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  • 特開-索道の空調装置付搬器 図1
  • 特開-索道の空調装置付搬器 図2
  • 特開-索道の空調装置付搬器 図3
  • 特開-索道の空調装置付搬器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018266
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】索道の空調装置付搬器
(51)【国際特許分類】
   B61D 27/00 20060101AFI20240201BHJP
   B61B 12/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B61D27/00 N
B61B12/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121486
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 元幸
(57)【要約】
【課題】停留場において空調装置を備えた搬器の回送中に、搬器内の冷気及び暖気の排出や外気の流入を減少させ、空調の効率の低下を弱めることを目的とする。
【解決手段】
空調装置24を備えて客車21内の空調を行う索道の搬器18において、前記客車21内の天井には空調装置24からの空気を客車21内へ送風する室内送風口28と扉部送風口29とを備え、前記室内送風口28は前記天井の略中央に位置し、前記扉部送風口29は前記客車21の扉27の開口部に位置し、前記扉27が開いたときに前記扉部送風口29から送風するようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置を備えて客車内の空調を行う索道の搬器において、前記客車内の天井には空調装置からの空気を客車内へ送風する室内送風口と扉部送風口とを備え、前記室内送風口は前記天井の略中央に位置し、前記扉部送風口は前記客車の扉の開口部に位置し、前記扉が開いたときに前記扉部送風口から送風するようにしたことを特徴とする索道の空調装置付搬器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道の搬器に関し、詳しくは空調装置を搭載した索道の搬器に関する。
【背景技術】
【0002】
索道設備は、空中に張架した索条に搬器を懸垂し、人員や物資を運ぶ輸送設備であり、多くは山岳傾斜地における人員の移動手段や、スキー場におけるスキーヤーやスノーボーダーの移動手段として利用されている。また、索道設備は、鉄道等のように地上にレール等を敷設する必要がなく線路に要する用地が少なくてすむために、特に海外においては都市部の公共交通機関として運用されるようになってきている。
【0003】
このように、都市部等においてゴンドラリフトやロープウェイのような閉鎖型搬器を運行する索道設備を運用するにあたっては、他の都市輸送機関と同程度の利便性や快適性を提供できることが望ましく、特に乗客の快適性を向上するために各搬器には空調装置を備えることが望ましい。しかしながら従来周知のように、索道設備においては、線路中を移動する搬器へ電力を供給することが困難であり、大量の電力を消費する空調装置を各搬器に備えることは困難であった。
【0004】
このようなことから従来、次のような技術が提案され、また、実施されている。この技術のうちの一例は、複数の搬器よりなる搬器グループを形成し、この搬器グループを複数備えて索条の循環移動とともに運行を行うようにしている。搬器グループ内のうち1台の搬器は、電源設備を搭載した電源搬器とし、他の搬器は乗客が乗車する乗客用搬器とする。そして、各乗客用搬器には空調設備を備えるとともに、電源搬器から各乗客用搬器へ給電ケーブルを介して電源を供給するようにし、乗客用搬器の空調を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、他の例としては、客車上部に乗客用スペースと隔離した機器用スペースを形成し、ここにガスタービンエンジン及び発電機と、これによって駆動される空調装置を備えて乗客用スペースの空調を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
近時においてはバッテリーの開発が急速に進められ、大容量で急速充電が可能なバッテリーが供給されている。このようなことから索道においては、搬器にバッテリーを搭載するとともに、搬器が停留場内で回送される間にバッテリーに電力を供給して急速充電を行い、このバッテリーからの電力供給により索道線路中で空調装置を連続駆動することが可能になってきており、実用化もされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-257363号公報
【特許文献2】特開平9-24823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、索道の搬器の空調には以下のような課題があった。すなわち、ゴンドラリフト等の索道においては、停留場内で搬器が回送され、この間に乗客が搬器へ乗車および降車を行う。この間は、搬器の扉が開いたままとなっており、この間に搬器内の寒気や暖気が外部に排出されるため、空調の効率が悪くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、停留場において搬器の回送中に搬器内の冷気及び暖気の排出や外気の流入を減少させ、空調の効率の低下を弱めることのできる、索道の空調装置付搬器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、空調装置を備えて客車内の空調を行う索道の搬器において、前記客車内の天井には空調装置からの空気を客車内へ送風する室内送風口と扉部送風口とを備え、前記室内送風口は前記天井の略中央に位置し、前記扉部送風口は前記客車の扉の開口部に位置し、前記扉が開いたときに前記扉部送風口から送風するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、客車内からの空気の流出や外気の流入を少なくすることができ、空調の効率の低下を弱めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】自動循環式索道の模式図
図2】搬器の正面図
図3】搬器の側面図
図4】客車の一部を断面視した搬器の正面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態においては、索道設備の代表例として単線自動循環式索道により説明を行う。図1は、単線自動循環式索道の模式図である。単線自動循環式索道10は、線路の端部に停留場11及び停留場12を有しており、各停留場11、12には、原動滑車13及び従動滑車14を回転自在に備えている。原動滑車13と従動滑車14には、索条15が無端状に巻き掛けられており、原動滑車13を回転駆動することにより、索条15は両停留場11、12間を循環して移動する。索条15には、線路中で所定の間隔となるように複数の搬器18が懸垂されている。
【0013】
搬器18は索条15に着脱自在であって、線路中では索条15に取り付けられて索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15から切り離される。停留場11、12には、平面視U字状の走行レール16及び走行レール17がそれぞれ敷設されており、索条15から切り離された搬器18は、走行レール16、17に沿って次のように移動する。まず、停留場11、12に到着した搬器18は、索条15から切り離されるとともに、走行レール16、17に乗り移り、走行レール16、17に沿って設けられた移送装置により減速させられる。乗客が乗降可能な速度まで搬器18が減速すると、その速度を保って停留場11、12内を出発側へ折返し、この間に乗客の乗降が行われる。出発側へ折り返した搬器18は、索条15の速度と同一速度にまで加速させられた後、索条15に取り付けられるとともに走行レール16、17から離脱して線路中へ出発する。
【0014】
図2は搬器18の正面図、図3は搬器18の側面図である。搬器18は、大別して握索機19と懸垂機20と客車21とからなっている。握索機19は、索条15を握放索可能に構成されており、線路中では索条15を握索して索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15を放索するとともに、走行レール16、17上を走行ローラー22が転動して移動する。握索機19には、進行方向に対し前後方向へ揺動自在に懸垂機20を枢着しており、この懸垂機20の下部に乗客を搭載する客車21が取り付けられている。
【0015】
客車21の上部には、上面26に空調装置24を備えている。空調装置24は、圧縮機、蒸発機、凝縮機等を内部に備えた一体型の空調装置24であって、客車21下部に備えたバッテリー25から電力を供給されて駆動し、客車21の上部に設けた通風口から客車21内へ温風または冷風を供給する。バッテリー25は、急速充電が可能なバッテリーであって、搬器18が停留場11、12内を移動するときに搬器18に備えた集電器23により電力の供給を受け急速充電される。
【0016】
図4は、客車21の一部を断面視した搬器18の正面図である。客車21の室内天井には、空調装置24からの空気を送風する室内送風口28と扉部送風口29を備えている。室内送風口28は、客車21天井のほぼ中央の位置に設けられており、空調装置24からの空気が客車21内に送り込まれる。扉部送風口29は、扉27の開口部に沿って設けられており、扉27の位置にほぼ沿って空調装置24からの空気を吐出するようになっている。
【0017】
このような構成において、搬器18が停留場11、12を離れ線路中を移動する場合には、バッテリー25から電力が供給されて空調装置24が動作し、空調装置24からの空気が室内送風口28から客車21内に送り込まれて空調が行われる。次に、搬器18が停留場11、12に到着すると、搬器18が減速するとともに搬器18へ電力が供給され、減速が終了すると搬器18の扉27が開き乗客の降車が行われる。このときに、搬器18の空調装置24からの送風は、扉部送風口29から吐出するように切り換えられて、以後乗客が乗車して扉27が閉じられるまでこの状態で搬器18が移動する。次いで、扉27が閉じられると、再度、室内送風口28からの送風に切り換えられて線路中を搬器18が移動する。
【0018】
以上の構成によれば、室内送風口28と扉部送風口29との切替動作により、線路中では客車21の車内が略密閉された状態で車内均一に空調が行われ、また、停留場11、12内で扉27が開いた状態においては、扉部送風口29からの送風により客車21内からの空気の流出や外気の流入を遮ってこれを少なくすることができる。したがって、客車21内の空調効率が低下することを弱めることができる。
【符号の説明】
【0019】
10 単線自動循環式索道
11 停留場
12 停留場
13 原動滑車
14 従動滑車
15 索条
16 走行レール
17 走行レール
18 搬器
19 握索機
20 懸垂機
21 客車
22 走行ローラー
23 集電器
24 空調装置
25 バッテリー
26 上面
27 扉
28 室内送風口
29 扉部送風口
図1
図2
図3
図4