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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018198
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】医療用輸液装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240201BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20240201BHJP
   A61M 60/37 20210101ALI20240201BHJP
   A61M 60/279 20210101ALI20240201BHJP
   F04B 43/12 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61M1/16 117
A61M60/113
A61M60/37
A61M60/279
F04B43/12 N
F04B43/12 Z
F04B43/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121367
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾上 慶次
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 充
【テーマコード(参考)】
3H077
4C077
【Fターム(参考)】
3H077AA07
3H077CC04
3H077CC10
3H077DD02
3H077DD12
3H077EE25
3H077EE31
3H077FF02
3H077FF09
3H077FF44
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC04
4C077DD05
4C077EE03
4C077HH02
4C077HH15
4C077JJ08
4C077KK21
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】電荷の蓄積を抑制することで動作の信頼性が向上した医療用輸液装置を提供する。
【解決手段】医療用輸液装置は、絶縁性のチューブ50とフィンガポンプ100とを備える。フィンガポンプ100は、絶縁性のフィンガを含むポンプユニットと、支持フレーム140と、カバーとを有する。カバーは、閉状態においてフィンガとの間でチューブ50が挟み込み可能に位置し、開状態において挟み込み不能に位置する。カバーは、閉状態においてチューブ50に当接する導電性の当接部112tと、これに導通する導電性の第1接点112sとを含み、支持フレーム140は、導電性の第2接点140sを含む。医療用輸液装置は、フィンガがチューブ50を押圧することで蓄積される電荷が支持フレーム140側に向けて除電されるように、少なくとも閉状態において第1接点112sと第2接点140sとが接触するように構成される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のチューブと、
前記チューブ内の液体を輸送するフィンガポンプとを備え、
前記フィンガポンプは、複数の絶縁性のフィンガを含むポンプユニットと、前記ポンプユニットを支持する支持フレームと、開状態および閉状態に切り換えが可能なカバーとを有し、
前記複数のフィンガは、各々が前記チューブの延在方向と直交する方向において前記チューブを押圧可能となるように、前記チューブの延在方向に沿って並んで配置され、
前記カバーは、前記閉状態において、前記複数のフィンガの各々との間で前記チューブが挟み込み可能となるように、前記複数のフィンガに対向する位置に配置され、
前記カバーは、前記開状態において、前記複数のフィンガの各々との間で前記チューブが挟み込み不能となる位置に配置され、
前記カバーは、前記閉状態において前記チューブに当接する導電性の当接部と、前記当接部に導通する導電性の第1接点とを有し、
前記支持フレームは、導電性の第2接点を有し、
前記複数のフィンガによって前記チューブが押圧されることでこれらに蓄積される電荷が、前記支持フレーム側に向けて除電されることとなるように、少なくとも前記閉状態において、前記第1接点と前記第2接点とが接触するように構成されている、医療用輸液装置。
【請求項2】
前記カバーは、表面の少なくとも一部が導電性である板状部材を有し、
前記第1接点および前記当接部の各々が、前記板状部材の導電性の前記一部にて構成されている、請求項1に記載の医療用輸液装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記板状部材を保持するホルダと、前記板状部材と前記ホルダとの間に介装された弾性部材とをさらに有し、
前記板状部材が前記弾性部材によって前記ホルダから遠ざかる方向に向けて弾性付勢されることにより、前記板状部材が、前記閉状態において前記チューブ側に向けて押圧付勢される、請求項2に記載の医療用輸液装置。
【請求項4】
前記弾性部材が、コイルドウェーブスプリングである、請求項3に記載の医療用輸液装置。
【請求項5】
前記カバーが、前記支持フレームによって回動可能に支持されている、請求項1に記載の医療用輸液装置。
【請求項6】
前記支持フレームは、表面の少なくとも一部が導電性であり、
前記第2接点が、前記支持フレームの導電性の前記一部にて構成されている、請求項1に記載の医療用輸液装置。
【請求項7】
前記第2接点が、接地されている、請求項1に記載の医療用輸液装置。
【請求項8】
前記チューブの外径が、6mm以上である、請求項1に記載の医療用輸液装置。
【請求項9】
前記チューブが、第1チューブおよび第2チューブを含み、
前記ポンプユニットが、第1ポンプユニットおよび第2ポンプユニットを含み、
前記第1ポンプユニットは、当該第1ポンプユニットが有する複数のフィンガによって前記第1チューブを押圧可能なものであり、
前記第2ポンプユニットは、当該第2ポンプユニットが有する複数のフィンガによって前記第2チューブを押圧可能なものである、請求項1に記載の医療用輸液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を輸送するフィンガポンプを備えた、医療用輸液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透析および濾過の少なくとも一方によって血液を浄化する医療用輸液装置が知られている。たとえば、特開2020-805号公報(特許文献1)には、複数のフィンガによってチューブを押圧することでチューブ内の液体を輸送するフィンガポンプを備えた医療用輸液装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィンガポンプに用いられるフィンガやチューブは、いずれも絶縁物にて構成されることが一般的である。また、フィンガを支持する支持フレームや、フィンガと共にチューブを挟み込む板状部材は、これら自体は導電性の金属等からなるものの、これらの表面には防錆処理として絶縁性の被膜が形成される場合が多い。
【0005】
そのため、フィンガによるチューブの押圧が繰り返された場合には、これらに電荷が蓄積され易くなる。このようにして蓄積された電荷は、装置内の意図しない部分において絶縁破壊を引き起こす可能性があり、場合によっては、チューブの近傍に配置された、フィンガポンプを制御するための電子基板を短絡させ、結果としてフィンガポンプやこれを備える医療用輸液装置に不具合が生じるおそれがある。
【0006】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、電荷の蓄積を抑制することで動作の信頼性の向上が図られた医療用輸液装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく医療用輸液装置は、絶縁性のチューブと、上記チューブ内の液体を輸送するフィンガポンプとを備えている。上記フィンガポンプは、複数の絶縁性のフィンガを含むポンプユニットと、上記ポンプユニットを支持する支持フレームと、開状態および閉状態に切り換えが可能なカバーとを有している。上記複数のフィンガは、各々が上記チューブの延在方向と直交する方向において上記チューブを押圧可能となるように、上記チューブの延在方向に沿って並んで配置されている。上記カバーは、上記閉状態において、上記複数のフィンガの各々との間で上記チューブが挟み込み可能となるように、上記複数のフィンガに対向する位置に配置されている。上記カバーは、上記開状態において、上記複数のフィンガの各々との間で上記チューブが挟み込み不能となる位置に配置されている。上記カバーは、上記閉状態において上記チューブに当接する導電性の当接部と、上記当接部に導通する導電性の第1接点とを有している。上記支持フレームは、導電性の第2接点を有している。上記本発明に基づく医療用輸液装置においては、上記複数のフィンガによって上記チューブが押圧されることでこれらに蓄積される電荷が、上記支持フレーム側に向けて除電されることとなるように、少なくとも上記閉状態において、上記第1接点と上記第2接点とが接触するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電荷の蓄積を抑制することで動作の信頼性の向上が図られた医療用輸液装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る医療用輸液装置における体外循環回路を示す模式的な回路図である。
図2】実施の形態に係る医療用輸液装置を正面右上方から見た斜視図である。
図3図2に示す医療用輸液装置の左側面図である。
図4図3に示すフィンガポンプの、カバーの閉状態における斜視図である。
図5図3に示すフィンガポンプの、カバーの開状態における斜視図である。
図6図4に示すフィンガポンプの模式正面図である。
図7図6に示すフィンガポンプの模式断面図である。
図8図4に示すフィンガポンプの要部拡大側面図である。
図9図7に示す板状部材と支持フレームとの接触状態を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、医療用輸液装置として、持続緩徐式血液浄化療法(Continuous Renal Replacement Therapy:CRRT)に用いられる医療用輸液装置を例示するものである。ただし、本実施の形態に係る医療用輸液装置は、持続的血液濾過透析法(continuous hemodiafiltration:CHDF)、持続的血液ろ過法(continuous hemofiltration:CHF)、持続的血液透析法(continuous hemodialysis:CHD)、および、持続緩徐式限外濾過(Slow Continuous UltraFiltration:SCUF)のいずれかに用いられるものであってもよい。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る医療用輸液装置における体外循環回路を示す模式的な回路図である。図2は、実施の形態に係る医療用輸液装置を正面右上方から見た斜視図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態に係る医療用輸液装置1の構成について説明する。
【0012】
なお、以下の説明においては、図2に示すように、医療用輸液装置1を正面から見た場合の後方向および前方向をそれぞれX1方向およびX2方向と称し、これらX1方向およびX2方向に合致する方向をX軸方向とも称する。また、図2に示すように、医療用輸液装置1を正面から見た場合の右方向および左方向をそれぞれY1方向およびY2方向と称し、これらY1方向およびY2方向に合致する方向をY軸方向とも称する。さらに、図2に示すように、医療用輸液装置1を正面から見た場合の上方向および下方向をそれぞれZ1方向およびZ2方向と称し、これらZ1方向およびZ2方向に合致する方向をZ軸方向とも称する。ここで、鉛直方向は、Z軸方向に対応している。
【0013】
図1および図2に示す医療用輸液装置1は、透析および濾過の少なくとも一方によって血液を浄化するものである。医療用輸液装置1は、たとえば、手術室、集中治療室、救急治療室、病室あるいは準備室等、病院内の様々な場所において使用可能である。
【0014】
医療用輸液装置1は、筐体10と、血液浄化器20と、血液ポンプ30と、注射器40と、複数のチューブ50と、フィンガポンプ100とを備えている。
【0015】
筐体10は、箱形の形状を有しており、血液ポンプ30が取付けられる前面10aと、右側面と、フィンガポンプ100が取付けられる左側面10b(後述する図3参照)と、背面と、モニタ等が取付けられる曲成された天面とを含んでいる。
【0016】
血液浄化器20は、血液から不要または有毒な物質を除去するためのものであり、たとえば中空糸膜からなる半透膜を内部に含んでいる。血液浄化器20にあっては、中空糸膜の内側に血液が流れている状態において、たとえば中空糸膜の内側から外側に向けて圧力が印加されることにより、水分や血液中の老廃物、サイトカイン等の中分量物質が、血液浄化器20内における中空糸膜の内側領域から外側領域へと移動することになる。これにより、血液浄化器20による血液の浄化が行なわれる。
【0017】
血液浄化器20は、筐体10に取付けられている。血液浄化器20の血液入口側および血液出口側の各々には、可撓性のチューブ50が接続されている。
【0018】
図1に示すように、血液回路の動脈側ラインには、血液ポンプ30と、注射器40とが設けられている。
【0019】
血液ポンプ30は、血液回路において血液を循環させるためのものであり、血液を血液浄化器20に輸送する。血液ポンプ30は、ローラポンプであってもよいし、他の種類のポンプであってもよい。血液ポンプ30の動作は、医療用輸液装置1に設けられた図示しない制御装置によって制御される。
【0020】
注射器40は、血液回路と血液浄化器20とにおいて血液が凝固することを防ぐため、ユーザの操作に基づいて抗凝固薬を血液回路に供給するためのものである。
【0021】
医療用輸液装置1は、複数のチューブ50として、第1チューブ51と、第2チューブ52と、第3チューブ53とを備えている。
【0022】
第1チューブ51は、血液浄化器20から排出された排液を流す排液用チューブである。第1チューブ51は、その一端が、血液浄化器20に接続されており、他端が、排液を貯留する排液用容器61に接続されている。
【0023】
第2チューブ52は、血液浄化器20に透析液を供給する透析液用チューブである。第2チューブ52は、その一端が、透析液を貯留する透析液用容器62に接続されており、他端が、血液浄化器20に接続されている。
【0024】
第3チューブ53は、血液回路の静脈側ラインに補液を供給する補液用チューブである。第3チューブ53は、その一端が、補充液を貯留する補充液用容器63に接続されており、他端が、補充液を加熱するヒータに接続されている。なお、当該ヒータは設けられていなくてもよく、その場合には、上記他端は、血液回路の静脈側ラインに直接接続される。
【0025】
これら複数のチューブ50は、たとえばポリ塩化ビニル等の絶縁性の材料にて構成されている。また、複数のチューブ50は、可撓性を有している。そのため、複数のチューブ50は、各々の延在方向に直交する方向に押しつぶされることにより、当該チューブ50内の流路が閉塞されることになる。
【0026】
チューブ50の大きさは、特にこれが制限されるものではない。本実施の形態においては、外径が6mm以上であるチューブ50が用いられている。
【0027】
図3は、図2に示す医療用輸液装置の左側面図である。図4は、図3に示すフィンガポンプの、カバーの閉状態における斜視図である。図5は、図3に示すフィンガポンプの、カバーの開状態における斜視図である。図6は、図4に示フィンガポンプの模式正面図である。図7は、図6中に示すVII-VII線に沿ったフィンガポンプの模式断面図である。次に、これら図3ないし図7を参照して、本実施の形態に係るフィンガポンプ100の構成について説明する。
【0028】
ここで、本実施の形態に係るフィンガポンプ100の構成のうちの、カバー110の閉状態におけるチューブ50近傍の部分については、後において詳述することとする。
【0029】
なお、図6においては、カバー110の閉状態における後述する支持フレーム140および複数のポンプユニット120と、チューブ50との対応を、当該図6を参照することで理解できるようにするため、カバー110に覆われることで直接的には視認することができない部分の複数の支持フレーム140、ポンプユニット120およびチューブ50を、模式的にカバー110を透過させることで図示している。また、図6および図7においては、チューブ50の外形を二点鎖線で示している。
【0030】
図3に示すように、フィンガポンプ100は、医療用輸液装置1の筐体10に取付けられて使用される。本実施の形態においては、フィンガポンプ100は、筐体10の左側面10bに取付けられている。フィンガポンプ100は、これに取付けられたチューブ50内の液体を輸送するためのものである。
【0031】
図3ないし図7に示すように、フィンガポンプ100は、カバー110と、閉状態のカバー110と共にチューブ50を挟み込む複数のポンプユニット120と、これら複数のポンプユニット120を駆動する駆動機構130と、複数のポンプユニット120を支持する支持フレーム140とを有している。
【0032】
図4および図5に示すように、カバー110は、これが有する後述するヒンジ部115が支持フレーム140の下端側の部分に取付けられていることにより、当該支持フレーム140によって回動可能に支持されている。これにより、カバー110は、閉状態および開状態に切り替えが可能に構成されている。
【0033】
ここで、カバー110の閉状態とは、図4に示すように、当該カバー110が、後述する複数のフィンガ120a(図5参照)の各々との間でチューブ50を挟み込み可能となるように、複数のフィンガ120aに対向する位置に配置された状態のことである。
【0034】
カバー110の開状態とは、図5に示すように、当該カバー110が、複数のフィンガ120aの各々との間でチューブ50を挟み込み不能となる位置に配置された状態のことである。カバー110の開状態においては、フィンガポンプ100へのチューブ50の取付けおよび取り外しが可能となる。
【0035】
図4図5および図7に示すように、カバー110は、ホルダ111と、複数の板状部材112と、ホルダ111と複数の板状部材112との間に介装された複数の弾性部材113と、レバー114と、ヒンジ部115とを有している。
【0036】
図4および図5に示すように、ホルダ111は、偏平な略直方体形状の外形を有している。ホルダ111は、複数の板状部材112を保持するとともに、閉状態において複数のポンプユニット120を覆うためのものである。
【0037】
ホルダ111の材質は、特にこれが制限されるものではなく、たとえばアルミニウム等の金属材料や樹脂等にて構成される。
【0038】
図5および図7に示すように、複数の板状部材112は、閉状態においてチューブ50側に面する側のホルダ111の主面に取付けられている。
【0039】
より詳細には、カバー110は、複数の板状部材112として、閉状態においてZ軸方向に沿って並んで位置する第1板状部材112aと、第2板状部材112bと、第3板状部材112cとを含んでいる。これら複数の板状部材112は、ボルト等によってホルダ111に取付けられている。
【0040】
閉状態において、第1板状部材112aは、後述する第1ポンプユニット121に対向する位置に配置されている。同様に、閉状態において、第2板状部材112bは、第2ポンプユニット122に対向する位置に配置されており、第3板状部材112cは、第3ポンプユニット123に対向する位置に配置されている。
【0041】
これにより、第1板状部材112aは、第1ポンプユニット121と共に第1チューブ51を挟み込み可能となる。同様に、第2板状部材112bは、第2ポンプユニット122と共に第2チューブ52を挟み込み可能となり、第3板状部材112cは、第3ポンプユニット123と共に第3チューブ53を挟み込み可能となる。
【0042】
複数の板状部材112は、その表面全体が導電性であるものによって構成される。表面全体が導電性であるものとしては、たとえば、金属の表面に導電性の被膜を形成する防錆処理が行なわれたものがあり、より詳細には、アルミニウムの表面にアロジン処理やニッケルクロムメッキ処理が施されたものや、鉄の表面にハードクロムメッキ処理が施されたもの等が挙げられる。本実施の形態においては、複数の板状部材112として、アルミニウムの表面にニッケルクロムメッキ処理が施されたものが用いられている。これにより、複数の板状部材112の表面に防錆処理を施しつつ、その表面を導電性にすることができる。
【0043】
これら複数の板状部材112は、チューブ50に当接する部分である導電性の当接部112tと、当該当接部112tに導通する導電性の第1接点112sとを含んでいるが、その詳細については後述することとする。
【0044】
図7に示すように、ホルダ111と第1板状部材112aとの間には、2つの弾性部材113が介装されている。同様に、ホルダ111と第2板状部材112bとの間には、2つの弾性部材113が介装されており、ホルダ111と第3板状部材112cとの間には、2つの弾性部材113が介装されている。
【0045】
弾性部材113は、第1板状部材112aをホルダ111から遠ざける方向に向けて弾性付勢している。これにより、第1板状部材112aは、閉状態において第1チューブ51側に向けて押圧付勢されることになり、結果として第1板状部材112aが支持フレーム140に押し当てられることになる。
【0046】
弾性部材113は、たとえば金属等からなる板バネ形状を有するものやコイルスプリング等にて構成されるが、好適には、短いストロークで大きい弾性力が得られるコイルドウェーブスプリングによって構成される。
【0047】
弾性部材113をコイルドウェーブスプリングによって構成することにより、弾性部材113の伸縮方向(すなわち、カバー110の厚み方向)の大きさが低減されることになる。その結果、カバー110が薄型化されることでカバー110の重量が低減されるため、フィンガポンプ100の操作性が向上することになる。
【0048】
ホルダ111と第1板状部材112aとの間に介装される弾性部材113の数は、特にこれが2つに限定されるものではなく、単数であってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。ホルダ111と第2板状部材112bとの間に介装される弾性部材113の数、および、ホルダ111と第3板状部材112cとの間に介装される弾性部材113の数についても同様である。
【0049】
図4および図5に示すように、レバー114は、ホルダ111に対して回動可能に固定されたものであり、全体として略U字状の形状を有している。レバー114は、把持部114aと、2つの突出部114bとを含んでいる。突出部114bは、レバー114のうちのホルダ111に固定されている側の端部に配置されている。レバー114は、カバー110の開状態および閉状態の切り換えを行なう際に用いられるものである。
【0050】
カバー110を開状態から閉状態に切り換えるに際しては、まず、ユーザは、ホルダ111を支持フレーム140側に向けて押し当てるように当該ホルダ111を回動させる。次に、ユーザは、把持部114aを把持してレバー114を押し下げる。これにより、突出部114bが、支持フレーム140に設けられた受け入れ部に挿入されるとともに、当該受け入れ部が有する図示しないピン等に係止される。その結果、カバー110の開状態から閉状態への切り換えが完了する。
【0051】
カバー110を閉状態から開状態に切り換えるに際しては、まず、ユーザは、把持部114aを把持してレバー114を押し上げる。これにより、突出部114bの受け入れ部への係止が解除される。次に、ユーザは、把持部114aあるいはホルダ111を手前側に向けて引っ張ることにより、ホルダ111を、支持フレーム140から離間させる方向に向けて回動させる。これにより、カバー110の閉状態から開状態への切り換えが完了する。
【0052】
図5に示すように、ヒンジ部115は、ホルダ111の下端部に位置している。ヒンジ部115は、支持フレーム140の下端側の部分に取付けられることにより、カバー110と支持フレーム140とを連結している。
【0053】
図5ないし図7に示すように、フィンガポンプ100は、複数のポンプユニット120として、第1ポンプユニット121と、第2ポンプユニット122と、第3ポンプユニット123とを含んでいる。
【0054】
これら複数のポンプユニット120は、各々が、これに取付けられるチューブ50の延在方向であるX軸方向に沿って並んで配置された複数のフィンガ120aを含んでいる。これにより、複数のフィンガ120aは、各々が、チューブ50の延在方向と直交する方向であるY軸方向において当該チューブ50を押圧可能となる。本実施の形態においては、複数のポンプユニット120は、各々が、複数のフィンガ120aとして、5つのフィンガ120a1,120a2,120a3,120a4,120a5を含んでいる。
【0055】
図7に示すように、フィンガ120aは、チューブ50側に向けて突出した凸状部120acを含んでいる。フィンガ120aの材質は、特にこれが制限されるものではない。本実施の形態にあっては、フィンガ120aは、プラスチック等の絶縁性の材料にて構成されている。
【0056】
第1ポンプユニット121は、排液ポンプであり、血液浄化器20内の中空糸膜の外側領域に移動した透析液の排液を排液用容器61に送るために用いられる。より詳細には、第1ポンプユニット121は、これに取付けられた第1チューブ51の管路内を流れる排液を、血液浄化器20側から排液用容器61側に向けて(すなわち、図4ないし図7におけるX2方向に向けて)輸送する。
【0057】
第2ポンプユニット122は、透析液ポンプであり、透析液用容器62に貯留された透析液を血液回路に供給するために用いられる。より詳細には、第2ポンプユニット122は、これに取付けられた第2チューブ52の管路内を流れる透析液を、透析液用容器62側から血液浄化器20側に向けて(すなわち、図4ないし図7におけるX1方向に向けて)輸送する。
【0058】
第3ポンプユニット123は、補充液ポンプであり、補充液用容器63に貯留された補充液を血液回路に供給するために用いられる。より詳細には、第3ポンプユニット123は、これに取付けられた第3チューブ53の管路内を流れる補充液を、補充液用容器63側からヒータあるいは静脈側ライン側に向けて(すなわち、図4ないし図7におけるX1方向に向けて)輸送する。
【0059】
これら複数のポンプユニット120は、各々が独立して動作可能である。本実施の形態にあっては、これらの動作は、上述した血液ポンプ30の動作の制御を行なう制御装置によって制御される。
【0060】
複数のポンプユニット120の配置は、特にこれが制限されるものではないが、医療用輸液装置1のユーザの操作性の観点から、互いに一列に並んで配置されていることが好ましい。本実施の形態にあっては、これら複数のポンプユニット120は、鉛直方向であるZ方向に沿うように、Z1方向側からZ2方向側に向けて第1ポンプユニット121、第2ポンプユニット122、第3ポンプユニット123の順に配置されている。
【0061】
図4図5および図7に示すように、複数のポンプユニット120から見て閉状態においてカバー110が位置する側とは反対側の位置には、これら複数のポンプユニット120を駆動する駆動機構130が配置されている。駆動機構130は、フィンガポンプ100が医療用輸液装置1の筐体10に取付けられている状態において、当該筐体10に格納されている。
【0062】
駆動機構130は、第1ポンプユニット121を駆動する第1駆動機構131と、第2ポンプユニット122を駆動する第2駆動機構と、第3ポンプユニット123を駆動する第3駆動機構と、これらを格納するケーシング132とを含んでいる。第1駆動機構131、第2駆動機構および第3駆動機構は、各々が独立して動作可能に構成されている。
【0063】
図7に示すように、第1駆動機構131は、複数のシャフト131aと、複数の偏心カムローラ131bと、回転シャフト131cと、駆動ベルト131dと、駆動軸131eと、ステッピングモータ131fとを有している。
【0064】
より詳細には、第1駆動機構131は、複数のシャフト131aとして、上述した第1ポンプユニット121のフィンガ120a1に対応するシャフト131a1、フィンガ120a2に対応するシャフト131a2、フィンガ120a3に対応するシャフト131a3、フィンガ120a4に対応するシャフト131a4、および、フィンガ120a5に対応するシャフト131a5を有している。
【0065】
第1駆動機構131は、複数の偏心カムローラ131bとして、シャフト131a1に対応する偏心カムローラ131b1、シャフト131a2に対応する偏心カムローラ131b2、シャフト131a3に対応する偏心カムローラ131b3、シャフト131a4に対応する偏心カムローラ131b4、および、シャフト131a5に対応する偏心カムローラ131b5を有している。
【0066】
シャフト131a1は、一端が、対応するフィンガ120a1に接続されており、他端が、対応する偏心カムローラ131bによって周期的に押圧可能となるように当該偏心カムローラ131bに当接されている。シャフト131a2,131a3,131a4,131a5についても同様である。
【0067】
ステッピングモータ131fの駆動軸131eと回転シャフト131cとの間には、駆動ベルト131dが巻き掛けられている。ステッピングモータ131fの駆動による回転駆動力は、駆動ベルト131dを介して回転シャフト131cに伝達され、これによって回転シャフト131cが回転駆動することになる。
【0068】
ここで、5つの偏心カムローラ131b1,131b2,131b3,131b4,131b5は、回転方向の位相が互いに所定角度ずれた状態で単一の回転シャフト131cに取付けられている。これにより、5つのフィンガ120aは、互いに異なるタイミングで第1チューブ51を押圧可能となる。
【0069】
このように構成された第1駆動機構131を用いることにより、第1ポンプユニット121の複数のフィンガ120a1,120a2,120a3,120a4,120a5を順次移動させることで第1チューブ51内の液体を脈動させながら輸送することが可能になる。
【0070】
なお、第2駆動機構および第3駆動機構についても、上述した第1駆動機構131と同様に構成されている。
【0071】
図4ないし図7に示すように、支持フレーム140は、全体として正面視略矩形状の板形状を有している。支持フレーム140は、貫通孔からなる複数の窓部141と、複数の凹状部142と、複数のチューブ把持部143とを有している。
【0072】
図5および図6に示すように、支持フレーム140は、複数の窓部141として、Z軸方向に沿って並んで配置された第1窓部141a、第2窓部141bおよび第3窓部141cを含んでいる。これら複数の窓部141の各々の正面視形状は、ポンプユニット120を平面視した場合の外形と略同一となるように構成されている。
【0073】
第1窓部141aには、第1ポンプユニット121が挿通されている。同様に、第2窓部141bには、第2ポンプユニット122が挿通されており、第3窓部141cには、第3ポンプユニット123が挿通されている。
【0074】
これにより、窓部141は、ポンプユニット120を支持するとともにこれをチューブ50側に向けて露出させることができる。なお、窓部141の数は、特にこれが3つに限定されるものではなく、ポンプユニット120の数に対応するように適宜変更可能である。なお、支持フレーム140の表面のうちの、複数の窓部141に隣接する部分は、樹脂材料からなる窓枠部材141dによって規定されている(図6中における色付き部分を参照)。
【0075】
支持フレーム140は、複数の凹状部142として、一対の第1凹状部142aと、一対の第2凹状部142bと、一対の第3凹状部142cとを含んでいる。
【0076】
一対の第1凹状部142aは、X軸方向において第1窓部141aを挟み込むように位置している。一対の第2凹状部142bは、X軸方向において第2窓部141bを挟み込むように位置している。一対の第3凹状部142cは、X軸方向において第3窓部141cを挟み込むように位置している。
【0077】
これら複数の凹状部142は、いずれも、X軸方向に沿って見た場合に、チューブ50側に開口する略C字状に構成されている。これにより、一対の第1凹状部142aは、第1チューブ51を非接触に取り囲んでいる。同様に、一対の第2凹状部142bは、第2チューブ52を非接触に取り囲んでおり、一対の第3凹状部142cは、第3チューブ53を非接触に取り囲んでいる。
【0078】
支持フレーム140は、複数のチューブ把持部143として、一対の第1チューブ把持部143aと、一対の第2チューブ把持部143bと、一対の第3チューブ把持部143cとを含んでいる。
【0079】
一対の第1チューブ把持部143aは、その一方が、一対の第1凹状部142aの一方のX軸方向における外側に位置し、他方が、一対の第1凹状部142aの他方のX軸方向における外側に位置している。
【0080】
同様に、一対の第2チューブ把持部143bは、その一方が、一対の第2凹状部142bの一方のX軸方向における外側に位置し、他方が、一対の第2凹状部142bの他方のX軸方向における外側に位置している。一対の第3チューブ把持部143cは、その一方が、一対の第3凹状部142cの一方のX軸方向における外側に位置し、他方が、一対の第3凹状部142cの他方のX軸方向における外側に位置している。
【0081】
これら複数のチューブ把持部143はいずれも、X軸方向に沿って見た場合に、チューブ50側に開口する略C字状に構成されている。これにより、一対の第1チューブ把持部143aは、第1チューブ51をその延在方向に直交する方向(すなわち、Y軸方向)において取り外し可能に把持している。同様に、一対の第2チューブ把持部143bおよび一対の第3チューブ把持部143cについても同様である。
【0082】
支持フレーム140のうちの窓枠部材141dを除く部分は、その表面全体が導電性であるものによって構成される。表面全体が導電性であるものとしては、たとえば、金属の表面に導電性の被膜を形成する防錆処理が行なわれたものがあり、より詳細には、アルミニウムの表面にアロジン処理やニッケルクロムメッキ処理が施されたものや、鉄の表面にハードクロムメッキ処理が施されたもの等が挙げられる。本実施の形態においては、支持フレーム140として、アルミニウムの表面全体にニッケルクロムメッキ処理が施されたものが用いられている。これにより、支持フレーム140のうちの窓枠部材141dを除く部分の表面全体に防錆処理を施しつつ、その表面全体を導電性にすることができる。
【0083】
支持フレーム140は、さらに、上述したカバー110の少なくとも閉状態において板状部材112の第1接点112sに接触する導電性の第2接点140sを有しているが、この点については後において詳述することとする。
【0084】
図8は、図4に示すフィンガポンプの要部拡大側面図である。図9は、図7に示す板状部材と支持フレームとの接触状態を説明するための斜視図である。次に、これら図8および図9と、前述の図7とを参照して、本実施の形態に係るフィンガポンプ100の構成のうちの、閉状態におけるチューブ50近傍の部分について説明する。
【0085】
ここで、図9においては、閉状態における板状部材112と支持フレーム140との接触状態についての理解を容易とするため、カバー110のうちの、板状部材112のみを図示することとし、その余の部分の図示は省略している。
【0086】
なお、複数のチューブ50のうちの、第1チューブ51の近傍に位置する第1板状部材112aおよび第1ポンプユニット121と、第2チューブ52の近傍に位置する第2板状部材112bおよび第2ポンプユニット122と、第3チューブ53の近傍に位置する第3板状部材112cおよび第3ポンプユニット123とは、いずれも、同様の構成を有するものである。
【0087】
したがって、以下においては、第1チューブ51、第2チューブ52および第3チューブ53をそれぞれ区別することなく、これらをチューブ50と称し、第1板状部材112a、第2板状部材112bおよび第3板状部材112cをそれぞれ区別することなく、これらを板状部材112と称し、第1ポンプユニット121、第2ポンプユニット122および第3ポンプユニット123をそれぞれ区別することなく、これらをポンプユニット120と称して説明することとする。
【0088】
図8および図9に示すように、板状部材112は、閉状態において、その表面の一部が支持フレーム140に押し当てられている。より詳細には、板状部材112は、上述した弾性部材113(図7参照)によって弾性付勢されることにより、支持フレーム140に接触している。当該接触部分は、X軸方向における板状部材112の両端に位置している。
【0089】
このように、板状部材112が支持フレーム140に押し当てられることにより、Y軸方向における支持フレーム140に対する板状部材112の位置決めが行なわれることになる。
【0090】
図7ないし図9に示すように、板状部材112は、その表面の一部に、チューブ50に当接する部分である導電性の当接部112tを有している(図9中においては、薄い色が付された部分が当該当接部112tに該当する)。チューブ50は、これが当接部112tに当接されることにより、Y2方向の移動が制限される。これにより、ポンプユニット120の複数のフィンガ120aは、Y2方向に向けてチューブ50を確実に押圧可能になる。
【0091】
ここで、板状部材112は、その表面の少なくとも一部に、当接部112tに導通する導電性の第1接点112sをさらに有している。また、支持フレーム140は、その表面の少なくとも一部に、導電性の第2接点140sを有している。これら第1接点112sおよび第2接点140sは、少なくとも閉状態において互いに接触している(図9中においては、濃い色が付された部分が、これら第1接点112sおよび第2接点140sに該当する)。
【0092】
すなわち、図9に示すように、本実施の形態に係る医療用輸液装置1にあっては、第1接点112sおよび第2接点140sは、上述した板状部材112と支持フレーム140との接触部分に対応する部分である。
【0093】
このように構成することにより、複数のフィンガ120aによってチューブ50が押圧される場合にも、これらに電荷が蓄積することを抑制することにより、医療用輸液装置1の動作の信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0094】
すなわち、チューブ、チューブを押圧する複数のフィンガ、チューブに当接するカバー、および、フィンガを支持する支持フレームが、いずれも絶縁物にて構成されたフィンガポンプにおいて、フィンガによるチューブの押圧が繰り返された場合には、チューブとフィンガとに電荷が蓄積され易くなるところ、何らの対策も行なっていない場合には、当該電荷の蓄積に起因して、フィンガポンプを制御するための電子基板等が短絡することが懸念される。このような短絡が生じた場合には、フィンガポンプやこれを備える医療用輸液装置の動作に不具合が生じるおそれがある。
【0095】
この点、本実施の形態に係る医療用輸液装置1においては、少なくとも閉状態において、板状部材112の導電性の第1接点112sと支持フレーム140の導電性の第2接点140sとが接触することにより、板状部材112の導電性の当接部112tが、第1接点112sを介して第2接点140sに導通する。
【0096】
このように構成した場合には、複数のフィンガ120aとチューブ50とに蓄積される電荷が、窓枠部材141dを除く部分の表面全体が導電性である支持フレーム140側に向けて除電されることになる。したがって、本実施の形態に係る医療用輸液装置1とした場合には、上述した電荷の蓄積を抑制することが可能になり、結果として、医療用輸液装置の動作の信頼性の向上を図ることが可能になる。
【0097】
なお、第2接点140sは接地されていることが好ましく、本実施の形態に係る医療用輸液装置1においては、第2接点140sが接地されている。このように構成した場合には、上述した除電の効果が確実に得られることになる。
【0098】
また、複数のポンプユニットを有するフィンガポンプや、たとえば直径が6mm以上の大径化されたチューブに対応するフィンガポンプは、単数のポンプユニットを有するフィンガポンプや、比較的小径のチューブに対応するフィンガポンプに比べ、上述した電荷の蓄積量が増大するため、フィンガポンプやこれを備える医療用輸液装置の動作に不具合が生じるリスクが比較的高くなる。
【0099】
したがって、複数のポンプユニットを有するフィンガポンプや、大径化されたチューブに対応するフィンガポンプを備えた医療用輸液装置に、本実施の形態に係る医療用輸液装置1の構成を採用することにより、上述した除電の効果がより顕著に得られることになる。
【0100】
さらに、本実施の形態に係る医療用輸液装置1においては、上述したように、板状部材112が、弾性部材113によって弾性付勢されることで支持フレーム140に押し当てられている。
【0101】
このように構成した場合には、カバー110を構成するホルダ111の寸法公差や板状部材112の寸法公差等、各種部品の寸法公差の積み上げによって生じる累積公差を、弾性部材113によって吸収することが可能になる。
【0102】
そのため、閉状態において、板状部材112の第1接点112sと、支持フレーム140の第2接点140sとを確実に接触させることが可能になるため、上述した除電の効果がより確実に得られることになる。
【0103】
さらには、上述した、板状部材112の当接部112tによるチューブ50のY2方向の移動の制限が確実に行なわれることになる。そのため、複数のフィンガ120aの押圧力を安定した効率でチューブ50に伝達可能になり、結果として、フィンガポンプ100の性能を安定化することが可能になる。
【0104】
(付記)
上述した実施の形態において開示した医療用輸液装置の特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0105】
[付記1]
絶縁性のチューブと、
上記チューブ内の液体を輸送するフィンガポンプとを備え、
上記フィンガポンプは、複数の絶縁性のフィンガを含むポンプユニットと、上記ポンプユニットを支持する支持フレームと、開状態および閉状態に切り換えが可能なカバーとを有し、
上記複数のフィンガは、各々が上記チューブの延在方向と直交する方向において上記チューブを押圧可能となるように、上記チューブの延在方向に沿って並んで配置され、
上記カバーは、上記閉状態において、上記複数のフィンガの各々との間で上記チューブが挟み込み可能となるように、上記複数のフィンガに対向する位置に配置され、
上記カバーは、上記開状態において、上記複数のフィンガの各々との間で上記チューブが挟み込み不能となる位置に配置され、
上記カバーは、上記閉状態において上記チューブに当接する導電性の当接部と、上記当接部に導通する導電性の第1接点とを有し、
上記支持フレームは、導電性の第2接点を有し、
上記複数のフィンガによって上記チューブが押圧されることでこれらに蓄積される電荷が、上記支持フレーム側に向けて除電されることとなるように、少なくとも上記閉状態において、上記第1接点と上記第2接点とが接触するように構成されている、医療用輸液装置。
【0106】
[付記2]
上記カバーは、表面の少なくとも一部が導電性である板状部材を有し、
上記第1接点および上記当接部の各々が、上記板状部材の導電性の上記一部にて構成されている、付記1に記載の医療用輸液装置。
【0107】
[付記3]
上記カバーは、上記板状部材を保持するホルダと、上記板状部材と上記ホルダとの間に介装された弾性部材とをさらに有し、
上記板状部材が上記弾性部材によって上記ホルダから遠ざかる方向に向けて弾性付勢されることにより、上記板状部材が、上記閉状態において上記チューブ側に向けて押圧付勢される、付記2に記載の医療用輸液装置。
【0108】
[付記4]
上記弾性部材が、コイルドウェーブスプリングである、付記3に記載の医療用輸液装置。
【0109】
[付記5]
上記カバーが、上記支持フレームによって回動可能に支持されている、付記1から4のいずれかに記載の医療用輸液装置。
【0110】
[付記6]
上記支持フレームは、表面の少なくとも一部が導電性であり、
上記第2接点が、上記支持フレームの導電性の上記一部にて構成されている、付記1から5のいずれかに記載の医療用輸液装置。
【0111】
[付記7]
上記第2接点が、接地されている、付記1から6のいずれかに記載の医療用輸液装置。
【0112】
[付記8]
上記チューブの外径が、6mm以上である、付記1から7のいずれかに記載の医療用輸液装置。
【0113】
[付記9]
上記チューブが、第1チューブおよび第2チューブを含み、
上記ポンプユニットが、第1ポンプユニットおよび第2ポンプユニットを含み、
上記第1ポンプユニットは、当該第1ポンプユニットが有する複数のフィンガによって上記第1チューブを押圧可能なものであり、
上記第2ポンプユニットは、当該第2ポンプユニットが有する複数のフィンガによって上記第2チューブを押圧可能なものである、付記1から8のいずれかに記載の医療用輸液装置。
【0114】
(その他の形態等)
上述した実施の形態においては、支持フレームのうちの窓枠部材を除く部分の表面全体が導電性である場合を例示したが、支持フレームは、少なくとも第2接点に対応する部分の表面が導電性であればよい。また、第2接点が接地されている場合には、導電性である第2接点の大きさは、特にこれが制限されることはない。
【0115】
また、上述した実施の形態においては、板状部材の表面全体が導電性である場合を例示したが、板状部材は、必ずしもその表面全体が導電性である必要はなく、少なくとも当接部と第1接点とに対応する部分の表面が導電性であればよい。
【0116】
さらに、上述した実施の形態においては、板状部材や支持フレームとして、金属の表面全体に導電性の被膜を形成する防錆処理が行なわれたものが用いられる場合を例示したが、板状部材や支持フレームとして、防錆処理等が施されていない、アルミニウム等の導電性材料が用いられてもよい。
【0117】
また、上述した実施の形態においては、カバーのうちの、チューブに当接する部分である当接部、および、支持フレームに接触する部分である第1接点の各々が、単一の板状部材の一部として構成される場合を例示したが、当接部および第1接点の各々が、互いに異なる部材にて構成されてもよい。その場合、これらの部材の各々の、導電性である部分の表面同士が、たとえば導電性のワイヤ等を介して導通されていてもよい。
【0118】
さらに、上述した実施の形態においては、カバーの板状部材の第1接点と、支持フレームの第2接点とが、閉状態において互いに接触する場合を例示したが、これら第1接点と第2接点とは、開状態においても接触していてもよい。より詳細には、たとえば、カバーのヒンジ部の少なくとも表面が導電性となるように構成し、当該ヒンジ部の表面と、カバーの板状部材の当接部とを、導電性のワイヤ等にて導通させる。さらに、支持フレームを、その表面全体が導電性となるように構成する。このように構成した場合には、第1接点としてのヒンジ部の表面と、第2接点としての、支持フレームのヒンジ部が取付けられる部分の表面とが、開状態において接触していることになる。
【0119】
また、上述した実施の形態においては、フィンガポンプが3つのポンプユニットを含む場合を例示したが、ポンプユニットの数は、特にこれが3つに限定されるものではなく、単数であってもよいし、3つ以外の複数であってもよい。
【0120】
さらに、上述した実施の形態においては、カバーが、複数のポンプユニットに対応するように複数の板状部材を有する場合を例示したが、板状部材の数は、特にこれが複数に限定されるものではない。すなわち、カバーは、たとえば、閉状態において複数のポンプユニットに対向配置される大きさを有する、単数の板状部材を有していてもよい。
【0121】
また、上述した本実施の形態においては、支持フレームの窓枠部材が樹脂材料からなる場合を例示したが、窓枠部材は、支持フレームのうちの当該窓枠部材以外の部分と同様に、その表面全体が導電性であるものによって構成されてもよい。
【0122】
さらに、上述した実施の形態において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0123】
また、上述した実施の形態において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0124】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0125】
1 医療用輸液装置、10 筐体、10a 前面、10b 左側面、20 血液浄化器、30 血液ポンプ、40 注射器、50 チューブ、51 第1チューブ、52 第2チューブ、53 第3チューブ、61 排液用容器、62 透析液用容器、63 補充液用容器、100 フィンガポンプ、110 カバー、111 ホルダ、112 板状部材、112a 第1板状部材、112b 第2板状部材、112c 第3板状部材、112s 第1接点、112t 当接部、113 弾性部材、114 レバー、114a 把持部、114b 突出部、115 ヒンジ部、120 ポンプユニット、120a,120a1,120a2,120a3,120a4,120a5 フィンガ、121 第1ポンプユニット、122 第2ポンプユニット、123 第3ポンプユニット、130 駆動機構、131 第1駆動機構、131a,131a1,131a2,131a3,131a4,131a5 シャフト、131b,131b1,131b2,131b3,131b4,131b5 偏心カムローラ、131c 回転シャフト、131d 駆動ベルト、131e 駆動軸、131f ステッピングモータ、132 ケーシング、140 支持フレーム、140s 第2接点、141 窓部、141a 第1窓部、141b 第2窓部、141c 第3窓部、141d 窓枠部材、142 凹状部、142a 第1凹状部、142b 第2凹状部、142c 第3凹状部、143 チューブ把持部、143a 第1チューブ把持部、143b 第2チューブ把持部、143c 第3チューブ把持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9