(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018106
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F16K31/04 K
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121205
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 将志
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA14
3H062BB04
3H062BB24
3H062BB30
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE08
3H062FF33
3H062FF39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】比較的安価に短時間で組立できる、動作時の摩耗を抑制した電動弁の提供。
【解決手段】モータにより回転駆動されるとともに軸線方向に移動する弁軸21を回転可能に保持する弁本体ユニットと、軸線方向に変位可能に配置され、弁座11eに着座し又は離間する弁体25と、弁体を保持する弁ホルダ23と、弁軸と弁体とが離間する方向の付勢力を発生するばね部材24と、弁軸と弁体との間に配置されるように弁ホルダに固定されたばねストッパ部27と、を有し、少なくとも全閉位置を含み、ばね部材の付勢力を弁体が受ける弁軸の第1の軸線方向位置と、少なくとも全開位置を含み、ばね部材の付勢力をばねストッパ部が受ける弁軸の第2の軸線方向位置と、が設定されるように、弁ホルダに対してばねストッパ部が軸線方向に位置決めされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより回転駆動されるとともに軸線方向に移動する弁軸と、
弁座を備え、前記弁軸を回転可能に保持する弁本体ユニットと、
前記弁軸に対して軸線方向に変位可能に配置され、前記弁座に着座し又は離間する弁体と、
前記弁軸とともに軸線方向に移動し、前記弁体を保持する弁ホルダと、
前記弁軸と前記弁体とが離間する方向の付勢力を発生するばね部材と、
前記弁軸と前記弁体との間に配置されるように前記弁ホルダに固定されたばねストッパ部と、を有し、
少なくとも全閉位置を含み、前記ばね部材の付勢力を前記弁体が受ける前記弁軸の第1の軸線方向位置と、少なくとも全開位置を含み、前記ばね部材の付勢力を前記ばねストッパ部が受ける前記弁軸の第2の軸線方向位置と、が設定されるように、前記弁ホルダに対して前記ばねストッパ部が軸線方向に位置決めされる、ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁ホルダは、筒状の側壁と、前記側壁の軸線方向一端を閉止する底壁とを有し、前記ばねストッパ部は、前記側壁の内周に圧入により固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記側壁は、軸線方向他端側に形成された第1側壁と、前記第1側壁より内径が小さい第2側壁とを有し、前記第1側壁と前記第2側壁の内周面は境界部にて内径が漸次変化するようにつながっており、前記ばねストッパ部は、前記第2側壁に圧入されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁ホルダは、前記弁軸に固定され、前記弁体は、前記弁ホルダに対して軸線方向に相対移動可能に保持されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁軸と前記ばねストッパ部との間において、前記ばね部材の前記付勢力を受けるばね受け部材が配置され、前記ばね受け部材は、前記弁軸が前記第1の軸線方向位置にあるときに、前記弁体に当接し、前記弁軸が前記第2の軸線方向位置にあるときに、前記ばねストッパ部に当接する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記弁ホルダは、前記弁体に固定され、前記弁軸は、前記弁ホルダに対して軸線方向及び軸線回りに相対移動可能に保持されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項7】
前記弁体と前記ばねストッパ部との間において、前記ばね部材の前記付勢力を受けるばね受け部材が配置され、前記ばね受け部材は、前記弁軸が前記第1の軸線方向位置にあるときに、前記弁軸に当接し、前記弁軸が前記第2の軸線方向位置にあるときに、前記ばねストッパ部に当接する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項8】
前記弁ホルダは、前記弁体と一体であり、前記弁軸は、前記弁ホルダに対して軸線方向及び軸線回りに相対移動可能に保持されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項9】
前記弁体と前記ばねストッパ部との間において、前記ばね部材の前記付勢力を受けるばね受け部材が配置され、前記ばね受け部材は、前記弁軸が前記第1の軸線方向位置にあるときに、前記弁軸に当接し、前記弁軸が前記第2の軸線方向位置にあるときに、前記ばねストッパ部に当接する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電動弁。
【請求項10】
前記弁軸に固定されたロータと、前記ロータを回転駆動可能なステータとを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータ駆動型の電動弁は、ステッピングモータにより回転駆動される弁軸の雄ねじ部を弁本体に設けられた雌ねじ孔に螺合させてなるねじ機構を有する。このねじ機構により、弁軸を軸線回りに回転させつつ軸線方向に変位させ、弁体と弁座の隙間を増減させて流量を制御している。
【0003】
このような電動弁においては、弁軸と弁体との間に圧縮ばねが配置されており、弁体が弁座に着座した閉弁状態、また弁体が弁座より離間した開弁状態のいずれの状態でも、弁軸と弁体との間に圧縮ばねの付勢力が作用している。この付勢力の作用により、開弁状態の弁体は、雄ねじ軸の回転に対して連れ回りすることとなる。
【0004】
一方、弁体が弁座に着座すれば両者間に摩擦力が発生するため、最終的には弁体の回転は静止する。しかしながら、弁体と弁座との摩擦力は、弁座に向かって弁体が押し付けられる軸力に応じて増大するため、弁体の回転トルクに抗することができる摩擦力が発生するまでは、弁座に接しながら弁体は回転し続け、それにより弁体と弁座との間に摩耗が生じるおそれがある。
【0005】
かかる課題に対し、特許文献1に示すような電動式コントロールバルブ(電動弁)において、弁開状態時には、弁体側ばねリテーナ部材がストッパ面部に当接して弁体より離間し、弁体と弁体側ばねリテーナ部材との間に所定間隙が存在するようにしている。これにより、弁体側ばねリテーナ部材と弁体とが切り離され、圧縮コイルばねのばね力が弁体に作用しないため、閉弁方向に向かう弁体が弁体側ばねリテーナ部材と共回りしていても、弁座に接した際に直ちに回転が止まるため、弁座の摩耗を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/064865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的な電動弁においては、弁体が着座した位置から所定量(例えば30パルス分)で、閉弁方向にステッピングモータを回転駆動することが行われる。弁体が着座した後は、弁体から圧縮ばねが押圧されて縮長し、その付勢力で弁体は弁座に向かって付勢されるため、弁体が弁座に押圧されすぎることなく閉弁状態を維持できる。一例として、ステッピングモータを30パルス分駆動した場合、弁軸の軸線方向移動量は0.2mm程度である。
【0008】
このような電動弁において、特許文献1の技術を適用した場合、弁体と弁体側ばねリテーナ部材との間における所定間隙を、例えば0.1mm前後の狭い範囲で厳密に設定しなければならない。しかしながら、特許文献1の技術によれば、複数部品の製造誤差及び組付誤差を考慮した上で、弁体と弁体側ばねリテーナ部材との間に所定間隙を形成しているため歩留まりが悪く、製造難易度が相当に高くなるという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、比較的安価に短時間で組立できるにもかかわらず、動作時の摩耗を抑制した電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動弁は、
モータにより回転駆動されるとともに軸線方向に移動する弁軸と、
弁座を備え、前記弁軸を回転可能に保持する弁本体ユニットと、
前記弁軸に対して軸線方向に変位可能に配置され、前記弁座に着座し又は離間する弁体と、
前記弁軸とともに軸線方向に移動し、前記弁体を保持する弁ホルダと、
前記弁軸と前記弁体とが離間する方向の付勢力を発生するばね部材と、
前記弁軸と前記弁体との間に配置されるように前記弁ホルダに固定されたばねストッパ部と、を有し、
少なくとも全閉位置を含み、前記ばね部材の付勢力を前記弁体が受ける前記弁軸の第1の軸線方向位置と、少なくとも全開位置を含み、前記ばね部材の付勢力を前記ばねストッパ部が受ける前記弁軸の第2の軸線方向位置と、が設定されるように、前記弁ホルダに対して前記ばねストッパ部が軸線方向に位置決めされる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的安価に短時間で組立できるにもかかわらず、動作時の摩耗を抑制した電動弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のニードル弁の周辺を拡大して示す断面図であり、完全閉弁状態を示す。
【
図3】
図3は、本実施形態のニードル弁の周辺を拡大して示す断面図であり、完全閉弁状態から弁ホルダが上昇しても、ニードル弁が弁座に着座し続ける状態を示す。
【
図4】
図4は、本実施形態のニードル弁の周辺を拡大して示す断面図であり、ニードル弁が弁座から離脱する直前の状態を示す。
【
図5】
図5は、本実施形態のニードル弁の周辺を拡大して示す断面図であり、開弁状態を示す。
【
図6】
図6は、ばねストッパの組付工程を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態のニードル弁周辺を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態のニードル弁周辺を拡大して示す断面図である。
【
図11】
図11は、縦軸にオリフィス流量、横軸にステータに供給されるパルス数をとって示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態について説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動弁1を示す縦断面図である。ここで、上方とは、電動弁1におけるロータ側をいい、下方とは、ロータに対するニードル弁側をいう。
【0015】
(電動弁の構成)
電動弁1は、上端が開口した有底円筒状の弁本体10と、弁本体10の上端面に下端部が溶接等により密封接合された有頂円筒状のキャン45と、弁本体10の内側に固定されたガイドステム15と、ガイドステム15の内側に配設された弁軸21と、弁軸21に対し一体的に回動可能に連結固定されたロータ30と、ロータ30を回転駆動すべくキャン45の外周に外嵌されたステータ50とを備えている。ここでは、ロータ30とステータ50とでステッピングモータが構成される。電動弁1の軸線をLとする。
【0016】
弁本体10は、中空円筒部10aと底壁部10bとを連設してなる。中空円筒部10aと底壁部10bの肉厚は、略等しい。
【0017】
底壁部10bにおいて、その中央に円形の開口10dが形成されており、開口10dには、弁座部材11がロウ付け等で固定されている。弁座部材11は、それぞれ中空である縮径円筒部11aと拡径円筒部11bとを軸線L方向に連設してなり、縮径円筒部11aと拡径円筒部11bとの境界に隔壁11cが形成されてなる。縮径円筒部11aが開口10dに嵌合する。拡径円筒部11bの内周に第1の配管T1の端部が嵌挿され、ロウ付けなどにより接続されている。
【0018】
隔壁11cの中央に、隔壁11cを貫通したオリフィス11dが形成され、オリフィス11dの上端に弁座11eが形成されている。オリフィス11dは、下端側に向かって一定の内径の部分を経た後、漸次拡径している。弁本体10と、ガイドステム15と、弁座部材11とで、弁本体ユニットを構成する。
【0019】
弁本体10の中空円筒部10aには、入口開口10eが形成されており、入口開口10eに第2の配管T2の端部が嵌挿され、ロウ付けなどにより接続されている。入口開口10eの軸線をOとする。
【0020】
弁本体10の上端には、キャン45の下端が突き当てられており、溶接により接合されることで、弁本体10とキャン45とが密閉した状態で一体化される。また、弁本体10の上端において、キャン45の下端内側に鍔状円盤18が配置されている。鍔状円盤18は、弁本体10とキャン45の溶接時に同時に溶接されると好ましい。鍔状円盤18には複数の貫通孔が設けられ、弁本体10の内部とキャン45の内部との間で冷媒が流入出することを可能にしている。
【0021】
図1において、キャン45の外側において、ヨーク51、ボビン52、及びステータコイル53が配置されてステータ50が形成され、その外周が樹脂モールドカバー58によって覆われている。本実施形態では、樹脂モールドカバー58は、キャン45の上部を含めてステータ50全体を覆っているが、ヨーク51の周囲のみを覆うようにしてもよい。ロータ30とステータ50とによりステッピングモータを構成している。
【0022】
ステータコイル53は、基板CB、コネクタCN、及び配線HNを介して、外部の電源回路(不図示)に接続されている。基板CB及びコネクタCNは、別の樹脂カバー57により覆われている。ステータコイル53の通電励磁によって、キャン45内に配設されたロータ30を軸線L回りに回転可能となっている。樹脂カバー57の内部には、モールド樹脂が充填されている。
【0023】
ロータ30の内側に配設されたガイドステム15は、中実円筒状の本体15aと、中空円筒部15bとを連設してなる。本体15aには、その中央を軸線L方向に貫通するようにして雌ねじ孔15cが形成されている。中空円筒部15bの外周には、鍔状円盤18が固着されており、上述したように鍔状円盤18が弁本体10の上端に溶接されることで、ガイドステム15は弁本体10に対して固定される。中空円筒部15bには、均圧穴15dが内外周を貫通して形成されている。
【0024】
また、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置を設定すべく、ガイドステム15の本体15aの上面には、断面矩形状の閉弁方向用固定ストッパ55が上向きに突設されており、またガイドステム15の本体15aの下面には、断面矩形状の開弁方向用固定ストッパ56が下向きに突設されている。ここで、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置とは、閉弁方向用可動ストッパ35が閉弁方向用固定ストッパ55に当接して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達した時の位置のことである。
【0025】
弁軸21は、ロータ30に取り付けられた環状の連結体32が外嵌した小径部21aと、ガイドステム15の雌ねじ孔15cに螺合する雄ねじ部21bと、雄ねじ部21bより下側に形成された鍔状部21cと、筒状の下端連結部21dとを同軸に連設してなる。
【0026】
弁軸21における雄ねじ部21bの上端部には、閉弁方向用可動ストッパ35が螺合し、ロータ30の上壁下面に係止されている。閉弁方向用可動ストッパ35の下面には、断面矩形状のストッパ部35aが形成されている。
【0027】
また、弁軸21の雄ねじ部21bの下端部には、開弁方向用可動ストッパ36が螺合し、弁ホルダ23の上面に係止されている。開弁方向用可動ストッパ36の上面には、断面矩形状のストッパ部36aが形成されている。
【0028】
図2~5は、本実施形態のニードル弁(弁体ともいう)25の周辺を拡大して示す断面図であり、開弁状態から閉弁状態に至るまでのニードル弁25の位置を示している。
図2~5を参照して、ニードル弁25近傍の構成について説明する。
【0029】
弁軸21の下端に、円盤部材29が取り付けられている。円盤部材29は、その中央開口に弁軸21の下端連結部21dを貫通させてなり、さらに下端連結部21dを径方向外方にカシメることで、弁軸21に固定されている。
【0030】
円盤部材29の外周には、有底円筒状の弁ホルダ23の上端が固定され、弁ホルダ23は弁軸21と一体で昇降可能に構成されている。弁ホルダ23は、上端が円盤部材29の外周に溶接又はロウ付けされる第1側壁23aと、第1側壁23aよりも内径が小さい第2側壁23bと、第2側壁23bの下端に接続された底壁23cとを連設してなる。側壁を構成する第1側壁23aと第2側壁23bの内周面は、その境界で径が漸次変化するように滑らかに接続されている。底壁23cの中央には開口23dが形成され、第1側壁23aには弁ホルダ23の内外周を貫通する連通孔23eが形成されている。弁本体10と弁ホルダ23との間に、弁室VC(
図1)が画成される。
【0031】
弁ホルダ23の底壁23cから先端を突出させるようにして、ニードル弁25が配置されている。ニードル弁25は、開口23dに対し軸線方向に移動可能に挿通された中実円筒部25aと、弁鍔部25bと、下方に向かうにしたがって縮径する円錐部25cと、尖った先端部25dとを連設してなる。先端部25dは、常時オリフィス11d内に位置する。中実円筒部25aの上端には、円錐台形部25fが形成されており、円錐台形部25fの平坦な上端面(ばね受け部材26の下面に当接する)の径をφAとし、中実円筒部25aの最大径をφBとしたときに、0.3φB<φA<0.7φBを満たすと好ましい。
【0032】
弁ホルダ23の内側において、中実円筒部25aの外周には、開口23dの内径より大きな外径を有する両端拡径円筒状の抜止部材28aが圧入により嵌合しており、弁ホルダ23からニードル弁25が脱落することを阻止している。抜止部材28aと底壁23cとの間には、ワッシャ28bが配設されている。
【0033】
円盤部材29とニードル弁25との間に、円筒状のばね受け部材26が配設されている。ばね受け部材26は、中空円筒部26aと、平坦な下面を備えたフランジ部26bとを連設してなる。中空円筒部26aの周囲に嵌合配置されるコイルばね(ばね部材ともいう)24の上端は、円盤部材29の下面に当接し、その下端はフランジ部26bの上面に当接しており、コイルばね24は、円盤部材29すなわち弁ホルダ23に対して、ばね受け部材26を下方に向かって付勢しており、すなわち弁軸21とニードル弁25とが離間する方向の付勢力を発生する。
【0034】
ばね受け部材26とニードル弁25との間に、ばねストッパ(ばねストッパ部ともいう)27が配設されている。ばねストッパ27は、例えばSUS(ステンレス)板材をプレス成形することにより形成され、中実円筒部25aより大径の内径を持つ環状部27aと、環状部27aの周囲に連設された円筒状の周囲部27bとを有する。周囲部27bの外径は、弁ホルダ23の第2側壁23bの内径に対し、圧入固定が可能な程度に大きくなっている。
【0035】
図6は、ばねストッパ27の組付工程を示す図である。
まず、組付用の治具JGを準備する。治具JGは、本体筒部JGaと、本体筒部JGaの下端に形成された円盤状の凸部JGbとを有する。本体筒部JGaの外径は、弁ホルダ23の第2側壁23bの内径よりわずかに小さく、また凸部JGbの外径は、ばねストッパ27の環状部27aの内径より小さい。本体筒部JGaの下端面と、凸部JGbの下端面との距離はΔ(例えば0.1mm)である。
【0036】
ばねストッパ27の組付前に、弁ホルダ23の下方より開口23d内に、ニードル弁25の中実円筒部25aを挿通し、弁ホルダ23の内側にて中実円筒部25aにワッシャ28bを挿通させた後、抜止部材28aを圧入により嵌合させる。
【0037】
ニードル弁25がフリーな状態で、弁ホルダ23を不図示の固定具に固定すると、ニードル弁25は、ワッシャ28b及び抜止部材28aにより係止され、底壁23cから垂下する状態となる。
【0038】
かかる状態から、
図6(a)に示すように、第1側壁23a側からばねストッパ27を挿入して、第2側壁23bの内周に係合させる。このとき、第1側壁23aの内径は、ばねストッパ27の外径より大きいため、第1側壁23aの内周にわたって、ばねストッパ27をスムーズに移動させることができる。また、第1側壁23aと第2側壁23bとの境界付近の内周面は滑らかにつながるように内径が漸次変化しているので、ばねストッパ27が引っかかることなく、第2側壁23bの内周に係合できる。その後、ばねストッパ27の上方から治具JGを接近させ、凸部JGbを環状部27aに嵌合させる。
【0039】
このとき、本体筒部JGaの下面が環状部27aの上面に当接するので、そのまま治具JGを下降させると、本体筒部JGaが環状部27aを押圧する。その後は、治具JGとともにばねストッパ27が第2側壁23bの内周に対して摺動しつつ下降してニードル弁25に接近する。このとき、本体筒部JGaの外周が第2側壁23bの内周に案内されることで、治具JGの軸線が弁ホルダ23の軸線に対し傾くことが抑制され、それによりばねストッパ27の軸線も弁ホルダ23の軸線に対し精度よく一致する。
【0040】
図6(b)に示すように、環状部27aの内径内に位置する凸部JGbの下端が、ニードル弁25の中実円筒部25aの上端に当接したときに、治具JGの下降が停止する。
【0041】
その後、
図6(c)に示すように、治具JGを弁ホルダ23に対して上昇させると、周囲部27bが第2側壁23bの内周に圧入された状態が維持され、ばねストッパ27がばねホルダ23に固定されることとなる。このとき、環状部27aの上面と中実円筒部25aの上端との軸線L方向の距離は、本体筒部JGaの下端面と凸部JGbの下端面との距離Δに等しくなる。その後、ばね受け部材26及びコイルばね24を弁ホルダ23内に挿入し、さらに弁軸21の下端に取り付けた円盤部材29を弁ホルダ23の上端に溶接又は圧入することで、弁軸21と弁ホルダ23が一体化する。
【0042】
なお、ばねストッパ27とニードル弁25の相対位置の調整は上記の工程に限定されるものではなく、例えば、ばねストッパ27を基準にして抜止部材28aのニードル弁25への圧入位置を調整してもよいし、ニードル弁25を軸部(抜止部材28aが圧入される部分)と弁部(軸部よりも弁座側に位置する部分)とに分割し、ばねストッパ27を弁ホルダ23、抜止部材28aを軸部にそれぞれ固定した後に軸部と弁部との圧入位置を調整してもよい。
【0043】
(電動弁の動作)
次に、電動弁1の開弁動作を、
図2~5を参照して具体的に説明する。
本実施形態において、弁ホルダ23は弁軸21とともに昇降するが、ばねストッパ27がばね受け部材26に当接しない弁軸21の位置(少なくとも全閉位置を含む)を、「第1の軸線方向位置」とし、ばねストッパ27がばね受け部材26に当接する弁軸21の位置(少なくとも全開位置を含む)を、「第2の軸線方向位置」とする。ここで「全開位置」とは、ニードル弁25が弁座11eから最も離れた位置を言い、電動弁1では、ストッパ36によって弁ホルダ23の上方(開弁方向)への動作が停止された位置(上端位置)である。「全閉位置」とは、ニードル弁25が弁座11eに最も近接又は当接状態で最も強く押圧した位置を言い、電動弁1では、ストッパ35によって弁ホルダ23の下方(閉弁方向)への動作が停止された位置(下端位置)である。
【0044】
図11は、縦軸にオリフィス流量、横軸にステータ50に供給されるパルス数をとって示すグラフである。
図11において、p1は
図1,2に示す全閉位置に対応し、p2は
図3に示す位置に対応し、p3は
図4に示す位置に対応し、p4は
図5に示す位置に対応し、p5は全開位置に対応する。ここで、「第2の軸線方向位置」は、全開位置(p5)からp4,p3の位置を経てp2の位置までの範囲であり、開弁点は「第2の軸線方向位置」の範囲内に位置している。これに対し「第1の軸線方向位置」は、p2(正確にはp2より僅かに閉弁側)の位置から全閉位置(p1:0パルス数の位置)までの範囲である。
【0045】
ニードル弁25へ向かうコイルばね24の押圧力の伝達を所定位置で防ぐ構成(ばねストッパ27のような構成)を有さない電動弁では、例えばp3の位置でニードル弁25の円錐部25cと弁口が摺接する。これに対し、本実施形態の電動弁1ではp3の位置では後述のように円錐部25cと弁座11eが摺接しないため摩耗を抑えることができる。
【0046】
まず、第2の配管T2から弁室VC内に冷媒(流体)が進入しているものとし、電動弁1は
図2に示す完全閉弁状態にあるものとする。このとき、圧縮されたコイルばね24の付勢力がばね受け部材26を介してニードル弁25に伝達され、円錐部25cが弁座11eに着座して、オリフィス11dに向かう冷媒を遮断する。すなわち、弁軸21が第1の軸線方向位置にあるときには、ばねストッパ27は、コイルばね24の付勢力を支持することなく、弁軸21とニードル弁25とが離間する方向に付勢力が伝達されることを許容する。完全閉弁状態で、抜止部材28aとワッシャ28bとの間には隙間がある。
【0047】
かかる完全閉弁状態から、外部の電源回路よりステータ50にパルス給電が行われると、ロータ30及び弁軸21が一方向に回転駆動され、それに応じて雌ねじ孔15cと雄ねじ部21bからなるねじ送り機構を介して、弁軸21及び弁ホルダ23が回転しながら上昇する。しかしながら、
図3に示すように、ばね受け部材26の中央部とニードル弁25とが当接した状態が維持されるため、コイルばね24の付勢力により円錐部25cが弁座11eに着座し続け、オリフィス11dに向かう冷媒は遮断されたままである。
【0048】
このとき、ニードル弁25は、ばね受け部材26を介して弁ホルダ23から回転トルクを受けるが、圧縮されたコイルばね24の付勢力が比較的強いため、円錐部25cと弁座11eとの間に作用する摩擦力が高く、ニードル弁25は回転しない。
【0049】
さらに、弁ホルダ23が上昇することにより、コイルばね24の圧縮量が低下し、それにより円錐部25cと弁座11eとの間に作用する摩擦力が小さくなる。しかしながら、ニードル弁25の円錐台形部25fの上端面とばね受け部材26の下面との当接面積(π・φB2/4)が比較的小さいため、ばね受け部材26を介してニードル弁25が受ける回転トルクの値も小さくなり、ニードル弁25の回転を抑制できるため、円錐部25cと弁座11eとの相対回転を抑制できる。これにより円錐部25cと弁座11eの摩耗を抑えることができる。
【0050】
完全閉弁状態から、ステータ50に所定パルス数(例えば15パルス)のパルス給電が行われると、
図4に示すように、ばね受け部材26の周囲部がばねストッパ27の環状部27aに支持されるようになり、代わって、ばね受け部材26からニードル弁25が離間する。すなわち、弁軸21が第1の軸線方向位置から上昇して第2の軸線方向位置になると、ばねストッパ27は、ばね受け部材26の付勢力を支持することにより、ニードル弁25に付勢力が伝達されることを阻止するようになる。このため、ばね受け部材26を介してニードル弁25が受ける回転トルクが消失する。
【0051】
さらに抜止部材28aがワッシャ28bに当接した時点以降、弁ホルダ23とともにニードル弁25が上昇を開始し、完全閉弁状態から離脱することとなる。このときニードル弁25は、抜止部材28aとワッシャ28bとの間、及びワッシャ28bと弁ホルダ23との間の摩擦力を介して、弁ホルダ23から回転トルクを受ける。しかしながら、ニードル弁25の自重が小さいため、これらの摩擦力も小さくなり、仮に円錐部25cと弁座11eとが離間する前でも、両者の摩耗を抑えることができる。
【0052】
ニードル弁25の上昇により、
図5に示すように、円錐部25cが弁座11eから離間するので、オリフィス11dが開放される。これにより、第2の配管T2から弁室VC内へと進入した冷媒は、円錐部25cと弁座11eとの間の隙間を通過して、オリフィス11dを通って第1の配管T1へと流れる。
【0053】
このとき、ステータ50へのパルス給電に応じてニードル弁25のリフト量が定まるため、冷媒の流量制御を行える。さらにパルス給電を続けることで、最終的にニードル弁25が完全開弁状態となる。さらにパルス給電が継続された場合、開弁方向用可動ストッパ36が開弁方向用固定ストッパ56に当接して係止され、これにより、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転及び上昇が強制的に停止せしめられる。なお、ニードル弁25のがたつきを抑えるため、別のばねを用いてニードル弁25に付勢力を付与してもよい。
【0054】
一方、かかる完全開弁状態から、外部の電源回路よりステータ50に逆特性のパルス給電が行われると、ロータ30及び弁軸21が他方向に回転駆動され、雌ねじ孔15cと雄ねじ部21bからなるねじ送り機構を介して、弁軸21及び弁ホルダ23が回転しながら下降する。
【0055】
弁ホルダ23が下降しても、ばね受け部材26の周囲部がばねストッパ27の環状部27aに支持されている間(第2の軸線方向位置にあるとき)は、ニードル弁25には弁ホルダ23から回転トルクがほとんど伝達されない。このとき、弁室VCの内圧とオリフィス11dの内圧との圧力差により、ニードル弁25はオリフィス11dに吸い込まれるように下方に付勢され、それにより抜止部材28a、ワッシャ28b、及び弁ホルダ23の底壁23c同士が密着し、その摩擦力によりニードル弁25は弁ホルダ23とともに回転する。これに対し、ばね受け部材26の中央部が、ニードル弁25の上端に当接したとき(第1の軸線方向位置になったとき)から、ニードル弁25に弁ホルダ23から回転トルクが伝達されるが、上述したように伝達される回転トルクの値が制限されるため、仮に円錐部25cと弁座11eとが接していたとしても、両者の摩耗を抑えることができる。
【0056】
弁ホルダ23が規定量下降したときに、ニードル弁25が弁座11eに着座してオリフィス11dが閉止される。これにより、弁室VCから第1の配管T1側へ向かう冷媒の流れが遮断される。
【0057】
この時点では、可動ストッパ35は未だ固定ストッパ55に当接しておらず、ロータ30及び弁軸21の回転下降は停止されず、コイルばね24が所定量圧縮されるまでパルス給電が継続される。それにより、ニードル弁25が弁座11eに着座したまま回転が制止される一方、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23等はさらに回転しながら下降する。
【0058】
このとき、着座したニードル弁25に対して弁軸21及び弁ホルダ23が下降するため、コイルばね24が縮長圧縮され、これにより弁軸21及び弁ホルダ23の下降力が吸収される。その後、コイルばね24の圧縮量が所定量となったとき、可動ストッパ35が固定ストッパ55に当接して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達し、ステータ50に対しパルス給電が継続されてもロータ30及び弁軸21の下降は強制的に停止される。
【0059】
このように、ニードル弁25が弁座11eに着座してオリフィス11dが閉止された後においても、可動ストッパ35が固定ストッパ55に当接して係止される制御用原点位置に達するまでは、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転下降が継続されることにより、コイルばね24が圧縮される。そのため、コイルばね24の付勢力によりニードル弁25が弁座11eに強く押し付けられ、冷媒漏れ等を確実に防止できる。
【0060】
ここで、ばね受け部材26が、ばねストッパ27とニードル弁25との間で当接を切り換えるタイミングは摩耗抑制等の観点から重要である。そこで、ばねストッパ27と、ニードル弁25と、弁ホルダ23の軸線方向の相対位置を精度よく定める必要がある。
【0061】
本実施形態によれば、ばねストッパ27を弁ホルダ23に圧入する際に、
図6に示すように治具JGを用いて、ニードル弁25との相対位置を容易に且つ精度よく定めている。これにより、電動弁1の開閉弁動作時に、弁軸21の軸線方向位置に応じて、ばね受け部材26が、ばねストッパ27とニードル弁25との間で当接を切り換えるタイミングを適切に定めることができる。また、ばねストッパ27はプレス成形品であるため、安価に製造できる。
【0062】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る電動弁1Aを示す縦断面図である。
図8は、本実施形態のニードル弁周辺を拡大して示す断面図である。本実施形態においては、上記実施形態に対して、弁軸21A,弁ホルダ23A、ニードル弁25A,及びばねストッパ27Aの構成が主として異なる。それ以外の共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0063】
弁軸21Aは、ロータ30に取り付けられた環状の連結体32が外嵌した小径部21Aaと、ガイドステム15の雌ねじ孔15cに螺合する雄ねじ部21Abと、雄ねじ部21Abより下側に形成された大径円筒部21Acと、大径円筒部21Acの周囲に形成された鍔状部21Adと、大径円筒部21Acの下面に形成された半球部21Aeを同軸に連設してなる。
【0064】
有頂円筒状の弁ホルダ23Aは、ガイドステム15の中空円筒部15bの内周に、軸線方向に摺動可能に嵌合している。弁ホルダ23Aは、下端がニードル弁25Aの外周に溶接又はロウ付けされる第1側壁23Aaと、第1側壁23Aaよりも内径が小さい第2側壁23Abと、第2側壁23Abの上端に接続された頂壁23Acとを連設してなる。第1側壁23Aaと第2側壁23Abの内周は、その境界で径が滑らかに変化するように接続されている。頂壁23Acの中央には、弁軸21Aの大径円筒部21Acを軸線方向及び軸線回りに相対移動可能に嵌合させた開口23Adが形成されている。頂壁23Acと、弁軸21Aの鍔状部21Adとの間に、ワッシャ28bが配置されている。
【0065】
ニードル弁25Aは、第1側壁23Aaに嵌合する大径部25Aaと、縮径部25Abと、下方に向かうにしたがって縮径する円錐部25Acと、尖った先端部25Adとを連設してなる。ニードル弁25Aと弁軸21Aとの間には、ばね受け部材26及びコイルばね24が配置されている。また、ばね受け部材26と、弁軸21Aの鍔状部21Adとの間において、平板環状のばねストッパ27Aを第2側壁23Abの内周に圧入により嵌合固定している。ばねストッパ27Aは、例えば
図6に示した治具を用いて、第2側壁23Abに対し弁軸21Aとの関係で軸線方向に沿って所定位置に精度よく圧入又は溶接される。
【0066】
本実施形態によれば、完全閉弁状態から、ステータ50に所定パルス数(例えば15パルス)のパルス給電が行われるまで(弁軸21Aが第1の軸線方向位置にある間)は、弁軸21Aの半球部21Aeがばね受け部材26の平坦な上面に当接しており、それにより円錐部25Acを弁座11eに向かって付勢することができる。また、半球部21Aeとばね受け部材26との当接面積が小さいため、弁軸21Aからばね受け部材26に伝達される回転トルクの値が制限され、円錐部25Acと弁座11eとの摩耗を抑制できる。
【0067】
一方、完全閉弁状態から、ステータ50に所定パルス数(例えば15パルス)のパルス給電が行われると(弁軸21Aが第2の軸線方向位置になると)、弁ホルダ23Aの上昇により、ばね受け部材26の上面周囲部がばねストッパ27Aの下面に当接支持されるようになり、代わって、ばね受け部材26から弁軸21Aの半球部21Aeが離間する。すなわち、弁軸21Aが第2の軸線方向位置にあるときに、ばねストッパ27Aは、コイルばね24の付勢力を支持することにより、弁軸21Aに付勢力が伝達されることを阻止する。このため、ばね受け部材26を介して弁軸21Aからニードル弁25Aが受ける回転トルクが消失する。
【0068】
このとき、大径円筒部21Acと開口23Adとの間に作用する摩擦力により、弁ホルダ23Aは、弁軸21Aから回転トルクを受ける。しかしながら、その摩擦力は、弁ホルダ23Aと中空円筒部15bとの間の摩擦力より小さいため、弁ホルダ23はガイドステム15に対し相対回転しない。このため、円錐部25Acと弁座11eとの摩耗を抑制できる。
【0069】
ステータ50に給電することで弁軸21Aがさらに上昇して、ワッシャ28bを介して弁ホルダ23Aの頂壁23Acに当接すると、それ以降、弁軸21Aとともに弁ホルダ23Aが上昇し、円錐部25Acが弁座11eから離間することで、開弁状態となる。なお、開弁状態から完全閉弁状態への動作については、以上と逆の動作となる。
【0070】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る電動弁1Bを示す縦断面図である。
図10は、本実施形態のニードル弁周辺を拡大して示す断面図である。本実施形態においては、第2実施形態に対して、弁座部材11B、ガイドステム15B,弁軸21B,ニードル弁25B,及びばねストッパ27Bの構成が主として異なる。それ以外の共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0071】
弁座部材11Bは、上述した実施形態と同様に、縮径円筒部11Baと拡径円筒部11Bbとの境界に隔壁11Bcが形成されてなるが、縮径円筒部11Baは、上方に延長されてガイドステム15Bの中空円筒部15Bbの下端に嵌合している。縮径円筒部11Baの内径は、中空円筒部15Bbの内径に等しい。縮径円筒部11Baは、ガイドステム15Bの下方において、内外を貫通する複数の開口11Bfを有する。このため、弁室VCの冷媒は、開口11Bfを介してニードル弁25Bの近傍まで流出入が可能となっている。
【0072】
弁軸21Bは、ロータ30に取り付けられた環状の連結体32が外嵌した小径部21Baと、ガイドステム15Bの雌ねじ孔15Bcに螺合する雄ねじ部21Bbと、雄ねじ部21Bbより下側に形成された大径円筒部21Bcと、大径円筒部21Bcの周囲に形成された鍔状部21Bdと、大径円筒部21Bcの下面に形成された小径円筒部21Beを同軸に連設してなる。小径円筒部21Beの下面は平坦である。
【0073】
環状板23Bは、鍔状部21Bdの上方にて、大径円筒部21Bcに対して軸線方向及び軸線回りに相対移動可能に嵌合している。
【0074】
本実施の形態では、ニードル弁25Bは、上端が環状板23Bに固定された弁体中空円筒部25Baと、弁体中空円筒部25Baの下端に接続された弁体中実円筒部25Bbと、弁体中実円筒部25Bb下端から下方に向かうにしたがって縮径する円錐部25Bcと、尖った先端部25Bdとを連設してなる。ニードル弁25Bが弁ホルダと一体化しており、環状板23Bが、弁ホルダの頂壁を構成し、弁体中空円筒部25Baが、弁ホルダの側壁を構成し、弁体中実円筒部25Bbが、弁ホルダの底壁を構成する。弁体中空円筒部25Baは、内外周を貫通する連通孔25Beを有する。弁体中空円筒部25Baは、ガイドステム15Bの中空円筒部15Bb及び縮径円筒部11Baに対して、軸線方向に摺動可能に嵌合している。
【0075】
弁体中空円筒部25Ba内において、ニードル弁25Bの弁体中実円筒部25Bbの上端と、弁軸21Bとの間には、円盤部材(ばね受け部材ともいう)60、コイルばね24、ばね受け部材26及び円形プレート61が配置されている。円盤部材60の平坦な上面は、弁軸21Bの小径円筒部21Beの下面に当接する。円盤部材60とばね受け部材26との間には、コイルばね24が配置されて、両者を離間する方向に付勢する。ばね受け部材26と、弁体中実円筒部25Bbとの間には、円形プレート61が介在する。
【0076】
また、ばね受け部材26と小径円筒部21Beとの間において、平板環状のばねストッパ27Bが弁体中空円筒部25Baの内周に圧入により嵌合固定している。ばねストッパ27Bも、弁体中空円筒部25Baに対し弁軸21Bとの関係で軸線方向に沿って所定位置に精度よく圧入される。弁体中空円筒部25Baの内径を異ならせて、内周面がその境界部で滑らかにつながるように内径を漸次変化させるようにしてもよい。かかる場合、ばねストッパ27は、径が小さい弁体中空円筒部25Baの領域に圧入固定される。
【0077】
本実施形態によれば、完全閉弁状態から、ステータ50に所定パルス数(例えば15パルス)のパルス給電が行われるまで(弁軸21Bが第1の軸線方向位置にある間)は、弁軸21Bの小径円筒部21Beが円盤部材60の中央上面に当接しており、それにより圧縮されたコイルばね24の付勢力が、ばね受け部材26、円形プレート61を介してニードル弁25Bに伝達され、円錐部25Bcを弁座11Beに向かって付勢することができる。
【0078】
一方、完全閉弁状態から、ステータ50に所定パルス数(例えば15パルス)のパルス給電が行われる(弁軸21Bが第2の軸線方向位置になると)、弁軸21Bの上昇により、小径円筒部21Beが円盤部材60から離間し、代わって、円盤部材60の周囲部がばねストッパ27Aの下面に当接支持されるようになる。すなわち、弁軸21Bが第2の軸線方向位置にあるときに、ばねストッパ27Bは、コイルばね24の付勢力を支持することにより、弁軸21Bに付勢力が伝達されることを阻止する。このため、ばね受け部材26を介して弁軸21Bからニードル弁25Bが受ける回転トルクが消失する。
【0079】
ここで、大径円筒部21Bcと環状板23Bとの間に作用する摩擦力により、環状板23B及びニードル弁25Bは、弁軸21Bから回転トルクを受ける。しかしながら、その摩擦力は、弁体中空円筒部25Baと、中空円筒部15Bb及び縮径円筒部11Baとの間の摩擦力より小さいため、ニードル弁25Bはガイドステム15Bに対し相対回転しない。このため、円錐部25Bcと弁座11Beとの摩耗を抑制できる。
【0080】
ステータ50に給電することで弁軸21Bがさらに上昇して、鍔状部21Bdが環状板23Bを上昇させると、ニードル弁25Bが上昇し、円錐部25Bcが弁座11Beから離間することで、開弁状態となる。なお、開弁状態から完全閉弁状態への動作については、以上と逆の動作となる。
【0081】
なお、電動弁の具体的な構成は上述した各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更があっても本発明に含まれることはもちろんである。
【0082】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(発明A)
モータにより回転駆動されるとともに軸線方向に移動する弁軸と、
弁座を備え、前記弁軸を回転可能に保持する弁本体ユニットと、
前記弁軸に対して軸線方向に変位可能に配置され、前記弁座に着座し又は離間する弁体と、
前記弁軸とともに軸線方向に移動し、前記弁体を保持する弁ホルダと、
前記弁軸と前記弁体とが離間する方向の付勢力を発生するばね部材と、
前記弁軸と前記弁体との間に配置されるように前記弁ホルダに固定されたばねストッパ部と、を有し、
少なくとも全閉位置を含み、前記ばね部材の付勢力を前記弁体が受ける前記弁軸の第1の軸線方向位置と、少なくとも全開位置を含み、前記ばね部材の付勢力を前記ばねストッパ部が受ける前記弁軸の第2の軸線方向位置と、が設定されるように、前記弁ホルダに対して前記ばねストッパ部が軸線方向に位置決めされる、
ことを特徴とする電動弁。
【0083】
(発明B)
前記弁ホルダは、筒状の側壁と、前記側壁の軸線方向一端を閉止する底壁とを有し、前記ばねストッパ部は、前記側壁の内周に圧入により固定される、
ことを特徴とする発明Aの電動弁。
【0084】
(発明C)
前記側壁は、軸線方向他端側に形成された第1側壁と、前記第1側壁より内径が小さい第2側壁とを有し、前記第1側壁と前記第2側壁の内周面は境界部にて内径が漸次変化するようにつながっており、前記ばねストッパ部は、前記第2側壁に圧入されている、
ことを特徴とする発明Bの電動弁。
【0085】
(発明D)
前記弁ホルダは、前記弁軸に固定され、前記弁体は、前記弁ホルダに対して軸線方向に相対移動可能に保持されている、
ことを特徴とする発明A~Cのいずれかの電動弁。
【0086】
(発明E)
前記弁軸と前記ばねストッパ部との間において、前記ばね部材の前記付勢力を受けるばね受け部材が配置され、前記ばね受け部材は、前記弁軸が前記第1の軸線方向位置にあるときに、前記弁体に当接し、前記弁軸が前記第2の軸線方向位置にあるときに、前記ばねストッパ部に当接する、
ことを特徴とする発明Dの電動弁。
【0087】
(発明F)
前記弁ホルダは、前記弁体に固定され、前記弁軸は、前記弁ホルダに対して軸線方向及び軸線回りに相対移動可能に保持されている、
ことを特徴とする発明A~Cのいずれかの電動弁。
【0088】
(発明G)
前記弁体と前記ばねストッパ部との間において、前記ばね部材の前記付勢力を受けるばね受け部材が配置され、前記ばね受け部材は、前記弁軸が前記第1の軸線方向位置にあるときに、前記弁軸に当接し、前記弁軸が前記第2の軸線方向位置にあるときに、前記ばねストッパ部に当接する、
ことを特徴とする発明Fの電動弁。
【0089】
(発明H)
前記弁ホルダは、前記弁体と一体であり、前記弁軸は、前記弁ホルダに対して軸線方向及び軸線回りに相対移動可能に保持されている、
ことを特徴とする発明A~Cのいずれかの電動弁。
【0090】
(発明I)
前記弁体と前記ばねストッパ部との間において、前記ばね部材の前記付勢力を受けるばね受け部材が配置され、前記ばね受け部材は、前記弁軸が前記第1の軸線方向位置にあるときに、前記弁軸に当接し、前記弁軸が前記第2の軸線方向位置にあるときに、前記ばねストッパ部に当接する、
ことを特徴とする発明Hの電動弁。
【0091】
(発明J)
前記弁軸に固定されたロータと、前記ロータを回転駆動可能なステータとを有する、
ことを特徴とする発明A~Iのいずれかの電動弁。
【符号の説明】
【0092】
1、1A、1B 電動弁
10 弁本体
11、11B 弁座部材
11e、11Be 弁座
15 ガイドステム
21、21A、21B 弁軸
23、23A 弁ホルダ
23a 第1側壁
23b 第2側壁
24 コイルばね
25、25A、25B ニードル弁
26 ばね受け部材
27、27A、27B ばねストッパ
30 ロータ
35 閉弁方向用可動ストッパ
36 開弁方向用可動ストッパ
50 ステータ
53 ステータコイル
55 閉弁方向用固定ストッパ
56 開弁方向用固定ストッパ
VC 弁室