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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018115
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240201BHJP
   E03D 11/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/08
E03D11/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121219
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 雄大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】坂場 勇
(72)【発明者】
【氏名】安井 一成
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AC03
2D039AC04
2D039AD01
(57)【要約】
【課題】洗浄水の流量変動に対応することができ、幅広い給水流量域で便器の基本性能を確保することができる水洗大便器を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、ボウル部と、トラップ部と、主導水路と、リム連絡孔と、リム導水路と、リム吐水口とを備える。ボウル部は、汚物を受ける。トラップ部は、ボウル部から延びており、ボウル部で受けた汚物を排出する。主導水路は、ボウル部へ向けた洗浄水が流れる。リム連絡孔は、主導水路から洗浄水が流れ込む。リム導水路は、リム連絡孔から流れ込んだ洗浄水が流れる。リム吐水口は、リム導水路を流れる洗浄水をボウル部へ供給する。リム吐水口は、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合にリム吐水口となる低流量吐水口と、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合にリム吐水口となる高流量吐水口とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるボウル部と、
前記ボウル部から延びており、前記ボウル部で受けた汚物を排出するためのトラップ部と、
前記ボウル部へ向けた洗浄水が流れる主導水路と、
前記主導水路から洗浄水が流れ込むリム連絡孔と、
前記リム連絡孔から流れ込んだ洗浄水が流れるリム導水路と、
前記リム導水路を流れる洗浄水を前記ボウル部へ供給するリム吐水口と
を備え、
前記リム吐水口は、
前記リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合に当該リム吐水口となる低流量吐水口と、
前記リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合に当該リム吐水口となる高流量吐水口と
を有すること
を特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記低流量吐水口および前記高流量吐水口は、同一流路に形成されており、
前記低流量吐水口は、前記高流量吐水口よりも流路断面積が小さいこと
を特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記低流量吐水口は、前記高流量吐水口よりも上流側に配置されること
を特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記リム導水路は、前記低流量吐水口から少なくとも該低流量吐水口の直近の下流領域を含む前記高流量吐水口までの間において、前記低流量吐水口側から前記高流量吐水口側へ向かうにつれて流路断面積が連続的かつ徐々に拡大していること
を特徴とする請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記リム導水路は、前記低流量吐水口よりも上流側に、該低流量吐水口よりも流路断面積が大きい攪拌室を有すること
を特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記主導水路からの洗浄水が流れるゼット導水路と、
前記ゼット導水路を流れてきた洗浄水を、前記トラップ部の前方から該トラップ部へ向けて噴出するゼット吐水口と、
前記ゼット導水路の上流側で前記主導水路および前記リム導水路を接続する圧力律速部と
をさらに備えること
を特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記リム導水路は、前記低流量吐水口よりも上流側に攪拌室を有し、
前記低流量吐水口は、前記圧力律速部よりも流路断面積が大きく、
前記高流量吐水口および前記攪拌室は、前記低流量吐水口よりも流路断面積が大きいこと
を特徴とする請求項6に記載の水洗大便器。
【請求項8】
前記圧力律速部は、洗浄水の流れ方向における中心軸が前記低流量吐水口の洗浄水の流れ方向における中心軸よりも上方に位置すること
を特徴とする請求項6に記載の水洗大便器。
【請求項9】
前記リム導水路は、前記低流量吐水口よりも上流側に、該低流量吐水口よりも流路断面積が大きい攪拌室を有し、
前記攪拌室は、前記低流量吐水口の上流側に壁部を有すること
を特徴とする請求項8に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗大便器において、汚物を受けるボウル部のボウル面を、吐水口からボウル面へ供給する洗浄水を旋回させた流れ(旋回流)によって洗浄する技術が知られている。
【0003】
このような水洗大便器には、貯水タンクを備え、ボウル面へ向かう洗浄水が流れる導水路に貯水タンクからの給水流量が大きいほど導水路の通水断面積が小さくなるように縮径部が形成され、便器本体が求める給水流量よりも大きい場合でも、小さい場合でも、吐水口から供給する洗浄水の分配比や流速の変化を抑えて、適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給できるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-159188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一次水圧を便器本体へ供給する、いわゆるフラッシュバルブ便器は、便器を設置する地域で水圧が異なることから、導水路を流れる洗浄水が低流量の場合もあれば、高流量の場合もあり、地域ごとに一次水圧のばらつきがあることがある。
【0006】
これに対して、上記したような従来の水洗大便器では、貯水タンクを必要とするため、フラッシュバルブ便器などの一次水圧を便器本体へ供給するような便器における洗浄水の流量変動に対応することはむずかしい。
【0007】
また、たとえば、洗浄水の吐水口を、ボウル部のボウル面へと供給する洗浄水の流速を規定する開口と定義した場合、導水路を流れる洗浄水が低流量の場合と高流量の場合とで吐水口を切り替えることが考えられる。これに対しても、上記したような従来の水洗大便器は、導水路を流れる洗浄水の通水断面積が縮径部で一度小さくなるものの、吐水口から供給するときには再度大きくなるため、導水路を流れる洗浄水が低流量の場合と高流量の場合とで吐水口を切り替えるものではない。
【0008】
実施形態の一態様は、洗浄水の流量変動に対応することができ、幅広い給水流量域で便器の基本性能を確保することができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部から延びており、前記ボウル部で受けた汚物を排出するためのトラップ部と、前記ボウル部へ向けた洗浄水が流れる主導水路と、前記主導水路から洗浄水が流れ込むリム連絡孔と、前記リム連絡孔から流れ込んだ洗浄水が流れるリム導水路と、前記リム導水路を流れる洗浄水を前記ボウル部へ供給するリム吐水口とを備え、前記リム吐水口は、前記リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合に当該リム吐水口となる低流量吐水口と、前記リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合に当該リム吐水口となる高流量吐水口とを有する。
【0010】
このような構成によれば、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合には、リム吐水口として低流量吐水口へと切り替わる。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合に、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流勢(流速)の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合には、リム吐水口として高流量吐水口へと切り替わる。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合に、リム吐水口(高流量吐水口)から供給される洗浄水の流勢(流速)が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部からの洗浄水の飛び出しを抑えることができる。このように、洗浄水の流量変動によらず洗浄性能の低下や洗浄水の飛び出しを抑えることができるため、すなわち、洗浄水の流量変動に対応することができるため、幅広い給水流量域で便器の基本性能を確保することができる。
【0011】
また、上記した水洗大便器において、前記低流量吐水口および前記高流量吐水口は、同一流路に形成されており、前記低流量吐水口は、前記高流量吐水口よりも流路断面積が小さい。
【0012】
このような構成によれば、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合には、ボウル部へ供給される洗浄水の流速が流路断面積の小さな低流量吐水口によって規定される。これにより、リム導水路を流れる洗浄水Wが低流量の場合に、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流速の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合には、ボウル部へ供給される洗浄水の流速が流路断面積の大きな高流量吐水口によって規定される。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合に、リム吐水口(高流量吐水口)から供給される洗浄水の流速が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部からの洗浄水の飛び出しを抑えることができる。
【0013】
また、上記した水洗大便器において、前記低流量吐水口は、前記高流量吐水口よりも上流側に配置される。
【0014】
このような構成によれば、低流量吐水口と高流量吐水口とを同一流路に形成することが可能となる。そして、リム導水路を流れる洗浄水Wが低流量の場合には、低流量吐水口から洗浄水がボウル部へ供給され、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流速の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合には、リム吐水口(高流量吐水口)から供給される洗浄水の流速が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部からの洗浄水の飛び出しを抑えることができる。
【0015】
また、上記した水洗大便器において、前記リム導水路は、前記低流量吐水口から少なくとも該低流量吐水口の直近の下流領域を含む前記高流量吐水口までの間において、前記低流量吐水口側から前記高流量吐水口側へ向かうにつれて流路断面積が連続的かつ徐々に拡大している。
【0016】
このような構成によれば、低流量吐水口から少なくとも低流量吐水口の直近の下流領域を含む高流量吐水口までの間においてリム導水路が上流側の低流量吐水口側から下流側の高流量吐水口側へ流路がなだらかに拡大していることで、低流量吐水口側から高流量吐水口側へリム導水路を流れる洗浄水がリム導水路の内面へ引き寄せられ(コアンダ効果)、リム導水路の流路形状に沿って洗浄水が流れるため、水切れを抑制することができる。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合に、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流速の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【0017】
また、上記した水洗大便器において、前記リム導水路は、前記低流量吐水口よりも上流側に、該低流量吐水口よりも流路断面積が大きい攪拌室を有する。
【0018】
このような構成によれば、洗浄水の流れが攪拌室で乱れ、乱れた流れで洗浄水が低流量吐水口へ流れ込むため、低流量吐水口が水密になりやすくなる。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合に、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流速の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【0019】
また、上記した水洗大便器において、前記主導水路からの洗浄水が流れるゼット導水路と、前記ゼット導水路を流れてきた洗浄水を、前記トラップ部の前方から該トラップ部へ向けて噴出するゼット吐水口と、前記ゼット導水路の上流側で前記主導水路および前記リム導水路を接続する圧力律速部とをさらに備える。
【0020】
このような構成によれば、リム導水路がゼット導水路よりも上流側で主導水路から分岐するため、リム導水路へ流れ込む洗浄水の流速が高流速となるゼット吐水に影響することはなく、また、主導水路からリム導水路へ流れ込む洗浄水の流速を圧力律速部で律速することができる。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合には、低流量吐水口から洗浄水がボウル部へ供給され、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流速の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合には、リム吐水口(高流量吐水口)から供給される洗浄水の流速が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部からの洗浄水の飛び出しを抑えることができる。
【0021】
また、上記した水洗大便器において、前記リム導水路は、前記低流量吐水口よりも上流側に攪拌室を有し、前記低流量吐水口は、前記圧力律速部よりも流路断面積が大きく、前記高流量吐水口および前記攪拌室は、前記低流量吐水口よりも流路断面積が大きい。
【0022】
このような構成によれば、圧力律速部でリム吐水およびゼット吐水の洗浄水配分を決定することができるとともに、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合には、低流量吐水口の小さな流路断面積で洗浄水を律速することができる。
【0023】
また、上記した水洗大便器において、前記圧力律速部は、洗浄水の流れ方向における中心軸が前記低流量吐水口の洗浄水の流れ方向における中心軸よりも上方に位置する。
【0024】
このような構成によれば、圧力律速部で勢いを増した(増速した)洗浄水が低流量吐水口へ直接流れ込まず、攪拌室で流れが乱れて渦巻いた状態となってから低流量吐水口へ流れ込むため、低流量吐水口が水密になりやすくなる。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合に、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流速の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【0025】
また、上記した水洗大便器において、前記リム導水路は、前記低流量吐水口よりも上流側に、該低流量吐水口よりも流路断面積が大きい攪拌室を有し、前記攪拌室は、前記低流量吐水口の上流側に壁部を有する。
【0026】
このような構成によれば、圧力律速部で勢いを増した(増速した)洗浄水が壁部に衝突してから低流量吐水口へ流れ込むため、攪拌室で流れが乱れて渦巻いた状態となり、低流量吐水口が水密になりやすくなる。これにより、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合に、リム吐水口(低流量吐水口)から供給される洗浄水の流速の低下を抑えることができ、ボウル部の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0027】
実施形態の一態様に係る水洗大便器によれば、洗浄水の流量変動に対応することができ、幅広い給水流量域で便器の基本性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器を示す概略斜視図である。
図2図2は、リム導水路およびゼット導水路を示す概略平面図である。
図3図3は、リム導水路およびリム吐水口を示す概略斜視図である。
図4図4は、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合にリム吐水口となる低流量吐水口からの洗浄水の説明図(その1)である。
図5図5は、リム導水路を流れる洗浄水が低流量の場合にリム吐水口となる低流量吐水口からの洗浄水の説明図(その2)である。
図6図6は、リム導水路を流れる洗浄水が高流量の場合にリム吐水口となる高流量吐水口からの洗浄水の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0030】
<水洗大便器の全体構成>
図1および2を参照して、実施形態に係る水洗大便器1の全体構成の一例について説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器1を示す概略斜視図である。図2は、リム導水路42およびゼット導水路51を示す概略平面図である。
【0031】
なお、図1を含む各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0032】
図1に示すように、水洗大便器1は、トイレ室の壁面に取り付けられる、いわゆる壁掛け式のものである。なお、水洗大便器1は、トイレ室の床面に設置される、いわゆる床置き式のものであってもよい。
【0033】
また、水洗大便器1は、後述するゼット吐水口4(図2参照)から強力な水勢の洗浄水を後述するトラップ部3へ向けて噴出して強力な水流を発生させることで汚物を下流側へ吹き飛ばす、いわゆるブローアウト式のものである。なお、水洗大便器1は、これ以外の方式のもの、たとえば、洗い落とし(ウォッシュダウン)式のものでもよいし、サイホン式のものであってもよい。
【0034】
また、水洗大便器1は、水道などの給水源からの一次水圧によって後述する便器本体2へ洗浄水を供給する、いわゆるフラッシュバルブ式のものである。
【0035】
また、水洗大便器1は、陶器製のものである。なお、水洗大便器1は、陶器製に限定されず、樹脂製のものであってもよいし、陶器および樹脂を組み合わせて製造されたものであってもよい。
【0036】
図1および2に示すように、水洗大便器1は、便器本体2を備える。便器本体2は、ボウル部21と、リム部22と、トラップ部23と、スカート部24と、バック面25とを備える。また、便器本体2は、主導水路31と、リム連絡孔41(図3参照)と、リム導水路42と、リム吐水口43と、ゼット導水路51と、ゼット吐水口52とを備える。
【0037】
ボウル部21は、汚物を受ける内面(ボウル面)21aがボウル形状に形成される。ボウル部21の底部には、所定量の溜水が貯留される。また、ボウル部21の底部には、トラップ部23が接続される。
【0038】
リム部22は、ボウル部21の上縁部に設けられる。リム部22は、ボウル部21の上縁部に沿って環状に形成される。
【0039】
トラップ部23は、ボウル部21の底部から後方へ延びており、ボウル部21で受けた汚物を排出する外部配管(図示せず)へと排出する。トラップ部23は、たとえば、上昇管231と、下降管232とを備える。上昇管231は、上流側の端部がボウル部21の底部に接続される。上昇管231は、ボウル部21の底部から後方へ向かうにつれて上方へ向かう、すなわち、上昇するように傾斜した管路である。下降管232は、上流側の端部が上昇管231の下流側の端部に接続される。下降管232は、上昇管231から下方へ向かう管路である。なお、下降管232の下流側の端部は、外部配管(図示せず)に接続される。
【0040】
スカート部24は、ボウル部21の前方領域を覆うように設けられる。スカート部24は、ボウル部21の前方領域において水洗大便器1の外形を形成する。
【0041】
バック面25は、ボウル部21の後方に設けられる。バック面25は、たとえば、取付孔に取付具が取り付けられることで、トイレ室の壁面に対して固定される。このように、バック面25が壁面に固定されることで、水洗大便器1が壁面に固定される。
【0042】
図2に示すように、主導水路31は、水洗大便器1における洗浄水の供給口71から前方へと延びている。主導水路31は、ボウル部21へ向けて洗浄水W(W1)が流れる。主導水路31は、後述するリム導水路42およびゼット導水路51に接続される。
【0043】
図2に示すように、リム連絡孔41は、主導水路31から洗浄水W1が流れ込む流入口(孔)である。リム連絡孔41には、主導水路31から分岐した洗浄水W1が流れ込む。リム導水路42は、リム連絡孔41の下流側に設けられ、リム連絡孔41から流れ込んだ洗浄水W(W21)が流れる流路である。なお、リム導水路42については、図3などを用いて後述する。
【0044】
リム吐水口43は、リム導水路42の洗浄水W21の流出口であり、リム導水路42を流れる洗浄水W21をボウル部21へと供給する。リム吐水口43からボウル部21へ供給された洗浄水W22は、ボウル面21aを旋回しながらトラップ部23へと流れ込む旋回流となる。水洗大便器1では、このような旋回流によってボウル面21aを洗浄(トルネード洗浄)する。
【0045】
また、リム吐水口43は、低流量吐水口431と、高流量吐水口432とを備える。リム吐水口43(低流量吐水口431および高流量吐水口432)の構成については、図3などを用いて後述する。
【0046】
図2に示すように、ゼット導水路51は、主導水路31からの洗浄水W1が流れ込み、後述するゼット吐水口52へ向けて洗浄水W(W31)が流れる流路である。ゼット導水路51は、主導水路31とリム導水路42とを接続する、後述する圧力律速部45よりも下流側で、主導水路31からの洗浄水W1が流れ込む。
【0047】
ゼット吐水口52は、ゼット導水路51を流れてきた洗浄水W(W32)を、トラップ部23の前方からトラップ部23へ向けて噴出する。
【0048】
なお、図1に示すように、水洗大便器1は、トラップ部23を補強するための幕板61を備えてもよい。このような幕板61は、板状の部材であり、トラップ部23の下方に設けられる。
【0049】
<リム導水路およびリム吐水口>
次に、図3を参照して、リム導水路42およびリム吐水口43について説明する。図3は、リム導水路42およびリム吐水口43を示す概略斜視図である。
【0050】
図3に示すように、リム導水路42は、リム連絡孔41から流れ込んだ洗浄水W21が流れる。
【0051】
リム導水路42は、少なくとも低流量吐水口431の直近の下流領域A1を含む高流量吐水口432までの間において、天面が下流へ向かうほど上方へ向けて傾斜している傾斜壁421を有する。また、リム導水路42は、少なくとも低流量吐水口431の直近の下流領域A1を含む高流量吐水口432までの間において、底面が下流へ向かうほど下方へ向けて傾斜している傾斜壁422を有する。このように、リム導水路42は、リム吐水口43となる、後述する低流量吐水口431側から下流側の高流量吐水口432側へ流路断面積S(S1)が連続的かつ徐々に拡大している部分を有する。すなわち、リム導水路42は、上流側の低流量吐水口431側から下流側の高流量吐水口432側へなだらかに拡大している部分を有する流路となる。なお、流路断面積Sとは、洗浄水W21の流れ方向に対して直交する向きに切った断面である。また、リム導水路42は、少なくとも低流量吐水口431の直近の下流領域A1において傾斜壁421,422を有すればよいが、たとえば、低流量吐水口431から高流量吐水口432までの間のすべてに傾斜壁421,422を有してもよい。
【0052】
リム吐水口43は、上記したように、リム導水路42における洗浄水W21の流出口であり、リム導水路42を流れる洗浄水W21をボウル部21へと供給する。リム吐水口43は、低流量吐水口431と、高流量吐水口432とを備える。
【0053】
低流量吐水口431は、リム導水路42の流路途中に形成され、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合にリム吐水口43として機能する。低流量吐水口431は、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合に、洗浄水W21(W22)の流速を規定する。
【0054】
高流量吐水口432は、リム導水路42の最下流端に形成され、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合にリム吐水口43として機能する。高流量吐水口432は、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合に、洗浄水W21(W22)の流速を規定する。
【0055】
このように、低流量吐水口431と高流量吐水口432とは、リム導水路42という同一流路に形成されており、リム導水路42において、上流側に低流量吐水口431、下流側に高流量吐水口432となるように配置される。また、低流量吐水口431の流路断面積S(S2)は、高流量吐水口の流路断面積S(S3)よりも小さい。
【0056】
リム導水路42は、低流量吐水口431よりも上流側に配置された攪拌室44を有する。攪拌室44の流路断面積S(S4)は、低流量吐水口431の流路断面積S2よりも大きい。また、攪拌室44は、洗浄水W21の流れを遮るように、洗浄水W21の流れ方向と略直交する壁部441を有する。壁部441は、低流量吐水口431の上流側に設けられるとともに、リム連絡孔41と対向するように設けられる。
【0057】
また、図3に示すように、水洗大便器1(図1参照)は、上記した圧力律速部45を備える。圧力律速部45は、主導水路31とリム導水路42とを接続する部分であり、リム連絡孔41から流れ込む洗浄水W21の流速を、リム導水路42へ流れる前に律速する。このような圧力律速部45は、ゼット導水路51(図2参照)の上流側で主導水路31とリム導水路42とを接続する。
【0058】
また、図3に示すように、リム導水路42では、低流量吐水口431の流路断面積S2は、圧力律速部45の流路断面積S(S5)よりも大きい。また、高流量吐水口432の流路断面積S3は、低流量吐水口431の流路断面積S2よりも大きい。また、攪拌室44の流路断面積S4は、低流量吐水口431の流路断面積S2よりも大きい。
【0059】
<低流量吐水口における洗浄水の流れ態様>
次に、図4および5を参照して、低流量吐水口431における洗浄水W21の流れ態様について説明する。図4および5は、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合にリム吐水口43となる低流量吐水口431における洗浄水W21の説明図である。なお、図4には、リム導水路42を水平方向から見た状態を模式的に示している。また、図5には、リム導水路42において上流側となる所定領域A2を鉛直方向(上方)から見た状態を模式的に示している。
【0060】
図4に示すように、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合には、リム導水路42からボウル部21(図2参照)へ供給される洗浄水W21の流速を、流路断面積S2の小さな低流量吐水口431によって規定する。
【0061】
低流量吐水口431で流速が規定された洗浄水W21は、下流側の高流量吐水口432へかけてリム導水路42の流路がなだらかに拡大しているため、コアンダ効果でリム導水路42の内面へ引き寄せられ、流路形状に沿って流れる。このため、リム吐水口43(低流量吐水口431)からボウル部21へ供給される洗浄水W22の流速の低下を抑えることができる。
【0062】
また、図4に示すように、圧力律速部45における洗浄水W21の流れ方向における中心軸L(L1)が、低流量吐水口431における洗浄水W21の流れ方向における中心軸L(L2)よりも上方に位置するため、圧力律速部45で増速した洗浄水W21が低流量吐水口431へ直接流れ込まない。また、圧力律速部45で増速した洗浄水W21が上流側の攪拌室44で流れが乱れて渦巻いた状態となってから低流量吐水口431へと流れ込む。これにより、低流量吐水口431が水密になりやすくなる。
【0063】
また、低流量吐水口431が攪拌室44の上部に配置されるため、圧力律速部45で増速した洗浄水W21が低流量吐水口431へ直接流れ込まず、上流側の攪拌室44で流れが乱れて渦巻いた状態となってから低流量吐水口431へと流れ込む。これにより、低流量吐水口431が水密になりやすくなる。
【0064】
また、図5に示すように、低流量吐水口431の上流側に配置された壁部441によって、圧力律速部45で増速した洗浄水W21が壁部441に衝突してから低流量吐水口431へ流れ込むため、攪拌室44で流れが乱れて渦巻いた状態となり、低流量吐水口431が水密になりやすくなる。
【0065】
<高流量吐水口における洗浄水の流れ態様>
次に、図6を参照して、高流量吐水口432における洗浄水W21の流れ態様について説明する。図6は、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合にリム吐水口43となる高流量吐水口432における洗浄水W21(W22)の説明図である。なお、図6には、リム導水路42を水平方向から見た状態を模式的に示している。
【0066】
図6に示すように、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合には、リム導水路42からボウル部21(図2参照)へ供給される洗浄水W22の流速を、流路断面積S3の大きな高流量吐水口432によって規定する。
【0067】
高流量吐水口432からの洗浄水W22は、高流量吐水口432へかけて流路がなだらかに拡大しているリム導水路42において流速が抑えられた状態のままボウル部21へと供給される。このため、高流量吐水口432で流速が規定された洗浄水W22は、流速が上昇し過ぎないようになる。
【0068】
以上説明した実施形態に係る水洗大便器によれば、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合には、リム吐水口43として低流量吐水口431へと切り替わる。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合に、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W22の流勢(流速)の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合には、リム吐水口43として高流量吐水口432へと切り替わる。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合に、リム吐水口43(高流量吐水口432)から供給される洗浄水W22の流勢(流速)が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部21からの洗浄水Wの飛び出しを抑えることができる。このように、洗浄水Wの流量変動によらず洗浄性能の低下や洗浄水Wの飛び出しを抑えることができるため、すなわち、洗浄水Wの流量変動に対応することができるため、幅広い給水流量域で便器の基本性能を確保することができる。
【0069】
また、低流量吐水口431と高流量吐水口432とが同一流路に形成されており、さらに、低流量吐水口431の流路断面積S2が高流量吐水口432の流路断面積S3よりも小さいため、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合には、ボウル部21へ供給される洗浄水W21の流速が流路断面積S2の小さな低流量吐水口431によって規定される。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合に、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W22の流速の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合には、ボウル部21へ供給される洗浄水W21の流速が流路断面積S3の大きな高流量吐水口432によって規定される。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合に、リム吐水口43(高流量吐水口432)から供給される洗浄水W22の流速が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部21からの洗浄水Wの飛び出しを抑えることができる。
【0070】
また、低流量吐水口431が高流量吐水口432よりも上流側に配置されることで、低流量吐水口431と高流量吐水口432とを同一流路に形成することが可能となる。そして、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合には、低流量吐水口431から洗浄水W22がボウル部21へ供給され、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W21の流速の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合には、リム吐水口43(高流量吐水口432)から供給される洗浄水W22の流速が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部21からの洗浄水Wの飛び出しを抑えることができる。
【0071】
また、低流量吐水口431から少なくとも低流量吐水口431の直近の下流領域A1を含む高流量吐水口432までの間においてリム導水路42が低流量吐水口431側から高流量吐水口432側へ向かうにつれて流路断面積S1が連続的かつ徐々に拡大していることで、すなわち、上流側の低流量吐水口431から下流側の高流量吐水口432側へ流路がなだらかに拡大していることで、低流量吐水口431側から高流量吐水口432側へリム導水路42を流れる洗浄水W21がリム導水路42の内面へ引き寄せられ(コアンダ効果)、リム導水路42の流路形状に沿って洗浄水W21が流れるため、水切れを抑制することができる。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合に、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W22の流速の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【0072】
また、リム導水路が低流量吐水口よりも上流側に低流量吐水口よりも流路断面積が大きい攪拌室44を有することで、洗浄水W21の流れが攪拌室44で乱れ、乱れた流れで洗浄水W21が低流量吐水口431へ流れ込むため、低流量吐水口431が水密になりやすくなる。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合に、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W22の流速の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【0073】
また、リム導水路42がゼット導水路51よりも上流側で主導水路31から分岐するため、リム導水路42へ流れ込む洗浄水W21の流速が高流速となるゼット吐水に影響することはなく、また、主導水路31からリム導水路42へ流れ込む洗浄水W21の流速を圧力律速部45で律速することができる。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合には、低流量吐水口431から洗浄水W22がボウル部21へ供給され、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W22の流速の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。一方、リム導水路42を流れる洗浄水W21が高流量の場合には、リム吐水口43(高流量吐水口432)から供給される洗浄水W22の流速が上昇し過ぎるのを抑えることができ、ボウル部21からの洗浄水Wの飛び出しを抑えることができる。
【0074】
また、低流量吐水口431の流路断面積S2が圧力律速部45の流路断面積S5よりも大きく、高流量吐水口432の流路断面積S3と攪拌室44の流路断面積S4とがそれぞれ低流量吐水口431の流路断面積S2よりも大きいことで、圧力律速部45でリム吐水およびゼット吐水の洗浄水配分を決定することができるとともに、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合には、低流量吐水口431の小さな流路断面積S2で洗浄水Wを律速することができる。
【0075】
また、圧力律速部45における洗浄水W21の流れ方向における中心軸L1が低流量吐水口431における洗浄水W21の流れ方向における中心軸L2よりも上方に位置することで、圧力律速部45で増速した洗浄水W21が低流量吐水口431へ直接流れ込まず、攪拌室44で流れが乱れて渦巻いた状態となってから低流量吐水口431へ流れ込むため、低流量吐水口431が水密になりやすくなる。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合に、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W22の流速の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【0076】
また、攪拌室44が低流量吐水口431の上流側に壁部441を有することで、圧力律速部45で増速した洗浄水W21が壁部441に衝突してから低流量吐水口431へ流れ込むため、攪拌室44で流れが乱れて渦巻いた状態となり、低流量吐水口431が水密になりやすくなる。これにより、リム導水路42を流れる洗浄水W21が低流量の場合に、リム吐水口43(低流量吐水口431)から供給される洗浄水W22の流速の低下を抑えることができ、ボウル部21の洗浄性能の低下を抑えることができる。
【0077】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 水洗大便器
21 ボウル部
23 トラップ部
31 主導水路
41 リム連絡孔
42 リム導水路
43 リム吐水口
431 低流量吐水口
432 高流量吐水口
44 攪拌室
441 壁部
45 圧力律速部
51 ゼット導水路
52 ゼット吐水口
A1 下流領域
L 中心軸
S 流路断面積
W 洗浄水
図1
図2
図3
図4
図5
図6