(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018268
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】イオン送出装置
(51)【国際特許分類】
H01T 23/00 20060101AFI20240201BHJP
H01T 19/00 20060101ALI20240201BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20240201BHJP
F24F 8/30 20210101ALI20240201BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240201BHJP
A61L 9/22 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
H01T23/00
H01T19/00
H01T19/04
F24F8/30
F24F13/02 A
A61L9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121488
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】高土 与明
(72)【発明者】
【氏名】片岡 康孝
(72)【発明者】
【氏名】木場 隆之
(72)【発明者】
【氏名】井上 尚
【テーマコード(参考)】
3L080
4C180
【Fターム(参考)】
3L080AE05
4C180CA10
4C180EA52X
4C180HH05
(57)【要約】
【課題】空気清浄効果を向上することができるイオン送出装置を提供する。
【解決手段】イオン送出装置100は、本体筐体10と、4つの放電部20とを備える。本体筐体10は、ダクト2の下流端部の開口面積を調整するダンパ13を介して風を吹き出す。放電部20は、本体筐体10の内部に配置され、各々が正イオンと負イオンとを生成する。放電部20は、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置される。4つの放電部20のうち2つの放電部20は、軸部131の延びる方向を示す第1方向D1に対向し、軸部131の延長線上において軸部131の第1方向D1の中心に対して対称に配置され、4つの放電部のうち他の2つの放電部20は、第1方向D1に直交する第2方向D2に対向し、軸部131の第1方向D1の中心に対して対称に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトの下流の風路面積を調整するダンパを介して風を吹き出す本体筐体と、
前記本体筐体の内部に配置され、各々が正イオンと負イオンとを生成する偶数個の放電部と
を備え、
前記偶数個の放電部は、前記ダクトの下流の風路を跨る前記ダンパの軸部に対して対称に配置される、イオン送出装置。
【請求項2】
前記偶数個の放電部は、少なくとも、4つの放電部であり、
前記4つの放電部のうち2つの放電部は、前記軸部の延びる方向を示す第1方向に対向し、前記軸部の延長線上において前記軸部の前記第1方向の中心に対して対称に配置され、
前記4つの放電部のうち他の2つの放電部は、前記第1方向に直交する第2方向に対向し、前記軸部の前記第1方向の中心に対して対称に配置される、請求項1に記載のイオン送出装置。
【請求項3】
前記偶数個の放電部は、少なくとも、4つの放電部であり、
前記4つの放電部のうち2つの放電部は、前記軸部の延びる方向に鋭角に交差する第3方向に対向し、前記軸部の第1方向の中心に対して対称に配置され、前記第1方向は、前記軸部の延びる方向を示し、
前記4つの放電部のうち他の2つの放電部は、前記第3方向に交差する第4方向に対向し、前記軸部の前記第1方向の中心に対して対称に配置される、請求項1に記載のイオン送出装置。
【請求項4】
前記偶数個の放電部の各々は放電電極を備え、
前記放電電極は、前記ダクトの内面に対して突出する、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のイオン送出装置。
【請求項5】
前記本体筐体は、前記ダクトに接続される接続部を備え、
前記偶数個の放電部は、前記接続部の開口に沿って等間隔に配置される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のイオン送出装置。
【請求項6】
前記本体筐体は、前記ダクトに接続される接続部を備え、
前記放電部は、
正イオンを発生させる正電極と、
負イオンを発生させる負電極と
を備え、
前記偶数個の放電部において、前記正電極と前記負電極は、前記接続部の開口に沿って交互に配置される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のイオン送出装置。
【請求項7】
前記本体筐体は、
前記ダクトに接続される接続部と、
前記ダクトからの風を前記本体筐体の外部に吹き出す吹出部と
を備え、
前記吹出部は矩形形状を有し、
前記吹出部は、前記放電部を通過した風を前記矩形形状の4つの角部に向けて案内する複数の案内板を備え、
前記偶数個の放電部は、前記接続部の開口に沿って配置される、請求項1に記載のイオン送出装置。
【請求項8】
前記本体筐体は、
前記ダクトに接続される接続部と、
前記ダクトからの風を前記本体筐体の外部に吹き出す吹出部と
を備え、
前記吹出部は矩形形状を有し、
前記吹出部は、
前記ダクトからの風が当たって前記風の流れる方向を変更する風向変更板と、
流れる方向を変更された前記風を前記矩形形状の4つの辺部に案内する複数の案内板と
を備え、
前記複数の案内板は、前記風向変更板の周囲に配置され、
前記偶数個の放電部は、前記案内板の外縁に対応して配置される、請求項1に記載のイオン送出装置。
【請求項9】
前記本体筐体は、前記本体筐体の内部に取り付けられるパネルを更に備え、
前記パネルに前記偶数個の放電部が固定されている、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のイオン送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電生成物のうち、正イオンと負イオンを発生するイオン発生装置は知られている。特許文献1に記載されたイオン送出装置は、吸込口と吹出口とを連通する送風ダクトと、送風ダクトに気流を流通させる送風ファンと、送風ダクトを流通する気流に正イオンと負イオンとを放出するイオン発生装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオン濃度を高めることで、空気清浄効果を向上できる。更に、空気清浄効果を向上する場合、正イオンと負イオンとのイオンバランスを高める必要がある。一方、空調用ダクトの下流端部には、風量調節用のダンパが設置される。ダンパは、ダクトの下流端部の開口面積を変化させる。その結果、ダンパは、空気の流れを調節する機能を有する。しかし、特許文献1では、イオンバランスとダンパとの関係、つまり、イオンバランスに対するダンパの影響について一切考慮されていない。
【0005】
本発明は、空気清浄効果を向上することができるイオン送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、本体筐体と、偶数個の放電部とを備える。前記本体筐体は、ダクトの下流の風路面積を調整するダンパを介して風を吹き出す。前記偶数個の放電部は、前記本体筐体の内部に配置され、各々が正イオンと負イオンとを生成する。更に、前記偶数個の放電部は、前記ダクトの下流の風路を跨る前記ダンパの軸部に対して対称に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空気清浄効果を向上することができるイオン送出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係るイオン送出装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1に示すIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】実施形態1に係る吹出部を外した本体筐体の正面図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る吹出部を外した本体筐体の正面図である。
【
図7】第1イオンバランス実験の実験装置の構成図である。
【
図8】第1イオンバランス実験の計測条件の説明図である。
【
図9】計測対象とセンサとの位置関係を示す図である。
【
図10】別の計測対象とセンサとの位置関係を示す図である。
【
図11】第1イオンバランス実験の実験結果である。
【
図12】第2イオンバランス実験の実験装置の構成図である。
【
図13】第2イオンバランス実験の実験結果である。
【
図14】第2イオンバランス実験の実験結果のグラフである。
【
図17】本発明の実施形態3に係るイオン送出装置の斜視図である。
【
図18】
図17に示すXVIII-XVIII線に沿った断面図である。
【
図19】
図17に示すXIX-XIX線に沿った断面図である。
【
図20】本発明の実施形態4に係るイオン送出装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。本発明の実施形態において、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交し、X軸及びY軸は水平面に平行であり、Z軸は鉛直面に平行である。Z軸の正方向は、下方向を示す。なお、イオン送出装置は、通常、下方に向けて設置されるが、説明の便宜上、全図を通して上方に向けた姿勢で記載している。
【0010】
(実施形態1)
まず、
図1から
図5を参照して、実施形態1に係るイオン送出装置100について説明する。
図1は、イオン送出装置100の斜視図である。
図2は、
図1に示すII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図1に示すIII-III線に沿った断面図である。
図4は、実施形態1に係る吹出部12を外した本体筐体10の正面図である。
図5は、実施形態1に係る放電部20の斜視図である。
【0011】
イオン送出装置100は、例えば、ダクト式空気調和機1に適用される。一般に、空気調和機1は、熱交換機と、送風機と、吸込チャンバと、吹出チャンバとを備える(何れも図示略)。熱交換機と、送風機と、吸込チャンバと、吹出チャンバは、夫々ダクトで接続される。空気調和機1の各構成部材は、天井裏に設置される。風は、ダンパにより風量が調整される。風は、送風機から送られる。風量の調整は、居室の構造や吹出チャンバの設置位置に応じて行われる。風量の調整後、風は、吹出チャンバから室内に吹き出される。
【0012】
図1に示されるように、イオン送出装置100は、ダクト2の下流端部に接続される。イオン送出装置100は、壁部に配置される。壁部は、居室の壁面を構成する。壁部は、例えば、居室の天井壁である。なお、イオン送出装置100は、天井壁に限られず、側壁に配置してもよい。
【0013】
図2から
図4に示されるように、イオン送出装置100は、本体筐体10と、偶数個の放電部20とを備える。本体筐体10は、接続部11と、吹出部12とを備える。
【0014】
ダクト2は、風を流す。ダクト2は、天井裏をX軸方向に平行に延びる。ダクト2は、下流端部分において、Z軸方向に湾曲する。具体的には、ダクト2は、水平方向に延びた後、下流端部分において、下方に湾曲する。なお、
図1では、説明の便宜上、上下を逆にして記載している。
【0015】
吹出部12は、ダクト2から流入した風を吹き出す。吹出部12は、平面視にて、矩形形状を有する。具体的には、正方形形状を有する。吹出部12は、4つの辺部E1、辺部E2、辺部E3、辺部E4と、4つの角部C1、角部C2、角部C3、角部C4とを備える。吹出部12は、4つの部分S1、部分S2、部分S3、部分S4に区分される。4つの部分S1、部分S2、部分S3、部分S4は、X軸方向に延びる2つの辺部E1及び辺部E3を均等に分割し、Y軸方向に延びる2つの辺部E2及び辺部E4を均等に分割することで形成される。
【0016】
第1部分S1は、辺部E1の角部C1側部分と辺部E4の角部C1側部分とを含む正方形部分である。第2部分S2は、辺部E1の角部C2側部分と辺部E2の角部C2側部分とを含む正方形部分である。第3部分S3は、辺部E2の角部C3側部分と辺部E3の角部C3側部分とを含む正方形部分である。第4部分S4は、辺部E3の角部C4側部分と辺部E4の角部C4側部分とを含む正方形部分である。
【0017】
吹出部12は、複数の案内部121を備える。
図3に示しているように、複数の案内部121は、Z軸に対して交差角度θ1を有する。交差角度θ1は、35°から55°までの範囲の角度である。好ましくは、交差角度θ1は、45°である。複数の案内部121は、各部分において、吹出部12の対角線に対して略直交している。
【0018】
第1部分S1において、複数の案内部121の開口から流れる風は、角部C1に向かう。第2部分S2において、複数の案内部121の開口から流れる風は、角部C2に向かう。第3部分S3において、複数の案内部121の開口から流れる風は、角部C3に向かう。第4部分S4において、複数の案内部121の開口から流れる風は、角部C4に向かう。従って、複数の案内部121は、本体筐体10内の風を角部C1、角部C2、角部C3、角部C4に向けて夫々案内する。つまり、吹出部12は、多風向型吹出部である。従って、イオン送出装置100の全方位に風を送ることができる。
【0019】
接続部11は、接続板111を備える。接続板111は、矩形形状を有する。具体的には、正方形形状を有する。接続板111は、吹出部12に対向している。接続部11は、円筒形形状を有する。接続部11は、開口11aを介して接続板111に接続される。開口11aは、接続板111の中心に配置される。換言すれば、接続板111は、接続部11の開口11aから径方向の外側に向けて延びている。
【0020】
接続部11は、ダンパ13を更に備える。ダンパ13は、ダクト2の下流の風路面積を調整する。換言すれば、接続部11の風路面積を調整する。従って、ダンパ13は、本体筐体10の内部に流入する風量を調整する。
【0021】
図2から
図4に示されるように、ダンパ13は、軸部131と、弁体132とを備える。軸部131は、ダクト2の下流の風路を直径方向に跨っている。具体的には、軸部131は、接続部11の第1方向D1方向において、一方側端部と他方側端部とに固定されている。第1方向D1は、X軸方向に平行で、送風機から本体筐体10へ向かう方向を示す。従って、第1方向D1は、軸部131の延びる方向を示す。
【0022】
弁体132は、円形状を有する。弁体132は、接続部11の開口11aと略同じ直径である。閉弁時において、弁体132の第2方向D2方向一方側の半部分は、半円形形状を有する。閉弁時において、弁体132の第2方向D2方向他方側の半部分は、半円形形状を有する。
【0023】
図2に二点鎖線で示すように、弁体132は、軸部131の回りに第2方向D2に広げたとき、閉弁状態である。弁体132の両方の半部分は、Z軸方向に折り曲げられたとき、開弁状態である。
図2に示しているように、本実施形態1では、弁体132は、ダクト2の下流側に向かって開弁状態とされている。
【0024】
次に、放電部20について、説明する。本体筐体10の内部には、偶数個の放電部20が配置される。具体的には、4つの放電部20が、配置されている。偶数個の放電部20は、正イオンと負イオンとを生成する。
【0025】
図5に示しているように、放電部20は、回路基板(図示略)の上に形成された1対の電極を有する。1対の電極は、正電極201及び負電極202である。正電極201及び負電極202の周囲に、正電極201及び負電極202に対する接触回避のため、1対の保護部材(図示略)を設けても良い。放電部20の構成については、公知の技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0026】
放電部20は、放電因子を発生可能である。放電因子としては、例えばイオンが挙げられる。イオンは、正イオン(例えば、H+(H2O)m(mは任意の整数))又は負イオン(例えば、O2
-(H2O)n(nは任意の整数))又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
放電部20は、正イオン及び負イオンを発生する。放電部20の正電極201及び負電極202は、例えば、ブラシ状の電極である。1対の正電極201及び負電極202は、回路基板に接続される。高電圧が印加された1対の正電極201及び負電極202は、コロナを発生する。その結果、1対の正電極201及び負電極202の各々は、放電して正イオン及び負イオンを発生する。
【0028】
偶数個の放電部20は、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置される。従って、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置されていない場合に比べて、正イオンと負イオンの濃度のばらつきを回避することができる。その結果、イオンバランスが向上する。この点は、後述の検証実験により、実証されている。
【0029】
図4に示しているように、4つの放電部20は、接続部11の開口11aに沿って配置される。4つの放電部20のうち2つの放電部20は、第1方向D1に対向する。第1方向D1は、軸部131の延びる方向を示す。4つの放電部20のうち2つの放電部20は、軸部131の延長線上において軸部131の第1方向D1の中心131aに対して対称に配置される。
【0030】
4つの放電部20のうち他の2つの放電部20は、第2方向D2に対向する。第2方向D2は、第1方向D1に直交する。4つの放電部20のうち他の2つの放電部20は、軸部131の第1方向D1の中心131aに対して対称に配置される。従って、少なくとも、4つの放電部20が、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置されていない場合に比べて、正イオンと負イオンの濃度のばらつきを更に回避することができる。その結果、イオンバランスが向上する。つまり、空気清浄効果を向上できる。この点は、後述の検証実験により、実証されている。
【0031】
放電部20の各々において、1対の正電極201及び負電極202は、接続部11の開口11aから開口11aの中心方向に向かって突出する。換言すれば、1対の正電極201及び負電極202は、ダクト2の内面に対して突出している。従って、正電極201及び負電極202が、ダクト2からの風に確実に晒される。その結果、イオン濃度を増加できる。
【0032】
4つの放電部20は、接続部11の開口11aに沿って等間隔に配置されている。従って、接続部11の開口11aに沿って隣り合う放電部20の間隔を確保することができる。その結果、正イオンと負イオンとの混合を抑制することができる。また、正電極201及び負電極202は、接続部11の開口11aに沿って交互に配置される。その結果、正イオンと負イオンとの混合を一層抑制することができる。よって、空気清浄効果を向上することができる。
【0033】
(実施形態2)
次に、
図6を参照して、本発明の実施形態2に係るイオン送出装置100Aについて説明する。実施形態1のイオン送出装置100は、4つの放電部20を備える。4つの放電部20のうち2つの放電部20は、第1方向D1に対向する。一方、実施形態2のイオン送出装置100Aは、4つの放電部20を備える。4つの放電部20のうち2つの放電部20は、軸部131の延びる方向に鋭角θ2に交差する第3方向D3に対向する。
図6は、実施形態2に係る吹出部12を外した本体筐体10Aの正面図である。
【0034】
図6に示しているように、イオン送出装置100Aは、4つの放電部20を備える。4つの放電部のうち2つの放電部20は、第3方向D3に対向する。第3方向D3は、軸部131の延びる方向に鋭角θ2で交差する。4つの放電部のうち2つの放電部20は、軸部131の第1方向D1の中心131aに対して対称に配置される。
【0035】
4つの放電部20のうち他の2つの放電部20は、第4方向D4に対向する。第4方向D4は、第1方向D1及び第3方向D3に交差する。4つの放電部20のうち他の2つの放電部20は、軸部131の第1方向D1の中心131aに対して対称に配置される。つまり、4つの放電部20は、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置される。従って、少なくとも、4つの放電部20が、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置されていない場合に比べて、正イオンと負イオンの濃度のばらつきが抑制される。その結果、イオンバランスが向上する。この点は、後述の検証実験により、実証されている。
【0036】
(検証実験)
次に、効果を検証する検証実験について説明する。
図7~
図11を参照して、第1イオンバランス実験について説明する。
図7は、第1イオンバランス実験の実験装置の構成図である。
図8は、第1イオンバランス実験の計測条件の説明図である。
図9は、計測対象M1であるイオン送出装置100とセンサとの位置関係を示す図である。
図10は、別の計測対象M2であるイオン送出装置100Aとセンサとの位置関係を示す図である。
図11は、第1イオンバランス実験の実験結果である。なお、計測対象M1は、イオン送出装置100と同じ構成であるたため、イオン送出装置100と同じ符号を用いて説明する。また、別の計測対象M2は、イオン送出装置100Aと同じ構成であるため、イオン送出装置100Aと同じ符号を用いて説明する。
【0037】
図7及び
図8に示しているように、第1イオンバランス実験は、計測対象M1及び計測対象M2に対して、第1実験装置L1を用いて行う。第1イオンバランス実験では、計測対象に近接する位置において、イオン濃度を計測する。イオン濃度は、測定位置が異なる3か所で夫々計測する。イオン濃度は、イオンカウンターMY1210シリーズ(テクノニクス製)のイオン計測器で計測する。
【0038】
第1実験装置L1は、基台50と、イオン計測器60とを備える。
図7に示しているように、基台50は、1対のフレーム51を支持する。1対のフレーム51は、床から所定間隔離隔している。1対のフレーム51は、イオン送出装置100の測定時、イオン送出装置100を下方から保持する。
【0039】
図8に示しているように、イオン計測器60は、吹出部12の外縁部近傍に配置される。具体的には、測定位置Aは、角部C2の近傍位置であり、測定位置Bは、角部C1の近傍位置である。測定位置Cは、辺部E1の第1方向D1の中心の近傍位置である。測定位置Aのイオン計測器60は、部分S2からの風に対向する。測定位置Bのイオン計測器60は、部分S1からの風に対向する。測定位置Cのイオン計測器60は、部分S1からの風の一部と、部分S2からの風の一部とに対向する。
【0040】
図9に示しているように、軸部131は、第1方向D1に沿って延びる。なお、ダクト2は、軸部131と同様に、第1方向D1に沿って延びる。計測対象M1を測定する場合、測定位置Cのイオン計測器60は、放電部20に接近している。2つの放電部20は、測定位置Aのイオン計測器60に対向する風の経路から外れている。また、別の2つの放電部20は、測定位置Bのイオン計測器60に対向する風の経路から外れている。
【0041】
図10に示しているように、軸部131は、第1方向D1に沿って延びる。なお、ダクト2は、軸部131と同様に、第1方向D1に沿って延びる。計測対象M2を測定する場合、2つの放電部20は、測定位置Aのイオン計測器60に対向する風の経路上に配置されている。換言すれば、放電部20は、第4方向D4の延長線上に配置される。また、別の2つの放電部20は、測定位置Bのイオン計測器60に対向する風の経路上に配置されている。換言すれば、放電部20は、第3方向D3の延長線上に配置される。
【0042】
次に、第1イオンバランス実験の実験結果について、説明する。正イオン及び負イオンは、1cm3に存在するイオン数である。イオンバランスは、負イオン数を正イオン数で除算した値である。
【0043】
図11に示しているように、計測対象M1及び計測対象M2のイオンバランスは、2.0よりも低く、良好な値である。イオンバランスの値が2.0よりも低い場合、高い空気清浄効果がある。
【0044】
計測対象M1及び計測対象M2の何れも、風の流速が高い測定位置Aのイオン濃度が、風の流速が低い測定位置Bのイオン濃度よりも高い。また、風に対向する部分、つまり、測定位置Aと測定位置Bでは、風に対向しない部分、つまり、測定位置Cよりもイオン濃度が高い。従って、吹出口12の近傍位置では、十字状レイアウトの計測対象M1とX字状レイアウトの計測対象M2の何れもが高い空気清浄効果を有している。
【0045】
次に、
図12~
図14を参照して、第2イオンバランス実験について説明する。
図12は、第2イオンバランス実験の実験装置の構成図である。
図13は、第2イオンバランス実験の実験結果である。
図14は、第2イオンバランス実験の実験結果のグラフである。
【0046】
第2イオンバランス実験は、計測対象M1及び計測対象M2に対して、第2実験装置L2を用いて行う。第2イオンバランス実験では、計測対象から離隔する位置において、イオン濃度を計測する。イオン濃度は、測定位置が水平方向に異なる6か所で計測する。イオン計測器60は、第1イオンバランス実験で使用したイオン計測器と同じである。
【0047】
図12に示しているように、イオン計測器60は、吹出部12から離隔した位置に配置される。具体的には、イオン計測器60は、辺部E1の第1方向D1の中心から第2方向D2に50cm離隔し、Z軸方向(上方)に35cm離隔した位置に配置される。そして、イオン計測器60は、第1方向D1の反対方向に向けて、10cm間隔で50cm離隔するまで移動する。イオン計測器60は、10cm間隔で移動する毎にイオンバランスを計測する。
【0048】
次に、
図13及び
図14を参照して、第2イオンバランス実験の実験結果について、説明する。
図13及び
図14に示しているように、計測対象M1のイオンバランスは、計測対象M2のイオンバランスよりも、平均値と、最大値と、最小値の点で1に近い値である。特に、イオン計測器60が第1方向D1の反対方向に50cmまで移動されたとき、計測対象M1と計測対象M2とのイオンバランスの差が顕著である。つまり、計測対象M1と計測対象M2とのイオンバランス性能上の差は、計測対象から離隔するほど大きい。
【0049】
計測対象M1のイオンバランスの標準偏差は、0.25であり、計測対象M2のイオンバランスの標準偏差は、0.40である。従って、計測対象M1のイオンバランスは、計測対象M2のイオンバランスよりも安定している。よって、計測対象M1のイオンバランスは、計測対象M2よりも安定して1に近い値である。
【0050】
次に、第1イオン濃度実験及び第2イオン濃度実験の実験結果について説明する。計測対象M1について、等温状態のイオン濃度、冷房状態のイオン濃度、冷房比率、風量比率を測定した。8台相当の計測対象M1を設置した。イオン濃度の測定高さは、床面から、0.8m相当、1.2m相当、1.5m相当である。具体的には、1面(11m×7.7m)に4つの計測対象M1を設置した。各測定高さについて、計測対象M1から均一ポイントを10点選別し、測定している。
【0051】
第1イオン濃度実験の実験結果を説明する。第1イオン濃度実験において、1台当たりの風量は、毎時120m
3である。
図15に示しているように、等温状態の平均イオン濃度は、11762個/cm
3であり、最低イオン濃度は、6607個/cm
3である。冷房状態の平均イオン濃度は、21655個/cm
3であり、最低イオン濃度は、20000個/cm
3である。等温状態の0.8m相当を除き、イオン濃度は、7000個/cm
3を超えている。等温状態のイオン濃度に対する冷房状態のイオン濃度の比率である冷房比率の平均は、184%である。従って、計測対象M1は、イオン濃度において、空気清浄効果がある。
【0052】
第2イオン濃度実験の実験結果を説明する。第2イオン濃度実験において、1台当たりの風量は、毎時240m
3である。
図16に示しているように、冷房状態の平均イオン濃度は、37571個/cm
3であり、最低イオン濃度は、33714個/cm
3である。毎時120m
3の風量のイオン濃度に対する毎時240m
3の風量のイオン濃度の比率である風量比率の平均は、174%である。従って、イオン送出装置100は、イオン濃度において、空気清浄効果がある。
【0053】
(実施形態3)
次に、
図17から
図19を参照して、本発明の実施形態3に係るイオン送出装置100Bについて説明する。
図17は、イオン送出装置100Bの斜視図である。
図18は、
図17に示すXVIII-XVIII線に沿った断面図である。
図19は、
図17に示すXIX-XIX線に沿った断面図である。実施形態1のイオン送出装置100は、4つの放電部20を備える。放電部20は、十字状に配置される。吹出部12は、多風向型吹出部である。一方、実施形態2のイオン送出装置100Bは、4つの放電部20を備える。放電部20は、十字状に配置される。吹出部12Bは、多層コーン型吹出部である。
【0054】
図17から
図19に示しているように、イオン送出装置100Bは、本体筐体10Bと、放電部20とを備える。本体筐体10Bは、直方体形状を有する。本体筐体10Bは、接続部11と、吹出部12Bとを備える。接続部11は、ダクト2に接続される。吹出部12Bは、ダクト2からの風を本体筐体10Bの外部に吹き出す。
【0055】
吹出部12Bは、矩形形状を有する。具体的には、吹出部12Bは、長方形形状である。吹出部12Bは、第1方向D1に延びる1対の長辺部E5と長辺部E7を有している。吹出部12Bは、第2方向D2に延びる1対の短辺部E6と短辺部E8を有している。短辺部E8と長辺部E5の接続部に、角部C5が配置される。長辺部E5と短辺部E6の接続部に、角部C6が配置される。短辺部E6と長辺部E7の接続部に、角部C7が配置される。長辺部E7と短辺部E8の接続部に、角部C8が配置される。
【0056】
吹出部12Bは、風向変更板122と、複数の案内板121Bとを備える。風向変更板122は、接続部11の開口11aに対向している。複数の案内板121Bは、各々に対応した辺部に沿って配置される。従って、長辺部E5に対応した案内板121Bにおいて、開口から流れる風は、長辺部E5に向かう。短辺部E6に対応した案内板121Bにおいて、開口から流れる風は、短辺部E6に向かう。長辺部E7に対応した案内板121Bにおいて、開口から流れる風は、長辺部E7に向かう。短辺部E8に対応した案内板121Bにおいて、開口から流れる風は、短辺部E8に向かう。
【0057】
4つの放電部20は、各辺部の中央に対応して配置される。長辺部E5及び長辺部E7には、本体筐体10Bの側面から内方に張り出した張出部14が夫々設けられている。張出部14は、接続部11の開口11aに対向する面を有する。長辺部E5及び長辺部E7に対応した放電部20は、接続部11の開口11aに対向する面に取り付けられる。短辺部E6及び短辺部E8に対応した放電部20は、本体筐体10Bの側面に取り付けられる。
【0058】
4つの放電部20は、正電極201及び負電極202を備える。正電極201及び負電極202は、開口11aの中心方向に向かって突出する。4つの放電部20は、接続部11の開口11aから離隔して配置される。
【0059】
風は、開口11aから本体筐体10Bの内部に流入する。流入した風は、風向変更板122に向かって進行する。流入した風は、風向変更板122によって水平方向に進行方向が変更される。進行方向が変更される前又は後において、放電部20により風にイオンが供給される。イオンが供給された風は、複数の案内部121Bにより4つの辺部に案内される。風は、案内部121Bの開口から各辺部に直交する方向に放出される。正イオンと負イオンとを生成する偶数個の放電部20を備える。偶数個の放電部20は、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置される。従って、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置されていない場合に比べて、正イオンと負イオンの濃度のばらつきを回避することができる。その結果、イオンバランスが向上する。この点は、前述の検証実験により、推測される。また、2つの放電部20は、ダンパ13の軸部131の延長線上に配置される必要はなく、少なくとも、偶数個の放電部20は、ダンパ13の軸部131に対して対称に配置されればよい。
【0060】
(実施形態4)
次に、
図20を参照して、本発明の実施形態4係るイオン送出装置100Cについて説明する。
図20は、実施形態4に係るイオン送出装置100Cの分解斜視図である。
【0061】
イオン送出装置100Cは、本体筐体10Cと、偶数個の放電部20とを備える。本体筐体10は、接続部11と、吹出部12と、パネル30とを備える。パネル30は、本体筐体10Cの内部に取り付けられる。具体的には、パネル30は、接続板111に固定される。
【0062】
パネル30は、開口30aを有する。開口30aは、接続部11の開口11aと略同じ径を有する。パネル30は、本体筐体10Cの内部に取り付けられる。具体的には、パネル30は、接続板111の開口(開口11a)に開口30aを重ねて固定する。
【0063】
パネル30は、4つの取付金具31を備える。4つの取付金具31は、開口30aの外周縁部に沿って配置される。本実施形態では、4つの取付金具31は、90°毎に配置されている。
【0064】
取付金具31は、放電部20を固定する。従って、パネル30に、予め、4つの放電部20を取り付けることができる。その結果、メインテナンス時、4つの放電部20が取り付けられたパネル30を本体筐体10Cの内部に簡単に取り付けられる。換言すれば、放電部20を個別に取り付ける場合に比べて、手間を省くことができる。よって、メインテナンス時の作業性を向上できる。
【0065】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の個数等は、図面作成の都合から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、実施形態では、本体筐体に4つの放電部20を配置した例を説明したが、これに限られない。少なくとも、放電部20が偶数個であればよく、2つの放電部20でも良い。2つの放電部20の場合、軸部131に対して線対称に配置される場合の他に、軸部131の延長線上に配置される場合を含む。また、放電部20が6個以上であっても良い。
【0067】
また、実施形態では、4隅に向けて吹き出す多風向型吹出部と4辺に向けて吹き出す多層コーン型吹出部の例を説明したが、これに限られない。4辺に向けて吹き出す多風向型吹出部に適用しても良く、4隅に向けて吹き出す多層コーン型吹出部に適用しても良い。また、隅に向けて吹き出す部分と辺に向けて吹き出す部分とを両方備えた吹出部に適用することも可能である。
【0068】
また、実施形態では、弁体132が閉作動した状態、換言すれば、開口11aが略全開の例を説明したが、これに限られない。ダンパ13が、所定の風量調整を行う場合であっても、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、イオン送出装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
2 ダクト
10,10A,10B 本体筐体
11 接続部
11a 開口
12 吹出部
13,131 ダンパ
30 パネル
100,100A,100B,100C イオン送出装置
121,121A,121B 案内板
122 風向変更板
201 正電極
202 負電極