(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001813
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】衣服用ファン及び衣服
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20231227BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20231227BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F04D29/38 A
A41D13/002 105
F04D25/08 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100707
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠野 隆志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
3H130
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AC02
3B011AC17
3B211AA01
3B211AC02
3B211AC17
3H130AA13
3H130AB06
3H130AB12
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC25
3H130BA66C
3H130BA73C
3H130CA05
3H130CB01
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DJ03Z
3H130EA07C
3H130EB05C
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】ハウジングの軸方向寸法を拡大することなく送風能力を向上させると共に騒音の増大を抑制できる衣服用ファンを提供すること。
【解決手段】衣服100に形成された開口部102に装着される衣服用ファン1であって、吸込口ガード部11が形成された吸込口2と、吸込口2に対向すると共に吹出口ガード部12が形成された吹出口3と、を有する中空のハウジング10と、ハウジング10の内部に配置され、電動モータ22によって回転する複数の羽根翼21bを有するファン本体20と、を備え、吸込口2と吹出口3とが対向する方向を軸方向Xとするとき、羽根翼21bの軸方向Xの長さL1は、ハウジング10の軸方向Xの最大長さL2の32%~38%の長さに設定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服に形成された開口部に装着される衣服用ファンであって、
吸込口ガード部が形成された吸込口と、前記吸込口に対向すると共に吹出口ガード部が形成された吹出口と、を有する中空のハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置され、アクチュエータによって回転する複数の羽根翼を有するファン本体と、を備え、
前記吸込口と前記吹出口とが対向する方向を軸方向とするとき、前記羽根翼の前記軸方向の長さは、前記ハウジングの前記軸方向の最大長さの32%~38%の長さに設定されている
ことを特徴とする衣服用ファン。
【請求項2】
請求項1に記載された衣服用ファンにおいて、
前記羽根翼から前記吸込口ガード部の内側面までの前記軸方向の最大長さは、前記ハウジングの前記軸方向の長さの18%以上の長さに設定されている
ことを特徴とする衣服用ファン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された衣服用ファンにおいて、
前記羽根翼は、回転方向に沿って等間隔をあけた状態で三枚設けられている
ことを特徴とする衣服用ファン。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された衣服用ファンにおいて、
前記吸込口ガード部は、径方向に延びると共に前記羽根翼の回転方向に沿って並列された複数の桟部材と、を有し、
前記桟部材は、前記羽根翼が回転した際、複数の前記羽根翼のそれぞれの前記回転方向の前端縁が前記軸方向から見て前記桟部材に重なるタイミングが非同期となる位置に配置されている
ことを特徴とする衣服用ファン。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載された衣服用ファンにおいて、
前記ハウジングは、一端に前記吸込口ガード部が形成された筒状の内側筒部材が、一端に前記吹出口ガード部が形成された筒状の外側筒部材に差し込まれ、係合構造を介して固定されることで形成され、
前記内側筒部材は、前記吸込口ガード部の外周縁にフランジ部が形成され
前記外側筒部材は、前記ハウジングを前記衣服に装着するための固定部材が螺合するネジ溝が外周面に形成され、前記内側筒部材が差し込まれる他端の外周縁に前記フランジ部に当接する補助フランジ部が形成されている
ことを特徴とする衣服用ファン。
【請求項6】
吸込口ガード部が形成された吸込口と、前記吸込口に対向すると共に吹出口ガード部が形成された吹出口と、を有する中空のハウジングと、前記ハウジングの内部に配置され、アクチュエータによって回転する複数の羽根翼を有するファン本体と、を備え、前記吸込口と前記吹出口とが対向する方向を軸方向とするとき、前記羽根翼の前記軸方向の長さが、前記ハウジングの前記軸方向の最大長さの32%~38%の長さに設定されている衣服用ファンを装着可能な開口部が形成されている
ことを特徴とする衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服用ファン及び衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服に形成された開口部に装着され、衣服の内部に空気(外気)を送風する衣服用ファンが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。従来の衣服用ファンでは、吸込口ガード部が形成された吸込口と、吹出口ガード部が形成された吹出口とを有するハウジングの内部空間にファン本体が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6200606号公報
【特許文献2】特開2022-68134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に記載された従来の衣服用ファンは、ハウジングの内部空間の大きさに対して、ファン本体が有する羽根翼の軸方向の寸法が小さい。つまり、羽根翼と吸込口ガード部との間や、羽根翼と吹出口ガード部との間に生じる隙間が大きい。そのため、ハウジングの軸方向寸法を拡大することなくファン本体の送風能力を向上可能な余地がある。
【0005】
一方、ファン本体の送風能力を向上させるため、例えば特許文献2に記載された従来の衣服用ファンのように羽根翼の数を増加した場合では、羽根翼の数の増加に依存して乱流騒音が大きくなってしまう。そのため、衣服の着用者に不快感を与えることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ハウジングの軸方向寸法を拡大することなく送風能力を向上させると共に騒音の増大を抑制できる衣服用ファン及びそれを装着できる衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の衣服用ファンは、衣服に形成された開口部に装着される衣服用ファンであって、吸込口ガード部が形成された吸込口と、前記吸込口に対向すると共に吹出口ガード部が形成された吹出口と、を有する中空のハウジングと、前記ハウジングの内部に配置され、アクチュエータによって回転する複数の羽根翼を有するファン本体と、を備え、前記吸込口と前記吹出口とが対向する方向を軸方向とするとき、前記羽根翼の前記軸方向の長さは、前記ハウジングの前記軸方向の最大長さの32%~38%の長さに設定されている構成とした。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の衣服は、吸込口ガード部が形成された吸込口と、前記吸込口に対向すると共に吹出口ガード部が形成された吹出口と、を有する中空のハウジングと、前記ハウジングの内部に配置され、アクチュエータによって回転する複数の羽根翼を有するファン本体と、を備え、前記吸込口と前記吹出口とが対向する方向を軸方向とするとき、前記羽根翼の前記軸方向の長さが、前記ハウジングの前記軸方向の最大長さの32%~38%の長さに設定されている衣服用ファンを装着可能な開口部が形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0009】
これにより、本発明の衣服用ファンは、ハウジングの軸方向寸法を拡大することなく送風能力を向上させると共に騒音の増大を抑制できる。また、本発明の衣服は、ハウジングの軸方向寸法を拡大することなく送風能力を向上させると共に騒音の増大を抑制できる衣服用ファンを装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の衣服用ファンが装着された衣服を示す図である。
【
図2】実施例1の衣服用ファンにおいてハウジングを破断した状態の斜視図である。
【
図3】実施例1の衣服用ファンの分解斜視図である。
【
図4】実施例1の衣服用ファンにおいてハウジングを破断した状態の側面図である。
【
図5】実施例1の衣服用ファンを吸込口側から見た平面図である。
【
図6】実施例1における羽根翼と吸込側桟部材との位置関係を示す説明図である。
【
図8】第1実験における、ハウジング長さに対する羽根翼長さの割合と風量の関係、及び、ハウジング長さに対する羽根翼長さの割合と送風効率の関係を示したグラフである。
【
図9】第2実験における、ハウジング長さに対する吸込側空間距離の割合と音圧レベルの高低差の関係を示したグラフである。
【
図10】(a)は、第1比較例の衣服用ファンにおいてハウジングを破断した状態の斜視図である。(b)は、第1比較例の衣服用ファンにおいてハウジングを破断した状態の側面図である。
【
図11】実施例1の衣服用ファンと第1比較例の衣服用ファンにおける風量と騒音値の関係を示すグラフである。
【
図12】第2比較例の衣服用ファンにおける周波数と音圧レベルの関係を示すグラフである。
【
図13】(a)は、第3比較例の衣服用ファンにおける周波数と音圧レベルの関係を示すグラフである。(b)は、第4比較例の衣服用ファンにおける周波数と音圧レベルの関係を示すグラフである。
【
図14】第5比較例の衣服用ファンにおける周波数と音圧レベルの関係を示すグラフである。
【
図15】第6比較例の衣服用ファンにおける周波数と音圧レベルの関係を示すグラフである。
【
図16】第1変形例の衣服用ファンの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の衣服用ファン及び衣服を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。なお、以下の説明では、衣服100を着用する着用者を基準として「上下」「左右」「前後」等の用語を用いる。
【0012】
実施例1の衣服100は、着用者が上半身に着る上衣(ジャンパー)である。衣服100は、
図1に示されたように、着用者の背中を覆う後身頃101に一対の開口部102が形成されている。開口部102は、後身頃101を貫通する円形の貫通孔である。衣服100は、開口部102に実施例1の衣服用ファン1が着脱可能に装着される。そして、衣服100の内部には衣服用ファン1によって空気(外気)が送り込まれ、着用者の体が冷却される。
【0013】
実施例1の衣服用ファン1は、
図2~
図4に示されたように、ハウジング10と、ファン本体20と、固定部材30と、を備えている。
【0014】
ハウジング10は、
図2に示されたように、互いに対向する吸込口ガード部11と吹出口ガード部12とを有する中空部材である。ここで、吸込口ガード部11は、後述するように複数の吸込側桟部材11b及び複数の補助桟部材11dを有しており、隣り合う吸込側桟部材11bと補助桟部材11dの間が、空気が吸い込まれる吸込口2となる。また、吹出口ガード部12は、後述するように複数の吹出側桟部材12bを有しており、隣り合う吹出側桟部材12bの間が、空気が吹き出される吹出口3となる。すなわち、ハウジング10は、吸込口ガード部11が形成された吸込口2と、吸込口2に対向すると共に吹出口ガード部12が形成された吹出口3と、を有する。また、以下では、吸込口2と吹出口3とが対向する方向、つまり、吸込口ガード部11と吹出口ガード部12が対向する方向を「軸方向X」とする。
【0015】
そして、実施例1のハウジング10は、
図3に示されたように、内側筒部材10Aと外側筒部材10Bとを有している。ハウジング10は、内側筒部材10Aが外側筒部材10Bに差し込まれ、係合構造10Cを介して固定されることで形成されている。なお、ハウジング10の径や衣服100への差し込み長さL(
図4参照)等の大きさは、衣服100の種類や必要な送風量等に応じて任意に設定可能である。
【0016】
内側筒部材10Aは、一端に吸込口ガード部11が形成され、他端に開放端が形成された円筒部材である。吸込口ガード部11の外周縁(内側筒部材10Aの一端の外周縁)には、フランジ部13が形成されている。フランジ部13は、内側筒部材10Aの周面から径方向(軸方向Xに直交する方向。以下同様)に沿ってハウジング10の外側に突出する平板である。また、内側筒部材10Aは、開放端から外側筒部材10Bに差し込まれる。
【0017】
外側筒部材10Bは、一端に吹出口ガード部12が形成され、他端に開放端が形成された円筒部材である。外側筒部材10Bの外周面には雄ネジ溝14(ネジ溝)が形成されている。雄ネジ溝14には、後述するように固定部材30が螺合される。
【0018】
係合構造10Cは、ここでは、内側筒部材10Aに形成された複数の爪片16aと、外側筒部材10Bに形成された複数の凹部16bとの組み合わせで構成されている。内側筒部材10Aが外側筒部材10Bに挿入された際、爪片16aがハウジング10の内側に向かって弾性変形し、自身の弾性力で爪片16aが凹部16bに係合することで、内側筒部材10Aと外側筒部材10Bが固定される。
【0019】
吸込口ガード部11は、ハウジング10の内部に指等の異物が入り込むことを防止するものである。吸込口ガード部11は、
図5に示されたように、中央支持部11aと、複数の吸込側桟部材11b(桟部材)と、複数の連結桟部材11cと、複数の補助桟部材11d(桟部材)と、を有している。また、吸込口ガード部11は、中央支持部11aを中心に軸方向Xに沿って、ハウジング10の外側に向かって膨出している(
図4参照)。
【0020】
中央支持部11aは、ハウジング10の軸線O上に配置された円盤状部分であり、軸方向Xに沿って見たときにファン本体20の電動モータ22とほぼ同じ大きさに設定されている。
【0021】
吸込側桟部材11bは、中央支持部11aと内側筒部材10Aの側壁10xとの間に架け渡されて径方向に延びると共に、ファン本体20の翼部材21(羽根翼21b)の回転方向Yに沿って所定の間隔をあけて並列されている。
【0022】
連結桟部材11cは、翼部材21の回転方向Yに沿って延び、隣り合う吸込側桟部材11bの間に架け渡されている。また、連結桟部材11cは、中央支持部11aと内側筒部材10Aの側壁10xとの間に、所定の間隔をあけて並列されている。
【0023】
補助桟部材11dは、連結桟部材11cと内側筒部材10Aの側壁10xとの間に架け渡されて径方向に延びると共に、翼部材21の回転方向Yに沿って所定の間隔をあけて並列されている。なお、補助桟部材11dは、翼部材21の回転方向Yに沿って、吸込側桟部材11bと交互に配置されている。
【0024】
そして、吸込側桟部材11b及び補助桟部材11dは、翼部材21(羽根翼21b)が回転した際、複数の羽根翼21bのそれぞれの回転方向Yの前端縁23が、軸方向Xから見て吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dに重なるタイミングが非同期となる位置に配置されている。
【0025】
なお、「翼部材21(羽根翼21b)の回転方向Y」は、実施例1では、軸方向Xに沿って吸込口2を見たときに反時計回り方向となる方向である。また、「羽根翼21bの前端縁23が吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dに重なるタイミング」とは、
図6に示されたように、羽根翼21bの前端縁23が吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dの下流側に生じるウエイク領域Sを通過するタイミングである。ウエイク領域Sは、ハウジング10に吸い込まれる空気の流れが吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dによって遮られ、吸込側桟部材11bと補助桟部材11dの間(吸込口2)を通る空気の流速よりも、流速が低くなる領域である。そして、「重なるタイミングが非同期となる」とは、「重なるタイミングが同時にならない」ことを意味する。すなわち、実施例1では、三枚の羽根翼21bの前端縁23が同時にウエイク領域Sを通過しないようにするため、吸込側桟部材11b及び補助桟部材11dが周方向に沿って不等ピッチで並列されている。
【0026】
吹出口ガード部12は、ハウジング10の内部に指等の異物が入り込むことを防止するものである。吹出口ガード部12は、
図3に示されたように、モータ収納部12aと、複数の吹出側桟部材12bと、連結桟部材12c(
図4参照)と、を有している。また、吹出口ガード部12は、モータ収納部12aを中心に軸方向Xに沿って、ハウジング10の外側に向かって膨出している(
図4参照)。
【0027】
モータ収納部12aは、ハウジング10の軸線O上に配置された円筒部材であり、吸込口ガード部11に臨む一端が閉鎖し、他端が開放している。モータ収納部12aの閉鎖面12dには、電動モータ22の回転軸22aが貫通する貫通孔12eが形成されている。
【0028】
吹出側桟部材12bは、モータ収納部12aと外側筒部材10Bの側壁10yとの間に架け渡されて径方向に延びると共に、翼部材21の回転方向Yに沿って所定の間隔をあけて並列されている。
【0029】
連結桟部材12cは、翼部材21の回転方向Yに沿って延び、隣り合う吹出側桟部材12bの間に架け渡されている。
【0030】
ファン本体20は、
図3に示されたように、翼部材21と、翼部材21を回転させる電動モータ22(アクチュエータ)と、を有している。
【0031】
翼部材21は、円筒状のハブ21aと、ハブ21aの周面に設けられた複数(ここでは三枚)の羽根翼21bと、を有している。ハブ21aは、吸込口ガード部11に臨む一端が閉鎖して回転軸取付部21cが形成され、他端が開放している。ハブ21aは、モータ収納部12aに隙間を開けた状態で被せられ、貫通孔12eから突出した電動モータ22の回転軸22aが回転軸取付部21cに連結される。これにより、ハブ21aは回転軸22aの回転に伴って回転し、複数の羽根翼21bが一体的に回転する。
【0032】
そして、複数(三枚)の羽根翼21bは、
図7に示されたように、翼部材21の回転方向Yに沿って等間隔をあけた状態で配置されている。ここで、各羽根翼21bの翼弦長Lαや投影面積、取付角度θ1は同一である。なお、「取付角度θ1」とは、
図4に示されたように、翼部材21を側方から見たときに、羽根翼21bと翼部材21の回転方向Yとでなす角度である。そして、羽根翼21bの翼弦長Lαや投影面積、取付角度θ1等は、ハウジング10やハブ21aの大きさ等に応じて任意に設定可能である。実施例1では、翼部材21の直径(外径)R1が約80mm、ハブ21aの直径(外径)R2が約33mm、翼弦長Lαが約58mm、翼部材21の投影面積が約3000mm
2に設定されている。さらに、翼部材21がハウジング10内に配置された際、翼部材21とハウジング10との間に生じる径方向の隙間K1(
図4参照)は、実施例1では約1.3mmに設定されている。
【0033】
さらに、実施例1の衣服用ファン1では、
図8に示された第1実験の結果に基づき、各羽根翼21bの軸方向Xの長さ(以下「羽根翼長さL1」という)が、ハウジング10の軸方向Xの最大長さ(以下「ハウジング長さL2」という)の32%~38%の長さに設定されている。すなわち、実施例1の衣服用ファン1では、ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合(比率)を32%~38%の範囲に設定する。
【0034】
ここで、「羽根翼長さL1」とは、
図4に示されたように、各羽根翼21bの軸方向Xに沿った長さである。また、「ハウジング長さL2」とは、
図4に示されたように、吸込口ガード部11の外側面11xから吹出口ガード部12の外側面12xまでの最大長さである。
【0035】
また、「第1実験」とは、ハウジング長さL2と、各羽根翼21bから吸込口ガード部11の内側面11yまでの軸方向Xの最大長さ(以下「吸込側空間距離L3」という、
図4参照)を固定値とし、羽根翼長さL1を適宜設定して風量を測定する実験である。具体的には、第1実験において、ハウジング長さL2を既存の衣服用ファンと同程度の長さ(約50mm程度)に設定し、ハウジング長さL2に対する吸込側空間距離L3の割合を18.5%に設定する。そして、ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合を適宜変更して風量を測定した。
【0036】
なお、ハウジング長さL2が増大とすると、衣服用ファン1の服内寸法及び質量が増加し、使い心地が悪化する。また、ハウジング長さL2が低減すると、羽根翼長さL1の大きさが規制される。このため、ハウジング長さL2は固定値とする。また、吸込側空間距離L3は、増減することで異音に影響が生じるため固定値とする。
【0037】
また、第1実験では、風量の測定と共に、吹出口3に試験指の先端を挿入し、その先端が羽根翼21bに接触するか否かを検証した。なお、「試験指」は、JIS(Japanese Industrial Standards:日本工業規格)の規定(例えば、JIS C0920)で規定される試験指(テストフィンガー)であり、ここでは、直径12mm、長さ80mmの関節付きの試験指とする。
【0038】
そして、第1実験の結果、電動モータ22を所定の出力(ここでは7.8V)に設定した場合、既存の衣服用ファンにおける強運転時相当の風量(ここでは2.1m
3/min)以上の風量が得られる「ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合」は、32%以上の範囲であることが分かった。なお、
図8では、ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合と風量との関係が実線で示されている。一方、吹出口3から試験指を入れたときに羽根翼21bに触れない「ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合」は、38%以下の範囲であることが分かった。
【0039】
この結果、実施例1の衣服用ファン1では、羽根翼長さL1をハウジング長さL2の32%~38%の長さに設定した。なお、
図4に示された羽根翼長さL1は、ハウジング長さL2の約37.3%の長さに設定されている。
【0040】
また、
図8では、「ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合」と「送風効率」との関係が破線で示されている。「送風効率」は、風量Qを電動モータ22に作用する負荷トルクTrで割った値である。そして、
図8から明らかなように、破線で示された「ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合」と「送風効率」との関係から、ハウジング長さL2に対する羽根翼長さL1の割合が32%~38%の範囲では、送風効率の傾き(変化率)が緩やかになることがわかった。
【0041】
また、実施例1の衣服用ファン1では、
図9に示された第2実験の結果に基づき、吸込側空間距離L3が、ハウジング長さL2の18%以上の長さに設定されている。
【0042】
ここで、「第2実験」は、羽根翼長さL1と、各羽根翼21bから吹出口ガード部12の外側面12xまでの軸方向Xの最大長さ(以下、「吹出側空間距離L4」という、
図4参照)を固定値とし、吸込側空間距離L3を適宜設定して特定周波数における音圧レベルの高低差を測定する実験である。
【0043】
一般的に、人間は可聴周波数域(20Hz~200000Hz)の中でも1000~4000Hzの周波数の音に特に鋭敏である。また、特定周波数(Nz×10[Hz]及びNz×11[Hz])において、音圧レベルの高低差が10dBを超えると異音として認識されやすい。なお、「Nz」とは、翼部材21の回転数と羽根翼21bの数との積算値である。
【0044】
これに対し、第2実験の結果、特定周波数(Nz×10[Hz]及びNz×11[Hz])において、音圧レベルの高低差が異音として認識されない10dB前後に抑えることができる「ハウジング長さL2に対する吸込側空間距離L3の割合」が18%以上の範囲であることが分かった。この結果、実施例1の衣服用ファン1では、吸込側空間距離L3をハウジング長さL2の18%以上の長さに設定した。なお、
図4に示された吸込側空間距離L3は、ハウジング長さL2の約18.5%の長さに設定されている。
【0045】
なお、実施例1の衣服用ファン1において、吹出側空間距離L4は、羽根翼長さL1とハウジング長さL2と吸込側空間距離L3とに依存して規定される。
図4に示された吹出側空間距離L4は、ハウジング長さL2の約38.2%(35%以上)の長さに設定されている。
【0046】
電動モータ22は、図示しないバッテリーからの電力供給を受けて駆動し、回転軸22aを回転させる。電動モータ22は、吹出口ガード部12のモータ収納部12a内に収納され、回転軸22aが貫通孔12eから突出する。また、実施例1では、モータ収納部12aに電動モータ22が収納された状態で、モータ収納部12aを閉鎖する蓋体22bが外側筒部材10Bに取り付けられる。
【0047】
固定部材30は、
図3に示されたように、環状のリング部31と、リング部31の内周面に形成された雌ネジ溝32と、を有している。リング部31の内径は、外側筒部材10Bの外径とほぼ一致し、雌ネジ溝32は雄ネジ溝14に螺合可能である。また、リング部31の外径は、衣服100に形成された開口部102の内径よりも大きい。このため、
図2及び
図4に示されたように、ハウジング10の吹出口3側が開口部102に挿入された状態で固定部材30がハウジング10に嵌め込まれ、雌ネジ溝32が雄ネジ溝14に螺合されると、リング部31は、開口部102の周縁部103をハウジング10のフランジ部13側へ押圧することになる。
【0048】
なお、リング部31の外周面には、内側に向かって円弧状に凹んだ複数の凹部31aが形成されている。凹部31aは、使用者がリング部31を把持する際に指を掛けるために使用され、リング部31の全周にわたって一定の間隔で並んでいる。
【0049】
以下、実施例1の衣服用ファン1及び衣服100の作用を説明する。
【0050】
実施例1の衣服用ファン1では、吸込口2及び吸込口2に対向する吹出口3を有するハウジング10の内部にファン本体20が配置されている。そして、ファン本体20が有する羽根翼21bの軸方向Xの長さ(羽根翼長さL1)が、ハウジング10の軸方向Xの最大長さ(ハウジング長さL2)の32%~38%の長さに設定されている。
【0051】
これにより、実施例1の衣服用ファン1では、
図8に示された第1実験の結果から明らかなように、電動モータ22を所定の出力(7.8V)に設定した場合、既存の衣服用ファンにおける強運転時相当の風量(2.1m
3/min)以上の風量が得られ、且つ、吹出口3からの試験指の入り込みを防止することができる。
【0052】
そして、実施例1の衣服用ファン1は、例えば
図10(a)、(b)に示された第1比較例の衣服用ファンAと比べると、羽根翼21bの取付部を伸長することができるため、羽根翼21bの数を少なくできる。また、実施例1の衣服用ファン1は、第1比較例の衣服用ファンAよりも羽根翼21bの取付角度θ1を大きくすることができる。なお、第1比較例の衣服用ファンAは、羽根翼21bが九枚、羽根翼長さL1がハウジング長さL2の32%以下の長さ(約16.1%)に設定されたファンである。また、第1比較例の衣服用ファンAにおける衣服100への差し込み長さLは、実施例1の衣服用ファン1の差し込み長さLと同じ長さに設定されている。
【0053】
そして、実施例1の衣服用ファン1では、取付角度θ1を大きくすることができることから、送風するために効率的な(効率の良い)取付角度θ1を設定できる。このため、実施例1の衣服用ファン1は、
図11に示されたように、電動モータ22のモータ出力が同じであっても、第1比較例の衣服用ファンAよりも風量を増大させることができる。すなわち、実施例1の衣服用ファン1は、第1比較例の衣服用ファンAよりも送風能力を向上させることができる。なお、
図11では、実施例1の衣服用ファン1における風量と騒音値との関係が実線で示され、第1比較例の衣服用ファンAにおける風量と騒音値との関係が破線で示されている。そして、
図11において、実施例1の衣服用ファン1と第1比較例の衣服用ファンAとで電動モータ22のモータ出力が同じ場合、風量と騒音値との関係が同じプロット形状で示されている。
【0054】
また、実施例1の衣服用ファン1が有する羽根翼21bは三枚であり、第1比較例の衣服用ファンAが有する羽根翼21bの数(九枚)よりも少ない。つまり、実施例1の衣服用ファン1は、羽根翼21bの数を増加しなくても、風量の増大を図ることができる。そのため、羽根翼21bの数に依存する乱流騒音の増大を抑えることができる。
【0055】
しかも、第1比較例の衣服用ファンAでは、衣服100への差し込み長さLが、実施例1の衣服用ファン1の差し込み長さLと同じ長さに設定されている。そのため、実施例1の衣服用ファン1は、衣服100の内部におけるハウジング10の軸方向寸法(服内寸法)が、第1比較例の衣服用ファンAの衣服100内でのハウジング10の軸方向寸法と同等となる。
【0056】
よって、実施例1の衣服用ファン1は、ハウジング10の軸方向寸法を拡大することなく送風能力を向上させると共に、騒音の増大を抑制できる。
【0057】
さらに、実施例1の衣服用ファン1では、羽根翼長さL1が、ハウジング長さL2の32%~38%の長さに設定されたことから、送風効率の傾き(変化率)を緩やかにすることができる(
図8参照)。このため、実施例1の衣服用ファン1は、風量の増加に対して送風効率の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
また、衣服用ファン1では、吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dの下流側に生じるウエイク領域Sにおいて、吸込側桟部材11bと補助桟部材11dの間(吸込口2)を通る空気の流速よりも流速が低くなる。このため、羽根翼21bに作用する外力は、羽根翼21bがウエイク領域Sを通過するときと、羽根翼21bが吸込口2を通過するときとで異なる。一般的に、羽根翼21bに作用する外力が周期的に変化すると、羽根翼21bが励振されて一定の周波数で振動を生じる。そして、一定周波数で振動する羽根翼21bによって伝播される空気が特定周波数成分の音を発生させ、異音として認識される。
【0059】
なお、
図12には、第2比較例の衣服用ファンにおける周波と音圧レベルの関係が示されている。第2比較例の衣服用ファンは、羽根翼21bが三枚、吸込側空間距離L3が7.2mmに設定されたファンである。第2比較例の衣服用ファンの場合、
図12において破線で囲んで示されたように、特定周波数(約2500Hz)で音圧レベルの高低差Hが大きくなると、耳障りな異音として認識されてしまう。
【0060】
一方、
図13(a)には、羽根翼21bが三枚、吸込側空間距離L3が9.7mmに設定された第3比較例の衣服用ファンにおける周波と音圧レベルの関係が示されている。また、
図13(b)には、羽根翼21bが三枚、吸込側空間距離L3が12.2mmに設定された第4比較例の衣服用ファンにおける周波と音圧レベルの関係が示されている。
【0061】
ここで、
図12及び
図13(a)、(b)から明らかなように、衣服用ファンでは、吸込側空間距離L3が大きく設定されるほど、特定周波数(約2500Hz)での音圧レベルの高低差Hを抑制することができる。つまり、衣服用ファンでは、吸込側空間距離L3が大きいほど異音の発生を抑えることができる。
【0062】
これに対し、実施例1の衣服用ファン1では、各羽根翼21bから吸込口ガード部11の内側面11yまでの軸方向Xの最大長さ(吸込側空間距離L3)が、ハウジング長さL2の18%以上の長さに設定されている。そのため、実施例1の衣服用ファン1は、吸込側空間距離L3が小さくなりすぎることを防止し、
図9に示された第2実験の結果から明らかなように、特定周波数(Nz×10[Hz]及びNz×11[Hz])において、音圧レベルの高低差Hを10dB程度に抑制することができる。これにより、実施例1の衣服用ファン1は、特定周波数(約2500Hz)での音圧レベルの高低差Hを抑えて、異音の発生を抑制することができる。
【0063】
また、衣服用ファン1において、羽根翼21bが吹出口3に近接し、吹出側空間距離L4が小さくなる場合、吹出口3からハウジング10の内部への指等の入り込みを防止するため、吹出側桟部材12bの傾斜を緩くする必要が生じる。つまり、吹出口ガード部12のハウジング10の外側に向かう膨出量を抑制する必要が生じる。しかしながら、吹出側桟部材12bの傾斜を緩くすると、吹出側桟部材12bの間隔が狭くなり、吹出口3の開口面積が小さくなる。その結果、衣服用ファン1の送風性能が低下するという問題が生じる。つまり、衣服用ファン1では、一般的に、吹出側空間距離L4が小さくなるほど吹出口3の開口面積が小さくなり、送風性能が低下する。
【0064】
これに対し、実施例1の衣服用ファン1では、各羽根翼21bから吹出口ガード部12の外側面12xまでの軸方向Xの最大長さ(吹出側空間距離L4)が、ハウジング長さL2の約38.2%(35%以上)の長さに設定されている。このため、実施例1の衣服用ファン1は、吹出側桟部材12bの傾斜を緩くする必要がなく、吹出側空間距離L4が小さくなりすぎることを防止して、送風性能の低下を抑制することができる。
【0065】
また、実施例1の衣服用ファン1では、羽根翼21bが、翼部材21の回転方向Yに沿って等間隔をあけた状態でハブ21aの周囲に三枚設けられている。これにより、羽根翼21bの数に依存して増加する乱流騒音を抑制することができる。なお、実施例1の衣服用ファン1は、
図11から明らかなように、電動モータ22のモータ出力が同じであっても、九枚の羽根翼21bを有する第1比較例の衣服用ファンAよりも騒音値を低減することができる。また、実施例1の衣服用ファン1は、第1比較例の衣服用ファンAと比べて、風量が同じであっても、騒音値を低下させることができる。
【0066】
さらに、実施例1の衣服用ファン1では、翼部材21(羽根翼21b)が回転した際、複数(三枚)の羽根翼21bのそれぞれの回転方向Yの前端縁23が、軸方向Xから見て吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dに重なるタイミングが非同期となる位置に、吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dが配置されている。つまり、実施例1の吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dは、翼部材21(羽根翼21b)の回転方向Yに沿って不等ピッチで配置されている。
【0067】
ここで、
図14には、羽根翼21bが三枚であって、吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dが、翼部材21(羽根翼21b)の回転方向Yに沿って等ピッチで配置されている第5比較例の衣服用ファンにおける周波数と音圧レベルの関係が示されている。第5比較例の衣服用ファンでは、吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dが、翼部材21(羽根翼21b)の回転方向Yに沿って等ピッチで配置されたことで、翼部材21が回転すると、三枚の羽根翼21bのそれぞれの回転方向Yの前端縁23が、軸方向Xから見て吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dに重なるタイミングが同期する。そのため、
図14において破線で囲んで示されたように、音圧レベルの高低差Hが比較的大きくなる範囲が特定周波数(約2500Hz)の前後に集中し、異音として認識されてしまう。
【0068】
これに対し、
図15には、羽根翼が三枚であって、吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dが、翼部材21(羽根翼21b)の回転方向Yに沿って不等ピッチで配置されている第6比較例の衣服用ファンにおける周波数と音圧レベルの関係が示されている。ここで、第6比較例の衣服用ファンは、吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dが不等ピッチであることから、三枚の羽根翼21bのそれぞれの回転方向Yの前端縁23が、軸方向Xから見て吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dに重なるタイミングが非同期となる。このため、
図15において破線で囲んで示されたように、第6比較例の衣服用ファンでは、音圧レベルの高低差Hが比較的大きくなる範囲が特定周波数(約2500Hz)の前後に集中せず、他の周波数にも分散する。そのため、特定周波数で発生する音が目立たず、異音として認識されにくくなる。
【0069】
実施例1の衣服用ファン1においても、羽根翼21bが回転した際、複数(三枚)の羽根翼21bのそれぞれの回転方向Yの前端縁23が、軸方向Xから見て吸込側桟部材11b或いは補助桟部材11dに重なるタイミングが非同期となる位置に、吸込側桟部材11b及び補助桟部材11dが配置されている。このため、実施例1の衣服用ファン1では、第6変形例の送風ファンと同様に、音圧レベルの高低差Hが比較的大きくなる範囲を特定周波数(約2500Hz)の前後に集中させず、他の周波数にも分散させることができる。この結果、実施例1の衣服用ファン1は、異音の発生を抑制することができる。
【0070】
そして、実施例1の衣服100に衣服用ファン1を装着するには、まず、使用者は、ハウジング10と固定部材30とを分離し、一方の手でハウジング10を把持し、他方の手で固定部材30を把持する。このとき、使用者は、吹出口ガード部12を衣服100に向けた状態でハウジング10を保持する。
【0071】
次に、使用者は、衣服100の外側から、衣服100に形成された開口部102にハウジング10を挿入し、吹出口ガード部12からハウジング10を衣服100内に差し込む。そして、使用者は、衣服100の内部で固定部材30のリング部31をハウジング10に嵌め込み、リング部31の内周面に形成された雌ネジ溝32を雄ネジ溝14に螺合する。
【0072】
これにより、リング部31によって、衣服100に形成された開口部102の周縁部103がハウジング10のフランジ部13側へ押圧される。そして、開口部102の周縁部103がリング部31とフランジ部13との間に挟み込まれ、衣服用ファン1が衣服100に装着される。
【0073】
すなわち、実施例1の衣服100は、上述した実施例1の衣服用ファン1を装着可能な開口部102が形成されている。そして、上述のように、使用者が開口部102に衣服用ファン1のハウジング10を挿入し、リング部31をハウジング10に螺合することで、衣服100に形成された開口部102の周縁部103が、フランジ部13とリング部31の間に挟み込まれ、衣服用ファン1は衣服100に装着される。この結果、実施例1の衣服100は、ハウジング10の軸方向寸法を拡大することなく送風能力を向上させると共に騒音の増大を抑制できる実施例1の衣服用ファン1を装着することができる。
【0074】
以上、本発明の衣服用ファン1及び衣服100を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0075】
実施例1の衣服用ファン1では、固定部材30がハウジング10に嵌め込まれ、雌ネジ溝32が雄ネジ溝14に螺合されると、リング部31が、開口部102の周縁部103をハウジング10のフランジ部13側へ押圧する。このとき、フランジ部13も押圧されるので、フランジ部13が形成された内側筒部材10Aに対し、ハウジング10の外側に向かう力が作用する。この結果、ハウジング10が変形し、係合構造10Cを構成する爪片16aが、外側筒部材10Bに形成された凹部16bに干渉する。このため、内側筒部材10Aの側壁10xがハウジング10の内側に倒れて爪片16aが外れ、内側筒部材10Aと外側筒部材10Bとが分離するおそれがある。
【0076】
そこで、
図16に示す第1変形例の衣服用ファン1Aのように、内側筒部材10Aが差し込まれる外側筒部材10Bの開放端の外周縁に、補助フランジ部15が形成されてもよい。ここで、補助フランジ部15は、外側筒部材10Bの開放端の周面から径方向に沿ってハウジング10の外側に突出する平板であり、ここではフランジ部13よりも径方向の長さが短い(
図16参照)。
【0077】
これにより、第1変形例の衣服用ファン1Aでは、リング部31を締めていくと、リング部31は補助フランジ部15を介してフランジ部13を押圧することになる。これにより、内側筒部材10Aと外側筒部材10Bとが一体的に押されるため、フランジ部13が形成された内側筒部材10Aの側壁10xがハウジング10の内側に倒れることがない。この結果、実施例1の衣服用ファン1は、係合構造10Cを構成する爪片16aが凹部16bから外れてしまうことを防止でき、リング部31を締めることによる内側筒部材10Aと外側筒部材10Bとの分離を防ぐことができる。
【0078】
また、実施例1の衣服用ファン1では、羽根翼21bが三枚、翼部材21の直径(外径)R1が約80mm、ハブ21aの直径(外径)R2が約33mm、翼弦長Lαが約58mm、翼部材21の投影面積が約3000mm2に設定され、翼部材21とハウジング10との間に生じる径方向の隙間K1が約1.3mmに設定されている例が示された。また、羽根翼長さL1が、ハウジング長さL2の約37.3%の長さに設定され、吸込側空間距離L3が、ハウジング長さL2の約18.5%の長さに設定され、吹出側空間距離L4が、ハウジング長さL2の約38.2%の長さに設定された例が示された。
【0079】
しかしながら、これらの値は実施例1に記載の値に限定されるものではなく、本発明の衣服用ファンは、少なくとも羽根翼長さL1が、ハウジング長さL2の32%~38%の長さに設定されていればよく、羽根翼21bの数や、吸込側空間距離L3や吹出側空間距離L4等は任意に設定することができる。
【0080】
また、実施例1の衣服100は、着用者が上半身に着る上衣である例が示されたが、これに限らない。衣服100は、衣服用ファン1を装着可能な開口部102が形成されればよく、例えばズボンやつなぎ服であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 衣服用ファン
2 吸込口
3 吹出口
10 ハウジング
10A 内側筒部材
10B 外側筒部材
10C 係合構造
11 吸込口ガード部
11b 吸込側桟部材(桟部材)
12 吹出口ガード部
13 フランジ部
14 雄ネジ溝(ネジ溝)
15 補助フランジ部
20 ファン本体
21 翼部材
21a ハブ
21b 羽根翼
22 電動モータ
23 前端縁
24 後端縁
30 固定部材
K1 翼部材とハウジングとの間に生じる径方向の隙間
L1 羽根翼長さ(羽根翼の軸方向の長さ)
L2 ハウジング長さ(ハウジングの軸方向の最大長さ)
L3 吸込側空間距離(羽根翼から吸込口ガード部の内側面までの最大長さ)
L4 吹出側空間距離(羽根翼から吹出口ガード部の外側面までの最大長さ)
100 衣服
101 後身頃
102 開口部