両へも適用できる。車両Cは、透過反射部材の一例であるウインドシールドWSと、HUD1を備える。なお、図面内に示される通り、X軸は車両の左右方向、Y軸は車両の上下方向、Z軸は車両の前後方向に対応し、それぞれの軸はの正の方向は車両の左方向Lと上方向Uと前方向Fである。
【0011】
HUD1は、ウインドシールドWSへ表示光Liを投影する。ウインドシールドWSは、表示光Liの一部を反射する。車両Cのユーザは、アイポイントEPから表示光を目で視認することで、あたかも虚像VがウインドシールドWS前方に浮かんで見えるように知覚することができる。HUD1は、凹面鏡30を回転軸Aを中心に回転することで、表示光Liの投影方向を変えてもよい。この構成によれば、HUD1は車両Cのユーザの体格等に応じて表示光Liの光路を調節することができる。すなわち、表示光Liは、標準光路Lc、ショーター光路Ls、トーラー光路Ltをたどることができる。
【0012】
図2は、HUD1の外観を示す図である。HUD1は、ディスプレイ20と、平面鏡ユニット10と、凹面鏡30と、ケース40と、を備える。
【0013】
ディスプレイ20は、表示光Liを平面鏡ユニット10へ出射する。ディスプレイ20は、表示光Liを出射する構成として、液晶や有機ELなどの電子ディスプレイを用いた構成、DMD(Digital Micro mirror Device)やLCOS(Liquid Crystal on Silicon)やTFT(Thin Film Transistor)を用いたプロジェクターとスクリーンを用いた構成が適用されうる。
【0014】
平面鏡ユニット10は、ディスプレイ20が出射した表示光Liを凹面鏡30へ反射する。平面鏡ユニット10は、適切な位置に固定された状態で光を反射できる構成であれば良い。例えば本開示の平面鏡ユニット10は、反射面を有する平面鏡、平面鏡を保持する平面鏡ホルダ、平面鏡の縁を覆う平面鏡カバーなどを有する。
【0015】
平面鏡は、光を反射する平板状の鏡である。平面鏡は、ガラスなどの基材に対して、アルミなどを蒸着することで構成できる。平面鏡は、アルミなどの蒸着により形成された反射面を有し、この反射面で、種々の光を反射することができる。本開示では、平面鏡は、ガラス基材の面のうち、表示光Liが入射する面に反射面を有する。
【0016】
平面鏡カバーは、平面鏡が有する反射面のうち、HUD1の表示に用いる箇所のみを露呈するために、反射面を区画するように反射面の縁を覆う遮光部材である。平面鏡カバーは、ポリプロピレンやABSなどを主成分とした合成樹脂等を基材として、暗色系の塗装やシボを施したもので構成できる。
【0017】
凹面鏡30は、平面鏡ユニット10が反射した表示光Liを、車両Cに搭載される透過反射部材の一例であるウインドシールドWSへ反射する。凹面鏡30の反射面は、ウインドシールドWSの歪みや虚像Vの表示サイズに応じた自由曲面形状であると、虚像Vの表示品位が向上する。凹面鏡は、ポリカーボネートやポリカペットなどの合成樹脂やガラスの基材へ、反射面をアルミなどの蒸着で形成したものを適用できる。
【0018】
ケース40は、HUD1の構成部品の相対位置を固定しつつ、車両Cに固定される剛性が高い部材である。ケース40は、表示光Liの光路を区切る遮蔽部としての機能も有する。ケース40は、ABSなどの剛性の高い剛性樹脂や、マグネシウム合金などが好ましい。
【0019】
図3は、車両Cに搭載された状態のHUD1を鉛直上方向から平面視した場合の外観を模式的に示す図である。ケース40は、ステー41,42,43,44と、位置決めピン41p,43pと、第一の測定基準点42mと、第二の測定基準点43mと、を形成する。
【0020】
ステー41,42,43,44は、HUD1を車両Cへ固定するための取付部分であり、それぞれに形成されたネジ穴やクリップなどの固定手段によって車両Cの取付箇所へ固定される。車両Cとの固定は強固に行われるため、ステーには適宜外周を覆うリブや撓む方向に沿うリブが形成されていてもよい。
【0021】
位置決めピン41p,43pは、ケース40の下面から下方向に向かって設けられたピン形状(例えば、円柱状の突起)である。位置決めピン41p,43pは、車両Cの取付箇所付近に形成された丸穴や長穴に挿通される。位置決めピン41p,43pが正しく挿通されると、HUD1は車両Cに対して正しい搭載箇所に設置されることになる。なお、位置決めピンのうち、位置決めピン41pは、測定基準位置決め手段41mとしても機能する。機能の詳細は、後に説明される。
【0022】
第一の測定基準点42mと第二の測定基準点43mは、それぞれ、測定基準位置決め手段に対して車両Cの前後方向と左右方向に設けられた形状である。第一の測定基準点42mと第二の測定基準点43mの形状は、例えばケース40の表面形状として存在する種々の凹、凸、孔などである。
例えば、第一の測定基準点は、測定基準位置決め手段41mと同様の大きさのピン形状(凸形状)である。特に、第一の測定基準点42mは、隣接するステー42において、測定基準位置決め手段41mとは反対側に向く面に設けられた突起である。
第二の測定基準点43mは、ケース40の下面に設けられた円錐状の凹みである。
【0023】
<2.形状測定の説明>
この節では、特に測定基準位置決め手段と測定基準点とがどのように作用するかが説明される。
一般に、HUDに含まれる多くの部材は、射出成形や鋳造など種々の成形手段で製造される。また、これらの部材の組物としてHUDは、組付け公差を含む。そのため、実物と設計値との間に誤差が無いかが成形後に測定される。
【0024】
この際、例えば従来のHUDでは、車両の前後方向及び左右方向に対応する形状が必ずしも存在しなかった。というのも、場合によっては、位置決めピンなどの車両に対してHUDの位置を定める位置決め手段が車両の前後方向や左右方向に対応した位置に設けられるが、HUDの搭載可能スペースの関係で位置決めピンの位置が前後方向や左右方向に対応した位置に設けられない場合があった。このような場合では、一つの位置決めピンを測定基準位置決め手段とし、車両の前後方向及び左右方向は仮想点として設定され、このように仮想的に決定された車両前後方向及び左右方向に対して、HUDに含まれる各部材の形状や位置の測定が行われる。このような仮想点に基づく従来の測定では、位置決め手段に基づいて設定された車両の前後方向や左右方向に基づく測定と比較して、精度面で一定の低下があった。
【0025】
そこで本開示のHUD1では、位置決めピン41pを測定基準位置決め手段41mとした場合に、これの車両後ろ方向に対応した位置に第一の測定基準点42mを、車両左方向に対応した位置に第二の測定基準点43mを持つようケース40が設計された。
【0026】
HUD1の形状を測定する際は、測定基準位置決め手段41mと第一の測定基準点42mとを含む鉛直面を車両前後方向、測定基準位置決め手段41mと第二の測定基準点43mとを含む鉛直面を車両左右方向と設定し、それぞれの鉛直面に対する各部材の位置決め箇所の相対位置を測定することで、特に精度良く測定を行える。加えて、この測定に基づいて、製造フローを改善することで、各部材の位置精度を向上したり部材の寸法ばらつきを低減したヘッドアップディスプレイ装置となる。各部材の寸法ばらつきを低減ヘッドアップディスプレイ装置は、虚像の傾きや歪みが発生する虞も低減も達成されるので、ひいては虚像の表示品位を向上したヘッドアップディスプレイ装置となる。
【0027】
<1-3.凹面鏡30の説明>
図3では、特に凹面鏡30の回転軸Aが図示されている。先述の第二の測定基準点43mは、鉛直上方向からの平面視において、この回転軸Aの延長線上に存在する。このように、回転軸A上に測定基準点がある場合、基準に対して凹面鏡30の位置精度や成形精度を測定する際に精度を向上できる。回転軸A上には、第二の測定基準点43mの代わりに、第一の測定基準点42mや測定基準位置決め手段41mが存在していてもよい。
【0028】
[変形例]
ここまでの説明では、本開示のヘッドアップディスプレイ装置を車両に搭載したときの形態の一例が説明された。本開示の説明では、一部の周知技術の説明が省略されている。また、本願発明はこの形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜種々の改良ならびに変更が可能なことは勿論である。
【0029】
例えば、凹面鏡の軸部材や、平面鏡(反射鏡)の位置決め、ディスプレイの位置決めなどが測定基準点として設定される構成は特に好ましい。というのも、この場合、部材の位置決めが、測定の基準となる面に近接した位置で行われるため、その部材に関しては非常に高精度に寸法の測定を行える。
【0030】
測定基準位置決め手段として、ケース40の下面に形成される位置決めピン41pを示した。このようにケースの下面に形成された測定基準位置決め手段や測定基準点に対応して、ケースの上面の対応した位置に、測定に用いる目安点が更に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0031】
C 車両
A 回転軸
Ax 左右方向
Az 前後方向
EP アイポイント
Li 表示光
V 虚像
WS ウインドシールド

1 ヘッドアップディスプレイ(HUD)

10 平面鏡ユニット
20 ディスプレイ
30 凹面鏡
40 ケース
41,42,43,44 ステー
41p,43p 位置決めピン(位置決め手段の一例)
41m 測定基準位置決め手段
42m 第一の測定基準点
43m 第二の測定基準点
図1
図2
図3