(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018210
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/54 20060101AFI20240201BHJP
H01H 1/54 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01H50/54 B
H01H50/54 E
H01H1/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121391
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】石井 智大
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】草野 祐馬
【テーマコード(参考)】
5G051
【Fターム(参考)】
5G051NB02
5G051NB12
5G051NB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1のヨークと第2のヨークとの対向面積の減少を防止して磁気吸引力の低下を抑制し、可動接点及び固定接点の接触圧の低下を解決した電磁接触器を提供する。
【解決手段】電磁接触器は、可動接触子13の一対の固定接触子を向く一方の面側に配置された第1のヨークと、可動接触子の一対の固定接触子に対して他方の面に配置されたヨーク基部と、可動接触子の短尺方向の側部側に位置するヨーク基部の縁部から第1のヨークに延在して対向する一対の磁路部を有する第2のヨークを備え、可動接触子の進退に際し第1のヨーク及び第2のヨークの相対回転を規制する摺動ガイド18d1,18d2,18e1,18e2、脚部16a1,16a2の右側の側面及び脚部16a1,16a2の左側の側面を備え、可動接触子を流れる電流により発生する磁束によって第1のヨークと第2のヨークの間に磁気吸引力が発生する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する一対の固定接触子と、
前記一対の固定接触子の前記固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する長尺な可動接触子と、
前記可動接触子に可動接触子支持部を介して連結された可動プランジャを駆動して前記一対の固定接触子に接離する進退方向に前記可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、
前記可動接触子の前記一対の固定接触子を向く一方の面側に配置された第1のヨークと、
前記可動接触子の前記一対の固定接触子に対して逆側の他方の面に配置されたヨーク基部と、前記可動接触子の短尺方向の側部側に位置する前記ヨーク基部の縁部から前記第1のヨークに延在して対向する一対の磁路部とを有する第2のヨークと、
前記可動接触子が進退する際の前記第1のヨーク及び前記第2のヨークの相対回転を規制するヨーク回転規制部と、を備え、
前記可動接触子を流れる電流により発生する磁束によって前記第1のヨークと前記第2のヨークの間に磁気吸引力が発生するようにしたことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記第2のヨークは、前記可動接触子に固定されていることを特徴とする請求項1記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記可動接触子支持部は、前記可動プランジャの一端に固定された接点支えと、頂板部及び当該頂板部の両端から平行に延びる一対の脚部が前記接点支えに固定されているスプリング押さえと、当該スプリング押さえの内部に配置した前記可動接触子の長手方向中央部を前記頂板部側に付勢する接触スプリングと、を備え、
前記第1のヨークは、前記スプリング押さえの前記頂板部の前記可動接触子に面する側に固定されており、
前記ヨーク回転規制部は、前記スプリング押さえの前記一対の脚部の少なくとも2箇所の脚側部と、前記第2のヨークに形成されて2箇所の前記脚側部に対向配置されている少なくとも2箇所の摺動ガイドと、で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記可動接触子支持部は、前記可動プランジャの一端に固定された接点支えと、頂板部及び当該頂板部の両端から平行に延びる一対の脚部が前記接点支えに固定されているスプリング押さえと、当該スプリング押さえの内部に配置した前記可動接触子の長手方向中央部を前記頂板部側に付勢する接触スプリングと、を備え、
前記第1のヨークは、前記スプリング押さえの前記頂板部の前記可動接触子に面する側に固定したヨーク基部と、前記ヨーク基部から前記接点支えの前記一対の脚部に沿って延在する少なくとも2箇所の摺動支持部と、を備え、
前記ヨーク回転規制部は、少なくとも2箇所の前記摺動支持部と、前記第2のヨークに形成されて2箇所の前記摺動支持部に対向配置されている少なくとも2箇所の摺動ガイドと、で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主回路の開閉を行う電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器は、固定接点を有する一対の固定接触子と、一対の固定接触子の固定接点に切離する一対の可動接点を一方の面に有する可動接触子と、一対の固定接点に一対の可動接点が切離する方向に可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、を備えている。電磁接触器の閉極状態では、短絡電流のような大電流が流れると、可動接点及び固定接点の間に電磁力(電磁反発力)が発生し、可動接点及び固定接点の接触圧が低下するおそれがある。
【0003】
特許文献1の電磁接触器は、可動接触子の閉極方向である可動接触子の一方の面側に第1のヨークを配置し、可動接触子を介して第1のヨークに対向する第2のヨークを可動接触子の他方の面に配置し、固定接点及び可動接点が接触する閉極状態で、可動接触子への通電電流で発生する磁場によって第1のヨークと第2のヨークとの間に磁気吸引力が発生させている。これにより、閉極状態において可動接触子に大電流が流れ発生した電磁反発力に対して磁気吸引力を逆方向に作用させ、可動接点及び固定接点の接触圧低下を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電磁接触器は、電磁石ユニットの駆動により固定接触子との接触方向に移動した可動接触子が回転すると、第1のヨーク及び第2のヨークとの対向面積が減少することで磁気吸引力が低下し、可動接点及び固定接点の接触圧が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、第1のヨークと第2のヨークとの対向面積の減少を防止して磁気吸引力の低下を抑制し、可動接点及び固定接点の接触圧の低下を解決した電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、固定接点を有する一対の固定接触子と、一対の固定接触子の固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する長尺な可動接触子と、可動接触子に可動接触子支持部を介して連結された可動プランジャを駆動して一対の固定接触子に接離する進退方向に可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、可動接触子の一対の固定接触子を向く一方の面側に配置された第1のヨークと、可動接触子の一対の固定接触子に対して逆側の他方の面に配置されたヨーク基部と可動接触子の短尺方向の側部側に位置するヨーク基部の縁部から第1のヨークに延在して対向する一対の磁路部とを有する第2のヨークと、可動接触子が進退する際の第1のヨーク及び第2のヨークの相対回転を規制するヨーク回転規制部と、を備え、可動接触子を流れる電流により発生する磁束によって第1のヨークと第2のヨークの間に磁気吸引力が発生するようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電磁接触器によれば、第1のヨークと第2のヨークとの対向面積の減少を防止して磁気吸引力の低下を抑制し、可動接点及び固定接点の接触圧の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る第1実施形態に係る電磁接触器の断面図である。
【
図2】第1実施形態の電磁接触器において、一対の固定接触子を固定している上ケース及び下ケースを除いた内部構造を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の電磁接触器で使用する第2のヨークを示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の電磁接触器の要部を平面視で示した図である。
【
図7】第2実施形態の電磁接触器において、一対の固定接触子を固定している上ケース及び下ケースを除いた内部構造を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態の電磁接触器で使用する第1のヨークを示す斜視図である。
【
図9】第2実施形態の電磁接触器の要部を平面視で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
[第1実施形態]
【0013】
本発明に係る第1実施形態の電磁接触器について、
図1から
図6を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の電磁接触器1は、接点機構2と、この接点機構2の後述する可動接触子を駆動する電磁石ユニット3とを備えている。
【0015】
接点機構2及び電磁石ユニット3は、収納ケース6内に同一空間に密封状態で収納されている。収納ケース6は、樹脂製の上ケース4と、上ケース4に接合されている樹脂製の下ケース5とで構成されている。収納ケース6内には、ガス導入パイプ7からアーク消弧用のガスが封入される。ガス導入パイプ7は、アーク消弧用のガスを収納ケース6内に封入後に途中から切断されて開口が閉塞される。収納ケース6の上ケース4には、他の部材への取付部8が設けられている。
【0016】
接点機構2は、上ケース4にインサート成形によって固定された一対の固定接触子11、12(以下、第1固定接触子11、第2固定接触子12と称する)と、これら第1固定接触子11及び第2固定接触子12に接離可能な可動接触子13とを備えている。
【0017】
第1固定接触子11及び第2固定接触子12は、導電性金属材料で形成されて上ケース4に左右方向に所定間隔を離して固定される。そして、左側の第1固定接触子11の下端面には固定接点11aが形成され、右側の第2固定接触子12の下端面には固定接点12aが形成されている。
【0018】
可動接触子13は、導電性金属を材料とした左右方向に長く延びる導電板であり、左端側の上面には、左側の第1固定接触子11の固定接点11aに接触する可動接点13aが形成され、右端側の上面には、右側の第2固定接触子12の固定接点12aに接触する可動接点13bが形成されている。
【0019】
可動接触子13は、
図2に示すように、電磁石ユニット3の上部に配置した接点支え14、接触スプリング15及びスプリング押さえ16に支持されている。
【0020】
接点支え14は、樹脂材料で形成され、電磁石ユニット3の後述する可動プランジャ21の上端に固定されている。
【0021】
スプリング押さえ16は、接点支え14の上部から平行に立ち上がる一対の脚部16a1,16a2と、一対の脚部16a1,16a2の上端部と連結してU字形状をなす頂部16bと、を備えている。可動接触子13は、スプリング押さえ16の内部を左右方向に貫通するように配置され、スプリング押さえ16の頂部16bと接点支え14との間を左右方向に貫通するように配置されている。
【0022】
スプリング押さえ16の頂部16bの下面には、平板形状の第1のヨーク17が固定されており、可動接触子13の左右方向中央部の下面には、第2のヨーク18が固定されている。
【0023】
第2のヨーク18は、
図3に示すように、金属板で形成した部材であり、正方形状のヨーク基部18aと、ヨーク基部18aの一方の対向辺部から同一方向に平行に延在する一対の磁路部18b,18cと、ヨーク基部18aの他方の対向辺部から一対の磁路部18b,18cに対して逆方向に直交して延在している一対の係合部18d,18eと、を備えている。ヨーク基部18aには、可動接触子13に係合する係合孔18fが形成されている。一方の係合部18dの一対の磁路部18b,18cに近接する両端部には、摺動ガイド18d1,18d2が形成されている。また、他方の係合部18eの一対の磁路部18b,18cに近接する両端部にも、摺動ガイド18e1,18e2が形成されている。
【0024】
図5に示すように、可動接触子13の左右方向中央部の下面には係合突起13cが形成されており、第2のヨーク18は、ヨーク基部18aの係合孔18fに係合突起13cを係合した状態で可動接触子13に固定されている。第2のヨーク18は、ヨーク基部18aが可動接触子13の下面に当接し、一対の磁路部18b,18cが可動接触子13の前後方向を向く側面に沿って左右方向に平行に延在する。これにより、一対の磁路部18b,18cの上端は、第1のヨーク17の前後方向の両縁部に、下方から左右方向に延在した状態で対向する。
【0025】
また、第2のヨーク18は、
図4に示すように、一方の係合部18dの摺動ガイド18d1,18d2がスプリング押さえ16の一対の脚部16a1,16a2の右側の側面(本発明で脚側部と称している)に対向し、他方の係合部18dの摺動ガイド18e1,18e2が一対の脚部16a1,16a2の左側の側面(本発明で脚側部と称している)に対向した状態で配置されている。
【0026】
そして、可動接触子13は、
図5に示すように、接触スプリング15によって常時上方に付勢され、スプリング押さえ16の頂板部16bに固定した第1のヨーク17に押し付けられた状態で支持されている。
【0027】
図1に戻り、電磁石ユニット3は、可動プランジャ21、アーマチュア22、スプール24、励磁コイル25、励磁ヨーク31、補助ヨーク32、永久磁石33及び復帰ばね34を備え、収納ケース6内部の接点機構2の下方に配置されている。
【0028】
可動プランジャ21は、磁性体で構成される上下方向に延びる丸軸状部材である。可動プランジャ21の下端には、可動プランジャ21よりも径の大きい円板状の磁性体で構成されるアーマチュア22が固定されている。可動プランジャ21の上端に固定された接点支え14は、可動プランジャ21の上方移動とともに上方向に移動し、可動プランジャ21の下方移動とともに下方向に移動する。そして、接点支え14の上方向の移動にともなって可動接触子13が上方向に移動し、接点支え14の下方向の移動にともなって可動接触子13が下方向に移動する。なお、可動プランジャ21の外周の下側には円筒形状の摺動カラー26が配置され、上側には円筒形状のプランジャリング27が配置されている。
【0029】
励磁ヨーク31は、開口部が下方を向いているU字形状の上部ヨーク体35と、上部ヨーク体35の開口部を閉塞して連結されている下部ヨーク体36と備えている。上部ヨーク体35の上板35a及び下部ヨーク体36には、可動プランジャ21が通過する可動プランジャ貫通孔37a,37bが形成されている。
【0030】
可動プランジャ21の上方向への移動は、アーマチュア22が下部ヨーク体31bの可動プランジャ貫通孔37bの下部周縁に当接することで規制され、可動プランジャ21の下方向への移動は、アーマチュア22が補助ヨーク32の上面に当接することで規制される。スプール24は、可動プランジャ21の外周を囲って上下方向に延びる円筒状の部材であり、スプール24の外周に、可動プランジャ21を駆動する励磁コイル25が巻装されている。この励磁コイル25は、端子38に電気的に接続されている。永久磁石33は、環状部材であり、励磁ヨーク31の下部ヨーク体36の下側であって可動プランジャ21のアーマチュア22の周囲に設置されている。この永久磁石33の下側に、磁性体で構成される円環板状の補助ヨーク32が設置されている。永久磁石33は、下部ヨーク体36の下面に吸着され、補助ヨーク32は永久磁石33の下面に吸着された状態で設置される。復帰ばね34は、摺動カラー26の下端面と、可動プランジャ21に固定されたアーマチュア22との間に可動プランジャ21を囲繞するように設置されており、励磁コイル25の励磁状態を解除したときに可動接触子13を第1固定接触子11及び第2固定接触子12に対して開離させる。
【0031】
次に、第1実施形態の電磁接触器1の動作について説明する。
【0032】
図1は、電磁接触器1の釈放状態を示しており、電磁石ユニット3は可動プランジャ21を上方向に移動させる励磁力を発生しておらず、可動プランジャ21が復帰ばね34によって下方向に付勢され、アーマチュア22が補助ヨーク32に永久磁石33の作用によって吸着している。このため、可動プランジャ21連結されている可動接触子13が、第1固定接触子11及び第2固定接触子12に対して下方に所定距離だけ離間している。このため、第1固定接触子11及び第2固定接触子12の間の電流路が遮断状態となる(接点機構2の開極状態)。
【0033】
この接点機構2の開状態から、電磁石ユニット3の励磁コイル25に通電すると、電磁石ユニット3で励磁力が発生し、可動プランジャ21を、永久磁石33による補助ヨーク32に対する吸着力及び復帰ばね34の付勢力に抗して上方に押し上げ、アーマチュア22が励磁ヨーク31の下部ヨーク体36の下面に吸着される。このように、可動プランジャ21が上方向に移動することにより、可動プランジャ21に連結されている可動接触子13も上方向に移動し、可動接触子13の両接点13a,13bが、第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aに対して接触スプリング15の接触圧で接触して第1固定接触子11及び第2固定接触子12の間の電流路が通電状態となる(接点機構2の閉極状態)。
【0034】
また、接点機構2の閉極状態、或いは開極状態の切り替わり時に可動接触子13が上下に移動する際には、可動接点13a,13bが第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aに対向しない方向に可動接触子13が回動しようとする。可動接触子13の回動は、可動接触子13に固定した第2のヨーク18に伝達される。第2のヨーク18の一方の係合部18dに形成されている摺動ガイド18d1,18d2は、スプリング押さえ16の一対の脚部16a1,16a2の右側の側面に対向しており、他方の係合部18dの摺動ガイド18e1,18e2は、一対の脚部16a1,16a2の左側の側面に対向しており、摺動ガイド18d1,18d2,18e1,18e2がプリング押え16の一対の脚部16a1,16a2に当接することで、第2のヨーク18及び可動接触子13の回動が規制される。
【0035】
ここで、接点機構2の閉極状態において短絡電流のような大電流が流れると、互いに接触している第1及び第2固定接触子11,12の固定接点11a,12a及び可動接触子13の可動接点13a,13bの間で、互いに離れようとする電磁力(電磁反発力)が発生し、可動接触子13に下向きの力が作用する。同時に、可動接触子13に電流が流れることで可動接触子13の周囲に磁場が発生し、
図6の破線で示すように、第1のヨーク17と第2のヨーク18のヨーク基部18a及び一対の磁路部18b,18cを通る磁束が形成される。この磁束の形成により、第1のヨーク17の前後方向の両端の下面と、第1のヨーク17に向けて上方に延在する第2のヨーク18の一対の磁路部18b,18cの上部との間で磁気吸引力を発生する。この磁気吸引力により、第2のヨーク18に固定された可動接触子13に上向きの力が作用する。この可動接触子13に作用する上向きの力は、電磁反発力により可動接触子13に作用する下向きの力に対して逆方向の向きとなる。
【0036】
次に、第1実施形態の電磁接触器1の効果について説明する。
【0037】
接点機構2の閉極状態において大電流が流れたときに発生する電磁反発力に対して、可動接触子13の通電電流により第1のヨーク17及び第2のヨーク18の間で発生する磁気吸引力が逆方向に作用し、磁気吸引力が電磁反発力を打ち消しているので、固定接点11a,12a及び可動接点13a,13bの接触圧の低下を防止することができる。
【0038】
また、可動接触子13に固定された第2のヨーク18は、摺動ガイド18d1,18d2,18e1,18e2がプリング押え16の一対の脚部16a1,16a2に当接することで回動が規制されるので、一対の磁路部18b,18cの上端面と、第1のヨーク17の下面との対向面積が変化しない。このため、第1のヨーク17及び第2のヨーク18の対向面積の減少による磁気吸引力の低下を抑制し、固定接点11a,12a及び可動接点13a,13bの接触圧の低下を確実に防止することができる。
【0039】
さらに、第2のヨーク18の摺動ガイド18d1,18d2,18e1,18e2がプリング押え16の一対の脚部16a1,16a2に当接して可動接触子13の回動が規制されるので、可動接触子13の可動接点13a,13bと、第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aとの導通不良を回避し、主回路の信頼性を十分に確保することができる。
[第2実施形態]
【0040】
次に、本発明に係る第2実施形態の電磁接触器1について、
図7から
図10を参照して説明する。
【0041】
第2実施形態の電磁接触器1は、第1実施形態で使用した第1のヨーク17に替えて、
図7に示すように、第1のヨーク40を使用している。第1のヨーク40は、
図8に示すように、金属板で形成した部材であり、四角形状のヨーク基部40aと、ヨーク基部40aの四隅からヨーク基部40aの面に対して直交して同一方向に延在する棒状の第1~第4摺動支持部40b~40eと、を備えている。
【0042】
第1のヨーク40は、
図7に示すように、ヨーク基部40aがスプリング押さえ16の頂部16bの下面に固定され、第1摺動支持部40b及び第2摺動支持部40cが、頂部16bから右側に突出して一対の脚部16a1,16bに沿って下方に延在し、第3摺動支持部40d及び第4摺動支持部40eが、頂部16bから左側に突出して一対の脚部16a1,16bに沿って下方に延在している。
【0043】
また、本実施形態の第2のヨーク18は、
図3で示した第2のヨーク18と略同一部材であるが、一対の係合部18d,18eがヨーク基部18aから離れた位置で直交して形成されている。これにより、
図9に示すように、一対の係合部18d,18eの両端部に形成した摺動ガイド18d1,18d2,摺動ガイド18e1,18e2は、一対の脚部16a1,16a2の左右の側面から離間して延在している。
【0044】
そして、本実施形態は、第1のヨーク40の第1摺動支持部40bが、第2のヨーク18の摺動ガイド18d1に右側から対向し、第2摺動支持部40cが摺動ガイド18d2に右側から対向し、第3摺動支持部40dが摺動ガイド18e1に左側から対向し、第4摺動支持部40eが摺動ガイド18e2に左側から対向して配置されている。
【0045】
本実施形態によると、可動接点13a,13bが第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aに対向しない方向に可動接触子13が回動しようとすると、この回動が可動接触子13に固定した第2のヨーク18に伝達される。第2のヨーク18の摺動ガイド18d1が第1のヨーク40の第1摺動支持部40bに対向し、摺動ガイド18d2が第2摺動支持部40cに対向し、摺動ガイド18e1が第3摺動支持部40dに対向し、摺動ガイド18e2が第3摺動支持部40eに対向しており、摺動ガイド18d1,18d2,18e1,18e2が第1~第4摺動支持部40b~40eに当接することで、第2のヨーク18及び可動接触子13の回動が規制される。
【0046】
また、接点機構2の閉極状態において可動接触子13に電流が流れると、可動接触子13の周囲に磁場が発生し、
図10の破線で示すように、第1のヨーク40と第2のヨーク18を通る磁束が形成され、第1のヨーク40の前後方向の両端の下面と、第1のヨーク40に向けて上方に延在する第2のヨーク18の一対の磁路部18b,18cの上部との間で磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力は、接点機構2の閉極状態において大電流が流れることで発生する電磁反発力に対して逆方向に発生する。
【0047】
したがって、第2実施形態の電磁接触器1、接点機構2の閉極状態において大電流が流れたときに発生する電磁反発力に対して、可動接触子13の通電電流により第1のヨーク40及び第2のヨーク18の間で発生する磁気吸引力が逆方向に作用し、磁気吸引力が電磁反発力を打ち消しているので、固定接点11a,12a及び可動接点13a,13bの接触圧の低下を防止することができる。
【0048】
また、可動接触子13に固定された第2のヨーク18は、摺動ガイド18d1,18d2,18e1,18e2が第1のヨーク40の第1~第4摺動支持部40b~40eに当接することで回動が規制されるので、一対の磁路部18b,18cの上端面と、第1のヨーク40の下面との対向面積が変化しない。このため、第1のヨーク40及び第2のヨーク18の対向面積の減少による磁気吸引力の低下を抑制し、固定接点11a,12a及び可動接点13a,13bの接触圧の低下を確実に防止することができる。
【0049】
さらに、第2のヨーク18の摺動ガイド18d1,18d2,18e1,18e2が第1のヨーク40の第1~第4摺動支持部40b~40eに当接して可動接触子13の回動が規制されるので、可動接触子13の可動接点13a,13bと、第1固定接触子11の固定接点11a及び第2固定接触子12の固定接点12aとの導通不良を回避し、主回路の信頼性を十分に確保することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電磁接触器
2 接点機構
3 電磁石ユニット
6 収納ケース
4 上ケース
5 下ケース
7 ガス導入パイプ
8 取付部
11 第1固定接触子
11a 固定接点
12 第2固定接触子
12a 固定接点
13 可動接触子
13a,13b 可動接点
13c 係合突起
14 接点支え
15 接触スプリング
16 スプリング押さえ
16a1,16a2 一対の脚部
16b 頂部
21 可動プランジャ
17 第1のヨーク
18 第2のヨーク
18a ヨーク基部
18b,18c 一対の磁路部
18d,18e 係合部
18d1,18d2,18e1,18e2 摺動ガイド
18f 係合孔
21 可動プランジャ
22 アーマチュア
23 スプール
25 励磁コイル
31 励磁ヨーク
32 補助ヨーク
33 永久磁石
34 復帰ばね
26 摺動カラー
27 プランジャリング
35 上部ヨーク体
36 下部ヨーク体
35a 上板
36 下部ヨーク体
37a,37b 可動プランジャ貫通孔
38 端子
40 第1のヨーク
40a ヨーク基部
40b~40e 第1~第4摺動支持部