(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018112
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型のインク組成物、記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20240201BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240201BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240201BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20240201BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20240201BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240201BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/30
C08F20/10
C08F2/46
B41M1/30 D
B41J2/01 501
B41J2/01 121
B41J2/01 127
B41M5/00 120
B41M5/00 112
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121216
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 佳瑠樹
(72)【発明者】
【氏名】宇高 公淳
(72)【発明者】
【氏名】牧本 祐二
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 菜美
(72)【発明者】
【氏名】田村 充功
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
2H186
4J011
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA13
2C056FC02
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2C056HA44
2C056KC02
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4J100JA37
(57)【要約】
【課題】塗布表面に密着性を有する硬化膜を形成することができる活性エネルギー線硬化型のインク組成物を提供する。
【解決手段】重合性モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、前記重合性モノマーは、下記モノマーA1を前記重合性モノマー全量中10mol%以上の割合で含有するインク組成物。
モノマーA1:脂肪族環状構造を有する単官能重合性モノマー
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、
前記重合性モノマーは、下記モノマーA1を前記重合性モノマー全量中10mol%以上の割合で含有する
インク組成物。
モノマーA1:脂肪族環状構造を有する単官能重合性モノマー
【請求項2】
前記重合性モノマーは、さらに下記モノマーBを含有する
請求項1に記載のインク組成物。
モノマーB:分子量/官能基数≧150の2官能以上のモノマー
【請求項3】
前記モノマーBを前記重合性モノマー全量中1.0mol%以上9.0mol%以下の割合で含有する
請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記重合性モノマーは、下記モノマーA2を前記重合性モノマー全量中30mol%以上70mol%以下の割合で含有する
請求項1から3のいずれかに記載のインク組成物。
モノマーA2:モノマーA1以外であって、環構造として芳香族環状構造、及び/又は複素環構造を有する単官能重合性モノマー
【請求項5】
樹脂基材に用いられる
請求項1から4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項6】
基材の表面に請求項1から5のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット法によって吐出する
記録方法。
【請求項7】
表面処理された樹脂基材の表面に請求項1から5のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット法によって吐出する吐出工程と、
を含む
記録方法。
【請求項8】
表面処理された前記樹脂基材は、その表面に対してコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、又はシランカップリング処理が施されている
請求項7に記載の記録方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット吐出して記録物を得る
記録物の製造方法。
【請求項10】
樹脂基材と、請求項1から5のいずれかに記載のインク組成物の硬化物と、を備える
記録物。
【請求項11】
前記硬化物の厚さが1μm以上100μm以下である
請求項10に記載の記録物。
【請求項12】
前記樹脂基材がポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む
請求項10又は11に記載の記録物。
【請求項13】
請求項1から5のいずれかに記載のインク組成物が充填された貯蔵機構を備えた
インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物、記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物の小ロット多品種化が進んでおり、従来のオフセット方式の印刷方法の代替として、オンデマンドプリントであるインクジェット方式の印刷方法が注目されている。インクジェット方式の印刷方法は、従来のオフセット方式の印刷方法と比較して、簡便であり、経済性や省エネルギー性等のメリットを有する。
【0003】
このようなインクジェット方式の印刷方法の中にも紫外線等の活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化型のインク組成物がある。活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、速乾性があるため、プラスチック、ガラス、コート紙等、インクを吸収しない又は殆ど吸収しない基材に印字する場合であっても、インクの滲みを防止できる。
【0004】
例えば、特許文献1には、所定構造の重合性モノマーと、ヘテロ環を有する単官能重合性モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型のインク組成物に関する技術が記載されている。特許文献1によれば、この活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、硬度、硬化性、様々な基材に対する密着性、及び延伸性を兼ね備えた硬化物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、各種基材の表面に塗布され、活性エネルギー線が照射されることにより硬化するインク組成物は、インク組成物の硬化物の基材に対する密着性が要求される。
【0007】
本発明は、塗布表面に密着性を有する硬化膜を形成することができる活性エネルギー線硬化型のインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、特定の重合性モノマーを含有するインク組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)重合性モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、前記重合性モノマーは、下記モノマーA1を前記重合性モノマー全量中10mol%以上の割合で含有するインク組成物。
モノマーA1:脂肪族環状構造を有する単官能重合性モノマー
【0010】
(2)前記重合性モノマーは、さらに下記モノマーBを含有する(1)に記載のインク組成物。
モノマーB:分子量/官能基数≧150の2官能以上のモノマー
【0011】
(3)前記モノマーBを前記重合性モノマー全量中1.0mol%以上9.0mol%以下の割合で含有する(2)に記載のインク組成物。
【0012】
(4)前記重合性モノマーは、下記モノマーA2を前記重合性モノマー全量中30mol%以上70mol%以下の割合で含有する(1)から(3)のいずれかに記載のインク組成物。
モノマーA2:モノマーA1以外であって、環構造として芳香族環状構造、及び/又は複素環構造を有する単官能重合性モノマー
【0013】
(5)樹脂基材に用いられる(1)から(4)のいずれかに記載のインク組成物。
【0014】
(6)基材の表面に(1)から(5)のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット法によって吐出する
記録方法。
【0015】
(7)表面処理された樹脂基材の表面に(1)から(5)のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット法によって吐出する吐出工程と、
を含む記録方法。
【0016】
(8)表面処理された前記樹脂基材は、その表面に対してコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、又はシランカップリング処理が施されている(7)に記載の記録方法。
【0017】
(9)(1)から(5)のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット吐出して記録物を得る記録物の製造方法。
【0018】
(10)樹脂基材と、(1)から(5)のいずれかに記載のインク組成物の硬化物を含む記録層と、を備える記録物。
【0019】
(11)前記記録層の厚さが1μm以上100μm以下である(10)に記載の記録物。
【0020】
(12)前記樹脂基材がポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む(10)又は(11)に記載の記録物。
【0021】
(13)(1)から(5)のいずれかに記載のインク組成物が充填された貯蔵機構を備えたインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0024】
≪1.活性エネルギー線硬化型のインク組成物≫
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、重合性モノマーを含有し、以下のモノマーA1を重合性モノマー全量中10mol%以上の割合で含有することを特徴とする。
【0025】
モノマーA1:脂肪族環状構造を有する単官能重合性モノマー
【0026】
従来、プロピレン樹脂のようなオレフィン系樹脂に対して、密着性の高いインク組成物の硬化膜を形成することは必ずしも容易ではなく、例えば、オレフィン系樹脂の表面にコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、シランカップリング処理等の表面処理を施し、その後、表面処理が施されたオレフィン系樹脂の表面にインク組成物を塗布して活性エネルギー線を照射して硬化膜を形成することが一般的であった。しかしながら、このような表面処理を施したオレフィン系樹脂であったとしても、密着性の高い硬化膜を形成することは容易ではなく、2液硬化型のインキやプライマーを用いるなど、表面処理に加えて、さらに密着性を向上させる手段を併用する必要があった。特に従来のインクジェット吐出用のインク組成物やプライマーなどでは、十分に密着性の高い硬化膜を得ることできなかった。
【0027】
ところが、驚くべくことに、重合性モノマーとして、このようなモノマーA1を所定の割合で含有する本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物であれば、表面処理を施していないようなオレフィン系樹脂のような密着性の高いインク組成物の硬化膜を形成することが困難であった基材(記録媒体)を含め種々の基材(記録媒体)に対して高い密着性を有する硬化膜を形成できることが本発明者らの研究により明らかとなった。
【0028】
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、表面処理を施していないオレフィン系樹脂に対しても密着性の高い硬化膜を形成することが可能であるが、特に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、シランカップリング処理等の表面処理が施されたオレフィン系樹脂の表面対して特に高い密着性を有する。
【0029】
なお、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、色材を含有する着色インクであってもよい。本明細書において「色材」とは、染料及び顔料を含むものであり、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色や淡色のような画像を形成する着色インクに含まれる染料又は顔料や、ホワイトインクに含まれる白色染料又は白色顔料や、メタリックインクに含まれる光輝性顔料をも含む概念として使用する。
【0030】
この着色インクは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色や淡色のような画像を形成する着色インクであってもよい。また、着色インクは、白色色材を含むホワイトインクであってもよく、光輝性顔料を含むメタリックインク等であってもよい。
【0031】
また、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、色材を含有しないクリアインクであってもよい。具体的には、基材等の表面にプライマー層を形成するためのプライマー剤であってもよいし、記録物の表面にオーバーコート層を形成するためのオーバーコートインクであってもよいし、記録物(被体)の艶を消す艶消しインク組成物であってもよいし、耐候層を形成するための紫外線吸収剤や光安定化剤等を含むインクであってもよい。
【0032】
なお、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物における水分の含有量は、インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
以下、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0034】
[重合性モノマー]
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、重合性モノマーを含有する。重合性モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合を一つ以上有し、活性エネルギー線を照射することにより重合される重合して硬化物を形成する重合前のモノマー(化合物)である。活性エネルギー線とは、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等が含まれる。この重合性モノマーは、主に液状であり、重合して硬化物を形成する機能を有するとともに、インク組成物の分散媒又は溶媒としての機能をも有する。
【0035】
重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に1個有する単官能重合性モノマーであってもよいし、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に2個以上有する多官能重合性モノマーであってもよい。
【0036】
また、重合性モノマーは、エチレン性不飽和多重結合等の反応基を有する単量体の重合性モノマーであればよく、本明細書ではオリゴマーと称されるような分子量の大きな単量体であってもモノマーと称する。
【0037】
この重合性モノマーは、単官能重合性モノマーとして以下のモノマーA1を重合性モノマー全量中10mol%以上の割合で含有する。
【0038】
モノマーA1:脂肪族環状構造を有する単官能重合性モノマー
【0039】
このような重合性モノマーA1を含有するインク組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、種々の基材(記録媒体)に対して密着性に優れるインク組成物の硬化膜を形成することができる。
【0040】
また、重合性モノマーは、単官能重合性モノマーとして以下のモノマーA2を重合性モノマー全量中30mol%以上70mol%以下の割合で含有することが好ましい。
【0041】
モノマーA2:環構造として芳香族環状構造、及び/又は複素環構造を有する単官能重合性モノマー
【0042】
このような重合性モノマーA2を含有するインク組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、種々の基材(記録媒体)に対してさらに密着性に優れるインク組成物の硬化膜を形成することができる。
【0043】
さらに、重合性モノマーは、多官能重合性モノマーとして以下のモノマーBを含有することが好ましい。
【0044】
モノマーB:分子量/官能基数≧150の2官能以上のモノマー
【0045】
このような重合性モノマーBを含有するインク組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、硬化膜の硬化時に硬化収縮を抑制できるようになるので、結果的に種々の基材(記録媒体)に対してさらに密着性に優れるインク組成物の硬化膜を形成することができるようになる。さらに、耐溶剤性を有する硬化膜を形成することが可能となる。
【0046】
また、このモノマーBは、重合性モノマー全量中1.0mol%以上9.0mol%以下の割合で含有することが好ましい。
【0047】
以下、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物に含有してもよい、単官能重合性モノマー及び、多官能重合性モノマーについて説明する。
【0048】
(単官能重合性モノマー)
単官能重合性モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に1個有する重合性モノマーである。単官能重合性モノマーは、モノマーA1を含有する。また、モノマーA1とともに、モノマーA2又はその他の単官能重合性モノマーを含有してもよい。
【0049】
以下、モノマーA1、モノマーA2、及びその他の単官能重合性モノマーについて説明する。
【0050】
(1)モノマーA1
モノマーA1とは、脂肪族環状構造を有する単官能重合性モノマーである。
【0051】
モノマーの側鎖部分に脂肪族環状構造を有することにより、密着性の高い硬化膜を形成することが困難であったオレフィン系基材等を含む種々の基材(記録媒体)に対して高い密着性を有する硬化膜を形成することができる。
【0052】
脂肪族環状構造とは、3つ以上の炭素間単結合で構成された単環化合物であるシクロアルカン(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン)や、多環化合物であるシクロアルカン(ジシクロペンタン、ノルボルナン、アダマンタン)等が挙げられる。
【0053】
また、シクロアルケン(例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデケン)等の多重結合を1又は複数有する脂肪族環状構造であってもよい。
【0054】
また、これらのモノマーA1の中でも、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上11.0以下であることが好ましい。
【0055】
CH2=C(R1)-R2 ・・・式(1)
(R1は水素又はメチル基である)
【0056】
ここで、側鎖部分SP値とは、式(1)の「-R2」部分のSP値(solubility parameter)を意味し、SP値と同様に「-R2」を構成する官能基を分解し、そのΔEoh(cal/mol)の合計値をAと定義し、そのΔV(cm3/mol)の合計値をBと定義したときの√(A/B)値を意味する。なお、ΔEohとΔVは各置換基固有の数値であり、Fedorsの数値を参考とした。例えば、ブチルアクリレート(または、ブチルメタクリレート)である場合には、「-R2」は、「-COO-(CH2)3-CH3」となるので、以下の表1のΔEohとΔVを使用して計算すると、側鎖部分SP値=√((1125+1180×3+4300)/(33.5+16.1×3+(18.0))))=9.48となる。
【0057】
【0058】
モノマーA1の側鎖部分SP値を所定範囲とすることにより、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する硬化膜を形成することが可能となる。
【0059】
高分子を含む硬化膜の物性はしばしば硬化膜に含まれる高分子の主鎖よりもむしろ高分子の側鎖部分によって大きく影響を受けることが本発明者らの研究により明らかとなった。式(1)の「-R2」部分のSP値である側鎖部分SP値を所定範囲に制御されたモノマーを含むことで、硬化膜の物性に影響を与えることが可能となり、本発明の効果を奏する硬化膜を形成することが可能となると考えられる。
【0060】
そして、一般にSP値は物質の親和性を相対的に示す値であり、近しいものほど親和性が向上する。側鎖SP値を所定の範囲とするモノマーA1を使用することで、基材に対して親和性が向上し高い密着性を有する硬化膜を形成することができる。
【0061】
なお、側鎖部分SP値は、8.0以上であることが好ましく、9.0以上であることがより好ましく、9.5以上であることがさらに好ましい。側鎖部分SP値は、11.0以下であることが好ましく、10.5以下であることがより好ましく、10.0以下であることがさらに好ましい。
【0062】
また、これらのモノマーA1の中でも、式(1)の構造部分の「-R2」部分のモル体積を側鎖部分のモル体積と定義したときに、側鎖部分のモル体積は、特に限定されないが、170以下であることが好ましい。ここで、側鎖部分のモル体積とは、式(1)の「-R2」部分のモル体積を意味し、側鎖SP値の計算と同様に、Fedorsの数値を参考として構成する官能基を分解し、そのΔV(cm3/mol)の合計値を算出した値を意味する。側鎖部分のモル体積が170以下であることで、モノマーA1の「-R2」部分が嵩高くなりすぎないので、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する密着性を形成することが可能となる。
【0063】
また、このモノマーA1の水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は2.0以上であることが好ましい。「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」は、疎水性の指標であり、「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」が2.0以上(すなわち、疎水性が相対的に高いモノマー)を含むことにより、種々の基材に対して密着性をさらに向上させることが可能となるこのモノマーA1の水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は5.0以下であることが好ましい。「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」が5.0以下を含むことにより、種々の基材に対して密着性をさらに向上させることが可能となる。
【0064】
なお、モノマーA1の水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、2.2以上であることが好ましく、2.4以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。このモノマーA1の水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、4.8以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。
【0065】
モノマーA1としては、例えば、シクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:2.760±0.226、Tg:19℃、側鎖部分のモル体積:113.5cm3/mol)、シクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:3.179±0.252、Tg:83℃、側鎖部分のモル体積:113.5cm3/mol)、ジシクロペンタニルアクリレート(側鎖部分SP値:10.31、LogP:3.957±0.244、Tg:120℃、モル体積:141.5cm3/mol)、ジシクロペンタニルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.31、LogP:4.375±0.266、Tg:175℃、側鎖部分のモル体積:141.5cm3/mol)、ビニルシクロヘキサン(側鎖部分SP値:8.54、LogP:3.799±0.193、Tg:134℃、側鎖部分のモル体積:95.5cm3/mol)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.08、LogP:4.570±0.243、Tg:81℃、側鎖部分のモル体積:177.7cm3/mol)、n-ブチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.35、LogP:5.243±0.255、側鎖部分のモル体積:178.2cm3/mol)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.12、LogP:4.212±0.254、Tg:52℃、側鎖部分のモル体積:161.6cm3/mol)、tert-ブチル-4-エチニルシクロヘキサン(側鎖部分SP:8.04、LogP:5.609±0.219℃、側鎖部分のモル体積:159.7cm3/mol)、ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:13.02、LogP:1.230±0.281、Tg:93℃、側鎖部分のモル体積:106.4cm3/mol)、シクロオクチルメタクリレート(側鎖部分SP値:9,67、LogP:4.233±0.253、側鎖部分のモル体積:145.7cm3/mol)、シクロヘプチルメタクリレート(側鎖部分SP値:9,80、LogP:3.706±0.252、側鎖部分のモル体積:129.6cm3/mol)、シクロペンチルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.18、LogP:2.652±0.252、側鎖部分のモル体積:97.4cm3/mol)、シクロブチルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.63、LogP:2.125±0.252、側鎖部分のモル体積:83.3cm3/mol)、シクロプロピルメタクリレート(側鎖部分SP値:11.07、LogP:1.598±0.252、側鎖部分のモル体積:モル体積:67.2cm3/mol)、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.08、LogP:4.570±0.243、Tg:81℃、側鎖部分のモル体積:モル体積:177.7cm3/mol)、イソボルニルアクリレート(側鎖部分SP値:9.42、LogP:4.029±0.273、Tg:97℃、モル体積:158.4cm3/mol)、イソボルニルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.42、LogP:4.447±0.301、Tg:180℃、モル体積:158.4cm3/mol)、ジシクロペンテニルアクリレート(側鎖部分SP値:10.40、LogP:4.086±0.274、Tg:120℃、モル体積:124.6cm3/mol)、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(側鎖部分SP値:10.40、LogP:3.455±0.439、Tg:10~20℃、モル体積:123.4cm3/mol)等を挙げることができる。この中でもモノマーA1はアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーであることが好ましい。これらのモノマーA1は単独で使用しても良いし、複数のモノマーA1を組み合わせもよい。なお括弧内の「側鎖部分SP値」とは、式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値を意味し、括弧内の「LogP」とは、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)を意味し、括弧内の「Tg」とはそのモノマーのホモポリマーのTgを意味する。
【0066】
モノマーA1の含有量は、重合性モノマー全量中10.0mol%以上の割合で含有するものであればとくに限定されるものではないが、モノマーA1の含有量の下限は、重合性モノマー全量中11.0mol%以上であることが好ましく、11.5mol%以上であることがより好ましく、12.0mol%であることがさらに好ましい。これにより、環構造を有するモノマーA1の含有量が増加するので、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する硬化膜を形成することが可能となる。モノマーA1の含有量の上限は、重合性モノマー全量中60.0mol%以下であることが好ましく、50.0mol%以下であることがより好ましく、40.0mol%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
(2)モノマーA2
モノマーA2とは、環構造として芳香族環状構造、及び/又は複素環構造を有する単官能重合性モノマーである。
【0068】
モノマーA1とともに、モノマーの側鎖部分に環構造として芳香族環状構造、及び/又は複素環構造の環状構造を有することにより、オレフィン系樹脂基材やアクリル系樹脂基材等を含む種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する硬化膜を形成することができる。
【0069】
芳香族環状構造とは、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香族性を示す環状炭化水素である。この芳香族環状構造は、複素環式芳香環状構造とは異なる芳香族環状構造であることが好ましい。なお、複素環式芳香環状構造とは異なる芳香族環状構造を有する単官能重合性モノマーを含有する場合、この複素環式芳香環状構造とは異なる芳香族環状構造を有する単官能重合性モノマーとともに、複素環式芳香環状構造を有する単官能重合性モノマーを含有してもよい。
【0070】
複素環構造とは、環の中に炭素と1つ以上の他の元素(例えば、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、ケイ素からなる群より選択される少なくとも1以上)を含む環式化合物である。この複素環構造は、脂肪族複素環構造であることが好ましい。なお、脂肪族複素環構造を有する単官能重合性モノマーを含有する場合、この脂肪族複素環構造を有する単官能重合性モノマーとともに、複素環式芳香環状構造を有する単官能重合性モノマーを含有してもよい。
【0071】
また、モノマーA2の中でも、上記で定義した側鎖部分SP値が8.0以上であることが好ましく、8.5以上であることがより好ましく、9.5以上であることがさらに好ましい。側鎖部分SP値は、13.0以下であることが好ましく、11.0以下であることがより好ましく、10.5以下であることがさらに好ましく、10.0以下であることがさらになお好ましい。モノマーA2の側鎖部分SP値を所定範囲とすることにより、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する硬化膜を形成することが可能となる。
【0072】
また、モノマーA2の中でも、上記で定義した側鎖部分のモル体積が170以下であることが好ましい。モノマーA2の側鎖部分モル体積を所定範囲とすることにより、種々の基材(記録媒体)に対してさらに高い密着性を有する硬化膜を形成することが可能となる。
【0073】
また、モノマーA2の中でも、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は2.0以上であることが好ましく、2.2以上であることが好ましく、2.4以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。このモノマーA2の水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、5.0以下であることが好ましく、4.8以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましく、3.5以下であることがさらになお好ましい。
【0074】
モノマーA2としては、例えば、フェニルアクリレート(側鎖部分SP値:10.75、LogP:1.940±0.404、Tg:57℃、モル体積:105.4cm3/mol)、フェニルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.75、LogP:2.359±0.429、Tg:110、モル体積:105.4cm3/mol)、ベンジルアクリレート(側鎖部分SP値:10.49、LogP:2.109±0.230、Tg:6℃、モル体積:121.5cm3/mol)、ベンジルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.49、LogP:2.527±0.255、Tg:54℃、モル体積:121.5cm3/mol)、フェノキシエチルアクリレート(側鎖部分SP値:10.42、LogP:2.371±0.246、Tg:-22℃、モル体積:141.4cm3/mol)、フェノキシエチルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.42、LogP:2.790±0.268、Tg:-3℃、モル体積:141.4cm3/mol)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(側鎖部分SP値:10.37、Tg:-12℃、モル体積:101.2cm3/mol)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.37、LogP:1.399±0.340、Tg:60℃、モル体積:101.2cm3/mol)スチレン(側鎖部分SP値:9.50、LogP:2.821±0.191、Tg:100℃、モル体積:87.4cm3/mol)、4-アクリロイルモルフォリン(側鎖部分SP値:12.95、LogP:-0.689±0.441、Tg:145℃、モル体積:76.5cm3/mol)、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:1.032±0.361、Tg:27℃)、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリドン、2-ビニル-2-オキサゾリンN-ビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロール、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N-ビニルカプロラクタム、(シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル))(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。この中でもモノマーA2はアクリレートモノマー又はメタクリレートモノマーであることが好ましい。これらのモノマーA2は単独で使用しても良いし、複数のモノマーA2を組み合わせもよい。なお括弧内の「側鎖部分SP値」とは、式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値を意味し、括弧内の「LogP」とは、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)を意味し、括弧内の「Tg」とはそのモノマーのホモポリマーのTgを意味する。
【0075】
モノマーA2の含有量は、とくに限定されるものではないが、重合性モノマー全量中30mol%以上であることが好ましく、35mol%以上であることがより好ましく、40mol%以上であることがさらに好ましい。モノマーA2の含有量は、重合性モノマー全量中70mol%以下であることが好ましく、69mol%以下であることがより好ましく、68mol%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
(3)その他の単官能重合性モノマー
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物に含まれる単官能重合性モノマーは、モノマーA1やモノマーA2とは異なるその他の単官能重合性モノマー含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。その他の単官能重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチルα-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、エチルα-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、n-ブチルα-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルメチルカルバメート、N,N-メチルビニルアセトアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロニトリル及び、これらのアクリレートにアルコキシ変性、及びカプロラクトン変性等の各種変性を有するもの、を挙げることができる。これらのその他のモノマーは単独で使用しても良いし、複数のモノマーを組み合わせもよい。なお、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」「メタクリレート」の両方を意味する。
【0077】
その他の単官能重合性モノマーの含有量は、あとくに限定されるものではないが、その他の単官能重合性モノマーの含有量の上限は、重合性モノマー全量中20.0mol%以下であることが好ましく、15.0mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることがさらに好ましい。
【0078】
(多官能重合性モノマー)
多官能重合性モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に2個以上有する重合性モノマーである。本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、多官能重合性モノマーを含有してもよいし、含有しなくともよく、含有してもよい。
【0079】
そして、多官能重合性モノマーは、モノマーB、又はその他の多官能重合性モノマーを含有してもよい。
【0080】
以下、モノマーB、及びその他の多官能重合性モノマーについて説明する。
(1)モノマーB
モノマーBとは、分子量/官能基数≧150の2官能以上のモノマーである。「分子量/官能基数」とは、モノマー(化合物)中のエチレン性不飽和二重結合の数に対するモノマー(化合物)の分子量であり、「分子量/官能基数≧150」とは、「分子量/官能基数」が150以上であることを意味する。モノマーBを含有することで硬化膜の硬化時に硬化収縮を抑制できるようになるので、結果的に種々の基材(記録媒体)に対してさらに密着性に優れるインク組成物の硬化膜を形成することができるようになる。さらに、耐溶剤性を有する硬化膜を形成することが可能となる。
【0081】
モノマーBとしては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの例えばエチレンオキサイド変性(EO変性)(2)(分子量=314、官能基数=2、分子量/官能基数=157)、EO変性(3)(分子量=358、官能基数=2、分子量/官能基数=179)、EO変性(5)(分子量=446、官能基数=2、分子量/官能基数=223)、PO変性(2)(分子量=342、官能基数=2、分子量/官能基数=171)、PO変性(3)(分子量=400、官能基数=2、分子量/官能基数=200)、ネオペンチルグリコールジアクリレートの例えばPO変性(8)(分子量=676、官能基数=2、分子量/官能基数=338)、PO変性(16)(分子量=1140、官能基数=2、分子量/官能基数=570)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートの例えば変性無し(分子量=326、官能基数=2、分子量/官能基数=163)、カプロラクトン変性(2)(分子量=554、官能基数=2、分子量/官能基数=277)、カプロラクトン変性(4)(分子量=782、官能基数=2、分子量/官能基数=391)、ポリアルキレングリコールジアクリレートの例えばEO変性(4)(分子量=302、官能基数=2、分子量/官能基数=151)、EO変性(9)(分子量=508、官能基数=2、分子量/官能基数=254)、EO変性(14)(分子量=742、官能基数=2、分子量/官能基数=371)、EO変性(23)(分子量=1138、官能基数=2、分子量/官能基数=569)、EO変性(46)(分子量=2150、官能基数=2、分子量/官能基数=1075)PO変性(3)(分子量=300、官能基数=2、分子量/官能基数=150)、PO変性(7)(分子量=532、官能基数=2、分子量/官能基数=266)、PO変性(12)(分子量=822、官能基数=2、分子量/官能基数=411)、PO変性(12)&EO変性(6)(分子量=1086、官能基数=2、分子量/官能基数=543)、PO変性(6)&EO変性(12)(分子量=1002、官能基数=2、分子量/官能基数=501)、PO変性(4)&EO変性(12)(分子量=886、官能基数=2、分子量/官能基数=443)、PO変性(4)&EO変性(17)(分子量=1106、官能基数=2、分子量/官能基数=553)、PO変性(13)&EO変性(5)(分子量=3124、官能基数=2、分子量/官能基数=1562)、ブチレンオキサイド変性(BO変性)(3.5)(分子量=378、官能基数=2、分子量/官能基数=189)、BO変性(9)(分子量=774、官能基数=2、分子量/官能基数=387)、BO変性(14)(分子量=1134、官能基数=2、分子量/官能基数=567)、アルコキシ化ビスフェノールAジアクリレートの例えばEO変性(2)(分子量=424、官能基数=2、分子量/官能基数=212)、EO変性(3)(分子量=468、官能基数=2、分子量/官能基数=234)、EO変性(4)(分子量=512、官能基数=2、分子量/官能基数=256)、EO変性(10)(分子量=776、官能基数=2、分子量/官能基数=388)、EO変性(20)(分子量=1216、官能基数=2、分子量/官能基数=608)、EO変性(30)(分子量=1656、官能基数=2、分子量/官能基数=828)、PO変性(3)(分子量=510、官能基数=2、分子量/官能基数=255)、PO変性(6)&EO変性(3)(分子量=816、官能基数=2、分子量/官能基数=408)、トリメチロールプロパントリアクリレートの例えばエチレンオキサイド変性(EO変性)(6)(分子量=560、官能基数=3、分子量/官能基数=187)EO変性(9)(分子量=692、官能基数=3、分子量/官能基数=231)、EO変性(15)(分子量=956、官能基数=3、分子量/官能基数=319)、EO変性(20)(分子量=1176、官能基数=3、分子量/官能基数=392)、EO変性(30)(分子量=1616、官能基数=3、分子量/官能基数=539)、プロピレンオキサイド変性(PO変性)(3)(分子量=470、官能基数=3、分子量/官能基数=157)PO変性(6)(分子量=645、官能基数=3、分子量/官能基数=215)、グリセリントリアクリレートの例えばEO変性(6)(分子量=518、官能基数=3、分子量/官能基数=173)EO変性(9)(分子量=650、官能基数=3、分子量/官能基数=217)、EO変性(20)(分子量=1134、官能基数=3、分子量/官能基数=378)、PO変性(5.5)(分子量=573、官能基数=3、分子量/官能基数=191)PO変性(6)(分子量=602、官能基数=3、分子量/官能基数=201)、PO変性(9)(分子量=776、官能基数=3、分子量/官能基数=259)、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの例えばEO変性(35)(分子量=1892、官能基数=4、分子量/官能基数=473)、PO変性(10)(分子量=932、官能基数=4、分子量/官能基数=233)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの例えばEO変性(12)(分子量=1075、官能基数=6、分子量/官能基数=179)、(18)(分子量=1339、官能基数=6、分子量/官能基数=223)、EO変性(24)(分子量=1603、官能基数=6、分子量/官能基数=267)、EO変性(48)(分子量=2659、官能基数=6、分子量/官能基数=443)、カプロラクトン変性(6)(分子量=1231、官能基数=6、分子量/官能基数=205)、カプロラクトン変性(12)(分子量=1915、官能基数=6、分子量/官能基数=319)、及びこれらの変性数違い、変性種違い、構造違いの(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(分子量=304、官能基数=2、分子量/官能基数=152)等が挙げられる。
【0082】
モノマーBの含有量は、重合性モノマー全量中0.9mol%以上であることが好ましく、1.0mol%以上であることがより好ましく、1.1mol%以上であることがさらに好ましい。モノマーBの含有量は、重合性モノマー全量中10.0mol%以下であることが好ましく、9.1mol%以下であることがより好ましく、9.0mol%以下であることがさらに好ましい。
【0083】
(2)その他の多官能重合性モノマー
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物に含まれる多官能重合性モノマーは、モノマーBとは異なるその他の多官能重合性モノマー含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。その他のモノマーとして包含するものとしては、例えば、モノマーB以外の2官能以上のモノマーであって分子数/官能基数が150未満のものなどをその他モノマーとして包含していてもよい。2官能モノマーとして、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの例えば変性なし(分子量=226、分子量/官能基数=113)、ネオペンチルグリコールジアクリレートの例えば変性無し(分子量=212、分子量/官能基数=106)、ポリアルキレングリコールジアクリレートの例えばEO変性(2)(分子量=214、分子量/官能基数=107)、EO変性(3)(分子量=258、分子量/官能基数=129)、PO変性(2)(分子量=242、分子量/官能基数=121)、3官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートの例えば変性無し(分子量=296、分子量/官能基数=99)、EO変性(3)(分子量=428、分子量/官能基数=143)、グリセリントリアクリレートの例えばEO変性(3)(分子量=386、分子量/官能基数=129)、PO変性(3)(分子量=428、分子量/官能基数=143)、ペンタエリスリトールトリアクリレートの例えば変性無し(分子量=298、分子量/官能基数=99))、4官能モノマーとして、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの例えば変性無し(分子量=352、分子量/官能基数=88)、EO変性(4)(分子量=528、分子量/官能基数=132)、PO変性(4)(分子量=584、分子量/官能基数=146)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの例えば、変性無し(分子量=482、分子量/官能基数=121)、5官能モノマーとして、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの例えば、変性無し(分子量=525、分子量/官能基数=105)、6官能モノマーとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの例えば、変性無し(分子量=547、分子量/官能基数=91)、EO変性(6)(分子量=811、分子量/官能基数=135)、PO変性(6)(分子量=895、官能基数=6、分子量/官能基数=149)、カプロラクトン変性(2)(分子量=775、官能基数=6、分子量/官能基数=129)、カプロラクトン変性(3)(分子量=889、官能基数=6、分子量/官能基数=148)、及びこれらの変性数違い、変性種違い、構造違いの(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0084】
その他の多官能重合性モノマーの含有量は、重合性モノマー全量中0重合性モノマー全量中2.0mol%以下であることが好ましく、1.5mol%以下であることがより好ましく、1.0mol%以下であることがさらに好ましい。
【0085】
[重合開始剤]
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は必要に応じて重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりインク組成物中の重合性化合物の重合反応を促進するものであれば特に限定されない。なお、本実施の形態に係るインク組成物においては、重合開始剤は必ずしも必須でなく、例えば活性エネルギー線として電子線を用いる場合には重合開始剤は用いなくてもよい。
【0086】
重合開始剤の具体例として、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α-アミノアルキルフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0087】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物の重合反応を適切に開始できる量であればよく、インク組成物全量中1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましい。又、インク組成物全量中20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましく、13.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0088】
[重合禁止剤]
本実施の形態に係るインク組成物は、必要に応じて重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、例えば、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ-p-ニトロフェニルメチル,p-ベンゾキノン、p-tert-ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、メトキノン、tert-ブチルハイドロキノン、フェノチアジン類、ニトロソアミン類等の重合禁止剤を用いることができる。
【0089】
[色材]
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、色材を含有してもよい。色材は、特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよいが、記録物の耐水性や耐光性等の耐性が良好であるという観点から顔料(顔料系色材)を使用することが好ましい。本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において、用いることのできる顔料は特に限定されず、従来のインク組成物に使用されている有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施の形態に係るインク組成物は、色材を含有しなくともよい。また、樹脂の中に顔料または染料を含ませて使用してもよい。
【0090】
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において顔料を用いる場合には、後述する分散剤や分散助剤(顔料誘導体)を使用することで、顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0091】
具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ペリノン系有機顔料、アゾメチン系有機顔料、アントラキノン系有機顔料(アントロン系有機顔料)、キサンテン系有機顔料、ジケトピロロピロール系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、レーキ顔料やカーボンブラック等が挙げられる。
【0092】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57:1、97、112、122、123、146、149、150、168、177、180、184、192、202、206、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、269、291、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0093】
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において、用いることのできる染料の具体例としては、アゾ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、メロシアニン系染料、スチルベン系染料、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、フルオラン系染料、スピロピラン系染料、フタロシアニン系染料、インジゴイド等のインジゴ系染料、フルギド系染料、ニッケル錯体系染料、及びアズレン系染料が挙げられる。
【0094】
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において、用いることのできる無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、合成マイカ、アルミナ、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、アルミニウム、チタン、インジウム、合成鉄黒、無機固溶体顔料等を挙げることができる。
【0095】
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において、含有することのできる顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散性及び分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、体積平均粒子径が5nm以上の範囲内であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましい。体積平均粒子径が上記の下限値以上であることで、インク組成物の耐光性を向上させることができる。体積平均粒子径が500nm以下の範囲内であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが更に好ましい。本実施の形態に係るインク組成物は、顔料の体積平均粒子径が上記の上限値以下であることで、インクジェットの吐出安定性を極めて高いものにすることができる。
【0096】
なお、本実施形態において、顔料の体積平均粒子径は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて25℃の条件下で測定した体積基準累積50%粒子径(D50)である。なお、本明細書において「体積基準累積50%粒子径(D50)」とは、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を意味する。「体積基準累積50%粒子径(D50)」は、「体積平均粒子径D50」または「メジアン(メディアン)径」ともいう場合がある。
【0097】
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において、顔料の含有量としては、所望の画像を形成可能であれば特に限定されるものではなく適宜調整されるものである。具体的には、顔料の種類によっても異なるが、インク組成物全量中0.05質量%以上の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上の範囲であることがより好ましい。インク組成物全量中20質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以下の範囲であることがより好ましい。顔料の含有量が0.05質量%以上の範囲、又は20質量%以下の範囲内であることにより、顔料の分散安定性と着色力のバランスに優れたものとすることができる。
【0098】
また、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は記録(印刷)する色は特に制限はされず、目的に色に応じて色材を選択し、組み合わせて使用してもよい。色は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各色のインクや、ライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック、オレンジ、グリーン、レッド、ホワイトなどにも使用することができる。この際、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物を含むインクセットにおいて、同一種類の色の色材を選択してもよい。
【0099】
[分散剤]
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤としては、インク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、高分子分散剤を用いるとよい。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PA4401、4402、PA4403、4570、7411、7477、PX4700、PX4701(BASF社製)、TREPLUS D-1200、D-1410、D-1420、MD-1000(大塚化学社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、などが用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)、ヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000、76400、76500、86000、88000、J180、J200(ルーブリゾール社製)、TEGO Dispers652、655、685、688、690(エボニック・ジャパン社製)などが用いられる。好ましい分散剤としては、PB881、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PX4700、PX4701、Solsperse20000、24000、32000、33000、33500、34000、35200、39000、71000、76500、86000、88000、J180、J200、TEGO Dispers655、685、688、690などが用いられる。これらの単独、又はそれらの混合物を用いることができる。
【0100】
分散剤の含有量は、特に制限されないが、分散剤の含有量の下限は、インク組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。顔料分散剤の含有量の上限は、インク組成物中の顔料100質量部に対して150質量部以下であることが好ましく、125質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、インク組成物中での顔料の分散性を効果的に分散させることが可能となって、インク組成物に固形物が発生することを効果的に抑制することができる。
【0101】
[分散助剤]
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。分散助剤は色材(顔料)の表面に吸着し、官能基がインク組成物中の重合性モノマーや分散剤との親和力を高め、分散安定性を向上させる。分散助剤としては、有機顔料残基に酸性基、塩基性基、中性基などの官能基を有する公知の顔料誘導体を用いることができる。
【0102】
[光安定剤]
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物において必要に応じて光安定剤を用いてもよい。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミンを含有するものを挙げることができる。
【0103】
ヒンダードアミンとしては、NOR型ヒンダードアミンが好ましい。NOR型ヒンダードアミンは、下記式のような構造を有しており、NOR基によりペルオキシラジカルを捕捉することが可能となる。
【0104】
【0105】
このようなNOR型ヒンダードアミンの具体例としては、例えば、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン、デカン二酸ビス(2.2.6.6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-1,3,5-トリアジン、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート等が挙げられる。
【0106】
なお、NOR型ヒンダードアミン以外の光安定剤を含有してもよい。例えば、NR型ヒンダードアミン化合物等の従来公知の光安定剤が挙げられる。
【0107】
光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0108】
光安定剤の含有量の下限は、インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。光安定剤の含有量の上限は、インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0109】
(酸化防止剤)
酸化防止剤とは、ヒドロペルオキシドを捕捉する化合物である。酸化防止剤を活性エネルギー線硬化型のインク組成物に含有させることにより、インク組成物の硬化物の退色(黄変)を効果的に抑制することが可能となる。
【0110】
このようにヒドロペルオキシドを捕捉する化合物としては、例えば、ヒンダードアミンを含有することが好ましい。ヒンダードアミンとしては、NH型ヒンダードアミンを挙げることができる。NH型ヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格の窒素原子に、水素原子が結合したピペリジン構造を、分子中に1又は2以上有する化合物であって、下記式のような構造を有しており、NH基によりヒドロペルオキシドを捕捉することが可能となる。
【0111】
【0112】
このようなNH型ヒンダードアミンとしては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]ヘキサメチル、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0113】
酸化防止剤としては、上述したNH型ヒンダードアミンとは異なる酸化防止剤を使用してもよい。そのような酸化防止剤としては、例えば、チオエーテル系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも1つを使用することができる。チオエーテル系酸化防止剤とは、硫黄が有機基で置換された有機化合物からなる酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤とは、化学構造中にフェノール基を有する酸化防止剤である。チオエーテル系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも1つの酸化防止剤により、ヒドロペルオキシドを捕捉することが可能となる。
【0114】
チオエーテル系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及び、ペンタエリスリトールテトラ(β-アルキルチオプロピオン酸)エステル類等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、2,6-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、メチルハイドロキノン等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン等のビスフェノール系酸化防止剤;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のトリスフェノール系酸化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、テトラキス-[エチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のテトラキスフェノール系酸化防止剤;D-α-トコフェロール、L-α-トコフェロール、D-β-トコフェロール、L-β-トコフェロール、D-γ-トコフェロール、L-γ-トコフェロール、D-δ-トコフェロール、L-δ-トコフェロール等のトコフェロール類;D-α-トコトリエノール、L-α-トコトリエノール、D-β-トコトリエノール、L-β-トコトリエノール、D-γ-トコトリエノール、L-γ-トコトリエノール、D-δ-トコトリエノール、L-δ-トコトリエノール等のトコトリエノール等が挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0115】
酸化防止剤の含有量の下限は、インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。酸化防止剤の含有量の上限は、インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0116】
(紫外線吸収剤)
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、必要に応じて紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤とは、紫外線領域に吸収波長を有する化合物(モノマー・オリゴマー・ポリマー)である。
【0117】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系 紫外線吸収剤等が挙げられる。例えば、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシ-ベンゾフェノン、及び1,4-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)-ブタン等のベンゾフェノン化合物や2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′-t-ブチル-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ペンチル-2-ヒドロキシフェニル-2-ベンゾトリアゾール、2-(2-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチロキシフェニル)-2-ベンゾトリアゾール、及び2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物や、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0118】
紫外線吸収剤の含有量の下限は、インク組成物全量中1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、1.7質量%以上であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量の上限は、インク組成物全量中10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0119】
[界面活性剤]
本実施の形態に係るインク組成物においては、更に表面調整剤を含有していても良い。表面調整剤としては特に限定されないが、具体例としては、ジメチルポリシロキサンを有するビックケミー社製「BYK-307」、「BYK-333」、「BYK-354」、「BYK-361N」、「BYK-377」、「BYK-378」、「BYK-3455」、「BYK-UV3500」、「BYK-UV3505」、「BYK-UV3510」、「BYK-UV3535」、「BYK-UV3570」;エボニックデグサジャパン社製「TEGO Flow425」、「TEGO Glide100」、「TEGO Glide110」、「TEGO Glide130」、「TEGO Glide432」、「TEGO Glide435」、「TEGO Glide440」、「TEGO Glide450」、「TEGO GlideZG400」、「TEGO Twin4000」、「TEGO Twin4200」、「TEGO Wet270」、「TEGO Rad2010」、「TEGO Rad2010」「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2700」;共栄社化学社製「ポリフローKL-401」、「ポリフローKL-402」、「ポリフローKL-403」、「ポリフローKL-404」;アクリルポリマー系では、共栄社化学社製「ポリフローNo.75」、「ポリフローNo.77」、「ポリフローNo.90」、「ポリフローNo.95」、「ポリフローNo.99C」;エボニックデグサジャパン社製「TEGO Wet500」等が挙げられる。
【0120】
表面調整剤の含有量は、インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましい。又、表面調整剤の含有量は、インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上、又は、5.0質量%以下とすることで、インク組成物が熱可塑性樹脂基材等に対し好ましい濡れ性を有することとなり、基材上に記録する(像を形成する)際に活性エネルギー線硬化型インク組成物がハジキを生じることなく濡れ広がることが可能となるため、特に好ましいインク組成物とすることができる。
【0121】
[その他の成分]
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、エポキシ化物等、多価カルボン酸、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。エポキシ化物の具体例としては、エポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、およびエポキシヘキサヒドロフタレートなどが例示され、具体的にはアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A(ADEKA社製)等が例示される。多価カルボン酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸などが例示される。
【0122】
(インク組成物の粘度及び表面張力)
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物の粘度は、インクジェット吐出性、吐出安定性の点から、40℃での粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、20mPa・s以下であることがより好ましく、15mPa・s以下であることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、2.0mPa・s以上であることが好ましく、3.0mPa・s以上であることがより好ましく、3.5mPa・s以上であることがさらに好ましい。
【0123】
また、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物の表面張力は、インクジェットの吐出性、吐出安定性、基材へのレベリング性の点から、40℃での表面張力が20mN/m以上であることが好ましく、22mN/m以上であることがより好ましく、24mN/m以上あることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成物の表面張力は、40mN/m以下であることが好ましく、37mN/m以下であることがより好ましく、35mN/m以下であることがさらに好ましい。
【0124】
≪2.活性エネルギー線硬化型のインク組成物の製造方法≫
本実施の形態に係る活性エネルギー線硬化型のインク組成の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。インク組成物には、分散機を用いて、重合性モノマー、色材等を分散し、その後、必要に応じて重合開始剤、重合禁止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等を添加して均一に撹拌することにより、混合物を得て、その後フィルターで濾過することによってインク組成物が得られる。
【0125】
≪3.インクセット≫
上記の活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、着色インクであっても、メタリックインク等であっても、色材を含有しないクリアインクであっても、オーバーコートインクであってもよい。本実施の形態に係るインクセットは、これらのインク組成物を組み合わせたインクセットとしてもよい。
【0126】
本実施の形態に係るインクセットは、インクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物が上記の特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物であればよい。例えば、インク組成物Aとインク組成物Bとを含むインクセットにおいて、インク組成物Aが上記の特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物であり、インク組成物Bが上記の特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物とは異なるインク組成物であってもよい。また、インク組成物Aとインク組成物Bいずれもが上記の特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物であってもよい。3種類以上のインク組成物を含むインクセットにおいても同様である。
【0127】
また、色材を含有する着色インク組成物同士を組み合わせたインクセットであってもよく、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色や淡色の着色インク組成物のような複数のインク組成物を組み合わせたインクセットであってもよい。また、白色色材を含有する白色インク組成物と、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、を含むインクセットや、白色色材を含有する白色インク組成物と、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの中間色インク組成物や淡色インク組成物を含むインクセットであってもよい。さらに、光輝性顔料を含むメタリックインクと、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、を含むインクセットや、光輝性顔料を含むメタリックインクと、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの中間色インク組成物や淡色インク組成物を含むインクセットであってもよい。
【0128】
≪4.記録方法≫
本実施の形態に係る記録方法は、特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物をインクジェット法により基材上に塗布する記録方法である。
【0129】
特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物であればその塗布表面に密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成することができる。
【0130】
また、本実施の形態に係る記録方法は、表面処理された樹脂基材の表面に特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物をインクジェット吐出する吐出工程を含んでいてもよい。特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物は、種々の基材に対しても高い密着性を有する硬化膜を形成できるものであるが、この基材の表面に対して表面処理を施すことにより、基材に対してさらに高い密着性を有する硬化膜を形成することが可能である。
【0131】
そして、基材の表面に塗布されたインク組成物に、活性エネルギー線を照射する照射工程を含んでいてもよい。この照射により、基材の表面に上記インク組成物の硬化物が形成される。活性エネルギー線は、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線の活性エネルギー線を挙げることができる。
【0132】
表面処理された樹脂基材を得るために、予め基材の表面に対して表面処理を施すことにより、表面処理された基材を得る前処理工程を含んでいてもよい。
【0133】
この表面処理の方法としては、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、シランカップリング処理等の表面処理を挙げることができる。2つ以上の表面処理を組み合わせてもよい。
【0134】
前処理を施す基材としては、特に限定されるものではないが、樹脂基材であることが好ましく、オレフィン系樹脂であることが特に好ましい。オレフィン系樹脂においては、無延伸であってもよいし、一軸延伸や二軸延伸等の延伸されたものであってもよい。
【0135】
また、特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物のインクジェットット吐出方式は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれの方式であってもよい。
【0136】
≪6.記録物の製造方法≫
上述した記録方法は、特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物をインクジェット法により基材上に塗布する記録物の製造方法と定義することもできる。
【0137】
≪7.記録物≫
上記の実施形態の記録物の製造方法により製造された記録物を構成する各層について説明する。具体的に、特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物、又は上記のインクセットに含まれるインク組成物が基材上に塗布された記録物である。以下、記録物を構成する媒体(記録媒体)やインク組成物の層について説明する。
【0138】
本実施の形態に係る記録物に含まれる基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属板、ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0139】
非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポチエチレンナフタレート)、ポリプロピレン系合成紙、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基材や、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を挙げることができる。この中でもポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む樹脂基材であることが好ましい。
【0140】
特に、特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物は、オレフィン系樹脂に対しても高い密着性を有する硬化膜を形成できるものであるため、基材(記録媒体)がオレフィン系樹脂であることが特に好ましい。この中でも特に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、クロム酸処理、シランカップリング処理等の表面処理が施されたオレフィン系樹脂の表面に対して特に高い密着性を有する。なお、オレフィン系樹脂においては、無延伸であってもよいし、一軸延伸や二軸延伸等の延伸されたものであってもよい。
【0141】
吸収性基材としては、更紙、中質紙、上質紙、合成紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を挙げることができる。
【0142】
表面塗工が施された基材としてはコート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙等を挙げることができる。
【0143】
[インク組成物の硬化膜]
インク組成物の硬化膜とは特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物に含まれる重合性モノマーが重合することにより形成される。例えば、インク組成物に色材を含有した場合には、所望の画像を形成する加飾層やその下地層となる。なお、本明細書において「硬化膜」の形状は、例えば平板状や層状に限定されるものではなく、凹凸を有するものであってもよく、一部に孔が形成されているものであってもよいし、例えば表面の一部に硬化膜が形成されているものであってもよい。また、吸収性基材に吸収されて実質的にインク組成物の硬化膜が基材の一部のような状態になっているものも便宜上、インク組成物の硬化膜と表記する。
【0144】
特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物をオーバーコートインクとする場合には、記録物の表面に形成されるオーバーコート層となる。なお、この場合、記録物が備える記録層を形成するインク組成物は、特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物であってもよいし、特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物とは異なるインク組成物であってもよい。
【0145】
特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物の硬化物(例えば、記録層やオーバーコート層)の厚さは、とくに限定されるものではないが、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。インク組成物の硬化物(例えば、記録層やオーバーコート層)の厚さは、100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。インク組成物の硬化物に所望な機能を付与することができる。なお、硬化物の厚さとは、硬化物の表面の任意の箇所を複数個所測定した厚さの平均値である。
【0146】
≪8.インクジェット記録装置≫
本実施の形態に係るインクジェット記録装置は特定のモノマーA1を含む重合性モノマーを含有するインク組成物、又は上記のインクセットに含まれるインク組成物が充填された貯蔵機構が搭載されたインクジェット記録装置である。
【0147】
本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、インクカートリッジが外部に固定されたオフキャリッジタイプのインクジェット記録装置であってもよく、インクジェットヘッドヘッドが移動せずに記録媒体(基材)上にインク組成物を吐出するラインプリンタータイプのインクジェット記録装置であってもよい。
【0148】
本実施の形態に係るインクジェット記録装置に搭載される貯蔵機構は、とくに限定されず、例えば、インクボトル、パウチ、バッグインボックス、ドラム等の容器を挙げることができる。また、これらの容器をさらにカートリッジ等に収容したものであってもよい。収容容器の材質としては、とくに限定されず、従来公知の樹脂製であってもよいし、その一部の金属材料を含む材質(例えば、アルミ蒸着層を備えたアルミパウチ)であってもよい。
【0149】
また、それぞれの吐出部における吐出方式は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれの方式であってもよい。
【0150】
本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、活性エネルギー線を照射する光源を備えていてもよい。活性エネルギー線を照射する光源は特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。省エネルギーであり、印刷装置の設計設備の自由度が高いという観点から光源としてLEDランプを用いることがより好ましい。
【実施例0151】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0152】
1.インク組成物の製造
実験例及び比較例のインク組成物を製造した。具体的には、重合性モノマーと、重合開始剤と、重合禁止剤と、色材(顔料ミルベース)と、を下記表の割合になるように実施例、比較例のインク組成物を調製した。表中の単位は質量%である。
【0153】
2.インク組成物の評価
(基材密着性)
実施例及び比較例のインク組成物について基材密着性を評価した。具体的には、実施例及び比較例のインク組成物をインクジェット記録装置を用いたインクジェット方式にて各記録媒体(コロナ処理が施されたポリプロピレン系樹脂基材(ポリオレフィン系樹脂基材)、コロナ処理が施されたポチエチレンテレフタレート基材、PPプラ段(コロナ処理が施されたポリプロピレン系樹脂基材)、コモグラス(押出アクリル基材)、アクリライトL(キャストアクリル基材)、ポリカーボネート系樹脂基材、アルミ複合版)に吐出し、活性エネルギー線として波長385nmのLEDランプを照射することにより、100%濃度のベタ画像の硬化膜を形成した。そして、画像のベタ部分にセロハンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)、ニチバン社製」を十分に押し当てた後、セロハ ンテープを剥離した。そして、画像の剥がれ具合を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって密着性を評価した。(表中、「基材密着性」と表記。)
評価基準
評価5:画像が全く剥がれなかった。
評価4:画像が僅かに剥がれた。
評価3:剥がれた画像の面積が、剥がれずに残った画像の面積と同等だった。
評価2:剥がれた画像の面積が、剥がれずに残った画像の面積より大きかった。
評価1:画像がほぼ全て剥がれた。
【0154】
(耐溶剤性)
実施例及び比較例のインク組成物について耐溶剤性を評価した。具体的には、実施例及び比較例のインク組成物を被印刷基材にインクジェット記録装置によりに吐出し、活性エネルギー線として波長385nmのLEDランプを照射することにより、100%濃度のベタ画像のインク組成物の硬化膜を形成した。そして、インク組成物の硬化膜に対して学振型摩擦堅牢度試験機II型にて、加重500g、当布:質量濃度30質量%のエタノール水溶液に浸した金巾3号の条件で塗膜の外観を観察し、下記評価基準(塗膜外観指標)により塗膜の外観を評価した(表中、耐溶剤性と表記)。
【0155】
評価基準
評価3:塗膜が削れなかった。
評価2:塗膜がやや削れた。
評価1:塗膜が削れ、基材が露出した。
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
上記表から分かるように、特定の重合性モノマーを含有するインク組成物であれば、その塗布表面に密着性が優れたインク組成物の硬化膜を形成することができることが分かる。
【0161】
特に、モノマーA1の種類を変更させた実施例1~5のインク組成物において、側鎖部分SP値の範囲が9.5以上10.0以下の範囲であるモノマーA1(シクロヘキシルアクリレート)を含有する実施例4のインク組成物は、実施例1~3、5のインク組成物と比較しても、種々に基材に対して特に密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成することができた。
【0162】
また、側鎖部分SP値の範囲が9.5以上10.0以下の範囲であるモノマーA1(シクロヘキシルアクリレート)の含有量を変更させた実施例4、6~8、10~14、17~21のインク組成物において、SP値の範囲が9.5以上10.0以下の範囲であるモノマーA1(シクロヘキシルアクリレート)を含有量が10質量%以上である実施例4、7、10、17のインク組成物は、実施例6,8,12~14のインク組成物と比較しても、種々に基材に対して特に密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成することができた。
【0163】
また、モノマーBを含有する実施例26のインク組成物は、実施例27のインク組成物と比較しても、種々に基材に対して特に密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成することができた。さらに、モノマーBを重合性モノマー全量中1.0mol%以上9.0mol%以下の割合で含有する実施例26のインク組成物は、実施例28、29のインク組成物と比較しても、種々に基材に対して特に密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成することができた。
【0164】
モノマーA2を重合性モノマー全量中30mol%以上70mol%以下の割合で含有する実施例26のインク組成物は、実施例30、31のインク組成物と比較しても、種々に基材に対して特に密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成することができた。
【0165】
一方、モノマーA1を前記重合性モノマー全量中10mol%未満の割合で含有する比較例1,2のインク組成物やモノマーA1を含有しない比較例3~5のインク組成物は、種々に基材に対して特に密着性を有するインク組成物の硬化膜を形成できていない。