IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

特開2024-18146表示プログラム、表示方法、及び表示装置
<>
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図1
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図2
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図3
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図4
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図5
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図6
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図7
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図8
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図9
  • 特開-表示プログラム、表示方法、及び表示装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018146
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】表示プログラム、表示方法、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 43/00 20060101AFI20240201BHJP
   D05B 19/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
D05B43/00 B
D05B19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121274
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】峰松 容浩
(72)【発明者】
【氏名】今泉 一崇
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一樹
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CB04
3B150CE09
3B150CE23
3B150FA03
3B150FA06
3B150GD05
3B150LA55
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】任意の場所に配置された複数の糸駒の中から、縫製に用いる予定の糸駒を検出し、検出結果を表示可能な表示プログラム、表示方法、及び表示装置を提供すること。
【解決手段】表示装置は、撮影部と、表示部と、制御部とを備える。制御部は、表示プログラムに従い以下の処理を実行する。制御部は、撮影部により撮影された、現実空間を表す撮影画像を取得する(S7)。制御部は、検出対象の糸駒を示す対象情報を取得する(S5、S6)。制御部は、撮影画像と、対象情報とに基づき、検出対象の糸駒について、撮影画像上の糸駒位置を検出する(S9からS12)。制御部は、撮影画像に基づく表示画像であって、糸駒位置を表す表示画像の何れかを生成する(S14)。制御部は、表示画像を表示部に表示する(S15)。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影部と、表示部と、制御部とを備えた表示装置の前記制御部に、
前記撮影部により撮影された、現実空間を表す撮影画像を取得する画像取得処理と、
検出対象の糸駒を示す対象情報を取得する情報取得処理と、
前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記検出対象の前記糸駒について、前記撮影画像上の糸駒位置を検出する検出処理と、
前記撮影画像に基づく表示画像であって、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成する画像生成処理と、
前記表示画像を前記表示部に表示する表示制御処理と
を実行させることを特徴とする表示プログラム。
【請求項2】
前記検出処理は、前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記撮影画像上における前記検出対象の前記糸駒の二次元コードの位置を検出することにより、前記糸駒位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の表示プログラム。
【請求項3】
前記画像生成処理は、前記撮影画像上の前記糸駒位置の周辺に、特定のオブジェクトを配置することにより、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の表示プログラム。
【請求項4】
前記対象情報は、複数種類の前記糸駒を用いて縫製を行う場合の、縫製順序と前記複数種類の糸駒の各々との対応を示す縫製順データを含み、
前記検出処理は、前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記複数種類の糸駒の各々の少なくとも一部を前記検出対象として、前記糸駒位置を検出し、
前記画像生成処理は、前記検出対象の前記糸駒の各々について、前記撮影画像上における前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の表示プログラム。
【請求項5】
前記画像生成処理は、前記撮影画像上における前記糸駒位置各々の周辺に、前記検出対象の前記糸駒の各々に対応する前記縫製順序を表すオブジェクトを各々配置することにより、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成することを特徴とする請求項4に記載の表示プログラム。
【請求項6】
前記画像生成処理は、前記縫製順データに基づき、前記複数種類の糸駒の中のうち、複数の前記縫製順序が割り当てられた前記検出対象の前記糸駒について、前記検出対象の前記糸駒に割り当てられた前記複数の縫製順序における最先の前記縫製順序を表す前記オブジェクトを、前記撮影画像上における前記糸駒位置の周辺に配置することにより、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の表示プログラム。
【請求項7】
前記対象情報は、複数の針棒を備える多針ミシンにおいて、複数種類の前記糸駒を用いて縫製を行う場合に、前記複数種類の前記糸駒の各々を前記複数の針棒の何れかに割り当てた針棒データを含み、
前記画像生成処理は、前記複数種類の前記糸駒の各々の少なくとも一部を前記検出対象として、前記撮影画像上における前記糸駒位置各々の周辺に、前記複数の針棒のうちの前記検出対象の前記糸駒の各々に対応する針棒を表すオブジェクトを各々配置することで、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の表示プログラム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記撮影部による撮影の開始指示及び停止指示を入力するための入力部を備え、
前記表示プログラムは、
前記入力部により前記開始指示が入力されてから、前記停止指示が入力されるまでの撮影期間において、前記画像取得処理、前記検出処理、前記画像生成処理、及び前記表示制御処理を繰り返し実行することを特徴とする請求項1に記載の表示プログラム。
【請求項9】
前記表示装置はミシンと通信するための通信部を更に備え、
前記検出対象の前記糸駒は、縫製において最初に使用される前記糸駒又は縫製において次に使用される予定の前記糸駒であり、
前記情報取得処理は、前記通信部を介して、前記ミシンから前記対象情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の表示プログラム。
【請求項10】
前記検出処理は、前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記検出対象の前記糸駒の前記撮影画像上の前記糸駒位置と、前記糸駒の向きとを検出し、
前記画像生成処理は、前記撮影画像上の前記糸駒位置の周辺に、前記特定のオブジェクトを前記糸駒の向きに合わせて配置することにより、前記糸駒位置と前記糸駒の向きとを表す前記表示画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の表示プログラム。
【請求項11】
撮影部と、表示部と、制御部とを備えた表示装置の前記制御部により実行される表示方法であって、
前記撮影部により撮影された、現実空間を表す撮影画像を取得する画像取得工程と、
検出対象の糸駒を示す対象情報を取得する情報取得工程と、
前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記検出対象の前記糸駒について、前記撮影画像上の糸駒位置を検出する検出工程と、
前記撮影画像に基づく表示画像であって、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成する画像生成工程と、
前記表示画像を前記表示部に表示する表示制御工程と
を含むことを特徴とする表示方法。
【請求項12】
撮影部と、
表示部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記撮影部により撮影された、現実空間を表す撮影画像を取得する画像取得処理と、
検出対象の糸駒を示す対象情報を取得する情報取得処理と、
前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記検出対象の前記糸駒について、前記撮影画像上の糸駒位置を検出する検出処理と、
前記撮影画像に基づく表示画像であって、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成する画像生成処理と、
前記表示画像を前記表示部に表示する表示制御処理と
を実行することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示プログラム、表示方法、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンシステムは、縫製中における糸交換時に、必要な糸駒を探す作業を容易にするために、ミシン、収容ケース、検出部、検出結果送信部、検出結果受信部、及び表示部を備える(例えば、特許文献1参照)。収容ケースは、ミシンと別体に形成される。収容ケースは、格子状に区分けされた複数の収容部を有する。検出部は、収容部に収容された糸駒の種類と、収容ケースにおける収容位置とを関連付けた形態で検出する。検出結果送信部は、検出部が検出した検出結果をミシンに送信する。検出結果受信部は、ミシンに設けられ、検出結果送信部から検出結果を受信する。表示部は、検出結果に基づき縫製実行中に必要となる糸駒の種類と、収容ケースにおける収容位置とを表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-228880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のミシンシステムでは、糸駒の検出には、専用の収容ケース内に糸駒が収容されている必要がある。
【0005】
本発明の目的は、任意の場所に配置された複数の糸駒の中から、縫製に用いる予定の糸駒を検出し、検出結果を表示可能な表示プログラム、表示方法、及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る表示プログラムは、撮影部と、表示部と、制御部とを備えた表示装置の前記制御部に、前記撮影部により撮影された、現実空間を表す撮影画像を取得する画像取得処理と、検出対象の糸駒を示す対象情報を取得する情報取得処理と、前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記検出対象の前記糸駒について、前記撮影画像上の糸駒位置を検出する検出処理と、前記撮影画像に基づく表示画像であって、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成する画像生成処理と、前記表示画像を前記表示部に表示する表示制御処理とを実行させる。表示プログラムが表示装置の制御部によって実行された場合、表示装置は、現実空間を表す撮影画像に基づく、検出対象の糸駒の位置を表す表示画像を表示部に表示させる。したがって、表示プログラムは、ユーザが、検出対象の糸駒を探す際に、所持している糸駒群を表示装置の撮影部で撮影し、表示部に表示される表示画像を確認することにより、任意の場所に配置された複数の糸駒の中から検出対象の糸駒を容易に発見することに貢献する。
【0007】
本発明の第二態様に係る表示方法は、撮影部と、表示部と、制御部とを備えた表示装置の前記制御部により実行される表示方法であって、前記撮影部により撮影された、現実空間を表す撮影画像を取得する画像取得工程と、検出対象の糸駒を示す対象情報を取得する情報取得工程と、前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記検出対象の前記糸駒について、前記撮影画像上の糸駒位置を検出する検出工程と、前記撮影画像に基づく表示画像であって、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成する画像生成工程と、前記表示画像を前記表示部に表示する表示制御工程とを含む。表示方法が表示装置の制御部によって実行された場合、表示装置は、現実空間を表す撮影画像に基づく、検出対象の糸駒の位置を表す表示画像を表示部に表示させる。したがって、表示方法は、ユーザが、検出対象の糸駒を探す際に、所持している糸駒群を表示装置の撮影部で撮影し、表示部に表示される表示画像を確認することにより、任意の場所に配置された複数の糸駒の中から検出対象の糸駒を容易に発見することに貢献する。
【0008】
本発明の第三態様に係る表示装置は、撮影部と、表示部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記撮影部により撮影された、現実空間を表す撮影画像を取得する画像取得処理と、検出対象の糸駒を示す対象情報を取得する情報取得処理と、前記撮影画像と、前記対象情報とに基づき、前記検出対象の前記糸駒について、前記撮影画像上の糸駒位置を検出する検出処理と、前記撮影画像に基づく表示画像であって、前記糸駒位置を表す前記表示画像を生成する画像生成処理と、前記表示画像を前記表示部に表示する表示制御処理とを実行する。表示装置は、現実空間を表す撮影画像に基づく、検出対象の糸駒の位置を表す表示画像を表示部に表示させる。したがって、表示装置は、ユーザが、検出対象の糸駒を探す際に、所持している糸駒群を表示装置の撮影部で撮影し、表示部に表示される表示画像を確認することにより、任意の場所に配置された複数の糸駒の中から検出対象の糸駒を容易に発見することに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】端末装置1、刺繍ミシン2、及び多針ミシン5を備える表示システム4の説明図である。
図2】端末装置1、刺繍ミシン2、及び多針ミシン5を備える表示システム4の電気的構成を示すブロック図である。
図3】端末装置1、刺繍ミシン2、及び多針ミシン5の少なくとも何れかが記憶する糸色テーブルTの説明図である。
図4】刺繍ミシン2のCPU7又は多針ミシン5のCPU8により実行されるミシン処理のフローチャートである。
図5】具体例の刺繍模様Eと、刺繍模様Eを縫製するための縫製データDとの説明図である。
図6】多針ミシン5の各針棒67に設定された糸交換前の針棒番号と糸色との対応を記憶するテーブルQBと、縫製データDに基づき設定される、糸交換後の針棒番号と糸色との対応を記憶するテーブルQAとの説明図である。
図7】端末装置1のCPU6により実行されるメイン処理のフローチャートである。
図8】撮影部11が取得した撮影画像G1と、撮影画像G1に基づき生成した表示画像G2からG4との説明図である。
図9】撮影部11が取得した撮影画像G1と、撮影画像G1に基づき生成した表示画像G5、G6との説明図である。
図10】変形例の糸駒U1からU4の糸駒位置を検出する処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。図1に示すように、表示システム4(以下、「システム4」という。)は、端末装置1、刺繍ミシン2(以下、「ミシン2」という。)、及び多針ミシン5(以下、「ミシン5」という。)を備える。端末装置1、ミシン2、及びミシン5は各々、ネットワーク3を介して通信可能である。
【0011】
端末装置1は、撮影部11、表示部18、入力部19、及びCPU6を備えた、タブレット型の携帯端末装置又はスマートフォンである。撮影部11は、例えば、現実空間を撮影した画像データを生成するよう構成されている。表示部18は、例えば、画像を表示するよう構成された液晶ディスプレイである。入力部19は、各種指示を入力するよう構成されたタッチスクリーンである。CPU6は端末装置1の制御を司る。ミシン2は、一本の針棒37を備え、刺繍縫製が可能なミシンである。ミシン5は、針棒67を複数備え、刺繍縫製が可能な多針ミシンである。システム4の端末装置1は、ミシン2、5の何れかから送信された縫製順データに基づき、端末装置1で撮影された画像の中から縫製に使用する予定の糸駒を検出し、検出結果を報知可能に構成されている。
【0012】
ミシン2は、一本の針棒37を備える刺繍ミシンである。ミシン2は、ベッド部46、脚柱部47、アーム部48、頭部49、縫製部10、及び移動機構40を備える。ベッド部46は、左右方向に延びるミシン2の土台部である。脚柱部47は、ベッド部46の右端部から上方へ立設される。脚柱部47の前面には、表示部28及び入力部29が設けられる。表示部28は、例えば、画像を表示するよう構成された液晶ディスプレイである。入力部29は、各種指示を入力するよう構成されたタッチスクリーンである。アーム部48は、ベッド部46に対向して脚柱部47の上端から左方へ延びる。頭部49は、アーム部48の左先端部に連結する部位である。縫製部10は、頭部49に、針棒37、押え棒(図示略)、及び針棒駆動機構36(図2参照)等を備え、針棒37を上下動することで、被縫製物Cに縫目を形成する。針棒37の下端には、縫針44が着脱可能に装着される。縫製部10は、ベッド部46に、図示しない釜機構を備える。
【0013】
移動機構40は、針棒37に対して刺繍枠45に保持された被縫製物Cを相対的に移動可能に構成される。移動機構40は、本体ケース41及びキャリッジ42を備える。本体ケース41は、図示しないX移動機構を収容する。キャリッジ42は、図示しないY移動機構を収容する。刺繍縫製時には、ユーザは、キャリッジ42に、大きさの異なる複数種類の刺繍枠45から選択された1つの刺繍枠45を装着する。刺繍枠45は、Y移動機構及びX移動機構によって、ミシン2に固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される針落ち点に移動される。ミシン2は、刺繍枠45を移動するのと併せて、縫製部10の針棒駆動機構36及び釜機構が駆動することにより、刺繍枠45に保持された被縫製物C上に刺繍模様を形成する。
【0014】
ミシン5は、複数の針棒67を備える多針ミシンである。ミシン5は、本体部81、針棒ケース82、主軸モータ73、針棒ケース用モータ68、複数の針棒67、針棒駆動機構66、シリンダベッド86、針板87、移動機構88、操作部72、左右一対の糸駒台99、及び糸道経路92を備える。本体部81は、針棒ケース82を左右方向に移動可能に支持する。本体部81の内部には、主軸モータ73及び針棒ケース用モータ68が収容される。針棒ケース用モータ68は、針棒ケース82を左右方向に移動可能である。針棒ケース82の内部には、複数の針棒67及び針棒駆動機構66が設けられる。本例のミシン5は、十本の針棒67を備える。十本の針棒67は各々、上下方向に伸び、左右方向に等間隔で配置されている。各針棒67の下端には、縫針84が装着可能である。針棒駆動機構66は、主軸モータ73の回動に応じて、複数の針棒67のうちの、後述する駆動針棒67を上下方向に摺動するように構成されている。シリンダベッド86は、針棒ケース82の下方において、前後方向に筒状に延びる。シリンダベッド86の先端部には、図示しない、釜、及び釜駆動機構が設けられる。釜駆動機構は、釜を回転駆動する。針板87は、シリンダベッド86の上面に設けられた、平面視矩形状の板であり、上下方向に貫通する針穴が形成されている。複数の針棒67のうち、針板87に形成された針穴の直上である駆動位置に配置された針棒67が駆動針棒67である。
【0015】
移動機構88は、針棒ケース82の下方に設けられる。移動機構88は、ホルダ89、Xモータ69、及びYモータ70を備える。ホルダ89は、刺繍枠75を含む複数種類の刺繍枠のうちの一つを取り外し可能に支持する。刺繍枠75は、被縫製物を取り外し可能に保持する。被縫製物は、例えば加工布である。移動機構88は、Xモータ69及びYモータ70を駆動源として、ホルダ89に装着された刺繍枠75を、固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される位置に移動可能である。刺繍座標系のX方向及びY方向は各々、ミシン5の左右方向及び前後方向に対応する。
【0016】
操作部72は、本体部81の右方に設けられる。操作部72は、表示部58、入力部59、及びスタート/ストップスイッチ60を備える。表示部58は、例えば、画像を表示するよう構成された液晶ディスプレイである。入力部59は、各種指示を入力するよう構成されたタッチスクリーンである。スタート/ストップスイッチ60は、縫製の開始又は停止を指示する際に使用される。
【0017】
左右一対の糸駒台99は、本体部81の上面の背面側に設けられる。各糸駒台99には、複数の糸立棒90が設けられる。糸立棒90は、糸駒U4を支持する。上糸96は、糸駒台99に設置された糸駒U4から供給される。上糸96は、糸道経路92を経由して、針棒67の下端に装着された縫針84の目孔に供給される。糸道経路92は、糸案内97と、糸調子器94と、天秤95とを含む。
【0018】
図2を参照して、端末装置1、ミシン2、5の電気的構成を説明する。端末装置1は、CPU6、ROM12、RAM13、記憶部14、通信部15、及び入出力インターフェイス17を備える。CPU6は、端末装置1の制御を司る。CPU6は、バス16を介して、ROM12、RAM13、記憶部14、通信部15、及び入出力インターフェイス17と電気的に接続する。ROM12には、ブートプログラム及びBIOS等が記憶される。RAM13には、一時的なデータが記憶される。記憶部14は、HDD及びSSD等の不揮発性の記憶装置である。記憶部14には、後述のメイン処理の実行に必要な各種設定値が記憶される。通信部15は、端末装置1をネットワーク3に接続するためのインターフェイスである。CPU6は、通信部15を介して、ネットワーク3に接続する他の機器(例えば、ミシン2、5)とデータの送受信を実行できる。入出力インターフェイス17には、表示部18、入力部19、及び撮影部11が接続されている。撮影部11は、CCDやCMOS等の撮像素子及び撮像レンズ等を備えるデジタルカメラである。
【0019】
ミシン2の制御部20は、CPU7、ROM22、RAM23、記憶部24、入出力インターフェイス26、及び通信部27を備えている。CPU7はバス25を介して、ROM22、RAM23、記憶部24、入出力インターフェイス26、及び通信部27と接続されている。入出力インターフェイス26には、駆動回路31から34、入力部29、及びスタート/ストップスイッチ30が接続されている。記憶部24は、不揮発性の記憶装置である。記憶部24は、後述のミシン処理の実行に必要な各種設定値を記憶する。
【0020】
駆動回路31には、主軸モータ35が接続される。駆動回路31は、CPU7からの制御信号に従って、主軸モータ35を駆動する。主軸モータ35の駆動に伴い、ミシン2の主軸(図示略)を介して針棒駆動機構36が駆動される。駆動回路32には、Xモータ38が接続される。駆動回路33には、Yモータ39が接続される。駆動回路32及び33は各々、CPU7からの制御信号に従って、Xモータ38及びYモータ39を駆動する。Xモータ38及びYモータ39の駆動に伴い、制御信号に応じた移動量だけ、移動機構40に装着された刺繍枠45が左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動する。駆動回路34は、CPU7からの制御信号に従って、表示部28に画像を表示する。通信部27は、ミシン2をネットワーク3に接続する。CPU7は、通信部27を介して、ネットワーク3に接続する他の機器(例えば、端末装置1)とデータの送受信を実行できる。
【0021】
ミシン2の動作を簡単に説明する。ミシン2は、刺繍枠45が移動機構40によってX方向及びY方向に移動されるのと併せて、針棒駆動機構36及び釜機構が駆動される。これにより、針棒37に装着された縫針44によって、刺繍枠45に保持された被縫製物Cに対して刺繍模様が縫製される。
【0022】
ミシン5の制御部50は、CPU8、ROM52、RAM53、記憶部54、入出力インターフェイス56、及び通信部57を備えている。CPU8はバス55を介して、ROM52、RAM53、記憶部54、入出力インターフェイス56、及び通信部57と接続されている。入出力インターフェイス56には、駆動回路61から65、入力部59、及びスタート/ストップスイッチ60が接続されている。記憶部54は、不揮発性の記憶装置である。記憶部54は、後述のミシン処理の実行に必要な各種設定値を記憶する。
【0023】
駆動回路61には、主軸モータ73が接続される。駆動回路61は、CPU8からの制御信号に従って、主軸モータ73を駆動する。主軸モータ73の駆動に伴い、ミシン5の主軸(図示略)を介して針棒駆動機構66が駆動され、駆動針棒67が上下動する。駆動回路62には、針棒ケース用モータ68が接続される。駆動回路62は、CPU8からの制御信号に従って、針棒ケース用モータ68を駆動し、本体部81に対し、針棒ケース82を左右方向に移動させる。駆動回路63には、Xモータ69が接続される。駆動回路64には、Yモータ70が接続される。駆動回路63及び64は各々、CPU8からの制御信号に従って、Xモータ69及びYモータ70を駆動する。Xモータ69及びYモータ70の駆動に伴い、制御信号に応じた移動量だけ、移動機構88に装着された刺繍枠75が左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動する。駆動回路65は、CPU8からの制御信号に従って、表示部58に画像を表示する。通信部57は、ミシン5をネットワーク3に接続する。CPU8は、通信部57を介して、ネットワーク3に接続する他の機器(例えば、端末装置1)とデータの送受信を実行できる。
【0024】
ミシン5の動作を簡単に説明する。針棒ケース82が左右に移動することで、十本の針棒67のうち一本が駆動針棒67として選択される。ミシン5は、刺繍枠75が移動機構88によってX方向及びY方向に移動されるのと併せて、針棒駆動機構66及び釜機構が駆動される。これにより、駆動針棒67に装着された縫針44によって、刺繍枠75に保持された被縫製物に対して刺繍模様が縫製される。
【0025】
図3を参照して、記憶部14、24、54の少なくとも何れかに記憶された、糸色テーブルTを説明する。糸色テーブルTは、ミシン2、5で刺繍模様Eを縫製する場合に用いられる糸の識別番号T1、色名T2、及びその他の情報T3を含む。識別番号T1は、例えば、三桁の数字で表される。その他の情報T3は、例えば、カラーコード、糸色固有の図形等の標識、及び識別番号T1又は色名T2に対応する二次元コードの画像等である。二次元コードは、QRコード(登録商標)、VeriCode(ベリコード)、CPコード、AztecCode(アズテックコード)、及びPDF417等から適宜選択されたものでよい。糸色テーブルTが記憶部14に記憶される場合、端末装置1は後述のメイン処理で糸色テーブルTを参照する。糸色テーブルTが記憶部24、54に記憶される場合、ミシン2、5は後述のミシン処理で糸色テーブルTを参照する。
【0026】
図4から図6を参照して、システム4のミシン2のCPU7又はミシン5のCPU8が実行するミシン処理を説明する。以下、ステップをSと略記する。一例として、図5の縫製データDによって表される、刺繍模様Eを縫製する場合を説明する。ミシン2のCPU7は、電源がONにされた後、ユーザから縫製対象の刺繍模様Eが選択された状態で、糸駒検出の開始指示を取得した場合に、記憶部24に記憶されたプログラムをRAM23に読み出す。CPU7は、RAM23に読み出されたプログラムに含まれる指示に従って、以下のステップを有するミシン処理を実行する。同様にミシン5のCPU8は、糸駒検出の開始指示を取得した場合に、記憶部54に記憶されたプログラムをRAM53に読み出し、読み出されたプログラムに含まれる指示に従って、以下のステップを有するミシン処理を実行する。ミシン処理の過程で得られた各種データは、適宜RAM23、53に記憶される。糸駒検出の開始指示は、端末装置1から受信してもよく、入力部29、59から入力されてもよい。ミシン2のCPU7によって実行されるミシン処理と、ミシン5のCPU8によって実行されるミシン処理とは互いに異なるタイミングで実行されるが、説明を簡単にするため、両者を並列に説明する。通常、ミシン2で用いられる糸駒H(図8参照)と、ミシン5で用いられる糸駒U4(図1図10参照)とは、形状及び大きさが互いに異なるが、以下では説明を簡単にするため、糸駒Hを用いて説明する。
【0027】
図4に示すように、CPU7、8は、選択された刺繍模様Eの縫製データDを取得する(S31)。図5に示すように、刺繍模様Eは、「BRASS」、「LAVENDER」、「LILAC」、「SALMON PINK」、「CARMINE」、「LIME GREEN」、及び「MINT GREEN」の七種類の糸駒を使用して縫製される。刺繍模様Eは、使用される糸駒Hの色に応じた八つの部分模様を有する。「LILAC」の糸駒Hは、縫製順序が三番の部分模様の縫製と八番の部分模様の縫製との各々に用いられる。縫製データDは、縫製順序D1、糸色D2、及び座標データD3を含む。縫製順序D1は1以上の整数で表される。糸色D2は、刺繍模様Eを構成する複数の部分模様の縫製に使用される糸の色を示す。糸色D2は、糸色テーブルTに記憶された色名T2でもよいし、糸色の識別番号T1であってもよいし、その他の情報T3に含まれる、糸色固有の図形等の標識等であってもよい。座標データD3は、刺繍模様Eの部分模様毎に設定された縫目の形成位置、つまり、針落ち点の位置を刺繍座標系の座標で示すデータである。即ち座標データD3は、針落ち点毎の複数の座標を表すデータ群を含む。ミシン2のCPU7は、針棒37の下端に装着された縫針44に供給されている上糸の色、つまり現在の糸色を取得する(S32)。縫針44に供給されている上糸は、例えば、記憶部24に記憶されている。CPU7は、例えば「BLACK」を取得する。同様にミシン5のCPU8は、十本の針棒67の各々について、縫針84に供給されている上糸の色、つまり針棒67毎の現在の糸色を取得する(S32)。各縫針84に供給されている上糸の色は、例えば、記憶部54に記憶されている。CPU8は、例えば図6の左側のテーブルQBを取得する。テーブルQBは、針棒番号Q1と、針棒番号Q1で表される針棒67の下端に装着された縫針84に供給された糸色Q2との対応を記憶する。各針棒67には、針棒番号Q1として、右側から順に1から10の数字が割り当てられる。テーブルQBでは、針棒番号Q1が1から10の針棒67には各々、「BLACK」、「BROWN」、「WHITE」、「MINT GREEN」、「GREEN」、「PINK」、「YELLOW」、「CARMINE」、「LIME GREEN」、及び「RED」の糸色Q2が割り当てられている。
【0028】
CPU7、8は、ミシン情報を送信する(S33)。ミシン情報は、ミシン2、5の属性を示す情報を含む。ミシン情報は、針棒の数を表す情報を含む。つまり、ミシン2のミシン情報は、針棒37の数を含み、ミシン5のミシン情報は、針棒67の数を含む。ミシン情報は、現在縫製中の部分模様の縫製順序を含んでもよい。ミシン情報は、S32で取得された現在の糸色が含まれてもよい。CPU7、8は、対象情報をミシン2、5で設定するかを判断する(S34)。対象情報は、端末装置1で撮影された画像の中から、刺繍模様Eの縫製に用いられる糸駒Hを検出する際に用いる情報であり、検出対象の糸駒Hを示す情報である。対象情報がミシン2、5で設定されない場合(S34:NO)、CPU7、8は、縫製データDに基づき、縫製順序D1と、糸色D2とが対応付けられたデータPを縫製順データとして端末装置1に送信する(S36)。データPは、縫製データDから座標データD3を除いたデータである。
【0029】
対象情報がミシン2で設定される場合(S34:YES)、CPU7は、S31で取得された縫製データDと、S32で取得された現在の糸色とに基づき、対象情報を設定する(S35)。CPU7は、S31で取得された縫製データDが示す糸色に、現在の糸色が含まれる場合、CPU7は、当該現在の糸色を検出対象から除外した対象情報を設定する。CPU7は、例えば、縫製順序D1及び糸色D2を含むデータPを対象情報として設定する。CPU7は、縫製順序が次の糸駒Hの糸色R3のみを対象情報に設定してもよい。CPU7は、S35で設定された対象情報であるデータPを縫製順データとして端末装置1に送信する(S36)。
【0030】
同様に、対象情報がミシン5で設定される場合(S34:YES)、CPU8は、S31で取得された縫製データDと、S32で取得された現在の糸色とに基づき、対象情報を設定する(S35)。CPU8は、S31で取得された縫製データDが示す糸色に、現在の糸色が含まれる場合、CPU8は、当該現在の糸色を検出対象から除外した対象情報を設定する。具体的には、図6の右側に示す糸交換後のテーブルQAは、針棒番号Q1及び糸色Q2を含む。テーブルQAのように、CPU8は、縫製データDが示す糸色のうち、現在の糸色に含まれない色を、現在の糸色に含まれない色が割り当てられた針棒67に割り当てる。針棒番号4、8、9が、縫製データDが示す糸色のうち、現在の糸色に含まれる糸色が割り当てられた針棒67を表す。針棒番号2、3、5、6が、糸交換される針棒67を表す。つまり本実施形態では、糸交換する糸駒Hの数が最小となるように、対象情報が設定される。テーブルQAでは、針棒番号Q1が1から10の針棒67には各々、「BLACK」、「BRASS」、「LAVENDER」、「MINT GREEN」、「LILAC」、「SALMON PINK」、「CARMINE」、「LIME GREEN」、及び「RED」の糸色Q2が割り当てられている。CPU8は、例えば、図6に示すように、対象情報Rを設定する。対象情報Rは、糸交換される糸駒Hの縫製順序R1、針棒番号R2、及び糸交換後の糸色R3を含む。CPU8は、S35で設定された対象情報Rを縫製順データとして端末装置1に送信する(S36)。
【0031】
CPU7、8は縫製開始の指示を検出したかを判断する(S37)。ユーザは、端末装置1で実行されるメイン処理により、刺繍模様Eの縫製に使用予定の糸駒Hを見つけ出し、ミシン2、5に装着後、スタートスイッチ/ストップスイッチ30、60を操作して、縫製開始の指示を入力する。縫製開始の指示が検出されていない場合(S37:NO)、CPU7、8は、縫製開始の指示を検出するまで待機する。縫製開始の指示が検出された場合(S37:YES)、CPU7、8は、現在の糸色を更新する(S38)。ミシン2の場合、CPU7は、記憶部24に記憶される現在の糸色を、縫製データDに基づき、次の縫製順序の糸色で上書きして、現在の糸色を更新する。ミシン5の場合、CPU8は、記憶部54に記憶される現在の糸色を、糸交換後のテーブルQAにより上書きして、現在の糸色を更新する。CPU7、8は、S31で取得された縫製データDによって表される刺繍模様Eの縫製に際して、現在の糸色の部分模様の縫製が完了した後においても糸交換が再度必要かを判断する(S39)。CPU7は、縫製順序が一番目から七番目の何れかの部分模様の縫製を開始する指示を取得後のS39では、次に縫製する部分模様が現在の糸色と違う糸色で縫製されるため、糸交換が必要と判断し(S39:YES)、S34と同様に、対象情報をミシン2で設定するかを判断する(S40)。
【0032】
対象情報がミシン2で設定されない場合(S40:NO)、CPU7は、データPと現在の縫製順序とを縫製順データとして端末装置1に送信する(S42)。ミシン2で対象情報を設定する場合(S40:YES)、CPU7は、S31で取得された縫製データDと、S38で更新された現在の糸色とに基づき、対象情報を設定する(S41)。具体的には、CPU7は、縫製順序が現在縫製中の部分模様の次以降の糸色のうち、現在縫製中の部分模様以前に使用されていない糸色を対象情報に設定する。S41の処理をミシン5のCPU8が実行する場合、縫製順序が現在縫製中の部分模様の次以降の糸色のうち、現在縫製中の部分模様以前に使用されていない糸色、且つ、現在の糸色に含まれない糸色を対象情報に設定する。本例では、縫製順序が現在縫製中の部分模様の次以降の糸色のうち、現在縫製中の部分模様以前に使用された糸色は、メイン処理開始時点でミシン2、5に装着されていた、又は既に後述の端末装置1のメイン処理で検出済みである等の理由によりユーザの手元にあると想定されるため、対象情報から除外される。CPU7、8は、S41で設定された対象情報を縫製順データとして端末装置1に送信する(S42)。CPU7は、縫製順序が八番目の部分模様の縫製を開始する指示を取得後のS39では、次に縫製する部分模様は存在しないため、糸交換が不要と判断し(S39:NO)、後述のS43の処理を行う。また、本具体例では例示がないが、次に縫製する部分模様が現在の糸色と同じ糸色で縫製される場合においても、糸交換が不要と判断される。
【0033】
ミシン2のCPU7は、縫製データDに基づき、部分模様を縫製する(S43)。具体例では、一回目のS43では、ミシン2のCPU7は、縫製データDに基づき、移動機構40及び主軸モータ35を駆動し、糸色が「BRASS」であり、縫製順序が一番目の部分模様を縫製する。一方ミシン5のCPU8は、縫製データDに基づき、針棒67毎の現在の糸色、つまり、現在装着されている複数の糸駒Hで縫製可能な一以上の部分模様を、順に縫製する(S43)。具体例ではCPU8は、移動機構88、主軸モータ73、及び針棒ケース用モータ68を駆動し、糸色が「BRASS」であり、縫製順序が一番目の部分模様から、糸色が「LILAC」であり、縫製順序が八番目の部分模様までを連続して縫製する。CPU7、8は、S31で取得された縫製データDに基づき、全ての部分模様を縫製したかを判断する(S44)。ミシン2で縫製順序が一番目から七番目の何れかの部分模様が縫製された後のS44では(S44:NO)、次に縫製する部分模様が存在するため、CPU7は、処理をS37に戻す。S37ではミシン2のユーザは、縫製順序が次の部分模様の縫製に用いる糸駒Hに交換後、縫製開始の指示を入力する。ミシン2で縫製順序が八番目の部分模様が縫製された後のS44では(S44:YES)、次に縫製する部分模様は存在しないため、CPU7は、以上でミシン処理を終了する。ミシン5で縫製順序が一番目から八番目の部分模様が順に縫製された後のS44では(S44:YES)、次に縫製する部分模様は存在しないため、CPU8は、以上でミシン処理を終了する。
【0034】
図5から図8を参照して、システム4の端末装置1のCPU6が実行するメイン処理を説明する。以下、ステップをSと略記する。端末装置1のCPU6は、電源がONにされた後、アプリケーションが起動された状態で、表示部18に表示された開始ボタンB1の選択を検出した場合に、記憶部14に記憶された表示プログラムをRAM13に読み出す。CPU6は、RAM13に読み出された表示プログラムに含まれる指示に従って、以下のステップを有するメイン処理を実行する。一例として、図5の縫製データDによって表される、刺繍模様Eを縫製する場合の縫製順データがミシン2又はミシン5から送信された場合を説明する。ミシン2から縫製順データが送信された場合のメイン処理と、ミシン5から縫製順データが送信された場合のメイン処理は、互いに異なるタイミングで実行されるが、以下では説明を簡単にするために並列に説明する。通常、ミシン2で用いられる糸駒H(図8参照)と、ミシン5で用いられる糸駒U4(図1図10参照)とは、形状及び大きさが互いに異なるが、以下では説明を簡単にするため、糸駒Hを用いて説明する。図8に示すように、糸駒Hは、本体部H1と、本体部H1の外周に巻回された糸H2とを有する。本体部H1は、貫通孔H3が形成された筒状であり、本体部H1の長手方向の両端部に鍔部H4、H5が形成されている。鍔部H4の表面には、二次元コードH7を含むラベルH6が貼付されている。二次元コードH7は、糸駒Hに巻回された糸H2の色を示す情報を表す。二次元コードH7は、製造番号等他の情報を含んでもよい。ミシン2では、糸駒Hは、アーム部48の内部において、左右方向に延びる糸立棒(図示略)に挿通され、支持される。ミシン5では、糸駒Hは、糸駒台99の糸立棒90に挿通され、支持される。ユーザは、撮影部11の撮影範囲内に、複数の糸駒Hを収めるように端末装置1の撮影部11を複数の糸駒H側に向ける。
【0035】
図7に示すように、CPU6は、ミシン処理のS33で送信された、ミシン情報を取得する(S1)。CPU6は、ミシン処理のS36又はS42で送信された縫製順データを取得する(S2)。CPU6は、表示画像の生成に用いるオブジェクト条件を設定する(S3)。表示画像は、撮影部11が撮影した撮影画像に基づき生成される画像であり、撮影画像中の検出対象の糸駒位置を表す画像である。オブジェクト条件は、検出対象の糸駒Hの撮影画像中の位置を表すオブジェクトの表示態様と、表示画像中のオブジェクトの表示数を規定する条件である。本例の端末装置1は、ミシン2から縫製順データを取得した場合、表示態様として、矢印で筒状の糸駒Hの貫通孔H3の位置を指し示す第一条件、及び糸駒Hの貫通孔H3の上方に、糸駒Hの向きに応じた姿勢の縫製順序を数字で示す第二条件の何れかを設定できる。端末装置1は、ミシン5から縫製順データを取得した場合、表示態様として、第一条件、第二条件、及び糸駒Hの貫通孔H3の上方に、糸駒Hの向きに応じた姿勢の針棒番号を数字で示す第三条件の何れかを設定できる。表示数は、オブジェクトの表示数を規定する。表示数は、例えば、1、所定数、及び未使用の糸駒Hの数の何れかを選択できる。未使用の糸駒Hの数は、縫製データDが指定する糸駒Hのうち、縫製に用いられていない糸駒Hの数である。オブジェクト条件は、ユーザが選択可能であってもよいし、ミシン情報及び縫製順データ等に応じて、CPU6が自動的に設定してもよい。
【0036】
CPU6は、対象情報を端末装置1で設定するかを判断する(S4)。対象情報が端末装置1で設定される場合(S4:YES)、CPU6は、S35又はS41と同様に対象情報を設定し、設定された対象情報を取得する(S5)。具体的には、CPU6は、S1で取得されたミシン情報に含まれる糸色及び現在縫製中の部分模様の縫製順序と、S2で取得された縫製順データとに基づき、データPで示される糸駒Hの内、縫製順序が現在の糸色の次以降の糸色で、S3で設定されたオブジェクト条件の表示数の糸駒Hを対象情報に設定する。表示数が1である場合のミシン2についての対象情報として、CPU6は、例えば、縫製順序が一番目の糸駒Hを示す情報を対象情報として設定し、設定された対象情報を取得する。表示数が未使用の糸駒Hの数である場合のミシン5についての対象情報として、CPU6は、例えば、対象情報Rを設定し、設定された対象情報Rを取得する。対象情報を端末装置1で設定しない場合(S4:NO)、CPU6は、S2で取得された縫製順データを対象情報として取得する(S6)。CPU6は、撮影部11を駆動して、撮影部11により撮影された現実空間を表す撮影画像G1を取得する(S7)。ユーザは、撮影部11の撮影範囲内に、所有する複数の糸駒Hの少なくとも一部が収まるように、撮影部11の向きを適宜調整する。
【0037】
CPU6は、S7で取得された撮影画像G1を表示部18に表示する、又は後述のS15の処理で表示された表示画像の表示を継続する(S8)。CPU6は、S7で取得された撮影画像G1を画像処理して、糸駒Hの貫通孔H3の位置を糸駒位置として検出する(S9)。CPU6は、例えば二値化等の画像処理により、撮影画像G1を、背景とのコントラストを強調した画像に変換後、変換された撮影画像G1の中から糸駒HのラベルH6中の二次元コードH7を検出し、二次元コードH7の撮影画像G1中の位置に基づき糸駒位置を検出する。糸駒位置は、糸駒Hの撮影画像G1中の位置を表すものであればよく、二次元コードH7の代表点により示されてもよいし、二次元コードH7の位置、大きさ、及び向きに基づき特定される、糸駒Hの代表点により表されてもよい。本例のCPU6は、糸駒Hの貫通孔H3の中心を糸駒位置とする。二次元コードH7としてQRコード(登録商標)が使用された場合、CPU6は、撮影画像G1内でQRコード(登録商標)の四隅のうち、三隅に配置される同一の切り出しシンボルのパターン検知を利用して、糸駒位置を検出する。具体的には、CPU6は、撮影画像内から切り出しシンボルを複数個検出する処理を実行する。CPU6は、画像内の複数の上記切り出しシンボルの組み合わせからQRコード(登録商標)を一以上検出する。CPU6は、切り出しシンボルの位置により糸駒Hの向きを検出する。糸駒Hの向きの基準は適宜設定されればよい。
【0038】
CPU6は、S9の処理で、一以上の糸駒位置が検出されたかを判断する(S10)。一以上の糸駒位置が検出されていない場合(S10:NO)、CPU6は、処理をS7に戻す。CPU7は、「カメラを糸駒に向けてください。」等のメッセージを表示してもよい。具体例の撮影画像G1では、二次元コードH7の数に応じた十六個の糸駒位置が検出され(S10:YES)、CPU6は、S9で検出された糸駒位置のうち、取得順序が次の糸駒位置を取得する(S11)。撮影画像G1中の糸駒位置の取得順序は適宜設定されればよい。CPU6は、例えば、撮影画像G1の左から右、上から下の順に、糸駒位置の取得順序を設定する。CPU6は、S11で取得された糸駒位置の二次元コードH7を復号し、復号された情報が示す糸駒Hの糸色が、S5又はS6で設定された対象情報が示す検出対象の糸色と同じかを判断する(S12)。検出対象が複数ある場合、CPU6は、復号された糸色と、検出対象の糸色とを縫製順に比較し、復号された糸色が、検出対象に含まれる一又は複数の糸駒のうちの何れかの糸色と同じかを判断する。復号された糸色が、検出対象の糸色ではない場合(S12:NO)、CPU6は、後述のS16の処理を行う。
【0039】
復号された糸色が、検出対象の糸色である場合(S12:YES)、CPU6は、S11で取得した糸駒位置にオブジェクトが表示済みかを判断する(S13)。複数の部分模様からなる刺繍模様Eを縫製する場合、一つの糸色の糸駒Hが、互いに異なる縫製順序の部分模様の縫製に利用される場合がある。図5に示すように、刺繍模様Eの縫製データDには、「LILAC」が、縫製順序が三番と八番の部分模様の縫製に用いられる糸色として含まれる。本例のCPU6は、複数の縫製順序が割り当てられた検出対象の糸駒Hについて、検出対象の糸駒Hに割り当てられた複数の縫製順序における最先の縫製順序を表すオブジェクトを、撮影画像G1上における糸駒位置の周辺に配置するため、S13の処理を行う。CPU6は、検出対象の糸色に対応する縫製順序よりも、先の縫製順序に、同じ糸色が割り当てられている場合に、表示済みと判断する。S11で取得した糸駒位置にオブジェクトを表示済みである場合(S13:YES)、CPU6は、後述のS16の処理を行う。S11で取得した糸駒位置にオブジェクトを表示済みではない場合(S13:NO)、CPU6は撮影画像G1に基づく表示画像であって、S11で取得した糸駒位置を表す表示画像を生成する(S14)。CPU6は、S7で取得された撮影画像G1のうちの検出対象の糸駒位置の周辺に、S3で設定された条件のオブジェクトを順に追加して表示画像を生成する。CPU6は、オブジェクトを内包する最小矩形の下辺の中心が糸駒位置と重なる位置に、オブジェクトを配置する。CPU6は、オブジェクト条件が第二条件及び第三条件の何れかである場合、撮影画像G1上の糸駒位置の周辺に、オブジェクト条件により指定されたオブジェクトを糸駒Hの向きに合わせて変形させて配置することにより、表示画像を生成する。CPU6は、S14で生成された表示画像を表示部18に表示する(S15)。
【0040】
CPU6は、S5、又はS6で設定された全検出対象について、糸駒位置の周辺にオブジェクトを追加した表示画像を生成したかを判断する(S16)。検出対象の全糸駒Hについて、糸駒位置の周辺にオブジェクトを追加した表示画像が生成された場合(S16:YES)、CPU6は後述のS18の処理を行う。少なくとも一部の検出対象について、糸駒位置の周辺にオブジェクトを追加した表示画像が生成されていない場合(S16:NO)、CPU6は、S9で検出された全ての糸駒位置が、S11で取得されたかを判断する(S17)。一部の糸駒位置が、S11で取得されていない場合(S17:NO)、CPU6は、処理をS11に戻す。
【0041】
図8に示すように、ミシン5のオブジェクト条件について、表示数が未使用の糸駒Hの数であり、表示態様に第一条件が設定されている場合、CPU6は、撮影画像G1の検出対象の糸駒位置にオブジェクトC1を表示した表示画像G2を表示部18に表示部18に表示する。オブジェクトC1は、筒状の糸駒Hの貫通孔H3の位置を指し示す矢印である。オブジェクト条件について、表示数が未使用の糸駒Hの数であり、表示態様に第二条件が設定されている場合、CPU6は、撮影画像G1の検出対象の糸駒位置にオブジェクトC2を表示した表示画像G3を表示部18に表示部18に表示する。オブジェクトC2は、糸駒Hの貫通孔H3の上方に、糸駒Hの向きに応じた姿勢の縫製順序を表す数字である。オブジェクト条件について、表示数が未使用の糸駒Hの数であり、表示態様に第三条件が設定されている場合、CPU6は、撮影画像G1の検出対象の糸駒位置にオブジェクトC3を表示した表示画像G4を表示部18に表示部18に表示する。オブジェクトC3は、糸駒Hの貫通孔H3の上方に、糸駒Hの向きに応じた姿勢の針棒番号を表す数字である。表示画像G2からG4は何れも、右上部に停止ボタンB2を含む。停止ボタンB2は、メイン処理を終了することを指示する。オブジェクトC1は、糸駒Hの向きに関わらず、一定の形状で表示される。オブジェクトC2、C3は、S9で検出された糸駒Hの向きに応じて、変形されている。ミシン2のオブジェクト条件について、表示数が所定数4であり、表示態様に第一条件が設定されている場合も、CPU6は表示画像G2を生成し、表示画像G2を表示部18に表示する。ミシン2のオブジェクト条件について、表示数が所定数4であり、表示態様に第二条件が設定されている場合も、CPU6は表示画像G3を生成し、表示画像G3を表示部18に表示する。
【0042】
図9に示すように、ミシン2のオブジェクト条件について、表示数が1であり、表示態様に第一条件が設定されている場合、CPU6は、撮影画像G1の検出対象の糸駒位置にオブジェクトC1を表示した表示画像G5を表示部18に表示部18に表示する。オブジェクト条件について、表示数が1であり、表示態様に第二条件が設定されている場合、CPU6は、撮影画像G1の検出対象の糸駒位置にオブジェクトC2を表示した表示画像G6を表示部18に表示部18に表示する。表示画像G5、G6は何れも、右上部に停止ボタンB2を含む。停止ボタンB2は、メイン処理を終了することを指示する。オブジェクトC1は、糸駒Hの向きに関わらず、一定の形状で表示される。オブジェクトC2は、糸駒Hの向きに応じて、変形されている。
【0043】
S9で検出された全部の糸駒位置が、S11で取得された場合(S17:YES)、CPU6は、オブジェクトの表示を終了する指示が検出されたかを判断する(S18)。ユーザは、オブジェクトの表示を終了する場合、停止ボタンB2を選択する。オブジェクトの表示を終了する指示を検出していない場合(S18:YES)、CPU6は、処理をS7に戻す。オブジェクトの表示を終了する指示を検出した場合(S18:NO)、CPU6は、以上でメイン処理を終了する。メイン処理終了後、表示部18に表示されていた表示画像は静止画として表示部18に表示されたままであってもよいし、表示部18での表示が終了されてもよい。
【0044】
上記実施形態において、端末装置1、CPU6、撮影部11、通信部15、表示部18、入力部19は各々、本発明の表示装置、制御部、撮影部、通信部、表示部、及び入力部の一例である。S2の処理は、本発明の画像取得処理、画像取得工程の一例である。S5、S6は、本発明の情報取得処理、情報取得工程の一例である。S9からS12の処理は、本発明の検出処理、検出工程の一例である。S14の処理は、本発明の画像生成処理、画像生成工程の一例である。S15の処理は、表示制御処理、表示制御工程の一例である。
【0045】
上記実施形態のシステム4の端末装置1は、撮影部11と、表示部18と、CPU6とを備える。CPU6は、表示プログラムに従い以下の処理を実行する。CPU6は、撮影部11により撮影された、現実空間を表す撮影画像G1を取得する(S7)。一例として、CPU6は、検出対象の糸駒Hを示す対象情報としてデータPを取得する(S5、S6)。CPU6は、撮影画像G1と、対象情報とに基づき、検出対象の糸駒Hについて、撮影画像G1上の糸駒位置を検出する(S9からS12)。CPU6は、撮影画像G1に基づく表示画像G2であって、糸駒位置を表す表示画像G2を生成する(S14)。CPU6は、表示画像G2を表示部18に表示する(S15)。端末装置1は、現実空間を表す撮影画像G1に基づいて生成された、検出対象の糸駒Hの位置を示す表示画像G2を表示部18に表示させる。したがって、端末装置1は、ユーザが、検出対象の糸駒Hを探す際に、所持している糸駒H群を端末装置1の撮影部11で撮影し、表示部18に表示される表示画像G2を確認することにより、任意の場所に配置された複数の糸駒Hの中から検出対象の糸駒Hを容易に発見することに貢献する。
【0046】
S9からS12の処理では、CPU6は、撮影画像G1と、対象情報とに基づき、撮影画像G1上における検出対象の糸駒Hの二次元コードH7の位置を検出することにより、糸駒位置を検出する。端末装置1は、二次元コードH7を用いて検出処理を行うことにより、撮影画像G1の中から検出対象の糸駒Hの位置を検出する処理を比較的簡単にでき、検出精度を上げることに貢献する。
【0047】
S14の処理では、CPU6は、撮影画像G1上の糸駒位置の周辺に、特定のオブジェクトC1を配置することにより、検出対象の糸駒位置を表す表示画像G2を生成する。端末装置1は、撮影画像G1上の糸駒位置の周辺に特定のオブジェクトを配置するという比較的簡単な処理により、表示画像G2を生成できる。したがって、端末装置1は、ユーザが表示画像G2の特定のオブジェクトC1を参照することで、検出対象の糸駒Hの位置を容易に確認することに貢献する。
【0048】
対象情報は、複数種類の糸駒Hを用いて縫製を行う場合の、縫製順序と複数種類の糸駒Hの各々との対応を示す縫製順データを含む。S9からS12の処理では、CPU6は、撮影画像G1と、対象情報とに基づき、複数種類の糸駒Hの各々の少なくとも一部を検出対象として、糸駒位置を検出する。S14の処理では、CPU6は、複数種類の糸駒Hの各々について、撮影画像G1上における検出対象の糸駒位置を表す表示画像G2を生成する。端末装置1は、縫製に使用する複数種類の糸駒Hをまとめて検出することに貢献する。したがって、端末装置1は、ユーザが、複数種類の糸駒Hを用いて縫製する場合に、複数種類の糸駒Hを用意する作業を一度にまとめて行うことに貢献する。
【0049】
S14の処理では、CPU6は、撮影画像G1上における糸駒位置各々の周辺に、複数種類の糸駒Hの各々に対応する縫製順序を表すオブジェクトC2を各々配置することにより、検出対象の糸駒位置を表す表示画像G3を生成する。端末装置1は、検出対象の糸駒Hの周辺に、糸駒Hの縫製順序を表すオブジェクトC2表示するので、ユーザが縫製データDに従って縫製する場合に必要な糸駒Hを、縫製順序に従って準備することに貢献する。したがって、端末装置1は、複数種類の糸駒Hを用いて縫製する場合にも、縫製順序が表示されない場合に比べ、縫製作業を効率化することに貢献する。
【0050】
S14の処理では、CPU6は、縫製順データに基づき、複数種類の糸駒Hの中の、複数の縫製順序が割り当てられた検出対象の糸駒Hについて、検出対象の糸駒Hに割り当てられた複数の縫製順序における最先の縫製順序を表すオブジェクトC2を、撮影画像G1上における糸駒位置の周辺に配置することにより、検出対象の糸駒位置を表す表示画像G3を生成する。端末装置1は、複数回同じ糸駒Hが使用される場合であっても、糸駒位置の周辺に最先の縫製順序を表すオブジェクトC2を配置することで、糸駒位置を分かりやすく表示することに貢献する。端末装置1は、一つの糸駒Hの糸駒位置に、縫製順序を示すオブジェクトC2が複数配置される場合に比べ、ユーザが必要な糸駒Hを特定する作業の効率を向上させることに貢献する。
【0051】
対象情報Rは、複数の針棒67を備える多針ミシン5において、複数種類の糸駒Hを用いて縫製を行う場合に、複数種類の糸駒Hの各々を複数の針棒67の何れかに割り当てた針棒データを含む。S14の処理では、CPU6は、複数種類の糸駒Hの各々を検出対象として、撮影画像G1上における糸駒位置各々の周辺に、複数の針棒67のうちの複数種類の糸駒Hの各々に対応する針棒67を表すオブジェクトC3を各々配置することで、検出対象の糸駒位置を表す表示画像G4を生成する。端末装置1は、複数の針棒67を備える多針ミシン5において、複数種類の糸駒Hを用いて縫製を行う場合に、表示画像G4に表示された糸駒Hを複数の針棒67のうちのどの針棒67に装着するか表示することで、ユーザの縫製作業を容易にすることに貢献する。
【0052】
端末装置1は、撮影部11による撮影の開始指示及び停止指示を入力する入力部19を備える。CPU6は、入力部19により開始指示が入力されてから、停止指示が入力されるまでの撮影期間において、S7の処理、S9から12の処理、S14の処理、及びS15の処理を繰り返し実行する(S18:NO)。端末装置1は、撮影期間中はリアルタイムで表示画像を連続して更新し、AR(Augmented Reality)表示するので、ユーザが端末装置1により撮影部11の撮影範囲を変更しながら表示部18を確認し、効率的に糸駒Hを発見することに貢献する。
【0053】
端末装置1はミシン2、5と通信するための通信部15を備える。検出対象の糸駒Hは、縫製において最初に使用される予定の糸駒H又は縫製において次に使用される予定の糸駒Hである。S2の処理では、CPU6は、通信部15を介して、ミシン2、5から対象情報を取得する。端末装置1は、ミシン2、5と通信を行い、ミシン2、5から、縫製において最初に使用される予定の糸駒H又は次に使用する予定の糸駒Hの対象情報を取得することにより、ユーザが最初又は次に必要な糸駒Hを容易に準備することに貢献する。
【0054】
S9からS12の処理では、CPU6は、撮影画像G1と、対象情報とに基づき、検出対象の糸駒Hの撮影画像G1上の糸駒位置と、糸駒Hの向きとを検出する。S14の処理では、CPU6は、撮影画像G1上の糸駒位置の周辺に、特定のオブジェクトC2を糸駒Hの向きに合わせて配置することにより、検出対象の糸駒位置と糸駒Hの向きとを表す表示画像G3を生成する。端末装置1は、ユーザが、表示画像G3中の特定のオブジェクトC2の向きに基づいて、現実空間において、検出対象の糸駒Hがどの向きで配置されているかを把握することに貢献する。
【0055】
本発明の表示プログラム、表示方法、及び表示装置は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
【0056】
本発明は種々の態様で実行可能であり、例えば、表示プログラムを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体、並びに、表示装置及びミシンを備える表示システム等の形態で実現されてもよい。
【0057】
(A)表示システム4は、ミシン2及びミシン5の何れかのみを備えてもよい。表示システム4が備えるミシンの種類、数は適宜変更されてよい。ミシン2、5と、端末装置1とは有線で接続されてもよい。ミシン2、5の構成は適宜変更してよい。ミシン5の針棒67の本数は適宜変更されてよい。端末装置1の構成は、適宜変更されてよく、例えば、デジタルカメラ等でもよい。端末装置1の表示部18は、画像を表示可能であればよく、例えば、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プラズマチューブアレイディスプレイ、電気泳動等を利用した電子ペーパーディスプレイ等でもよい。端末装置1の入力部19は、タッチスクリーンの他、キーボード、マウス、及びジョイスティック等でもよい。
【0058】
(B)図7のメイン処理を実行させるための指令を含むプログラムは、端末装置1が有するCPU6が、プログラムを実行するまでに、記憶部14に記憶されればよい。したがって、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。各装置が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、記憶部等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。同様に、図4のミシン処理を実行させるための指令を含むプログラムは、ミシン2が有するCPU7及びミシン5が有するCPU8の少なくとも何れかが、プログラムを実行するまでに、対応する記憶部24、54に記憶されればよい。したがって、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。各装置が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、記憶部等の記憶装置に記憶されてもよい。
【0059】
(C)メイン処理の各ステップは、CPU6によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。同様に、ミシン処理の各ステップは、CPU7又はCPU8によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器によって実行されてもよい。メイン処理、ミシン処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。メイン処理、ミシン処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。メイン処理、及びミシン処理に、以下の変更が適宜加えられてもよい。
【0060】
メイン処理は、ミシン2で刺繍模様が縫製される場合の処理のみを含んでよいし、ミシン5で刺繍模様が縫製される場合の処理のみが含まれてもよい。システム4は、対象情報をミシン2、5で設定するか、端末装置1で設定するかを選択できなくてもよく、予め対象情報がどの装置で設定されるか決定されていてもよい。
【0061】
糸駒位置は、糸駒Hの代表点を示す位置であればよい。糸駒Hの代表点は適宜変更されてよい。糸駒位置の周辺とは、糸駒位置の定義によって適宜設定されてよく、糸駒位置とオブジェクトが重なる位置であってもよいし、糸駒位置とオブジェクトとの距離が所定範囲となる位置であってもよい。所定範囲は、糸駒Hの形状及び大きさと、オブジェクトの形状、大きさ、及び配置とに応じて適宜設定されればよい。所定範囲は、例えば、糸駒Hの鍔部H4の半径で表される。オブジェクトは、オブジェクトの一部が糸駒Hと重なる位置に配置されてもよい。撮影画像G1中から検出対象の糸駒位置を検出する処理は適宜変更されてよい。CPU6は、撮影画像G1に対して機械学習又は深層学習により生成された識別モデルを適用することで、糸駒Hの形状及び大きさと、糸駒Hの糸色とを識別して、検出対象の糸駒位置を検出してもよい。この場合、照明等の撮影条件に応じて、糸駒Hの色が異なるため、メイン処理が実行される撮影条件で、色見本を撮影した結果に基づき、撮影画像G1が補正されることが好ましい。CPU6は、検出対象の二次元コードH7と、撮影画像G1とを比較して、撮影画像中から検出対象の二次元コードH7を検出することで、検出対象の糸駒位置を検出してもよい。この場合、検出対象の二次元コードH7の画像は、端末装置1で生成されてもよいし、ミシン2又はミシン5で生成され、端末装置1に送信されてもよい。
【0062】
糸駒Hは、図10に示す変形例の糸駒U1からU4のように適宜変更されてよく、CPU6は、糸駒U1からU4に応じて、検出方法を変更してもよい。図10では、糸駒Hが有する構成と同じ構成には同じ符号を付与している。糸駒U1は、本体部H1の表面に添付された、ラベルU5に、糸駒U1の糸H2の色に応じた図形J1が配置されている。この場合、CPU6は、撮影画像上における検出対象の糸駒Hの図形J1の位置を検出することにより、糸駒位置を検出してもよい。糸駒U2は、本体部H1の表面に添付された、ラベルU6に、糸駒U2の糸H2の色に応じた識別番号J2が配置されている。識別番号J2は、一例として、アラビア数字で表される。この場合、CPU6は、OCR(Optical Character Recognition/Reader)処理を行い、撮影画像上における検出対象の糸駒Hの識別番号J2の位置を検出することにより、糸駒位置を検出してもよい。糸駒U3は、本体部H1の表面に添付された、ラベルU7に、糸駒U3の糸H2の色に応じた糸色J3が配置されている。糸色J3は、一例として、アルファベットの文字で表される。この場合、CPU6は、OCR処理を行い、撮影画像上における検出対象の糸駒Hの糸色J3の位置を検出することにより、糸駒位置を検出してもよい。糸駒U4は、ミシン5に装着される糸駒であり、鍔部U9と、筒状部U10とを有する。筒状部U10の外周には糸U8が巻回されている。糸駒U4は、筒状部U10の上端部と、鍔部U9の外周縁部との各々に二次元コードH7を配置する。この場合、CPU6は、撮影画像上における検出対象の糸駒Hの二次元コードH7の位置を検出することにより、糸駒位置を検出してもよい。糸駒U4において、二次元コードH7は、図形J1、識別番号J2、及び糸色J3の少なくとも何れかに置き換えられてもよい。
【0063】
対象情報は、縫製順序が次の部分模様の縫製に用いられる糸駒Hの色のみを含んでもよいし、縫製順序が次以降の所定個の部分模様の縫製に用いられる糸駒Hの色を含んでもよい。所定個は、ユーザが設定できてもよいし、端末装置1及びミシン2、5により自動で設定されてもよい。対象情報は、縫製順序が現在縫製中の部分模様の次以降の糸色のうち、現在縫製中の部分模様以前に使用された糸色の糸駒を対象情報に含めてもよい。ミシン2、5は、糸交換で取り外される糸駒Hが、縫製順序が現在縫製中の部分模様の次以降で使用される場合に、当該糸駒Hが再度使用される予定である旨を表示部28、58に表示して報知してもよい。オブジェクトC2、C3の少なくとも何れかは、糸駒Hの向きに応じて、変形されなくてもよい。オブジェクトC1は、糸駒Hの向きに応じて、変形されてもよい。
【0064】
オブジェクトは、矢印以外の図形であってもよいし、数字以外のアルファベット等の各種文字列であってもよい。オブジェクトは、ユーザが設定したお気に入りの図形、オリジナルアイコン等であってもよい。オブジェクトが文字列である場合、「first」、「second」等のアルファベット文字により、縫製順序又は針棒番号を表してもよいし、糸駒Hの糸色又は識別番号を表してもよい。縫製順序は、刺繍模様E全体の縫製順序であってもよいし、現在縫製中の部分模様の縫製順序を0、現在縫製中の部分模様の次に縫製される部分模様の縫製順序を1とする、順序を表してもよい。オブジェクトの色、大きさ、配置は、適宜変更されてよい。オブジェクトの色は、撮影画像中に目立つように、撮影画像中に検出されない色が優先して設定されてもよいし、黄色に、黒の縁取り等、コントラストの大きい、複数の色が設定されてもよい。オブジェクトの大きさは、撮影画像中の糸駒Hの大きさに応じて変更されてもよい。オブジェクトの配置は、検出対象の糸駒Hの周辺であればよく、検出対象の糸駒Hの左方、右方、下方、右斜め上方、左斜め上方、右斜め下方、及び左斜め下方の何れかであってもよい。オブジェクトの色、大きさ、配置は、ユーザが設定可能であってもよいし、端末装置1及びミシン2、5が自動で設定してもよい。
【0065】
表示画像の生成方法は適宜変更されてよい。糸駒位置は、オブジェクトにより示されなくてもよい。CPU6は、例えば、撮影画像G1中の検出対象の糸駒Hの輪郭が所定の太さ、且つ所定の色の線により強調された表示画像を生成してもよい。CPU6は、例えば、撮影画像G1中の検出対象の糸駒Hの色を変更する、又は検出対象の糸駒Hを点滅表示させる表示画像を生成してもよい。表示画像は、各種画像処理を経た撮影画像のうちの、検出対象の周辺にオブジェクトを配置することで生成されてもよい。各種画像処理は、例えば、モノクロ処理、グレースケール処理等を含む。表示画像の更新頻度は適宜変更されてよい。表示画像は静止画でもよい。CPU6は、検出対象が複数の糸駒Hを含む場合、検出対象に含まれる複数の糸駒H毎に表示画像を生成してもよい。CPU6は、検出対象が複数の糸駒Hを含む場合、検出対象に含まれる複数の糸駒Hの全てが検出されたか否かを示す情報を表示画像に含めてもよいし、表示画像とは別に表示してもよい。
【0066】
刺繍模様Eがミシン5で縫製される場合、糸駒Hを針棒67に割り当てる処理は、ミシン5のみで実行可能であってもよいし、端末装置1のみで実行可能であってもよい。ユーザは、オブジェクト条件が互いに異なる表示画像G2からG6を切り替え可能であってもよい。二次元コードH7が、糸駒Hの製造番号を含む場合、且つ、撮影画像G1から同じ色の糸駒Hが複数検出された場合、CPU6は、同じ色の複数の糸駒Hのうち、製造番号が一番小さい、つまり、製造時期が最も古い糸駒Hだけに、オブジェクトを表示してもよい。一つの糸駒Hが縫製順序の互いに異なる部分模様の縫製に用いられる場合、CPU6は、最先の縫製順序だけでなく、二以上の縫製順序を表すオブジェクトを糸駒位置の周辺に配置した表示画像を生成してもよい。CPU6は、最先の縫製順序のオブジェクトのみを糸駒位置の周辺に配置する場合、最先の縫製順序以外を対象情報から除外し、S13の処理を省略してもよい。縫製順データ、ミシン情報の少なくとも何れかは、ミシン2、5から取得されなくてもよく、ユーザが入力部19を介して手入力してもよい。その場合、端末装置1は、通信部15を備えず、ミシン2、5と通信できなくてもよい。ミシン2、5の現在の糸色は、端末装置1の撮影画像に基づき検出されてもよい。
【0067】
二次元コードH7は、糸駒Hに巻回された糸H2の色を示す情報を表すが、糸駒Hを識別できればこの構成に限定されない。例えば、二次元コードH7は、識別番号T1等の情報であってもよい。上記変形例は矛盾の内範囲で適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1:端末装置、2、5:ミシン、6:CPU、11:撮影部、15:通信部、18:表示部、19:入力部、67:針棒、C1からC3:オブジェクト、G1:撮影画像、G2からG5:表示画像、H、及びU1からU4:糸駒、H7:二次元コード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10