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特開2024-18200ベースプレート、スピンドルモータ、ハードディスクドライブ装置及びベースプレートの製造方法
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  • 特開-ベースプレート、スピンドルモータ、ハードディスクドライブ装置及びベースプレートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018200
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ベースプレート、スピンドルモータ、ハードディスクドライブ装置及びベースプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/12 20060101AFI20240201BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G11B33/12 313S
G11B33/14 501P
G11B33/14 501W
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121370
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 通浩
(72)【発明者】
【氏名】三好 健太
(72)【発明者】
【氏名】光成 貴士
(72)【発明者】
【氏名】古谷 涼
(72)【発明者】
【氏名】宮田 耕太郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】剛性を低下させることなく、鋳巣の発生を抑制できるベースプレート、ベースプレートを用いたスピンドルモータ及びスピンドルモータを用いたハードディスクドライブ装置を提供する。
【解決手段】ハードディスクドライブ装置100において、上面が開口した平面視矩形状の鋳造品であるベースプレート10は、平面視矩形状のベース底板11と、ベース底板の外縁部から上方に延びる環状の壁部12と、を有する。壁部は、上下方向と交差する面内方向の厚みが薄いベース肉薄部121と、上下方向と交差する面内方向の厚みがベース肉薄部よりも厚い1つ又は複数のベース肉厚部122と、を有する。少なくとも一つのベース肉厚部の上面には下方に凹む凹部123が形成される。凹部の上下方向の深さが、ベースプレートの下端から上端までの距離の半分よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した平面視矩形状の鋳造品であるベースプレートであって、
平面視矩形状のベース底板と、
前記ベース底板の外縁部から上方に延びる環状の壁部と、を有し、
前記壁部は、
上下方向と交差する面内方向の厚みが薄いベース肉薄部と、
上下方向と交差する面内方向の厚みが前記ベース肉薄部よりも厚い一又は複数のベース肉厚部と、
を有し、
少なくとも一つの前記ベース肉厚部の上面には下方に凹む凹部が形成され、
前記凹部の上下方向の深さが、前記ベースプレートの下端から上端までの距離の半分よりも小さいベースプレート。
【請求項2】
前記壁部の前記ベース肉厚部が、前記ベース底板の少なくとも四隅に配置される隅部肉厚部を有し、
前記凹部が、前記隅部肉厚部の少なくとも一つに形成される請求項1に記載のベースプレート。
【請求項3】
前記凹部は、前記隅部肉厚部のそれぞれに少なくとも1つ形成される請求項2に記載のベースプレート。
【請求項4】
前記壁部の前記ベース肉厚部が、前記ベース底板の少なくとも一方の長辺の長さ方向の中間部に配置される中間部肉厚部を有し、
前記凹部が、前記中間部肉厚部の少なくとも一つに形成される請求項1に記載のベースプレート。
【請求項5】
前記壁部の前記ベース肉厚部が、前記ベース底板の少なくとも一方の長辺の長さ方向の中間部に配置される中間部肉厚部を有し、
前記凹部が、前記中間部肉厚部の少なくとも一つに形成される請求項2に記載のベースプレート。
【請求項6】
前記壁部の前記ベース肉厚部が、前記ベース底板の少なくとも一方の長辺の長さ方向の中間部に配置される中間部肉厚部を有し、
前記凹部が、前記中間部肉厚部の少なくとも一つに形成される請求項3に記載のベースプレート。
【請求項7】
前記凹部は、
平面視における最大長さが1.0mm以上であり、
上下方向の深さが0.5mm以上である請求項1から請求項6のいずれかに記載のベースプレート。
【請求項8】
前記凹部の底面部から下方に延びてねじが締結可能なねじ穴を有する請求項1から請求項6のいずれかに記載のベースプレート。
【請求項9】
前記ベース底板の下面の前記ベース肉厚部と重なる部分から上方に凹む下面凹部を有し、
前記下面凹部の上下方向の深さが、前記ベースプレートの下端から上端までの距離の半分よりも小さい請求項1から請求項6のいずれかに記載のベースプレート。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の前記ベースプレートと、
前記ベースプレートの前記壁部に囲まれた部分に固定されるステータ部と、
前記ステータの中心軸と同軸で配置されて前記ステータと径方向に対向するロータ部と、を有するスピンドルモータ。
【請求項11】
請求項10に記載のスピンドルモータと、
前記壁部の上端に固定されて前記開口を閉じるカバーと、
前記ベースプレートの内部に配置されて、前記ロータとともに回転するディスクと、を有する、ハードディスクドライブ装置。
【請求項12】
前記ベース底板、前記壁部及び前記カバーで囲まれる空間に空気よりも密度が低い気体が充填され、
前記空間は、前記空気及び前記空気よりも密度が低い気体の流通を抑制する気密性を有する請求項11に記載のハードディスクドライブ装置。
【請求項13】
平面視矩形状のベース底板の外縁部から上方に延びる環状の壁部を有し、前記壁部の上下方向に交差する面内方向の厚みの薄いベース肉薄部と、前記ベース肉薄部よりも厚いベース肉厚部と、前記ベース肉厚部の上面から下方に凹む凹部が形成されたベースプレートの製造方法であって、
、金型に溶融金属を射出及び充填する鋳造工程と、
前記鋳造工程で形成された鋳造物を冷却する過程の途中に実行され、前記鋳造工程で形成された前記凹部にピンを挿入して前記凹部の底面部を前記ピンで加圧し、鋳巣を潰す加圧工程と、を有する、ベースプレートの製造方法。
【請求項14】
前記加圧工程の終了後において、前記凹部の前記底面部にねじ穴を形成するねじ穴形成工程を有する請求項13に記載のベースプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ装置、ハードディスクドライブ装置に用いられるベースプレート及びスピンドルモータに関し、ベースプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブ装置には、例えば、アルミ系合金等の金属の鋳造物を加工して形成されたベースプレートを有するスピンドルモータが採用されている。金属の鋳造物において、金型に充填された溶融金属が冷却されて凝固する際に、体積が収縮することにより鋳巣が発生する場合がある。ベースプレートを鋳造するときに、予め凹部を形成して鋳巣の発生を抑制する方法が採用されている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-170843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ハードディスクドライブ装置では、高容量化に伴い、ベースプレートの耐振動性のさらなる向上、つまり、ベースプレートの高剛性化の要求が高まっている。
【0005】
そこで本発明は、剛性を低下させることなく、鋳巣の発生を抑制できるベースプレート、ベースプレートを用いたスピンドルモータ、スピンドルモータを用いたハードディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、剛性を低下させることなく、鋳巣の発生を抑制できるベースプレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的なベースプレートは、上面が開口した平面視矩形状の鋳造品である。ベースプレートは、平面視矩形状のベース底板と、ベース底板の外縁部から上方に延びる環状の壁部と、を有する。壁部は、上下方向と交差する面内方向の厚みが薄いベース肉薄部と、上下方向と交差する面内方向の厚みがベース肉薄部よりも厚い1つ又は複数のベース肉厚部と、を有する。少なくとも一つのベース肉厚部の上面には下方に凹む凹部が形成される。凹部の上下方向の深さが、ベースプレートの下端から上端までの距離の半分よりも小さい。
【0008】
本発明の例示的なベースプレートの製造方法は、金型に溶融金属を射出及び充填する鋳造工程と、鋳造工程で形成された鋳造物を冷却する過程の途中に実行され、鋳造工程で形成された凹部にピンを挿入して凹部の底面部をピンで加圧し、鋳巣を潰す加圧工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の例示的なベースプレート、ベースプレートを用いたスピンドルモータ、スピンドルモータを用いたハードディスクドライブ装置によれば、剛性を低下させることなく、鋳巣の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ハードディスクドライブ装置のカバーを取り外した平面図である。
図2図2は、ハードディスクドライブ装置の概略断面図である。
図3図3は、ベースプレートの凹部の近傍を拡大した断面図である。
図4図4は、ベースプレートの製造工程を示すフローチャートである。
図5図5は、ベースプレートの図3と別の凹部の近傍を拡大した図である。
図6図6は、ベースプレートの図3と別の凹部の近傍を拡大した図である。
図7図7は、ベースプレートの図6と別の凹部の近傍を拡大した図である。
図8図8は、変形例のベースプレートの凹部近傍を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態にかかるベースプレートについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0012】
本明細書において、図1に示すハードディスクドライブ装置100の中心軸Cxと平行な方向を「軸方向」と称する。中心軸Cxと直交する径方向を単に「径方向」と称し、中心軸Cxを中心とする周方向を単に「周方向」と称する。
【0013】
また、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に広がる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向に対して垂直な方向に広がる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に広がる場合も含む。
【0014】
さらに、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「直交」はそれぞれ、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態及び実質的に直交する状態を含む。つまり、「平行」及び「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。なお、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称などを限定する意図はない。さらに、空間が封止されている状態である「密閉」とは、内部に封入される空気又は空気よりも密度が低い気体の漏洩を抑制できる程度の閉鎖状態を指す。このときの部材の接触状態を「密着」と称する。
【0015】
<ハードディスクドライブ装置100>
図1は、本発明の例示的なハードディスクドライブ装置100のカバー500を取り外した平面図である。図2は、図1に示すハードディスクドライブ装置100の中心軸Cxを含む面で切断した概略断面図である。図3は、凹部123の近傍を拡大した断面図である。図2に示すように、ハードディスクドライブ装置100は、スピンドルモータ200と、複数のディスク300と、アクセス部400と、カバー500と、を有する。
【0016】
<ディスク300>
ディスク300は、アルミニウム合金、ガラス等の基材の表面に磁性体膜を形成している。ディスク300は、中央に孔を有する円板状であり、中央の孔をスピンドルモータ200の後述するロータ部40が貫通する。そして、ディスク300はロータ部40に固定され、ロータ部40が回転することで、ディスク300も回転する。ディスク300のロータ部40への取り付け及び固定については、後述する。
【0017】
<スピンドルモータ200>
スピンドルモータ200は、中心軸Cxを中心に複数のディスク300を回転させる。スピンドルモータ200は、ベースプレート10と、ステータ部20と、軸受部30と、ロータ部40とを有する。すなわち、スピンドルモータ200は、ベースプレート10と、ステータ部20と、ロータ部40と、を有する。
【0018】
<ベースプレート10>
ベースプレート10は、上面が開口した箱状である。ベースプレート10は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属の鋳造品であり、平面視矩形状である。ベースプレート10は収納部101を有する。ベースプレート10の収納部101には、ディスク300と、アクセス部400と、ステータ部20と、軸受部30と、ロータ部40とが収納される。
【0019】
ベースプレート10は、ベース底板11と、壁部12と、ステータ支持部13と、を有する。ベース底板11は、平面視矩形状である。)ベース底板11は、中心軸Cxに対して、径方向に拡がる。
【0020】
壁部12は、ベース底板11の辺縁部より軸方向上方に延びる。壁部12は、周方向に連続して形成され、平面視矩形状の環状である。すなわち、壁部12は、ベース底板11の外縁部から上方に延びる環状である。ベースプレート10において、壁部12に囲まれた内側が、収納部101である。ベース底板11と、壁部12とは、一体的に形成される。そして、ステータ支持部13は、ベース底板11から、壁部と同じ方向に突出する。ステータ支持部13は、収納部101の内部に配置される筒状である。
【0021】
本実施形態にかかるベースプレート10の壁部12は、上下方向と交差する面内方向の厚みの異なるベース肉薄部121と、ベース肉厚部122と、を有する。ベース肉薄部121は、上下方向と交差する面内方向の厚みが薄い。なお、ベース肉薄部121の面内方向の厚みは、ベース肉厚部122よりも薄い部分である。ベース肉厚部122は、ベース肉薄部121よりも面内方向の厚みが厚い。すなわち、ベース肉厚部122は、上下方向と交差する面内方向の厚みがベース肉薄部121よりも厚い。壁部12において、ベース肉厚部122は、複数箇所、ここでは、6箇所設けられている。しかしながら、これに限定されず、1箇所であってもよい。すなわち、壁部12は、一又は複数のベース肉厚部122を有する。
【0022】
ベース肉厚部122を有することで、壁部12の剛性が高められる。また、壁部12にベース肉厚部122が設けられることによって壁部12及びベースプレート10の十分な剛性を確保できる。壁部12のベース肉厚部122以外の部分は、ベース肉薄部121が形成されている。また、壁部12をベース肉薄部121とすることで、ベースプレート10のベース肉薄部121及びその近傍では、鋳造ともなう後述の鋳巣の発生が抑えられる。
【0023】
ベースプレート10において、壁部12がベース肉薄部121と、ベース肉厚部122とを周方向につなげた環状である。これにより、ベースプレート10は、高剛性である。ベースプレート10が高剛性であるとは、例えば、ハードディスクドライブ装置100の動作時に、振動を抑制できる程度以上の剛性を有することを指す。また、これ以外の基準で、高剛性と判断してもよい。
【0024】
さらに詳しく説明すると、壁部12は、平面視において、矩形の筒体である。ベースプレート10の剛性を高めるため、ベースプレート10の外周部である壁部12にベース肉厚部122を設けている。壁部12では、ベース底板11の四隅にベース肉厚部122である隅部肉厚部122rを配置している。すなわち、壁部12のベース肉厚部122は、ベース底板11の少なくとも四隅に配置される隅部肉厚部122rを有する。なお、壁部12の四隅の一部が隅部肉厚部122rであってもよい。隅部肉厚部122rを有する構成とすることで、壁部12を高剛性化できる。
【0025】
また、壁部12では、ベース底板11の長辺の長さ方向の中間部にベース肉厚部122である中間部肉厚部122cを有する。中間部肉厚部122cが設けられることで、壁部12の剛性が高められ、ベースプレート10が高剛性に形成される。なお、ベースプレート10が十分に高剛性になる場合、一方の長辺にだけ中間部肉厚部122cが形成されてもよい。
【0026】
すなわち、壁部12のベース肉厚部122が、ベース底板11の少なくとも一方の長辺の長さ方向の中間部に配置される中間部肉厚部122cを有する。また、隅部肉厚部122rだけで壁部12が十分な剛性を有する場合、中間部肉厚部122cは無くてもよい。十分な剛性を有するとは、例えば、ディスク300の回転による振動が増幅されにくい、換言すると、共振が発生しにくい程度の剛性を有することを指す。このような、振動が大きくなることを抑制する性質を耐振動性と称する。
【0027】
鋳造によって物品を製造する場合、金型に溶融金属を射出及び充填し、冷却して形成する。通常物質は、温度が低くなると、体積が小さくなる。鋳造の冷却過程において、溶融金属は外面側から冷えて固まるため、最後に固まる部分に空間(鋳巣)ができる場合がある。このような、鋳巣は、体積が大きい部分に発生しやすい。つまり、壁部12において、ベース肉厚部122は、ベース肉薄部121に比べて鋳巣が発生しやすい。そこで、溶融金属を冷却する過程において、溶融金属が変形しやすい状態のときに、壁部12の上面に鋳造により形成された凹部123の底面部1231(図3参照)に、ピンを押し当てる。ピンが凹部123の底面部1231を押す圧力により、ベース肉厚部122の内部の圧力を高められ、鋳巣の発生が抑制される。または、ピンによって押された溶融金属によって鋳巣が埋められることで、鋳巣が潰される。
【0028】
上述のとおり、鋳巣は、製品が外面から冷却されることで発生する。つまり、外面からの距離が長い部分で発生しやすい。そのため、凹部123は、ベース肉厚部122の上面に形成される。壁部12の少なくも四隅には、ベース肉厚部122が形成される。鋳巣は、ベース肉厚部122の複数箇所に発生する場合がある。このため、四隅に形成された隅部肉厚部122rには、少なくとも1つの凹部123が形成される。すなわち、凹部123は、隅部肉厚部122rのそれぞれに少なくとも1つ形成される。
【0029】
なお、ベース肉厚部122の上下方向と交差する面内方向の厚さによっては、鋳巣が発生しにくい、あるいは、発生しない場合がある。このようなベース肉厚部122には、凹部123を形成しなくてよい。例えば、中間部肉厚部122cは、隅部肉厚部122rよりも体積が小さい。そのため、中間部肉厚部122cでは、鋳巣が発生しにくい場合がある。そのため、中間部肉厚部122cには、必ずしも凹部123を形成しなくてもよい。さらには、二つの中間部肉厚部122cのうち、鋳巣が発生すると判断されている側に凹部123を形成してもよい。すなわち、凹部123が、中間部肉厚部122cの少なくとも一つに形成される。
【0030】
ここで、凹部123について説明する。図1に示すように、凹部123の中心軸Cxと直交する面で切断した断面は、円形である。つまり、凹部123は円筒状である。凹部123の内径は1.0mm以上であることが好ましい。また、凹部123の上下方向の深さは0.5mm以上であることが好ましい。
【0031】
凹部123は、円筒状に限定されない。例えば、平面視、四角形、六角形等の多角形状であってもよいし、楕円、長円等であってもよい。加圧するときに用いるピンの形状によって決定される形状である。この場合、凹部123の平面視における最大長さが1.0mm以上であり、上下方向の深さが0.5mm以上である。なお、平面視における最大長さとは平面視の形状における最大となる長さを指す。例えば、平面視における形状が四角形の場合、最大長さは対角線の長い方である。また、楕円形の場合、最大長さは長軸である。
【0032】
このように構成することで、凹部123大きさと深さを一定の大きさ以上とすることができるため、鋳巣の発生を抑制する効果を高めることができる。
【0033】
壁部12において、少なくとも一つのベース肉厚部122の上面には下方に凹む凹部123が形成される。そして、凹部123の上下方向の深さが、ベースプレート10の下端から上端までの距離の半分(中心線C0と上端又は下端との距離)よりも小さい。
【0034】
このように構成することで、鋳造時において、肉抜き部分を形成することなく、ベース肉厚部122における鋳巣の発生を抑制できる。これにより、鋳巣で発生する割れを防止し、ハードディスクドライブ装置100の内部に充填される低密度気体に対する気密性を高めることができる。また、肉抜き部分を設ける必要がないため、上下方向の厚みが大きい(例えば、2インチ高さの)ベースプレート10の剛性、特に壁部の剛性を高めることができる。さらに、カバー500によってカバーされる部分に凹部123を設ける構成であるため、ハードディスクドライブ装置100の外部から凹部123が見えない。このため、ハードディスクドライブ装置100の意匠性を高めることができる。
【0035】
次に、ベースプレートの製造方法について、図面を参照して説明する。図4はベースプレート10の製造工程を示すフローチャートである。図4に示すように、ステップS101では、不図示の金型に溶融金属(ここでは、アルミ合金)を流し込む。ステップS101は、金型に溶融金属を射出及び充填する鋳造工程である。
【0036】
ステップS102に移り、溶融金属の金型への射出及び充填が完了したか否か判定する。溶融金属の流し込みが完了するまで(ステップS102でNoの間)、ステップS101の溶融金属の流し込みを継続する。
【0037】
金型に溶融金属が流し込まれたとき、金型の内部では、充填された溶融金属が最終製造品であるベースプレート10の形状となっている。このとき、ベースプレート10の上面のベース肉厚部122の鋳巣が形成されやすい部分と厚み方向に重なる部分には、凹部123が形成される。つまり、ベースプレート10では、鋳造工程で溶融金属を充填したときに、凹部123が形成される。換言すると、ベースプレート10の鋳造には、凹部123を形成することができる内向きの凹部を有する金型が用いられる。
【0038】
溶融金属の流し込みが完了したとき(ステップS102でYesのとき)、ステップS103に移り、金型に充填された溶融金属を冷却する。その後、ステップS104に移り、溶融金属の温度が所定の温度に到達したか否か判定する。溶融金属の温度の測定は、例えば、金型に取り付けられたセンサで行ってもよいし、被接触式の温度センサで行ってもよい。また、溶融金属の充填が完了した直後からの経過時間に基づいて温度を推測してもよい。
【0039】
溶融金属の温度が所定の温度に到達するまでの間(ステップS104でNoの間)、ステップS103に移り、溶融金属の冷却を継続する。溶融金属が所定の温度に到達したとき(ステップS104でYesのとき)、ステップS105に移る。ステップS105では、ピン(不図示)を壁部12のベース肉厚部122の上面に形成された凹部123の底面部1231に押し当てる。そして、後述するステップS106にて硬化が完了したと判断されまで加圧する。ステップS103~ステップS106が、冷却過程である。そして、ステップS105が、加圧工程である。
【0040】
すなわち、加圧工程S105は、鋳造工程S101で形成された鋳造物を冷却する過程の途中に実行され、ベース肉厚部122の上面に形成された凹部123の底面部1231を、ピンでベースプレート10の厚み方向に加圧して、鋳巣を潰す。
【0041】
このような製造方法でベースプレート10を製造することで、ベース肉厚部122のカバー500で覆われる上面に凹部123を形成する構成であるため、凹部123を形成する場所の特定が容易である。また、凹部123を形成することで、鋳巣をなくすことができるため、ベースプレート10の剛性及び気密性を高めることができる。
【0042】
ステップS105の後、ステップS106に移り、溶融金属が硬化したか否か判定する。溶融金属が硬化するまでの間(ステップS106でNoの間)、ピンによる加圧状態を継続する(ステップS105に戻る)。溶融金属が硬化したと判定されたとき(ステップS106でYesのとき)、ステップS107に移る。ステップ107では、ステップS105の加工工程で形成された凹部123の底面部1231に後述するねじ穴124を形成する。
【0043】
すなわち、ステップS107はねじ穴形成工程であり、凹部123の底面部1231にねじ穴124を形成する。
【0044】
カバー500は、壁部12の上面に固定される。さらに詳しく説明すると、カバー500には貫通孔501が形成されており、貫通孔501にねじScを貫通させて、ねじScを壁部12の上面に形成されたねじ穴124にねじ込むことで固定される、つまり、ねじ止めされる。
【0045】
パッキン26は、カバー500の壁部12の上面の対応する部位に塗布される。カバー500がねじ止めにて壁部12の上面に固定されるときに、壁部12の上面に塗布されたパッキン26が壁部12とカバー500とに挟まれることで、壁部12の上面及びカバー500の下面と密着する。これにより、ハードディスクドライブ装置100の内部、つまり、収納部101は、密閉される。なお、壁部12の上面又はカバー500の下面には、パッキン26を保持するための溝部が形成されていてもよい。
【0046】
そして、壁部12とカバー500とは、パッキン26によって密閉されている。すなわち、収納部101は、空気及び空気よりも密度が低い気体の流通を抑制する気密性を有する。カバー500で覆われた収納部101には、水素、ヘリウム等の空気よりも低密度の気体が充填される。すなわち、ベース底板11、壁部12及びカバー500で囲まれる収納部101に空気よりも密度が低い気体が充填される。
【0047】
このように構成することで、収納部101に充填された空気よりも密度が低い気体が外部に漏れにくく、ディスク300の回転時にハードディスクドライブ装置100内で発生する乱流、渦を抑制する効果が長期間にわたって維持される。これにより、トータルの消費エネルギを低下できるとともに、乱流、渦の発生によるディスク300の回転のばらつきを抑制できる。
【0048】
上述したとおり、カバー500は、平面視矩形状であり、少なくとも四隅にねじ止めされることが好ましい。四隅をねじ止めすることで、カバー500は、周縁部の広い領域において、一定以上の力で固定される。さらに強固に固定するため、少なくとも一方の長辺の中央部もねじ止めすることが好ましい。本実施形態にかかるハードディスクドライブ装置100では、両方の長辺の長さ方向の中間部分をねじ止めしている。
【0049】
図1等に示すように、ベースプレート10において、ねじ穴124は、壁部12のベース肉厚部122のそれぞれに、少なくとも1つずつ設けられる。つまり、カバー500は、隅部肉厚部122r及び中間部肉厚部122cのそれぞれにねじ止めされることで固定される。カバー500の四隅と長辺の中間部がそれぞれ壁部12にねじ止めされる。そのため、カバー500は、強固に固定される。
【0050】
カバー500は、上述のとおり、平面視矩形である。そのため、カバー500を強固にまた確実に壁部12の上面にねじ止めする場合、壁部12の少なくともねじ止めされる部分の上下方向と交差する面内方向の厚みがねじ止めされない部分よりも厚い方が好ましい。また、壁部12の上下方向と交差する面内方向の厚みが薄いと、ねじ止めの有無にかかわらず、壁部12のたわみ、ねじれ等が発生する。
【0051】
なお、ねじ穴124は、ベース肉厚部122のすべてに設けられてもよいし、一部のベース肉厚部122に設けられてもよいが、各ベース肉厚部122に少なくとも1つ設けられていることが好ましい。これにより、ねじScによるカバー500を押える力が分散されて、押える力が偏りにくくなる。その結果、カバー500がベースプレート10のベース底板11に対する傾きが抑制され、ハードディスクドライブ装置100の外部機器への取り付けが容易になる。また、カバー500の周囲全体が、一定の力以上の力で壁部12に押される。これにより、パッキン126が全周に渡り一定以上の力が付与されるため、パッキン126による密閉性が高くなる。
【0052】
また、ねじ穴124がベース肉厚部122に形成されていることで、ねじ穴124とベース肉厚部122の側面との距離が長くなる。そのため、ねじ穴124を形成しても、ベース肉厚部122、換言すると、壁部12の剛性が低下しにくい。
【0053】
ねじ穴124の個数及び取り付け位置は、カバー500の外周部の全周を壁部12の上面に一定の力以上の力で押し付け、ベースプレート10とカバー500とを密閉できるものであればよい。
【0054】
図1図3に示すように、ねじ穴124は、凹部123の底面部1231に形成される。そして、凹部123の中心線CLとねじ穴124の中心線CLとが一致している。すなわち、ねじScが締結可能なねじ穴124は、凹部123の底面部1231から下方に延びる。このように構成することで、加圧された部分にねじ穴124を形成するため、ねじScを強固に締結することが可能である。
【0055】
また、図5に示すように、カバー500の下面から突出し、凹部123に嵌る凸部502を形成し、貫通孔501が凸部502を貫通してもよい。凸部502を凹部123に挿入することで、ねじ止めする前にカバー500を壁部12の上面に位置決めすることができる。また、貫通孔501が凸部502を貫通する構成であるため、カバー500のねじScが貫通する長さを長くでき、カバー500を安定して保持することが可能である。
【0056】
また、図6に示すように、ねじ穴124の中心線CL1が、凹部123の中心線CLがずれていてもよい。また、図7に示すように、ねじ穴124が凹部123とずれて形成されていてもよい。このような構成とすることで、平面視において、ねじ穴124の適切な位置と、鋳巣が形成される位置とがずれている場合に、鋳巣と重なる位置に凹部123を形成し、カバー500の取り付けに最適な位置にねじ穴124を形成することができる。そのため、壁部12の剛性を低下させることなく、つまり、振動を抑制しつつ、カバー500をベースプレート10に密着させることができる。
【0057】
<ステータ部20>
ステータ部20は、ステータコア21と、コイル22と、を有する。ステータコア21は、磁性体材料を用いて形成される。本実施形態において、ステータコア21は、電磁鋼板を軸方向に積層した積層体である。ステータコア21は、中心軸Cxを中心とする環状である。
【0058】
ステータコア21は、ベースプレート10のステータ支持部13の外周面に固定される。すなわち、ステータ部20は、ベースプレート10の壁部12に囲まれた部分に固定される。なお、ステータコアは、ステータ支持部13に圧入にて固定されるが、これに限定されない。例えば、溶接、ねじ止め、接着等、ステータコア21をステータ支持部13に強固に固定できるとともに、磁気の流れを乱さない固定方法を広く採用することができる。
【0059】
ステータコア21は、複数のティースを有する。複数のティースは、径方向外方に延びる。複数のティースは、周方向に配列される。さらに説明すると、複数のティースは、周方向に等間隔で配置される。
【0060】
ティース表面には、不図示の電気絶縁性を有する絶縁体塗装、又は、樹脂などの電気絶縁性を有する材料で形成されるインシュレータが取り付けられる。インシュレータで覆われた各ティースに導線を巻き付け、コイル22が形成される。つまり、各ティースには、コイル22が取り付けられる。導線は、例えば、エナメル被覆銅線、絶縁部材で被覆された金属線などである。インシュレータが設けられていることで、コイル22からティースへの漏電、放電等が抑制される。
【0061】
各ティースに配置されたコイル22は、不図示の渡線で電気的に接続される。なお、本実施形態において、渡線は、導線の一部である。但し、この例示に限定されず、渡線は、導線とは別部材であってよい。各々のコイル22に駆動電流が供給されると、ステータ部20は励磁される。ステータ部20の励磁によって、ロータ部40が回転(駆動)される。
【0062】
<軸受部30>
軸受部30は、シャフト31と、スリーブ32と、を有する。シャフト31は、ベースプレート10のベース底板11に固定される。さらに詳しく説明すると、シャフト31の中心が、中心軸Cxと一致する。スリーブ32は、筒状でありシャフト31の径方向外方に配置される。スリーブ32は、シャフト31と径方向に対向し、シャフト31に対して回転可能に配置される。シャフト31とスリーブ32とは、流体動圧軸受を構成し、シャフト31とスリーブ32との隙間には、潤滑油、ガス等の流体が充填される。これにより、スリーブ32は、シャフト31に対して円滑に回転する。
【0063】
<ロータ部40>
ロータ部40は、スリーブ32に固定され、スリーブ32とともに回転する。ロータ部40は、ロータコア41と、ロータマグネット42と、クランプ部43と、を有する。ロータコア41は、筒状であり、軸方向上部の上側筒部411と、軸方向下部の下側筒部412と、フランジ部413と、を有する。
【0064】
ロータコア41において、上側筒部411がスリーブ32に固定される。上側筒部411はスリーブ32に圧入によって固定されるが、これに限定されず、例えば、接着等、上側筒部411をスリーブ32に強固に固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0065】
ロータコア41の下側筒部412の内径は、上側筒部411よりも大きい。そして、ロータコア41をスリーブ32に固定したとき、下側筒部412の径方向内部に、ステータ部20が配置される。すなわち、ロータ部40は、ステータ部20の中心軸と同軸で配置されてステータ部20と径方向に対向する。
【0066】
ロータコア41の下側筒部412の内周面には、ロータマグネット42が配置される。ロータマグネット42は、ステータ部20と径方向に対向する。ロータマグネット42は、複数のマグネットを周方向に並べた構成であってもよいし、内周面が周方向に異なる磁極である筒状であってもよい。コイル22に電流が供給されてステータ部20が励磁されることで、ステータ部20とロータマグネット42との間で、引力又は斥力が発生する。スピンドルモータ200において、この引力及び斥力によってロータ部40が回転し、それに伴い、ディスク300が回転される。
【0067】
フランジ部413は、下側筒部412の軸方向下端部の外周面から径方向外側に拡がる。フランジ部413は、クランプ部43とともに、ディスク300を掴んで保持する。クランプ部43は、複数のスペーサ431と、押え部432とを有する。スペーサ431は、環状であり、軸方向に並んで配置されるディスク300の径方向内側と接触する。ディスク300は、スペーサ431によって挟まれる。
【0068】
複数のディスク300の軸方向最も下のディスク300の下面は、フランジ部413と接触し、フランジ部413に支持される。押え部432は、ロータコア41に固定されている。これより、ディスク300とスペーサ431とは、軸方向に交互に配置された状態で、フランジ部413及び押え部432によって、軸方向に挟まれる。その結果、ディスク300は、中心線が中心軸Cxと重なった状態でロータコア41に固定される。なお、押え部432は、ねじ止めにて固定されているが、これに限定されない。押え部432をロータコア41に強固に固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0069】
<アクセス部400>
アクセス部400は、収納部101に配置される。そして、アクセス部400は、ディスク300に対して情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を実行する。アクセス部400は、ヘッド401と、アーム402と、ヘッド移動機構403と、を有する。ヘッド401は、ディスク300の表面と軸方向に対向し、ディスク300への情報の書き込み及びディスク300からの情報の読み出しの少なくとも一方を磁気的に実行する。
【0070】
ヘッド移動機構403は、例えば、ステッピングモータを有する。ヘッド移動機構403は、中心軸Cxと平行なヘッド軸Chを中心に周方向に往復移動可能である。アーム402は、ヘッド軸Chと直交する方向に延びる長尺状であり、ヘッド移動機構403が移動するとき、アーム402は、ディスク300の表面と平行な面に沿って移動する。アーム402の先端には、ヘッド401が取り付けられる。アーム402が移動しつつ、ヘッド401を動作させることで、ディスク300から情報を呼び出す又はディスク300に情報を記録する。
【0071】
<変形例>
図8は変形例にかかるベースプレート10aの断面図である。図8に示すベースプレート10aは、下面凹部14を有する点が、ベースプレート10と異なる。ベースプレート10aのその他の部分は、ベースプレート10と同様の構成を有する。その為、ベースプレート10aのベースプレート10と実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに同じ部分の詳細な説明を省略する。
【0072】
ベースプレート10aは、凹部123だけで鋳巣の発生を抑制するのが困難な場合がある。そこで、図8に示すように、ベースプレート10aのベース底板11aの下面15のベース肉厚部122と上下方向に重なる部分に、上方に向かって凹む下面凹部14を有する。下面凹部14は、金型によって形成される。すなわち、下面凹部14は、ベース底板11の下面15のベース肉厚部122と重なる部分から上方に凹む。
【0073】
そして、下面凹部14の上下方向の深さは、ベースプレート10aの上下方向の厚みの半分よりも小さい。すなわち、下面凹部14の上下方向の深さが、ベースプレート10aの下端から上端までの距離の半分(中心線C0から上端又は下端までの距離)よりも小さい。このように構成することで、下面凹部14を肉盗みとする構成であるため、鋳巣が発生しにくい。これにより、ベースプレート10aの剛性を高めることができる。
【0074】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0075】
<まとめ>
本発明は、以下の構成を有する。
【0076】
(1) 上面が開口した平面視矩形状の鋳造品であるベースプレートであって、
平面視矩形状のベース底板と、
前記ベース底板の外縁部から上方に延びる環状の壁部と、を有し、
前記壁部は、
上下方向と交差する面内方向の厚みが薄いベース肉薄部と、
上下方向と交差する面内方向の厚みが前記ベース肉薄部よりも厚い1つ又は複数のベース肉厚部と、
を有し、
少なくとも一つの前記ベース肉厚部の上面には下方に凹む凹部が形成され、
前記凹部の上下方向の深さが、前記ベースプレートの下端から上端までの距離の半分よりも小さいベースプレート。
【0077】
(2)前記壁部の前記ベース肉厚部が、前記ベース底板の少なくとも四隅に配置される隅部肉厚部を有し、
前記凹部が、前記隅部肉厚部の少なくとも一つに形成される(1)に記載のベースプレート。
【0078】
(3)前記凹部は、前記隅部肉厚部のそれぞれに少なくとも1つ形成される(2)に記載のベースプレート。
【0079】
(4)前記壁部の前記ベース肉厚部が、前記ベース底板の少なくとも一方の長辺の長さ方向の中間部に配置される中間部肉厚部を有し、
前記凹部が、前記中間部肉厚部の少なくとも一つに形成される(1)から(3)に記載のベースプレート。
【0080】
(5)前記凹部は、
平面視における最大長さが1.0mm以上であり、
上下方向の深さが0.5mm以上である(1)から(4)のいずれかに記載のベースプレート。
【0081】
(6)前記凹部の底面部から下方に延びてねじが締結可能なねじ穴を有する(1)から(5)のいずれかに記載のベースプレート。
【0082】
(7)前記ベース底板の下面の前記ベース肉厚部と重なる部分から上方に凹む下面凹部を有し、
前記下面凹部の上下方向の深さが、前記ベースプレートの下端から上端までの距離の半分よりも小さい(1)から(6)のいずれかに記載のベースプレート。
【0083】
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の前記ベースプレートと、
前記ベースプレートの前記壁部に囲まれた部分に固定されるステータ部と、
前記ステータの中心軸と同軸で配置されて前記ステータと径方向に対向するロータ部と、を有するスピンドルモータ。
【0084】
(9)(8)に記載のスピンドルモータと、
前記壁部の上端に固定されて前記開口を閉じるカバーと、
前記ベースプレートの内部に配置されて、前記ロータとともに回転するディスクと、を有する、ハードディスクドライブ装置。
【0085】
(10)前記ベース底板、前記壁部及び前記カバーで囲まれる空間に空気よりも密度が低い気体が充填され、
前記空間は、前記空気及び前記空気よりも密度が低い気体の流通を抑制する気密性を有する(9)に記載のハードディスクドライブ装置。
【0086】
(11)平面視矩形状のベース底板の外縁部から上方に延びる環状の壁部を有し、前記壁部の上下方向と交差する面内方向の厚みの薄いベース肉薄部と、前記ベース肉薄部よりも厚いベース肉厚部と、前記ベース肉厚部の上面から下方に凹む凹部が形成されたベースプレートの製造方法であって、
金型に溶融金属を射出及び充填する鋳造工程と、
前記鋳造工程で形成された鋳造物を冷却する過程の途中に実行され、前記鋳造工程で形成された前記凹部にピンを挿入して前記凹部の底面部を前記ピンで加圧し、鋳巣を潰す加圧工程と、を有する、ベースプレートの製造方法。
【0087】
(12)前記加圧工程の終了後において、前記凹部の前記底面部にねじ穴を形成するねじ穴形成工程を有する(11)に記載のベースプレートの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の構成は、ハードディスクを駆動するハードディスクドライブ装置として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
10、10a ベースプレート
11、11a ベース底板
12 壁部
13 ステータ支持部
14 下面凹部
15 下面
20 ステータ部
21 ステータコア
22 ティース
23 コイル
30 軸受部
31 シャフト
32 スリーブ
40 ロータ
40 ロータ部
41 ロータコア
42 ロータマグネット
43 クランプ部
100 ハードディスクドライブ装置
101 収納部
121 ベース肉薄部
122 ベース肉厚部
122c 中間部肉厚部
122r 隅部肉厚部
123 凹部
124 穴
125 溝部
126 パッキン
141 底面
200 スピンドルモータ
300 ディスク
400 アクセス部
401 ヘッド
402 アーム
402 アーム
403 ヘッド移動機構
411 上側筒部
412 上側筒部
413 フランジ部
431 スペーサ
432 押え部
500 カバー
501 貫通孔
502 凸部
1231 底面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8