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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018222
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】端子およびこれを備える電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/571 20210101AFI20240201BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20240201BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240201BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240201BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20240201BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20240201BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20240201BHJP
【FI】
H01M50/571
H01M50/562
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/557
H01M50/566
H01G11/74
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121413
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】村田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
【テーマコード(参考)】
5E078
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA08
5E078AA12
5E078AB02
5E078AB12
5E078AB13
5E078BA18
5E078BA27
5E078DA03
5E078DA06
5E078DA11
5E078EA06
5E078EA09
5E078EA16
5E078FA02
5E078FA06
5E078FA12
5E078FA13
5E078HA05
5E078HA12
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB07
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC12
5H028CC24
5H028EE01
5H028EE06
5H029AJ13
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ05
5H029CJ22
5H029CJ23
5H029DJ02
5H029DJ05
5H029DJ14
5H043AA07
5H043BA19
5H043CA04
5H043CB08
5H043DA09
5H043DA11
5H043DA13
5H043DA16
5H043DA17
5H043EA15
5H043HA12D
5H043HA16D
5H043HA17D
5H043JA01D
5H043JA02D
5H043JA09D
5H043JA16D
5H043KA08D
5H043KA09D
(57)【要約】
【課題】異種金属を接合して構成される貫通孔を有する端子であって、該異種金属の境界面に液体が入り込むことを防ぐ端子の提供を目的とする。
【解決手段】ここで開示される端子は、第1導電部材70と、第1導電部材70と電気的に接続される第2導電部材80と、を備えており、第1導電部材70と、第2導電部材80は異なる種の金属からなり、第1導電部材70は、貫通孔72を有し、第2導電部材80は、貫通孔72を塞ぐように配置される。そして、第1導電部材70における貫通孔72の近傍と第2導電部材80との境界部76が露出しないようにテープ90および/または樹脂部材で覆われている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電部材と、
前記第1導電部材と電気的に接続される第2導電部材と、
を備える端子であって、
前記第1導電部材と、前記第2導電部材は異なる種の金属からなり、
前記第1導電部材は、貫通孔を有し、
前記第2導電部材は、前記貫通孔を塞ぐように配置され、
ここで、前記第1導電部材における前記貫通孔の近傍と前記第2導電部材との境界部が露出しないようにテープおよび/または樹脂部材で覆われている、端子。
【請求項2】
前記第1導電部材は板状であって、
前記第2導電部材は、フランジ部を有し、
前記貫通孔は、前記第2導電部材の前記フランジ部によって塞がれており、
ここで、前記第1導電部材と、前記第2導電部材の前記フランジ部と、を機械的に固定する締結部、および/または、
前記第1導電部材と、前記第2導電部材の前記フランジ部と、を金属接合する金属接合部を有する、請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記第1導電部材は、前記第2導電部材の前記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有する、請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記貫通孔は、第1領域と第2領域を含み、
前記第1領域は、前記第2領域よりも径が小さい領域であり、
前記第1領域は、前記第2領域よりも前記第2導電部材に近い位置に配置される請求項1に記載の端子。
【請求項5】
前記第1導電部材に前記テープが貼り付けられる、請求項1に記載の端子。
【請求項6】
前記貫通孔内に前記樹脂部材が配置される、請求項1に記載の端子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の端子と、
正極及び負極を含む電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースを有する電池であって、
前記正極または負極に電気的に接続された集電体を備え、
前記電池ケースは端子取り付け孔を有し、
前記第2導電部材は、一方の端部にフランジ部を有し、他方の端部に接続部を有し、
前記フランジ部は、前記第1導電部材に接続され、
前記第1導電部材は、前記電池ケースの外側に配置され、
前記第2導電部材の接続部は、前記電池ケースの端子取り付け孔を貫通し、前記電池ケースの内側において前記集電体に接続されている、電池。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子およびこれを備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、端子(電極の端子、即ち、正極端子および負極端子)において、バスバー等の外部部材との良好な接合を実現するため、異種金属を接合して構成される端子が提案されている。特許文献1には、異種金属からなる端子が開示されており、端子を溶接する際に発生したガスや熱の逃げ道を設けるため、該端子上部に貫通孔を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-49729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、上記技術には、耐腐食性の観点から改善の余地があることを見出した。詳述すれば、端子上部に設けられた貫通孔から水、塩水、電解液等の通電性の液体が侵入し、異種金属の境界部に入り込む。異種金属を通電性の液体と接触させた場合、電位の低い金属の陽イオン化が促進する。即ち、イオン化傾向の大きな金属、電位の小さな金属が急激に腐食する虞がある。従って、異種金属で構成され、貫通孔を有する端子においては、貫通孔から液体が侵入するのを防ぐことが課題となる。
【0005】
ここに開示される技術の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであり、異種金属を接合して構成される貫通孔を有する端子であって、該異種金属の境界面に液体が入り込むことを防ぐ端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される端子は、第1導電部材と、該第1導電部材と電気的に接続された第2導電部材と、を備える。そして、上記第1導電部材と、上記第2導電部材は異なる種の金属からなり、該第1導電部材は貫通孔を有し、該第2導電部材は該貫通孔を塞ぐように配置されている。ここで、上記第1導電部材における上記貫通孔の近傍と上記第2導電部材との境界部が露出しないようにテープおよび/または樹脂部材で覆われている。
【0007】
かかる構成によると、上記貫通孔から異種金属の上記境界部への液体の侵入を抑制する端子が提供される。詳述すると、上記端子は異種金属の導電部材から構成され、貫通孔を有する。上記貫通孔は、かかる導電部材を溶接固定する際のガス抜け流路や、かしめ加工によって端子を電池ケースに固定する際の空気抜け穴の役割を持つ。そして、第1導電部材の貫通孔の近傍(例えば、貫通孔の外面側の外周縁、貫通孔の内壁等)と第2導電部材との境界部が露出しないようにテープおよび/または樹脂部材で覆うような構成をとることで、液体が第1導電部材と第2導電部材に接触し、該第1導電部材ないし該第2導電部材が腐食することを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3】第1の実施形態に係る負極端子の要部を模式的に示す縦断面図である。
図4】第1の実施形態に係る負極端子の要部を模式的に示す平面図である。
図5】第2の実施形態に係る負極端子の要部を模式的に示す縦断面図である。
図6】第2の実施形態に係る負極端子の要部を模式的に示す平面図である。
図7】一実施形態に係る組電池を模式的に示す斜視図である。
図8】第3の実施形態に係る負極端子の要部を模式的に示す縦断面図である。
図9】第4の実施形態に係る負極端子の要部を模式的に示す縦断面図である。
図10】第4の実施形態に係る負極端子の要部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらここに開示される技術に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれるとともに、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0010】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0011】
<電池100>
図1は、電池100の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、U、Dは、左、右、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の長辺方向、長辺方向と直交する短辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図2に示すように、電池100は、電極体1と、電池ケース20と、正極端子50と、負極端子60と、を備えている。電池100は、ここに開示される正極端子50および/または負極端子60を備えることによって特徴付けられ、それ以外の構成は従来同様であってよい。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解質を備えている。電池100は、電極体1と図示しない電解質とが電池ケース20に収容されて構成されている。
【0013】
電極体1は従来と同様でよく、特に制限はない。電極体1は、正極および負極(図示せず)を有する。電極体1は、例えば、帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として捲回されてなる扁平な捲回電極体である。ただし、電極体1は、方形状(典型的には矩形状)の正極と方形状(典型的には矩形状)の負極とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。正極は、正極集電箔2と、正極集電箔2上に固着された正極合剤層(図示せず)と、を有する。正極集電箔2は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極合剤層は、正極活物質(例えば、リチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。負極は、負極集電箔4と、負極集電箔4上に固着された負極合剤層(図示せず)と、を有する。負極集電箔4は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極合剤層は、負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。
【0014】
図2に示すように、電極体1の長辺方向Xの中央部分には、正極合剤層と負極合剤層とが絶縁された状態で積層された積層部分が形成されている。一方、電極体1の長辺方向Xの左端部には、正極合剤層の形成されていない正極集電箔2の一部分(正極集電箔露出部)が積層部分からはみ出している。正極集電箔露出部には、正極集電体8が付設されている。正極集電体8は、正極集電箔2と同じ金属材料、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。また、電極体1の長辺方向Xの右端部には、負極合剤層の形成されていない負極集電箔4の一部分(負極集電箔露出部)が積層部分からはみ出している。負極集電箔露出部には、負極集電体10が付設されている。負極集電体10の材質(金属種)は正極集電体8と異なっていてもよい。負極集電体10は、負極集電箔4と同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。なお、正極端子50と正極集電体8との間または負極端子60と負極集電体10との間に、電流遮断機構(CID)を設置してもよい。
【0015】
電解質は従来と同様でよく、特に制限はない。電解質は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水系の液状電解質(非水電解液)である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解質は固体状(固体電解質)で、電極体1を一体化されていてもよい。
【0016】
電池ケース20は、電極体1を収容する筐体である。電池ケース20は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)に形成されている。ただし、電池ケース20の形状は角形に限定されず、円柱等の任意の形状であってよい。電池ケース20の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース20は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の軽量で熱伝導性の良い金属材料で構成されている。図2に示すように、電池ケース20は、開口部24を有するケース本体22と、開口部24を塞ぐ封口板(蓋体)30と、を備えている。封口板30には、電池ケース20の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁(図示せず)と、非水電解質を注入するための注入口(図示せず)と、を設けている。電池ケース20は、ケース本体22の開口部24の周縁に封口板30が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース20は、気密に封止(密閉)されている。
【0017】
ケース本体22は、平板状の底面22dを有する。封口板30は、ケース本体22の底面22dに対向している。封口板30は、ケース本体22の開口部24を塞ぐようにケース本体22に取り付けられている。封口板30は、ここでは略矩形状である。なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。
【0018】
図1に示すように、正極端子50および負極端子60は、電池ケース20の外部に突出している。正極端子50および負極端子60は、ここでは、電池ケース20の同じ面(具体的には封口板30)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子50および負極端子60は、電池ケース20の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。正極端子50および負極端子60は、封口板30の長辺方向Xの両端部分に配置されている。正極端子50および/または負極端子60は、ここに開示される端子の一例である。
【0019】
図3は、第1の実施形態に係る負極端子60の要部を模式的に示す縦断面図である。また、図4は第1の実施形態に係る負極端子60の要部を模式的に示す平面図である。なお、以下では負極端子60の側の端子構造を例として詳しく説明するが、正極端子50の側の端子構造についても同様であってよい。その場合、以下の記載において、「負極」の個所を適宜「正極」と読み替えることができる。
【0020】
図3に示すように、封口板30には、上下方向Zに貫通した端子取り付け孔32が形成されている。平面視において、端子取り付け孔32は、例えば環状(例えば円環状)である。端子取り付け孔32は、後述する負極端子60のかしめ加工前の接続部88を挿通可能な大きさの内径を有する。端子取り付け孔32は、後述する負極端子60のフランジ部81よりも小さく形成されている。
【0021】
負極集電体10は、負極集電箔4の負極集電箔露出部に付設され、負極と負極端子60とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電体10は、封口板30の内側の表面に沿って水平に広がった平板状部分12を有する。平板状部分12には、端子取り付け孔32に対応する位置に、貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、後述する負極端子60のかしめ加工前の接続部88を挿通可能な大きさの内径を有する。負極集電体10は、かしめ加工によって、インシュレータ46を介して絶縁された状態で封口板30に固定されている。
【0022】
ガスケット40は、封口板30の上面(外側の面)と負極端子60との間に配置される絶縁部材である。ガスケット40は、ここでは封口板30と負極端子60とを絶縁すると共に、端子取り付け孔32を閉鎖する機能を有する。ガスケット40は、電気絶縁性を有し、弾性変形が可能な樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、脂肪族ポリアミド等で構成されている。
【0023】
ガスケット40は、筒部41と基部43とを有する。筒部41は、封口板30と負極端子60の接続部88との直接接触を防止する部位である。筒部41は、中空の円筒形状である。筒部41は、上下方向Zに貫通した貫通孔42を有する。貫通孔42は、かしめ加工前の負極端子60の接続部88を挿通可能なように形成されている。筒部41は、封口板30の端子取り付け孔32に挿通されている。基部43は、封口板30と、後述する負極端子60のフランジ部81と、の直接接触を防止する部位である。基部43は、筒部41の上端に連結している。基部43は、筒部41の上端から水平方向に延びている。基部43は、封口板30の端子取り付け孔32を囲むように、例えば円環状に形成されている。基部43は、封口板30の上面に沿って延びている。基部43は、負極端子60のフランジ部81の下面81dと、封口板30の上面との間に挟み込まれ、かしめ加工によって上下方向Zに圧縮されている。
【0024】
インシュレータ46は、封口板30の下面(内側の面)と負極集電体10との間に配置される絶縁部材である。インシュレータ46は、封口板30と負極集電体10とを絶縁する機能を有する。インシュレータ46は、封口板30の内面に沿って水平に広がった平板状部分を有する。この平板状部分には、端子取り付け孔32に対応する位置に貫通孔48が形成されている。貫通孔48は、負極端子60の接続部88を挿通可能な大きさの内径を有する。インシュレータ46は、使用する電解質に対する耐性と電気絶縁性とを有し、弾性変形が可能な樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等で構成されている。インシュレータ46の平板状部分は、封口板30の下面と負極集電体10の上面との間に挟み込まれ、かしめ加工によって、上下方向Zに圧縮されている。
【0025】
<負極端子60>
負極端子60は、端子取り付け孔32を挿通して電池ケース20の内部から外部へと延びている。後述するように、負極端子60は、2種類の導電部材、すなわち貫通孔72を有する第1導電部材70と第2導電部材80とが、第2導電部材80が貫通孔72を塞ぐように配置しつつ、一体化されて構成されている。図3に示すように、負極端子60は、かしめ加工によって、封口板30とは絶縁された状態で、封口板30の端子取り付け孔32を囲む周縁部分にかしめられている。負極端子60の下端部には、鋲部66が形成されている。負極端子60は、かしめ加工により、封口板30に固定されると共に、負極集電体10と電気的に接続されている。
【0026】
図3に示すように、ここに開示される技術に係る負極端子60は、第1導電部材70と、第2導電部材80と、を有し、さらに、テープ90および/または樹脂部材96(図5参照)を有する。
【0027】
また、図3に示すように、いくつかの好適な実施形態において、負極端子60は、締結部62と、金属接合部64と、を備える。第1導電部材70と第2導電部材80とは、締結部62と金属接合部64とを介して一体化され、相互に電気的に接続されている。
【0028】
第1導電部材70は、電池ケース20の外部に配置される部材である。第1導電部材70は、ここでは金属製である。第1導電部材70は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼、銅または銅合金等の導電性金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることが好ましい。図3図4に示すように、第1導電部材70は、ここでは、板状である。特に限定されるものではないが、第1導電部材70は、ここでは、長辺方向Xに延伸する略矩形状の形態を取る。第1導電部材70は、下面70dと、上面70uと、を有する。下面70dは、電池ケース20(具体的には封口板30)と対向する側の面である。上面70uは、電池ケース20から離れた側の面である。ここに開示される技術において、下面は「一方の面」の一例であり、上面は「他方の面」の一例である。
【0029】
第1導電部材70は、上下方向Zに貫通した貫通孔72を有する。貫通孔72は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。図3に示すように、貫通孔72は、ここでは、第1領域(小径部)73と、第2領域(大径部)74を有している。第1領域73は、第2領域74より径が小さい領域である。また、第1領域73は、第2領域74より第2導電部材80に近い位置に配置される。第1領域73と、第2領域74との間には、第1領域73の上端から水平方向に延びる水平領域75が形成される。そして、貫通孔72を塞ぐようにして第2導電部材80(具体的には、後述するフランジ部81)が配置される。かかる構成によれば、第1導電部材70と、第2導電部材80とを溶接固定する場合において、溶接時のガス抜け流路の作用を持ち得る。また、かしめ加工(リベッティング)によって負極端子60を封口板30に固定する際の空気抜き穴としての作用を持ち得る。そして、第1導電部材70の上面70uには、貫通孔72から第2導電部材80(具体的には、後述するフランジ部81)が露出している。
【0030】
第1導電部材70は、第1導電部材70の下面70dから凹んだ凹部77を有する。凹部77は、金属接合部64よりも外周側に設けられている。図示は省略するが、凹部77は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。凹部77は、ここでは第1導電部材70の下面70dに向かって(言い換えれば、第2導電部材80に近づくほど)縮径するテーパ形状に形成されている。凹部77には、後述する第2導電部材80のくびれ部84が挿入されている。
【0031】
第2導電部材80は、電池ケース20の内部から外部へと延びる部材である。第2導電部材80は、ここでは金属製である。第2導電部材80は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の導電性金属であり、銅または銅合金であることが好ましい。第2導電部材80は、一部または全部の表面に、第1導電部材70と異なる種の金属が被覆された金属被覆部を備えていてもよい。これにより、電解質に対する耐性を高めて、耐食性を向上することができる。なお、第2導電部材80の金属被覆部は、第1導電部材70と第2導電部材80とが当接する面に備えることが好ましい。第2導電部材80は、図3に示すように、第2導電部材80は、軸心Cを有する。ここでは、第2導電部材80は、一方の端部に第1導電部材70と電気的に接続されるフランジ部81と、他方の端部にフランジ部81の下端部に連結する接続部(軸柱部)88と、を有する。
【0032】
ここに開示される端子において、第1導電部材70と第2導電部材80は、互いに異なる金属から構成されている。いくつかの好適な実施形態において、第1導電部材70は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成され、かつ、第2導電部材80は、銅または銅合金で構成される。一方で、第1導電部材70が銅または銅合金で構成され、かつ、第2導電部材80がアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される態様もあり得る。かかる構成からなる端子は、例えば、急速充電用バッテリー等に用いられる。
【0033】
フランジ部81は、接続部88よりも外形が大きい。図3に示すように、フランジ部81は、封口板30の端子取り付け孔32よりも外形が大きい。フランジ部81は、封口板30の端子取り付け孔32から電池ケース20の外部に突出した部位である。図示は省略するが、フランジ部81の外形は、ここでは略円柱形状であって、フランジ部81の軸心は、第2導電部材80の軸心Cと一致している。図3に示すように、フランジ部81は、下面81dと、下面81dから上方に延びる側面(外周面)82と、側面82の一部がくびれたくびれ部84と、を有する。
【0034】
くびれ部84は、フランジ部81の側面82の一部に、連続的或いは間欠的に設けられている。図示は省略するが、くびれ部84は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。くびれ部84が環状に形成されていると、高強度な締結部62を形成することができる。くびれ部84は、フランジ部81の軸心Cに対して、軸対称に形成されている。くびれ部84は、上面70uに向かって(言い換えれば、接続部88から離れるほど)拡径する逆テーパ形状に形成されている。くびれ部84は、第1導電部材70の凹部77に挿入されている。くびれ部84は、ここでは第1導電部材70の凹部77に嵌入され、凹部77と嵌合している。くびれ部84は、ここに開示される技術において、「凹部77に収容された部分」の一例である。
【0035】
接続部88は、図3に示すように、フランジ部81の下端部から下方に延びている。接続部88は、ここでは円筒形状である。接続部88の軸心は、フランジ部81の軸心Cと一致している。かしめ加工前において、接続部88の下端部、すなわちフランジ部81が位置する側とは反対側の端部は、中空状である。図3に示すように、接続部88は、負極端子60が封口板30に取り付けられる際に、封口板30の端子取り付け孔32に挿通される部位である。接続部88の下端部は、負極端子60が封口板30に取り付けられる際に、かしめ加工によって押し広げられ、鋲部66を構成する部位である。接続部88は、かしめ加工によって、電池ケース20の内部で負極集電体10と電気的に接続される。
【0036】
締結部62は、第1導電部材70と第2導電部材80のフランジ部81とを機械的に固定する連結部である。締結部62は、平面視において金属接合部64よりもフランジ部81の外周側に設けられていることが好ましい。締結部62は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。これにより、締結部62の強度を高めて、負極端子60の導通信頼性をさらに向上することができる。締結部62は、第1導電部材70の凹部77の内壁が第2導電部材80のくびれ部84で固定(例えば押圧固定)されることによって構成されている。これにより、第1導電部材70と第2導電部材80とを好適に固定し、締結部62の強度を向上することができる。締結部62の形成方法は、力学的エネルギーによる機械的接合であれば特に限定されず、例えば、圧入、焼きばめ、かしめ、リベット、折り込み、ボルト接合等であってよい。
【0037】
金属接合部64は、第1導電部材70と第2導電部材80のフランジ部81との冶金的な接合部である。金属接合部64は、ここでは第1導電部材70の上面70uに設けられている。金属接合部64は、締結部62から離れた位置に設けられることが好ましい。また、金属接合部64は、平面視において締結部62よりもフランジ部81の内周側(中心側)に設けられることが好ましい。金属接合部64は、光エネルギー、電子エネルギー、熱エネルギー等を用いて形成されるため、締結部62に比べて相対的に強度が低い(脆い)接合部でありうる。このような金属接合部64を締結部62の内周側に配設することで、金属接合部64を安定して維持し、長期にわたって負極端子60の導通信頼性を高めることができる。金属接合部64は、ここでは水平領域75に設けられている。これにより、接合時のエネルギーが少なくて済み、溶接性を向上することができる。金属接合部64は、連続的或いは間欠的に形成されている。金属接合部64は、フランジ部81の軸心Cに対して、軸対称に形成されている。金属接合部64は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。これにより、金属接合部64の強度を高めて、負極端子60の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0038】
金属接合部64の形成方法は特に限定されず、例えば、溶接、圧接、ろう接、超音波接合等であってよい。いくつかの好適な実施形態において、金属接合部64は、溶接接合部、超音波接合部等である。溶接接合部は、例えば、レーザ溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、等の溶接によって形成される。超音波接合部は、例えば、接合対象物である複数の金属部材(ここでは、第1導電部材70と第2導電部材80)を一般的な超音波接合装置の振動体であるホーンと支持部材であるアンビルとの間に挟み込み、加圧しつつ局部的に超音波振動エネルギーを該接合対象物に対して与えることによって接合を行うことで形成される。これにより、高強度の金属接合部64を安定して形成することができる。ただし、金属接合部64は、上記以外の方法、例えば、熱圧着、蝋付け等で形成されていてもよい。
【0039】
このように、負極端子60は、締結部62と金属接合部64とを備えることで、第1導電部材70と第2導電部材80との導通接続を安定して保つことができ、負極端子60の導通信頼性を向上することができる。ただし、締結部62および金属接合部64は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。しかしながら、ここに開示される技術において、第1導電部材70と第2導電部材80との導通接続の安定性の観点から、負極端子60は、締結部62または金属接合部64の少なくとも一つを有することが好ましい。
【0040】
ところで、図3に示すように、ここでは、貫通孔72(第1領域73)の下端部と第2導電部材80との当接部分に境界部76が形成される。即ち、負極端子60は、貫通孔72の近傍と第2導電部材80との間に境界部76を有する。そこで、ここに開示される技術では、かかる境界部76が露出しないように、テープ90および/または樹脂部材96(図5および図6参照)で覆われている。これにより、水等が境界部76を介して第1導電部材70と第2導電部材80に接触することによる第1導電部材70ないし第2導電部材80の腐食を抑制することができる。なお、ここに開示される技術において「貫通孔72の近傍」とは、貫通孔72の外面側の外周縁(換言すれば第1導電部材70の上面70uのうち、第2領域74の外縁部)、貫通孔72の内壁(換言すれば、第1領域73および第2領域74のうち、Z軸方向に延伸する部分)等を示す。また、本明細書中において「近傍」とは、例えば10mm以内である。
【0041】
図3図4に示すように、ここでは、テープ90は、第1導電部材70の上面70uのうち、第2領域74の外縁部(換言すれば貫通孔72の外周縁)に貼付される。換言すれば、テープ90の少なくとも一部が第1導電部材70の上面70uと当接して配置される。これにより、テープ90が好適に境界部76を覆う構造を取る。したがって、境界部76への水等の侵入を好適に防ぐことができる。また、かかる構成によれば、負極端子60が金属接合部64を有する場合、テープ90と金属接合部64は離間する構成を取る。これにより、急速大電流充放電時において、金属接合部64が高温になった場合、テープ90への金属接合部64からの熱影響を軽減することができる。
【0042】
テープ90の種類は、例えば、基材に糊材が塗布されたもの、熱溶着テープ等が挙げられる。上記基材の一例としては、ポリイミド樹脂(例えば、カプトン(登録商標)等)、フッ素系樹脂(例えば、テフロン(登録商標)、ニトフロン(登録商標)等)、ポリエステル等が挙げられる。また、上記糊剤は、例えば、シリコン系粘着剤、アクリル系粘着剤等が挙げられ、耐熱性や耐久性、電気絶縁性等の観点から、シリコン系粘着剤が好適に用いられる。熱溶着テープとしては、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。
【0043】
ここで、第2の実施形態に係る負極端子260を参照しながら、本開示における、樹脂部材96を備える端子について説明する。図5は第2の実施形態に係る負極端子260の要部を模式的に示す縦断面図である。また、図6は第2の実施形態に係る負極端子260の要部を模式的に示す平面図である。負極端子260は、テープ90にかえて、樹脂部材96を備えること以外、上記した負極端子60と同じであってよい。
【0044】
図5図6に示すように、ここでは、樹脂部材96は、貫通孔72内部(具体的には、第1領域73内部)に配置される。これにより、第1領域73にある、境界部76への水等の侵入を好適に防ぐことができる。なお、樹脂部材96は、境界部76が露出しないように配置できればよく、貫通孔72(換言すれば、第1領域73および第2領域74の全て)を完全に埋めるように配置する必要はない。
【0045】
樹脂部材96の種類は、特に言及されない限り限定されないが、耐熱性や電気絶縁性の観点から、例えば、エポキシ樹脂が挙げられ、紫外線硬化エポキシ樹脂、2液混合エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0046】
以上のように、負極端子60は、テープ90および/または樹脂部材96(図5および図6を参照)を備えている。これにより、貫通孔72の近傍と、第2導電部材80との間にある境界部76に水等が侵入するのを防ぐ。すなわち、水等が境界部76を介して異なる種の金属から構成される第1導電部材70と第2導電部材80に接触することを防ぐ。したがって、第1導電部材70ないし第2導電部材80の腐食を抑制することができる。
【0047】
<負極端子60の製造方法>
特に限定されるものではないが、負極端子60は、例えば、上記したような第1導電部材70と第2導電部材80とを用意し、導電部材接続工程と、境界部被覆工程とを、典型的にはこの順序で含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。また、電池100を製造する際に、任意のタイミングで境界部被覆工程を実施してもよい。
【0048】
導電部材接続工程では、第1導電部材70と第2導電部材80とを、電気的に接続する。いくつかの好適な実施形態において、導電部材接続工程は、さらに締結工程および/または金属接合工程の副工程を含むことができる。締結工程と金属接合工程との順序は逆であってもよいし、略同時であってもよい。
【0049】
締結工程では、第1導電部材70と第2導電部材80のフランジ部81とを、機械的に固定して、締結部62を形成する。締結部62は、例えば、第1導電部材70の凹部77に第2導電部材80のくびれ部84を挿入し、第2導電部材80のくびれ部84の外形に沿って第1導電部材70の凹部77を変形させることで、凹部77の内壁を第2導電部材80で固定することにより形成しうる。これにより、締結部62の強度を向上することができる。いくつかの好適な実施形態において、締結部62は、第1導電部材70の凹部77と第2導電部材80のくびれ部84とを嵌合することで形成される。例えば、第1導電部材70の凹部77に第2導電部材80のくびれ部84を水平圧入することで形成しうる。これにより、締結工程の作業性を向上することができる。
【0050】
金属接合工程では、第1導電部材70の水平領域75と第2導電部材80のフランジ部81とを金属接合、すなわち冶金的に接合して、金属接合部64を形成する。締結工程の後に金属接合工程を行うことで、形状の安定した金属接合部64を精度よく形成することができる。金属接合部64は、例えば、第1導電部材70の水平領域75と第2導電部材80のフランジ部81とが積層された個所を、水平領域75を貫通するように溶接することによって形成しうる。溶接の際に発生したガスや熱は、貫通孔72から放出・拡散される。このように、貫通孔72によって、水平領域75とフランジ部81との間にガスや熱が滞留することを抑制できる。溶接により、高強度の金属接合部64を安定して形成することができる。
【0051】
いくつかの好適な実施形態において、金属接合部64は、締結部62よりも内周側に形成される。これにより、接合箇所がずれにくくなり、金属接合工程の作業性を向上することができる。また、溶接によって金属接合部64を形成する場合には、溶接個所がぐらつきにくくなり、溶接性を向上することができる。さらに、水平領域75を溶接する場合には、エネルギーが少なくて済み、溶接性を向上することができる。
【0052】
境界部被覆工程では、貫通孔72の近傍と、第2導電部材80との間にある境界部76が露出しないように、テープ90および/または樹脂部材96で被覆する。かかる工程では、テープ貼付工程と樹脂部材配置工程より選択される副工程を少なくとも1つ含む。
【0053】
テープ貼付工程では、貫通孔72の近傍と第2導電部材80との境界部76が露出しないように負極端子60にテープ90を貼付する。いくつかの好適な実施形態において、テープ90は、第1導電部材70(具体的には、第1導電部材70の上面70u)に貼付される。換言すれば、テープ90のうち少なくとも一部と、第1導電部材70とが当接するように貼付することが好ましい。これにより、テープ90によって、境界部76が露出しないように覆われる。したがって、水等が境界部76に侵入することを防ぐと共に、第1導電部材70ないし第2導電部材80が腐食することを抑制することができる。
【0054】
テープ90の貼付方法は、基材に糊材が塗布されたものを用いる場合は、例えば、テープの糊材が塗布された面のうち少なくとも一部と、第1導電部材70の上面70uとが対向するようにして貼付する。また、テープ90として、熱溶着テープを用いる場合は、例えば、テープ90を第1導電部材70の上面70uに配置し、テープ90を加熱する。これにより、テープ90が熱により溶融し、第1導電部材70の上面70uに溶着することで、テープ90が第1導電部材70に固定される。テープ90の溶着方法は、特に制限されず、テープ90の材質等に応じて公知の方法を適宜選択することができる。
【0055】
樹脂部材配置工程では、貫通孔72の近傍と第2導電部材80との境界部76が露出しないように負極端子60に樹脂部材96を配置する。いくつかの好適な実施形態において樹脂部材96を、貫通孔72内に配置する。詳しくは、境界部76が露出しないように樹脂部材96によって覆う。これにより水等が境界部76に侵入することを防ぐと共に、第1導電部材70ないし第2導電部材80が腐食することを抑制することができる。ここでは、樹脂部材配置工程で用いられる樹脂部材96は、液体、または半固体の状態である。
【0056】
いくつかの実施形態において、樹脂部材配置工程では、さらに樹脂部材硬化工程を含み得る。樹脂部材96の硬化方法は、特に限定されないが、2液混合樹脂を用いた場合は、樹脂主剤に硬化剤を混合することで硬化させる方法、紫外線硬化樹脂を用いた場合、紫外線を樹脂部材96に照射することで光重合反応を起こして硬化させる方法が好ましく用いられる。ただし、樹脂部材硬化工程は省略することができる。すなわち、樹脂部材96を必ずしも硬化させる必要はない。
【0057】
<電池100の製造方法>
電池100は、上記したような製造方法によって製造された正極端子50および/または負極端子60を用いることで特徴付けられる。それ以外の製造プロセスは従来同様であってよい。電池100は、例えば、上記したような電極体1と電解質とケース本体22と封口板30と正極端子50と負極端子60とを用意し、取付工程と、接合工程と、を含む製造方法によって製造することができる。
【0058】
取付工程では、封口板30に、正極端子50と、正極集電体8と、負極端子60と、負極集電体10と、を取り付ける。負極端子60および負極集電体10は、例えば図3に示すように、かしめ加工(リベッティング)によって封口板30に固定する。かしめ加工は、負極端子60と封口板30との間にガスケット40を挟み、さらに封口板30と負極集電体10との間にインシュレータ46を挟んで行われる。詳しくは、負極端子60のかしめ加工前の接続部88を、封口板30の上方から、ガスケット40の筒部41と、封口板30の端子取り付け孔32と、インシュレータ46の貫通孔48と、負極集電体10の貫通孔14と、に順番に貫通させて、封口板30の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように、封口板30の下方に突出した接続部88をかしめる。これにより、負極端子60の接続部88の先端部(図3の下端部)に、鋲部66を形成する。また、かしめ加工の際、上下方向Zに対して圧縮力が加わることで、第1導電部材70と第2導電部材80との間に存在する空気が第1導電部材70の貫通孔72から放出される。これにより、第1導電部材70と第2導電部材80との密着性を向上する。すなわち、例えば、水等が第1導電部材70と第2導電部材80との間に侵入した場合でも、広範囲に浸透しにくくなる。
【0059】
このようなかしめ加工によって、ガスケット40の基部43とインシュレータ46の平板状部分とが圧縮され、ガスケット40と封口板30とインシュレータ46と負極集電体10とが封口板30に一体に固定されるとともに、端子取り付け孔32がシールされる。なお、正極端子50および正極集電体8の取付方法も、上記した負極端子60および負極集電体10と同様であってよい。負極集電体10は、負極集電箔4の負極集電箔露出部に接合され、電極体1の負極と負極端子60とが電気的に接続される。同様に、正極集電体8は、正極集電箔2の正極集電箔露出部に接合され、電極体1の正極と正極端子50とが電気的に接続される。これにより、封口板30と、正極端子50と、負極端子60と、電極体1と、が一体化される。
【0060】
接合工程では、封口板30と一体化された電極体1をケース本体22の内部空間に収容し、ケース本体22と封口板30とを封止する。封止は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。その後、図示しない注液口から非水電解液を注入し、注液口を塞ぐことによって、電池100を密閉する。以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0061】
ここに開示される好適な一態様では、電池100は、正極及び負極を含む電極体1と、電池ケース20と、正極に電気的に接続された正極集電体8と、負極に電気的に接続された負極集電体10と、を有する。さらに、電池ケース20(具体的には封口板30)は端子取り付け孔32を有し、第2導電部材80は、一方の端部にフランジ部81を有し、他方の端部に接続部88を有する。そして、フランジ部81は、第1導電部材70に接続され、第1導電部材70は、電池ケース20の外側に配置される。一方、第2導電部材80の接続部88は、端子取り付け孔32を貫通し、電池ケース20の内側において負極集電体10に接続される。
【0062】
電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に水等が負極端子60および正極端子50にかかりうる用途、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。
【0063】
図7に示すように、電池100は、バスバー120を介して複数の電池100を相互に電気的に接続してなる組電池140としても好適に用いることができる。この場合、複数の電池100の間の電気的な接続は、第1導電部材70(具体的には第1導電部材70の上面70u)に、例えば平板状のバスバー120を架け渡すことで行いうる。バスバー120は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。バスバー120と第1導電部材70とは、例えばレーザ溶接等の溶接によって電気的に接続しうる。
【0064】
ここに開示される技術において、バスバー120は、テープ90および/または樹脂部材96で覆われた部分上に配置されることが好ましい。また、かかる構成でバスバー120を配置する場合、樹脂部材96(および/またはテープ90)全体が貫通孔72内に配置されている(即ち、貫通孔72から外部にはみ出していない)ことが好ましい。図8は第3の実施形態に係る負極端子360上にバスバー120を配置した際の要部を模式的に示す縦断面図である。負極端子360は、テープ90にかえて樹脂部材396を備えること以外、上記した負極端子60と同様であってよい。図8に示すように、樹脂部材396は、第1領域73内を満たし、水平領域75の一部を覆うように配置される。その一方で、貫通孔72より外側(第2領域74より外縁部)には樹脂部材396が配置されていない。そして、バスバー120は、樹脂部材396を覆うようにして第1導電部材70の上面70uに当接しながら配置される。これにより、負極端子360とバスバー120の接続を安定することができる。ただし、バスバー120を第1導電部材70の延伸部(図4における左端)に配置してもよい。この場合、第1導電部材70の上面70uのうち、貫通孔72の外周縁にテープ90を貼り付けている場合に、バスバー溶接の妨げにならないので好適である。
【0065】
以上、ここに開示される技術におけるいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。ここに開示される技術は、他にも種々の形態にて実施することができる。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0066】
例えば、上記した第1の実施形態では、テープ90は、第1導電部材70の上面70uのうち、貫通孔72の外縁部に貼付された。しかし、これには限定されない。テープ90は、例えば、貫通孔72が第1領域73と、第2領域74と、を有する場合、水平領域75にテープを貼付してもよい。
【0067】
図9は第4の実施形態に係る負極端子460の要部を模式的に示す縦断面図である。また、図10は第4の実施形態に係る負極端子460の要部を模式的に示す平面図である。負極端子460は、テープ90にかえて、テープ490を備えること以外、上記した負極端子60と同じであってよい。図9図10に示すように、テープ490は、第2領域74の内部に配置され、水平領域75に貼付(換言すれば、テープ490と水平領域75とが当接)される。これにより、バスバー120を第1導電部材70の上面70uに配置する際、テープ490が配置の妨げにならない。したがって、第1導電部材70とバスバー120とを安定的に接続することができる。
【0068】
また、上記した第3の実施形態では、樹脂部材396は、第1領域73内を満たし、水平領域75の一部を覆うように配置されていた。かかる構成によれば、樹脂部材396は、境界部76と、水平領域に設けられた金属接合部64とを覆う。これにより、金属接合部64に凝固割れが発生した場合でも、水等がかかる割れから第1導電部材70と第2導電部材80との間に侵入することを防ぐ。したがって、より好適に第1導電部材70ないし第2導電部材80の腐食を抑制する。
【0069】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:第1導電部材と、上記第1導電部材と電気的に接続される第2導電部材と、を備える端子であって、上記第1導電部材と、上記第2導電部材は異なる種の金属からなり、上記第1導電部材は、貫通孔を有し、上記第2導電部材は、上記貫通孔を塞ぐように配置され、ここで、上記第1導電部材における上記貫通孔の近傍と上記第2導電部材との境界部が露出しないようにテープおよび/または樹脂部材で覆われている、端子。
項2:上記第1導電部材は板状であって、上記第2導電部材は、フランジ部を有し、上記貫通孔は、上記第2導電部材の上記フランジ部によって塞がれており、ここで、上記第1導電部材と、上記第2導電部材の上記フランジ部と、を機械的に固定する締結部、および/または、上記第1導電部材と、上記第2導電部材の前記フランジ部と、を金属接合する金属接合部を有する、項1に記載の端子。
項3:上記第1導電部材は、上記第2導電部材の上記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有する、項2に記載の端子。
項4:上記貫通孔は、第1領域と第2領域を含み、上記第1領域は、上記第2領域よりも径が小さい領域であり、上記第1領域は、上記第2領域よりも上記第2導電部材に近い位置に配置される項1~3のいずれか1項に記載の端子。
項5:上記第1導電部材に上記テープが貼り付けられる、項1~4のいずれか1項に記載の端子。
項6:上記貫通孔内に上記樹脂部材が配置される、項1~5のいずれか1項に記載の端子。
項7:項1~6のいずれか1項に記載の端子と、正極及び負極を含む電極体と、上記電極体を収容する電池ケースを有する電池であって、上記正極または負極に電気的に接続された集電体を備え、上記電池ケースは端子取り付け孔を有し、上記第2導電部材は、一方の端部にフランジ部を有し、他方の端部に接続部を有し、上記フランジ部は、上記第1導電部材に接続され、上記第1導電部材は、上記電池ケースの外側に配置され、上記第2導電部材の接続部は、上記電池ケースの端子取り付け孔を貫通し、上記電池ケースの内側において上記集電体に接続されている、電池。
【符号の説明】
【0070】
1 電極体
8 正極集電体
10 負極集電体
20 電池ケース
22 ケース本体
30 封口板
32 端子取り付け孔
50 正極端子
60、260、360、460 負極端子
62 締結部
64 金属接合部
70 第1導電部材
72 貫通孔
73 第1領域
74 第2領域
75 水平領域
76 境界部
77 凹部
80 第2導電部材
81 フランジ部
88 接続部
90、490 テープ
96、396 樹脂部材
100 電池
120 バスバー
140 組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10