IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018180
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 43/00 20060101AFI20240201BHJP
   G04C 3/00 20060101ALI20240201BHJP
   G04C 10/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G04B43/00 A
G04C3/00 K
G04C10/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121346
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青木 駿成
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101AA03
2F101AD01
2F101AD05
2F101AE02
2F101AE03
2F101AF01
2F101DJ05
(57)【要約】
【課題】耐磁性能を維持しつつ、外観品質が低下することを抑えることが可能な時計を提供する。
【解決手段】筒状のケースと、ケースの一方の開口を覆い、透過領域を有する裏蓋と、ケースに収納され、コイルブロック24と、コイルブロック24の裏蓋側の少なくとも一部を覆う第1耐磁部品31と、コイルブロック24の側面の少なくとも一部を覆う第2耐磁部品32と、を有するムーブメント10と、を備え、第1耐磁部品31は、裏蓋に垂直な方向から見た平面視で、第2耐磁部品32と重畳する重畳領域を有し、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、重畳領域で接触して配置される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケースの一方の開口を覆い、透過領域を有する裏蓋と、
前記ケースに収納され、
時計部品と、
前記時計部品の前記裏蓋側の少なくとも一部を覆う第1耐磁部品と、
前記時計部品の側面の少なくとも一部を覆う第2耐磁部品と、
を有するムーブメントと、を備え、
前記第1耐磁部品は、前記裏蓋に垂直な方向から見た平面視で、前記第2耐磁部品と重畳する重畳領域を有し、
前記第1耐磁部品と前記第2耐磁部品とは、前記重畳領域で接触して配置される、時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計であって、
前記重畳領域は、複数設けられている、時計。
【請求項3】
請求項1に記載の時計であって、
前記ムーブメントは、輪列と、前記輪列を保持する受部品と、を備え、
前記第1耐磁部品は、前記時計部品の前記裏蓋側の少なくとも一部を覆う本体部と、前記本体部から前記時計部品の側面に延びるように延在する側部と、前記側部に連設され前記重畳領域を構成する重畳部と、を備え、
前記本体部と前記側部との連設部分は、前記裏蓋側から見た平面視で、前記受部品で覆われ、
前記重畳部は、前記裏蓋側から見た平面視で、前記第2耐磁部品で覆われる、時計。
【請求項4】
請求項3に記載の時計であって、
前記ムーブメントは、重錘と、前記重錘を支持する錐体と、を有する回転錘を備え、
前記裏蓋の面に平行な方向から見た側面視で、前記本体部と前記重畳部との間に段差が設けられており、
前記重錘の一部は、前記段差に配置される、時計。
【請求項5】
請求項1に記載の時計であって、
前記時計部品は、コイル、ステーター、を備えるコイルブロックである、時計。
【請求項6】
請求項5に記載の時計であって、
前記ムーブメントは、機械的エネルギー源を有し、
前記コイルブロックは、前記機械的エネルギー源からのエネルギーを電力に変換する発電機を構成する、時計。
【請求項7】
請求項1に記載の時計であって、
前記第1耐磁部品と前記第2耐磁部品とは、前記重畳領域において、前記ケースの軸方向に、ねじで固定されることで接触する、時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部からの磁界に対してシールドすることが可能な耐磁板が、複数のモーターの全部または一部を覆う構成の時計が開示されている。耐磁板は、材料となる板を所定の形状に打ち抜き加工した後、折り曲げ加工等を施すことにより、一枚の板状部材で一繋がりに形成されている。これにより、モーターの上側と側面とを、切れ目のない広い面積の耐磁板で覆うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-141639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、耐磁板を、一枚の板状部材を折り曲げて形成することから、加工部分にしわや亀裂が発生することがある。一方で、裏蓋をガラスなどの透明な部材で構成し内部のムーブメントを使用者に視認させることで外観を向上させるシースルー構造の時計が知られている。特許文献1に記載の技術をシースルー構造の時計に適用した場合、耐磁板が外側から視認される恐れがあり、しわや亀裂が目立つ、言い換えれば、外観品質が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
時計は、筒状のケースと、前記ケースの一方の開口を覆い、透過領域を有する裏蓋と、前記ケースに収納され、時計部品と、前記時計部品の前記裏蓋側の少なくとも一部を覆う第1耐磁部品と、前記時計部品の側面の少なくとも一部を覆う第2耐磁部品と、を有するムーブメントと、を備え、前記第1耐磁部品は、前記裏蓋に垂直な方向から見た平面視で、前記第2耐磁部品と重畳する重畳領域を有し、前記第1耐磁部品と前記第2耐磁部品とは、前記重畳領域で接触して配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】時計の文字板側の構成を示す平面図。
図2】時計の裏蓋側の構成を示す平面図。
図3】ムーブメントの文字板側を示す平面図。
図4】ムーブメントの日車を外した状態を示す平面図。
図5図2及び図7に示すムーブメントのD-D線に沿う断面図。
図6】ムーブメントの裏蓋側を示す平面図。
図7】ムーブメントの輪列受を外した状態を示す平面図。
図8A】第1耐磁部品の構成を示す平面図。
図8B図8Aに示す第1耐磁部品のA-A線に沿う断面図。
図8C図8Aに示す第1耐磁部品のB-B線に沿う断面図。
図9A】第2耐磁部品の構成を示す平面図。
図9B図9Aに示す第2耐磁部品のC-C線に沿う断面図。
図10図7に示すムーブメントのE部を拡大して示す斜視図。
図11図7に示すムーブメントのF部を拡大して示す斜視図。
図12】外部磁界の強さとステーターに流れる磁束密度との関係を示すグラフ。
図13A】変形例の固定方法を示す断面図。
図13B】変形例の固定方法を示す断面図。
図13C】変形例の固定方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の各図においては、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、及びZ軸として説明する。X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向が+方向であり、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を「上」又は「上方」、-Z方向を「下」又は「下方」ということもあり、+Z方向及び-Z方向から見ることを平面視あるいは平面的ともいう。また、Z方向+側の面を上面、これと反対側となるZ方向-側の面を下面として説明する。
【0008】
まず、図1及び図2を参照しながら、時計1の構成を説明する。
【0009】
図1に示すように、時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状のケース2を備え、ケース2の内周側に、文字板3が配置されている。ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラス8で塞がれており、裏面側の開口は裏蓋9で塞がれている。なお、ケース2と裏蓋9とは別体でなくてもよく、一体で形成されたワンピース型のケースであってもよい。
【0010】
図2に示すように、裏蓋9は、リング状の枠9Aと、枠9Aに取り付けられた裏蓋ガラス9Bと、によって構成されている。裏蓋ガラス9Bは透過領域として機能する。本実施形態の時計1は、時計1の裏蓋9側から、回転錘15やパワーリザーブ針を視認可能な透過領域を有するスケルトンタイプの時計である。
【0011】
時計1は、ケース2内に収容されたムーブメント10(図2参照)と、時刻情報を表示する時針4A、分針4B、秒針4Cと、持続時間を指示するパワーリザーブ針と、を備えている。文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車6が視認可能となっている。また、文字板3には、時刻を指示するためのアワーマーク3Bが設けられている。後述する輪列受25の裏蓋側には、扇形のパワーリザーブ目盛5が設けられている。このパワーリザーブ目盛5をパワーリザーブ針が指示することで、ぜんまいの巻上げ残量を表示できる。パワーリザーブ針は図示していないが、パワーリザーブ目盛5の扇の中心を軸として回転するように取り付けられる。
【0012】
ケース2の側面には、巻真12(図3参照)に取り付けられたりゅうず7が設けられている。りゅうず7は、時計1の中心に向かって押し込まれた0段位置から1段位置および2段位置に引き出されて移動することができる。りゅうず7を0段位置で回転すると、ムーブメント10に設けられた、機械的エネルギー源としてのぜんまいを巻き上げることができる。ぜんまいの巻上げに連動して、パワーリザーブ針が移動する。
【0013】
りゅうず7を1段位置に引いて回転すると、日車6を移動して日付を合わせることができる。りゅうず7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でりゅうず7を回転すると、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。
【0014】
図2に示すように、回転錘15の錘体15Aには、開口15Bが形成され、回転錘15の位置によって、ぜんまいの巻き上げ残量を表示するパワーリザーブ針とパワーリザーブ目盛5とが視認できないことが少なくなるように構成されている。
【0015】
次に、図3図5を参照しながら、文字板3側から見たムーブメント10の構成を説明する。ここでムーブメント10とは、時計1からケース2や文字板3・指針4A~4Cなどの外装部品を除き、且つ、輪列などの指針4A~4Cを駆動するための駆動部品を含む、一つに組み立てられた構造体をいう。なお、図4は、図3に示すムーブメント10から日車6を取り外した状態を示している。図5に示すムーブメント10は、文字板3が取り付けられる側(以下、文字板3側)が下になるように配置されている。
【0016】
図3及び図4に示すように、ムーブメント10は、地板11に筒車21が配置される。筒車21には、時針4Aが固定される。筒車21には、日回し中間車が取り付けられ、日回し中間車で回転される日回し車22には、日車6を回転する日回し爪が取り付けられている。
【0017】
図4に示すように、ムーブメント10から日車6を取り外すと、日車6と重なるように、環状の文字板側耐磁部品30が配置されている。文字板側耐磁部品30は、時計1外部からの磁界に対して、シールドするために用いられる。なお、環状に形成された文字板側耐磁部品30の下や内側には、時計部品としてのコイルブロック24が配置されている。これにより、文字板3側からの磁界が、コイルブロック24に影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0018】
文字板側耐磁部品30は、例えば、純鉄やパーマロイ等により形成されている。
【0019】
次に、図5図11を参照しながら、裏蓋9側から見たムーブメント10の構成を説明する。なお、図7は、図6に示すムーブメント10から受部品としての輪列受25を取り外した状態を示している。図5に示すムーブメント10は、前述の通り、文字板3側が下になるように、すなわち裏蓋9側が上になるように配置されている。
【0020】
図6及び図7に示すように、裏蓋9側から見たムーブメント10は、ぜんまいが収納される香箱車26を備える。時針4A、分針4B、秒針4Cは、ムーブメント10の筒車21、筒かな、四番車54にそれぞれ取り付けられ、ムーブメント10のぜんまいによって駆動される。
【0021】
ムーブメント10は、地板11、二番受27(図5参照)、輪列を保持する輪列受25、を備えている。地板11、二番受27、輪列受25は、面を備える平板状の部品である。地板11と二番受27や輪列受25との間には、図5に示すように、ぜんまいを収納する香箱と、パワーリザーブ表示機構と、ぜんまいを巻き上げる手動巻上機構および自動巻上機構の一部と、ぜんまいのトルクを伝達する表示輪列50と、表示輪列50を介して伝達されるトルクで駆動される発電機28(図5参照)と、発電機28からの電力によって駆動され表示輪列50の回転周期を制御する図示しないICが搭載される回路基板と、が配置されている。
【0022】
図7に示すように、発電機28は、ローター40と、コイルブロック24と、を備えて構成される。ローター40は、ローター磁石41、ローターかな42、ローター慣性円板43を備えている。また、ぜんまいからのトルクは、後述するように、表示輪列50を介してローター40に伝達される。コイルブロック24は、コイル24aと、ステーター24bと、によって構成されている。
【0023】
発電機28は、ぜんまいのトルクでローター40が回転すると、コイルブロック24によって誘起電力を発生し、電気的エネルギーを出力してIC等に供給できる。また、コイル24aをショートさせることで、ローター40にブレーキを加えることができ、ICの制御によってブレーキ力を制御することで、ローター40の回転周期、すなわち表示輪列50の回転周期を一定に調速できる。
【0024】
以上のように、本実施形態の時計1は、誘起電力を発生し電気的エネルギーを出力し、調速機構としても利用される発電機28のローター40の回転を用いた、電子制御式機械時計として構成されている。
【0025】
香箱は、ぜんまいを収納し、香箱車26と香箱真とを備える。香箱真には、香箱真と一体に回転する角穴車29が取り付けられている。
【0026】
自動巻上機構は、図5に示す回転錘15と、回転錘15を回動自在に軸支し、回転錘51と一体で回転する歯車を備える図示略のベアリングと、このベアリングの歯車に噛み合う図7に示す偏心車57と、爪レバーと、伝え車54とを備える。回転錘51が回転すると、偏心車57、爪レバー、伝え車54を介して、香箱車26に同軸に取り付けられた角穴車29が回転することで、香箱車26に収納されたぜんまいが巻き上げられる。なお、本実施形態において、手動巻上機構の説明は省略する。
【0027】
次に、ぜんまいからの機械的エネルギーによって時針4A、分針4B、秒針4Cを駆動する表示輪列50について説明する。図7に示すように、表示輪列50は、二番車、三番車53、四番車54、五番車55、六番車56、を備え、地板11に配置されている。香箱車26の回転は、二番車へ伝達された後、三番車53、四番車54、五番車55、六番車56と順次増速され、ローター40へ伝達される。二番車には、筒かなを介して分針4Bが固定されている。四番車54には、秒針4Cが固定されている。また、筒かなには、日の裏車を介して筒車21が接続されている。この筒車21には、時針4Aが固定されている。
【0028】
なお、香箱と、自動巻上機構のうちの偏心車57、爪レバー、伝え車54と、表示輪列50と、を総称して輪列と呼ぶ場合がある。
【0029】
図7に示すように、地板11の外周の内側には、第1耐磁部品31が配置されている。つまり、第1耐磁部品31は、コイルブロック24の裏蓋9側の少なくとも一部を覆うように配置されている。
【0030】
また、第1耐磁部品31は、裏蓋9側から見た平面視で、環状に形成されている。平面視で第1耐磁部品31の内側には、輪列の少なくとも一部が配置されている。具体的には、第1耐磁部品31の内側には、少なくとも、四番車54、偏心車57、伝え車58、が配置されている。言い換えれば、ムーブメント10の中心部の輪列の一部を逃げるように環状の第1耐磁部品31が配置されている。
【0031】
また、第1耐磁部品31は、図5に示すように、裏蓋9の面に平行な方向から見た側面視では、地板11と輪列受25との間に配置されている。具体的には、第1耐磁部品31は、輪列の一部と同じ高さであり、地板11の面に垂直なZ方向において輪列が配置される範囲内に配置されている。に配置されている。
【0032】
なお、本実施形態の同じ高さとは、輪列を構成する二番車52、三番車53、四番車54、伝え車54、爪レバー、偏心車57などの部品の一部の高さと第1耐磁部品31の高さが面一で揃っている状態に限定されない。例えば、側面視で、第1耐磁部品31が部品の一部と重なっている状態や、輪列を構成する部品のうち最も裏蓋側に配置されている部品よりも地板に近い位置に第1耐磁部品31が配置されている状態を含む。本実施形態では、第1耐磁部品31は偏心車57よりも地板側に配置されている。つまり、第1耐磁部品31が、側面視で輪列を構成する部品のZ方向の範囲内の高さに配置されているので、従来のように、ムーブメント10よりも裏蓋9側に耐磁部品を配置する場合と比較して、時計1の厚みを薄くすることができる。
【0033】
図7に示すように、平面視で、第1耐磁部品31の外側、かつ、地板11の外周よりも内側には、第2耐磁部品32が配置されている。具体的には、第2耐磁部品32は、コイルブロック24の側面の少なくとも一部を覆うように配置されている(図10参照)。更に、第2耐磁部品32は、第1耐磁部品31の一部と接触している(図10参照)。
【0034】
なお、第1耐磁部品31及び第2耐磁部品32は、例えば、文字板側耐磁部品30と同様に、純鉄やパーマロイ等により形成されている。
【0035】
図8A図8B図8Cに示すように、環状の第1耐磁部品31は、第1本体部31aと、第2本体部31bと、第1接触部31cと、第2接触部31dと、を備えている。具体的には、第1耐磁部品31は、第1本体部31aからコイルブロック24の側面に延びるように延在する側部31a2と、側部31a2に連設され重畳領域を構成する重畳部としての第1接触部31c及び第2接触部31dを有する。
【0036】
第2本体部31bは、第1本体部31aよりも、段差部31a1を介して高い位置に設けられている。第1接触部31c及び第2接触部31dは、第1本体部31aよりも、側部31a2を介して低い位置に設けられている。
【0037】
図9A及び図9Bに示すように、第2耐磁部品32は、第1耐磁部品31の外周側の半分を囲むように、湾曲して形成されている。第2耐磁部品32は、第1本体部32aと、第2本体部32bと、第1接触部32cと、第2接触部32dと、固定部32eと、を備えている。
【0038】
具体的には、第1本体部32aと第2本体部32bとは、同じ高さに配置されている。第1接触部32cは、第1本体部32aよりも、段差部32a1を介して低い位置に設けられている。第2接触部32dは、第2本体部32bよりも、段差部32b1を介して低い位置に設けられている。固定部32eは、第1本体部32a及び第2本体部32bよりも、段差部32a2,32b2を介して低い位置に設けられている。
【0039】
即ち、第1耐磁部品31は、ケース2の軸方向すなわちZ方向に、段差、本実施形態では段差部31a1を有する。段差部31a1によって形成された段差内に、輪列の一部である角穴車29が配置されている。このように、第1耐磁部品31の段差内に、輪列の一部が配置される、言い換えれば、輪列の高さの範囲内に第1耐磁部品31が収まるので、時計1を薄型化しつつ、第1耐磁部品31をムーブメント10内に配置することができる。また、段差を設けることで、第1耐磁部品31に角穴車29を避けるための切り欠きを設けずに、第1耐磁部品31を連続した環状にすることができる。これにより、後述するように外部からの磁界がステーター24bに与える影響を低減することができる。
【0040】
図7に示すように、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、E部において、第1接触部31cと第1接触部32cとが重畳する重畳領域において接触する。そして、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、第1固定ねじ13aによって、例えば、地板11に固定されている(図10参照)。一方、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、F部において、第2接触部31dと第2接触部32dとが接触する。そして、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、第2固定ねじ13bによって、例えば、地板11に固定されている(図11参照)。
【0041】
第1耐磁部品31の第1本体部31aと側部31a2との連設部分は、裏蓋9側から見た平面視で、輪列受25で覆われ、接触部31c,31dは、裏蓋9側から見た平面視で、第2耐磁部品32で覆われる。よって、第1耐磁部品31の第1本体部31aから接触部31c、31dまでの間にしわや亀裂が発生しても、輪列受25や第2耐磁部品32で、第1耐磁部品31に発生したしわや亀裂を使用者から視認しにくいように隠すことが可能となり、外観品質が低下することを抑えることができる。
【0042】
また、第2耐磁部品32の固定部32eは、第1耐磁部品31を介さずに、地板11に固定されている。なお、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、2箇所で接触していることに限定されず、3箇所以上で接触するようにしてもよい。また、第1接触部31c,32cや第2接触部31d,32dで接触することに限定されず、それ以外の部分で接触するようにしてもよい。
【0043】
このように、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とを配置、及び接触させることにより、第2耐磁部品32と第1耐磁部品31との間において空気層を介さない磁気導通経路を形成でき、耐磁性能を高めることができる。また、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とをムーブメント10内に組み込むことによって、耐磁部品をムーブメント10とケース2との間に配置するよりも時計1を小型化できる。
【0044】
また、図5に示すように、回転錘15は、重錘15Cと、重錘15Cを支持する錘体15Aと、を有する。回転錘15は、スムーズに回転させやすくするために、重錘15Cの厚みL1が、錘体15Aの厚みL2に比べて厚くなっている。しかしながら、第1耐磁部品31の段差(即ち、第1本体部31aと接触部31c,31dとの段差)に合わせて、重錘15Cの一部を段差に配置することによって、従来のように、重錘15Cが+Z方向に厚くなることにより時計1の厚みが厚くなることと比較して、時計1の厚みを薄くすることができる。
【0045】
次に、図12を参照しながら、第1耐磁部品31を配置することにより、例えば、コイルブロック24を構成するステーター24bにどの程度の磁束密度が影響するのかを説明する。
【0046】
図12は、異なる形状の第1耐磁部品31に対して、外部から受ける磁界の強さ(G)とステーター24bに生じる磁束密度(T)との関係を解析した磁場解析の結果を示すグラフである。横軸は、外部から受ける磁界の強さ(G)を示しており、右側にいくに従って、磁界が大きくなっている。縦軸は、ステーター24bに生じる磁束密度(T)を示しており、上に行くに従って、磁束密度が大きくなっている。
【0047】
磁場解析をした際に用いた耐磁部品の形状は、リング形状(即ち、環状形状)、リングの一部が欠けたCリング形状、細い幅の長方形、広い幅の長方形1、広い幅の長方形2、の5種類である。なお、解析条件として、耐磁性能が耐磁部品の体積に依存するため、全形状で厚みを揃えた板状とした。そして、広い幅の長方形2以外全て同じ体積とし、広い幅の長方形2のみ、広い幅の長方形1よりも長さを短くして他の形状よりも体積を小さくした。そして、それぞれの耐磁部品がコイルブロックのうちのステーターに重なるように配置した。
【0048】
図12に示すように、最も効果があったものは、外部磁界の強さが大きくても、ステーター24bに影響を与える磁束密度が小さい、リング形状であった。本実施形態のように、第1耐磁部品31の形状が環状であるので、外部からの磁界による影響を、最小限に留めることができる。
【0049】
以上述べたように、本実施形態の時計1は、筒状のケース2と、ケース2の一方に配置され、透過領域を有する裏蓋9と、ケース2に収納され、コイルブロック24と、コイルブロック24の裏蓋9側の少なくとも一部を覆う第1耐磁部品31と、コイルブロック24の側面の少なくとも一部を覆う第2耐磁部品32と、を有するムーブメント10と、を備え、第1耐磁部品31は、裏蓋9に垂直な方向から見た平面視で、第2耐磁部品32と重畳する重畳領域を有し、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、重畳領域で接触して配置される。
【0050】
この構成によれば、重畳領域において、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とを重ねて接触させるため、空気層を介さない磁気導通経路を形成することが可能となり、更に、コイルブロック24の側面に配置された第2耐磁部品32で、第1耐磁部品31に発生したしわや亀裂を隠すことが可能となり、外観品質が低下することを抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態の時計1において、重畳領域は、複数設けられていることが好ましい。この構成によれば、重畳領域が複数設けられるので、磁気導通経路を複数形成することが可能となり、耐磁性能を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態の時計1において、ムーブメント10は、輪列と、輪列を保持する輪列受25と、を備え、第1耐磁部品31は、コイルブロック24の裏蓋9側の少なくとも一部を覆う第1本体部31aと、第1本体部31aからコイルブロック24の側面に延びるように延在する側部31a2と、側部31a2に連設され重畳領域を構成する接触部31c,31dと、を備え、第1本体部31aと側部31a2との連設部分は、裏蓋9側から見た平面視で、輪列受25で覆われ、接触部31c,31dは、裏蓋9側から見た平面視で、第2耐磁部品32で覆われることが好ましい。
【0053】
この構成によれば、第1耐磁部品31の裏蓋9側に輪列受25を配置し、第1耐磁部品31の側部31a2や接触部31c,31dに第2耐磁部品32を配置するので、第1耐磁部品31が、透過領域を介して外部から視認されにくいように隠すことが可能となる。つまり、第1耐磁部品31に曲げなどの加工を施した際に発生したしわや亀裂を隠すことが可能となり、外観品質が低下することを抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態の時計1において、ムーブメント10は、重錘15Cと、重錘15Cを支持する錐体15Aと、を有する回転錘15を備え、裏蓋9の面に平行な方向から見た側面視で、第1本体部31aと接触部31c,31dとの間に段差が設けられており、重錘15Cの一部は、段差に配置されることが好ましい。この構成によれば、段差に重錘15Cの一部が配置されるので、例えば、回転錘15を回転させやすくさせるために重錘15Cを錘体15Aよりも厚く形成した場合でも、重錘15Cが裏蓋9側に飛び出ることを抑えることが可能となり、時計1を薄型化することができる。
【0055】
また、本実施形態の時計1において、時計部品は、コイル24a、ステーター24b、ローター40、を備えるコイルブロック24であることが好ましい。この構成によれば、時計部品がコイルブロック24であり、コイルブロック24の裏蓋9側や側面に、第1耐磁部品31及び第2耐磁部品32を配置するので、外部からの磁界が、コイルブロック24に影響を与えることを抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態の時計1において、ムーブメント10は、機械的エネルギー源を有し、コイルブロック24は、機械的エネルギー源からのエネルギーを電力に変換する発電機28であることが好ましい。この構成によれば、機械的エネルギー源や発電機28を備える時計1において、外部からの磁界が、発電機28に影響を与えることを抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態の時計1において、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とは、重畳領域において、ケース2の軸方向に、ねじ13a,13bで固定されることで接触することが好ましい。この構成によれば、ねじ13a,13bで固定することで、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とを確実に接触させ、空気層を介さない磁気導通経路を形成することができる。また、軸方向にねじ止めできるので、ムーブメント10を容易に組み立てることができる。
【0058】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0059】
上記した実施形態では、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とを、空気層を介さない磁気経路を形成する構造として、第1固定ねじ13a及び第2固定ねじ13bによって接触及び固定する構造を記載したが、これに限定されない。例えば、図13A図13Cに示すようにしてもよい。
【0060】
図13Aは、第2耐磁部品32に対して、第1耐磁部品31をばね力で押し付けて接触させる構造を示す。図13Bは、第2耐磁部品32に形成された穴に、第1耐磁部品31に形成された凸部を嵌め込むことによって接触固定する構造を示す。なお、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とが逆の配置になってもよい。図13Cは、挟み込み部品14を用いて、第1耐磁部品31と第2耐磁部品32とを接触固定する構造である。これらの方法によれば、第2耐磁部品32と第1耐磁部品31との間において空気層を介さない磁気経路を形成でき、耐磁性能を高めることができる。
【0061】
上記した実施形態では、ぜんまいと、ぜんまいによって駆動されて電気的エネルギーを発生する発電機28と、表示輪列50の回転速度を制御するICとを備える電子制御式機械時計としての時計1を記載したが、これに限定されない。例えば、発電機28を持たずに、ぜんまいを備える機械的エネルギー源と、回転錘15と、回転錘15の回転に基づいてぜんまいを回巻する自動巻き輪列と、てんぷ等の調速機と、を備える機械式の時計に適用するようにしてもよいし、電池と水晶振動子と指針を駆動するモーターとを備えるクオーツ式の時計に適用するようにしてもよい。
【0062】
この構成によれば、機械式やクオーツ式の時計において、耐磁性能の維持と時計の小型化とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…時計、2…ケース、3…文字板、3A…カレンダー小窓、3B…アワーマーク、4A…時針、4B…分針、4C…秒針、5…パワーリザーブ目盛、6…日車、8…カバーガラス、9…裏蓋、9A…枠、9B…裏蓋ガラス、10…ムーブメント、11…地板、12…巻真、13a…第1固定ねじ、13b…第2固定ねじ、14…挟み込み部品、15…回転錘、15A…錘体、15B…開口、15C…重錘、21…筒車、22…日回し車、24…時計部品としてのコイルブロック、24a…コイル、24b…ステーター、25…受部品としての輪列受、26…香箱車、27…二番受、28…発電機、30…文字板側耐磁部品、31…第1耐磁部品、31a1…段差部、31a2…側部、31a…第1本体部、31b…第2本体部、31c…第1接触部、31d…第2接触部、32…第2耐磁部品、32a1…段差部、32a2…段差部、32a…第1本体部、32b1…段差部、32b2…段差部、32b…第2本体部、32c…第1接触部、32d…第2接触部、32e…固定部、40…ローター、41…ローター磁石、42…ローターかな、43…ローター慣性円板、50…表示輪列、53…三番車、54…四番車、55…五番車、56…六番車、57…偏心車、58…伝え車。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C