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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018261
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】軽石の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B09B1/00 H ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121477
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】久保 裕也
(72)【発明者】
【氏名】下條 光浩
(72)【発明者】
【氏名】松山 清
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA50
4D004AC04
4D004AC07
4D004BB01
4D004CA01
4D004CB04
4D004CB15
4D004CC03
4D004DA07
4D004DA09
4D004DA11
(57)【要約】
【課題】低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することが可能な軽石の処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】軽石Fを貯留水が貯留された処理室14に投入した状態で、処理室14内に圧縮空気を圧送して所定の圧力となるまで加圧する。加圧により軽石Fの隔壁が破壊されることで、空隙内に貯留水が浸入しえ軽石Fの見かけ上の比重が貯留水よりも重くなり、軽石Fは処理室14の底面に沈降する。そして、処理タンク13から海洋に向けて軽石Fを投棄することで、軽石Fは浮上することなく海底に沈降させることがきできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、
密閉した前記処理室内に加圧流体を噴出し、所定の圧力まで加圧する工程と、
前記処理室内の軽石を、前記処理室外に放出する工程と、を備える
軽石の処理方法。
【請求項2】
前記軽石を投入する工程は、所定量の液体が貯留された前記処理室内に軽石を投入する工程を有し、
前記所定の圧力まで加圧する工程は、前記処理室内に加圧気体を噴出する工程を有する
請求項1に記載の軽石の処理方法。
【請求項3】
前記所定の圧力まで加圧する工程は、前記処理室内が略1MPa以上となるまで加圧する工程を含む
請求項1または請求項2に記載の軽石の処理方法。
【請求項4】
前記処理室は所定の水深からなる海洋の水面上を浮遊する水面浮遊体に設置され、
前記処理室外に放出する工程は、前記水面浮遊体から海洋に向けて軽石を放出する
請求項1または請求項2に記載の軽石の処理方法。
【請求項5】
一端に海洋の水面上方に位置する投入口、他端に海洋の所定の水深に位置する吐出口が形成された連通管の前記投入口から多孔質体からなる軽石を投入する工程と、
前記連通管内の水面に浮遊する軽石を、前記投入口から前記吐出口に向けて水深方向に沿って押し込む工程と、
前記吐出口から海底に向けて軽石を吐出する工程と、を備える
軽石の処理方法。
【請求項6】
外部と連通可能である収納容器に多孔質体からなる軽石を収納する工程と、
前記収納容器に軽石を収納した状態で、前記収納容器を海洋の所定の水深まで沈降する工程と、
所定の水深で前記収納容器から海底に向けて軽石を放出する工程と、を備える
軽石の処理方法。
【請求項7】
前記水深は水深略100m以上である
請求項5または請求項6に記載の軽石の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽石の処理方法に関する。詳しくは、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができる軽石の処理方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界でも有数の火山国として知られており、陸上だけでなく海底にも多くの火山が存在する。海底火山の場合、周囲に存在する多量の海水によって高い水圧がかかることから、陸上にある火山に比べ噴火の規模が小さくなる。しかし、深海ではなく浅い海底で噴火する場合は、海水の圧力が少ないことから、陸上の火山と同様の規模の噴火を引き起こすことがある。
【0003】
火山から放出される火山噴出物にはさまざまなものがあり、主として気体で放出される火山ガス、液体で放出される溶岩、或いは固体で放出される火山砕せつ物がある。このうち火山砕せつ物の代表的なものとしては、火山岩塊、火山礫、火山灰、及び軽石などがある。
【0004】
火山砕せつ物のなかでも軽石は、水や二酸化炭素、火山ガスを含んだ溶岩が急速に冷却・減圧された結果、溶岩に溶解していた水や二酸化炭素などが炭酸飲料のように気泡として発生した状態で固化することで、多数の空隙が形成された多孔質体である。そのため軽石は、見かけ上の比重が水より軽いものも多く、空隙に海水が浸入して比重が重くなるまで海底に沈まないという特性がある。
【0005】
近年では、小笠原諸島の海底火山噴火の影響により、南西諸島、或いは太平洋側の沿岸地域を中心に大量の軽石が海岸周辺に漂着して大きな問題になっている。これら軽石を除去するために、例えば非特許文献1に示すように、堆積土砂を吸い上げるポンプを重機に取り付けて海面の軽石を吸引する試みが行われている。
【0006】
しかしながら、軽石は次々に外洋から漂着するとともに、回収した膨大な量の軽石の活用法や埋め立て処分法も決まっていないのが現状である。一方で漂流する軽石を放置することは、船舶を利用する海上交通や漁業に大きな影響を与えていることから、早急な対応が求められている。
【0007】
軽石の現実的な用途はセメントや砂であるが、海底火山から噴出し海面を浮遊する軽石は海水を含んでいるため、NaClを十分に除去しないと鉄骨の腐食や塩害を引き起こす原因となる。また、陸上への埋立処分についても検討されているが、埋立処分のための土地の確保を含め膨大なコストを要するとともに、国土の狭い我が国においては埋立処分地の残余年数にも限界があり、軽石の陸上処理は必ずしも合理的な方策ではない。
【0008】
そのため、回収後の軽石の処理コストを考慮すると、海洋投棄が最も効率的と考えられるが、前記したように軽石は見かけ上の比重が水よりも軽いため海洋投棄も容易なことではない。一方で、海面を浮遊する軽石同士の接触により空隙が破壊され、破壊された空隙に水が浸入することで、いずれは海底に沈むと考えられる。しかしながら、空隙内に海水が浸入するまでには1~2年程度を要するため、長期の間、海面に浮遊する軽石をそのまま放置することは現実的ではない。
【0009】
そこで、本願の発明者らは水が貯留された処理室内を減圧処理することで、軽石の見かけ上の比重を大きくし、早期に軽石を海底に沈める処理方法を提案した(特許文献1)。具体的には、回収した軽石を処理室内に投入し、一旦、処理室内を減圧処理することで軽石の空隙内に充填された気体を外部に放出させる。その後、処理室内を大気開放することで、気体が放出された空隙内に貯留水が浸入され易くすることで、軽石全体の見かけ上の比重が貯留水の比重に対して大きくなり、軽石を早期に海底に沈降させることが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「軽石ポンプ吸引して除去実験 効果は? 1分間で6万立方メートル吸い上げ」、[online]、2021年11月16日、沖縄タイムス+プラス、[2021年12月3日検索]、インターネット〈URL:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/864004〉
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願2021-197541号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、減圧処理の場合、軽石の表面に形成された空隙内に充填されている気体を放出させることは可能であるが、軽石の内部に形成された空隙内に充填されている気体まで放出させることができない場合もある。そのため、減圧処理後に大気開放をしても、軽石全体の見かけ上の比重が貯留水に対して大きくならず、減圧処理した軽石の全てが海底に沈降しないことも考えられる。また、軽石を細かく粉砕し、粉砕後の軽石を減圧処理することで沈降率を高めることも可能ではあるが、この場合、粉砕機による粉砕処理が必要となるため、処理コストが高くなるという問題がある。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができる軽石の処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明の軽石の処理方法は、処理室内に多孔質体からなる軽石を投入する工程と、密閉した前記処理室内に加圧流体を噴出し、所定の圧力まで加圧する工程と、前記処理室内の軽石を、前記処理室外に放出する工程とを備える。
【0015】
ここで、処理室内に多孔質体からなる軽石を投入する工程を備えることにより、軽石を処理するための事前準備が完了する。
【0016】
また、密閉した処理室内に加圧流体を噴出し、所定の圧力まで加圧する工程を備えることにより、処理室内を加圧することで軽石の表面、及び内部の隔壁を破壊して、空隙内に充填するガスを外部に放出させることができる。
【0017】
また、処理室内の軽石を、処理室外に放出する工程を備えることにより、加圧処理後の軽石を処理室外へと放出することができる。そして、加圧により隔壁が破壊され、空隙内から大半のガスが放出された軽石を、例えば海洋に投棄することで、軽石の内部まで水が浸入し易くなり、軽石の見かけ上の比重が海水の比重に対して大きくなる。そのため、軽石の浮遊性が喪失され、海底へと容易に沈降させることができる。
【0018】
また、軽石を投入する工程は、所定量の液体が貯留された処理室内に軽石を投入する工程を有し、所定の圧力まで加圧する工程は、処理室内に加圧気体を噴出する工程を有する場合には、加圧気体により軽石の隔壁が破壊され、空隙内に充填するガスが外部に放出される。そして、処理室内は貯留水が貯留されているため、軽石の空隙から放出されたガスは加圧に応じて貯留水内に溶解され、効率的に軽石の空隙からガスを放出させることができる。
【0019】
また、所定の圧力まで加圧する工程は、処理室内が略1MPa以上となるまで加圧する工程を含む場合には、多くの軽石において内部の隔壁が破壊され易くなるため、軽石に充填されているガスを積極的に放出させることができる。なお、加圧条件として1MPa未満の場合には、内部の隔壁まで破壊することができず空隙内にガスが残り易くなるため、軽石の浮遊性を完全に喪失することができない虞がある。
【0020】
また、処理室は所定の水深からなる海洋の水面上を浮遊する水面浮遊体に設置され、処理室外に放出する工程は、水面浮遊体から海洋に向けて軽石を放出する場合には、例えば一定の水深を有する海洋に浮遊し、処理室を備えた船舶内で軽石を加圧処理することで、そのまま軽石を海底へと投棄、沈降させることができる。
【0021】
前記の目的を達成するために、本発明の軽石の処理方法は、一端に海洋の水面上方に位置する投入口、他端に海洋の所定の水深に位置する吐出口が形成された連通管の前記投入口から多孔質体からなる軽石を投入する工程と、前記連通管内の水面に浮遊する軽石を、前記投入口から前記吐出口に向けて水深方向に沿って押し込む工程と、前記吐出口から海底に向けて軽石を吐出する工程とを備える。
【0022】
ここで、一端に海洋の水面上方に位置する投入口、他端に海洋の所定の水深に位置する吐出口が形成された連通管の投入口から多孔質体からなる軽石を投入する工程を備えることにより、軽石を処理するための事前準備が完了する。
【0023】
また、連通管内の水面に浮遊する軽石を、投入口から吐出口に向けて水深方向に沿って押し込む工程を備えることにより、連通管内の水面上に浮遊する軽石を水深方向に沿って押し込むことで、軽石の表面、及び内部の隔壁が水深に応じた水圧により破壊され、空隙内に充填するガスを外部に放出させることができる。
【0024】
また、吐出口から海底に向けて軽石を吐出する工程を備えることにより、連通管内を水深方向に沿って押し込まれる過程で水圧により浮遊性を喪失した軽石は、吐出口から吐出されると、そのまま浮上することなく海底へと沈降させることができる。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明の軽石の処理方法は、外部と連通可能である収納容器に多孔質体からなる軽石を収納する工程と、前記収納容器に軽石を収納した状態で、前記収納容器を海洋の所定の水深まで沈降する工程と、所定の水深で前記収納容器から海底に向けて軽石を放出する工程とを備える。
【0026】
ここで、外部と連通可能である収納容器に多孔質体からなる軽石を収納する工程を備えることにより、軽石を処理するための事前準備が完了する。
【0027】
また、収納容器に軽石を収納した状態で、収納容器を海洋の所定の水深まで沈降する工程を備えることにより、収納容器を水深方向に沿って沈降させることで、水深に応じた水圧により軽石の表面、及び内部の隔壁が破壊され、空隙内に充填するガスを外部に放出させることができる。
【0028】
また、所定の水深で収納容器から海底に向けて軽石を放出する工程を備えることにより、水圧により浮遊性が喪失した軽石は、収納容器から放出されるとそのまま浮上することなく海底へと沈降させることができる。
【0029】
また、水深は略100m以上である場合には、少なくとも収納容器に作用する水圧が略1MPa以上となるため、軽石内部の隔壁が破壊され易くなり、軽石に充填されているガスの大半を外部に放出させることができる。なお、水深が略100m未満の場合には、軽石に作用する水圧が1MPa未満となり、内部の隔壁まで破壊することができず空隙内にガスが残り、軽石の浮遊性を完全に喪失することができない虞がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る軽石の処理方法は、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施形態に係る軽石の処理方法を示す図であり、(a)は処理室内の加圧前の状態、(b)は処理室内を加圧した状態を示す。
図2】本発明の第2の実施形態に係る軽石の処理方法を示す図であり、(a)は連通管に軽石を投入した状態、(b)は押圧ピストンにより軽石を水深方向に押圧している状態を示す。
図3】本発明の第3の実施形態に係る軽石の処理方法を示す図であり、(a)は収納容器に軽石を収納した状態、(b)は収納容器を水深方向に沈降させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る軽石の処理方法について図面等を用いて詳細に説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明において「軽石」とは、主に海底火山から放出される火山噴出物のうち火山砕せつ物の一つであり、多数の空隙が形成され、乾燥状態で水の比重よりも見かけ上の比重が軽い多孔質体をいう。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置10の外観を示す図である。処理装置10は、圧縮流体としての圧縮空気を生成するエアコンプレッサ11、エアコンプレッサ11で生成された圧縮空気を貯留しておく高圧タンク12、及び内部に空洞の処理室14が形成された処理タンク13から主に構成されている。
【0034】
なお、本実施の形態においては、処理室14内に噴出させる圧縮流体として圧縮空気を用いているが、例えば圧縮液体を処理室14内に噴出させて処理室14内を加圧するようにしてもよい。
【0035】
エアコンプレッサ11と高圧タンク12とは、第1のエア配管15aにより接続されるとともに、高圧タンク12と処理タンク13とは第2のエア配管15bにより接続され、第2のエア配管15bの先端には処理室14内に臨むようエアノズル16が設けられている。第2のエア配管15bには第1のバルブ17aが設けられており、この第1のバルブ17aを開状態とすることでエアノズル16から処理室14内に圧縮空気が常時供給されるようになっている。
【0036】
ここで、エアコンプレッサ11としては、例えばシリンダー内のピストンをモーターで往復運動してシリンダー内の容積変化により空気を圧縮するレシプロコンプレッサ、ケーシング内で雄と雌のスクリューロータを回転させて空気を圧縮する回転式コンプレッサ、一対の渦巻き形状の装置の一方を固定し、もう一方が周回させることで空気を圧縮するスクロールコンプレッサー等、公知のエアコンプレッサから適宜選択できるものとする。
【0037】
なお、エアコンプレッサ11と高圧タンク12とはそれぞれ独立した構成としているが、これらは一体構成することも可能である。
【0038】
処理タンク13の下方側の側面には第2のバルブ17bを介して排出管18が接続されている。処理室14内に投入した軽石Fの処理中は第2のバルブ17bが閉状態として、処理室14内が密閉状態とされる。そして、軽石Fの加圧処理が完了した後に第2のバルブ17bが開状態となり、軽石が排出管18を通じて外部に向けて放出される。
【0039】
次に、第1の実施形態に係る処理装置1を用いた軽石の処理方法について説明する。
【0040】
<処理室への軽石の投入>
処理装置1は、例えば軽石Fを回収する船舶、海上に設置された浮体式の処理施設、或いは陸上に設けられた処理施設等に設置される。海面から海水とともに回収された軽石Fは回収装置(図示しない)に一旦貯留され、回収装置から処理タンク13内に海水とともに投入される。
【0041】
なお、処理タンク13への軽石Fの投入は、例えば処理タンク13に吸引装置を備えた図示しない接続管を接続し、接続管を通じて海面に浮遊する軽石Fを海水とともに吸引して、処理室14に直接投入するようにしてもよい。この場合、軽石Fの回収作業と、軽石Fの処理タンク13への投入作業を一度に行うことができるため、作業効率を高めることができる。
【0042】
図1(a)は、軽石Fが海水とともに処理タンク13の処理室14内に投入された直後の様子を示す図である。前記した通り、軽石Fは多数の空隙が形成されており、空隙の内部には火山ガスを含む空気が充填されているため、貯留水が空隙内に浸入することができず、見かけ上の比重が水よりも軽くなる。そのため、大気圧下においては処理室14内に貯留された海水(貯留水)の水面に浮遊した状態となっている。
【0043】
ここで、必ずしも、軽石Fの処理タンク13への投入は海水とともに投入する必要はなく、予め一定量の水が貯留された処理室14内に軽石Fのみを投入してもよい。また、処理室14内は必ずしも水を貯留する必要はなく、軽石Fのみを処理室14内に投入したうえで、後記する加圧処理を行ってもよい。但し、処理室14内に貯留水を貯留した状態で加圧処理することで、軽石の空隙から放出されたガスは加圧に応じて貯留水内に溶解され、効率的に軽石の空隙からガスを放出させることができる。
【0044】
<加圧処理>
図1(a)の状態で、第1のバルブ17aを「開」側に制御したうえで、エアコンプレッサ11を駆動し圧縮空気を生成する。このとき圧縮空気は高圧タンク12から第1のエア配管15aを通じ、エアノズル16から処理室14内に向けて噴出される。圧縮空気の供給により処理室14には貯留水を押し下げる方向に圧力が作用し、所定の圧力となった段階で軽石Fの隔壁が破壊されはじめ、軽石F内に充填するガスが外部に放出される。
【0045】
処理室14内に放出されたガス、及び供給される圧縮空気は貯留水内に溶解し、さらに処理室14内が加圧され、略1MPa以上となると処理室14内の大半の軽石Fは表面のみならず内部の隔壁も破壊され、軽石Fの内部に充填された大半のガスが放出される。そして、貯留水が軽石Fの空隙内に浸入し、見かけ上の比重が大きくなり、ほぼ全量の軽石が処理室14の底面に沈降する。
【0046】
<軽石の放出>
処理室14の加圧状態を所定時間継続し、軽石Fのほぼ全量が処理室14の底面に沈降したことが確認できたらエアコンプレッサ11を停止し、第1のバルブ17aを「閉」側に制御する。そして、図1(b)に示すように、第2のバルブ17bを「開」側に制御して、排出管18から貯留水とともに軽石Fを処理タンク13の外部に向けて放出する。
【0047】
処理装置10が、例えば海上を航行する船舶や海上に設置された浮体式の処理施設に設置されている場合には、そのまま海洋に向けて軽石Fを投棄することで、加圧処理された軽石Fは浮上することなく海底に向けて沈降させることができる。また、処理装置10が陸上に設置されている場合には、陸上で処理された軽石Fを船舶に積載して比較的水深の深い海域まで移動し、海洋に投棄することも可能である。
【0048】
[第2の実施形態]
次に図2を用いて本発明の第2の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置20について説明する。
【0049】
第2の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置20は、例えば海上を航行する船舶、或いは海上に設置された浮体式の処理施設に設置がされるもので(図2の説明では船舶Sに設置された状態を示す)、一端に投入口21、他端に吐出口22が形成され内部が空洞となっている連通管23、及び連通管23内を往復動可能な押圧ピストン24から主に構成されている。
【0050】
連通管23は、投入口21が水面よりもやや上方に位置する高さ位置で、例えば船舶Sの側面に所定の固定手段により設置することができる。連通管23の長さは少なくとも100m以上の長さを有し、より詳しくは、船舶Sの側面に設置した状態において、吐出口22が略100m以上の水深に位置する程度の長さであることが好ましい。
【0051】
押圧ピストン24は、その直径が連通管23の内径に対してやや小さく、連通管23内を自由に往復動可能な構成となっている。押圧ピストン24を押し下げる動力は例えばモーター等を使用することができるが、連通管23内で受ける水圧に抗うことが可能な程度の動力を発生する動力発生源であれば特に限定されるものではない。
【0052】
次に、処理装置20を用いた軽石の処理方法について説明する。
【0053】
<処理室への軽石の投入>
海面から回収された軽石Fは、連通管23の投入口21に投入される。このとき、投入された軽石Fの空隙内には火山ガスが充填されているため、水面上に浮遊した状態、或いは投入口21付近に堆積された状態となる。
【0054】
<加圧処理>
連通管23の投入口21付近に軽石Fが浮遊、或いは堆積した状態で、図2(a)に示すように、押圧ピストン24を投入口21側から挿入して、連通管23に沿って水深方向に向けて押圧を開始する。押圧ピストン24により水深方向に向けて押し下げられると軽石Fは、水深が深くなるにつれて徐々に水圧が加えられる。そして、軽石Fが連通管23内の吐出口22付近(水深略100m程度)まで押圧されると、水圧が略1MPa以上となり、軽石Fは表面のみならず内部の隔壁も破壊され、軽石Fの内部に充填された大半のガスが放出される。なお、押圧ピストン24に押圧されることにより粉砕された一部の軽石Fは、水深100mに達する前に沈降する。
【0055】
<軽石の吐出>
軽石Fの隔壁が破壊され、充填されたガスが放出されることで、海水が軽石Fの空隙内に浸入し、見かけ上の比重が大きくなる。この状態でさらに押圧ピストン24を押圧すると、ほぼ全量の軽石Fが吐出口22から海底に向けて放出される。
【0056】
[第3の実施形態]
次に図3を用いて本発明の第3の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置30について説明する。なお、以下の説明においては、第2の実施形態と共通する構成については共通の符号を付するものとする。
【0057】
第3の実施形態に係る軽石の処理方法に用いる処理装置30は、例えば海上を航行する船舶、或いは海上に設置された浮体式の処理施設に設置がされるもので(図3の説明では船舶Sに設置された状態を示す)、内部に収納空間が形成されるとともに、底面に開放面が形成された構造からなり自重により水中を沈降可能な程度の重さからなる収納容器31と、収納容器31に接続された接続ワイヤ32から主に構成されている。
【0058】
次に、処理装置30を用いた軽石の処理方法について説明する。
【0059】
<収納容器への軽石の投入>
海面から回収された軽石Fを収納容器31の収納空間に投入する。なお、軽石Fを収納容器31に直接投入してもよく、或いは図3(a)に示すように、収納容器31の開放面を、海面上を浮遊する軽石Fに対して蓋うようにして設置してもよく、何れの場合においても「投入」を意味する。
【0060】
<加圧処理>
収納容器31に軽石Fを投入したら、接続ワイヤ32を船舶等に固定した状態で収納容器31を自重により水深方向に向けて沈降させる。このとき、水深方向に押し下げられた軽石Fは、水深が深くなるにつれて徐々に水圧が加えられる。そして、収納容器31が略100m程度の水深位置まで沈降すると、水圧が略1MPa以上となり、軽石Fは表面のみならず内部の隔壁も破壊され、軽石Fの内部に充填された大半のガスが放出される。
【0061】
なお、前記した水深位置(略100m)は目安であり、例えば事前に粉砕処理等して比較的体積が小さくなった軽石Fを処理する場合には、水深100mに到達する前に内部に充填された大半のガスが放出され、海底に向けて沈降を始める。
【0062】
<軽石の放出>
軽石Fの隔壁が破壊され、充填されたガスが放出されることで、海水が軽石Fの空隙内に浸入し、見かけ上の比重が大きくなる。そして、収納容器31内に収納された軽石Fはそのまま開放面である底面から放出され、海底に向けて沈降する。
【0063】
なお、収納容器31は、底面が開閉可能な扉式、或いはアーム式となっていてもよい。この場合、収納容器31に軽石Fを投入し、底面を閉状態にして収納容器31を沈降させ、水深が略100mを越えた時点で底面を開方向に操作して軽石Fを海底に向けて放出することができる。
【0064】
以上のように、加圧処理により軽石の浮遊性を喪失させることで海洋投棄が可能となるため、陸上での埋立処分の必要がない。なお、海洋投棄に際しては、沿岸領域に広がる浅瀬部分は生物量が豊富であるため、大量の軽石を海洋投棄すると生態系への影響が懸念される。一方、我が国においては排他的経済水域内に広大な外洋を有するため、例えば船舶で沿岸地域から離れた外洋まで航行し、外洋における所定領海内で投棄位置を順次変えながら分散して海洋投棄することで海域の環境負荷を低減することができる。
【0065】
以上、本発明を適用した軽石の処理方法においては、低コストかつ簡易な方法により、水面に浮遊する軽石の浮遊性を喪失させて海洋投棄することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0066】
10、20、30 処理装置
11 エアコンプレッサ
12 高圧タンク
13 処理タンク
14 処理室
15a 第1のエア配管
15b 第2のエア配管
16 エアノズル
17a 第1のバルブ
17b 第2のバルブ
18 排出管
21 投入口
22 吐出口
23 連通管
24 押圧ピストン
31 収納容器
32 接続ワイヤ
F 軽石
S 船舶
図1
図2
図3