(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018169
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/10 20060101AFI20240201BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240201BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20240201BHJP
F23K 5/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F02M37/10 E
F02M21/02 K
F02M21/02 G
F02M37/00 P
F23K5/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121335
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武関 尚人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
【テーマコード(参考)】
3K068
【Fターム(参考)】
3K068AA11
3K068AB14
3K068CA12
(57)【要約】
【課題】燃料供給装置において、ポンプインペラによる燃料吸入時に生じる燃料の気体成分も、供給先の燃料として有効に活用する。
【解決手段】貯留源12の液体燃料を液体成分と気体成分に区分けして第1の供給先14Aと第2の供給先14Bに供給する燃料供給装置10であって、ポンプ部26と駆動部28とを備える。ポンプ部26には、ポンプインペラ室32が形成されており、液体成分を第1の供給先14Aに供給する液体供給孔38を備える。そして、貯留源12からの液体燃料を吸入する吸入孔36の近傍位置に液体燃料の吸入時に生じる燃料の気体成分を取り出す気体取出孔40が形成されており、この気体取出孔40と第2の供給先14Bとの間に、気体成分を第2の供給先14Bに供給する気体供給通路42が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留源の液体燃料を液体成分と気体成分に区分けして供給先に供給する燃料供給装置であって、
ポンプ部と駆動部とを備え、
前記ポンプ部には、液体燃料を昇圧して供給するためのポンプインペラ室が形成されており、当該ポンプインペラ室には、ポンプインペラが配設されると共に、前記貯留源から供給される液体燃料を吸入する吸入孔と、昇圧された液体成分を供給先に供給する液体供給孔とが形成されており、更に、前記吸入孔の近傍位置には前記液体燃料の吸入時に生じる燃料の気体成分を取り出す気体取出孔が形成されており、
前記駆動部には、前記ポンプ部に配置されるポンプインペラを回転駆動する回転モータが備えられており、
前記ポンプ部のポンプインペラ室に形成された気体取出孔と前記供給先との間には気体供給通路が形成されている、燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記気体供給通路の少なくとも一部は、前記駆動部の回転モータの熱的影響を受けるように前記回転モータの近傍位置を通って配設されている、燃料供給装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料供給装置であって、
前記駆動部には、前記回転モータにより回転駆動されて当該回転モータを冷却させるための冷却ファンが設置されており、
前記冷却ファンの近傍位置と前記気体供給通路との間には、当該冷却ファンの風量を取り入れて当該風量を前記気体供給通路に供給する風量供給通路が形成されており、当該風量供給通路に供給された風量により前記気体供給通路における燃料の気体成分の供給を促進させる構成とされている、燃料供給装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の燃料供給装置であって、
前記駆動部には、前記回転モータにより回転駆動される吸引ファンを設置する吸引ファン室が形成されており、当該吸引ファン室を経由して前記気体供給通路が配置されており、前記吸引ファンの回転により前記吸引ファン室より上流の気体供給通路の燃料の気体成分が吸引されて下流の気体供給通路に供給される、燃料供給装置。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記貯留源の液体燃料はアンモニアであって、前記気体供給通路には改質器を備える分岐経路が設定されており、当該改質器により水素が当該分岐経路を通じて供給先に供給される、燃料供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料供給装置であって、
前記分岐経路に設定された改質器は、前記駆動部における回転モータに隣接して配設されており、かつ、当該回転モータの熱的影響を受ける位置に配設されている、燃料供給装置。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記ポンプインペラ室に形成された気体取出孔から前記気体供給通路への接続部通路構成は、前記ポンプインペラ室から前記気体供給通路に向けて拡径する通路形成となっている、燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、燃料供給装置に関する。詳細には、貯留源の液体燃料を液体成分と気体成分に区分けして供給先に供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両には、燃料タンクや燃料貯留ボンベ等の貯留源に貯留された低温・高圧の液体燃料をポンプによりエンジン等の供給先に供給する燃料供給装置が備えられる。液体燃料としては、アンモニア燃料やLPG(液化石油ガス)燃料等がある。
【0003】
この種の燃料供給装置としては、例えば、下記特許文献1に示される燃料供給装置がある。当該燃料供給装置は、モータ駆動により燃料が貯留源から供給先に供給されるようになっている。そのため、当該燃料供給装置はハウジングを備え、このハウジングには、燃料を吸入する吸入口と、回転軸と、この回転軸と一体で回転し、燃料を昇圧するポンプインペラと、このポンプインペラによって昇圧された液体燃料を供給先に供給する吐出口を備える。
【0004】
なお、当該燃料供給装置は、通常、ポンプインペラによる液体燃料の吸入口への吸入時に気泡(燃料の気体成分)が発生する。このため、ポンプインペラの吸入口近傍には、この気泡を排出するための気体抜き孔が備えられている。そして、ポンプインペラのポンプ作用時に生じる気泡を、気体抜き孔を通じて装置外に排出している。例えば、貯留源に戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の燃料供給装置においては、ポンプインペラによる燃料吸入時に生じる燃料の気泡(燃料の気体成分)は、気体抜き孔により装置外に排出されており、燃料として有効に利用されていない。すなわち、自動車等車両における動力源の燃料として有効に活用されていない。
【0007】
このため、本発明者らは、ポンプインペラによる燃料吸入時に生じる燃料の気泡(燃料の気体成分)も、動力源(供給先)の燃料として有効に活用することに着眼した。
【0008】
而して、本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、上述した点に鑑みて創案されたものであって、燃料供給装置において、ポンプインペラによる燃料吸入時に生じる燃料の気体成分も、供給先の燃料として有効に活用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本明細書に開示の燃料供給装置は、次の手段をとる。
【0010】
第1の手段は、貯留源の液体燃料を液体成分と気体成分に区分けして供給先に供給する燃料供給装置であって、ポンプ部と駆動部とを備え、前記ポンプ部には、液体燃料を昇圧して供給するためのポンプインペラ室が形成されており、当該ポンプインペラ室には、ポンプインペラが配設されると共に、前記貯留源から供給される液体燃料を吸入する吸入孔と、前記ポンプインペラにより昇圧された液体成分を供給先に供給する液体供給孔とが形成されており、更に、前記吸入孔の近傍位置には前記液体燃料の吸入時に生じる燃料の気体成分を取り出す気体取出孔が形成されており、前記駆動部には、前記ポンプ部に配置される前記ポンプインペラを回転駆動する回転モータが備えられており、前記ポンプ部の前記ポンプインペラ室に形成された前記気体取出孔と前記供給先との間には気体供給通路が形成されている、燃料供給装置である。
【0011】
上記第1の手段によれば、ポンプ部のポンプインペラ室に形成された気体取出孔と供給先との間には気体供給通路が形成されて、ポンプインペラ室への吸入時に生じる燃料の気体成分は、当該気体供給通路を通じて、確実に供給先に供給される。これにより、燃料の気体成分も確実に供給先に供給できて、供給先の燃料として有効に活用することができる。
【0012】
第2の手段は、前述した第1の手段における燃料供給装置であって、前記気体供給通路の少なくとも一部は、前記駆動部の回転モータの熱的影響を受けるように前記回転モータの近傍位置を通って配設されている、燃料供給装置である。
【0013】
上記第2の手段によれば、気体供給通路の少なくとも一部は、駆動部の回転モータの熱的影響を受けるように回転モータの近傍位置を通って配設される。これにより、駆動部の回転モータの熱により、気体供給通路を通過する燃料の気体成分を確実に気体状態に維持することができて、確実に供給先に気体成分状態で供給することができる。
【0014】
逆に、第2の手段によれば、気体供給通路を通過する燃料の気体成分により、駆動部の回転モータの冷却を行うことができて、回転モータの過熱を防止ないし抑制を図ることができる。
【0015】
第3の手段は、前述した第1の手段または第2の手段における燃料供給装置であって、前記駆動部には、前記回転モータにより回転駆動されて当該回転モータを冷却させるための冷却ファンが設置されており、前記冷却ファンの近傍位置と前記気体供給通路との間には、当該冷却ファンの風量を取り入れて当該風量を前記気体供給通路に供給する風量供給通路が形成されており、当該風量供給通路に供給された風量により前記気体供給通路における燃料の気体成分の供給を促進させる構成とされている、燃料供給装置である。
【0016】
上記第3の手段によれば、駆動部には冷却ファンが設置されている。この冷却ファンにより駆動部の回転モータは適切に冷却される。その結果、回転モータの過熱を防止ないし抑制することができる。
【0017】
また、第3の手段によれば、冷却ファンと気体供給通路との間には、風量供給通路が形成されており、冷却ファンの風量が気体供給通路に供給される。そして、この風量により気体供給通路における気体成分の供給を促進させて、気体成分を速やかに供給先に供給することができる。
【0018】
第4の手段は、前述した第1の手段または第2の手段における燃料供給装置であって、前記駆動部には、前記回転モータにより回転駆動される吸引ファンが設置される吸引ファン室が形成されており、当該吸引ファン室を経由して前記気体供給通路が配置されており、前記吸引ファンの回転により前記吸引ファン室より上流の気体供給通路の燃料の気体成分が吸引されて下流の気体供給通路に供給される、燃料供給装置である。
【0019】
上記第4の手段によれば、駆動部に吸引ファンが設置される吸引ファン室が形成されて、この吸引ファン室を経由して気体供給通路が配置される。したがって、吸引ファン室において吸引ファンの回転により生じる負圧により、ポンプインペラ室において液体燃料の吸入時に生じる燃料の気体成分が気体取出孔から確実に吸い出されて、燃料の気体成分の供給先への供給量の増加を図ることができる。
【0020】
第5の手段は、前述した第1の手段における燃料供給装置であって、前記貯留源の液体燃料はアンモニアであって、前記気体供給通路には改質器を備える分岐経路が設定されており、当該改質器により水素が当該分岐経路を通じて供給先に供給される、燃料供給装置である。
【0021】
上記第5の手段によれば、気体供給通路から分岐した分岐経路に改質器を備える。これにより、供給先において水素が必要な場合に、貯留源の液体燃料のアンモニアを改質することで供給先に水素を供給することができる。
【0022】
第6の手段は、前述した第5の手段における燃料供給装置であって、前記分岐経路に設定された改質器は、前記駆動部における回転モータに隣接して配設されており、かつ、当該回転モータの熱的影響を受ける位置に配設されている、燃料供給装置である。
【0023】
上記の第6の手段によれば、改質器は駆動部の回転モータの熱的影響を受ける位置に配設される。これにより、回転モータの熱により改質器の改質作用を効率よく行わせることができる。
【0024】
第7の手段は、前述した第1の手段における燃料供給装置であって、前記ポンプインペラ室に形成された気体取出孔から前記気体供給通路への接続部通路構成は、前記ポンプインペラ室から前記気体供給通路に向けて拡径する通路形成となっている、燃料供給装置である。
【0025】
上記の第7の手段によれば、気体取出孔から気体供給通路への接続部の気体通路は、ポンプインペラ室から気体供給通路に向けて拡径した通路形成となっている。これにより、燃料の気体成分が気体取出孔から気体供給通路方向に抜ける際に、圧力低下が生じて気体成分の流通流れがスムースに行われる。
【発明の効果】
【0026】
本明細書に開示の燃料供給装置によれば、ポンプ部のポンプインペラ室に形成される気体取出孔と供給先との間に気体供給通路を配設することにより、ポンプインペラによる燃料吸入時に生じる燃料の気体成分も、供給先の燃料として有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係る燃料供給装置の基本形態(第1実施形態)を概念的に図示した模式図である。
【
図2】
図1の燃料供給装置の模式図における駆動部を立体的に示した図である。
【
図3】
図2に示す駆動部を上方から見た上面図である。
【
図4】燃料供給装置の基本形態に風量供給通路を備えた第2実施形態を示す模式図である。
【
図5】燃料供給装置の基本形態における駆動部に吸引ファンを設置する吸引ファン室が形成された第3実施形態を示す模式図である。
【
図6】燃料供給装置の基本形態に改質器を備えた第4実施形態を示す模式図である。
【
図7】第4実施形態における改質器の配置位置の変形形態例を示し、改質器を駆動部の回転モータに隣接させて配置した形態の模式図である。
【
図8】
図4に示す第2実施形態と
図6に示す第4実施形態を組合わせた第5実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本明細書に開示の技術である燃料供給装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の燃料供給装置は、自動車等車両に備えられる場合を例示として示した。なお、図の説明における左右、上下、前後等の方向表示は、当該図における方向を示すものであり、特に指定しない限り、自動車等車両に搭載した状態の方向を示すものではない。
【0029】
〔燃料供給装置10の基本形態(第1実施形態)の全体構成〕
図1は燃料供給装置10の基本形態を概念的に示す模式図である。この基本形態を第1実施形態とする。
図1に基づいて説明すると、燃料供給装置10は、燃料の貯留源12から燃料の供給先14に燃料を供給する装置として、貯留源12と供給先14との燃料供給経路16に配置される。燃料の貯留源12に貯留される燃料は、低温・高圧の液化ガス成分であり、アンモニア燃料やLPG(液化石油ガス)燃料等である。貯留源12は液体貯蔵ボンベや燃料タンク等により形成される。燃料の供給先14は車両におけるエンジン等である。
【0030】
燃料供給装置10は貯留源12の液体燃料を液体成分と気体成分に区分けして供給先14に供給する装置であり、ポンプ部26と駆動部28を備える。本実施形態では、ポンプ部26と駆動部28は上下に連続形成されて配設されており、
図1の図示では、ポンプ部26は下方位置、駆動部28は上方位置に配置されている。
【0031】
〔ポンプ部26〕
ポンプ部26はポンプハウジング27内にポンプインペラ室32が形成されており、ポンプインペラ室32には、後述の駆動部28の回転モータ44により回転駆動されるポンプインペラ34が配設されている。ポンプインペラ室32には、吸入孔36と、液体供給孔38と、気体取出孔40が形成されている。
【0032】
吸入孔36は、貯留源12から燃料供給第1経路18を通じて供給されてくる液体燃料をポンプインペラ室32に吸入して取り入れる孔である。液体供給孔38は、ポンプインペラ室32により昇圧された液体燃料を第1の供給先14Aに供給するための供給孔であり、第1の供給先14Aへの燃料供給第2経路20に接続される。
【0033】
気体取出孔40は、液体燃料を吸入孔36を通じてポンプインペラ室32に吸入して取入れる際に生じる気泡等の燃料の気体成分を、気体供給通路42に導くための取り出し孔であり、吸入孔36の近傍位置に形成される。
【0034】
なお、本実施形態では、貯留源12から供給先14へ燃料を供給する燃料供給経路16は、必要に応じて、次のように区分して説明することがある。すなわち、貯留源12から燃料供給装置10までの経路を燃料供給第1経路18、燃料供給装置10から第1の供給先14Aまでの経路を燃料供給第2経路20、燃料供給装置10から第2の供給先14Bまでの経路を燃料供給第3経路22として説明することがある。
【0035】
〔駆動部28〕
駆動部28はモータハウジング30内に回転モータ44が設置されており、前述のポンプ部26のポンプインペラ34を回転駆動する。回転モータ44とポンプインペラ34とは回転シャフト46により回転連結されている。なお、本実施形態の回転モータ44は汎用のモータであり、電機子を備えた構成であり、電気的に駆動されるモータである。
【0036】
本実施形態の駆動部28には、
図1で見て回転モータ44の上方位置に冷却ファン48を備える。本実施形態では、冷却ファン48も回転モータ44により回転駆動される構成となっており、回転モータ44に向けて送風して回転モータ44の冷却作用を行う。
〔気体供給通路42〕
【0037】
本実施形態の燃料供給装置10において特徴とする点は、ポンプインペラ室32において発生する気泡等の燃料の気体成分を気体供給通路42を通じて第2の供給先14Bに供給する構成である。この構成を、先ず、
図1に基づいて説明する。ポンプ部26のポンプインペラ室32において発生した気泡等の気体成分はポンプインペラ室32に形成された気体取出孔40から気体供給通路42に導かれる構成となっている。
【0038】
気体供給通路42は、ポンプ部26から駆動部28を通って配設されている。そして、駆動部28においては、回転モータ44に近接させて配設されて、回転モータ44と気体供給通路42とが互いに熱的影響を受ける配置として配設されている。特に、気体供給通路42の少なくとも一部が回転モータ44の熱的影響を受けるように配設されている。そのため、当該箇所の気体供給通路42の形成部材は熱伝導の良好な部材により形成される。そして、液体燃料がアンモニアの場合にはステンレスにより形成するのが好ましい。
【0039】
ところで、ポンプ部26におけるポンプインペラ室32に形成される気体取出孔40から気体供給通路42への接続部通路構成50は、ポンプインペラ室32から気体供給通路42に向けて徐々に拡径する通路形成となっている。これにより、接続部通路構成50を通過する気泡等の気体成分の圧力低下をもたらせて、気体成分の気体供給通路42への供給流通を良好なものとする。すなわち、気体取出孔40から気体供給通路42への気体成分の取出しを良好なものとする。
【0040】
次に、
図2及び
図3に基づき、駆動部28における回転モータ44と気体供給通路42とが互いに熱的影響を受ける配置構成の具体的構成を説明する。
図2は駆動部28を立体的に示した図である。
図3は駆動部28を上方から見た上面図である。この
図2及び
図3に示されるように、気体供給通路42は回転モータ44の周囲に配置される。回転モータ44の周囲に円環状に上部環状気体供給通路52と下部環状気体供給通路54が配置され、この両通路52、54を上下方向に配置された複数本の接続供給通路56で接続している。本実施形態では、
図3に示されるように接続供給通路56は8個の経路から成っている。
【0041】
図2に示すように下部環状気体供給通路54には気体取出孔40(
図1参照)からの気体供給通路42Aが接続されており、
図2及び
図3に示すように上部環状気体供給通路52には第2の供給先14B(
図1参照)へ通じる気体供給通路42Bが接続されている。なお、燃料の気体成分は
図2に矢印で示すように流れる。
【0042】
なお、基本形態の構成として、
図1において、ポンプインペラ室32の液体供給孔38から第1の供給先14Aへの燃料供給第2経路20には、気化器58が設置されており、当該気化器58において液体燃料を気体燃料に変換させて第1の供給先14Aに供給する。
【0043】
〔第1実施形態の作用効果〕
次に、上記第1実施形態の作用効果を説明する。駆動部28の回転モータ44により、ポンプ部26のポンプインペラ室32内に配設されたポンプインペラ34は、回転する。これにより、貯留源12の低温・高圧の液体燃料は燃料供給第1経路18を通じて、ポンプインペラ室32に吸入孔36から吸入されて取入れられる。ポンプインペラ室32に取入れられた液体燃料は、ポンプインペラ34のポンプ作用により高圧とされて液体供給孔38から燃料供給第2経路20に、低温・高圧状態で吐出する。この燃料供給第2経路20に吐出された低温・高圧の液体燃料は、燃料供給第2経路20に設置された気化器58により液体燃料から気体燃料に気化されてエンジン等の第1の供給先14Aに供給される。
【0044】
液体燃料を供給・昇圧する本実施形態のポンプインペラ室32にあっては、液体燃料の吸入時に発生する負圧により揮発ガス(気泡)の気体成分が発生する。本実施形態では、ポンプインペラ室32に発生した気体成分は、気体取出孔40から気体供給通路42に供給されて、当該気体供給通路42から燃料供給第3経路22を通じて第2の供給先14Bに供給される。このようにポンプインペラ34による燃料吸入時に生じる燃料の気体成分も、第2の供給先14Bの燃料として有効に活用される。すなわち、無駄となることなく効率よく活用される。
【0045】
なお、
図1に示す実施形態では、第1の供給先14Aと第2の供給先14Bは別の供給先となっているが、同じ供給先であっても良い。すなわち、同じ供給先のエンジンに燃料供給第1経路18から気化器58により気化された気体成分と燃料供給第2経路20からの気体成分の燃料を供給するものであっても良い。
【0046】
また、第1実施形態の気体供給通路42は、
図2及び
図3に示すように、駆動部28においては、回転モータ44の周囲に配置されて、気体供給通路42と回転モータ44は互いに熱的影響を及ぼし合う配置構成とされている。特に、回転モータ44の周囲に配置される上部環状気体供給通路52、下部環状気体供給通路54、及び接続供給通路56は、回転モータ44を包囲する形態として配置されている。これにより、回転モータ44の周囲の気体供給通路42は回転モータ44が放散する熱的影響を特に受けやすい形態構成となっている。
【0047】
したがって、駆動部28の回転モータ44の熱により気体供給通路42を通って供給される燃料の気体成分は、気体成分状態を確実に維持することができて、第2の供給先14Bに確実に気体成分として供給することができる。すなわち、回転モータ44が放散する熱により、燃料の気体成分が上部環状気体供給通路52、下部環状気体供給通路54、及び接続供給通路56を通って供給される際に、温められて、確実に気体成分のままで供給されて、常温・常圧状態として第2の供給先14Bに供給される。
【0048】
逆に、回転モータ44は、当該回転モータを包囲して配設される上部環状気体供給通路52、下部環状気体供給通路54、及び接続供給通路56を通って供給される燃料の気体成分により冷される。これにより、回転モータ44の過熱を防止ないし抑制を図ることができる。
【0049】
更に、回転モータ44の冷却については、本実施形態においては、駆動部28の上方に設置されている冷却ファンにより冷却されるため、確実に回転モータ44の冷却を行うことができて、回転モータ44の過熱の防止ないし抑制を図ることができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は
図4に示される。第2実施形態の基本構成は、上述した第1実施形態の基本構成と同じであるので、異なった構成について説明する。同じ構成内容については、同じ符号を付すことにより説明を省略する。以後に説明する第3実施形態以降の説明についても同様である。
【0051】
第2実施形態が特徴とする構成は、
図4に示すように、駆動部28から第2の供給先14Bへの燃料供給第3経路22に接続される気体供給通路42と、駆動部28の上部に設置された冷却ファン48との間に風量供給通路60が追加して設定されている構成である。
図4で見て、風量供給通路60の上端部60Aは、冷却ファン48の外周位置の近傍位置に開口して配置されており、冷却ファン48の回転により生じる風量を取り入れる構成とされている。風量供給通路60の下端部60Bは、燃料供給第3経路22に接続される気体供給通路42に接続されており、気体供給通路42に風量を供給するようになっている。この下端部60Bの接続部の構成は、例えばアスピレータ、或いはエジェクターと称される構成である。
【0052】
〔第2実施形態の作用効果〕
第2実施形態の構成によれば、冷却ファン48により駆動部28の回転モータ44の冷却作用が行われると共に、風量供給通路60により冷却ファン48の風量が燃料供給第3経路22を形成する気体供給通路42に供給される。冷却ファン48の風量が気体供給通路42に供給されることにより、気体供給通路42における気体成分の供給を促進させることができて、気体成分を速やかに第2の供給先14Bに供給することができる。すなわち、冷却ファン48の風量で第2の供給先14Bに供給する気体成分を増やすことができる。
【0053】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は
図5に示される。第3実施形態が特徴とする構成は、
図5に示すように、駆動部28の上面部に吸引ファンハウジング66により吸引ファン室64が形成される。そして、この吸引ファン室64内に回転モータ44により回転駆動される吸引ファン62が設置される構成である。そして、吸引ファン室64を経由して気体供給通路42が配置される構成である。なお、当該第3実施形態の吸引ファン62と、前述の第1実施形態及び第2実施形態の冷却ファン48とは、可能であれば同一のファンとすることもできる。
【0054】
〔第3実施形態の作用効果〕
第3実施形態の構成によれば、吸引ファン室64を経由して気体供給通路42が配置されており、吸引ファン62の回転により吸引ファン室64より上流の気体供給通路42aの燃料の気体成分が吸引されて下流の気体供給通路42bに供給される。すなわち、吸引ファン室64において吸引ファン62の回転により生じる負圧により、前述の第1実施形態で説明したポンプインペラ室32において液体燃料の吸入時に生じる燃料の気体成分が気体取出孔40から確実に吸い出されて、燃料の気体成分の第2の供給先14Bへの供給量の増加を図ることができる。
【0055】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は
図6に示される。第6実施形態が特徴とする構成は、先ず、貯留源12の液体燃料としてアンモニアを用いる点である。そして、
図6に示されるように、気体供給通路42には改質器68を備える分岐経路24が設定されて、この改質器68により水素が分岐経路24を通じて第3の供給先14Cに供給する構成とする点である。なお、第4実施形態における水素の供給先は、前述した各実施形態における第1の供給先14A、または第2の供給先14Bであっても良い。
【0056】
〔第4実施形態の作用効果〕
第4実施形態によれば、気体供給通路42から分岐した分岐経路24に改質器68が備えられている。これにより、第3の供給先14Cにおいて水素が必要な場合に、貯留源12の液体燃料のアンモニアを改質することで第3の供給先14Cに水素を供給することができる。なお、本実施形態をアンモニアエンジンに使用する場合、アンモニア単体では燃焼しにくいため、始動時だけ水素をエンジンに添加することがある。そのため、アンモニアと水素は同じ供給先となる。また、改質した水素を発電機に使用する場合は、水素単体で燃焼をするため、水素とアンモニアの供給先は別となる。
【0057】
〔第4実施形態の変形形態〕
次に、上述した第4実施形態の変形形態について説明する。第4実施形態の変形形態は
図7に示される。当該変形形態が特徴とする構成は、
図7に示すように、前述した第4実施形態で説明した分岐経路24に設定された改質器68は、駆動部28における回転モータ44に隣接して配設されている点である。そして、この隣接配置は、回転モータ44の熱的影響を受ける位置に配設されている。すなわち、
図7で見て、改質器68の隣接配置は回転モータ44の右側位置に隣接して配設されている。
【0058】
〔第4実施形態の変形形態の作用効果〕
第4実施形態の変形形態によれば、改質器68が駆動部28の回転モータ44の熱的影響を受ける位置に配設されることにより、回転モータ44の熱により改質器68の改質作用が効率よく行われる。
【0059】
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は
図8に示される。第5実施形態が特徴とする構成は、前述した
図4に示す第2実施形態と、
図6に示す第4実施形態とを組合せ構成した点である。この構成によれば、上述した第2実施形態と第4実施形態の作用効果を同時に受けることができて効率が良い。
【0060】
<他の実施形態>
本明細書に開示の技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、上述した各実施形態では冷却ファン又は吸引ファンを備えた構成であるが、スペース的に設置することが困難等の場合には、省略する構成であっても良い。
【0062】
また、駆動部28の回転モータ44は熱を発する構成のものとして説明したが、熱を発生しない構成のものであっても良い。しかし、この場合には熱を発することにより生じる作用効果のメリットは受けることはできない。
【符号の説明】
【0063】
10 燃料供給装置
12 貯留源
14 供給先
14A 第1の供給先
14B 第2の供給先
14C 第3の供給先
16 燃料供給経路
18 燃料供給第1経路
20 燃料供給第2経路
22 燃料供給第3経路
24 分岐経路
26 ポンプ部
27 ポンプハウジング
28 駆動部
30 モータハウジング
32 ポンプインペラ室
34 ポンプインペラ
36 吸入孔
38 液体供給孔
40 気体取出孔
42 気体供給通路
44 回転モータ
46 回転シャフト
48 冷却ファン
50 接続部通路構成
52 上部環状気体供給通路
54 下部環状気体供給通路
56 接続供給通路
58 気化器
60 風量供給通路
62 吸引ファン
64 吸引ファン室
66 吸引ファンハウジング
68 改質器