(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018135
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】レンズユニット及びこれを備えるカメラユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240201BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240201BHJP
G03B 17/08 20210101ALI20240201BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G03B30/00
G02B7/02 Z
G02B7/02 D
G02B7/02 A
G03B17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121260
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
【テーマコード(参考)】
2H044
2H101
【Fターム(参考)】
2H044AA15
2H044AA17
2H044AB02
2H044AB03
2H044AB07
2H044AB10
2H044AB17
2H044AD02
2H044AD03
2H044AJ04
2H101CC54
2H101CC60
(57)【要約】
【課題】レンズユニット及びカメラユニットの保守性・整備性を改善し、また、その防水性能を安定させる。
【解決手段】レンズである第1レンズと、前記第1レンズを保持する筒状のレンズホルダと、シール部材であるOリングと、を備え、前記第1レンズは前記レンズホルダに、ねじ構造を用いた固定手段によって固定され、前記Oリングは前記第1レンズと前記レンズホルダとに光軸方向に挟まれているレンズユニット、及びこれを備えるカメラユニットにより係る課題を解決する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズである第1レンズと、
前記第1レンズを保持する筒状のレンズホルダと、
シール部材であるOリングと、を備え、
前記第1レンズは前記レンズホルダに、ねじ構造を用いた固定手段によって固定され、
前記Oリングは前記第1レンズと前記レンズホルダとに光軸方向に挟まれている、
レンズユニット。
【請求項2】
前記第1レンズはプラスチックレンズであり、
前記固定手段は、前記第1レンズの外周面に形成された雄ねじと、前記レンズホルダの内周面に形成された雌ねじと、により構成されている、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有し、
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズは、前記雄ねじよりも物体側に、該雄ねじの位置よりも径方向外側に張り出したフランジ部を有し、
前記光軸方向位置決め部は、前記フランジ部の像側面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記第1レンズは、前記雄ねじよりも像側に、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項5】
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記第1レンズは、前記雄ねじよりも物体側に、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記嵌合部の外周面は、前記Oリングの位置よりも径方向外側に配置される、
請求項4又は5に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記第1レンズは筒状部を有するプラスチックレンズであり、
前記固定手段は、前記レンズホルダの外周面に形成された雄ねじと、前記筒状部の内周面に形成された雌ねじと、により構成されている、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有し、
前記第1レンズの像側面には、環状の溝部が形成され、
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記雌ねじは、前記溝部の壁面のうち径方向外側の壁面に形成され、
前記光軸方向位置決め部は、前記溝部の底面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
請求項7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記溝部の壁面のうち径方向内側の壁面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
請求項8に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記第1レンズの外面には、その光学性能に関わらない部位に、凹部、凸部、切欠き、ローレット、セレーション、スプライン、又はその他の、治具、工具、又は手指に対して周方向への係合を生じさせる凹凸が設けられている、
請求項2又は7に記載のレンズユニット。
【請求項11】
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズは、
その光学性能を定めるレンズ部と、
前記レンズ部から径方向外側に広がった非レンズ部と、を有し、
前記非レンズ部には複数の穴が形成されており、
前記第1レンズは、前記非レンズ部の穴にねじを通して、前記レンズホルダに固定されている、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項12】
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有し、
前記光軸方向位置決め部は、前記非レンズ部の像側面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
請求項11に記載のレンズユニット。
【請求項13】
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記第1レンズは、前記Oリングよりも径方向内側に配置される、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
請求項11に記載のレンズユニット。
【請求項14】
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有する、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項15】
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有する、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項16】
前記第1レンズと前記レンズホルダとは、接着剤で接合されている、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項17】
前記接着剤は、接着後、その接合部に特定の処理を施すことで接着を解除することができる、解体性接着剤である、
請求項16に記載のレンズユニット。
【請求項18】
光軸方向に沿って並べられた複数枚のレンズを備え、
前記第1レンズは、前記複数枚のレンズのうち、最も物体側に配置されたレンズであり、
前記第1レンズよりも像側に配置されるレンズは、前記レンズホルダにカシメ固定されている、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項19】
光軸方向に沿って並べられた複数枚のレンズと、
筒状のレンズホルダと、
シール部材であるOリングと、
カメラモジュールと、
前記カメラモジュールを収容するカメラケースと、を備え、
前記複数枚のレンズのうち最も物体側のレンズを第1レンズというときに、
前記レンズホルダは、前記第1レンズよりも像側に配置された前記レンズを保持しており、
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズは、
その光学性能を定めるレンズ部と、
前記レンズ部から径方向外側に広がった非レンズ部と、を有し、
前記非レンズ部には複数の穴が形成されており、
前記第1レンズは、前記非レンズ部の穴にねじを通して、前記カメラケースの物体側の面に固定され、
前記Oリングは、前記第1レンズと、前記カメラケース又は前記レンズホルダと、に光軸方向に挟まれている、
カメラユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズユニット及びこれを備えるカメラユニットに関し、特に、レンズホルダ等の支持体へのレンズ固定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、樹脂製の爪や突起を加熱・加圧して塑性変形させることでレンズをレンズホルダに固定するレンズユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のレンズユニットのように、レンズホルダに対して樹脂製の爪等を熱で変形させてレンズを固定する場合、固定後にそのレンズを取り外すためには爪等の破損が避けられない。つまり、レンズホルダに固定されたレンズをその後に交換することはできない。
【0005】
また、そのレンズがOリングを光軸方向に押さえるレンズである場合、熱で変形した爪等が冷えて固まるまでの間に、Oリングの反発力でレンズが浮き上がることがある。この浮き上がりは、Oリングの潰し率を低下させ、レンズユニットの防水性能を損なうおそれがある。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、レンズユニット及びカメラユニットの保守性・整備性を改善し、また、その防水性能を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のレンズユニットは、レンズである第1レンズと、前記第1レンズを保持する筒状のレンズホルダと、シール部材であるOリングと、を備え、前記第1レンズは前記レンズホルダに、ねじ構造を用いた固定手段によって固定され、前記Oリングは前記第1レンズと前記レンズホルダとに光軸方向に挟まれていることを要旨とする。
【0008】
レンズホルダと第1レンズとをねじ構造を用いた固定手段で固定することにより、固定後であっても、レンズホルダを破壊することなく第1レンズを取り外すことが可能となる。また、Oリングの反発力による第1レンズの浮き上がりも防止される。
【0009】
このとき、前記第1レンズはプラスチックレンズであり、前記固定手段は、前記第1レンズの外周面に形成された雄ねじと、前記レンズホルダの内周面に形成された雌ねじと、により構成されることが好ましい。プラスチックレンズを用いることで、第1レンズ自体に高い成形精度の雄ねじを形成することが可能となり、ねじ構造を用いた固定手段を簡潔な構造で実現することができる。
【0010】
またこのとき、前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有し、光軸方向に直交する方向を径方向というときに、前記第1レンズは、前記雄ねじよりも物体側に、該雄ねじの位置よりも径方向外側に張り出したフランジ部を有し、前記光軸方向位置決め部は、前記フランジ部の像側面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成されることが好ましい。ねじ構造を用いた固定手段によってレンズを固定する場合、ねじをスムーズに螺合するためには相応の遊び(バックラッシ)が必要となる。この遊びは光軸方向におけるレンズのがたつきやレンズ位置の個体差・乱れの原因となり得る。ねじ構造とは別に光軸方向位置決め部を備えることにより、このような弊害を抑え、レンズユニットの光学的品質を安定させることができる。
【0011】
またこのとき、前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有し、前記第1レンズは、前記雄ねじよりも像側に、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成されることが好ましい。ねじ構造を用いた固定手段によってレンズを固定する場合、ねじをスムーズに螺合するためには相応の遊び(有効径の差)が必要となる。この遊びは径方向におけるレンズのがたつきやレンズ位置の個体差・乱れの原因となり得る。ねじ構造とは別に径方向位置決め部を備えることにより、このような弊害を抑え、レンズユニットの光学的品質を安定させることができる。なお、前記第1レンズは、前記雄ねじよりも物体側に、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成されてもよい。
【0012】
また、前記嵌合部の外周面は、前記Oリングの位置よりも径方向外側に配置されることが好ましい。第1レンズの雄ねじは、レンズホルダの内周面に螺合することから、通常、Oリングよりも(径方向)外側に配置される。嵌合部は、ねじ構造の遊びによる弊害を除去するというその目的から、雄ねじに連続して設けられている方が、つまりOリングの位置よりも外側に配置されている方が都合がよい。また、こうすることで、雄ねじの形成面の一部を加工して径方向位置決め部を設けることができ、径方向位置決め部を備えることによる構造の複雑化が軽減される。
【0013】
また、本発明のレンズユニットは、前記第1レンズが筒状部を有するプラスチックレンズであり、前記固定手段は、前記レンズホルダの外周面に形成された雄ねじと、前記筒状部の内周面に形成された雌ねじと、により構成されていてもよい。プラスチックレンズを用いることで第1レンズ自体にねじ構造を設ける効果は上で述べた通りである。
【0014】
このとき、前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に光軸方向位置決め部を有しており、前記第1レンズの像側面には環状の溝部が形成され、前記雌ねじは前記溝部の壁面のうち径方向外側の壁面に形成され、前記光軸方向位置決め部は、前記溝部の底面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成されることが好ましい。光軸方向位置決め部をねじ構造とは別に備えることによる効果は上で述べた通りである。
【0015】
またこのとき、前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に径方向位置決め部を有し、前記径方向位置決め部は、前記溝部の壁面のうち径方向内側の壁面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成されることが好ましい。径方向位置決め部をねじ構造とは別に備えることによる効果は上で述べた通りである。
【0016】
また、本発明のレンズユニットは、前記第1レンズの外面の、その光学性能に関わらない部位に、凹部、凸部、切欠き、ローレット、セレーション、スプライン、又はその他の、治具、工具、又は手指に対して周方向への係合を生じさせる凹凸が設けられていることが好ましい。これにより第1レンズの交換が容易となる。特に、レンズユニットが超小型または超大型の場合など、何らかの工具を使わなければ第1レンズを回すことが難しい場合には、このような凹凸があってこそ第1レンズの交換という目的が達成される。
【0017】
また、本発明のレンズユニットは、前記第1レンズが、その光学性能を定めるレンズ部と、前記レンズ部から径方向外側に広がった非レンズ部と、を有し、前記非レンズ部には複数の穴が形成されており、前記第1レンズは、前記非レンズ部の穴にねじを通して、前記レンズホルダに固定されていてもよい。レンズホルダと第1レンズとをねじ構造を用いた固定手段で固定することによる効果は上で述べた通りである。また、非レンズ部の穴はねじ溝のない穴(いわゆるバカ穴、キリ穴)でもよく、ねじの形成が困難なガラスレンズにも適用することができる。
【0018】
このとき、前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に光軸方向位置決め部を有し、前記光軸方向位置決め部は、前記非レンズ部の像側面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成されることが好ましい。光軸方向位置決め部をねじ構造とは別に備えることによる効果は上で述べた通りである。
【0019】
またこのとき、前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に径方向位置決め部を有し、前記第1レンズは、前記Oリングよりも径方向内側に配置される、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成されることが好ましい。径方向位置決め部をねじ構造とは別に備えることによる効果は上で述べた通りである。
【0020】
このように、本発明のレンズユニットは、前記第1レンズ及び前記レンズホルダが、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有することが好ましく、また、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有することが好ましい。
【0021】
また、本発明のレンズユニットは、前記第1レンズと前記レンズホルダとが、接着剤で接合されてもよい。ねじ構造を用いた固定手段に加え、接着剤でこれらを接合することにより、固定後のねじの緩みを防止することができる。
【0022】
このとき、前記接着剤は、接着後、その接合部に特定の処理を施すことで接着を解除することができる、解体性接着剤であることが好ましい。これにより、ねじの緩み防止と、第1レンズの交換容易性とを両立させることができる。
【0023】
また、本発明のレンズユニットは、光軸方向に沿って並べられた複数枚のレンズを備え、前記第1レンズは、前記複数枚のレンズのうち、最も物体側に配置されたレンズであり、前記第1レンズよりも像側に配置されるレンズは、前記レンズホルダにカシメ固定されていることが好ましい。個々のレンズの性質や使用環境に応じて最適な固定方法を選択することにより、レンズユニットの光学的品質や保守性・整備性、組立性、コスト効率等をバランスよく向上させることができる。
【0024】
また、上記課題を解決するため、本発明のカメラユニットは、光軸方向に沿って並べられた複数枚のレンズと、筒状のレンズホルダと、シール部材であるOリングと、カメラモジュールと、前記カメラモジュールを収容するカメラケースと、を備え、前記複数枚のレンズのうち最も物体側のレンズを第1レンズというときに、前記レンズホルダは、前記第1レンズよりも像側に配置された前記レンズを保持しており、前記第1レンズは、その光学性能を定めるレンズ部と、前記レンズ部から径方向外側に広がった非レンズ部と、を有し、前記非レンズ部には複数の穴が形成されており、前記第1レンズは、前記非レンズ部の穴にねじを通して、前記カメラケースの物体側の面に固定され、前記Oリングは、前記第1レンズと、前記カメラケース又は前記レンズホルダと、に光軸方向に挟まれていることを要旨とする。
【0025】
ねじ構造を用いた固定手段で第1レンズを固定することによる効果は上で述べた通りである。また、第1レンズの非レンズ部をねじ固定することによる効果も上で述べた通りである。ここで、第1レンズの非レンズ部をねじで固定するためには、非レンズ部にそれなりの面積が必要となる。つまりユニットの大型化という弊害が生じうる。本発明では第1レンズをレンズホルダでなくカメラケースに直接固定しており、これによりねじ構造を用いた固定手段の効果を得つつ、その弊害を軽減することができる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本発明によれば、レンズユニット及びカメラユニットの保守性・整備性が改善され、また、その防水性能が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係るレンズユニットの内部構造を示す側面視断面図である。
【
図2】
図1の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【
図3】第1レンズの切欠き部の構造を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るレンズユニットの変形例を示す部分拡大図である。
【
図5】第2実施形態に係るレンズユニットの内部構造を示す側面視断面図である。
【
図6】
図5の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【
図7】第3実施形態に係るカメラユニットの内部構造を示す側面視断面図である。
【
図8】
図7の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【
図10】第4実施形態に係るレンズユニットの内部構造を示す側面視断面図(a)及び側面図(b)である。
【
図11】第4実施形態に係るレンズユニットの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のレンズユニット及びカメラユニットの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
以下に説明するレンズユニット及びカメラユニットは、レンズ、特に最も物体側に配置されるレンズの固定方法にその特徴を有している。具体的には、レンズの固定にねじ構造を用いた固定手段か、又は、弾性変形するアームとフックを用いた固定手段を採用することにより、固定後のレンズの取り外しを可能にするとともに、さらに、Oリングの反発力によるレンズの位置ずれを防止している。以下、これらの特徴とその付随的な特徴について種々の実施形態をもとに説明する。
【0030】
<第1実施形態>
(全体構成)
本形態のレンズユニットU1は、様々な撮影機器に採用される汎用的な小型レンズユニットである。
図1は第1実施形態に係るレンズユニットU1の内部構造を示す側面視断面図である。以下、
図1を参照してレンズユニットU1の全体構成について説明する。
【0031】
図1に示す二点鎖線L1-L2はレンズユニットU1の光軸を示しており、L1側が物体側(被写体側)、L2側が像側である。図面に沿った説明の便宜上、L1側を「上」、L2側を「下」ということもある。また、光軸方向に直交する方向を「径方向」といい、便宜上これを「水平」ということもある。また、以下の説明において「周方向」とは光軸周りの方向を意味している。
【0032】
レンズユニットU1は、光軸L1-L2に沿って配列された5枚のレンズである第1レンズ10~第5レンズ95と、これらレンズを保持するレンズホルダ20とを有している。第2レンズ92と第3レンズ93の間には遮光板97が配置され、第3レンズ93と第4レンズ94との間には絞り98が配置されている。また、レンズホルダ20の最も像側の端面には光学フィルタ96が配置されており、光学フィルタ96は、樹脂製の爪部961によってレンズホルダ20の端面にカシメ固定されている。また、第2レンズ92は、レンズホルダ20に設けられた樹脂製の円環形状のリブ921によってカシメ固定されている。
【0033】
本形態のレンズは全てプラスチックレンズであり、最も像側に位置する第5レンズ95と第4レンズ94は接合レンズを構成している。尚、レンズホルダ20に保持されるレンズの数や種類は本形態の構成に限られるものではなく、レンズユニットの用途や被写体に応じて適宜変更可能である。
【0034】
レンズホルダ20はこれらのレンズを保持する鏡筒・玉枠であり、円筒形状の小径部21と、小径部21よりも大きな内径を有する大径部22と、を有している。大径部22と小径部21とは、小径部21の上端から水平に広がる円環形状の平面部によってつながっている。第1レンズ10は大径部22に保持されており、第2レンズ92~第5レンズ95や遮光板97、絞り98は小径部21に保持されている。レンズホルダ20の構造も本形態のものには限られず、後段で説明するねじ構造やフック構造を備えるものであればどのような構造のレンズホルダであってもよい。
【0035】
レンズホルダ20の小径部21と大径部22とをつなぐ平面部には、その上にOリング91が載置されている。Oリング91は、レンズユニットU1に物体側から水が入ることを防ぐシール部材である。Oリング91は、これが載置された平面部と第1レンズ10の下面との間に挟まれ、光軸方向に圧縮されている。
【0036】
(第1レンズの固定構造)
図2は、
図1の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図であり、第1レンズ10の固定構造の細部を示す図である。以下、
図2を参照して、本形態における第1レンズ10の固定構造について説明する。
【0037】
第1レンズ10は負のパワーを有するプラスチックレンズである。第1レンズ10は、その胴部11(
図1参照)の外周面に雄ねじ111が刻まれている。雄ねじ111の上には、雄ねじ111よりも径方向外側に張り出した円環形状のフランジ部12が設けられている。雄ねじ111の下には、下方に突き出した円筒形状の嵌合部であるレンズ側嵌合部13aが設けられている。
【0038】
レンズホルダ20の大径部22は、円筒形状の筒部である。大径部22の内周面には、第1レンズ10の雄ねじ111に対応する雌ねじ221が刻まれている。雌ねじ221の下には、雌ねじ221のねじ山の頂部よりも径方向内側に張り出した内周面であるホルダ側嵌合部23aが設けられている。
【0039】
図2に示すように、第1レンズ10は、ねじ構造を用いた固定手段によってレンズホルダ20に固定されている。具体的には、第1レンズ10は、その雄ねじ111が、レンズホルダ20の雌ねじ221に螺合されることで、レンズホルダ20に固定されている。上でも述べたように、本形態の第1レンズ10はプラスチックレンズである。プラスチックレンズを用いることで、第1レンズ10自体に高い成形精度の雄ねじ111を形成することが可能となっており、ねじ構造を用いた固定手段が簡潔な構造で実現されている。そして、レンズホルダ20と第1レンズ10とをねじ固定することにより、第1レンズ10の固定後であっても、レンズホルダ20を破壊することなくこれを取り外すことができる。さらに、Oリング91の反発力による第1レンズ10の浮き上がりも防止される。プラスチックレンズはガラスレンズに比べて安価である一方、ガラスレンズに比べて硬度に劣るため、傷がつきやすい。レンズユニットU1によれば、傷により第1レンズ10の性能が損なわれた際には、これを容易に交換することができる。
【0040】
本形態の第1レンズ10及びレンズホルダ20は、上述のねじ構造とは別に、互いに光軸方向に当接し、レンズホルダ20に対する第1レンズ10の光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有している。本形態の光軸方向位置決め部は、第1レンズ10のフランジ部12の下面12aと、これに対向する、大径部22aの上面22aと、により構成されている。
【0041】
また、本形態の第1レンズ10及びレンズホルダ20は、上述のねじ構造とは別に、互いに径方向に当接し、レンズホルダ20に対する第1レンズ10の径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有している。本形態の径方向位置決め部は、第1レンズ10のレンズ側嵌合部13aの外周面と、これに対向する、大径部22のホルダ側嵌合部23aと、により構成されている。
【0042】
ねじ構造を用いた固定手段によってレンズを固定する場合、ねじをスムーズに螺合させるためには相応の遊び(バックラッシや有効径の差)が必要となる。この遊びは光軸方向・径方向におけるレンズのがたつきやレンズ位置の個体差・乱れの原因となり得る。本形態のレンズユニットU1は、ねじ構造とは別に光軸方向位置決め部・径方向位置決め部を備えることにより、このような弊害を抑え、レンズユニットU1の光学的品質を安定させている。
【0043】
また、
図1に示すように、レンズユニットU1では、第1レンズ10とレンズホルダ20とが、接着剤99によっても接合されている。ねじ構造を用いた固定手段に加え、接着剤99でこれらを接着することにより、固定後のねじの緩みが防止される。
【0044】
ここで、本形態の接着剤99は熱可塑性接着剤であり、接着後、接合部を再加熱することで接着を解除することができる。これによりねじの緩み防止と、第1レンズ10の交換容易性とが両立されている。なお、使用可能な接着剤は熱可塑性接着剤には限られず、接着後、その接合部に特定の処理を施すことで接着を解除することができるもの(いわゆる解体性接着剤)であればよい。または、ねじの緩みが防止できる程度の接着強度を有し、引き剥がそうとすれば、第1レンズ10やレンズホルダ20を破損することなく引き剥がせるものであってもよい。なお、この接着剤99による接合は、以降の第2~4実施形態においても採用することができる。
【0045】
(第1レンズの交換補助構造)
図3は、第1レンズ10の切欠き部14の構造を示す斜視図である。
図3に示すように、第1レンズ10は、そのフランジ部12の外縁に、周方向等間隔に設けられた3つの切欠き部14を有している。
【0046】
上でも述べたように、本形態のレンズユニットU1は小型レンズユニットであり、その直径寸法は15~16mm程度である。レンズユニットU1のような小型のレンズユニットや、逆に超大型のレンズユニットでは、手指による第1レンズ10の交換が難しい場合もある。レンズユニットU1は、第1レンズ10が切欠き部14を有していることにより、専用工具を使って第1レンズ10を容易かつ安全に交換することができる。尚、切欠き部14の形状や構造はレンズユニットU1の形態には限られない。切欠き部14は、レンズの光学性能に関わらない部位に設けられた、例えば、凹部、凸部、ローレット、セレーション、スプライン、又はその他の、治具、工具、又は手指に対して周方向への係合を生じさせる凹凸であればよい。何らかの工具を使わなければ第1レンズ10を回すことが難しい場合には、このような凹凸があってこそ第1レンズ10の交換という目的が達成される。
【0047】
(変形例)
図4はレンズユニットU1の変形例を示す部分拡大図である。以下に説明する変形例は、主に、レンズユニットU1の径方向位置決め部を構成する、レンズ側嵌合部13a及びホルダ側嵌合部23aついての変形例である。
【0048】
図2に示すように、上記実施形態のレンズ側嵌合部13aは、第1レンズ10の胴部11(
図1参照)の下端からさらに下方に突き出した円筒形状の部位である。
図4(a)の変形例では、胴部11の下端部の外径を雄ねじ111のねじ溝の底部の直径よりも小さくすることで、胴部11自体にレンズ側嵌合部13bを設けている。一方、レンズホルダ20側は上記実施形態のホルダ側嵌合部23aとほぼ同じであり、雌ねじ221の下に、雌ねじ221のねじ山の頂部よりも径方向内側に張り出したホルダ側嵌合部23bが設けられている。
【0049】
図4(b)の変形例では、胴部11の上端部の外径を雄ねじ111のねじ山の頂部の直径よりも大きくすることで、こちらも胴部11自体にレンズ側嵌合部13cを設けている。レンズホルダ20には、雌ねじ221の上に、雌ねじ221のねじ溝の底部よりも径方向外側に広がった内周面であるホルダ側嵌合部23cが設けられている。
【0050】
上記実施形態、及び上記変形例はいずれも、レンズ側嵌合部13a,13b,13cの外周面がOリング91の位置よりも径方向外側に配置されている。第1レンズ10の雄ねじ111は、レンズホルダ20の内周面に螺合することから、通常、Oリング91よりも(径方向)外側に配置される。レンズ側嵌合部13a,13b,13cは、ねじ構造の遊びによる弊害を除去するというその目的から、雄ねじ111に連続して設けられている方が、つまりOリング91の位置よりも外側に配置されている方が都合がよい。また、こうすることで、雄ねじ111の形成面(つまり胴部11の外周面)の一部やその近辺を加工して径方向位置決め部を設けることができ、径方向位置決め部を備えることによる構造の複雑化が軽減されている。
【0051】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係るレンズユニットU2の内部構造を示す側面視断面図である。
図6は、
図5の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図であり、第1レンズ15の固定構造の細部を示す図である。以下、
図5及び
図6を参照してレンズユニットU2の特徴について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については、先の実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。また、第1実施形態の構成と同名の構成は、その第1実施形態の構成に相当する位置付けの構成と考えてよい。これらは第3実施形態以降の説明についても同様である。
【0052】
第1実施形態のレンズユニットU1では、第1レンズ10に雄ねじ111が設けられ、レンズホルダ20に雌ねじ221が設けられていたが、本形態のレンズユニットU2では、これとは反対に、第1レンズ15に雌ねじ17が設けられ、レンズホルダ25に雄ねじ28が設けられている。
【0053】
第1レンズ15はその下面に環状の溝部16が形成されている。溝部16は、底面16aと、径方向外側の壁面である外壁面16b、径方向内側の壁面である内壁面16cとにより構成されている。雌ねじ17は溝部16の外壁面16bに形成されており、雄ねじ28は、レンズホルダ25の大径部27の外周面27bに形成されている。プラスチックレンズを用いることで第1レンズ自体にねじ構造を設ける効果は第1実施形態で述べた通りである。また、レンズユニットU2もレンズユニットU1と同様の切欠き部14を備えてもよい。
【0054】
レンズユニットU2の光軸方向位置決め部は、溝部16の底面16aと、これに対向する、大径部27の上面27aにより構成されている。また、レンズユニットU2の径方向位置決め部は、溝部16の内壁面16cと、これに対向する、大径部27の内周面27cにより構成されている。光軸方向位置決め部・径方向位置決め部をねじ構造とは別に備えることによる効果は第1実施形態で述べた通りである。
【0055】
なお、本形態では、大径部27の内周面27cを利用して径方向位置決め部を設ける都合上、溝部16という形態を採用しているが、径方向位置決め部が必要ない場合や、又は本形態とは異なる方法でこれを設ける場合には、溝部16ではなく、例えば第1レンズ15に単純な筒状部(第1レンズ15の外周面と溝部16の内壁面16bに相当する構成)のみを設け、その内周面に雌ねじ17を形成してもよい。
【0056】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係るカメラユニットU3の内部構造を示す側面視断面図である。
図8は、
図7の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図であり、第1レンズ30の固定構造の細部を示す図である。
図9はカメラユニットU3の平面図である。以下、
図7から
図9を参照してカメラユニットU3の特徴について説明する。
【0057】
カメラユニットU3は、主に車載カメラとして使用される小型のカメラユニットである。カメラユニットU3はカメラモジュール46を内蔵しており、第2レンズ92~第5レンズ95、遮光板97、絞り98、及び光学フィルタ96を保持する筒状のレンズホルダ部45を有している。これらはカメラユニットU3のケース体であるカメラケース40に収容されている。
【0058】
カメラユニットU3の第1レンズ30はプラスチックレンズである。第1レンズ30は、その光学性能を定めるレンズ部31と、レンズ部31の胴部311(
図7参照)から径方向外側に広がる非レンズ部32と、を有している。
図9に示すように、非レンズ部32の平面形状は角丸の矩形状であり、その四隅がねじ49で留められている。第1レンズ30は、
図8に示すように、非レンズ部32の穴321にねじ49が差し込まれ、これがカメラケース40のねじ穴41に締結されることで、カメラケース40の上面に固定される。非レンズ部32の穴321はねじ溝のない穴(いわゆるバカ穴、キリ穴)である。よって第1レンズ30はガラスレンズであってもよい。Oリング91は、非レンズ部32の下面32aと、カメラケース40の上面(後述するOリング載置面43)とに挟まれ、光軸方向に圧縮されている。ねじ構造を用いた固定手段で第1レンズ30をカメラケース40に固定する効果は第1実施形態で述べた通りである。
【0059】
図8に示すように、カメラケース40の上面は、その外縁から中央(レンズホルダ部45)側に向かって、面位置が階段状に低くなるように形成されている。カメラケース40の上面には、その外縁側から中央側に向かって、順に、第1レンズ30(非レンズ部32)の形状と同形状に面位置が落ち窪んだレンズ載置面42、Oリング91が配置されるOリング載置面43、そして、レンズホルダ部45の上面45aが形成されている。
【0060】
図8に示すように、カメラユニットU3の光軸方向位置決め部は、非レンズ部32の下面32aと、これに対向する、カメラケース40のレンズ載置面42とにより構成されている。また、カメラユニットU3の径方向位置決め部は、第1レンズ30のレンズ側嵌合部33と、これに対向する、カメラケース40のケース側嵌合部44とにより構成されている。レンズ側嵌合部33は第1レンズ30の胴部311(
図7参照)の外周面である。ケース側嵌合部44は、Oリング載置面43とレンズホルダ上面45aとの間の垂直面である。光軸方向位置決め部・径方向位置決め部をねじ構造とは別に備えることによる効果は第1実施形態で述べた通りである。
【0061】
ここで、第1レンズ30の非レンズ部32をねじ49で固定するためには、非レンズ部32にそれなりの面積が必要となる。つまりユニットの大型化という弊害が生じうる。カメラユニットU3では第1レンズ30をレンズホルダ部45でなくカメラケース40に直接固定しており、これによりねじ構造を用いた固定手段の効果を得つつ、その弊害を軽減している。尚、ユニットの大型化が生じないとき、又は問題とならないときは、レンズホルダ部45をより大きくして第1レンズ30をレンズホルダ部45にねじ固定してもよい。
【0062】
<第4実施形態>
図10は、第4実施形態に係るレンズユニットU4の内部構造を示す側面視断面図(a)及び側面図(b)である。以下、
図10を参照してレンズユニットU4の特徴について説明する。
【0063】
上記各実施形態では、ねじ構造を用いた固定手段によって第1レンズをレンズホルダ又はカメラケースに固定する構成について説明したが、固定後のレンズの取り外しを可能とし、さらに、Oリングの反発力によるレンズの位置ずれを防ぐことのできる固定手段はねじ構造を用いた手段だけには限られない。以下に説明するレンズユニットU4では、ねじ構造に代えて、弾性変形するアームとフックを用いた固定手段によりこの課題を解決している。
【0064】
レンズユニットU4の第1レンズ50はプラスチックレンズであり、その下面には環状の溝部51が形成されている。そして、第1レンズ50の外周部(溝部51よりも径方向外側の部分)からは、複数本の弾性アーム52が下方に延びている。本形態の弾性アーム52は周方向等間隔に3本配置されている。各弾性アーム52の下端にはフック521が設けられおり、フック521は、レンズホルダ60の大径部62の下面62aに係合している。
【0065】
レンズユニットU4では、第1レンズ50にプラスチックレンズを用いることにより、第1レンズ50と弾性アーム52とを一体的に成形することを可能としている。そして、第1レンズ50はレンズホルダ60に対して弾性アーム52のフック521で固定されるため、第1レンズ50の固定後であっても、レンズホルダ60を破壊することなくこれを取り外すことができる。さらに、Oリング91の反発力による第1レンズ50の浮き上がりも防止される。また、傷により第1レンズ50の性能が損なわれた際には、これを容易かつ安価に交換することができる。
【0066】
なお、レンズユニットU4における、第1レンズ50の光軸方向の位置は、弾性アーム52のフック521と、大径部62の下面62aとによって定められる(Oリング91の反発力により第1レンズ50は常に物体側に押し上げられているため)。また、第1レンズ50の径方向の位置は、溝部51の壁面のうち径方向内側の面である内壁面51cと、これに対向する、大径部62の内周面62bとにより定められる。
【0067】
(変形例)
図11は、レンズユニットU4の変形例を示す側面図である。
図11に示すように、弾性アーム52及びフック521は、レンズホルダ60側にフック63を設け、これに嵌合・係合する穴531を弾性アーム52に設けてもよい。
【0068】
<その他>
尚、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)
レンズである第1レンズと、
前記第1レンズを保持する筒状のレンズホルダと、
シール部材であるOリングと、を備え、
前記第1レンズは前記レンズホルダに、ねじ構造を用いた固定手段によって固定され、
前記Oリングは前記第1レンズと前記レンズホルダとに光軸方向に挟まれている、
レンズユニット。
(2)
前記第1レンズはプラスチックレンズであり、
前記固定手段は、前記第1レンズの外周面に形成された雄ねじと、前記レンズホルダの内周面に形成された雌ねじと、により構成されている、
(1)に記載のレンズユニット。
(3)
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有し、
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズは、前記雄ねじよりも物体側に、該雄ねじの位置よりも径方向外側に張り出したフランジ部を有し、
前記光軸方向位置決め部は、前記フランジ部の像側面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
(2)に記載のレンズユニット。
(4)
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記第1レンズは、前記雄ねじよりも像側に、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
(2)または(3)に記載のレンズユニット。
(5)
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記第1レンズは、前記雄ねじよりも物体側に、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
(2)または(3)に記載のレンズユニット。
(6)
前記嵌合部の外周面は、前記Oリングの位置よりも径方向外側に配置される、
(4)または(5)に記載のレンズユニット。
(7)
前記第1レンズは筒状部を有するプラスチックレンズであり、
前記固定手段は、前記レンズホルダの外周面に形成された雄ねじと、前記筒状部の内周面に形成された雌ねじと、により構成されている、
(1)に記載のレンズユニット。
(8)
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有し、
前記第1レンズの像側面には、環状の溝部が形成され、
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記雌ねじは、前記溝部の壁面のうち径方向外側の壁面に形成され、
前記光軸方向位置決め部は、前記溝部の底面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
(7)に記載のレンズユニット。
(9)
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記溝部の壁面のうち径方向内側の壁面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
(8)に記載のレンズユニット。
(10)
前記第1レンズの外面には、その光学性能に関わらない部位に、凹部、凸部、切欠き、ローレット、セレーション、スプライン、又はその他の、治具、工具、又は手指に対して周方向への係合を生じさせる凹凸が設けられている、
(1)から(9)のいずれかに記載のレンズユニット。
(11)
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズは、
その光学性能を定めるレンズ部と、
前記レンズ部から径方向外側に広がった非レンズ部と、を有し、
前記非レンズ部には複数の穴が形成されており、
前記第1レンズは、前記非レンズ部の穴にねじを通して、前記レンズホルダに固定されている、
(1)に記載のレンズユニット。
(12)
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有し、
前記光軸方向位置決め部は、前記非レンズ部の像側面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
(11)に記載のレンズユニット。
(13)
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向位置を定める、径方向位置決め部を有し、
前記第1レンズは、前記Oリングよりも径方向内側に配置される、円筒形状または円柱形状の嵌合部を有し、
前記径方向位置決め部は、前記嵌合部の外周面と、これに対向する前記レンズホルダの面と、により構成される、
(11)または(12)に記載のレンズユニット。
(14)
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに光軸方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの光軸方向の位置を定める、光軸方向位置決め部を有する、
(1)から(13)のいずれかに記載のレンズユニット。
(15)
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズ及び前記レンズホルダは、前記固定手段とは別に、互いに径方向に当接し、前記レンズホルダに対する前記第1レンズの径方向の位置を定める、径方向位置決め部を有する、
(1)から(14)のいずれかに記載のレンズユニット。
(16)
前記第1レンズと前記レンズホルダとは、接着剤で接合されている、
(1)から(15)のいずれかに記載のレンズユニット。
(17)
前記接着剤は、接着後、その接合部に特定の処理を施すことで接着を解除することができる、解体性接着剤である、
(16)に記載のレンズユニット。
(18)
光軸方向に沿って並べられた複数枚のレンズを備え、
前記第1レンズは、前記複数枚のレンズのうち、最も物体側に配置されたレンズであり、
前記第1レンズよりも像側に配置されるレンズは、前記レンズホルダにカシメ固定されている、
(1)から(17)のいずれかに記載のレンズユニット。
(19)
光軸方向に沿って並べられた複数枚のレンズと、
筒状のレンズホルダと、
シール部材であるOリングと、
カメラモジュールと、
前記カメラモジュールを収容するカメラケースと、を備え、
前記複数枚のレンズのうち最も物体側のレンズを第1レンズというときに、
前記レンズホルダは、前記第1レンズよりも像側に配置された前記レンズを保持しており、
光軸方向に直交する方向を径方向というときに、
前記第1レンズは、
その光学性能を定めるレンズ部と、
前記レンズ部から径方向外側に広がった非レンズ部と、を有し、
前記非レンズ部には複数の穴が形成されており、
前記第1レンズは、前記非レンズ部の穴にねじを通して、前記カメラケースの物体側の面に固定され、
前記Oリングは、前記第1レンズと、前記カメラケース又は前記レンズホルダと、に光軸方向に挟まれている、
カメラユニット。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0070】
U1:レンズユニット,10:第1レンズ,11:胴部,111:雄ねじ(固定手段),12:フランジ部,12a:下面(光軸方向位置決め部),13a~13c::レンズ側嵌合部(径方向位置決め部),14:切欠き部,20:レンズホルダ,21:小径部,22:大径部,221:雌ねじ(固定手段),22a:上面(光軸方向位置決め部),23a~23c:ホルダ側嵌合部(径方向位置決め部),U2:レンズユニット,15:第1レンズ,16:溝部,16a:底面(径方向位置決め部),16b:外壁面,16c:内壁面(光軸方向位置決め部),17:雌ねじ(固定手段),25:レンズホルダ,27:大径部,27a:上面(光軸方向位置決め部),27b:外周面,27c:内周面(径方向位置決め部),28:雄ねじ(固定手段),U3:カメラユニット,30:第1レンズ,31:レンズ部,311:胴部,32:非レンズ部,32a:像側面(光軸方向位置決め部),321:穴,33:レンズ側嵌合部(径方向位置決め部),40:カメラケース,41:ねじ穴(固定手段),42:レンズ載置面(光軸方向位置決め部),43:Oリング載置面,44:ケース側嵌合部(径方向位置決め部),45:レンズホルダ部,45a:上面,46:カメラモジュール,49:ねじ(固定手段),U4:レンズユニット,50:第1レンズ,51:溝部,51c:内壁面,52:弾性アーム,521:フック,531:フック穴,60:レンズホルダ,61:小径部,62:大径部,62a:底面,62b:内周面,63:フック,91:Oリング,92:第2レンズ,921:カシメ部,93:第3レンズ,94:第4レンズ,95:第5レンズ,96:光学フィルタ,961:カシメ部,97:遮光板,98:絞り,99:接着剤