(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018264
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F02M25/08 311E
F02M25/08 311F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121481
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】永作 友一
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA40
3G144GA13
3G144GA14
3G144GA15
3G144GA20
3G144GA30
(57)【要約】
【課題】キャニスタに関し、簡素な構成で搭載性及びコストパフォーマンスを改善する。
【解決手段】開示のキャニスタ1は、エンジンの燃料タンクで発生した蒸発燃料に対する吸着能を持つ第一吸着材11及び第二吸着材12と、第一吸着材11を内蔵してエンジンの吸気系及び燃料タンクに接続される主室4と、第二吸着材12を内蔵して大気開放される副室5とを有するケース2と、主室4と副室5とを区画する平面状の仕切り壁7と、仕切り壁7から主室4に向かって仕切り壁7に対して垂直に立設される平面状のリブ8とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃料タンクで発生した蒸発燃料に対する吸着能を持つ第一吸着材及び第二吸着材と、
前記第一吸着材を内蔵して前記エンジンの吸気系及び前記燃料タンクに接続される主室と、前記第二吸着材を内蔵して大気開放される副室とを有するケースと、
前記主室と前記副室とを区画する平面状の仕切り壁と、
前記仕切り壁から前記主室に向かって前記仕切り壁に対して垂直に立設される平面状のリブと、
を備えることを特徴とする、キャニスタ。
【請求項2】
前記主室が、前記ケースの周面のうち前記仕切り壁に対して垂直な第一側面を有し、
前記第一側面が、前記燃料タンクに連通するタンクポートと前記吸気系に連通するパージポートとを有し、
前記タンクポートが、前記リブと同一平面上に配置される
ことを特徴とする、請求項1記載のキャニスタ。
【請求項3】
前記リブが、水平に配設され、
前記パージポートが、前記リブよりも上方に配置される
ことを特徴とする、請求項2記載のキャニスタ。
【請求項4】
前記パージポートが、上面視において前記第一側面に対する前記リブの接触辺と重なる位置に配置される
ことを特徴とする、請求項3記載のキャニスタ。
【請求項5】
前記第一吸着材の表面のうち前記第一側面に接する面とは反対側の端面に接触する平板状に形成された第一プレートを備え、
前記第一プレートが、前記リブよりも上方に配置される上部孔と、前記リブよりも下方に配置されて前記上部孔よりも開口面積が大きい下部孔とを有する
ことを特徴とする、請求項3記載のキャニスタ。
【請求項6】
前記第一吸着材の表面のうち前記第一側面に接する面とは反対側の端面に接触する平板状に形成された第一プレートを備え、
前記第一プレートが、前記リブよりも上方に配置される上部孔と、前記リブよりも下方に配置されて前記上部孔よりも開口面積が大きい下部孔とを有する
ことを特徴とする、請求項4記載のキャニスタ。
【請求項7】
前記リブが、前記仕切り壁と前記第一側面とに接する直角三角形状に形成される
ことを特徴とする、請求項2~6のいずれか一項に記載のキャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、蒸発燃料を回収して再利用するためのキャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)の燃料タンクで発生した蒸発燃料(燃料ガス,ガソリンベーパー等)を再利用するためのキャニスタにおいて、ケース(ケーシング)の内部に主室と副室とを形成したものが知られている。主室には、燃料タンクに連通するタンクポート(チャージポート)とエンジンの吸気系に連通するパージポートとが設けられ、副室には、大気開放される大気ポートが設けられる。各々の室内には、蒸発燃料に対する吸着能を持つ吸着材が内蔵される。蒸発燃料は、各々の吸着材に回収されるとともにエンジンの吸気系に導入されるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャニスタのケースの内部には、燃料タンク内の正圧や吸気系の負圧が作用しうることから、圧力変動に対して変形しにくい剛性を持たせることが望ましい。しかしながら、剛性を高めるためにケースの板厚を増加させると、キャニスタ全体の重量が増加し、製造コストが増加するほか、車両や機械類への搭載性が低下してしまう。また、圧力変動を小さくするためにケースの容積を増大させた場合にも、キャニスタ全体のサイズが大型化し、製造コストや搭載性の面でのデメリットが生じうる。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で剛性を高めつつ搭載性及びコストパフォーマンスを改善できるようにしたキャニスタを提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のキャニスタは、以下に開示する態様または適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
開示のキャニスタは、エンジンの燃料タンクで発生した蒸発燃料に対する吸着能を持つ第一吸着材及び第二吸着材と、前記第一吸着材を内蔵して前記エンジンの吸気系及び前記燃料タンクに接続される主室と、前記第二吸着材を内蔵して大気開放される副室とを有するケースと、前記主室と前記副室とを区画する平面状の仕切り壁と、前記仕切り壁から前記主室に向かって前記仕切り壁に対して垂直に立設される平面状のリブと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示のキャニスタによれば、仕切り壁にリブを設けることで、ケース及び仕切り壁の剛性を高めることができる。また、ケース及び仕切り壁の板厚を薄くでき、小型化や軽量化や製造コスト削減が容易となる。したがって、簡素な構成で剛性を高めつつ搭載性及びコストパフォーマンスを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例としてのキャニスタの構成を示す模式的な水平断面図である。
【
図3】キャニスタの要部を説明するための縦断面図である。
【
図4】ケースに内装される部品の構成を示す分解斜視図である。
【
図5】(A),(B)はキャニスタ内での蒸発燃料の流れを示す斜視図である。
【
図6】変形例のキャニスタの要部を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示のキャニスタは、以下の実施例によって実施されうる。開示のキャニスタは、蒸発燃料を回収して再利用するための装置であり、燃料タンクに貯留された燃料を供給されて作動するエンジンに付設される。ここでいうエンジンには、揮発性燃料で作動する各種内燃機関が含まれ、例えばガソリンエンジンやジェットエンジンなどが含まれる。本実施例のキャニスタは、車両に搭載されるエンジンに付設される。実施例中の方向の定義に関して、キャニスタを構成する部品や部位についての方向は、特記しない限り、車両に取り付けられた状態での方向を意味する。
【実施例0010】
[1.全体構成]
図1は、実施例としてのキャニスタ1の構成を説明するための模式的な水平断面図である。キャニスタ1は、第一吸着材11及び第二吸着材12,ケース2,仕切り壁7,リブ8,プレート13,14及びスプリング15,16を備える。第一吸着材11及び第二吸着材12(吸着材11,12とも呼ぶ)は、エンジンの燃料タンクで発生した蒸発燃料に対する吸着能を持つ物質である。吸着材11,12の具体例としては、活性炭やゼオライトが挙げられる。吸着材11,12は、固形の多孔質体(成型品)であってもよいし、通気性を有する袋に封入された粉体材料や粒体材料であってもよい。
【0011】
図2は、ケース2の内部構造を示す透過斜視図である。ケース2は、吸着材11,12を内部に収容する容器である。ケース2の形状は、一端側(
図1における右側)に開口部が形成された中空の筒状(例えば円筒状,楕円筒状,多角筒状など)に形成される。
図1及び
図2に示すケース2は、一端側が開放された中空の四角筒状に形成されており、一端に開口部を有する。ケース2の素材は、例えば金属や合成樹脂材料である。ケース2の開口部は、カバー3によって閉塞される。カバー3の素材は、例えば金属や合成樹脂材料であり、好ましくはケース2と同種の素材である。
【0012】
仕切り壁7は、ケース2の内部を二つの室に区画する壁体である。一方の室は主室4と呼ばれ、他方の室は副室5と呼ばれる。また、主室4には第一吸着材11が収容され、副室5には第二吸着材12が収容される。仕切り壁7の高さ(水平方向寸法,
図1中の左右方向寸法)は、主室4と副室5とが完全には区画されない程度の高さに設定される。言い換えれば、仕切り壁7の一端とカバー3との間には、所定の隙間が形成される。仕切り壁7の位置は、好ましくは主室4が副室5よりも広くなるように設定される。仕切り壁7の素材は、例えば金属や合成樹脂材料であり、好ましくはケース2と同種の素材である。
【0013】
主室4は、エンジンの吸気系及び燃料タンクに接続される室である。主室4の内部に収容される第一吸着材11は、主室4の内部形状に対応する形状に形成される。主室4には、ケース2の周面のうち仕切り壁7に対して垂直に配置される第一側面10が設けられる。第一側面10には、燃料タンクに連通するタンクポート22とエンジンの吸気系に連通するパージポート23とが設けられる。タンクポート22と燃料タンクとの間は、図示しない蒸発燃料用配管材で接続され、パージポート23と吸気通路との間は、図示しないパージ配管材で接続される。
図1に示すケース2においては、図中で主室4の左側面をなす部位が第一側面10である。
【0014】
副室5は、大気開放される室であり、主室4に隣接して配置される。副室5の内部に収容される第二吸着材12は、副室5の内部形状に対応する形状に形成される。副室5には、ケース2の周面のうち仕切り壁7に対して垂直に配置される第二側面20が設けられる。第二側面20には、大気開放される大気ポート24が設けられる。大気ポート24には、端部が大気開放された配管材が接続される。
図1に示すケース2においては、図中で副室5の左側面をなす部位が第二側面20である。なお、
図1では便宜的にタンクポート22,パージポート23,大気ポート24の各断面を一つの図中で示している。各ポート22~24のレイアウトは、必ずしも同一平面上に位置するようには設定されず、適宜ずらして配置できる。
【0015】
リブ8は、仕切り壁7から主室4に向かって立設される平面状の部材であり、仕切り壁7に対して垂直に立設される。リブ8の平面形状は任意に設定可能である。
図1に示すリブ8は、仕切り壁7と第一側面10とに接する直角三角形状に形成されている。リブ8は、好ましくは水平に配設される。リブ8の素材は、例えば金属や合成樹脂材料であり、好ましくはケース2と同種の素材である。なお、第一吸着材11には、リブ8の形状に対応するスリット9(隙間,
図4参照)が設けられる。スリット9は、リブ8に接触するものであってもよいし非接触であってもよい。
【0016】
キャニスタ1では、好ましくは、タンクポート22がリブ8と同一平面上に位置するように、リブ8の位置が設定される。
図3は、キャニスタ1の各種ポート22~24とリブ8との位置関係を説明するための縦断面図(ケース2を他端側の側面から見たときの断面図)である。
図3に示すように、ケース2を他端側の側面から見たときに、タンクポート22の中心点がリブ8の中心線を通るように、リブ8とタンクポート22との位置関係を規定することが好ましい。
【0017】
より好ましくは、パージポート23がリブ8よりも上方に位置するように、リブ8の位置が設定される。例えば
図3に示すように、ケース2を他端側の側面から見たときに、パージポート23の全体がリブ8の直上方の範囲内に入るように、リブ8とパージポート23との位置関係が規定される。言い換えれば、パージポート23は、ケース2の上面視において第一側面10に対するリブ8の接触辺と重なる位置に配置されることが好ましい。
【0018】
図4は、ケース2に内装される部品(吸着材11,12,プレート13,14,スプリング15,16)を示す分解斜視図である。
図4に示すように、プレート13,14は、平板状に形成された部材であり、吸着材11,12における一端側の面に接触するように設けられる。
図1には、第一吸着材11の一端面に接触する第一プレート13と第二吸着材12の一端面に接触する第二プレート14とが示されている。
【0019】
図1に示す例では、第一プレート13と第二プレート14とがほぼ同一平面上に配置されている。また、主室4(第一吸着材11)の高さ寸法(
図1中の左右方向寸法)は、副室5(第二吸着材12)の高さ寸法とほぼ同一になっている。第一プレート13は、第一吸着材11の表面のうち、第一側面10に接する面とは反対側の端面(一端面)に接触する平板状に形成される。同様に、第二プレート14は、第二吸着材12の表面のうち、第二側面20に接する面とは反対側の端面(一端面)に接触する平板状に形成される。
【0020】
スプリング15,16は、プレート13,14及び吸着材11,12を他端側へと付勢する弾性部材(例えばコイルばねやゴムなど)であり、カバー3とプレート13,14との間に介装される。スプリング15,16の付勢により、プレート13,14が吸着材11,12の一端面に面接触した状態で吸着材11,12を他端側に押圧する。これにより、吸着材11,12がケース2の内部に安定的に固定される。
【0021】
図1には、第一プレート13の一端側に位置するコイル状の第一スプリング15と、第二プレート14の一端側に位置するコイル状の第二スプリング16とが示されている。これらのスプリング15,16は、カバー3とプレート13,14との間に押し縮められた状態で挿入されている。プレート13,14よりも一端側の空間(スプリング15,16が収容される空間)は、スプリング室6と呼ばれる。スプリング室6には、主室4の一端側の部分と副室5の一端側の部分とが含まれ、これらが一体的に繋がっている。
【0022】
図3及び
図4に示すように、第一プレート13には、その表裏を貫通する上部孔17及び下部孔18が設けられる。同様に、第二プレート14には、その表裏を貫通する副室孔19が設けられる。上部孔17,下部孔18,副室孔19の各々は、所定の幅で直線状に延在するスリット状の長孔である。各々の孔17,18,19の幅は、同一であってもよいし相違してもよい。上部孔17は、リブ8よりも上方に配置される。また、下部孔18は、上部孔17よりも開口面積が大きく形成され、リブ8よりも下方に配置される。蒸発燃料は、上部孔17及び下部孔18を介して主室4とスプリング室6との間を流通可能であるとともに、副室孔19を介してスプリング室6と副室5との間を流通可能である。
【0023】
第一プレート13の上部孔17及び下部孔18について、好ましくは
図3に示すように、ケース2を他端側の側面から見たときに、パージポート23の中心点が上部孔17の中心線を通るように、パージポート23と上部孔17との位置関係が規定される。また、
図3中において、上部孔17の左右方向寸法は比較的短く設定される。これに対し、下部孔18の左右方向寸法は、上部孔17の左右方向寸法よりも長く設定される。例えば、
図3中における主室4の左右方向寸法とほぼ同寸法(若干小さめの寸法)に設定される。
【0024】
第二プレート14の副室孔19について、好ましくは
図3に示すように、ケース2を他端側の側面から見たときに、大気ポート24の中心点が副室孔19の中心線を通るように、大気ポート24と副室孔19との位置関係が規定される。また、
図3中における副室孔19の上下方向寸法は、比較的長く設定される。例えば、
図3中における副室5の上下方向寸法とほぼ同寸法(若干小さめの寸法)に設定される。
【0025】
[2.作用]
図5(A)は、パージ時(吸着材11,12に吸着されている蒸発燃料をエンジンの吸気系に導入している時)において、スプリング室6から主室4への空気(蒸発燃料を含む空気)の流れを示す斜視図である。パージポート23は、主室4の内部においてリブ8よりも上方に配置されているため、リブ8よりも下側の領域でのパージ(蒸発燃料の脱離)が上側の領域と比較してやや不利である。しかし、第一プレート13に形成された下部孔18の開口面積は、上部孔17の開口面積よりも大きいため、リブ8よりも下側の領域へと導入される空気量が増大する。したがって、リブ8よりも上側の領域でも下側の領域でも良好なパージ性能が得られるようになる。
【0026】
図5(B)は、パージ時において、タンクポート22から流入する空気(蒸発燃料を含む空気)の流れを示す斜視図である。リブ8は、タンクポート22から主室4へ流入した高濃度の蒸発燃料が図中矢印で示すように主室4の内部を広く流通し、ダイレクトにパージポート23へと吸引されることを防止するように機能する。また、蒸発燃料は空気よりも比重が高く、キャニスタ1の下側に滞留しやすい。一方、パージポート23をタンクポート22よりも上側に設定することで、高濃度の蒸発燃料がダイレクトにパージポート23に吸引されることが防止される。これにより、エンジンの吸気系に導入される蒸発燃料の過濃化が抑制される。したがって、エンジンの吸気系に導入される蒸発燃料の濃度が適正化され、エンジンの作動状態が安定する。
【0027】
[3.効果]
(1)本実施例のキャニスタ1は、エンジンの燃料タンクで発生した蒸発燃料に対する吸着能を持つ第一吸着材11及び第二吸着材12と、第一吸着材11を内蔵してエンジンの吸気系及び燃料タンクに接続される主室4と、第二吸着材12を内蔵して大気開放される副室5とを有するケース2と、主室4と副室5とを区画する平面状の仕切り壁7と、仕切り壁7から主室4に向かって仕切り壁7に対して垂直に立設される平面状のリブ8とを備える。仕切り壁7にリブ8を設けることで、ケース2及び仕切り壁7の剛性を高めることができる。また、ケース2及び仕切り壁7の板厚を薄くでき、小型化や軽量化や製造コスト削減が容易となる。したがって、簡素な構成で剛性を高めつつ、搭載性及びコストパフォーマンスを改善できる。
【0028】
(2)本実施例の主室4は、ケース2の周面のうち仕切り壁7に対して垂直な第一側面10を有する。第一側面10には、燃料タンクに連通するタンクポート22とエンジンの吸気系に連通するパージポート23とが設けられる。また、タンクポート22は、
図3に示すように、リブ8と同一平面上に配置される。
【0029】
これにより、リブ8よりも上側の領域と下側の領域との両方に対してほぼ均等に蒸発燃料を導入することができる。したがって、主室4の内部における蒸発燃料の吸着量分布を偏りにくくすることができ、蒸発燃料の吸着脱離性能を向上させることができる。また、蒸発燃料の吸着脱離性能を改善するためにケース2や吸着材11,12の容積を増大させる必要がないことから、小型化や軽量化や製造コスト削減が容易となり、延いてはキャニスタ1の搭載性及びコストパフォーマンスを改善できる。
【0030】
(3)本実施例では、
図3に示すように、リブ8が水平に配設される。また、パージポート23は、リブ8よりも上方に配置される。これにより、エンジンの吸気系に導入される蒸発燃料の濃度を適正化でき、エンジンの作動状態を安定させることができる。
【0031】
(4)本実施例では、
図1に示すように、パージポート23が、キャニスタ1の上面視において第一側面10に対するリブ8の接触辺と重なる位置に配置される。これにより、
図5(B)に示すような空気(蒸発燃料を含む空気)の流れを生成することができる。つまり、タンクポート22から主室4へ流入した高濃度の蒸発燃料が、リブ8を迂回するように流れるようにすることができ、ダイレクトにパージポート23へと吸引されることを防止できる。これにより、エンジンの吸気系に導入される蒸発燃料の濃度を適正化でき、エンジンの作動状態を安定させることができる。
【0032】
(5)本実施例のキャニスタ1は、第一吸着材11の表面のうち第一側面10に接する面とは反対側の端面に接触する平板状に形成された第一プレート13を備える。第一プレート13には、
図3に示すように、リブ8よりも上方に配置される上部孔17と、リブ8よりも下方に配置されて上部孔17よりも開口面積が大きい下部孔18とが設けられる。これにより、
図5(A)に示すように、パージ時にリブ8よりも下側の領域へと導入される空気量を増大させることができる。したがって、リブ8の上側領域と下側領域との両方において、良好なパージ性能を得ることができる。
【0033】
(6)本実施例では、リブ8が、仕切り壁7と第一側面10とに接する直角三角形状に形成される。これにより、簡素な構成で仕切り壁7及び第一側面10を補強でき、ケース2及び仕切り壁7の剛性を高めることができる。
【0034】
[4.その他]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は必要に応じて取捨選択でき、あるいは、適宜組み合わせることができる。
【0035】
例えば、上記の実施例では、タンクポート22がリブ8と同一平面上に配置された構成を例示したが、タンクポート22がリブ8と同一平面上に配置されていなくてもよい。また、リブ8は水平に配設されていなくてもよいし、パージポート23がリブ8の下方に配置されてもよい。また、上記の実施例では、第一プレート13に上部孔17と上部孔17よりも開口面積が大きい下部孔18とが形成された構成を例示したが、このような開口面積の大小関係は必須の関係ではない。少なくとも、仕切り壁7から主室4に向かって仕切り壁7に対して垂直に立設される平面状のリブ8を設けることで、上記の実施例と同様の作用,効果を獲得できる。
【0036】
また、上記の実施例では、第一プレート13にスリット状の上部孔17及び下部孔18が形成された構造を示したが、上部孔17及び下部孔18の形状は長孔でなくてもよく、例えば丸孔や角穴であってもよいし、より複雑な孔形状にしてもよい。
図6に示す変形例は、複数の丸孔で上部孔31及び下部孔32を構成したものである。この場合、上部孔31を構成する丸孔のサイズは、下部孔32を構成する丸孔のサイズと異なるサイズであってもよいが、同サイズに設定することで製造手法を簡素化してもよい。
【0037】
上部孔31及び下部孔32の丸孔のサイズが同一である場合、下部孔32の開口面積を上部孔31の開口面積よりも大きくするには、下部孔32に含まれる丸孔の個数を上部孔31よりも多くすればよい。一方、丸孔のサイズを上部孔31よりも下部孔32で大きく設定した場合には、丸孔の個数を同数に設定してもよい。少なくとも、下部孔32の総面積(全体の面積)を上部孔31の総面積よりも大きくすることで、実質的に上記の実施例と同様の構造を実現でき、パージ時にリブ8よりも下側の領域へと導入される空気量を増大させることができる。
本件は、蒸発燃料を回収して再利用するためのキャニスタの製造産業に利用可能である。このキャニスタは、燃料タンクに貯留された燃料を供給されて作動するエンジンに付設されうる。したがって、エンジン及びキャニスタが搭載される車両の製造産業に利用可能である。また、エンジン及びキャニスタが搭載される産業用機械や発電装置などの製造産業にも利用可能である。