(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018134
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240201BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240201BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240201BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240201BHJP
F21V 7/09 20060101ALI20240201BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240201BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20240201BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240201BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240201BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240201BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240201BHJP
F21Y 113/10 20160101ALN20240201BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21S2/00 340
F21V14/04
F21V7/09 200
F21V5/04 350
F21V9/14
H04N5/74 H
G02B26/10 101
G02B26/10 C
G02B26/08 E
F21Y115:30
F21Y113:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121256
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】516257981
【氏名又は名称】株式会社ライトショー・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山影 明広
(72)【発明者】
【氏名】梅 雨非
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2H045AA00
2H141MA12
2H141MB23
2H141MC01
2H141MD12
2H141MD19
2H141MD40
2H141ME01
2H141ME09
2H141ME23
2H141ME25
2H141MF14
2H141MF28
2H141MG04
2K203FA08
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA44
2K203FA54
2K203FA62
2K203GA03
2K203GA08
2K203GA12
2K203GA22
2K203GA25
2K203GA40
2K203HA06
2K203HA08
2K203HA64
2K203HA66
2K203HA67
2K203HA69
2K203HA74
2K203HA75
2K203HA95
2K203HB09
2K203HB22
2K203HB24
2K203MA04
2K203MA32
5C058BA01
5C058BA35
5C058EA05
5C058EA11
(57)【要約】
【課題】画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【解決手段】各々が矩形の照明領域を形成する複数の照明部と、複数の照明部の各々により形成される矩形の照明領域を偏向走査することが可能に構成された偏向素子と、偏向素子により偏向走査される矩形の照明領域を、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系とを備え、偏向素子は、回転軸を中心に回転可能であり、回転軸を中心とする複数の同心円の円周に沿って形成された複数の反射面を備え、複数の反射面の各々は当該反射面が形成された円周に沿って回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、複数の反射面の各々の傾斜角は、反射面を一定速度で連続的に回転させると、反射面で反射された矩形の照明領域が一定方向に一定速度で再帰的に偏向走査されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が矩形の照明領域を形成する複数の照明部と、
前記複数の照明部の各々により形成される前記矩形の照明領域を偏向走査することが可能に構成された偏向素子と、
前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照明領域を合成し、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、
前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備え、
前記複数の照明部の各々は、複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートするコリメートレンズとを備え、
前記偏向素子は、回転軸を中心に回転可能であり、前記回転軸を中心とする複数の同心円の円周に沿って形成された複数の反射面を備え、前記複数の反射面の各々は当該反射面が形成された前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、
前記複数の反射面の各々の前記傾斜角は、前記反射面を一定速度で連続的に回転させると、前記反射面で反射された前記矩形の照明領域が一定方向に一定速度で再帰的に偏向走査されるように構成されている、
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記複数の反射面は、前記反射型光変調素子に拡大転写された前記矩形の照明領域の各々が互いに重なり合わないように、傾斜角の変化の位相が回転方向に沿って互いにずれている、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記複数の半導体レーザは、Slow軸の向き及びFast軸の向きが揃うように配置されており、
前記矩形の照明領域の長手方向は前記半導体レーザのSlow軸の方向であり、
前記矩形の照明領域の短手方向は前記半導体レーザのFast軸の方向であり、
前記偏向素子は、前記矩形の照明領域の短手方向に沿って前記レーザビームを偏向走査する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記複数の照明部の各々は、前記コリメートレンズによりコリメートされた複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照明領域を形成するインテグレータ照明系を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記インテグレータ照明系は、球面のマイクロレンズを2次元に配列したマイクロレンズアレイ、もしくは回折型の拡散素子、もしくはストライプ状のマイクロレンズを並べたマイクロレンズアレイのいずれかを備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記インテグレータ照明系は、ロッドと、前記コリメートレンズによりコリメートされた複数のレーザビームを前記ロッドに向けて集光する集光レンズと、前記ロッドの入射面の近傍に配置された拡散素子と、前記ロッドの出射面の像を転写するリレーレンズと、を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記複数の照明部の各々は、前記コリメートレンズによりコリメートされた複数のレーザビームを、前記偏向素子の前記複数の反射面のいずれかに集光する集光レンズを備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記複数の反射面は、前記偏向素子の上面に形成された反射面と、前記偏向素子の下面に形成された反射面と、を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記複数の反射面は、前記偏向素子の片面に形成された2つの反射面を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記複数の反射面は、それぞれが異なる色光の前記矩形の照明領域を偏向走査する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を用いた投射型表示装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、レーザ光源と、レーザ光を映像信号に応じて光変調する光音響変調器と、変調されたレーザ光を水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーと、を備えた投射型表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された投射型表示装置では、水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーとを併用した光学的な走査手段を備えているが、水平と垂直の両方向を光学的に走査するため、大きな光路空間が必要となり、装置が大型化する問題があった。
【0006】
そこで、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、各々が矩形の照明領域を形成する複数の照明部と、前記複数の照明部の各々により形成される前記矩形の照明領域を偏向走査することが可能に構成された偏向素子と、前記偏向素子により偏向走査される前記矩形の照明領域を合成し、反射型光変調素子に拡大転写する転写光学系と、前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備え、前記複数の照明部の各々は、複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートするコリメートレンズとを備え、前記偏向素子は、回転軸を中心に回転可能であり、前記回転軸を中心とする複数の同心円の円周に沿って形成された複数の反射面を備え、前記複数の反射面の各々は当該反射面が形成された前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、前記複数の反射面の各々の前記傾斜角は、前記反射面を一定速度で連続的に回転させると、前記反射面で反射された前記矩形の照明領域が一定方向に一定速度で再帰的に偏向走査されるように構成されている、ことを特徴とする投射型表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図2】(a)レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザとコリメートレンズのペアの1つを示すための模式図。(b)半導体レーザ11とコリメートレンズ102のペアが、4×2個配列されたレーザモジュールLMを示す模式図。
【
図3】(a)半導体レーザ11の出力光のNear-Field Patternを例示する図。(b)半導体レーザ11の出力光のFar-Field Patternを例示する図。
【
図4】(a)平行方向についてのビームの広がりを示す図。(b)直交方向についてのビームの広がりを示す図。
【
図5】(a)インテグレータ照明系INTを一方向から見た図。(b)インテグレータ照明系INTを、(a)と直交する方向から見た図。(c)マイクロレンズアレイの対を示す図。(d)矩形の照射領域IM1を示す図。
【
図6】(a)偏向器210の一例の外観を示す斜視図。(b)偏向器210の側面図。
【
図7】(a)偏向器210の反射面の位置と傾斜角を説明するための断面図。(b)偏向器210の反射面の位置と傾斜角を説明するためのグラフ。
【
図8】(a)偏向器210と矩形の照射領域IM1の位置関係を示す図。(b)反射面のビーム照射位置214近傍の拡大図。(c)青色の矩形の照射領域IM1がDBの方向に偏向走査されることを示す図。
【
図9】(a)偏向器210aの一例の外観を示す上面図。(b)偏向器210aの一例の側面図。(c)偏向器210aの一例の外観を示す下面図。
【
図10】(a)偏向器210aの変形例の側面図。(b)偏向器210aの別の変形例の側面図。(c)偏向器210aの更に別の変形例の側面図。
【
図11】(a)前側転写レンズ201と後側転写レンズ202の作用を説明するための模式図。(b)反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す図。(c)反射型光変調素子340の画面を矩形のBビーム、Gビーム、Rビームのそれぞれが照射する様子を、横軸を時間軸として示した図。
【
図12】実施形態2に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図13】実施形態3に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図14】実施形態4に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図15】実施形態5に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図16】ロッドインテクレータを備えた実施形態に係るインテグレータ照明系INTを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態である投射型表示装置について説明する。
尚、以下に示す実施形態は例示であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更して実施をすることができる。尚、以下の実施形態及び説明において参照する図面では、特に但し書きがない限り、同一の参照番号を付して示す要素は、同様の機能を有するものとする。尚、図中の光学要素は模式的に表されているため、実際の形状や構成が必ずしも忠実に表されているとは限らない。例えば、図面では単レンズとして描かれていたとしても、特にただし書きがない限りは複数枚のレンズにより構成されていてもよい。
【0011】
以下の説明において、例えばXプラス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと同じ方向を指し、Xマイナス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと180度反対の方向を指すものとする。また、単にX方向と記す場合には、図示のX軸矢印が指す向きとの異同は関係なく、X軸と平行な方向であることを指すものとする。X以外の方向についても、同様とする。
【0012】
また、以下の説明では、赤色のことを「R」、緑色のことを「G」、青色のことを「B」と記載する場合がある。したがって、例えば、R光は赤色光と、G光源は緑色光源と、Bレーザは青色レーザと、それぞれ同義である。
【0013】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0014】
[全体構成]
投射型表示装置1000は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、偏向器210a、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える。また、偏向器210aと光合成部220の間には前側転写レンズ201が配置され、光合成部220と光路変換ミラー330の間には後側転写レンズ202が配置されている。前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とを合わせて、第1転写レンズ200(第1転写光学系)と呼ぶ。光合成部220は、ダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222を備える。投射型表示装置1000は、任意的に投映スクリーン190を備えることができる。
【0015】
B光源100BはB光を発する半導体レーザを、G光源100GはG光を発する半導体レーザを、R光源100RはR光を発する半導体レーザを、それぞれ備えている。光源については、後に詳述する。
【0016】
偏向器210aは、B光源100Bが発するB光をDB方向に偏向走査し、G光源100Gが発するG光をDG方向に偏向走査し、R光源100Rが発するR光をDR方向に偏向走査する偏向器である。偏向器210aについては、後に詳述する。
【0017】
光合成部220は、ダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222を備える。ダイクロイックミラー221は、G光を透過させ、B光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー222は、G光及びB光を透過させ、R光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー221上において、B光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、G光用の前側転写レンズ201の光軸中心とが重なるように、各光学要素は配置されている。また、ダイクロイックミラー222上において、B光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、G光用の前側転写レンズ201の光軸中心と、R光用の前側転写レンズ201Rの光軸中心とが重なるように、各光学要素は配置されている。
【0018】
光合成部220により、B光(点線)、G光(実線)、R光(一点鎖線)の進行方向は全てZプラス方向に揃えられるが、これらの光は、どのタイミングにおいても互いに重なり合わないように合成されている。B光、G光、R光の各々が、互いに反射型光変調素子340の画面上で重ならないように、偏向器210aの反射面が構成されるとともに各色光源が配置されているからである。偏向走査方法については後に詳述する。
【0019】
光合成部220から出射したB光、G光、R光は、光路変換ミラー330によりXプラス方向に進路を変更され、TIRプリズム350に入射する。TIRプリズム350は、例えば2つのプリズムを組み合わせて構成された内部全反射プリズムであり、照明光(B光、G光、R光)をエアギャップ面で全反射させて、反射型光変調素子340に所定の角度で入射させる。前述したように、B光、G光、R光は、互いに重ならないように、それぞれが反射型光変調素子340の画面の一部を照明する。
【0020】
反射型光変調素子340には、例えばマイクロミラーデバイスをアレイ状に設けたDMDが用いられる。各表示画素に対応するマイクロミラーは、映像信号の輝度レベルに応じて、パルス幅変調により反射方向が変更されるように駆動される。ただし、反射型液晶デバイスのような、別種の反射型光変調デバイスを用いることも可能である。
【0021】
B光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のB成分の輝度レベルに応じて駆動され、B映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。同様に、G光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のG成分の輝度レベルに応じて駆動され、G映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。また、R光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のR成分の輝度レベルに応じて駆動され、R映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。このように、反射型光変調デバイスの変調動作は、偏向器210aによる各色光の偏向走査と同期して行われる。
【0022】
映像光(B映像光、G映像光、R映像光)は、TIRプリズム350を透過して、投射レンズ360に導かれ、カラー映像として投射される。投射レンズ360は、単数もしくは複数のレンズで構成され、自動焦点調節機能やズーム機能を備えることもできる。
【0023】
投映スクリーン190は、リヤプロジェクション型の表示装置を構成する場合に用いられる。また、フロントプロジェクション型の場合にも設置されることが多いが、ユーザが任意の壁面などに投射する場合には、必ずしも設置する必要はない。
【0024】
[光源]
照明部としてのB光源100B、G光源100G、R光源100Rについて説明する。B光源100BはB光を発する半導体レーザとコリメートレンズを含むレーザモジュールLM-Bを、G光源100GはG光を発する半導体とレーザコリメートレンズを含むレーザモジュールLM-Gを、R光源100RはR光を発する半導体レーザとコリメートレンズを含むレーザモジュールLM-Rを、それぞれ備えている。半導体レーザの発光波長を別にすれば、各色の光源の基本的な構成は同一であるので、以下では色光毎に区別せずに単に光源100として説明する場合がある。
【0025】
(レーザモジュール)
光源100は、半導体レーザとコリメートレンズのペアが、1次元あるいは2次元にアレイ状に配列されたレーザモジュールLMを備えている。
図2(a)は、レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザとコリメートレンズのペアの1つを示すための模式図である。11は半導体レーザ、12は半導体レーザ11の発光部である。尚、
図2(a)では、
図1のR光源100Rの配置に合わせてXYZ座標系の向きを表示している。
図2(a)においては、発光部12の長手方向HをY方向と平行にし、発光部12から出射した光の進行方向をZ方向と平行に図示している。
【0026】
発光部12の長手方向Hとは、典型的には、半導体レーザ11を構成する半導体チップの側面において、P型クラッド層とN型クラッド層に挟まれた活性層が延在している方向である。
図2(a)に示すように、以後の説明では、半導体レーザ11の発光部12の長手方向Hと平行な方向を「平行方向」あるいはSlow軸と記し、発光部12の長手方向と直交する方向を「直交方向」あるいはFast軸と記す場合がある。半導体レーザ11からは、直線偏光の光が出射し、その電界の振動方向は平行方向(Y方向)である。
【0027】
半導体レーザ11の出力光は、出射方向によって角度特性が異なることが知られているが、
図3(a)に出力光のNear-Field Patternを、
図3(b)に出力光のFar-Field Patternを例示する。
【0028】
図3(a)に示すように、Near-Field Patternでは、発光部の形状(長手、短手)を反映したビームプロファイルであることが判る。一方、ビームが進行するにつれて、
図3(b)のFar-Field Patternに例示するように、ビームは広がってゆく。すなわち、平行方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、広がりが小さく、狭い角度範囲内に強度分布が均一なパターンで進行してゆくことがわかる。一方、直交方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、強度分布が山形になるパターン(ガウシアン)になり、進行するにつれて平行方向よりも広い角度範囲に広がってゆくことがわかる。半導体レーザの活性層は、直交方向の厚さが小さいため、出射する際に回折の影響を大きく受けるためである。Far-Field Patternで見て広がりが小さな平行方向をSlow軸、広がりが大きな直交方向をFast軸と呼ぶこともできる。
【0029】
本実施形態では、
図2(a)に示すようにコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)を用いて半導体レーザ11から出射したレーザビームを成形する。すなわち、長手方向の長さがHy1である発光部12から出射した光は、コリメートレンズ102によりコリメートされ、断面が楕円形状のビームとなってZ方向に進行する。尚、楕円形状の長径はX方向と平行で、短径はY方向と平行である。
【0030】
コリメートレンズ102を通過しても、ビームが光軸(Z方向)と完全に平行になるわけではなく、平行方向(発光部の長手方向)と直交方向(発光部の短手方向)ではビームの広がり方が異なったものとなる。
図4(a)および
図4(b)を参照して、コリメートレンズ102を通過した後のビームの広がり方の違いについて説明する。
図4(a)は平行方向についての広がりを示し、
図4(b)は直交方向についての広がりを示している。
【0031】
図4(a)に示すように、平行方向についてみれば、ビーム強度のトップはフラットではあるものの、Z方向に進むにつれてビーム径が広がってしまうので、ダイバージェンスが良好であるとは言えない。これに対して、
図4(b)に示すように、直交方向についてみれば、コリメートレンズ102からの距離が変化してもビーム強度分布とビーム径の変化が小さいのが判る。すなわち、コリメートレンズ102を透過した後のレーザビームは、直交方向(半導体レーザのFast軸)の方が平行方向(半導体レーザのSlow軸)よりも平行性が高く、ダイバージェンスが良好である。
【0032】
後述するように、本発明では、光源100から出力されるビームのダイバージェンスが直交方向(矩形の短手方向)において優れる(ビームの平行度が高い)という性質を利用して、直交方向に沿ってビームを偏向走査させて光変調素子を照明する。ダイバージェンスが優れる方向に沿ってビームを偏向走査する方が、光変調素子の画面上でB、G、Rの各色照明領域の重なりを防止するのに有利だからである。
【0033】
光源100は、複数の半導体レーザおよびコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)のペアを含んだレーザモジュールLMを備えている。
図2(b)は、半導体レーザ11とコリメートレンズ102のペアが、4×2個配列されたレーザモジュールLMを示す模式図である。尚、
図2(b)では、
図1のR光源100Rに合わせてXYZ座標系の向きを表示している。
【0034】
レーザモジュールLMにおいては、複数の半導体レーザがY方向に沿って等間隔に並ぶように配置されている。また、どの半導体レーザも、発光部12の長手方向がY方向に沿う向きになるように配置されている。4×2素子の半導体レーザを用いる例を示すが、素子の数はこの例に限られるわけではない。レーザモジュールLMは、複数の半導体レーザを1列だけ、あるいは3列以上にわたりY方向に沿って配列する構成にしてもよい。Y方向に沿った半導体レーザの素子列を1列あるいは3列以上備える光源100であっても、出力されるビームは、発光部の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。
【0035】
(インテグレータ照明系/光学的重畳手段)
本実施形態の光源100は、レーザモジュールLMから出射される複数のレーザビームを重ね合わせて矩形の照明領域を形成するためのインテグレータ照明系INTを備えている。
図5(a)~
図5(d)を参照して、インテグレータ照明系INTについて説明する。
【0036】
レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザ11の各々から出射されるレーザビームは、コリメートレンズ102の作用でおよそ平行となるが、ダイバージェンスについては既に説明したとおりである。本実施形態の光源は、
図5(d)に示す矩形の照射領域IM1を形成するため、各半導体レーザから出射されるレーザビームを重ね合わせるインテグレータ照明系INTを備える。
【0037】
図5(a)、
図5(b)に示すように、インテグレータ照明系INTは、マイクロレンズアレイ103、マイクロレンズアレイ104、集光レンズ106を備えている。マイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104は対を成して構成されている。
【0038】
図5(c)に示すように、各マイクロレンズアレイには、レーザビームの進行方向(同図ではZ方向)に沿って見た時、X方向にV0、Y方向にH0のサイズのマイクロレンズが、XY平面に沿って2次元的に配列されている。マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズの入射面およびマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの出射面は、球面形状である。また、マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズの出射面およびマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの入射面は、平坦面である。マイクロレンズアレイ103の各マイクロレンズとマイクロレンズアレイ104の各マイクロレンズの焦点距離は、互いに相手方の球面位置に結像できるように設定される。
【0039】
マイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104を通過したレーザビームは、集光レンズ106により集光され、
図5(d)に示すように、X方向の長さがV1でY方向の長さがH1の矩形の照射領域IM1を形成する。
【0040】
半導体レーザ11はランプ光源などと比べてダイバージェンスが良好なため、例えばマイクロレンズの配列ピッチを0.05mm以上、0.5mm以下の範囲内とすれば、V1またはH1が1mm~2mm程度の矩形の照射領域IM1を得ることができる。矩形の照射領域IM1の長手方向が平行方向(半導体レーザのSlow軸方向)、短手方向が直交方向(半導体レーザのFast軸方向)に対応する。光源100から出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。本実施形態では、球面と平坦面を備えたマイクロレンズをアレイ状に配列したマイクロレンズアレイの対を採用したが、場合によっては入射側も出射側も曲面のレンズをアレイ状に配列したフライアイレンズの対を用いてもよい。あるいは、光源のダイバージェンスが良好な(NAが小さい)場合には、対ではなく単板のマイクロレンズアレイを用いてもよい。
【0041】
(偏向器)
図1に示すように、B光源100B、G光源100G、R光源100Rと、それぞれが照射する矩形の照射領域IM1の間には、偏向器210aが配置されている。偏向器210aは、複数の矩形の照射領域(本実施形態では3個)を、単体で偏向走査することが可能な偏向素子である。偏向器210aは、円板状の基体211と、回転軸AXを中心に基体211を回転させるモータ212を備えている。
【0042】
図9(a)は、光合成部220の側から偏向器210aを見た上面図であり、
図9(b)は、回転軸AXと直交する方向から偏向器210aを見た側面図であり、
図9(c)は、光合成部220とは反対側から偏向器210aを見た下面図である。
図9(a)と
図9(c)では、回転方向をROとして示している。
【0043】
円板状の基体211の上面には、
図9(a)に示すように、帯状の光学面である反射面213aと反射面213bが設けられている。反射面213aと反射面213bは、回転軸AXを中心とした互いに半径が異なる同心円に沿って設けられている。円板状の基体211の下面には、
図9(c)に示すように、回転軸AXを中心とする円に沿って帯状の光学面である反射面213cが設けられている。
【0044】
図9(b)に示すように、円板状の基体211は、それぞれに反射面が形成された基板211aと基板211bと基板211cを積み重ねて一体化したものである。ただし、基体211は必ずしも3枚の基板を積み重ねて一体化したものでなくてもよく、例えば
図10(a)~
図10(c)に側面図を示すような構造であってもよい。
図10(a)は、反射面213aと反射面213bが片面に設けられた基板211aと、反射面213cが設けられた基板211cとを積み重ねて一体化し、基体211を構成した例である。また、
図10(b)は、反射面213aと反射面213cが設けられた基板211cと、反射面213bが設けられた基板211bとを積み重ねて一体化し、基体211を構成した例である。また、
図10(c)は、もともと単体の基板である基体211の上に、反射面213aと反射面213bと反射面213cとを形成した例である。
【0045】
図1に示したG光源100Gが出力するG光は、反射面213aにより偏向走査され、B光源100Bが出力するB光は、反射面213bにより偏向走査され、R光源100Rが出力するR光は、反射面213cにより偏向走査される。反射面213a、反射面213b、反射面213cの各々は、後述するように回転軸AXに対する反射面の角度が場所(位置)によって変化するように構成されている。
【0046】
各々の反射面による偏向走査の原理は基本的に同様であるため、ここでは説明の便宜のため、基体211に単一の反射面213が設けられている場合について図面を参照して説明する。一体化されている反射面213a、反射面213b、反射面213cの各々では、基本的には以下に説明する単一の反射面213と同様の原理で偏向走査が行われる。
【0047】
図6(a)は、単一の反射面213が設けられた偏向器210の外観を示す斜視図であり、
図6(b)は、偏向器210の側面図である。偏向器210は、回転可能な円板状の基体211と、回転軸AXを中心に基体211を回転させるモータ212を備えている。円板状の基体211の主面には、円周に沿って帯状の光学面である反射面213が設けられている。ここで、反射面における場所を特定するため、
図6(a)に示すように、回転軸AXを中心として反時計回りに角度座標を設定する。(図では、0°、90°、180°、270°が示されている)。また、図に示す軸BXは、回転軸AXと平行で、反射面213を通る軸である。ビーム照射位置214として示すのは、光源100から出力されたビームが、矩形の照射領域IM1に到達する前に反射される際のビーム位置である。
【0048】
帯状の反射面213は、軸BX(すなわち回転軸AX)に対する角度が場所(位置)によって変化するようにねじれている。
図7(a)と
図7(b)を参照して、反射面の角度について説明する。
図7(a)と
図7(b)において、反射面の位置として示されているのは、
図6(a)で説明した角度座標により規定される位置である。また、反射面の傾斜角として示されるのは、円板状の基体211の主面(すなわち軸BXと直交する面)を基準とした時の、反射面の傾斜角である。
【0049】
図7(b)に示すように、反射面の位置に対して反射面の傾斜角がリニアに変化するように、反射面213は構成されている。
図6(a)、
図7(b)に示すように、反射面の位置が0°(360°)において反射面の傾斜角が不連続になるため、説明の便宜上、
図7(a)では反射面の位置が1°と359°の場合の傾斜角を示している。尚、
図6(a)では、反射面の傾斜角が不連続になる位置をNCとして示している。
【0050】
モータにより基体211がRO方向に回転されると、反射面213も回転軸AXの回りを回転するため、
図6(a)に示したビーム照射位置214にてレーザビームが照射される部位の角度座標は、0°→90°→180°→360°(=0°)→90°・・・のように連続的に変化してゆく。
【0051】
反射面が回転してレーザビームに照射される反射面の部位が変化したとしても、
図7(a)に示すように、入射ビームは常に軸BXに対してαの角度で反射面213に入射する。一方、反射面の位置に応じて反射面の傾斜角は、-θから+θの範囲で変化する。このため、
図7(a)に示すように、反射面213で反射されたレーザビームの反射方向は、軸BXを基準にすると、(α-2×θ)から(α+2×θ)までの4θの角度範囲内で変化する。つまり、傾斜角は、光学面(反射面)を一定速度で連続的に回転させると、レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
【0052】
言い換えれば、
図6(b)に示すように、偏向器210は、出射ビームをRD1(軸BXに対して(α-2×θ))からRD2(軸BXに対して(α+2×θ))までの角度範囲内で偏向走査することができる。
図6(a)のRO方向に反射面213を連続回転させると、出射ビームは、
図6(b)のRD1からRD2に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD2に達すると瞬時にRD1に回帰し、再びRD2に向けて偏向(走査)されてゆく。また、もし反射面213をRO方向とは逆に回転させるのであれば、出射ビームは、
図6(b)のRD2からRD1に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD1に達すると瞬時にRD2に回帰し、再びRD1に向けて偏向(走査)されてゆくことになる。
【0053】
このように、偏向器210によれば、回転体を一定速度で連続的に回転させるという簡単な駆動方法で、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することができる。後述するように、反射型光変調素子340の駆動タイミング(あるいは、反射型光変調素子340に入力する画像信号)と同期して回転するようにモータ212を制御することにより、照明光を反射型光変調素子340の画面においてV方向に走査することができる。
【0054】
図8(a)に、偏向器210と矩形の照射領域IM1の位置関係を示す。また、
図8(b)に、反射面のビーム照射位置214近傍の拡大図を示す。矩形の照射領域IM1よりも距離Lだけ光源側に、反射面のビーム照射位置214が配置されている。
図8(c)に示すように、青色の矩形の照射領域IM1は、偏向器210の回転に応じてDBの方向に偏向走査される。尚、
図8(a)~
図8(c)においては、相互の関係を理解しやすいように座標系は便宜的に付されたもので、
図1の座標系とは一致していないものとする。
【0055】
偏向器210の製造方法について付言すると、円周に沿って帯状の反射面213が設けられた円板状の基体211は、例えばプレス押出工法で金属母材を加工することにより低コストで製造することが可能である。
図7(a)に例示したように、反射面213の近傍には基体211の主面から突出した部分や凹んだ部分が存在するが、回転バランスを良好にするため、回転軸AXを通る断面で見た時、どの位置の断面であっても断面積が等しい形状にするのが望ましい。また、基体211の主面から突出する最大高さや、主面から凹む最大深さは、風切り音を低減するため、平均板厚の3/4以下にするのが望ましい。具体的には、基体211の平均板厚は、0.7mm以上で2mm以下とするのが望ましく、θは3°以上で6°以下とするのが望ましい。
【0056】
以上、基体211に単一の反射面213が設けられている場合について説明したが、本実施形態では、
図9(a)~
図9(c)に示したように、基体211には、反射面213a、反射面213b、反射面213cの3つが設けられている。各々の反射面には、上述した反射面213と同様に、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することを可能とする傾斜面が構成されている。ただし、反射面213aにより偏向走査されるG光と、反射面213bにより偏向走査されるB光と、反射面213cにより偏向走査されるR光とが、光合成部220により合成された時に互いに重なり合わないようにするため、各反射面の傾斜の始点/終点、すなわち反射面の傾斜角が不連続になる位置は、円周方向に沿って見て互いにずれるように、各反射面は構成されている。
【0057】
図1を参照すればわかるように、偏向器210aの上面において、B光源100Bに照射される位置は、G光源100Gに照射される位置に対して、回転軸AXを挟んで反対側にある。また、偏向器210aの下面においてR光源100Rに照射される位置は、偏向器210aの上面においてG光源100Gに照射される位置に対して、回転軸AXを挟んで反対側にある。それぞれの照射位置において反射された各色のビームが、光合成部220により合成された時に偏向走査の位相が互いに120度づつずれるように、各反射面の傾斜は設定されている。例えば、
図9(a)において、反射面213aの傾斜が不連続になる位置NCが時計の12時の位置にある時には、反射面213bの傾斜が不連続になる位置NCは時計の2時の位置になるように構成されている。その時には、
図9(c)において、反射面213cの傾斜が不連続になる位置NCが時計の8時の位置になるように構成されている。尚、
図9(a)に示す上面と、
図9(c)に示す下面とでは、見かけ上、基体211の回転方向ROが逆に示されている。このように、矩形の照明領域の各々が再帰的に偏向走査される際に互いに重なり合わないようにするため、偏向器の円板上の照射位置において、各反射面の傾斜角の変化の位相が回転方向に沿って互いにずれるように構成されている。
【0058】
以上説明した偏向器210aにより、B、G、Rのレーザビームにより形成される各色の矩形の照射領域IM1は、
図1に示すように、それぞれDB、DG、DRの方向に偏向走査される。
【0059】
(光合成部)
各色のレーザビームは、光合成部220により進行方向が揃えられるが、光合成部220の作用については、すでに全体構成の項で説明したとおりである。尚、R光は偏向器210aの下面側に配置された反射面213cにより偏向走査されるが、部品と干渉せずに光合成部220のダイクロイックミラー222に導かれるように、R光は反射鏡209Fと反射鏡209Rにより光路が変更され、迂回させてからダイクロイックミラー222に入射する。光路を迂回させた結果、R光の光路長と、G光やB光の光路長との間には差異が生じるが、本実施形態では、反射鏡209Fと反射鏡209Rの間には光路長差の影響を補正するための補正レンズ203が設けられている。
【0060】
(転写光学系)
各色のレーザビームにより形成される矩形の照射領域IM1は、色毎に設けられた前側転写レンズ201と、各色共用の後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200(第1転写光学系)により、反射型光変調素子340の画面に拡大転写される。前側転写レンズ201と後側転写レンズ202は、それぞれ正のパワーをもつ凸レンズである。
【0061】
図11(a)は、前側転写レンズ201と後側転写レンズ202の作用を説明するための模式図である。図示のように、矩形の照射領域IM1は、矩形の2次転写像IM2として拡大転写される。矩形の2次転写像IM2は、
図1に示すように反射型光変調素子340の画面位置に設定されている。矩形の照射領域IM1を、矩形の2次転写像IM2に拡大する転写倍率は、例えば6倍(V1:V2=1:6)程度である。
【0062】
図11(b)に、反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す。反射型光変調素子340の画面サイズをH(水平方向)×V(垂直方向)とすると、矩形のレーザビームの走査範囲SAは、画面サイズよりも大きなH’×V’の領域をカバーする。尚、矩形の照射領域IM1が偏向器210により走査される走査範囲に対して、矩形のレーザビームの走査範囲SAは、上述した転写倍率で拡大されている。
【0063】
図11(c)は、反射型光変調素子340の画面を、矩形のBビーム、Gビーム、Rビームのそれぞれが照射する様子を、横軸を時間軸として示した図である。Bビーム、Gビーム、Rビームは、走査方向SDに沿って反射型光変調素子340の画面を垂直走査し、1フレーム時間で1画面の走査を完了する。各色領域の境界部分で混色が生じないように、Bビーム、Gビーム、Rビームは、互いに重複しないように構成されており、必然的に各ビームの垂直方向の幅V2は、V’の1/3以下に構成されている。各ビームの垂直方向の幅は、反射型光変調素子340の画面の垂直方向の幅の1/6以上かつ1/3以下に設定され得る。
【0064】
以上のように、本実施形態の投射型表示装置は、異なる色光毎に、複数の半導体レーザと、コリメートレンズと、インテグレータ照明系とが設けられており、各色の照明光は単一の偏向素子により偏向走査することが出来る。偏向素子の回転体には、それぞれの色光を偏向走査するための反射面が、回転方向に見て120度の位相差をつけて配置されており、各反射面は単一のモータを用いて一体として回転させることができる。このため、各反射面を回転させるためのモータを各色光に対応させて個別に設ける必要は無く、各色光どうしの偏向走査の位相を各モータどうしの駆動制御で調整する必要もない。単一の回転体および単一のモータを設ければよいので、部品点数が少なくて済み、偏向走査の制御も容易である。
【0065】
そして、本実施形態の投射型表示装置は、単一の偏向素子により偏向走査された異なる色の照明光を合成する光合成部を備えており、異なる色光の矩形の照明領域は、反射型光変調素子の画面に拡大転写され、互いに重ならないように画面上を走査方向SDに沿って走査される。
【0066】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0067】
尚、偏向器に対する各色光源のレイアウトは
図1の例に限られるわけではなく、例えば各色光源の位置を入れ替えてもよい。その場合には、各色光源のレイアウトに応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。また、3色の光源は、必ずしも青色、緑色、赤色に限られるわけではなく、他の色の光源を用いてもよい。その場合も、用いる光源の発光特性に応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。
【0068】
[実施形態2]
図12は、実施形態2に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。実施形態1と共通する事項については、説明を簡単化もしくは省略する。
【0069】
[全体構成]
本実施形態の投射型表示装置1001は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える点は、実施形態1と共通している。
【0070】
実施形態1では、単体の偏向器210aを用いてB光、G光、及びR光を偏向走査したが、本実施形態では、2つの光学面(反射面)を備えた偏向器210cを用いてB光とG光を偏向走査し、1つの光学面(反射面)を備えた偏向器210bを用いてR光を偏向走査する。もっとも、光学面(反射面)を複数(本実施形態では2個)備えた偏向器を用いるという点では、本実施形態と実施形態1は共通している。
【0071】
本実施形態では、単一の偏向素子である偏向器210cが、G光源100Gが発するG光とB光源100Bが発するB光の両方を偏向走査することが出来る。偏向素子の回転体には、G光とB光のそれぞれを偏向走査するための反射面が、回転方向に見て120度の位相差をつけて配置されており、各反射面は単一のモータを用いて一体として回転させることができる。このため、G光とB光のぞれぞれに対応する反射面を回転させるためにモータを個別に設ける必要は無く、G光とB光の偏向走査の位相を各モータどうしの駆動制御で調整する必要もない。
【0072】
本実施形態では、R光を偏向走査するための偏向器210bを設けているが、
図1と
図12を比較すれば判るように、偏向器210aの下面側の反射面から光合成部220のダイクロイックミラー222にR光を導く場合と比較して、偏向器210bを用いる場合には光路を迂回させることなくダイクロイックミラー222にR光を導くことが出来る。その際には、R光の光路長が、G光やB光の光路長と等しくなるようにレイアウトすることが可能である。したがって、光路を迂回させるための反射鏡209F、反射鏡209Rや補正レンズ203を設けなくとも、偏向走査されたR光を光合成部220のダイクロイックミラー222に導くことができる。本実施形態では、偏向走査されたR光が、G光やB光と重なり合わないようにするため、偏向器210bを回転させるモータと偏向器210cを回転させるモータの位相が、モータ駆動回路により調整される。実施形態1において
図11(c)を参照して説明したように、各色の照明光の垂直走査と同期して反射型光変調デバイスの変調動作が行われるのは、本実施形態も同様である。
【0073】
本実施形態の投射型表示装置では、G光とB光の照明領域を単一の偏向器210cにより偏向走査することが出来る。また、偏向器210cと偏向器210bを用いて偏向走査された3色の照明光を合成する光合成部を備えており、異なる色光の矩形の照明領域は、反射型光変調素子の画面に拡大転写され、互いに重ならないように画面上を走査方向SDに沿って走査される。
【0074】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0075】
尚、偏向器に対する各色光源のレイアウトは
図12の例に限られるわけではなく、例えば各色光源の位置を入れ替えてもよい。その場合には、各色光源のレイアウトに応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。また、3色の光源は、必ずしも青色、緑色、赤色に限られるわけではなく、他の色の光源を用いてもよい。その場合も、用いる光源の発光特性に応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。
【0076】
[実施形態3]
図13は、実施形態3に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。実施形態1と共通する事項については、説明を簡単化もしくは省略する。
【0077】
[全体構成]
本実施形態の投射型表示装置1002は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、偏向器210a、前側転写レンズ201と後側転写レンズ202とで構成される第1転写レンズ200、補正レンズ203、反射鏡209F、反射鏡209R、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える点は、実施形態1と共通している。
【0078】
本実施形態は、さらに、第1転写光学系の後側転写レンズ202と光路変換ミラー330の間に配置された拡散板310aと、第2転写光学系320とを備えている。第2転写光学系320は、前側転写レンズ321と後側転写レンズ322とで構成され、これらは光路変換ミラー330を間に挟んで配置されている
【0079】
実施形態1の第1転写レンズ200は、矩形の照射領域IM1を反射型光変調素子340の画面に拡大転写したが、本実施形態の第1転写レンズ200(第1転写光学系)は、拡散板310aの位置に2次転写像IM2を形成する。そして、拡散板310aにより散乱された2次転写像IM2は、第2転写光学系320(第2転写光学レンズ)により反射型光変調素子340の画面に3次転写像IM3として拡大転写される。各像の大きさは、典型的には下記の関係に設定される。
IM1:IM2:IM3=1:2:6
係る構成を有する本実施形態によれば、反射型光変調素子340を照明する照明光のFナンバーの制御が容易になる。
【0080】
尚、
図13では、拡散板310aは定位置に固定する形態としたが、例えば拡散板を回転させたり直線往復運動させるなどして、拡散板上におけるレーザ光の照射位置が時間とともに移動する形態とすることもできる。こうした形態によれば、レーザによる照明光のシンチレーションを抑制することができる。
【0081】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、偏向器210aは単一の回転体および単一のモータを設ければよいので、部品点数が少なくて済み、偏向走査の制御も容易である。そして、本実施形態の投射型表示装置は、単一の偏向素子により偏向走査された異なる色の照明光を合成する光合成部を備えており、異なる色光の矩形の照明領域は、第1転写光学系および第2転写光学系を経て反射型光変調素子の画面に拡大転写され、互いに重ならないように画面上を走査方向SDに沿って走査される。
【0082】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0083】
尚、偏向器に対する各色光源のレイアウトは
図13の例に限られるわけではなく、例えば各色光源の位置を入れ替えてもよい。その場合には、各色光源のレイアウトに応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。また、3色の光源は、必ずしも青色、緑色、赤色に限られるわけではなく、他の色の光源を用いてもよい。その場合も、用いる光源の発光特性に応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。
【0084】
[実施形態4]
図14は、実施形態4に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。実施形態1と共通する事項については、説明を簡単化もしくは省略する。
【0085】
[全体構成]
本実施形態の投射型表示装置1003は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、偏向器210a、第1転写光学系、反射鏡209F、反射鏡209R、第2転写光学系320、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える点で、実施形態3と共通している。
【0086】
実施形態3と同様に、本実施形態においても第1転写光学系により、拡散板310aの位置に2次転写像IM2が形成される。しかし、本実施形態では、第1転写光学系のレンズ構成が、実施形態3とは異なっている。実施形態3の第1転写光学系(第1転写レンズ200)では、各色の光源に対応して前側転写レンズ201が個別に配置され、各色共通の後側転写レンズ202が、光合成部220よりも先に配置されていた。
【0087】
これに対して、本実施形態では、G光源100GとB光源100Bの各々に対応して前側転写レンズ201が配置され、G光とB光に共通の後側転写レンズ202がダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222の間に配置されている。すなわち、第1転写レンズ200は、G光とB光のみに作用するように構成されている。これとは別に、本実施形態では、R光源100Rに対応する前側転写レンズ201Rが偏向器201aと反射鏡209Fの間に配置され、R光用の後側転写レンズ202Rが反射鏡209Rとダイクロイックミラー222の間に配置されている。すなわち、R光専用の第1転写光学系(第1転写レンズ200R)が設けられている。尚、第3実施形態では、R光の光路長がB光やG光よりも長くなることの影響を補正するために補正レンズ203が設けられていたが、本実施形態では前側転写レンズ201Rと後側転写レンズ202Rの特性を適宜設定することにより、補正レンズ203を省略することが出来る。
【0088】
本実施形態によれば、実施形態3と同様に、偏向器210aは単一の回転体および単一のモータを設ければよいので、部品点数が少なくて済み、偏向走査の制御も容易である。そして、本実施形態の投射型表示装置は、単一の偏向素子により偏向走査された異なる色の照明光を合成する光合成部を備えており、異なる色光の矩形の照明領域は、第1転写光学系および第2転写光学系を経て反射型光変調素子の画面に拡大転写され、互いに重ならないように画面上を走査方向SDに沿って走査される。
【0089】
本実施形態においても、異なる色光毎に、複数の半導体レーザと、コリメートレンズと、インテグレータ照明系とが設けられており、各色の照明光は単一の偏向素子により偏向走査することが出来る。偏向素子の回転体には、それぞれの色光を偏向走査するための反射面が、回転方向に見て120度の位相差をつけて配置されており、各反射面は単一のモータを用いて一体として回転させることができる。このため、各反射面を回転させるためのモータを各色光に対応させて個別に設ける必要は無く、各色光どうしの偏向走査の位相を各モータどうしの駆動制御で調整する必要もない。単一の回転体および単一のモータを設ければよいので、部品点数が少なくて済み、偏向走査の制御も容易である。
【0090】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0091】
尚、偏向器に対する各色光源のレイアウトは
図14の例に限られるわけではなく、例えば各色光源の位置を入れ替えてもよい。その場合には、各色光源のレイアウトに応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。また、3色の光源は、必ずしも青色、緑色、赤色に限られるわけではなく、他の色の光源を用いてもよい。その場合も、用いる光源の発光特性に応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。
【0092】
[実施形態5]
図15は、実施形態5に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。実施形態1と共通する事項については、説明を簡単化もしくは省略する。
【0093】
[全体構成]
本実施形態の投射型表示装置1004は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、偏向器210a、反射鏡209F、反射鏡209R、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える点で、実施形態1と共通している。
【0094】
実施形態1~実施形態4では、B光源100B、G光源100G、R光源100Rの各々には、
図5(a)~
図5(d)を参照して説明したインテグレータ照明系INTを備える光源を用いた。本実施形態の各色の光源は、より簡単な構成を備えており、矩形のレーザ光束を発するレーザモジュールLMと、レーザモジュールLMが発するレーザ光束を偏向器210aの反射面に点像として集光する集光レンズ500とを備えている。さらに、本実施形態の投射型表示装置1004は、偏向器210aの反射面で反射された発散光束をコリメートして平行光とし、矩形の照明領域として反射型光変調素子に拡大転写するコリメートレンズ501を備えている。
【0095】
本実施形態においても、各色の照明光は単一の偏向素子により偏向走査することが出来る。偏向素子の回転体には、それぞれの色光を偏向走査するための反射面が、回転方向に見て120度の位相差をつけて配置されており、各反射面は単一のモータを用いて一体として回転させることができる。このため、各反射面を回転させるためのモータを各色光に対応させて個別に設ける必要は無く、各色光どうしの偏向走査の位相を各モータどうしの駆動制御で調整する必要もない。単一の回転体および単一のモータを設ければよいので、部品点数が少なくて済み、偏向走査の制御も容易である。
【0096】
そして、本実施形態の投射型表示装置は、単一の偏向素子により偏向走査された異なる色の照明光を合成する光合成部を備えており、異なる色光の矩形の照明領域は、反射型光変調素子の画面に拡大転写され、互いに重ならないように画面上を走査方向SDに沿って走査される。
【0097】
本実施形態によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【0098】
尚、偏向器に対する各色光源のレイアウトは
図15の例に限られるわけではなく、例えば各色光源の位置を入れ替えてもよい。その場合には、各色光源のレイアウトに応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。また、3色の光源は、必ずしも青色、緑色、赤色に限られるわけではなく、他の色の光源を用いてもよい。その場合も、用いる光源の発光特性に応じて、光合成部220を構成するダイクロイックミラーの反射/透過の特性を調整すればよい。
【0099】
[他の実施形態]
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
例えば、実施形態1~実施形態4のインテグレータ照明系INTにおいて、対をなすマイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104の代わりに、回折型の拡散素子(所謂トップハット素子)を配置してもよい。X方向とY方向で異なる拡散角を有するトップハット素子であれば、必ずしも2枚設ける必要は無く、1枚で構成することも可能である。
【0100】
あるいは、球面形状を有するマイクロレンズを2次元に配列形成したマイクロレンズアレイ103とマイクロレンズアレイ104の代わりに、X方向のストライプ状マイクロレンズ(シリンドリカルレンズ)のアレイと、Y方向のストライプ状マイクロレンズ(シリンドリカルレンズ)のアレイを、独立して設けてもよい。係る構成にすれば、ストライプのピッチに関係なく焦点距離とアレイの間隔を設定できるため、アレイ分割数の不足による取り込みの不安定を抑制することができるとともに、より細長くて均一な矩形スポットを生成しやすくなる。
【0101】
あるいは、マイクロレンズアレイの代わりにロッドインテクレータを備えたインテグレータ照明系INTを用いてもよい。
図16は、ロッドインテクレータを備えたインテグレータ照明系を説明するための図である。このインテグレータ照明系は、レーザモジュールLM、集光レンズ401、拡散素子402、ロッド403、リレーレンズ406を備え、矩形の照射領域IM1を形成する。レーザモジュールLMが備える半導体レーザ、半導体レーザの発光部12、コリメートレンズ102などについては、実施形態1における説明と同様である。
【0102】
レーザモジュールLMに含まれる半導体レーザの各々から出射されるレーザビームは、コリメートレンズ102の作用でおよそ平行となるが、ダイバージェンスについては既に説明したとおりである。レーザモジュールLMから出力される略コリメートされたレーザビームは、集光レンズ401により、ロッド403の入射面INPに向けて集光される。図では、集光レンズ401は1枚の凸レンズで示されているが、収差を抑制する等の目的で複数枚のレンズで構成してもよい。
【0103】
ロッド403の入射面INPの近傍には拡散素子402が配置されており、拡散素子402により拡散されたレーザビームは入射面INPからロッド403に入射する。レーザモジュールLMから出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好であるため、ロッド403の入射面INPでの光の取り込み損失を抑制でき、利用効率を向上することが出来る。ロッド403に入射した光は、側面で全反射を繰り返した後に出射面EXPから出射するが、拡散素子402の拡散能(拡散角)とロッド403の長さを適宜設定することにより、出射面EXPにおける照度分布を均一化することが出来る。
【0104】
ロッド403の出射面EXPから出射される像を、リレーレンズ406で転写することにより、照度の均一性が高い矩形の照射領域IM1を得ることが出来る。リレーレンズの転写倍率を適宜設定することにより、縮小あるいは等倍あるいは拡大した所望のサイズの照射領域IM1を得ることが出来る。尚、
図16では、リレーレンズ406は、前側凸レンズ406aと後側凸レンズ406bの2枚で構成されているが、リレーレンズ406の構成はこの例に限られるものではない。
【0105】
ロッド403は、入射した光をその側面で全反射させ得る光学素子であればよい。好適には、入射面INPの形状、出射面EXPの形状、およびロッド部分の断面形状が同一となるようにロッド403は構成される。ロッド403は、例えば、光学ガラスや透光性樹脂のような光学材料から成る中実の四角柱状の素子でもよい。また、ロッド403は、中空の四角柱、すなわち筒形状の素子とし、筒の内面には例えばアルミニウム等を材料とする反射面が形成されたものでもよい。
【0106】
ロッド403の入射面INPおよび出射面EXPの形状は、長辺がH0、短辺がV0の矩形であるが、リレーレンズ406により、長辺がH1、短辺がV1の矩形の照射領域IM1が形成される。矩形の照射領域IM1の長辺が平行方向(半導体レーザのSlow軸方向)に対応し、短辺が直交方向(半導体レーザのFast軸方向)に対応する。例えば、ロッド403の入射面INPおよび出射面EXPの形状を、X方向(短辺V0)が0.33mm、Y方向(長辺H0)が1.67mmの矩形とし、リレーレンズ406の倍率を1.2倍とすれば、V1が0.4mm、H1が2mm程度の矩形の照射領域IM1を得ることができる。
【0107】
尚、ロッド403は、入射面INPの形状、出射面EXPの形状、およびロッド部分の断面形状が同一ではなく、いわゆるテーパロッドのように入射面INPの形状と出射面EXPの形状が異なるロッドを用いてもよい。
【符号の説明】
【0108】
11・・・半導体レーザ/12・・・発光部/100B・・・B光源/100G・・・G光源/100R・・・R光源/102・・・コリメートレンズ/103、104・・・マイクロレンズアレイ/106・・・集光レンズ/190・・・投映スクリーン/201・・・前側転写レンズ/202・・・後側転写レンズ/210a、210b、210c・・・偏向器/211・・・基体/211a、211b、211c・・・基板/212・・・モータ/213、213a、213b、213c・・・反射面/214・・・ビーム照射位置/220・・・光合成部/221、222・・・ダイクロイックミラー/310a・・・拡散板/320・・・第2転写光学系/321・・・前側転写レンズ/322・・・後側転写レンズ/330・・・光路変換ミラー/340・・・反射型光変調素子/350・・・TIRプリズム/360・・・投射レンズ/401・・・集光レンズ/402・・・拡散素子/403・・・ロッド/406・・・リレーレンズ/406a・・・前側凸レンズ/406b・・・後側凸レンズ/500・・・集光レンズ/501・・・コリメートレンズ/1000、1001、1002、1003、1004・・・投射型表示装置