(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001825
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ブローアウトパネル装置
(51)【国際特許分類】
G21C 9/004 20060101AFI20231227BHJP
G21C 13/02 20060101ALI20231227BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20231227BHJP
E05F 1/00 20060101ALI20231227BHJP
E05F 3/22 20060101ALI20231227BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20231227BHJP
E05F 5/02 20060101ALN20231227BHJP
E06B 7/22 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
G21C9/004
G21C13/02 300
E06B5/00 Z
E05F1/00 A
E05F3/22 D
E05F5/00 A
E05F5/02 E
E06B7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100728
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】能地 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山根 映介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正和
(72)【発明者】
【氏名】豊田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 好信
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
2G002
【Fターム(参考)】
2E036AA02
2E036BA01
2E036DA02
2E036EB07
2E036EB09
2E036GA02
2E036HA02
2E036HB22
2E239AC01
2G002CA01
2G002EA03
(57)【要約】
【課題】ブローアウトパネルの開放圧を精度よく規定することが可能なブローアウトパネル装置を提供する。
【解決手段】建屋の開口部50を開閉するブローアウトパネル23と、ブローアウトパネル23を回動自在に支持するヒンジ1Aと、を備え、ヒンジ1Aは、ブローアウトパネル23の上部に設けられ、ブローアウトパネル23を磁力によって閉止する磁石6を備える。磁石6は、磁力ON/OFFの構造体13である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の開口部を開閉するブローアウトパネルと、
前記ブローアウトパネルを回動自在に支持するヒンジと、を備え、
前記ヒンジは、前記ブローアウトパネルの上部または下部に設けられ、
前記ブローアウトパネルを磁力によって閉止する磁石を備えることを特徴とするブローアウトパネル装置。
【請求項2】
前記磁石は、磁力をON/OFF可能な構造体を複数備え、前記磁石のONの個数を調整することで、前記磁石による吸着力を調整することを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項3】
前記磁石を前記ブローアウトパネルに沿って可動させるレールを備え、前記磁石の位置を調整することで、前記磁石による吸着力を調整することを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項4】
前記磁石と前記ブローアウトパネルに設けられた磁性体との間に進退自在に動作する遮蔽板を備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項5】
前記磁石の磁束密度を計測する磁束密度計測器を備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項6】
前記ブローアウトパネルの歪を計測するひずみゲージを備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項7】
前記ブローアウトパネルの閉止時の衝撃力を緩和するダンパを備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項8】
前記ブローアウトパネルを回転駆動させる電動機を備え、
前記電動機は、前記ブローアウトパネルの閉止時の衝撃力を緩和する減速機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項9】
前記ブローアウトパネルを前記磁石から離間させる方向に押圧するシリンダ機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項10】
前記ブローアウトパネルを開状態に維持するラチェット機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項11】
前記ブローアウトパネルを回転駆動させる電動機を備え、
前記電動機は、前記ブローアウトパネルを開状態に維持するブレーキ機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項12】
前記ブローアウトパネルを回転駆動させる電動機を備え、
前記電動機と前記ヒンジは、クラッチ機構を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローアウトパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新規制後、原子力施設では、建屋内で上昇した圧力を逃がすためにブローアウトパネル(BOP)が開放されたときに建屋に形成された開口部を閉塞する必要がある。BOPが開閉機能を有することで開放後に再閉止を行い、閉止している間は原子炉建屋の気密性を確保することが要求される。
【0003】
BOPは原子炉建屋本体に設置される。BOPには固定用のクリップとパネル飛散防止用のチェーンが設置されており、建屋の内圧が規定圧力まで上昇するとクリップが変形し、パネルが建屋外側へ移動し開放する。開放後はチェーンによりパネルが吊られる構造である。
【0004】
前記したクリップおよびチェーンによってBOPは建屋の躯体に設置されるが、規定圧で開放し、かつBOPが開閉するためにはパネルを規定荷重で保持し、開放後もパネルが飛散することなく建屋に設置される構造が必要である。
【0005】
例えば、BOPに開閉機能を設ける構造が特許文献1に記載されている。この特許文献1には、「建屋の内部圧力が上昇したときに、閉止位置で閉じた状態の閉止パネルに対して所定値以上の応力が作用すると、係止部材の係止状態が解除されて閉止パネルが開放される。これにより、開口部を通じて建屋の内外空間が連通し、建屋の内部圧力を低下させることができる。このとき、閉止パネルは第1側縁部に設けられる扉ヒンジ回りに回動して開き、その閉止パネルは線条部材によって開角度が規制された開放位置で停止することになる。そのため、閉止パネルの開く勢いで開口周縁部との連結部である扉ヒンジが破壊されることを防止でき、開放時に閉止パネルが落下することを防ぐことができる。そして、閉止パネルが開放された後に建屋内の確認を確実に行った適宜なタイミングで、巻取り手段により閉止パネルに連結されたワイヤを巻き取ることで、閉止パネルを元の閉止位置に復帰させて開口部を閉塞することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたブローアウトパネルは、クリップ(係止部材)による固定構造であり、金属の塑性変形によって規定の圧力で開放するようにしているので、規定の開放圧で開いているのか担保し難い課題があった。
【0008】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、ブローアウトパネルの開放圧を精度よく規定することが可能なブローアウトパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建屋の開口部を開閉するブローアウトパネルと、前記ブローアウトパネルを回動自在に支持するヒンジと、前記ヒンジは、前記ブローアウトパネルの上部または下部に設けられ、前記ブローアウトパネルを磁力によって閉止する磁石を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブローアウトパネルの開放圧を精度よく規定することが可能なブローアウトパネル装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る上ヒンジタイプのBOPを示す正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る上ヒンジタイプのBOPを示す側面図である。
【
図3】BOPの開状態を維持する機構を記載した説明図である。
【
図5】磁力ON/OFFの構造体を示す斜視図である。
【
図6】BOPの吸着力調整機構を記載した説明図である。
【
図7】ひずみゲージによる磁力測定機構を記載した説明図である。
【
図8】BOP閉止時の衝撃緩和構造を記載した説明図である。
【
図10】
図9のBOP固定構造を示す側面図である。
【
図11】磁力ON/OFFの構造体の連動機構を記載した説明図である。
【
図12】ウインチによる扉引き上げ構造を記載した説明図である。
【
図13】クリップ+磁石による固定構造を記載した説明図である。
【
図14】メンテナンス用仮設バウンダリ形成機構を記載した説明図である。
【
図15】第2実施形態に係る下ヒンジタイプのBOPを示す正面図である。
【
図16】第2実施形態に係る下ヒンジタイプのBOPを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る上ヒンジタイプのBOPを示す正面図、
図2は、第1実施形態に係る上ヒンジタイプのBOPを示す側面図である。また、
図2は、ブローアウトパネル(以下、BOPと略記する)23が閉じた状態を実線で示し、BOP23が90度開いた状態を二点鎖線で示している。
図1に示すように、ブローアウトパネル装置100A(以下、BOP装置と略記する)は、原子炉建屋の外壁に形成された開口部50を開閉するように設置され、ヒンジ1AがBOP23の上部に設置される構造である。また、BOP装置100Aは、BOP23を備えている。このBOP23は、例えば、アルミニウム合金製のものであり、四角板状に形成されている。なお、BOP23は、アルミニウム合金に限定されるものではなく、鉄製であってもよい。
【0013】
ヒンジ1Aの側方には、BOP23を回転駆動させる駆動部2が設置されている。駆動部2は、電動機2aとギア2bとで構成され、ギア2bとヒンジ1Aとが駆動軸1aを介して連結されている。また、BOP装置100Aは、事故時にBOP23が開放した場合、駆動軸1aに衝撃が作用するため、物理的にクラッチ8により切り離しておく構造を備えている。
【0014】
図2に示すように、BOP装置100Aは、BOP23と、ヒンジ1Aとを接続するアーム30を備えている。このアーム30は、側面視において略L字状に形成され、左右方向に離間して2箇所に設けられている(
図1参照)。また、アーム30は、その一端がBOP23の裏面に固定され、他端がヒンジ1Aに固定されている。
【0015】
ヒンジ1Aには、BOP23を所定の角度で開状態を維持するためのラチェット3が設けられている。このラチェット3は、BOP23を所定の位置で係止させるため、係止溝3a,3bと爪部3cとを備えて構成されている。
【0016】
爪部3cは、図示しない弾性部材によって係止溝3a,3bが形成された回転体に向けて付勢するようになっている。また、爪部3cを挟んで回転体と反対側には、爪部3cと係止溝3a,3bとが係合しない位置で爪部3cを保持する爪保持部3dが設けられている。なお、この爪保持部3dは、爪部3cを磁力で退避させるものであってもよく、また電動機を用いて退避させるものであってもよい。
【0017】
図3は、BOPの開状態を維持する機構を記載した説明図である。なお、
図3の左図は、BOP23が閉じた状態を示し、
図3の右図は、BOP23が開いた状態を示す。
図3の左図に示すように、BOP23が閉じた状態では、爪部3cが係止溝3a,3bが形成された回転体に接して付勢された状態である。この状態からクラッチ8(
図1参照)で物理的に結合し、内圧または駆動部2によってヒンジ1Aを駆動させることで、ラチェット3が図示反時計回り方向に回転し、BOP23が開方向に動作する。そして、
図3の右図に示すように、爪部3cが係止溝3a,3bに係止されたときに駆動部2を停止することでBOP23を所定の角度で開維持することができる。
【0018】
そして、
図3の右図に示すBOP23が90°開状態を維持した状態からBOP23を閉じる場合には(ラチェット3の固定を解除する際は)、クラッチ8(
図1参照)で物理的に結合した状態において、電動機2a(駆動部2)によりヒンジ1Aを反時計回り方向にさらに回動させる。これにより、回転体に固定されたストライカ10が爪部3cを押圧して、爪部3cが係止溝3aから離された状態になる。離された爪部3cは、爪保持部3dに保持され、係止溝3a,3bに戻らないようになっている。そして、ヒンジ1Aを時計回り方向に回動させることで、爪部3cが係止溝3a,3bに係合することなく、BOP23が閉じる方向に回動する。そして、BOP23が閉じた後(
図3の左図参照)、爪部3cが爪保持部3dから離れて、爪部3cがラチェット3の回転体に接した状態になる。
【0019】
図1および
図2に示すように、ヒンジ1Aの位置を建屋内部に設置することで塩害等によるヒンジ1Aの発錆による固着を防止することが可能となる。また、ヒンジ1Aの角度は減圧の観点から既存のBOP23の開口面積を確保可能な構造としている。
【0020】
図4は、BOP固定構造を記載した説明図である。
図4は、磁石6によるBOP固定構造であり、BOP23側に磁性体11を設置し、取付用プレート7にレール4およびレール4により可変構造となる磁石6を設置する。取付用プレート7は、建屋の開口部50の周縁部に沿って固定されている。また、磁石6は、例えば電磁石、永久磁石などである。また、磁石6は、プレート6aを備え、プレート6aにボルト5aが挿通されている。また、躯体側には、取付用プレート7を介してレール4が固定されている。レール4には、溝4aが形成され、溝4a内にナット5bがスライド自在に挿入され、ボルト5aとナット5bによって磁石6がレール4上に締結される。なお、レール4の溝4aは、紙面に対して垂直方向(
図1の正面視では左右方向)に延びている。このように、レール4によって磁石6の位置を変更できるようにすることで、BOP23との吸着力を調整することができる。
【0021】
磁性体11は、BOP23の裏面の磁石6と対向する位置に埋め込まれている。なお、BOP23がアルミニウムやアルミニウム合金製の場合、非磁性体なので磁石に引き寄せられないので、BOP23に磁性体11を取り付けている。
【0022】
また、取付用プレート7には、パッキン12が設置されている。このパッキン12は、BOP23の裏面の外周縁部と対向する位置に設けられている。また、パッキン12は、BOP23の上縁部、下縁部、左側縁部、右側縁部を含む外周縁部全体に設けられ、開口部50を密閉している。これにより、BOP23が閉じる際、BOP23によってパッキン12が押しつぶされることで、シール性が確保される。
【0023】
また、磁石6と磁性体11との間には、クリアランス60が形成されている。これにより、BOP23が閉じたときに、磁性体11が磁石6に衝突して、磁石6が破損するのを防止することができる。
【0024】
また、
図1に示すように、磁石6は、BOP23の右側縁部に沿って上下方向に間隔を空けて複数設置される。また、磁石6は、BOP23の左側縁部に沿って上下方向に間隔を空けて複数設置される。また、磁石6は、BOP23の下縁部に沿って左右方向に間隔を空けて複数設置される。また、下縁部に設けられる磁石6の個数は、右側縁部および左側縁部にそれぞれ設けられる磁石6の個数よりも多い。このように、ヒンジ1AをBOP23の上部に設ける上ヒンジタイプの場合、磁石6をBOP23の下部に集中させることでモーメントが大きくなるため、磁石6の配置を調整することで開放圧の細かい設定が可能となる。また、従来の構造と比較して荷重制御のため、後記するパッキン12の押し込み量も規定可能なことから気密性の向上も期待できる。なお、吸着量を調整可能な機構としては磁石のみに限定するものではない。
【0025】
図5は、磁力ON/OFFの構造体を示す斜視図である。
図5に示すように、磁力(吸着力)の調整機構としては、磁石6をON/OFFさせる構造体13(いわゆるマグネットブロック)も適用可能である。つまり、構造体13を規定量よりも予め多めに設置しておき、必要個数のみ磁力をONさせることで必要開放圧を設定することが可能になる。このとき、磁石6をON/OFFさせる構造体13は、磁石6のN極とS極を90°回転させることで切替を行う構造である。磁石6の先端にはレバー(つまみ)6bが設置されており、レバー6bを回転させることで磁石6本体も回転する構造である。なお、
図5では、プレート6aの図示を省略している。
【0026】
図6は、BOPの吸着力調整機構を記載した説明図である。
図6に示すように、別の磁力(吸着力)調整機構として、磁石6と磁性体11との間に磁束を遮蔽する遮蔽板14を挿入することで磁力を調整することが可能になる。遮蔽板14は、例えば鉄材によって構成されている。また、遮蔽板14は、シリンダ(不図示)等を用いて移動させることが可能であり、BOP23の下部から挿入することで磁力を調整することが可能となる。磁石6と磁性体11との間に遮蔽板14を遮蔽面積が大きくなるように挿入することで、磁束を大きく減らすことができる。ちなみに、磁石6と磁性体11との間には直接衝突することによる磁石6の破損を防止するためクリアランス60が設けられているため、遮蔽板14をクリアランス60に挿入する構造としている。また、磁力制御の際は、周辺計器類や鉄構造物から影響を受けない構造とするため、遮蔽板を周辺に設置することも可能である。
【0027】
また、BOP23を固定する磁石6の吸着力を測定することで、BOP23の開放圧を高精度で設定することが可能となる。このとき、磁力を測定する機構としては、
図1に示すように、磁石6付近に磁束密度計測器15(
図1参照)を設置することで、磁石側面から放出される磁束密度を測定し、吸着力へ換算することが可能となる。なお、磁束密度計測器15としては、フェライトメータやガウスメータなどから選択できる。また、磁束密度計測器15は、それぞれの磁石6に対応するように、1対1で配置される。
【0028】
図7は、ひずみゲージによる磁力測定機構を記載した説明図である。
図7に示すように、磁力測定機構として、磁束密度計測器15に替えて、ひずみゲージ16をBOPの外側に設置してもよい。これにより、磁力によるBOP23の歪み量を計測することが可能となり、吸着力との相関関係を確認することが可能となる。つまり、磁石6と磁性体11とが引き合うことで、BOP23が磁石6に引き寄せられて、BOP23が内側に変形する。このひずみ具合をひずみゲージ16で測定する。
【0029】
図8は、BOP閉止時の衝撃緩和構造を記載した説明図である。
BOP23が閉止する際、衝撃力が磁石6に加わることで、磁石6が減磁することやBOP23の破損を防止するために、衝撃力を緩和する構造が必要となる。そこで、
図8に示すように、BOP23にダンパ17を設置することで衝撃力を緩和することが可能となる。ダンパ17は、例えば空気圧式のものであり、その一端がBOP23に回動自在に連結され、他端が取付用プレート7側に回動自在に連結される。
【0030】
なお、ダンパ17による衝撃緩和構造に替えて、ラチェット3とギア2bを可変させる機構を電動機2aに設置し、通常時はラチェット3が効くような位置関係とし、BOP23の閉止時は、ギア2bが効くような可変構造にしてもよい。これにより、BOP23が自重で閉止するよりも緩やかにBOP23を閉止させることが可能になる。
【0031】
また、BOP装置100Aは、BOP23を原子炉建屋中央操作室から遠隔で開放する場合や手動で操作する場合でも使用可能である。BOP23を内圧上昇以外の手段で開放させる場合は、
図9および
図10に示すように、駆動部2(電動機2a)またはシリンダ機構19を用いて行うことができる。
図9は、BOP固定構造を記載した説明図、
図10は、
図9のBOP固定構造を示す側面図である。
【0032】
図9に示すように、シリンダ機構19(BOP押出機構)は、BOP23を開放側に押し出す機構を有するものであり、BOP23の下部に設置されている。BOP23の下部には、シリンダ機構19と対向する位置に、BOP23の下方に延びる固定片19aが固定されている。
【0033】
図10に示すように、シリンダ機構19は、例えばエア式のものであり、電動機19b、シリンダ部19c、押圧部19dを備えて構成されている。電動機19bが駆動することで、押圧部19dが固定片19aの裏面を押圧して、BOP23を開放させる側に押し出すようになっている。
【0034】
このようにシリンダ機構19を用いることで、磁石6による吸着力よりも大きな荷重でBOP23を引き剥がすことができる。その後、駆動部2(
図9参照)によってBOP23を規定角度(例えば、30°や90°)まで開放させることが可能になる。なお、駆動部2、シリンダ機構19は磁力による吸着力よりも大きな定格荷重を有する必要がある。
【0035】
また、BOP23を引き剥がす別の実施形態として、
図6において説明したように、開放時に遮蔽板14を磁極間(磁石6と磁性体11との間)に挿入することで減磁させるようにしてもよい。または、磁力ON/OFFの構造体13(
図5参照)をシリンダで遠隔でレバー6b(
図5参照)を操作し、全ての構造体13をOFFした後に駆動部2でBOP23を開放させるようにしてもよい。
【0036】
また、
図11に示すように、複数配置された磁力ON/OFFの構造体13(磁石6)を連動してON/OFFさせることが可能である。すなわち、この機構は、シリンダ40と、連動部材41と、ストライカ42と、を備えて構成されている。磁石6として複数の磁力ON/OFFの構造体13の並び方向に沿って、連動部材41が延びて配置されている。連動部材41には、各構造体13に対応する位置にストライカ42が設けられ、ストライカ42がレバー6bに係合するように構成されている。また、連動部材41は、シリンダ40のロッドと連結され、シリンダ40のロッドによって押し引きされることで、連動部材41が構造体13の並び方向(図示左右方向)に動作するようになっている。シリンダ40のロッドが引かれることで、実線で示すように各レバー6bがOFFにされ、シリンダ40のロッドが押されることで、二点鎖線で示すように各レバー6bがONされる。このように、シリンダ40の先端にストライカ42および連動部材41を設置することで、遠隔で構造体13(磁石6)のON/OFFが調整可能になる。
【0037】
図12は、ウインチによる扉引き上げ構造を記載した説明図である。
図12に示すように、BOP装置は、駆動部2(電動機2a)に替えてウインチ20によってBOPを開放するようにしてもよい。このウインチ20は、BOP23の上方に設置され、ワイヤ20aの先端がBOP23の下部に接続され、滑車を介してウインチ20に接続されている。このようなウインチ20を用いることで、シリンダ機構19によってBOP23を引き剥がした後、BOP23をウインチ20によって吊り上げ、規定角度まで開放させることができる。
【0038】
図13は、クリップ+磁石による固定構造を記載した説明図である。
図13に示すように、BOP装置は、
図4に示す構成に、クリップ21と遮蔽板14とを追加して、BOP23を開閉させる構造である。クリップ21は、BOP23が閉状態を維持するものであり、BOP23を閉止しておくものである。クリップ21は、開口部50側に設けられた係止部50aと、BOP23側に設けられた係止部23bとに係止され、BOP23によって開口部50が密閉されている。
【0039】
このように構成されたBOP装置は、減磁用の遮蔽板14を予め設置しておくことでクリップ21のみの固定構造である。内圧上昇後、クリップ21がハの字に変形して(二点鎖線参照)、クリップ21がBOP23から外れることでBOP23がW2方向に開放する。また、同時に遮蔽板14が磁石6と磁性体11との間から外れる。BOP23の開放後は、BOP23がW1方向に回動して閉止し、磁石6のみでの固定構造となる。なお、本構造においては、外れたクリップ21が再閉止動作を阻害しない構造を有する、若しくは阻害しない位置に設置する。また、一定荷重で破損する機械締結であればクリップ21以外の締結でもよい。
【0040】
図14は、メンテナンス用仮設バウンダリ形成機構を記載した説明図である。
図14に示すように、BOP装置のメンテナンス時には、減磁させてBOP23を開放させる必要がある。メンテナンスとは、磁石6の交換やヒンジ1Aの点検などである。このとき、BOP23によりバウンダリを形成しているため、BOP23を開放させるとバウンダリが崩れてしまう。そのため、装置メンテナンス作業を考慮して仮設のバウンダリを形成する機構22を予め建屋内部に設置しておく必要がある。なお、バウンダリを形成する機構22は、シャッタ、膜材等によって構成することができる。また、シャッタであれば建設時に設けることができ、膜材のようなシートであれば、メンテナンス前に貼ることができる。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態のBOP装置100Aは、建屋の開口部50を開閉するBOP23と、BOP23を回動自在に支持するヒンジ1Aと、を備え、ヒンジ1Aは、BOP23の上部に設けられ、BOP23を磁力によって閉止する磁石6を備える(
図1参照)。これによれば、BOP23の開放圧を精度よく規定することが可能になる。また、ヒンジ1AをBOP23の上部に設けることで、閉止優先の運用に適用できる。
【0042】
また、第1実施形態において、磁石6は、磁力をON/OFF可能な構造体を複数備え、前記磁石のONの個数を調整することで、前記磁石による吸着力を調整する(
図5参照)。これによれば、簡単な構造で磁力(吸着力)を設定することができる。
【0043】
また、第1実施形態において、磁石6をBOP23に沿って可動させるレール4を備え、磁石6の位置を調整することで、磁石6による吸着力を調整する(
図4参照)。これによれば、簡単な構造で磁力(吸着力)を設定することができる。
【0044】
また、第1実施形態において、磁石6と磁性体11との間に進退自在に動作する遮蔽板14を備える(
図6参照)。これによれば、より細かな磁力(吸着力)の設定が可能になる。
【0045】
また、第1実施形態において、磁石6の磁束密度を計測する磁束密度計測器15を備える(
図1参照)。これによれば、磁石6の磁束密度を精度よく計測することが可能になる。
【0046】
また、磁束密度計測器15に替えて、BOP23の歪を計測するひずみゲージ16を備えていてもよい(
図7参照)。
【0047】
また、第1実施形態において、BOP23の閉止時の衝撃力を緩和するダンパ17を備える(
図8参照)。
【0048】
また、ダンパ17に替えて、駆動部2に減速機構を備えたものでもよい。これによれば、BOP23の閉止時に、BOP23が磁石6に衝突して、磁石6が損傷するのを防止できる。
【0049】
また、第1実施形態において、BOP23を磁石6から離間させる方向に押圧するシリンダ機構19を備える(
図9、
図10参照)。これによれば、内圧上昇以外の手段でBOP23を開放させることができる。
【0050】
また、第1実施形態において、BOP23を開状態に維持するラチェット3を備える(
図2、
図3参照)。これによれば、BOP23を開状態に維持できる。
【0051】
また、第1実施形態において、BOP23を回転駆動させる駆動部2を備え、駆動部2とヒンジ1Aは、クラッチ8を介して連結されている(
図1参照)。これによれば、駆動部2の破損を防止することができる。
【0052】
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態に係る下ヒンジタイプのBOPを示す正面図、
図16は、第2実施形態に係る下ヒンジタイプのBOPを示す側面図である。
図15に示すように、第2実施形態のBOP装置100Bは、BOP23の下部にヒンジ1Bを設け、BOP23の開状態維持のためにラチェット3を設けた構造である。なお、
図15では、BOP23が閉じた状態を実線で示し、BOP23が開放した状態を二点鎖線で示している。
【0053】
第2実施形態のBOP装置100Bは、建屋の開口部50を開閉するBOP23と、BOP23を回動自在に支持するヒンジ1Bと、を備え、ヒンジ1Bは、BOP23の下部に設けられ、BOP23を磁力によって閉止する磁石6を備える(
図15、
図16参照)。これによれば、BOP23の開放圧を精度よく規定することが可能になる。また、ヒンジ1BをBOP23の下部に設けることで、開状態維持優先の運用に適用できる。
【0054】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態における構成を適宜選択して、第2実施形態に適用することができる。また、BOP23の開状態を維持する構造としては、ラチェット3を使わずに、ブレーキ機構を駆動部(電動機)に設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1A,1B ヒンジ
1a 駆動軸
2 駆動部
2a 電動機
2b ギア
3 ラチェット(ラチェット機構)
3a,3b 係止溝
3c 爪部
3d 爪保持部
4 レール
4a 溝
5a ボルト
5b ナット
6 磁石
6a プレート
6b レバー
7 取付用プレート
8 クラッチ(クラッチ機構)
10 ストライカ
11 磁性体
12 パッキン
13 磁力ON/OFFの構造体(磁力をON/OFFな構造体)
14 遮蔽板
15 磁束密度計測器
16 ひずみゲージ
17 ダンパ
18 ギア
19 シリンダ機構
19a 固定片
19b 電動機
19c シリンダ部
19d 押圧部
20 ウインチ
20a ワイヤ
21 クリップ
22 バウンダリ形成機構
23 BOP(ブローアウトパネル)
30 アーム
40 シリンダ
41 連動部材
42 ストライカ
50 開口部
100A,100B ブローアウトパネル装置