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特開2024-18129レンジフードの整流板用汚れ防止シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018129
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】レンジフードの整流板用汚れ防止シート
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240201BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
F24F13/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121245
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】足立 将司
(72)【発明者】
【氏名】山岸 めい
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BE01
3L058BK02
3L058BK04
(57)【要約】
【課題】整流板が付属するレンジフードのその整流板の裏面が汚れるのを防止するためのシートを提供すること。
【解決手段】汚れ防止シート10は、不織布層11とフィルム層12と、その間の粘着層13を備える。不織布層11は、設置状態でレンジフード本体の側に位置し、油煙や油滴を捕捉する。フィルム層12は、設置状態で整流板の裏面の側に位置し、不織布層11が捕捉した油煙や油滴が整流板の裏面へと浸み通るのを阻止する。粘着層13は、設置状態でフィルム層12の一部を剥がし露出させることで、整流板の裏面へと貼り付けられ、汚れ防止シート10は、ずれ動かないように固定される。これにより、整流板の裏面が汚れることが簡易に防止され、整流板を清掃する時間や手間を削減することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口を有するレンジフード本体と、前記吸気口の直下に所定の隙間を開けて対向する整流板とを有し、前記隙間を通じて吸気をおこなう、整流板付きレンジフードの前記整流板に設置可能な汚れ防止シートであって、
該汚れ防止シートは、前記整流板の前記レンジフード本体と対向する裏面を覆うように設置され、
前記隙間を通じて吸気される油煙を含む空気が前記整流板の裏面に接触するのを防ぎ、かつ、前記レンジフード本体の側から垂れ落ちる油滴を受け止めるレンジフードの整流板用汚れ防止シート。
【請求項2】
設置状態で前記レンジフード本体の側に位置し、前記油煙や油滴を捕捉する不織布層と、
設置状態で前記整流板の裏面の側に位置し、前記不織布層が捕捉した前記油煙や油滴が前記整流板の裏面へと浸み通るのを阻止するフィルム層と、を備える請求項1に記載のレンジフードの整流板用汚れ防止シート。
【請求項3】
前記不織布層と前記フィルム層の間に粘着層をさらに備え、
前記フィルム層の一部を剥がし前記粘着層を露出させることで、
前記整流板の裏面へと貼り付け可能となっている請求項2に記載のレンジフードの整流板用汚れ防止シート。
【請求項4】
前記フィルム層には、スリットが形成されており、
前記フィルム層のスリットからシート外縁にかけての箇所を剥がすことが可能となっている請求項3に記載のレンジフードの整流板用汚れ防止シート。
【請求項5】
前記フィルム層には、前記スリットの位置を指し示す印刷表示がなされている請求項4に記載のレンジフードの整流板用汚れ防止シート。
【請求項6】
前記粘着層は、前記シートの縦方向または横方向に一定間隔で並列する欠落層を有し、
この欠落層に沿って前記シートをカットすることが可能となっている請求項3から5のいずれかに記載のレンジフードの整流板用汚れ防止シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流板が付属するレンジフードのその整流板の裏面が汚れるのを防止するためのシートに関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチン等のレンジの上方に換気のために設置されるレンジフードは、調理にともなう油汚れが付着しやすいため、レンジフード内のシロッコファンを覆うようにフィルターを設置するなど、汚れを防止する種々の試みがなされている。
【0003】
ところで、近年、レンジフードとして整流板が付属するタイプのものが普及している。
図5及び図6を参照して、この種のレンジフード1では、フード本体2の開口、すなわち吸気口2aの直下に所定の隙間を開けて平坦な整流板3が設置され、この隙間を通じて吸気をおこなっている。
このように隙間の大きさを絞ることで、ここを通過する空気を加速させ、吸引力を高めている。
【0004】
このような整流板3が付属するレンジフード1に取り付ける一般的なフィルターとして、吸気口2aに取り付けるグリスフィルター2fが知られている。
その他にも、特許文献1のように、整流板とレンジフード本体の吸気口との間に隙間なく押し込まれる、ガラス繊維などの難燃性素材からなるシート状のフィルターも開発されている。
【0005】
特許文献1のフィルターによれば、整流板とレンジフード本体との隙間から吸気された油煙などを含む空気は、フィルターを通過して濾過された後、シロッコファンにより室外に送り出されるため、シロッコファン等が汚れることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-153751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、油煙を含む空気は上記のように、整流板とレンジフード本体との隙間を通過するため、整流板の裏面(レンジフード本体との対向面)は油煙のいわば通り道となっており、そもそも油煙が付着しやすい構造となっている。
また、レンジフード本体の吸気口の開口縁などに付着した油滴が、整流板の裏面に向けて垂れ落ちてしまうこともある。また、図示しない吸気口の開口縁にはシロッコファンから落ちる油滴を受けるオイルトレーが設けられているものもあるが、長期間レンジフードを使用するとオイルトレーに油が溜まり、そこから溢れ出た場合には、同様に油滴が整流板の裏面に向けて垂れ落ちてしまうこともある。
【0008】
このため、シロッコファン等だけでなく、整流板の裏面にも油汚れが蓄積されてしまうが、従来はこれを抑制する試みはなされていなかった。一般に整流板は寸法が大きいため、汚れた際の清掃には、時間と手間がかかった。
【0009】
この点は、特許文献1のフィルターを用いた場合でも同様であり、整流板裏面の吸気口直下の箇所には密着しているため、その汚れは多少なりとも抑制できたとしても、整流板の裏面の大部分については、露出したままであり、その汚れを抑制することはできなかった。また、特許文献1のフィルターを用いた場合、吸気口と整流板との間の所定の隙間の全ての空間がフィルターで埋まるような状態になるので、レンジフードの吸気性能が低下するおそれがある。
【0010】
そこで本発明の解決すべき課題は、整流板が付属するレンジフードのその整流板の裏面が汚れるのを防止するための新たな試みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するため、本発明を、整流板付きレンジフードの整流板のレンジフード本体との対向面(裏面)を覆うように設置可能な汚れ防止シートであって、前記隙間を通じて吸気される油煙を含む空気が整流板の対向面(裏面)に接触するのを防ぎ、かつ、レンジフード本体の側から垂れ落ちる油汚れを受け止める構成としたのである。
【0012】
レンジフードの整流板用汚れ防止シートをこのように構成することで、整流板の裏面が汚れることが簡易に防止され、整流板を清掃する時間や手間を削減することができる。
汚れ防止シートが一定程度汚れると、これを整流板の裏面から外して廃棄し、新しい汚れ防止シートを整流板の裏面に設置することで、整流板が汚れのない状態を維持することができる。
【0013】
発明にかかるレンジフードの整流板用汚れ防止シートにおいて、設置状態でレンジフード本体の側に位置し、油煙や油滴を捕捉する不織布層と、設置状態で整流板の裏面の側に位置し、不織布層が捕捉した油煙や油滴が前記整流板の裏面へと浸み通るのを阻止するフィルム層と、を備える構成を採用することが好ましい。
【0014】
このように構成すると、油煙や油滴が不織布層に染み込むことで確実に捕捉され、かつ、その油煙や油滴はフィルム層で遮断され、整流板の裏面を汚すことがないため、整流板の汚れを一層防止することができる。
【0015】
発明にかかるレンジフードの整流板用汚れ防止シートにおいて、不織布層とフィルム層の間に粘着層をさらに備え、フィルム層の一部を剥がし粘着層を露出させることで、整流板の裏面へと貼り付け可能に構成を採用することがより好ましい。
【0016】
このように構成すると、汚れ防止シートを整流板の裏面に簡便に固定することができるため、使用中に風圧などで汚れ防止シートがずれ動いたり、整流板の裏面から外れたりするのを簡易に防止することができる。
また、使用の際にフィルム層の一部を剥がしても、整流板の裏面に油滴が多く落ちる部分にはフィルム層を残したままとすることで、当該部分のフィルム層による油滴の遮断性能は維持することができる。
【0017】
発明にかかるレンジフードの整流板用汚れ防止シートにおいて、フィルム層には、スリットが形成されており、フィルム層のスリットからシート外縁にかけての箇所を剥がすことが可能となっている構成を採用することがより好ましい。
【0018】
このように構成すると、カッター等の切断器具を用いることなしに、フィルム層の一部を剥がし粘着層を露出させる作業を容易に行うことができるため、利便性が向上する。
【0019】
発明にかかるレンジフードの整流板用汚れ防止シートにおいて、フィルム層には、スリットの位置を指し示す印刷表示がなされている構成を採用することがより好ましい。
【0020】
このように構成すると、フィルム層を剥がす始点となるスリットの位置が明確になるため、フィルム層の一部を剥がし粘着層を露出させる作業をより容易に行うことができるため、利便性が一層向上する。
【0021】
発明にかかるレンジフードの整流板用汚れ防止シートにおいて、粘着層は、シートの縦方向または横方向に一定間隔で並列する欠落層を有し、この欠落層に沿ってシートをカットすることが可能となっている構成を採用することが好ましい。
【0022】
市販されているレンジフードの整流板の縦横比や寸法には種々のものが存在するところ、このように構成すると、設置対象となる整流板の縦横比や寸法に合わせて、シートを適宜カットすることができるため、利便性が向上する。
欠落層に沿ってカットすることで、粘着層の粘着剤等がハサミやカッター等の切断器具の刃に付着しないため、刃が汚れたり、切断性能が低下したりすることが防止される。
【発明の効果】
【0023】
発明にかかる汚れ防止シートを以上のように構成したため、整流板が付属するレンジフードのその整流板の裏面が汚れるのを防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態の汚れ防止シートの平面図
図2】(a)は図1のA-A線に沿った断面図、(b)は(a)のB-B線に沿った断面図
図3】実施形態の汚れ防止シートをカットし、フィルムの一部を剥がした状態における斜視図
図4】実施形態の汚れ防止シートを、整流板を開いた状態のレンジフードに取り付けた状態における斜視図
図5】実施形態の汚れ防止シートを、整流板を閉じたレンジフードに取り付けた状態における(a)は全体断面図、(b)は要部拡大断面図
図6】整流板付きレンジフードの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1および図2に示す実施形態の汚れ防止シート10は、図3から図5のように、レンジフード1の整流板3の裏面に取り付けられ、整流板3が油煙や油滴などにより汚れるのを防止するものである。
【0026】
図1および図2のように実施形態の汚れ防止シート10は、平面視で矩形であって、厚み方向に不織布層11と、フィルム層12と、不織布層11とフィルム層12の間に介在する粘着層13と、からなる三層構造をなしている。なお、フィルム層12は透明であるため、図1では、粘着層13が透けて見えている。
使用の際には、不織布層11がフード本体2の側を向き、フィルム層12が整流板3の裏面の側を向くように整流板3の裏面上に設置され、粘着層13により固定される。
【0027】
矩形の汚れ防止シート10の縦横寸法は特に限定されないが、一般的な整流板3の寸法と合致するものとして、縦寸法が25cm~51cm、横寸法が30cm~85cmが例示できる。
寸法が大きすぎると、取り扱いが不便であるとともに、整流板3の裏面に設置する場合に、大きくカットする必要がある等、手間がかかり、寸法が小さすぎると、整流板3の裏面に露出する箇所ができてしまい、その汚れを十分に防止することができなくなる。
【0028】
図2に示す不織布層11は、不織布からなる。この不織布に油煙が付着し、レンジフード1のフード本体2の側から垂れ落ちる油滴が染み込むことで、汚れが捕捉される。
不織布の材質は特に限定されず、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維等の合成繊維や天然繊維が例示されるが、油滴や油煙の捕捉性に優れ、安価に製造できるものとしてポリエステル繊維製の不織布が好ましい。また、不織布には難燃性を付与するため、繊維中に難燃材を配合したり、不織布表面に難燃材を付着させる等の難燃加工を施しておくのが好ましい。
不織布の製法についても特に限定されず、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンボンド法等が例示される。
【0029】
不織布層11の厚みも特に限定されないが、好ましい範囲としては0.5~5mmであり、より好ましい範囲としては1~2mmである。また、目付も特に限定されないが、好ましい範囲としては20~60g/mであり、より好ましい範囲としては30~50g/mである。
これらの範囲内であれば、不織布層11が薄すぎて汚れの保持性能が損なわれたり、不織布層11が厚すぎて嵩張り、レンジフード1による吸気性能が損なわれたりすることはない。
【0030】
図1および図2に示すフィルム層12は、合成樹脂製のフィルムからなる。水密性、液密性の高いフィルム層12があることで、不織布層11に染み込んだ油煙や油滴が整流板3の裏面に至ろうとするのが遮断され、整流板3が汚れることが防止される。
フィルムの材質は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンが例示できるが、レンジフード内部という高温になりがちな環境に好適なものとして、耐熱性の高いPETフィルムが好ましい。また、フィルム層12に難燃性を付与してもよい。
【0031】
フィルム層12の厚みも特に限定されないが、好ましい範囲としては0.2~2mmであり、より好ましい範囲としては0.3~1mmである。
これらの範囲内であれば、フィルム層12が薄すぎて破れが生じ汚れの遮断性能が損なわれたり、フィルム層12が厚すぎて嵩張り、レンジフード1による吸気性能が損なわれたりすることはない。
【0032】
図1のように、フィルム層12の上部および下部にはそれぞれ、汚れ防止シートを左右方向に横断する上スリット12aおよび下スリット12bが形成されている。
これら上スリット12aおよび下スリット12bにより、汚れ防止シート10は、上部10a、下部10b、大部分を占める中間部10cの3つに区画されている。
【0033】
また、これら上スリット12aおよび下スリット12bを起点として、上スリット12aから汚れ防止シート10の上縁にかけての上部10a、下スリット12bから汚れ防止シート10の下縁にかけての下部10bのフィルム層12を、汚れ防止シート10から剥がすことが可能となっている。
図示のように、上部10aの幅、すなわち上スリット12aと汚れ防止シート10の上縁との間隔は、下部10bの幅、すなわち下スリット12bと汚れ防止シート10の下縁との間隔よりも狭くなっており、下部10bの幅に対して1/3~1/2程度となっている。
【0034】
フィルム層12の表面には、上下のスリット12a、12bの位置を指し示す印刷表示12cが形成されている。
スリット12a、12b自体は、ほとんど幅を持たず、視認しにくいところ、印刷表示12cが存在することで、スリット12a、12bの位置を確認することが容易となっており、汚れ防止シート10を使用する際に、上部10a、下部10bのフィルム層12を剥がしやすくなっている。
図では、印刷表示12cを矢印状のものとしているが、これに限定されず、例えば、スリットの両側にスリットから所定長さ(1.0mmから10mm程度)離れた位置にスリットと平行して線条をそれぞれフィルム層12に印刷することもできる。このようにすると、スリットを中心とした2本の平行線が印刷表示12cとして表示されるので、2本の平行線の中心にスリットが存在することがわかりやすくなる。
【0035】
図1および図2に示す粘着層13は、不織布層11とフィルム層12の間に平面視で所定のパターンで配された粘着剤からなる粘着部13aで構成されている。
また図示のように、粘着層13の左右方向には、一定の間隔をあけて並列する、粘着剤の存在しない上下方向に延びる欠落部13bが形成されている。
さらに下部10bにおいては、粘着層13の上下方向にも、一定の間隔をあけて並列する、粘着剤の存在しない左右方向に延びる欠落部13bが形成されている。
【0036】
これら欠落部13bの箇所に沿って、汚れ防止シート10左右方向については全体を、上下方向については下部10bをカットすることで、汚れ防止シート10の寸法を、整流板3の寸法に合わせて調整することが容易となっている。
欠落部13bに沿ってカットした場合、カッター等の切断器具の刃に粘着剤が付着しないようになっている。
フィルム層12は透明であるため、フィルム層12を通じて粘着層13の欠落部13bを確認することが容易となっている。
【0037】
汚れ防止シート10の上部10a、下部10bにおいては、中間部10cと比較して、粘着層13の粘着剤の占有割合が大きくなっている。
すなわち、上部10a、下部10bでは、その粘着部13aは、内部が粘着剤で塗りつぶされた方形の形状をしているが、中間部10cでは、その粘着部13aは、外縁のみに粘着剤が存在する方環の形状をしている。
上部10a、下部10bは、粘着剤の占有割合を大きくすることで、後述する整流板3の裏面に対する貼り付き力を高めている。
また、大部分をなす中間部10cは、整流板3の裏面には貼り付けないため、フィルム層12と不織布層11の積層状態を維持できる程度に粘着剤の使用割合を小さくすることで、コストを抑えている。これとともに、フィルム層12は熱収縮しやすいため、フィルム層12が粘着層13を介して不織布層11に積層されていることで、フィルム層12の収縮を粘着層13が抑制することが可能となるので、高温になるレンジフード内で使用した場合にも、汚れ防止シート10が波打ったり撓んだりすることを防止している。
粘着層13は、上下のスリット12a、12bに対応する大半の箇所が、すべて粘着部13aとなって粘着力が高められており、後述する整流板3の裏面に貼り付ける際に、上部10aと中間部10cとの境界、下部10bと中間部10cとの境界が、浮き上がらないようになっている。
【0038】
粘着層13を構成する粘着剤の種類は特に限定されないが、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤が例示できるが、再剥離性に優れ、整流板3から剥がす際に糊残り等がしにくいものとしてウレタン系粘着剤が好ましい。なお、粘着剤にも難燃性成分を添加するなどして難燃性を付与することが好ましい。
粘着層13の汚れ防止シート10全面に占める面積割合も特に限定されないが、10%~60%が例示できる。
これらの範囲内であれば、面積割合が小さすぎて粘着力が不十分となったり、面積割合が大きすぎてコスト高となったりフィルム層12の熱収縮により汚れ防止シート全体が大きく波打ったりしてしまうことが防止される。
粘着層13の厚みも特に限定されないが、5μm~80μmが例示できる。
これらの範囲内であれば、厚みが小さすぎて粘着力が不十分となったり、厚みが大きすぎて剥がした時に糊残りとして粘着層が残ったり、コスト高となったりしてしまうことが防止される。
粘着層13の形成方法も特に限定されないが、パターン印刷やスプレー塗工が例示できる。
【0039】
実施形態の汚れ防止シート10の構成は以上のようであり、次に図3から図5(必要あれば図6も)を参照してその使用方法について説明する。
【0040】
まず図3のように、取り付け対象となる整流板3の寸法に合わせて、あらかじめ欠落部13bに沿ってカットしておいた汚れ防止シート10を準備する。
この汚れ防止シート10について、上下のスリット12a、12bを起点として、上部10a、下部10bのフィルム層12を剥がす。これにより、上部10a、下部10bにおいて粘着層13が露出する。
【0041】
つぎに図4のように、レンジフード1の整流板3を開いておき、汚れ防止シート10を、そのフィルム層12の側が整流板3の裏面に対向するように、かつその上部10aが整流板3の奥側(開いた状態での上側)にその下部10bが整流板3の手前側(開いた状態での下側)に位置するようにして、整流板3裏面へと押し当てる。
上部10aおよび下部10bの粘着層13により、汚れ防止シート10は整流板3の裏面へと貼り付けられ、固定される。この際に、上側に位置する上部10aを先に貼り付け、下側に位置する下部10bを後から貼り付けたほうが、汚れ防止シート10が自重でめくれ落ちてくることがないため、好ましい。
なお、整流板3は、奥側のヒンジ3aを中心に、上下方向に揺動可能となっており、これにより開閉が可能となっている。
【0042】
さらに図5および図6のように、整流板3を上方に揺動させ、フード本体2の吸気口2aを覆った状態で、手前側の固定金具3bでフード本体2に対して固定することで、汚れ防止シート10の取り付けが完了する。
この状態で、フード本体2の外面に設けられた操作ボタン2bを押して、フード本体2の内部のファンケーシング2cに収容されたシロッコファン2dを作動させると、整流板3の裏面とフード本体2の隙間を通じて、吸気が開始され、レンジなどから発生する油煙がレンジフード1へと吸い込まれる。
油煙はシロッコファン2dを通過して、最終的に換気ダクト2eから排気される。
なお、同図では、吸気口2aに油煙の脂成分を捕捉するグリスフィルター2fが被せられている。
【0043】
図示のように、整流板3の裏面とフード本体2との隙間は、油煙の通路となるところ、この整流板3の裏面は汚れ防止シート10で覆われているため、覆われた部分については油煙が整流板3に直接接触することはない。そして、汚れ防止シート10の油煙の通路側を向く不織布層11は、油煙などの汚れDを捕捉する。
また、吸気口2aの開口縁やグリスフィルター2fにも油煙が付着し、これが蓄積されることで油滴を形成し、整流板3の裏面に向けて垂れ落ちたり、図示しない吸気口の開口縁のオイルトレーから溢れ出た油滴が整流板の裏面に向けて垂れ落ちてしまうこともあるが、このような油滴などの汚れDも不織布層11が捕捉する。
【0044】
ここで、油滴などの汚れDの一部は、不織布層11から整流板3の裏面にかけて浸み通りそうになるが、汚れ防止シート10の大部分を占める中間部10cにおいては、その間には水密性、液密性に優れたフィルム層12が存在するため、油滴などの汚れDはここで遮断され、整流板3の裏面へと至ることはない。特に、中間部10cの中心を吸気口2aが対応する位置にくるように汚れ防止シート10を構成した場合には、前述の吸気口2a付近から垂れ落ちる油滴などの汚れDがフィルム層12により確実に遮断されて整流板3の裏面の汚れを防ぐことができる。
したがって、汚れ防止シート10により、整流板3の裏面が油煙や油滴などの汚れDで汚れることが充分に防止されている。
【0045】
なお、汚れ防止シート10の使用時には、その上部10aおよび下部10bには、フィルム層12は存在せず、したがって、この箇所では不織布層11を浸み通った油滴の遮断効果はフィルム層12ほどは得られない。
しかし、油滴が垂れ落ちるのは、通常は吸気口2aの直下周辺であるところ、汚れ防止シート10の上部10aおよび下部10bは設置状態において、吸気口2aの直下よりも相当程度に手前側および奥側に位置するため、ここに油滴が垂れ落ちることはない。
特に、レンジフード1において吸気口は中心に位置するのではなく、奥側に偏って配置されることが多いが、汚れ防止シート10の設置状態で、奥側に位置する上部10aの幅が小さく、手前側に位置する下部10bの幅が大きく形成されているため、フィルム層12の存在しない箇所が吸気口2aの直下に至らないように、十分な予防が図られている。 また、上部10aおよび下部10bの大半の部分には粘着層13があり、この粘着層13がフィルム層12と同様の役割をも果たすので、汚れ防止シート10を使用していない場合に比べて十分な汚れ防止の効果を備える。
このように、レンジフードの使用時は、汚れ防止シート10が整流板の裏面に貼り付けられていることで、吸気口2aのシロッコファンから滴下する油が汚れ防止シートにて受け止められ、特にシロッコファンの直下に位置する汚れ防止シート10にはフィルム層12があるため、整流板の裏面が汚れることはない。さらに、汚れ防止シート10を取替える際には、再度整流板を開放することになり整流板が垂直方向に位置することになるので油も垂直方向に沿って垂れ落ちてくるおそれがあるが、汚れ防止シート10は不織布層11を備えており、その不織布層11が油を吸収するので、取替え時における汚れ防止シートからの油の垂れ落ちも防ぐことができる。
【0046】
上部10aおよび下部10bの幅は特に限定されないが、以上のように使用時に油滴の遮断効果を有していないことから、それぞれ0.8cm~20cmとすることが好ましく、上部10aの幅は2cm~10cmかつ下部10bの幅は5cm~15cmとすることがより好ましい。本実施の形態では、上部10aの幅を5cm程度、下部10bの幅を13cm程度にしている。
20cmを上回ると、使用時にフィルム層12を有していない、上部10aおよび下部10bの幅が大きすぎて、不織布層11を浸み通った油滴により整流板3の裏面が汚れてしまうおそれがある。
また、0.8cmを下回ると、上部10aおよび下部10bの幅が小さすぎて、整流板3の裏面に対する十分な粘着効果が得られない恐れがある。
【0047】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでない。
本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、その範囲内およびこれと均等の意味での、すべての修正と変更を含むものとする。
【0048】
実施形態では、汚れ防止シート10を不織布層11、フィルム層12,粘着層13の三層構造としているが、整流板3の裏面に設置可能である限りにおいて、これに限定されない。
たとえば、不織布層11のみ、またはフィルム層12のみからなる単層構造とすることもできる。
また、不織布層11とフィルム層12、不織布層11と粘着層13、フィルム層12と粘着層13からなる、二層構造としてもよく、粘着層13が存在する場合には、整流板3の裏面に貼り付けることが可能となっている。
【0049】
不織布層11のみ、またはフィルム層12のみからなる単層構造や、不織布層11とフィルム層12からなる二層構造の場合、そのままでは整流板3の裏面に貼り付けることはできないが、別途、磁石や両面テープ、面ファスナなどを用いて、整流板3の裏面にずれ動かないように固定することもできる。
さらに、汚れ防止シート10に雑菌が繁殖するのを防止するための抗菌剤を含む抗菌層、汚れ防止シート10が設置状態で撓んだり波打ったりするのを防止するための保形性の高い保形層などの、不織布層11、フィルム層12,粘着層13以外の層を含んでいてもよい。
【0050】
実施形態では、フィルム層12の上下にスリット12a、12bを設け、これらスリット12a、12bを起点にフィルムを剥がすことで、汚れ防止シート10の上部10a、下部10bに粘着層13を露出させ、整流板3の裏面に貼り付ける構成としているが、スリットの位置およびフィルムを剥がして粘着層13を露出させる箇所は、これに限定されない。
【0051】
たとえば、フィルム層12の左右にスリットを設け、これを起点にフィルムを剥がすことで、汚れ防止シート10の左右部に粘着層13を露出させる構成としてもよい。左右部の幅は同じでも違っていてもよい。
さらに、スリットおよび粘着層13を露出させる箇所は、上下左右に設けてもよいし、逆に上下左右のうち一か所のみに設けてもよい。
また、スリットが上下に設けられている場合でも、実施形態では上部10a、下部10bの幅を違えているが、同じにしてもよい。
また、スリットに代えて、ミシン目やハーフカットなどの易破断線を採用してもよい。
【0052】
粘着層13のパターンも実施形態に限定されず、たとえば粘着剤を全面に又は所望の部分にいわゆるべた塗りしたり、ドット状に点在させたりすることもできる。また、スプレー塗工により全面又は部分的に粘着層を形成してもよい。
ドット状に点在させた場合には、隣り合うドットの間が欠落部13bとなり、これに沿って汚れ防止シート10をカットし寸法調整することが可能となり、またその際に切断器具の刃に粘着剤が付着することも防止できる。
【0053】
実施形態ではフィルム層12を透明としているが、不透明とすることもできる。
この場合、欠落部13bをフィルム層12を通じて視認することが難しくなるため、スリット12a、12bの場合と同様、フィルム層12に欠落部13bの位置を指し示す印刷表示を設けることもできる。
【0054】
実施形態では、汚れ防止シート10の形状を矩形としているが、これに限定されず、円形、楕円形、多角形などでもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 レンジフード
2 フード本体
2a 吸気口
2b 操作ボタン
2c ファンケーシング
2d シロッコファン
2e 換気ダクト
2f グリスフィルター
3 整流板
3a ヒンジ
3b 固定金具
10 汚れ防止シート
10a 上部
10b 下部
10c 中間部
11 不織布層
12 フィルム層
12a 上スリット
12b 下スリット
12c 印刷表示
13 粘着層
13a 粘着部
13b 欠落部
D 汚れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6