(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018148
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エジェクタ、搬送装置、並びに搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 53/42 20060101AFI20240201BHJP
E02F 5/12 20060101ALI20240201BHJP
E02F 5/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65G53/42
E02F5/12
E02F5/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121276
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】出口 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】向本 森生
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】坂本 諭
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 里衣
【テーマコード(参考)】
3F047
【Fターム(参考)】
3F047AA03
3F047BA02
(57)【要約】
【課題】ディフューザ部内における閉塞を抑制できるエジェクタ、該エジェクタを備える搬送装置、及び搬送方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1主流路と、該第1主流路に対して周囲から圧縮空気を供給する吸引口と、を有する筒状の金属製本体部と、流れ方向に沿って流路断面積が拡大する第2主流路を有する樹脂製ディフューザ部と、を備え、前記第1主流路と前記第2主流路が連通した流路を形成し、被搬送物が前記第1主流路から前記第2主流路へと流れるように、前記樹脂製ディフューザ部と前記金属製本体部とを接合した、エジェクタ。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主流路と、該第1主流路に対して周囲から圧縮空気を供給する吸引口と、を有する筒状の金属製本体部と、
流れ方向に沿って流路断面積が拡大する第2主流路を有する樹脂製ディフューザ部と、を備え、
前記第1主流路と前記第2主流路が連通した流路を形成し、被搬送物が前記第1主流路から前記第2主流路へと流れるように、前記樹脂製ディフューザ部と前記金属製本体部とを接合した、
エジェクタ。
【請求項2】
前記第1主流路の一部が、前記金属製本体部に内設されたノズル部により構成され、
前記ノズル部は、先端にノズル口を有する先細り形状の筒体である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項3】
前記樹脂製ディフューザ部の外径が、流れ方向に沿って一定である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項4】
前記被搬送物が、粒状混合物である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項5】
前記第2主流路の内表面の最大高さ粗さが、0.32μmを超え56μm以下である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項6】
前記第2主流路の内表面の動摩擦係数が、0.3以下である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項7】
前記第2主流路の内表面の水の接触角が、55度以上である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項8】
前記第2主流路の内表面のサンドスラリー摩耗法による摩耗量が、10mg以下である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項9】
前記第2主流路の内表面の促進暴露試験後の引張伸びの保持率が、50%以上である、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項10】
前記樹脂製ディフューザ部が、ポリエチレンを含む、
請求項1に記載のエジェクタ。
【請求項11】
前記ポリエチレンの粘度平均分子量が、1.0×106以上である、
請求項10に記載のエジェクタ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のエジェクタと、
前記エジェクタの送入口に接続され、該送入口に対して被搬送物を搬送する第1搬送管と、
前記エジェクタの送出口に接続され、該送出口に対して前記被搬送物を搬送する第2搬送管と、
前記エジェクタが有する吸引口に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、を備える、
搬送装置。
【請求項13】
請求項12に記載の搬送装置を使用した被搬送物の搬送方法であって、
コンプレッサにより、エジェクタが有する吸引口に対して圧縮空気を供給することにより、前記被搬送物を前記エジェクタから第2搬送管へと搬送する、
搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エジェクタ、エジェクタを備える搬送装置、並びにエジェクタを用いた搬送方法搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事現場では、頻繁に土砂の掘削作業や埋戻作業が行われる。重機が使用できる現場であれば重機を用いて掘削作業や埋戻作業を行うことができるが、重機が使用できない現場においては、人力で掘削作業や埋戻作業を行う必要が生じる。しかし、そのような人力による作業は、生産性を低下する要因となる。
【0003】
そこで、掘削作業や埋戻作業における土砂の搬送手段として、従来から種々の技術が開発されている。例えば、特許文献1には、搬送管の内面への土砂の付着を抑制することができる搬送方法として、圧縮空気を供給するコンプレッサと、コンプレッサからの圧縮空気を搬送管に送り込むエジェクタと、コンプレッサ及びエジェクタを接続するホースと、を備える搬送手段を用い、搬送管の内部に、搬送管の内面と土砂との摩擦を低減する低摩擦素材を配置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するように、土砂の搬送では搬送管の内面への土砂が付着し、搬送管が閉塞するという問題がある。本発明者らはこの閉塞の問題についてさらに検討を進めたところ、搬送管より上流のエジェクタのディフューザ部内においても閉塞が生じやすいことが分かってきた。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ディフューザ部内における閉塞を抑制できるエジェクタ、該エジェクタを備える搬送装置、及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意検討したところ、所定の樹脂製ディフューザ部を用いることにより上記問題点を解決し得ることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
第1主流路と、該第1主流路に対して周囲から圧縮空気を供給する吸引口と、を有する筒状の金属製本体部と、
流れ方向に沿って流路断面積が拡大する第2主流路を有する樹脂製ディフューザ部と、を備え、
前記第1主流路と前記第2主流路が連通した流路を形成し、被搬送物が前記第1主流路から前記第2主流路へと流れるように、前記樹脂製ディフューザ部と前記金属製本体部とを接合した、
エジェクタ。
〔2〕
前記第1主流路の一部が、前記金属製本体部に内設されたノズル部により構成され、
前記ノズル部は、先端にノズル口を有する先細り形状の筒体である、
〔1〕に記載のエジェクタ。
〔3〕
前記樹脂製ディフューザ部の外径が、流れ方向に沿って一定である、
〔1〕又は〔2〕に記載のエジェクタ。
〔4〕
前記被搬送物が、粒状混合物である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のエジェクタ。
〔5〕
前記第2主流路の内表面の最大高さ粗さが、0.32μmを超え56μm以下である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のエジェクタ。
〔6〕
前記第2主流路の内表面の動摩擦係数が、0.3以下である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のエジェクタ。
〔7〕
前記第2主流路の内表面の水の接触角が、55度以上である、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のエジェクタ。
〔8〕
前記第2主流路の内表面のサンドスラリー摩耗法による摩耗量が、10mg以下である、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のエジェクタ。
〔9〕
前記第2主流路の内表面の促進暴露試験後の引張伸びの保持率が、50%以上である、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載のエジェクタ。
〔10〕
前記樹脂製ディフューザ部が、ポリエチレンを含む、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載のエジェクタ。
〔11〕
前記ポリエチレンの粘度平均分子量が、1.0×106以上である、
〔10〕に記載のエジェクタ。
〔12〕
〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載のエジェクタと、
前記エジェクタの送入口に接続され、該送入口に対して被搬送物を搬送する第1搬送管と、
前記エジェクタの送出口に接続され、該送出口に対して前記被搬送物を搬送する第2搬送管と、
前記エジェクタが有する吸引口に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、を備える、
搬送装置。
〔13〕
〔12〕に記載の搬送装置を使用した被搬送物の搬送方法であって、
コンプレッサにより、エジェクタが有する吸引口に対して圧縮空気を供給することにより、前記被搬送物を前記エジェクタから第2搬送管へと搬送する、
搬送方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ディフューザ部内における閉塞を抑制できるエジェクタ、該エジェクタを備える搬送装置、及び搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本実施形態のエジェクタの一例の断面図を示す。
【
図1B】本実施形態のエジェクタの他の例の断面図を示す。
【
図2】本実施形態に係る土砂の搬送装置の概略構成を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0012】
1.エジェクタ
本実施形態のエジェクタは、第1主流路と、該第1主流路に対して周囲から圧縮空気を供給する吸引口と、を有する筒状の金属製本体部と、流れ方向に沿って流路断面積が拡大する第2主流路を有する樹脂製ディフューザ部と、を備え、第1主流路と第2主流路が連通した流路を形成し、被搬送物が第1主流路から第2主流路へと流れるように、樹脂製ディフューザ部と金属製本体部とを接合する。
【0013】
図1A及び
図1Bに、本実施形態のエジェクタの一例の断面図を示す。以下、
図1A及び
図1Bを参照しつつ、本発明について説明する。本実施形態のエジェクタ100は金属製本体部10と樹脂製ディフューザ部20とを有する。
【0014】
エジェクタはポンプなどの機械的運動によらずに、圧縮空気から直接真空を作ることができる装置である。本実施形態のエジェクタ100においては、金属製本体部10に圧縮空気が供給され、樹脂製ディフューザ部20に流入する。樹脂製ディフューザ部20に流入する空気噴流に周囲の空気や被搬送物が引き込まれるとともに、供給口16よりも上流部に負圧が生じる。これによって、送入口13から被搬送物が搬入され、送出口22から被搬送物が搬出される。
【0015】
なお、本実施形態のエジェクタ100は、土木用途に限らず、各種工業用途に用いることができる。被搬送物は、特に限定されないが、例えば、粒状混合物であってもよい。そのような、本実施形態のエジェクタ100が搬送する被搬送物は、特に限定されず、土砂、砂、含水土砂、砂利、砕石、セメント、生コン、モルタル、金属粉、ウッドチップ、軽石、火山灰などが挙げられる。
【0016】
1.1.金属製本体部
図1A及び
図1Bに示すように、金属製本体部10は、第1主流路11と、吸引口12と、送入口13と、第1接続口14と、を有する。
【0017】
第1主流路11は、送入口13から第1接続口14へと、流れ方向Fに沿って、被搬送物を搬送する流路である。そして、第1主流路11には、その周囲から圧縮空気が供給される。吸引口12は、金属製本体部10の外周に設けられていてもよく、金属製本体部10の周囲方向から、第1主流路11に対して圧縮空気を供給する。
【0018】
吸引口12には、エアホース(不図示)が接続されていてもよい。吸引口12は、エアホースを介してコンプレッサ(不図示)と接続されていてもよい。これにより、吸引口12には、コンプレッサが生成した圧縮空気がエアホースを介して供給される。吸引口12に圧縮空気を供給する構成はこれに制限されず、公知の手段を用いることができる。
【0019】
吸引口12に供給された圧縮空気は、金属製本体部10の周囲方向から、第1主流路11に供給される。例えば、
図1A及び
図1Bに示すように、吸引口12が金属製本体部10の周囲に設けられており、そこから導入された圧縮空気の吸引流は導入方向に沿って、圧縮空気路15と供給口16を通って、周囲から内側の第1主流路11に供給されてもよい。
【0020】
圧縮空気路15は、吸引口12に供給された圧縮空気が第1主流路11に供給されるまでに通過する通路である。吸引口12は、圧縮空気路15における吸引流の入口であり、供給口16は圧縮空気路15における吸引流の出口であるということもできる。
【0021】
供給口16は第1主流路11に圧縮空気の吸引流を供給する入口ということもできる。したがって、供給口16は第1主流路11への吸引流の導入方向を調整する機能を有してもよい。また、供給口16の口形や圧縮空気路15の口径や経路は、圧縮空気の吸引流の流速を調整する機能を有してもよい。例えば、
図1A及び
図1Bに示すように、供給口16は第1主流路11の被搬送物の流れ方向F1に沿った方向へと圧縮空気の吸引流供給するように構成されていてもよい。
【0022】
第1主流路11の一部は、金属製本体部10に内設されたノズル部17により構成されてもよい。また、ノズル部17は、先端にノズル口18を有する先細り形状の筒体であってもよい。これにより、樹脂製ディフューザ部20において流れ速度が向上しやすくなり閉塞がより抑制される傾向にある。
【0023】
1.2.樹脂製ディフューザ部
樹脂製ディフューザ部20は、流れ方向Fに沿って流路断面積Sが拡大する第2主流路21を有する。樹脂製ディフューザ部20と金属製本体部10は、第1接続口14と第2接続口24で接続されることにより、第1主流路と第2主流路が連通した流路を形成する。これにより、被搬送物が第1主流路11から第2主流路21へと流れるように、接合される。
【0024】
第2主流路21は、流れ方向Fに沿って流路断面積Sが拡大しており、送出口22へ被搬送物を搬送する流路である。樹脂製ディフューザ部20は合流部23を有してもよい。合流部23では、供給口16から供給される圧縮空気の吸引流と、第1主流路11から供給される被搬送物とが合流し、混合される。合流部23では、吸引流と被搬送物とが合流し、運動量の交換が行われてもよい。
【0025】
第2主流路21は、流れ方向Fにおいて合流部23の下流に位置していてもよい。吸引流と被搬送物との運動量交換後に、吸引流と被搬送物の混合流体は第2主流路21内に導入される。流れ方向Fに沿って流路断面積Sが拡大する第2主流路21では、混合流体は速度エネルギーを消費して速度を減じつつ圧力を回復して送出口22へ送り出される。
【0026】
第2主流路21内の混合流体は流れが速いほう(第2接続口24側)から遅い方(送出口22側)へ流れるため、流れが不安定になりやすい傾向にある。とりわけ、被搬送物として土砂などの固形物を多量に搬送しようとすると、その流れはより不安定となり、樹脂製ディフューザ部20において閉塞が生じやすい結果となる。
【0027】
本実施形態においては、樹脂製ディフューザ部20を用いることで、第2主流路21内の混合流体の流れが不安定になることを抑制し、閉塞を生じにくくすることができる。この理由は特に制限されないが、金属製より樹脂製のほうが土砂などの固形物に対する摩擦係数が低くなりやすく、混合流体の流れの不安定化を助長する要因が少ないことが挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
また、流路断面積Sが拡大する第2主流路21では、その拡大の広がり角が小さいうちは、混合流体は、第2主流路21の壁面に沿って安定して流れる。しかしながら、徐々に広がり角を大きくするにつれて、混合流体は第2主流路21の壁面に沿って流れにくくなり、その部分では逆流が生じるなどして、混合流体の流れが不安定化し、閉塞を招来する。一方で、圧力回復という点からすれば、広がり角が大きいほど圧力が回復しやすい傾向にある。また、圧力回復が不十分であっても、閉塞が生じ得る。
【0029】
したがって、圧力回復という点からすれば広がり角を大きくしたいところであるものの、混合流体の流れが不安定化しないように、第2主流路21の流路断面積Sの拡大度合いを調整する必要もある。とりわけ、土砂、砂、含水土砂、砂利、砕石、セメント、生コン、モルタル、金属粉、ウッドチップ、軽石、火山灰などの固形の粒状物を被搬送物とする場合には、その流路断面積Sの拡大の程度を調製することが好ましい。
【0030】
このような観点から、下記式(1)で表される流路断面積Sの拡大パラメータは、好ましくは、10以上であってもよく、12.5以上であってもよく、15以上であってもよく、17.5以上であってもよく、20以上であってもよい。また、下記式(1)で表される流路断面積Sの拡大パラメータは、好ましくは、40以下であってもよく、37.5以下であってもよく、35以下であってもよく、32.5以下であってもよく、30以下であってもよく、27.5以下であってもよく、25以下であってもよい。流路断面積Sの拡大パラメータは、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
流路断面積Sの拡大パラメータ=(第2主流路21の最大断面積Smax-第2主流路21の最小断面積Smin)/第2主流路21の長さL・・・(1)
【0031】
第2主流路の内表面は、非付着性を有することが好ましい。ここで、非付着性とは、Φ40×h40mmで含水比45%の木節粘土、重量約118.5gを、内径100から150mm、長さ300mm以上のパイプの内部に載置し、45度に傾けた際に200mm滑り落ちるのにかかる時間が25秒以下であるものをいう。従来使用される鋼管は25秒を超え、非付着性を有さないが、後述する本発明のポリオレフィンであれば25秒以下の非付着性を有するため好ましく、超高分子量ポリエチレンであれば23秒以下の優れた非付着性を有するため、特に好ましい。
【0032】
第2主流路の内表面の最大高さ粗さは、好ましくは、0.32μmを超えてもよく、0.5μm以上であってもよく、1.0μm以上であってもよく、2.5μm以上であってもよく、5.0μm以上であってもよく、7.5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよい。また、第2主流路の内表面の最大高さ粗さは、好ましくは、56μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、45μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、35μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。最大高さ粗さが上記範囲内であることにより閉塞が生じにくくなる傾向にある。第2主流路の内表面の最大高さ粗さは、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0033】
最大高さ粗さはJIS B0601:’01に準拠して測定できる。具体的には、カットオフλc=0.8、測定長L=4mmの条件で測定した値を採用することができる。また、最大高さ粗さは樹脂種の種類等に応じて調整することができる。
【0034】
第2主流路の内表面の動摩擦係数は、好ましくは、0.30以下であってもよく、0.25以下であってもよく、0.20以下であってもよく、0.15以下であってもよく、0.10以下であってもよい。また、第2主流路の内表面の動摩擦係数は、好ましくは、0.01以上であってもよく、0.02以上であってもよく、0.03以上であってもよく、0.04以上であってもよく、0.05以上であってもよく、0.07以上であってもよい。動摩擦係数が上記範囲内であることにより閉塞が生じにくくなる傾向にある。第2主流路の内表面の動摩擦係数は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0035】
動摩擦係数はJIS 7218に準拠して測定できる。具体的には、スラスト摩耗法により、面圧0.83kg/cm2、線速度6.2cm/secの条件で、鋼(S45C)と摩擦させて測定できる。また、動摩擦係数は樹脂種の種類等に応じて調整することができる。
【0036】
第2主流路の内表面の水の接触角は、好ましくは、55度以上であってもよく、60度以上であってもよく、65度以上であってもよく、70度以上であってもよく、75度以上であってもよい。また、第2主流路の内表面の水の接触角は、好ましくは、90度以下であってもよく、85度以下であってもよく、80度以下であってもよく、75度以下であってもよい。水の接触角が上記範囲内であることにより閉塞が生じにくくなる傾向にある。第2主流路の内表面の水の接触角は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0037】
水に対する接触角は静的液滴法にて測定できる。具体的には、平板に水を20μL滴下した時の接触角を顕微鏡で観察し、その接触角を計測できる。また、水に対する接触角は樹脂種の種類等に応じて調整することができる。
【0038】
第2主流路の内表面のサンドスラリー摩耗法による摩耗量は、好ましくは、10mg以下であってもよく、8mg以下であってもよく、6mg以下であってもよく、5mg以下であってもよく、4mg以下であってもよく、3mg以下であってもよく、2mg以下であってもよく、1mg以下であってもよい。第2主流路の内表面のサンドスラリー摩耗法による摩耗量の下限は特に制限されないが、0mgである。摩耗量が上記範囲内であることにより、耐摩耗性がより向上する傾向にある。摩耗量は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0039】
摩耗量はサンドスラリー摩耗法に基づいて測定できる。より具体的には、使用する研削材(昭和電工製ホワイトモランダム♯20)と水を1:1の割合で混合して作成したサンドスラリーを容器に入れ、シャフトに垂直に固定された試験片2枚をサンドスラリー面から10mm以上埋まるようにして、拡販羽根のように回転させる。回転速度は250rpmとする。6万回回転後、18万回回転後それぞれの試験片重量を測定し、6万回回転後の試験片の重量から、18万回回転後の重量を引いた値を摩耗量とする。また、摩耗量は樹脂種の種類等に応じて調整することができる。
参考に、一般的な材料の摩耗量を以下に示す。
キャストナイロン: 5.6mg
高密度ポリエチレン: 7.7mg
ナイロン66: 8.3mg
ポリウレタン: 8.4mg
フッ素樹脂: 9.0mg
SUS: 9.8mg
ポリプロピレン: 20.4mg
ポリアセタール: 24.0mg
ベークライト: 27.8mg
黄銅: 45.0mg
低密度ポリエチレン: 48.2mg
【0040】
第2主流路の内表面の促進暴露試験後の引張伸びの保持率は、好ましくは、50%以上であってもよく、55%以上であってもよく、60%以上であってもよく、65%以上であってもよく、70%以上であってもよく、75%以上であってもよく、80%以上であってもよく、85%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよい。また、第2主流路の内表面の促進暴露試験後の引張伸びの保持率の上限は、特に限定されないが、例えば、100%である。引張伸びの保持率が上記範囲内であることにより、直射日光下で、高温化で曝されるコンクリート配送管の耐候性がより優れる傾向にある。引張伸びの保持率は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。
【0041】
引張伸びの保持率はJIS K 7127:1999(プラスチックの引張特性の試験方法)に基づいて測定できる。より具体的には、試験片に対して、サンシャインカーボンアーク式促進試験を行い、試験前後の引張破断伸度を測定した。具体的には、スガ試験機製 サンシャインウェザーメーター(ウェザオメーターという場合もあるようです)を用い、JIS-B-7753に従い、ブラックパネル温度63℃(±3℃)、湿度50%(±5%)、降雨有(120分サイクル;102分ドライ+18分降雨)条件で1200時間暴露試験を行ってもよい。また、引張伸びの保持率は樹脂種の種類等に応じて調整することができる。
【0042】
樹脂製ディフューザ部の外径は、流れ方向に沿って、一定であっても、漸減しても、増加してもよい。このなかでも、樹脂製ディフューザ部の外径は流れ方向に沿って一定であることが好ましい。これにより、樹脂円筒から樹脂製ディフューザ部を削り出す際に、特に樹脂円筒の外形を削り出す加工をしなくてもよい。また、樹脂製ディフューザ部の外径は流れ方向に沿って一定であることにより、
図1Bに示すように壁の厚さが厚いところが多くなるために、強度がより向上する傾向にある。
【0043】
樹脂製ディフューザ部20を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。また、当該樹脂には、紫外線吸収剤などの添加材が添加されていてもよい。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート、モノマーキャストナイロンなどのナイロン系樹脂、液晶ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。
【0045】
また、熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0046】
これらの中でも、賦形性、二次加工性等の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。更に熱可塑性樹脂の中でも、安価であること、耐薬品性に優れること、加工性に優れること、素材の吸湿性・吸水性が低いこと等から、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、エチレンの単独重合体;エチレンとプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1のような1種以上のα-オレフィンとの共重合体;エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどとの共重合体;プロピレンの単独重合体;プロピレンとエチレン、ブテン-1の様な1種以上のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂の中でも、安価であること、摩擦係数が小さいこと、成形後の加工性に優れること、耐薬品性に優れること、素材自身の吸湿吸水性が低いこと等の理由から、ポリエチレンが最も好ましい。
【0049】
ポリエチレンの密度は、好ましくは890~970kg/m3であり、より好ましくは900~960kg/m3であり、さらに好ましくは910~950kg/m3である。密度が890kg/m3以上であることにより、円筒体の剛性がより向上する傾向にある。また、密度が970kg/m3以下であることにより、取扱い性がより向上する傾向にある。ここで、ポリエチレンの密度は、JIS K 7112:1999に準拠し、密度勾配管法(23℃)により測定して得ることができる。
【0050】
また、ポリエチレンの粘度平均分子量は、好ましくは、1.0×105以上であってもよく、1.0×106以上であってもよく、2.5×106以上であってもよく、5.0×106以上であってもよく、7.5×106以上であってもよい。また、ポリエチレンの粘度平均分子量は、好ましくは、2.0×108以下であってもよく、1.0×108以下であってもよく、7.5×107以下であってもよく、5.0×107以下であってもよい。ポリエチレンの粘度平均分子量が上記範囲内であることにより、耐摩耗性がより向上し、高い圧送圧に耐えうる十分な強度が得られる傾向にある。なお、1.0×106以上の粘度平均分子量を有するポリエチレンを、本実施形態においては「超高分子量ポリエチレン」という。
【0051】
粘度平均分子量は、例えば、以下に示す方法によって求めることができる。まず、ポリエチレンをデカリン(デカヒドロナフタレン)に溶解させ、濃度の異なる複数の溶液を作成する。それらの溶液を135℃の恒温槽で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、それぞれの還元粘度(ηsp/C)を求める。濃度(C)とポリマーの還元粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度([η])を求める。この極限粘度([η])から以下の式に従い、粘度平均分子量(Mv)を求めることができる。
Mv=5.34×104×[η]1.49
【0052】
上記の中でも、円筒体を構成する樹脂としては、超高分子量ポリエチレンが耐圧、低摩擦、高撥水(接触角)、耐摩耗性や透明性等の点で最も好ましい。
【0053】
樹脂製ディフューザ部20は、原料樹脂が密度及び/又は粘度平均分子量等が異なるポリエチレンの混合原料であっても良く、ポリエチレンとポリエチレン以外の原料樹脂との混合原料であっても良い。
【0054】
また、本実施形態の樹脂製ディフューザ部20は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色顔料、難燃剤等の各種添加剤を樹脂に添加してもよい。
【0055】
2.搬送装置
本実施形態の搬送装置は、上記エジェクタと、エジェクタの送入口に接続され、該送入口に対して被搬送物を搬送する第1搬送管と、エジェクタの送出口に接続され、該送出口に対して被搬送物を搬送する第2搬送管と、エジェクタが有する吸引口に対して圧縮空気を供給するコンプレッサと、を備える。
【0056】
本実施形態の搬送装置の概略構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2では土砂を灰色に塗りつぶして示している。
図2に示されるように、本実施形態に係る搬送装置1は、例えば工事現場において、土砂を搬送するために用いられる。
【0057】
一般に工事現場等においては、建築構造物を造るときに地面を掘削することがあり、掘削により生じた土砂を搬送する必要が生じうる。また、建築構造物を造った後には、掘削箇所の埋め戻しを土砂によって行うことがあり、埋め戻しに必要な土砂を搬送する必要が生じうる。搬送装置1は、工事現場において、このような掘削により生じた土砂又は埋め戻しに必要な土砂等を搬送するためのものである。
【0058】
搬送装置1は、内部において土砂が搬送される第1搬送管2a,第2搬送管2bと、第1搬送管2a,第2搬送管2bの内部の土砂を搬送する搬送手段3と、を備える。第1搬送管2aは、土砂を吸入する吸入管2cと、吸入管2cに接続され、吸入管2cにより吸入された土砂を内部において搬送する搬送用ホース2dを含んでもよい。また、第2搬送管2bは、搬送手段3に接続される管2eと、土砂を内部において搬送する搬送用ホース2fと、を含んでもよい。一例として、搬送装置1の長さは、40m程度である。
【0059】
吸入管2cの内部には、搬送手段3によって土砂が吸引される。第1搬送管2aと第2搬送管2bの間に搬送手段3が接続されており、第1搬送管2aと第2搬送管2bは、搬送手段3によって吸入管2cからの土砂を搬送する。本実施形態において、管2eは、搬送手段3のエジェクタ100の樹脂製ディフューザ部20であってもよい。
【0060】
土砂は、吸入管2cの先端2gから第2搬送管2bの末端2hに向かって流れる。第1搬送管2a,第2搬送管2bの内部を流れた土砂は、末端2hから排出され、その後、例えば所定の搬送先に搬送される。以下では、土砂が先端2gから末端2hに搬送される方向を「搬送方向」とする。搬送方向における上流側を単に「上流側」、搬送方向における下流側を単に「下流側」とすることがある。
【0061】
第1搬送管と第2搬送管は、例えば、ポリ塩化ビニル製であり、フレキシブルホースであってもよい。一例として、フレキシブルホースの内面は平滑面とされており、フレキシブルホースの外面には、補強のために、凹凸状の隆起部が形成される。この隆起部は、例えば螺旋状とされている。
【0062】
第1搬送管と第2搬送管がフレキシブルホースである場合、容易に曲げることが可能となり且つ耐圧性にも優れる。第1搬送管と第2搬送管は透明であってもよく、第1搬送管と第2搬送管が透明である場合、第1搬送管と第2搬送管の内部の土砂の様子が視認可能となる。
【0063】
なお、第1搬送管と第2搬送管としては、フレキシブルホース以外のものを用いることも可能であり、第1搬送管と第2搬送管は透明でなくてもよい。第1搬送管と第2搬送管は、例えば鋼管であってもよい。第1搬送管と第2搬送管が鋼管である場合、当該鋼管の内面の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、2.5μm以上且つ3.5μm以下である。
【0064】
搬送手段3は、圧縮空気を供給するコンプレッサ3aと、コンプレッサ3aからの圧縮空気を第2搬送管2bの内部に送り込むエジェクタ100と、コンプレッサ3a及びエジェクタ100を接続するホース3bとを備える。コンプレッサ3aは、例えばトラックに積載されている。コンプレッサ3aは、ホース3bを介して圧縮空気をエジェクタ100の内部に送り込む。エジェクタ100は、コンプレッサ3aから送り込まれた圧縮空気を加速させると共に、土砂の搬送方向への空気流を生じさせる。
【0065】
3.搬送方法
本実施形態の搬送方法は、上記搬送装置を使用した被搬送物の搬送方法であって、コンプレッサにより、エジェクタが有する吸引口に対して圧縮空気を供給することにより、被搬送物をエジェクタから第2搬送管へと搬送する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、土木用途に限らず、各種工業用途に用いることができるエジェクタとして産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0067】
10…金属製本体部、11…第1主流路、12…吸引口、13…送入口、14…第1接続口、15…圧縮空気路、16…供給口、17…ノズル部、18…ノズル口、20…樹脂製ディフューザ部、21…第2主流路、22…送出口、23…合流部、24…第2接続口、100…エジェクタ。