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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018208
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】超音波送受信器
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/527 20060101AFI20240201BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20240201BHJP
【FI】
G01S7/527
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121389
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻井 明日香
(72)【発明者】
【氏名】笠島 崇
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AC40
5J083AD04
5J083AE01
5J083AE06
5J083AE08
5J083AF06
5J083BA02
5J083BC15
5J083BE54
5J083CA03
5J083CA12
(57)【要約】
【課題】超音波を高感度で受信し易い超音波送受信器を提供する。
【解決手段】超音波送受信器10は、超音波を送信する送信器11と、送信器11から送信された超音波の対象物Xによる反射波を受信する複数の受信器21,22,23と、を備えている。受信器21,22,23は、受信する反射波の周波数ごとに反射波を増幅する度合いを示す感度が特定されるとともに、受信する反射波の周波数に含まれる中心周波数で感度が最大となる受信特性を有する。受信特性において、最大の感度の半分以上の感度となる特定周波数帯域が周波数帯域に含まれている。複数の受信器21,22,23において、特定周波数帯域が連続するようにそれぞれの中心周波数が異なっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を用いて対象物を検出する超音波送受信器であって、
前記超音波を送信する送信器と、
前記送信器から送信された前記超音波の前記対象物による反射波を受信する複数の受信器と、
を備え、
前記受信器は、受信する前記反射波の周波数ごとに前記反射波を増幅する度合いを示す感度が特定されるとともに、受信する前記反射波の周波数に含まれる中心周波数で感度が最大となる受信特性を有し、
前記受信特性において、最大の感度の半分以上の感度となる特定周波数帯域が周波数帯域に含まれ、
複数の前記受信器において、前記特定周波数帯域が連続するようにそれぞれの前記中心周波数が異なっている、
超音波送受信器。
【請求項2】
前記受信器は、前記反射波の受信によって受信信号を生成し、
前記受信器において前記反射波の受信によって生成される前記受信信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する算出部を備え、
前記算出部は、複数の前記受信器において前記反射波を受信した際に生成される前記受信信号のうち、信号強度が最も大きい前記受信信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する、
請求項1に記載の超音波送受信器。
【請求項3】
前記受信器は、前記反射波の受信によって受信信号を生成し、
前記受信器において前記反射波の受信によって生成される前記受信信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する算出部を備え、
前記算出部は、複数の前記受信器において前記反射波を受信した際に生成される前記受信信号を加算した加算信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する、
請求項1に記載の超音波送受信器。
【請求項4】
3つ以上の前記受信器を備え、
3つ以上の前記受信器は、前記中心周波数が最大及び最小以外である中間受信器を含み、
前記中間受信器の前記特定周波数帯域の下限側及び上限側は、それぞれ他の前記受信器の前記特定周波数帯域と連続している、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波送受信器。
【請求項5】
複数の前記受信器は、
前記送信器から送信される前記超音波の周波数よりも小さい前記中心周波数の第1受信器と、
前記送信器から送信される前記超音波の周波数よりも大きい前記中心周波数の第2受信器と、
を含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波送受信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波送受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される流量計は、流体に対して超音波を放射する送信器と、送信器からの超音波を流体を通して受信する第1の超音波受信器及び第2の超音波受信器と、を備える構成である。第1の超音波受信器及び第2の超音波受信器は、それぞれの受信可能周波数帯域をずらして全体の受信可能周波数帯域を拡げる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-331403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、反射波を利用する超音波センサでは、反射波の減衰等、様々な外部的要因によって低感度で反射波を受信することが想定される。そこで、超音波を高感度で受信し易い超音波送受信器が求められている。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、超音波を高感度で受信し易い超音波送受信器を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下で示す〔1〕から〔5〕の特徴は、矛盾しない態様でどのように組み合わせてもよい。
【0007】
〔1〕本発明の超音波送受信器は、
超音波を用いて対象物を検出する超音波送受信器であって、
前記超音波を送信する送信器と、
前記送信器から送信された前記超音波の前記対象物による反射波を受信する複数の受信器と、
を備え、
前記受信器は、受信する前記反射波の周波数ごとに前記反射波を増幅する度合いを示す感度が特定されるとともに、受信する前記反射波の周波数に含まれる中心周波数で感度が最大となる受信特性を有し、
前記受信特性において、最大の感度の半分以上の感度となる特定周波数帯域が周波数帯域に含まれ、
複数の前記受信器において、前記特定周波数帯域が連続するようにそれぞれの前記中心周波数が異なっている。
【0008】
このような構成によって、複数の受信器によって、受信特性において最大の感度の半分以上の感度となる周波数帯域(特定周波数帯域)を拡げることができる。そのため、超音波送受信器は、超音波を高感度で受信し易くなる。
【0009】
〔2〕前記受信器は、前記反射波の受信によって受信信号を生成し、前記受信器において前記反射波の受信によって生成される前記受信信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する算出部を備え、前記算出部は、複数の前記受信器において前記反射波を受信した際に生成される前記受信信号のうち、信号強度が最も大きい前記受信信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出することが好ましい。
【0010】
このような構成によって、複数の受信器の各受信信号のうち優先的に信号強度の大きい受信信号(高い感度で生成された受信信号)を用いて、対象物との間の距離を算出できる。
【0011】
〔3〕前記受信器は、前記反射波の受信によって受信信号を生成し、前記受信器において前記反射波の受信によって生成される前記受信信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する算出部を備え、前記算出部は、複数の前記受信器において前記反射波を受信した際に生成される前記受信信号を加算した加算信号に基づいて、前記対象物との間の距離を算出することが好ましい。
【0012】
このような構成によって、複数の受信器の各受信信号を加算することで、受信信号にあらわれるノイズ等の影響を抑えることができる。
【0013】
〔4〕3つ以上の前記受信器を備え、3つ以上の前記受信器は、前記中心周波数が最大及び最小以外である中間受信器を含み、前記中間受信器の前記特定周波数帯域の下限側及び上限側は、それぞれ他の前記受信器の前記特定周波数帯域と連続していることが好ましい。
【0014】
このような構成によって、3つ以上の受信器を備える構成において、中間受信器における他の受信器の周波数帯域との間の周波数帯域で確実に特定周波数帯域とすることができる。
【0015】
〔5〕複数の前記受信器は、前記送信器から送信される前記超音波の周波数よりも小さい前記中心周波数の第1受信器と、前記送信器から送信される前記超音波の周波数よりも大きい前記中心周波数の第2受信器と、を含むことが好ましい。
【0016】
このような構成によって、対象物が相対的に遠ざかることで反射波の周波数が小さくなる場合に、反射波の周波数を特定周波数帯域内に含まれやすい第1受信器によって高感度で受信することができる。対象物が相対的に近づくことで反射波の周波数が大きくなる場合に、反射波の周波数を特定周波数帯域内に含まれやすい第2受信器によって高感度で受信することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の超音波送受信器は、超音波を高感度で受信し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の超音波送受信器の構成を概略的に示す図である。
図2】受信器における周波数と感度の関係を示す受信特性の一例を説明する図である。
図3】複数の受信器を用いた構成における、周波数帯域と感度の関係を例示する図である。
図4】第1実施形態の超音波送受信器を用いた対象物との間の距離の測定方法を説明する図である。
図5】第2実施形態の超音波送受信器において、複数の受信器を用いた構成における、周波数帯域と感度の関係を説明する図である。
図6】第3実施形態の超音波送受信器において、複数の受信器を用いた構成における、周波数帯域と感度の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
1.超音波送受信器10の構成
本開示の一例である超音波送受信器10を図1に示す。図1の超音波送受信器10は、超音波を用いて対象物Xを検出する。具体的には、超音波送受信器10は、対象物Xとの間の距離を測定する。超音波送受信器10は、図1に示すように、送信器11と、複数の受信器(受信器21,22,23)と、制御部31と、信号生成部32と、信号処理部33と、記憶部34と、タイマ35と、出力部36と、を備えている。
【0020】
送信器11は、超音波を送信する。送信器11は、例えば、圧電素子を用いて電気信号を超音波に変換する装置(トランスデューサ)として構成される。送信器11は、後述する信号生成部32の指令によって駆動する。
【0021】
受信器21,22,23は、送信器11から送信された超音波の対象物Xによる反射波を受信する。受信器21,22,23は、例えば、圧電素子を用いて超音波(対象物Xからの反射波)を電気信号に変換する装置(トランスデューサ)として構成される。受信器21,22,23は、超音波の受信によって受信信号を生成し、後述する信号処理部33に送信する。受信信号は、例えば電圧信号である。受信器21,22,23は、例えば近接して配置される。
【0022】
制御部31は、例えば公知の情報処理装置として構成される。制御部31は、CPUなどの公知の演算装置及び他の周辺回路などを備え、様々な制御や演算を行い得る。制御部31は、本開示の「算出部」の一例に相当し、受信器21,22,23において反射波の受信によって生成される受信信号に基づいて、対象物Xとの間の距離を算出するように機能する。
【0023】
信号生成部32は、送信器11を駆動することによって送信器11に超音波を生成させる電気回路を具備している。信号生成部32は、例えば、交流信号を生成する発振回路と、交流信号を増幅して送信器11へ供給する増幅回路と、を具備している。信号生成部32は、制御部31からの指示に応じて、各送信器11を駆動する。
【0024】
信号処理部33は、例えば、アナログデジタル変換回路を具備している。信号処理部33は、受信器21,22,23からのアナログ信号(受信信号)をデジタルデータに変換する。信号処理部33は、変換したデジタルデータを制御部31に送信する。
【0025】
記憶部34は、様々な情報を記憶する機能を有する。記憶部34は、半導体メモリ、HDD、SSD等、公知の記憶装置が採用される。記憶部34には、制御部31等を制御させるための様々なプログラムが記憶されている。
【0026】
タイマ35は、送信器11による超音波の送信時点からの経過時間の測定を行う。
【0027】
出力部36は、制御部31によって算出された距離等を出力するように機能する。出力部36は、例えば、液晶ディスプレイ等の画像表示装置や、音声等を出力するスピーカ等として構成されている。出力部36は、例えば、制御部31によって算出された距離等を、画像表示装置によって表示したり、スピーカ等によって音声で出力したりする。
【0028】
2.受信器21,22,23の詳細構成
受信器21,22,23は、受信する反射波の周波数ごとに感度(反射波を増幅する度合いを示す指標)が特定される受信特性を有する。図2は、例として受信器21,22,23と同様の構成の一般的な受信器の受信特性を示す図面である。図2に示すように、受信特性の周波数帯域(感度が特定される周波数帯域)には、周波数帯域の中心付近にある中心周波数が含まれている。受信特性では、周波数が中心周波数のときに、感度が最大となる。図2に示すように、受信特性において、周波数が中心周波数から離れるにつれて感度が低くなる。中心周波数は、1つの値であってもよく、一定程度の幅を持った値の範囲であってもよい。受信器21,22,23の受信特性も、図2で説明した受信器と同様の受信特性(中心周波数をピークとした感度分布となる特性)を有する。中心周波数は、受信器21,22,23に固有の値である。
【0029】
受信特性において、最大の感度(中心周波数における感度)の半分以上の感度となる特定周波数帯域が周波数帯域に含まれている。最大の感度の半分以上の感度とは、電圧基準で最大受信信号強度の半分(6dB低い値)以上の感度である。なお、第1実施形態では、最大の感度の半分以上の感度として、電圧基準での最大受信信号強度の半分(6dB低い値)以上の感度を用いるが、電力基準の場合では、最大受信信号強度の半分が3dBの感度となり、このような基準を採用してもよい。例えば、図2に示す受信特性において、中心周波数は、f01(46kHz程度の値)である。図2に示す受信特性において、特定周波数帯域W01は、最大感度(中心周波数f01に対応する感度)よりも6dB低い値以上の感度となる周波数帯域(1kHz程度の幅となる範囲)である。
【0030】
受信器21,22,23において、特定周波数帯域が連続するようにそれぞれの中心周波数が異なっている。図3は、第1実施形態の受信器21,22,23の各周波数帯域を例示する図である。図3に示すように、受信器21,22,23のそれぞれの中心周波数は、f11(43.5kHz程度の値)、f12(44.5kHz程度の値)、f13(45.5kHz程度の値)である。受信器21,22,23のそれぞれの特定周波数帯域は、W11(1kHz程度の幅となる範囲)、W12(1kHz程度の幅となる範囲)、W13(1kHz程度の幅となる範囲)である。特定周波数帯域W11,W12,W13は、連続している。すなわち、特定周波数帯域W11,W12,W13は、ひと続きの周波数帯域を構成し、その周波数帯域において周波数と感度の関係が線形になっている。
【0031】
受信器21,22,23において、中心周波数が最大及び最小以外である受信器を中間受信器と称する。図3に示す例では、中心周波数が最大(f13)及び最小(f11)以外であるものがf12であり、受信器22を中間受信器と称する。中間受信器(受信器22)の特定周波数帯域W12の下限側は、他の受信器(受信器21)の特定周波数帯域W11と連続している。特定周波数帯域W12の上限側は、他の受信器(受信器23)の特定周波数帯域W13と連続している。具体的には、特定周波数帯域W11の上限値が特定周波数帯域W12の下限値であり、特定周波数帯域W12の上限値が特定周波数帯域W13の下限値である。
【0032】
送信器11から送信される超音波の周波数(以下、送信周波数とも言う)よりも小さい中心周波数となる受信器を、第1受信器と称する。送信周波数よりも大きい中心周波数となる受信器を、第2受信器と称する。図3に示す例では、送信周波数f10は、f12(44.5kHz程度の値)と同程度の値になっている。本開示の「第1受信器」に相当する受信器21の中心周波数f11は、送信周波数f10よりも小さい。本開示の「第2受信器」に相当する受信器23の中心周波数f13は、送信周波数f10よりも大きい。
【0033】
このように、受信器21の中心周波数f11が、送信周波数f10よりも小さいことで、送信周波数f10よりも小さい周波数帯域において、受信器21の特定周波数帯域W11によって高感度な受信を担保することができる。例えば、対象物Xが超音波送受信器10に対して相対的に遠ざかることで反射波の周波数が小さくなるような場合に、特定周波数帯域W11があることで高感度に受信し易くなる。一方で、受信器23の中心周波数f13が、送信周波数f10よりも大きいことで、送信周波数f10よりも大きい周波数帯域において、受信器23の特定周波数帯域W13によって高感度な受信を担保することができる。例えば、対象物Xが超音波送受信器10に対して相対的に近づくことで反射波の周波数が大きくなるような場合に、特定周波数帯域W13があることで高感度に受信し易くなる。
【0034】
3.超音波送受信器10の適用例
図4に示すように、本開示の超音波送受信器10は、例えば車両Cに搭載される。図4では、超音波送受信器10は、車両Cの前方側に設けられている。送信器11は、車両Cの前方側に向かって超音波を送信する。受信器21,22,23は、車両Cの前方側から向かってくる超音波を受信する。
【0035】
超音波送受信器10は、対象物Xとの間の距離を測定する。対象物Xは、例えば車両Cとは異なる他の車両等である。超音波送受信器10は、ToF(Time of Flight)方式で、対象物Xとの間の距離を測定する。具体的には、送信器11から送信された超音波が対象物Xで反射して、受信器21,22,23で受信されるまでの時間に基づいて、既知である超音波の速度(音速)を用いて対象物Xとの間の距離を算出する。
【0036】
制御部31は、受信器21,22,23において反射波を受信した際に生成される受信信号のうち、信号強度(例えば電圧値)が最も大きい受信信号に基づいて、対象物Xとの間の距離を算出する。信号強度が最も大きい受信信号として生成される反射波の受信器21,22,23への到達時間に基づいて、上述したToF方式を用いて対象物Xとの間の距離を算出する。
【0037】
車両Cと対象物Xが互いに接近するときの速度をそれぞれv、vとしたとき、送信器11から送信された超音波の周波数をfとすると、受信器21,22,23で対象物Xからの反射波を受信するときの周波数f´は、次の式(1)であらわされる。ここで、cは、音速(気温15℃のときの音速340.5m/s)である。
【0038】
【数1】


…式(1)
【0039】
式(1)において、fを44.5kHzとし、vを10km/hとし、vを10km/hとしたとき、f´はfに対して1.4kHz程度増加する。そのため、上述したように、受信器21,22,23のそれぞれの中心周波数を、f11(43.5kHz程度の値)、f12(44.5kHz程度の値)、f13(45.5kHz程度の値)とすることで、43.0kHz以上46.0kHz以下の範囲を特定周波数帯域とすることができる。すなわち、f´はfに対して1.4kHz程度増加しても、特定周波数帯域に含まれるため、最大の感度(中心周波数における感度)の半分(最大の感度よりも6dB低い値)以上の感度で超音波を受信することができる。
【0040】
4.第1実施形態の効果
超音波送受信器10は、複数の受信器21,22,23において、特定周波数帯域が連続するようにそれぞれの中心周波数が異なっている。このような構成によって、複数の受信器21,22,23によって、受信特性において最大の感度の半分以上の感度となる周波数帯域(特定周波数帯域)を拡げることができる。そのため、超音波送受信器10は、超音波を高感度で受信し易くなる。
【0041】
超音波送受信器10は、超音波の対象物Xによる反射を利用するため、ドップラー効果以外の外部的要因(対象物Xとの距離、超音波の指向性、対象物Xの形状等)によっても超音波の減衰等の影響を受け易い。そこで、超音波送受信器10では、複数の受信器によって特定周波数帯域を拡げることで、周波数が変動し得る環境において、受信感度の低減を抑制できる。
【0042】
制御部31は、複数の受信器21,22,23において反射波を受信した際に生成される受信信号のうち、信号強度が最も大きい受信信号に基づいて、対象物Xとの間の距離を算出する。このような構成によって、複数の受信器21,22,23の各受信信号のうち優先的に信号強度の大きい受信信号(高い感度で生成された受信信号)を用いて、対象物Xとの間の距離を算出できる。
【0043】
超音波送受信器10は、受信器21,22,23のうち中心周波数が最大及び最小以外である中間受信器(受信器22)を有する。中間受信器(受信器22)の特定周波数帯域の下限側及び上限側は、それぞれ他の受信器(受信器21,23)の特定周波数帯域と連続している。このような構成によって、中間受信器(受信器22)における他の受信器(受信器21,23)の周波数帯域との間の周波数帯域で確実に特定周波数帯域とすることができる。
【0044】
超音波送受信器10は、送信器11から送信される超音波の周波数よりも小さい中心周波数の第1受信器(受信器21)と、送信器11から送信される超音波の周波数よりも大きい中心周波数の第2受信器(受信器23)と、を有する。このような構成によって、対象物Xが相対的に遠ざかることで反射波の周波数が小さくなる場合に、反射波の周波数を特定周波数帯域内に含まれやすい第1受信器(受信器21)によって高感度で受信することができる。対象物Xが相対的に近づくことで反射波の周波数が大きくなる場合に、反射波の周波数を特定周波数帯域内に含まれやすい第2受信器(受信器23)によって高感度で受信することができる。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態の超音波送受信器10では、受信器21,22,23の受信特性が第1実施形態と異なっている。そのため、第1実施形態の超音波送受信器10と同様の構成については、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、受信器21,22,23は、いずれも送信周波数よりも小さい中心周波数となる受信器である。図5に示す例では、送信周波数f20は44.5kHzである。受信器21,22,23のそれぞれの中心周波数は、f21(45kHz程度の値)、f22(46kHz程度の値)、f23(47kHz程度の値)である。受信器21,22,23のそれぞれの特定周波数帯域は、W21(1kHz程度の幅となる範囲)、W22(1kHz程度の幅となる範囲)、W23(1kHz程度の幅となる範囲)である。特定周波数帯域W21,W22,W23は、連続している。すなわち、特定周波数帯域W21,W22,W23は、ひと続きの周波数帯域を構成し、その周波数帯域において周波数と感度の関係が線形になっている。
【0047】
図5に示すように、中間受信器(受信器22)の特定周波数帯域W22の下限側は、他の受信器(受信器21)の特定周波数帯域W21と連続している。特定周波数帯域W22の上限側は、他の受信器(受信器23)の特定周波数帯域W23と連続している。具体的には、特定周波数帯域W21の上限値が特定周波数帯域W22の下限値であり、特定周波数帯域W22の上限値が特定周波数帯域W23の下限値である。
【0048】
上記式(1)において、fを44.5kHzとし、vを20km/hとし、vを20km/hとしたとき、f´はfに対して3kHz程度増加する。そこで、受信器21,22,23が図5に示す受信特性を有することで、44.5kHz~47.5kHzの範囲を特定周波数帯域とすることができる。これにより、f´はfに対して3kHz程度増加しても、特定周波数帯域に含まれ易く、最大の感度(中心周波数における感度)の半分(最大の感度よりも6dB低い値)以上の感度で超音波を受信し易くなる。
【0049】
<第3実施形態>
第3実施形態の超音波送受信器10では、受信器21,22,23の受信特性が第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。そのため、第1実施形態の超音波送受信器10と同様の構成については、同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、受信器21,22,23は、いずれも送信周波数よりも小さい中心周波数となる受信器である。図6に示す例では、送信周波数f30は44.5kHzである。受信器21,22,23のそれぞれの中心周波数は、f31(42kHz程度の値)、f32(43kHz程度の値)、f33(44kHz程度の値)である。受信器21,22,23のそれぞれの特定周波数帯域は、W31(1kHz程度の幅となる範囲)、W32(1kHz程度の幅となる範囲)、W33(1kHz程度の幅となる範囲)である。特定周波数帯域W31,W32,W33は、連続している。すなわち、特定周波数帯域W31,W32,W33は、ひと続きの周波数帯域を構成し、その周波数帯域において周波数と感度の関係が線形になっている。
【0051】
図6に示すように、中間受信器(受信器22)の特定周波数帯域W32の下限側は、他の受信器(受信器21)の特定周波数帯域W31と連続している。特定周波数帯域W32の上限側は、他の受信器(受信器23)の特定周波数帯域W33と連続している。具体的には、特定周波数帯域W31の上限値が特定周波数帯域W32の下限値であり、特定周波数帯域W32の上限値が特定周波数帯域W33の下限値である。
【0052】
受信器21,22,23の各中心周波数f31,f32,f33が、送信周波数f30よりも小さいことで、送信周波数f30よりも小さい周波数帯域において、受信器21,22,23の各特定周波数帯域W31,W32,W33によって高感度な受信を担保することができる。例えば、対象物Xが超音波送受信器10に対して相対的に遠ざかることで反射波の周波数が小さくなるような場合に、特定周波数帯域W31,W32,W33があることで高感度に受信し易くなる。
【0053】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0054】
上記実施形態では、受信器の特定周波数帯域として、最大感度(中心周波数に対応する感度)よりも6dB低い値以上の感度となる周波数帯域としたが、6dB以外の数値(5dB、4dB等の6dBより小さい値)で低くなる値以上の感度となる周波数帯域としてもよい。また、特定周波数帯域の範囲として1kHz程度の幅を例示したが、その他の大きさの幅であってもよい。電力基準を採用する場合でも、同様に、最大感度の半分の値(3dB)以外の数値で低くなる値以上の感度となる周波数帯域を特定周波数帯域としてもよい。
【0055】
上記実施形態では、受信器21,22,23において、特定周波数帯域が重ならずに連続する構成を例示したが、重なるように連続する構成であってもよい。例えば、受信器21の特定周波数帯域の上限値が、受信器22の特定周波数帯域の下限値よりも大きくてもよい。また、上記実施形態では、3つの受信器を用いたが、受信器の数はこれに限られず2つ以上の複数であればよい。
【0056】
上記実施形態では、制御部31は、受信器21,22,23において反射波を受信した際に生成される受信信号のうち、信号強度(例えば電圧値)が最も大きい受信信号に基づいて、対象物Xとの間の距離を算出した。しかしながら、制御部31は、複数の受信器(受信器21,22,23)において反射波を受信した際に生成される受信信号を加算した加算信号に基づいて、対象物Xとの間の距離を算出してもよい。このように、複数の受信器の各受信信号を加算することで、受信信号にあらわれるノイズ等の影響を抑えることができる。
【0057】
上記実施形態では、本開示の「中間受信器」の一例として、受信器22が設けられる構成を例示したが、「中間受信器」に相当する複数の受信器を設ける構成であってもよい。例えば、中心周波数が受信器22の中心周波数と受信器23の中心周波数との間の大きさになる受信器を更に設ける構成であってもよい。
【0058】
上記実施形態では、3つの受信器を特定周波数帯域が連続するように設けたが、その他の数の受信器を特定周波数帯域が連続するように設けてもよい。例えば、上記第1実施形態では、「第1受信器」として受信器21を設けたが、「第1受信器」に相当する複数の受信器を設けてもよい。「第2受信器」として受信器23を設けたが、「第2受信器」に相当する複数の受信器を設けてもよい。
【0059】
上記実施形態において、送信器11から送信される超音波として、チャープ信号等の広帯域信号を送信してもよい。これにより、受信器の受信信号を、周波数変調を利用した信号処理等に用いることができる。
【0060】
上記実施形態において、送信器11から周波数の異なる複数の超音波を送信してもよい。
【0061】
上記実施形態において、超音波送受信器10が、対象物Xとの間の距離を算出する構成であったが、超音波の反射を利用して対象物Xの有無を検出する構成であってもよい。また、超音波送受信器10が、対象物Xとの間の距離を算出する構成(制御部31等)を備えていたが、制御部31等を備えることなく、受信器で受信した受信信号を出力する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…超音波送受信器
11…送信器
21…受信器(第1受信器)
22…受信器(中間受信器)
23…受信器(第2受信器)
30…制御装置
31…制御部(算出部)
32…信号生成部
33…信号処理部
34…記憶部
35…タイマ
36…出力部
C…車両
X…対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6