(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018274
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】位相変調素子、プロジェクター、およびヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20240201BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240201BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240201BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240201BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
G03B21/00 D
H04N5/64 501D
H04N5/64 511A
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121500
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】山田 文香
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H249
2K203
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA17
2H149AB01
2H149DA01
2H149DA13
2H199CA22
2H199CA42
2H199CA53
2H199CA65
2H249AA04
2H249AA08
2H249AA14
2H249AA18
2H249AA42
2H249AA60
2H249AA64
2K203FA03
2K203FA22
2K203FA25
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA54
2K203FA62
2K203FA82
2K203FB04
2K203GC01
2K203HA62
2K203MA01
(57)【要約】
【課題】メタサーフェスの界面で反射される光を低減することができる光変調素子を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板に設けられた複数の第1柱状部を有する第1メタサーフェスと、を有し、前記複数の第1柱状部の各々は、金属で構成され、前記複数の第1柱状部の各々の最も前記基板とは反対側を第1位置、前記第1位置と前記基板との間を第2位置とし、前記複数の第1柱状部の各々の前記基板との接触面の面積は、前記第2位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも大きく、かつ、前記第1位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積は、前記第2位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも小さい、位相変調素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた複数の第1柱状部を有する第1メタサーフェスと、
を有し、
前記複数の第1柱状部の各々は、金属で構成され、
前記複数の第1柱状部の各々の最も前記基板とは反対側を第1位置、前記第1位置と前記基板との間を第2位置とし、
前記複数の第1柱状部の各々の前記基板との接触面の面積は、前記第2位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも大きく、かつ、前記第1位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積は、前記第2位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも小さい、位相変調素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の第1柱状部の各々の断面積は、前記基板から前記第1位置に向けて漸減している、位相変調素子。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1メタサーフェスで位相が変調された光を、前記第1メタサーフェスに向けて反射させる反射部を有する、位相変調素子。
【請求項4】
請求項1において、
前記基板の前記複数の第1柱状部とは反対側に設けられた複数の第2柱状部を有する第2メタサーフェスを有し、
前記複数の第2柱状部の各々は、金属で構成され、
前記複数の第2柱状部の各々の最も前記基板とは反対側を第3位置、前記第3位置と前記基板との間を第4位置とし、
前記複数の第2柱状部の各々の前記基板との接触面の面積は、前記第4位置における前記複数の第2柱状部の各々の断面積よりも大きく、かつ、前記第3位置における前記複数の第2柱状部の各々の断面積は、前記第4位置における前記複数の第2柱状部の各々の断面積よりも小さい、位相変調素子。
【請求項5】
請求項1において、
前記基板は、レンズである、位相変調素子。
【請求項6】
請求項1において、
前記基板は、絶縁性である、位相変調素子。
【請求項7】
請求項1において、
前記複数の第1柱状部の各々を被覆する被覆層を有し、
前記被覆層の材質は、誘電体である、位相変調素子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の位相変調素子を有する、プロジェクター。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の位相変調素子を有する、ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相変調素子、プロジェクター、およびヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアルは、光の波長よりも小さい人工構造物で構成され、自然界にない透磁率を得られるため、負の屈折率など従来の光学材料にはない機能を有する。このようなメタマテリアルのうち構造体の周期配列を二次元的に配置した人工表面としてメタサーフェスが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板と、基板上に配置されメタサーフェスを構成する複数のナノ構造体と、を具備し、ナノ構造体の位置に依存して変化する光位相シフトをもたらすメタレンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなメタレンズでは、メタサーフェスの界面で反射される光を低減することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位相変調素子の一態様は、
基板と、
前記基板に設けられた複数の第1柱状部を有する第1メタサーフェスと、
を有し、
前記複数の第1柱状部の各々は、金属で構成され、
前記複数の第1柱状部の各々の最も前記基板とは反対側を第1位置、前記第1位置と前記基板との間を第2位置とし、
前記複数の第1柱状部の各々の前記基板との接触面の面積は、前記第2位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも大きく、かつ、前記第1位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積は、前記第2位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも小さい。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記位相変調素子の一態様を有する。
【0008】
本発明に係るヘッドマウントディスプレイの一態様は、
前記位相変調素子の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図2】第1実施形態に係る位相変調素子を模式的に示す平面図。
【
図3】第1実施形態に係る位相変調素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図4】第1実施形態の第1変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図5】第1実施形態の第2変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図6】第1実施形態の第2変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図7】第1実施形態の第3変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図8】第1実施形態の第4変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図9】第1実施形態の第4変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図10】第1実施形態の第4変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図11】第1実施形態の第4変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図12】第1実施形態の第5変形例に係る位相変調素子を模式的に示す平面図。
【
図13】第1実施形態の第5変形例に係る位相変調素子を模式的に示す平面図。
【
図14】第1実施形態の第5変形例に係る位相変調素子を模式的に示す平面図。
【
図15】第2実施形態に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図16】第2実施形態に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図17】第2実施形態に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図18】第2実施形態の変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図19】第2実施形態の変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図20】第2実施形態の変形例に係る位相変調素子を模式的に示す断面図。
【
図21】第3実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【
図22】第4実施形態に係るヘッドマウントディスプレイを模式的に示す斜視図。
【
図23】第4実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの像形成装置および導光装置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1. 第1実施形態
1.1. 位相変調素子
まず、第1実施形態に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る位相変調素子100を模式的に示す断面図である。
図2は、第1実施形態に係る位相変調素子100を模式的に示す平面図である。なお、
図1は、
図2のI-I線断面図である。
【0012】
位相変調素子100は、
図1に示すように、例えば、基板10と、複数の第1柱状部20を有する第1メタサーフェス20aと、を有している。
【0013】
基板10の形状は、例えば、直方体である。基板10は、例えば、第1主面12と、第2主面14と、を有している。図示の例では、第1主面12および第2主面14は、互いに平行である。
【0014】
基板10は、入射した光を透過させる。基板10は、絶縁性である。基板10の材質は、例えば、酸化シリコン(SiO2)である。基板10の材質は、不純物が意図的にドープされていないシリコン(Si)基板であってもよい。
【0015】
第1柱状部20は、基板10に支持されている。第1柱状部20は、基板10の第1主面12に設けられている。第1柱状部20は、基板10から第1主面12の垂線Q方向に突出している。図示の例では、第1主面12は、平坦な面である。第1柱状部20は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。垂線Q方向からみて、第1柱状部20の形状は、例えば、円、四角形などの多角形ある。
図2に示す例
では、第1柱状部20の形状は、例えば、円である。垂線Q方向は、基板10の垂線方向である。
【0016】
第1柱状部20は、
図1に示すように、例えば、第1面22と、第2面24と、第1側面26と、を有している。
【0017】
第1柱状部20の第1面22は、基板10側の面である。第1面22は、第1柱状部20の基板10に最も近い面である。第1面22は、第1主面12と接している接触面である。基板10は、第1柱状部20の第1面22側に設けられている。図示の例では、第1面22は、第2面24および第1主面12と平行である。
【0018】
第1柱状部20の第2面24は、第1柱状部20の第1面22とは反対側の面である。第2面24は、第1柱状部20の基板10とは反対側の面である。第2面24は、第1柱状部20の基板10から最も遠い面である。第2面24の面積は、第1面22の面積よりも小さい。なお、図示はしないが、第2面24は、曲面であってもよい。
【0019】
第1柱状部20の第1側面26は、第1面22と第2面24とを接続している。第1側面26の第2面24に対する角度αは、例えば、90°より大きく、120°以下である。角度αが120°以下であれば、隣り合う第1柱状部20を互いに離隔させることができる。図示の例では、第1柱状部20は、台形の断面形状を有している。第1柱状部20
は、テーパー形状を有している。
【0020】
第1柱状部20の最も基板10とは反対側を第1位置P1とする。図示の例では、第1位置P1には、第2面24が位置している。第1柱状部20の第1位置P1と基板10との間を第2位置P2とする。図示の例では、第1位置P1と第2位置P2との間の距離、および基板10と第2位置P2との間の距離は、互いに等しい。図示の例では、第1位置P1は、垂線Q方向において、第1柱状部20の最も基板10とは反対側の位置である。第2位置P2は、垂線Q方向において、第1位置P1と基板10との間の位置である。
【0021】
第1柱状部20の第1面22の面積S1は、第2位置P2における第1柱状部20の断面積S3よりも大きい。第1位置P1における第1柱状部20の断面積S2は、第2位置P2における第1柱状部20の断面積S3よりも小さい。第1柱状部20の断面積は、基板10から第1位置P1に向けて漸減している。図示の例では、面積S1は、垂線Q方向からみて、断面積S3よりも大きい。断面積S2は、断面積S3よりも小さい。図示の例では、断面積S2は、第2面24の面積と同じ大きさである。
【0022】
なお、「第1柱状部20の断面積」とは、第1柱状部20の中心線C1と直交する平面で切断した断面積である。図示の例では、中心線C1は、第1面22の中心と第2面24の中心とを通る直線であり、垂線Qと平行である。
【0023】
第1柱状部20の高さは、10nm以上1μm以下であり、好ましくは100nm以上900nm以下であり、より好ましくは300nm以上800nm以下である。第1柱状部20の高さは、例えば、第1柱状部20の径よりも大きい。
【0024】
なお、「第1柱状部20の高さ」とは、第1柱状部20の中心線C1方向の大きさである。このことは、後述する第2柱状部30において同様である。
【0025】
第1柱状部20の第2面24における径は、10nm以上1μm以下であり、好ましくは100nm以上800nm以下であり、より好ましくは200nm以上700nm以下である。第1柱状部20の径は、第2面24から第1面22に向けて漸増している。
【0026】
なお、「第1柱状部20の径」とは、中心線C1方向からみて、第1柱状部20の形状が円の場合は、直径であり、第1柱状部20の形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、第1柱状部20の径は、中心線C1方向からみて、第1柱状部20の形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、第1柱状部20の形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。このことは、後述する第2柱状部30において同様である。
【0027】
第1柱状部20は、複数設けられている。図示の例では、複数の第1柱状部20の形状および大きさは、互いに同じである。複数の第1柱状部20は、互いに離隔している。図示の例では、隣り合う第1柱状部20の間は、空隙である。隣り合う第1柱状部20の間隔は、10nm以上1μm以下であり、好ましくは100nm以上800nm以下であり、より好ましくは200nm以上700nm以下である。
【0028】
複数の第1柱状部20は、垂線Q方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の第1柱状部20は、垂線Q方向からみて、例えば、正三角格子状、正方格子状に配列されている。
図2に示す例では、複数の第1柱状部20は、正方格子状に配列されている。
【0029】
なお、「第1柱状部20のピッチ」とは、所定の方向に隣り合う第1柱状部20の中心間の距離である。「第1柱状部20の中心」とは、中心線C1方向からみて、第1柱状部20の形状が円の場合は、該円の中心であり、第1柱状部20の形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、第1柱状部20の中心は、中心線C1方向からみて、第1柱状部20の形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、第1柱状部20の形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。このことは、後述する第2柱状部30において同様である。
【0030】
第1柱状部20は、金属で構成されている。第1柱状部20の材質は、例えば、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、またはこれらの合金である。
【0031】
複数の第1柱状部20は、
図1に示すように、第1メタサーフェス20aを構成している。第1メタサーフェス20aは、例えば、複数の第1柱状部20と、隣り合う第1柱状部20の間の空隙と、で構成されている。
【0032】
図示の例では、基板10側から第1メタサーフェス20aに光が入射する。第1メタサーフェス20aは、第1面22側から入射した光の位相を変調させ、変調された位相の光を第2面24側から出射する。
【0033】
第1メタサーフェス20aは、集光レンズの機能を有していてもよいし、凹レンズの機能を有していてもよいし、集光点がずれるオフアクシスレンズの機能を有していてもよいし、偏光の機能を有していてもよい。
【0034】
位相変調素子100は、第1メタサーフェス20aに1種類の色光が入射され、変調された位相の色光を出射する単色用の位相変調素子であってもよい。この場合、第1メタサーフェス20aは、入射した光の伝搬距離の差によって位相遅延が生じる非共鳴型のメタサーフェスであってもよい。
【0035】
または、位相変調素子100は、第1メタサーフェス20aに複数種類の色光が入射され、変調された位相の色光を出射する複数波長の色収差補正素子であってもよい。この場合、第1メタサーフェス20aは、入射した光によって第1柱状部20の自由電子の振動
が励起され、励起された振動がプラズモン共鳴することによって、変調された位相の光を出射する共鳴型のメタサーフェスであってもよい。共鳴型のメタサーフェスは、非共鳴型のメタサーフェスに比べて、第1柱状部20の高さを小さくすることができるため、作製が容易である。
【0036】
1.2. 位相変調素子の製造方法
次に、第1実施形態に係る位相変調素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図3は、第1実施形態に係る位相変調素子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0037】
図3に示すように、基板10に、金属層2を形成する。金属層2は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって形成される。
【0038】
図1に示すように、金属層2をパターニングして、複数の第1柱状部20を形成する。パターニングは、例えば、所定のパターンを持つ型を金属層2に押し付けて、金属層2にパターンを転写させるナノインプリント法によって行われる。ナノインプリント法は、大面積を一括でパターニングすることができる。なお、パターニングは、ナノインプリント法に限定されない。パターニングは、例えば、集束イオンビーム (FIB)、電子ビーム(EB)を用いて行われてもよい。
【0039】
以上の工程により、位相変調素子100を製造することができる。
【0040】
1.3. 作用効果
位相変調素子100では、基板10と、基板10に設けられた複数の第1柱状部20を有する第1メタサーフェス20aと、を有する。複数の第1柱状部20の各々は、金属で構成されている。複数の第1柱状部20の各々の最も基板10とは反対側を第1位置P1、第1位置P1と基板10との間を第2位置P2とする。複数の第1柱状部20の各々の基板10との接触面としての第1面22の面積S1は、第2位置P2における複数の第1柱状部20の各々の断面積S3よりも大きい。第1位置P1における複数の第1柱状部20の各々の断面積S2は、第2位置P2における複数の第1柱状部20の各々の断面積S3よりも小さい。
【0041】
そのため、位相変調素子100では、例えば第1柱状部の断面積がS3で一定である場合に比べて、第1面22における第1メタサーフェス20aの面内方向の平均屈折率を高く、かつ第1位置P1における第1メタサーフェス20aの面内方向の平均屈折率を低くすることができる。これにより、第1面22における第1メタサーフェス20aの平均屈折率を、基板10の屈折率に近づけることができ、第1位置P1における第1メタサーフェス20aの平均屈折率を、空気の屈折率に近づけることができる。したがって、第1メタサーフェス20aの基板10との界面、および第1メタサーフェス20aの空気との界面における反射を低減することができる。このように、第1メタサーフェス20aの界面で反射される光を低減することができる。その結果、第1メタサーフェス20aによって位相の変調を受けない光、および位相の変調を受けても迷光などのノイズとなる光を低減することでき、光の利用効率を高めることができる。
【0042】
なお、「面内方向」とは、中心線C1方向と直交する方向のことである。また、隣り合う第1柱状部20の間は、空隙であるため、第1面22における第1メタサーフェス20aの面内方向の平均屈折率は、基板10の屈折率よりも低くなる。そのため、上記のように、第1面22における第1メタサーフェス20aの面内方向の平均屈折率を高くすることが望まれる。
【0043】
さらに、位相変調素子100では、第1柱状部20は、金属で構成されている。金属における光の伝搬においては、誘電体内の光の伝搬と異なり、第1柱状部20における光の入射では自由電子を介したプラズモン伝搬モードが生じる。位相変調素子100では、例えば第1柱状部が誘電体で構成されている場合に比べて、第1柱状部20の高さを小さくしても、位相遅延を生じさせることができる。これにより、第1柱状部20を容易に形成することができる。
【0044】
さらに、位相変調素子100では、ナノインプリント法によって金属層2がパターニングされる場合に、ナノインプリント法で用いられる型の離型を、第1柱状部20の形状を崩さずに容易に行うことができる。
【0045】
位相変調素子100では、複数の第1柱状部20の各々の断面積は、基板10から第1位置P1に向けて漸減している。そのため、位相変調素子100では、第1メタサーフェス20aの面内方向の平均屈折率を、基板10から第1位置P1に向かうにつれて徐々に低くすることができる。これにより、第1メタサーフェス20aにおける意図せぬ反射を低減することができる。
【0046】
位相変調素子100では、基板10は、絶縁性である。そのため、位相変調素子100では、第1柱状部20の自由電子が基板10に流れることを抑制することができる。これは、特に、第1メタサーフェス20aが共鳴型である場合に有効である。
【0047】
1.4. 位相変調素子の変形例
1.4.1. 第1変形例
次に、第1実施形態の第1変形例に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態の第1変形例に係る位相変調素子110を模式的に示す断面図である。
【0048】
以下、第1実施形態の第1変形例に係る位相変調素子110において、上述した第1実施形態に係る位相変調素子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する第1実施形態の第2~第5変形例に係る位相変調素子において同様である。
【0049】
上述した位相変調素子100では、
図1に示すように、基板10に光が入射し、基板10を透過した光が第1メタサーフェス20aに入射した。
【0050】
これに対し、位相変調素子110では、
図4に示すように、第1メタサーフェス20aに光が入射し、第1メタサーフェス20aで変調された光が基板10を透過して出射される。
【0051】
位相変調素子110では、上述した位相変調素子100と同様に、第1メタサーフェス20aの界面における反射を低減することができる。
【0052】
1.4.2. 第2変形例
次に、第1実施形態の第2変形例に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図5は、第1実施形態の第2変形例に係る位相変調素子120を模式的に示す断面図である。
【0053】
位相変調素子110では、
図5に示すように、複数の第2柱状部30を有する第2メタサーフェス30aを有している点において、上述した位相変調素子100と異なる。
【0054】
第2柱状部30は、基板10の第1柱状部20とは反対側に設けられている。第2柱状
部30は、基板10の第2主面14に設けられている。第2柱状部30は、例えば、第3面32と、第4面34と、第2側面36と、を有している。
【0055】
第2柱状部30の第3面32は、第2柱状部30の基板10側の面である。第3面32は、第2柱状部30の基板10に最も近い面である。図示の例では、第3面32は、第4面34および第2主面14と平行である。第3面32は、第2主面14と接している接触面である。
【0056】
第2柱状部30の第4面34は、第2柱状部30の第3面32とは反対側の面である。第4面34は、第2柱状部30の基板10とは反対側の面である。第4面34は、第2柱状部30の基板10から最も遠い面である。垂線Q方向からみて、第4面34の面積は、第3面32の面積よりも小さい。なお、図示はしないが、第4面34は、曲面であってもよい。
【0057】
第2柱状部30の第2側面36は、第3面32と第4面34とを接続している。第2側面36の第4面34に対する角度βは、例えば、90°より大きく、120°以下である。角度βが120°以下であれば、隣り合う第2柱状部30を互いに離隔させることができる。角度βは、角度αと同じであってもよいし、異なっていてもよい。図示の例では、第2柱状部30は、台形の断面形状を有している。第2柱状部30は、テーパー形状を有している。
【0058】
第2柱状部30の最も基板10とは反対側を第3位置P3とする。図示の例では、第3位置P3には、第4面34が位置している。第2柱状部30の第3位置P3と基板10との間を第4位置P4とする。図示の例では、第3位置P3と基板10との間の距離、および第4位置P4と基板10との間の距離は、互いに等しい。
【0059】
第2柱状部30の第3面32の面積S4は、第4位置P4における第2柱状部30の断面積S6よりも大きい。第3位置P3における第2柱状部30の断面積S5は、第4位置P4における第2柱状部30の断面積S6よりも小さい。第2柱状部30の断面積は、基板10から第3位置P3に向けて漸減している。
【0060】
なお、「第2柱状部30の断面積」とは、第2柱状部30の中心線C2と直交する平面で切断した断面積である。図示の例では、中心線C2は、第3面32の中心と第4面34の中心とを通る直線であり、垂線Qと平行である。
【0061】
第2柱状部30の高さは、10nm以上1μm以下であり、好ましくは100nm以上900nm以下であり、より好ましくは300nm以上800nm以下である。第2柱状部30の高さは、例えば、第2柱状部30の径よりも大きい。第2柱状部30の高さは、第1柱状部20の高さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
第2柱状部30の第4面34における径は、10nm以上1μm以下であり、好ましくは100nm以上800nm以下であり、より好ましくは200nm以上700nm以下である。第2柱状部30の径は、第4面34から第3面32に向けて漸増している。第2柱状部30の径は、第1柱状部20の径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
第2柱状部30は、複数設けられている。図示の例では、複数の第2柱状部30の形状および大きさは、互いに同じである。複数の第2柱状部30は、互いに離隔している。図示の例では、隣り合う第2柱状部30の間は、空隙である。隣り合う第2柱状部30の間隔は、10nm以上1μm以下であり、好ましくは100nm以上800nm以下であり、より好ましくは200nm以上700nm以下である。隣り合う第2柱状部30の間隔
は、隣り合う第1柱状部20の間隔と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
複数の第2柱状部30は、垂線Q方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の第1柱状部20は、垂線Q方向からみて、例えば、正三角格子状、正方格子状に配列されている。
【0065】
第2柱状部30は、金属で構成されている。第2柱状部30の材質は、例えば、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、またはこれらの合金である。第2柱状部30の材質は、第1柱状部20と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
複数の第2柱状部30は、第2メタサーフェス30aを構成している。第2メタサーフェス30aは、例えば、複数の第2柱状部30と、隣り合う第2柱状部30の間の空隙と、で構成されている。
【0067】
第1メタサーフェス20aと第2メタサーフェス30aとは、例えば、第1主面12と平行な図示せぬ仮想平面に関して、対称である。第2柱状部30は、例えば、第1柱状部20と同じ方法で形成される。
【0068】
図5に示す例では、第2メタサーフェス30aに光が入射し、第2メタサーフェス30aは、入射した光の位相を変調させる。第2メタサーフェス30aで位相が変調された光は、基板10を透過して第1メタサーフェス20aに入射する。第1メタサーフェス20aは、入射した光の位相を変調させ、光を出射する。
【0069】
第2メタサーフェス30aは、集光レンズの機能を有していてもよいし、凹レンズの機能を有していてもよいし、集光点がずれるオフアクシスレンズの機能を有していてもよいし、偏光の機能を有していてもよい。第2メタサーフェス30aは、非共鳴型であってもよいし、共鳴型であってもよい。
【0070】
位相変調素子110では、基板10の複数の第1柱状部20とは反対側に設けられた複数の第2柱状部30を有する第2メタサーフェス30aを有する。複数の第2柱状部30の各々は、金属で構成されている。複数の第2柱状部30の各々の最も基板10とは反対側を第3位置P3、第3位置P3と基板10との間を第4位置P4とする。複数の第2柱状部30の各々の基板10との接触面としての第3面32の面積S4は、第4位置P4における複数の第2柱状部30の各々の断面積S6よりも大きい。第3位置P3における複数の第2柱状部30の各々の断面積S5は、第4位置P4における複数の第2柱状部30の各々の断面積S6よりも小さい。
【0071】
そのため、位相変調素子110では、第1メタサーフェス20aおよび第2メタサーフェス30aの2つによって、光の位相を変調することができる。これにより、例えば、第1メタサーフェス20aのみによって光を変調する場合に比べて、第1メタサーフェス20aの位相変調量を少なくできる。その結果、例えば、第1柱状部20の高さを小さくすることができ、複数の第1柱状部20を容易に形成することができる。
【0072】
なお、
図6に示すように、複数の第1柱状部20および複数の第2柱状部30は、基板10の所定の領域にのみ設けられていてもよい。例えばFIBによって金属層2を加工する場合は、加工面積が広くなるほど加工時間が長くなり、ステージドリフトなどの影響により高精細な加工の難易度が上がる。複数の第1柱状部20および複数の第2柱状部30を基板10の所定の領域にのみ形成すれば、加工面積を小さくすることができ、加工の難易度を下げることができる。さらに、金属からなる第1柱状部20および第2柱状部30による光の吸収を低減することができる。
【0073】
1.4.3. 第3変形例
次に、第1実施形態の第3変形例に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第1実施形態の第3変形例に係る位相変調素子130を模式的に示す断面図である。
【0074】
上述した位相変調素子100では、
図1に示すように、基板10の形状は、直方体であった。
【0075】
これに対し、位相変調素子130では、
図6に示すように、基板10は、曲面を有している。基板10は、レンズである。基板10は、例えば、屈折レンズである。基板10の材質は、例えば、ガラスである。なお、基板10のレンズの種類は、特に限定されず、凹レンズであってもよいし、オフアクシスレンズであってもよい。
【0076】
第1メタサーフェス20aは、レンズとしての基板10の収差を補正する機能を有している。図示の例では、第1メタサーフェス20aに光が入射し、第1メタサーフェス20aで変調された光が基板10を透過して出射される。
【0077】
位相変調素子130では、基板10は、レンズである。そのため、位相変調素子120では、第1メタサーフェス20aおよび基板10によって、光の位相を変調することができる。
【0078】
例えば、大面積のサイズのメタサーフェスは、製造コストが高い。そのため、レンズとしての基板10で可能な機能は基板10で行い、基板10の機能の補強として最小限の面積で第1メタサーフェス20aを形成することにより、低コスト化を図ることができる。
【0079】
さらに、例えば、基板10が屈折レンズの場合、第1メタサーフェス20aの屈折レンズとしてのレンズ効率は、基板10よりも低い。そのため、基板10と第1メタサーフェス20aとを組み合わせることにより、レンズ効率の低下を抑えつつ、基板10では不可能な機能を第1メタサーフェス20aで付加することができる。例えば、第1メタサーフェス20aは、NA(Numerical Aperture)が高くなるほどレンズ効率が低下するため、レンズとしての基板10で可能な機能は、基板10を利用することが好ましい。なお、「屈折レンズとしてのレンズ効率」とは、焦点に集められる光の割合のことをいう。
【0080】
1.4.4. 第4変形例
次に、第1実施形態の第4変形例に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第1実施形態の第4変形例に係る位相変調素子140を模式的に示す断面図である。
【0081】
位相変調素子140では、
図8に示すように、被覆層40を有している点において、上述した位相変調素子100と異なる。
【0082】
被覆層40は、第1柱状部20を被覆している。被覆層40が被覆されていても、隣り合う第1柱状部20の間には、空隙が存在する。
【0083】
被覆層40の材質は、誘電体である。被覆層40の屈折率は、第1柱状部20の屈折率に近いことが好ましい。これにより、第1柱状部20と被覆層40との界面における反射を低減することができる。被覆層40の材質は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化チタン(TiO2)などである。被覆層40は、例えば、CVD法、ALD(Atomic layer deposition)法によって形成される。
【0084】
位相変調素子140は、複数の第1柱状部20の各々を被覆する被覆層40を有し、被覆層40の材質は、誘電体である。そのため、位相変調素子140では、酸化などによって第1柱状部20の形状が崩れることを抑制することができる。
【0085】
なお、
図9に示すように、第2柱状部30を有する場合は、第2柱状部30を被覆する被覆層42を有していてもよい。被覆層42の材質は、例えば、被覆層40と同じである。また、
図10に示すように、複数の第1柱状部20が基板10の所定の領域にのみ設けられている場合において、被覆層40は、第1柱状部20を被覆していてもよい。また、
図11に示すように、基板10がレンズである場合において、被覆層40は、第1柱状部20を被覆していてもよい。
【0086】
1.4.5. 第5変形例
次に、第1実施形態の第5変形例に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図12は、第1実施形態の第5変形例に係る位相変調素子150を模式的に示す平面図である。
【0087】
上述した位相変調素子100は、
図2に示すように、垂線Q軸方向からみて、第1柱状部20の形状は、円であった。
【0088】
これに対し、位相変調素子150では、
図12に示すように、垂線Q軸方向からみて、第1柱状部20の形状は、正方形である。
【0089】
図2および
図12に示す例では、複数の第1柱状部20で構成される形状は、回転対称である。このように、複数の第1柱状部20で構成される形状が回転対称である場合、偏光の向きに対する位相差を小さくすることができる。例えば、第1方向に偏光する光が入射した場合と、第1方向と直交する第2方向に偏光する光が入射した場合と、で位相変調素子150による位相差を小さくすることができる。すなわち、第1方向に偏光する光が入射した場合と、第2方向に偏光する光が入射した場合と、で位相変調素子150による位相変調量の差を小さくすることができる。
【0090】
位相変調素子150では、
図13に示すように、長方形であってもよいし、
図14に示すように、V字状であってもよい。
【0091】
図13および
図14に示す例では、複数の第1柱状部20で構成される形状は、回転対称ではい。このように、複数の第1柱状部20で構成される形状が回転対称でない場合、偏光の向きに対する位相差を大きくすることができる。例えば、第1方向に偏光する光が入射した場合と、第1方向と直交する第2方向に偏光する光が入射した場合と、で位相変調素子150による位相差を大きくすることができる。すなわち、第1方向に偏光する光が入射した場合と、第2方向に偏光する光が入射した場合と、で位相変調素子150による位相変調量の差を大きくすることができる。
【0092】
上記のように、複数の第1柱状部20の形状によって、偏光と位相変調量との関係を調製することができる。
【0093】
2. 第2実施形態
2.1. 位相変調素子
次に、第2実施形態に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図15は、第2実施形態に係る位相変調素子200を模式的に示す断面図である。
【0094】
以下、第2実施形態に係る位相変調素子200において、上述した第1実施形態に係る位相変調素子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0095】
位相変調素子200では、
図15に示すように、第1メタサーフェス20aで位相が変調された光を、第1メタサーフェス20aに向けて反射させる反射部50を有している点において、上述した位相変調素子100と異なる。
【0096】
反射部50は、基板10の第2主面14に設けられている。反射部50は、例えば、銀やアルミニウムなどの金属で構成された金属層である。図示の例では、第1メタサーフェス20aから光が入射される。第1メタサーフェス20aは、入射した光の位相を変調させる。第1メタサーフェス20aで位相が変調された光は、基板10を透過して反射部50に至る。反射部50は、第1メタサーフェス20aで位相が変調された光を、第1メタサーフェス20aに向けて反射させる。反射された光は、再び、基板10を透過し、第1メタサーフェス20aで位相が変調されて、第1メタサーフェスから出射される。
【0097】
2.2. 位相変調素子の製造方法
次に、第2実施形態に係る位相変調素子200の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0098】
図15に示すように、基板10の第2主面14に反射部50を形成する。反射部50は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法によって形成される。
【0099】
次に、基板10の第1主面12に、複数の第1柱状部20を形成する。第1柱状部20の形成方法は、上述した位相変調素子100の製造方法と、基本的に同じである。
【0100】
以上の工程により、位相変調素子200を製造することができる。
【0101】
2.3. 作用効果
位相変調素子200では、第1メタサーフェス20aで位相が変調された光を、第1メタサーフェス20aに向けて反射させる反射部50を有する。そのため、位相変調素子200では、第1メタサーフェス20aによって、光の位相を2回変調することができるため、第1メタサーフェス20aによる1回分の位相変調量を少なくすることができる。これにより、例えば、第1柱状部20の高さを小さくすることができ、複数の第1柱状部20を容易に形成することができる。
【0102】
なお、位相変調素子200では、
図16に示すように、複数の第1柱状部20は、基板10の所定の領域にのみ設けられていてもよい。また、
図17に示すように、基板10は、レンズであってもよい。
【0103】
2.4. 変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る位相変調素子について、図面を参照しながら説明する。
図18は、第2実施形態の変形例係る位相変調素子210を模式的に示す断面図である。
【0104】
以下、第2実施形態の変形例に係る位相変調素子210において、上述した第2実施形態に係る位相変調素子200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0105】
位相変調素子210では、
図18に示すように、被覆層40を有している点において、
上述した位相変調素子100と異なる。被覆層40の材質および機能などは、上述した位相変調素子140で説明したとおりである。
【0106】
なお、
図19に示すように、複数の第1柱状部20が基板10の所定の領域にのみ設けられている場合において、被覆層40は、第1柱状部20を被覆していてもよい。また、
図20に示すように、基板10がレンズである場合において、被覆層40は、第1柱状部20を被覆していてもよい。
【0107】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。
図21は、第3実施形態に係るプロジェクター700を模式的に示す図である。
【0108】
プロジェクター700は、図示しない筐体と、
図21に示すように、図筐体内に設けられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源702R、緑色光源702G、青色光源702Bと、を有している。光源702R,702G,702Bは、例えば、半導体レーザー、LED(Light Emitting Diode)で構成されている。
【0109】
プロジェクター700は、さらに、光学素子として、位相変調素子100を有している。
【0110】
プロジェクター700は、筐体内に設けられた、第1光学素子100Rと、第2光学素子100Gと、第3光学素子100Bと、第1光変調装置704Rと、第2光変調装置704Gと、第3光変調装置704Bと、投射装置708と、を有している。第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置708は、例えば、投射レンズである。投射レンズは、位相変調素子100によって構成されていてもよい。
【0111】
赤色光源702Rから出射された光は、第1光学素子100Rに入射する。赤色光源702Rから出射された光は、第1光学素子100Rによって集光される。なお、第1光学素子100Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子100Gおよび第3光学素子100Bについても同様である。
【0112】
第1光学素子100Rによって集光された光は、第1光変調装置704Rに入射する。第1光変調装置704Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置708は、第1光変調装置704Rによって形成された像を拡大してスクリーン710に投射する。
【0113】
緑色光源702Gから出射された光は、第2光学素子100Gに入射する。緑色光源702Gから出射された光は、第2光学素子100Gによって集光される。
【0114】
第2光学素子100Gによって集光された光は、第2光変調装置704Gに入射する。第2光変調装置704Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置708は、第2光変調装置704Gによって形成された像を拡大してスクリーン710に投射する。
【0115】
青色光源702Bから出射された光は、第3光学素子100Bに入射する。青色光源702Bから出射された光は、第3光学素子100Bによって集光される。
【0116】
第3光学素子100Bによって集光された光は、第3光変調装置704Bに入射する。第3光変調装置704Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装
置708は、第3光変調装置704Bによって形成された像を拡大してスクリーン710に投射する。
【0117】
プロジェクター700は、さらに、第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bから出射された光を合成して投射装置708に導くクロスダイクロイックプリズム706を有している。
【0118】
第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム706に入射する。クロスダイクロイックプリズム706は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置708によりスクリーン710上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0119】
なお、赤色光源702R、緑色光源702G、および青色光源702Bを、映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置708は、赤色光源702R、緑色光源702G、および青色光源702Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン710に投射してもよい。
【0120】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使
用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0121】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0122】
また、クロスダイクロイックプリズム合成された光は、投射装置によって、スクリーンでなく、例えば、ホワイトボードや壁などに照射されてもよい。この場合、プロジェクターは、照射される領域の形状を、赤外線などによってセンシングする機能を有していてもよい。
【0123】
4. 第4実施形態
4.1. 全体の構成
次に、第4実施形態に係るヘッドマウントディスプレイについて、図面を参照しながら説明する。
図22は、第4実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ900を模式的に示す斜視図である。なお、
図22では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0124】
ヘッドマウントディスプレイ900は、
図22に示すように、眼鏡のような外見を有する頭部装着型の表示装置である。ヘッドマウントディスプレイ900は、観察者の頭部に装着される。観察者とは、ヘッドマウントディスプレイ900を使用する使用者のことである。ヘッドマウントディスプレイ900は、観察者に対して虚像による映像光を視認させることができるとともに、外界像をシースルーで視認させることができる。ヘッドマウントディスプレイ900は、虚像表示装置ともいえる。
【0125】
ヘッドマウントディスプレイ900は、例えば、第1表示部910aと、第2表示部910bと、フレーム920と、第1テンプル930aと、第2テンプル930bと、を有している。
【0126】
第1表示部910aおよび第2表示部910bは、画像を表示する。具体的には、第1表示部910aは、観察者の右眼用の虚像を表示する。第2表示部910bは、観察者の左眼用の虚像を表示する。図示の例では、第1表示部910aは、第2表示部910bの-X軸方向に設けられている。表示部910a,910b、例えば、像形成装置911と、導光装置916と、を有している。
【0127】
像形成装置911は、画像光を形成する。像形成装置911は、例えば、光源や投射装置などの光学系と、外部部材912と、を有している。外部部材912は、光源および投射装置などを収容している。
【0128】
導光装置916は、観察者の眼前を覆う。導光装置916は、像形成装置911で形成された映像光を導光させるとともに、外界光と映像光とを重複して観察者に視認させる。なお、像形成装置911および導光装置916の詳細については、後述する。
【0129】
フレーム920は、第1表示部910aおよび第2表示部910bを支持している。フレーム920は、例えば、Y軸方向からみて、表示部910a,910bを囲んでいる。図示の例では、第1表示部910aの像形成装置911は、フレーム920の-X軸方向の端部に取り付けられている。第2表示部910bの像形成装置911は、フレーム920の+X軸方向の端部に取り付けられている。
【0130】
第1テンプル930aおよび第2テンプル930bは、フレーム920から延出している。図示の例では、第1テンプル930aは、フレーム920の-X軸方向の端部から+Y軸方向に延出している。第2テンプル930bは、フレーム920の+X軸方向の端部から+Y軸方向に延出している。
【0131】
第1テンプル930aおよび第2テンプル930bは、ヘッドマウントディスプレイ900が観察者に装着された場合に、観察者の耳に懸架される。テンプル930a,930b間に、観察者の頭部が位置する。
【0132】
4.2. 像形成装置および導光装置
図23は、第4実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ900の第1表示部910aの像形成装置911および導光装置916を模式的に示す図である。なお、第1表示部910aと第2表示部910bとは、基本的に同じ構成を有している。したがって、以下の第1表示部910aの説明は、第2表示部910bに適用することができる。
【0133】
像形成装置911は、
図23に示すように、例えば、位相変調素子100と、光源913と、光変調装置914と、結像用の投射装置915と、を有している。
【0134】
光源913は、光を出射する。光源913は、例えば、半導体レーザー、LEDで構成されている。光源913から出射された光は、位相変調素子100に入射する。光源913から出射された光は、位相変調素子100によって集光される。なお、位相変調素子100は、集光以外の機能を有していてもよい。
【0135】
光変調装置914は、位相変調素子100で集光された光を、画像情報に応じて変調して、映像光を出射する。光変調装置914は、透過型の液晶ライトバルブである。なお、光源913は、入力された画像情報に応じて発光する自発光型の光源であってもよい。こ
の場合、光変調装置914は、設けられない。
【0136】
投射装置915は、光変調装置914から出射された映像光を、導光装置916に向けて投射する。投射装置915は、例えば、投射レンズである。投射レンズは、位相変調素子100によって構成されていてもよい。投射装置915を構成するレンズとして、軸対称面をレンズ面とするものを用いてもよい。
【0137】
導光装置916は、例えば、投射装置915の鏡筒にねじ止めされることにより、投射装置915に対して精度よく位置決めされている。導光装置916は、例えば、映像光を導光する映像光導光部材917と、透視用の透視部材919と、を有している。
【0138】
映像光導光部材917には、投射装置915から出射された映像光が入射する。映像光導光部材917は、映像光を、観察者の眼に向けて導光するプリズムである。映像光導光部材917に入射した映像光は、映像光導光部材917の内面において反射を繰り返した後、反射層918で反射されて映像光導光部材917から出射される。映像光導光部材917から出射された映像光は、観察者の眼に至る。図示の例では、反射層918は、映像光を+Y軸方向に反射させる。反射層918は、例えば、金属や、誘電体多層膜で構成されている。反射層918は、ハーフミラーであってもよい。
【0139】
透視部材919は、映像光導光部材917に隣接している。透視部材919は、映像光導光部材917に固定されている。透視部材919の外表面は、例えば、映像光導光部材917の外表面と連続している。透視部材919は、観察者に、外界光を透視させる。なお、映像光導光部材917についても、映像光を導光する機能の他に、観察者に外界光を透視させる機能を有している。
【0140】
上述した実施形態に係る位相変調素子は、プロジェクターおよびヘッドマウントディスプレイ以外にも用いられることができる。上述した実施形態に係る位相変調素子は、例えば、カメラ、スキャナー、眼鏡、眼内レンズ、コンタクトレンズに用いられることができる。
【0141】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0142】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0143】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0144】
位相変調素子の一態様は、
基板と、
前記基板に設けられた複数の第1柱状部を有する第1メタサーフェスと、
を有し、
前記複数の第1柱状部の各々は、金属で構成され、
前記複数の第1柱状部の各々の最も前記基板とは反対側を第1位置、前記第1位置と前記基板との間を第2位置とし、
前記複数の第1柱状部の各々の前記基板との接触面の面積は、前記第2位置における前
記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも大きく、かつ、前記第1位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積は、前記第2位置における前記複数の第1柱状部の各々の断面積よりも小さい。
【0145】
この位相変調素子によれば、メタサーフェスの界面で反射される光を低減することができる。
【0146】
前記位相変調素子の一態様において、
前記複数の第1柱状部の各々の断面積は、前記基板から前記第1位置に向けて漸減していてもよい。
【0147】
この位相変調素子によれば、第1メタサーフェスにおける意図せぬ反射を低減することができる。
【0148】
前記位相変調素子の一態様において、
前記第1メタサーフェスで位相が変調された光を、前記第1メタサーフェスに向けて反射させる反射部を有してもよい。
【0149】
この位相変調素子によれば、第1メタサーフェスによって、光の位相を2回変調することができる。
【0150】
前記位相変調素子の一態様において、
前記基板の前記複数の第1柱状部とは反対側に設けられた複数の第2柱状部を有する第2メタサーフェスを有し、
前記複数の第2柱状部の各々は、金属で構成され、
前記複数の第2柱状部の各々の最も前記基板とは反対側を第3位置、前記第3位置と前記基板との間を第4位置とし、
前記複数の第2柱状部の各々の前記基板との接触面の面積は、前記第4位置における前記複数の第2柱状部の各々の断面積よりも大きく、かつ、前記第3位置における前記複数の第2柱状部の各々の断面積は、前記第4位置における前記複数の第2柱状部の各々の断面積よりも小さくてもよい。
【0151】
この位相変調素子によれば、第1メタサーフェスおよび第2メタサーフェスの2つによって、光の位相を変調することができる。
【0152】
前記位相変調素子の一態様において、
前記基板は、レンズであってもよい。
【0153】
この位相変調素子によれば、第1メタサーフェスおよび基板によって、光の位相を変調することができる。
【0154】
前記位相変調素子の一態様において、
前記基板は、絶縁性であってもよい。
【0155】
この位相変調素子によれば、第1柱状部の自由電子が基板に流れることを抑制することができる。
【0156】
前記位相変調素子の一態様において、
前記複数の第1柱状部の各々を被覆する被覆層を有し、
前記被覆層の材質は、誘電体であってもよい。
【0157】
この位相変調素子によれば、酸化などによって第1柱状部の形状が崩れることを抑制することができる。
【0158】
プロジェクターの一態様は、
前記位相変調素子の一態様を有する。
【0159】
ヘッドマウントディスプレイの一態様は、
前記位相変調素子の一態様を有する。
【符号の説明】
【0160】
2…金属層、10…基板、12…第1主面、14…第2主面、20…第1柱状部、20a…第1メタサーフェス、22…第1面、24…第2面、26…第1側面、30…第2柱状部、30a…第2メタサーフェス、32…第3面、34…第4面、36…第2側面、40,42…被覆層、50…反射部、100…位相変調素子、100R…第1光学素子、100G…第2光学素子、100B…第3光学素子、110,120,130,140,150,200,210…位相変調素子、700…プロジェクター、702R…赤色光源、702G…緑色光源、702B…青色光源、704R…第1光変調装置、704G…第2光変調装置、704B…第3光変調装置、706…クロスダイクロイックプリズム、708…投射装置、710…スクリーン、900…ヘッドマウントディスプレイ、910a…第1表示部、910b…第2表示部、911…像形成装置、912…外部部材、913…光源、914…光変調装置、915…投射装置、916…導光装置、917…映像光導光部材、918…反射層、919…透視部材、920…フレーム、930a…第1テンプル、930b…第2テンプル