(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018284
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ドアクローザ
(51)【国際特許分類】
E05F 1/14 20060101AFI20240201BHJP
E05F 3/18 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E05F1/14 A
E05F3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121512
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】中前 友裕
(57)【要約】
【課題】カムを備えたドアクローザにおいてカムの設計の自由度を高める。
【解決手段】カムは、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1伝達カム面及び第2伝達カム面と、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1緩衝カム面及び第2緩衝カム面と、を有し、伝達コロは、第1伝達カム面と対向する第1伝達フォロア13bと、第2伝達カム面と対向する第2伝達フォロア13aとを有し、緩衝コロは、第1緩衝カム面と対向する第1緩衝フォロア17aと、第2緩衝カム面と対向する第2緩衝フォロア17bとを有し、伝達切り替え角度において、第1伝達カム面が第1伝達フォロア13bに接触する状態から、第2伝達カム面が第2伝達フォロア13aに接触する状態に切り替わり、緩衝切り替え角度において、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロア17aに接触する状態から、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロア17bに接触する状態に切り替わる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の開閉動作に伴って第1方向の軸線まわりに回転する主軸と、
主軸に設けられ、主軸と共に回転するカムと、
カムと接触する伝達コロと、
主軸の回転に伴って伝達コロと共に第1方向と直交する第2方向に移動するスライダと、
扉が開くときにスライダによって弾性変形し、扉が閉じるときに復元してスライダを介して主軸に閉じ力を作用させる閉じ用バネと、
を備え、
カムは、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1伝達カム面及び第2伝達カム面を有し、
伝達コロは、第1伝達カム面と対向する第1伝達フォロアと、第2伝達カム面と対向する第2伝達フォロアとを有し、
閉扉状態から所定の伝達切り替え角度までは、第1伝達カム面が第1伝達フォロアと接触し、第2伝達カム面は第2伝達フォロアには接触せず、
伝達切り替え角度において、第1伝達カム面が第1伝達フォロアに接触する状態から、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触する状態に切り替わり、
伝達切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1伝達カム面は第1伝達フォロアには接触せず、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触する、ドアクローザ。
【請求項2】
第1伝達フォロアと第2伝達フォロアは互いに同軸上に設けられ、第2伝達フォロアは、第1伝達フォロアよりも大径である、請求項1記載のドアクローザ。
【請求項3】
扉の開閉動作に伴って第1方向の軸線まわりに回転する主軸と、
主軸に設けられ、主軸と共に回転するカムと、
カムと接触する緩衝コロと、
主軸の回転に伴って緩衝コロと共に第1方向と直交する第2方向に移動して閉扉動作を緩衝する緩衝ピストンと、
緩衝ピストンを主軸側に付勢する緩衝バネと、
を備え、
カムは、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1緩衝カム面及び第2緩衝カム面を有し、
緩衝コロは、第1緩衝カム面と対向する第1緩衝フォロアと、第2緩衝カム面と対向する第2緩衝フォロアとを有し、
閉扉状態から所定の緩衝切り替え角度までは、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアと接触し、第2緩衝カム面は第2緩衝フォロアには接触せず、
緩衝切り替え角度において、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアに接触する状態から、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する状態に切り替わり、
緩衝切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1緩衝カム面は第1緩衝フォロアには接触せず、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する、ドアクローザ。
【請求項4】
第1緩衝フォロアと第2緩衝フォロアは互いに同軸上に設けられ、第1緩衝フォロアは、第2緩衝フォロアよりも大径である、請求項3記載のドアクローザ。
【請求項5】
扉の開閉動作に伴って第1方向の軸線まわりに回転する主軸と、
主軸に設けられ、主軸と共に回転するカムと、
カムと接触する伝達コロと、
主軸の回転に伴って伝達コロと共に第1方向と直交する第2方向に移動するスライダと、
扉が開くときにスライダによって弾性変形し、扉が閉じるときに復元してスライダを介して主軸に閉じ力を作用させる閉じ用バネと、
カムと接触する緩衝コロと、
主軸の回転に伴って緩衝コロと共に第2方向に移動して閉扉動作を緩衝する緩衝ピストンと、
緩衝ピストンを主軸側に付勢する緩衝バネと、
を備え、
カムは、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1伝達カム面及び第2伝達カム面と、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1緩衝カム面及び第2緩衝カム面とを有し、
伝達コロは、第1伝達カム面と対向する第1伝達フォロアと、第2伝達カム面と対向する第2伝達フォロアとを有し、
閉扉状態から所定の伝達切り替え角度までは、第1伝達カム面が第1伝達フォロアと接触し、第2伝達カム面は第2伝達フォロアには接触せず、
伝達切り替え角度において、第1伝達カム面が第1伝達フォロアに接触する状態から、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触する状態に切り替わり、
伝達切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1伝達カム面は第1伝達フォロアには接触せず、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触し、
緩衝コロは、第1緩衝カム面と対向する第1緩衝フォロアと、第2緩衝カム面と対向する第2緩衝フォロアとを有し、
閉扉状態から所定の緩衝切り替え角度までは、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアと接触し、第2緩衝カム面は第2緩衝フォロアには接触せず、
緩衝切り替え角度において、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアに接触する状態から、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する状態に切り替わり、
緩衝切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1緩衝カム面は第1緩衝フォロアには接触せず、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する、ドアクローザ。
【請求項6】
第1伝達カム面と第2緩衝カム面は、カムの第1周面における周方向の異なる位置に設けられ、
第2伝達カム面と第1緩衝カム面は、カムの第2周面における周方向の異なる位置に設けられている、請求項5記載のドアクローザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムを備えたドアクローザに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のようにカムを備えたドアクローザにおいては、扉が開くときにカムがバネを弾性変形させる。このようにカムを備えた構成においては、全閉直前に大きな閉じ力を得ることができる。しかしながら、比較的大きな開き角度において閉じ力が不足しやすい。また、扉が閉じるときに、カムが緩衝ピストンを移動させる。そのため、緩衝ピストンの移動量が小さく、作動油の流量調整が難しい。このようにカムを備えた構成においては、カムの設計において制約が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、カムを備えたドアクローザにおいてカムの設計の自由度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るドアクローザは、扉の開閉動作に伴って第1方向の軸線まわりに回転する主軸と、主軸に設けられ、主軸と共に回転するカムと、カムと接触する伝達コロと、主軸の回転に伴って伝達コロと共に第1方向と直交する第2方向に移動するスライダと、扉が開くときにスライダによって弾性変形し、扉が閉じるときに復元してスライダを介して主軸に閉じ力を作用させる閉じ用バネと、を備え、カムは、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1伝達カム面及び第2伝達カム面を有し、伝達コロは、第1伝達カム面と対向する第1伝達フォロアと、第2伝達カム面と対向する第2伝達フォロアとを有し、閉扉状態から所定の伝達切り替え角度までは、第1伝達カム面が第1伝達フォロアと接触し、第2伝達カム面は第2伝達フォロアには接触せず、伝達切り替え角度において、第1伝達カム面が第1伝達フォロアに接触する状態から、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触する状態に切り替わり、伝達切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1伝達カム面は第1伝達フォロアには接触せず、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触する。
【0006】
この構成によれば、伝達切り替え角度においてカムが第1伝達カム面から第2伝達カム面へと切り替わる。そのため、シングルカムの構成に比して、カムの設計の自由度が高まり、閉じ力を増強させることができる。特に、比較的大きな開き角度における閉じ力を増強できる。
【0007】
特に、第1伝達フォロアと第2伝達フォロアは互いに同軸上に設けられ、第2伝達フォロアは、第1伝達フォロアよりも大径であることが好ましい。この構成によれば、伝達コロを容易に構成することができる。
【0008】
また本発明に係るドアクローザは、扉の開閉動作に伴って第1方向の軸線まわりに回転する主軸と、主軸に設けられ、主軸と共に回転するカムと、カムと接触する緩衝コロと、主軸の回転に伴って緩衝コロと共に第1方向と直交する第2方向に移動して閉扉動作を緩衝する緩衝ピストンと、緩衝ピストンを主軸側に付勢する緩衝バネと、を備え、カムは、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1緩衝カム面及び第2緩衝カム面を有し、緩衝コロは、第1緩衝カム面と対向する第1緩衝フォロアと、第2緩衝カム面と対向する第2緩衝フォロアとを有し、閉扉状態から所定の緩衝切り替え角度までは、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアと接触し、第2緩衝カム面は第2緩衝フォロアには接触せず、緩衝切り替え角度において、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアに接触する状態から、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する状態に切り替わり、緩衝切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1緩衝カム面は第1緩衝フォロアには接触せず、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する。
【0009】
この構成によれば、緩衝切り替え角度においてカムが第1緩衝カム面から第2緩衝カム面へと切り替わる。そのため、シングルカムの構成に比して、カムの設計の自由度が高まり、緩衝ピストンの移動量を容易に増やすことができる。従って、閉扉速度の制御が容易になる。
【0010】
特に、第1緩衝フォロアと第2緩衝フォロアは互いに同軸上に設けられ、第1緩衝フォロアは、第2緩衝フォロアよりも大径であることが好ましい。この構成によれば、緩衝コロを容易に構成することができる。
【0011】
また本発明に係るドアクローザは、扉の開閉動作に伴って第1方向の軸線まわりに回転する主軸と、主軸に設けられ、主軸と共に回転するカムと、カムと接触する伝達コロと、主軸の回転に伴って伝達コロと共に第1方向と直交する第2方向に移動するスライダと、扉が開くときにスライダによって弾性変形し、扉が閉じるときに復元してスライダを介して主軸に閉じ力を作用させる閉じ用バネと、カムと接触する緩衝コロと、主軸の回転に伴って緩衝コロと共に第2方向に移動して閉扉動作を緩衝する緩衝ピストンと、緩衝ピストンを主軸側に付勢する緩衝バネと、を備え、カムは、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1伝達カム面及び第2伝達カム面と、互いに第1方向の異なる位置に設けられた第1緩衝カム面及び第2緩衝カム面とを有し、伝達コロは、第1伝達カム面と対向する第1伝達フォロアと、第2伝達カム面と対向する第2伝達フォロアとを有し、閉扉状態から所定の伝達切り替え角度までは、第1伝達カム面が第1伝達フォロアと接触し、第2伝達カム面は第2伝達フォロアには接触せず、伝達切り替え角度において、第1伝達カム面が第1伝達フォロアに接触する状態から、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触する状態に切り替わり、伝達切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1伝達カム面は第1伝達フォロアには接触せず、第2伝達カム面が第2伝達フォロアに接触し、緩衝コロは、第1緩衝カム面と対向する第1緩衝フォロアと、第2緩衝カム面と対向する第2緩衝フォロアとを有し、閉扉状態から所定の緩衝切り替え角度までは、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアと接触し、第2緩衝カム面は第2緩衝フォロアには接触せず、緩衝切り替え角度において、第1緩衝カム面が第1緩衝フォロアに接触する状態から、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する状態に切り替わり、緩衝切り替え角度よりも大きな開き角度においては、第1緩衝カム面は第1緩衝フォロアには接触せず、第2緩衝カム面が第2緩衝フォロアに接触する。
【0012】
この構成によれば、伝達切り替え角度においてカムが第1伝達カム面から第2伝達カム面へと切り替わる。また、緩衝切り替え角度においてカムが第1緩衝カム面から第2緩衝カム面へと切り替わる。そのため、シングルカムの構成に比して、カムの設計の自由度が高まり、閉じ力を増強させることができると共に、緩衝ピストンの移動量を容易に増やすことができる。
【0013】
特に、第1伝達カム面と第2緩衝カム面は、カムの第1周面における周方向の異なる位置に設けられ、第2伝達カム面と第1緩衝カム面は、カムの第2周面における周方向の異なる位置に設けられていることが好ましい。この構成によれば、カムを容易に構成できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、開扉動作の途中でカムが切り替わるので、カムの設計の自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態におけるドアクローザの閉扉状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図。
【
図3】(a)及び(b)は同ドアクローザの要部を示す斜視図。
【
図5】(a)及び(b)は同ドアクローザのカムを示す平面図。
【
図6】同ドアクローザの要部を示す斜視図であって、(a)は閉扉状態を示し、(b)は扉の開き角度が45度の状態を示す。
【
図7】同ドアクローザの要部を示す斜視図であって、(a)は扉の開き角度が80度の状態を示し、(b)は扉の開き角度が120度の状態を示す。
【
図8】同ドアクローザの要部の閉扉状態を示し、(a)は平面から見た断面図、(b)は正面から見た断面図。
【
図9】同ドアクローザの要部における扉の開き角度が45度である場合を示し、(a)は平面から見た断面図、(b)は正面から見た断面図。
【
図10】同ドアクローザの要部における扉の開き角度が80度である場合を示し、(a)は平面から見た断面図、(b)は正面から見た断面図。
【
図11】同ドアクローザの要部における扉の開き角度が120度である場合を示し、(a)は平面から見た断面図、(b)は正面から見た断面図。
【
図12】扉の開き角度とスライダの移動量との関係を示すグラフ。
【
図13】扉の開き角度と閉じ力との関係を示すグラフ。
【
図14】扉の開き角度と緩衝ピストンの移動量との関係を示すグラフ。
【
図15】本発明の他の実施形態におけるドアクローザの要部断面図。
【
図16】本発明の他の実施形態におけるドアクローザの要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態にかかるドアクローザについて
図1~
図14を参酌しつつ説明する。本実施形態におけるドアクローザは、
図1に示すように、ドアクローザ本体1と、取付板2と、アーム3を備えている。ドアクローザは、スライド型のものである。尚、
図1(b)等においてハッチングを省略している。ドアクローザ本体1は、扉あるいは扉枠に取り付けられる。扉は、上下方向の軸線まわりに回動する。扉にドアクローザ本体1が取り付けられる場合には、扉枠には左右方向(水平方向)に延びる図示しないレールが取り付けられる。本実施形態のドアクローザは、コンシールドタイプのものであり、ドアクローザ本体1は、扉の内部に配置される。ドアクローザ本体1は、取付板2を介して扉にネジ止めされる。取付板2は、ドアクローザ本体1の上面にネジ止めされる。尚、左右方向は、扉の面に沿った方向であって、扉の回転中心に対して径方向である。また、前後方向は、扉の面に対して法線方向である。本実施形態において上下方向が第1方向であり、左右方向が第2方向である。
【0017】
図1は、扉が全閉状態のときのドアクローザを示している。ドアクローザ本体1は、ハウジング10と、主軸11と、カム12と、伝達コロ13と、スライダ14と、閉じ用バネとしての第1バネ15及び第2バネ16と、緩衝コロ17と、緩衝ピストン18と、緩衝バネとしての第3バネ19とを備えている。
【0018】
ハウジング10は、全体として、左右方向に長い横長の直方体形状である。尚、
図1において、向かって右側を単に右側と称し、向かって左側を単に左側と称する。本実施形態において、扉の回動中心は、ドアクローザ本体1に対して左側に位置するが、右側に位置してもよい。
【0019】
ハウジング10は、左右方向に延びる一つの収容室20を有している。ハウジング10は、左右両端部にそれぞれ開口部を有し、左右両開口部はそれぞれエンドキャップ21により封止されている。左右のエンドキャップ21の間の空間が収容室20であり、収容室20には作動油が充填されている。収容室20に、スライダ14と、伝達コロ13と、第1バネ15と、第2バネ16と、緩衝コロ17と、緩衝ピストン18と、第3バネ19が配置されている。取付板2は、ハウジング10にネジ止めされている。
【0020】
ハウジング10の内面は、収容室20の壁面である。収容室20の壁面は、主軸11の近傍を除いて断面視円形の周面である。収容室20は、左右方向に延びる第1中心線T1を有している。平面視において、収容室20の第1中心線T1上に、主軸11と、伝達コロ13と、スライダ14と、第1バネ15と、第2バネ16と、緩衝コロ17と、緩衝ピストン18と、第3バネ19が配置されている。従って、主軸11と、伝達コロ13と、スライダ14と、第1バネ15と、第2バネ16と、緩衝コロ17と、緩衝ピストン18と、第3バネ19は、平面視において左右方向に沿った同一線上に位置している。また、
図1(b)のような側面視あるいは正面視において、スライダ14と、第1バネ15と、第2バネ16と、緩衝ピストン18と、第3バネ19は、左右方向に沿った同一線上(第1中心線T1上)に位置していて、上下方向において同一高さにある。伝達コロ13と、スライダ14と、第1バネ15と、第2バネ16は、主軸11に対して右側に配置され、緩衝コロ17と、緩衝ピストン18と、第3バネ19は、主軸11に対して反対側である左側に配置されている。
【0021】
主軸11の軸線方向は上下方向である。主軸11は、上下方向の軸線まわりに回転する。主軸11は、ハウジング10に回転可能に支持されている。主軸11は、
図1のようにハウジング10の左右方向の中央よりも左側に偏って配置されている。主軸11は、
図1(a)のように、ハウジング10の前後方向の略中央に位置している。主軸11の上端部は、ハウジング10から上方に突出していると共に取付板2からも上方に突出している。その主軸11の上端部に、アーム3の第1端部が相対回転不能に取り付けられている。アーム3の第2端部は、上述したレールに係合している。扉が回動すると、アーム3の第2端部がレールに案内されつつ左右方向にスライドする。扉の開閉動作に伴って、主軸11はアーム3と共に回転する。
【0022】
ハウジング10の天面部と底面部にはそれぞれ第1軸受けホルダ22と第2軸受けホルダ23が取り付けられている。主軸11は、第1軸受けホルダ22と第2軸受けホルダ23にそれぞれ軸受けを介して回転可能に支持されている。
図2及び
図3のように、主軸11は、互いに別体構成である上下二つの部材から構成されている。即ち、主軸11は、上側に位置する第1軸部材11aと、下側に位置する第2軸部材11bとからなる。
図2は、主軸11及びカム12と、スライダ14及び伝達コロ13と、緩衝ピストン18及び緩衝コロ17との関係を示すための要部分解図である。また、
図3は、主軸11を示す斜視図であって、(a)は第2軸部材11bのみを示したものであり、(b)は第2軸部材11bに第1軸部材11aが装着された状態を示したものである。第1軸部材11aと第2軸部材11bは、互いに上下に着脱可能に連結される。第1軸部材11aと第2軸部材11bは、相対回転不能であって、一体となって回転する。
【0023】
第1軸部材11aは、第1軸受けホルダ22に回転可能に支持され、第2軸部材11bは、第2軸受けホルダ23に回転可能に支持されている。第2軸部材11bにカム12が設けられている。カム12は、第2軸部材11bに一体に設けられているが別体構成であってもよい。
【0024】
<カム12>
カム12は上下二段の構成であって、上下に配置された二つの板カムからなる。カム12は、上側に位置する上カム12aと、下側に位置する下カム12bからなる。上カム12aと下カム12bは、一体となって主軸11と共に回転する。上カム12aと下カム12bは、互いに異なる形状を有している。上カム12aと下カム12bは、上下に隣接している。上カム12aは、第1中心線T1よりも上側に位置し、下カム12bは、第1中心線T1よりも下側に位置する。上カム12aと下カム12bは一体的に形成されているが、互いに別体の構成であってもよい。
【0025】
図4及び
図5に上カム12a及び下カム12bの詳細を示している。
図4は、上カム12a及び下カム12bのカム面の形状を示した平面図であり、
図5(a)は上カム12aのカム面の形状を示した平面図であり、
図5(b)は下カム12bのカム面の形状を示した平面図である。
図4、
図5の何れも、閉扉状態(0度)を示しており、扉の開き方向は、紙面向かって反時計回りである。扉が開くときの主軸11及びカム12の回転方向を矢印Pで示している。また、主軸11の中心線であってカム12の中心を符号Qで示している。
【0026】
上カム12aは、第1周面30を有している。第1周面30に、第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32が設けられている。第2伝達カム面31は、始点31aから終点31bまでの範囲である。第1緩衝カム面32は、始点32aから終点32bまでの範囲である。第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32は、何れも、第1周面30の全周のうちの左側に位置している。第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32は、第1周面30における互いに異なる位置に設けられており、互いに周方向に離間している。第2伝達カム面31は、平面視において、主軸11の中心線を通って左右方向に沿う第2中心線T2に対して前側に位置し、且つ、主軸11の中心線を通って前後方向に沿う第3中心線T3に対して左側に位置する。第1緩衝カム面32は、第2中心線T2に対して後側に位置し且つ、第3中心線T3に対して左側に位置する。第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32は、互いに第2中心線T2に対して前後方向の反対側に位置する。
【0027】
下カム12bは、第2周面33を有している。第2周面33に、第1伝達カム面34と第2緩衝カム面35が設けられている。第1伝達カム面34は、始点34aから終点34bまでの範囲である。第2緩衝カム面35は、始点35aから終点35bまでの範囲である。第1伝達カム面34と第2緩衝カム面35は、第2周面33における互いに異なる位置に設けられており、互いに周方向に離間している。第1伝達カム面34は、第2中心線T2に対して前側に位置し、且つ、第3中心線T3を跨いでいる。第2緩衝カム面35は、第2中心線T2に対して後側に位置し且つ、第3中心線T3を跨いでいる。第1伝達カム面34と第2緩衝カム面35は、互いに第2中心線T2に対して前後方向の反対側に位置する。
【0028】
このような形状の上カム12aと下カム12bが
図4のように上下に重なっている。第1伝達カム面34と第2伝達カム面31は、何れも第2中心線T2に対して前側に位置している。第1伝達カム面34と第2伝達カム面31は、互いに周方向の異なる位置に設けられており、第2伝達カム面31は、第1伝達カム面34よりも、開扉動作時における主軸11の回転方向の下流側に位置する。第1緩衝カム面32と第2緩衝カム面35は、何れも第2中心線T2に対して後側に位置している。第1緩衝カム面32と第2緩衝カム面35は、互いに周方向の異なる位置に設けられており、第2緩衝カム面35は、第1緩衝カム面32よりも、開扉動作時における主軸11の回転方向の下流側に位置する。第1伝達カム面34の始点34aは右側に位置し、第1緩衝カム面32の始点32aは左側に位置しており、第1伝達カム面34の始点34aと第1緩衝カム面32の始点32aは、何れも第2中心線T2上に位置し、互いに180度対向した位置関係にある。
【0029】
<伝達コロ13とスライダ14>
スライダ14は、第1中心線T1を軸線とする円柱状である。スライダ14は、収容室20の壁面(ハウジング10の内面)に当接し、収容室20の壁面に支持される。スライダ14が左右方向に移動する際、収容室20の壁面に案内されて、収容室20の壁面を摺動する。尚、スライダ14には、作動油を左右方向に連通させるための図示しない貫通孔が形成されている。
【0030】
伝達コロ13はスライダ14の左部に配置されている。スライダ14には上下方向の軸線を有する第1支軸40が取り付けられている。伝達コロ13は、第1支軸40に軸受けを介して回転可能に支持されている。伝達コロ13は、カム12に接触して回転する。伝達コロ13は、カムフォロアである。伝達コロ13は、カム12に対応して上下二段の構成である。伝達コロ13は、上カム12aに対向した上伝達コロ13aと、下カム12bに対向した下伝達コロ13bとを有する。上伝達コロ13aは第2伝達フォロアであり、下伝達コロ13bは第1伝達フォロアである。上伝達コロ13aと下伝達コロ13bは互いに同軸上にある。上伝達コロ13aは、下伝達コロ13bよりも大径である。上伝達コロ13aと下伝達コロ13bは、互いに一体に形成されているが、互いに別体でもよい。上伝達コロ13aと下伝達コロ13bは、互いに上下に隣接している。上伝達コロ13aは、第1中心線T1よりも上側に位置し、下伝達コロ13bは、第1中心線T1よりも下側に位置する。下カム12bの第1伝達カム面34及び上カム12aの第2伝達カム面31と、上伝達コロ13a及び下伝達コロ13bとにより、閉じ力発生用の第1カム切り替え機構が構成されている。
【0031】
伝達コロ13とスライダ14は、一体となって左右方向に移動する。扉が開くときに、スライダ14は、カム12により右側に押されて移動し、第1バネ15と第2バネ16を圧縮する。扉が閉じるときには、スライダ14は、第1バネ15と第2バネ16の弾性復元力によって左側に押されて移動し、主軸11に扉を閉じるための閉じ力を発生させる。スライダ14の外周面には、左右方向に沿ってキー溝41が設けられている。ハウジング10には、先端部が収容室20に突出する規制ピン42が取り付けられている。規制ピン42の先端部はキー溝41に係合する。これにより、ハウジング10に対するスライダ14の左右方向の軸線まわりの回転が規制される。即ち、規制ピン42は、スライダ14の回り止めとして機能する。スライダ14の右端面には、係止ピン43が取り付けられている。係止ピン43の端部はスライダ14の右端面から突出していて、その突出部に第1バネ15が係止する。
【0032】
<第1バネ15と第2バネ16>
第1バネ15と第2バネ16は、スライダ14の右側に配置されている。第1バネ15と第2バネ16は、スライダ14を左側、即ち主軸11側に付勢している。第1バネ15と第2バネ16は、コイルバネであり、圧縮バネである。第1バネ15は、スライダ14とバネ押さえ44の間に介装されている。第1バネ15の左端部はスライダ14の右端面に当接している。第1バネ15の左端部が係止ピン43に係止していて、係止ピン43により第1バネ15の左右方向の軸線まわりの回転が規制されている。バネ押さえ44は、第1バネ15の右側に位置している。第1バネ15の右端部はバネ押さえ44に当接している。バネ押さえ44の左端面には、係止ピン43が取り付けられている。係止ピン43に第1バネ15の右端部が係止していて、係止ピン43により第1バネ15とバネ押さえ44との左右方向の軸線まわりの相対回転が規制されている。
【0033】
第2バネ16は、第1バネ15の径方向内側に介装されている。第2バネ16は、第1バネ15よりも小径である。第2バネ16は、第1バネ15よりも弱く、第2バネ16のバネ力は第1バネ15のバネ力よりも小さい。第1バネ15がメインバネであり、第2バネ16がサブバネである。第2バネ16も、スライダ14とバネ押さえ44の間に位置している。
【0034】
バネ押さえ44は、収容室20の壁面に案内されて左右方向に移動可能である。バネ押さえ44を調整軸45が左右方向に貫通している。調整軸45は、雄ネジ部を有し、バネ押さえ44の雌ネジ部に螺合している。調整軸45を回転させることによりバネ押さえ44を左右方向に移動させることができる。バネ押さえ44が左側に移動すると第1バネ15及び第2バネ16が圧縮されてバネ力が強くなる。逆に、バネ押さえ44が右側に移動すると第1バネ15及び第2バネ16の圧縮量が減少してバネ力が弱くなる。
【0035】
調整軸45は右側のエンドキャップ21を貫通している。調整軸45は、エンドキャップ21に回転可能に支持されている。調整軸45の右端部はエンドキャップ21の外側に突出していて、その右端部に第1調整ギヤ46が取り付けられている。第1調整ギヤ46は第2調整ギヤ47と噛み合っている。第2調整ギヤ47は、取付板2の下側に位置している。取付板2に操作軸48が回転可能に支持されている。操作軸48の下端部に第2調整ギヤ47が取り付けられている。取付板2の上側から操作軸48を回転操作することにより、第2調整ギヤ47を回転させることができる。第2調整ギヤ47を介して第1調整ギヤ46を回転させることにより、調整軸45を回転させてバネ押さえ44を左右方向に移動させることができる。本実施形態において、バネ押さえ44、調整軸45、第1調整ギヤ46、第2調整ギヤ47、及び、操作軸48により、バネ力調整機構が構成されている。
【0036】
収容室20には発泡ゴム49が収容されている。発泡ゴム49は、作動油の温度上昇による膨張を吸収するためのものである。発泡ゴム49は例えば棒状である。発泡ゴム49は例えば第2バネ16の径方向内側に配置される。
【0037】
<緩衝コロ17と緩衝ピストン18>
緩衝ピストン18は、第1中心線T1を軸線とする円柱状である。緩衝ピストン18は、収容室20の壁面(ハウジング10の内面)に当接し、収容室20の壁面に支持される。緩衝ピストン18が左右方向に移動する際、収容室20の壁面に案内されて、収容室20の壁面を摺動する。
【0038】
緩衝コロ17は緩衝ピストン18の右部に配置されている。緩衝コロ17と緩衝ピストン18は、一体となって左右方向に移動する。緩衝ピストン18の右部には上下方向の軸線を有する第2支軸50が取り付けられている。緩衝コロ17は、第2支軸50に回転可能に支持されている。緩衝コロ17は、カム12に接触して回転する。緩衝コロ17は、カムフォロアである。緩衝コロ17は、主軸11に対して、伝達コロ13の左右方向の反対側に位置する。緩衝コロ17と伝達コロ13は、主軸11を挟んで左右方向に対向している。
【0039】
緩衝コロ17は、カム12に対応して上下二段の構成である。緩衝コロ17は、上カム12aに対向した上緩衝コロ17aと、下カム12bに対向した下緩衝コロ17bとを有する。上緩衝コロ17aは第1緩衝フォロアであり、下緩衝コロ17bは第2緩衝フォロアである。上緩衝コロ17aと下緩衝コロ17bは互いに同軸上にある。上緩衝コロ17aは、下緩衝コロ17bよりも大径である。上緩衝コロ17aは、上伝達コロ13aよりも小径であり、下緩衝コロ17bは、下伝達コロ13bよりも小径である。上緩衝コロ17aと下緩衝コロ17bは、互いに一体に形成されているが、互いに別体でもよい。上緩衝コロ17aと下緩衝コロ17bは、互いに上下に隣接している。上緩衝コロ17aは、第1中心線T1よりも上側に位置し、下緩衝コロ17bは、第1中心線T1よりも下側に位置する。上カム12aの第1緩衝カム面32及び下カム12bの第2緩衝カム面35と、上緩衝コロ17a及び下緩衝コロ17bとにより、閉扉速度制御用の第2カム切り替え機構が構成されている。
【0040】
緩衝ピストン18は、収容室20を左右二つの領域に仕切る。ハウジング10には、閉扉速度をコントロールするための図示しない流量制御流路が設けられている。緩衝ピストン18は、閉扉動作時に作動油を流量制御流路に押し流すことにより、閉扉動作を緩衝する。緩衝ピストン18は、第2支軸50よりも左側に、緩衝ヘッド51を備えている。緩衝ピストン18は、その左端面に開口するバネ孔52を有する。バネ孔52に緩衝ヘッド51が挿入され固定されている。バネ孔52の右側には、バネ孔52と、収容室20のうち緩衝ピストン18よりも右側の領域とを左右方向に貫通する連通孔53が形成されている。
【0041】
バネ孔52に第3バネ19が位置している。第3バネ19は、緩衝ヘッド51と、左側のエンドキャップ21との間に介装されている。第3バネ19は、コイルバネであり、圧縮バネである。第3バネ19は、緩衝ヘッド51を右側に付勢している。緩衝ピストン18は、第3バネ19により右側に付勢されている。第3バネ19は、第1バネ15よりも弱く、第2バネ16よりも弱い。
【0042】
緩衝ヘッド51の中心部分には左右方向に沿って貫通孔54が形成されている。貫通孔54は連通孔53に近接していて連通孔53と連通している。貫通孔54には逆止弁が設けられている。開扉動作時に緩衝ピストン18は右側に移動する。開扉動作時に逆止弁の弁体であるボール55が左側に移動して弁を開き、作動油は貫通孔54を挿通できる。一方、閉扉動作時には緩衝ピストン18は左側に移動する。閉扉動作時には逆止弁のボール55が作動油の油圧によって右側に押されて貫通孔54を閉じ、作動油は貫通孔54を挿通できない。閉扉動作時に緩衝ピストン18によって左側に押される作動油は、迂回路である流量制御流路に押し込まれる。作動油は、流量制御流路を通って緩衝ピストン18よりも右側の領域に移動する。流量制御流路には、流量制御流路を流れる作動油の流量を制御するための調整弁56が配置されている。調整弁56はハウジング10の上側から調整可能である。流量制御流路を流れる作動油の流量を制御することにより、閉扉動作時の緩衝の程度を調整することができる。
【0043】
緩衝ピストン18の外周面には、左右方向に沿ってキー溝41が設けられている。ハウジング10には、先端部が収容室20に突出する規制ピン42が取り付けられている。規制ピン42の先端部はキー溝41に係合する。これにより、ハウジング10に対する緩衝ピストン18の左右方向の軸線まわりの回転が規制される。即ち、規制ピン42は、緩衝ピストン18の回り止めとして機能する。
【0044】
<開扉動作>
次に、閉扉状態から扉が開いていくときの動作について順に説明する。
図6(a)及び
図8は、閉扉状態を示している。閉扉状態においては、上カム12aは、上緩衝コロ17aに当接している一方、上伝達コロ13aには当接していない。上カム12aの第1緩衝カム面32が上伝達コロ13aに当接している。下カム12bは、下伝達コロ13bに当接している一方、下緩衝コロ17bには当接していない。下カム12bの第1伝達カム面34が下伝達コロ13bに当接している。閉扉状態において、スライダ14は最も左側に移動していて第1バネ15と第2バネ16は最も伸張した状態にあり、緩衝ピストン18は最も左側に移動していて第3バネ19は最も圧縮した状態にある。
【0045】
扉を開いていくと、アーム3と共に主軸11が回転し、主軸11と共に上カム12a及び下カム12bが回転する。下カム12bの第1伝達カム面34によって下伝達コロ13bが右側に押され、それによってスライダ14が右側にスライドしていく。スライダ14は、第1バネ15と第2バネ16を押して圧縮させる。第1伝達カム面34は、特に開き初めにおいて下伝達コロ13bを右側に大きく移動させ、第1バネ15と第2バネ16を大きく圧縮させる。
【0046】
上カム12aの第1緩衝カム面32は、その始点32aにおいて、カム12の中心からの距離が最も長い。上カム12aが回転することで、第1緩衝カム面32におけるカム12の中心からの距離は徐々に短くなる。それによって緩衝ピストン18は第3バネ19によって右側に押されて移動する。
【0047】
<緩衝切り替え角度>
図6(b)及び
図9は、扉の開き角度が45度の状態を示している。本実施形態では、扉の開き角度45度が緩衝切り替え角度である。この状態においては、下カム12bの第1伝達カム面34が引き続き下伝達コロ13bに当接している。上カム12aは上伝達コロ13aには当接していない。一方、上カム12aの第1緩衝カム面32はその終点32bに到達し、上緩衝コロ17aとの当接を終える。逆に、下カム12bの第2緩衝カム面35の始点35aが下緩衝コロ17bに当接する。即ち、45度の開き角度において、第1緩衝カム面32と上緩衝コロ17aとの当接状態が終了し、第2緩衝カム面35と下緩衝コロ17bとの当接状態が開始する。このように45度の開き角度において、第1緩衝カム面32から第2緩衝カム面35へとカム面が切り替わる。従って、引き続き、緩衝ピストン18は右側に移動できる。
【0048】
<伝達切り替え角度>
図7(a)及び
図10は、扉の開き角度(開扉角度)が80度の状態を示している。本実施形態では、扉の開き角度80度が伝達切り替え角度である。この状態においては、下カム12bの第1伝達カム面34はその終点34bに到達し、下伝達コロ13bとの当接を終える。逆に、上カム12aの第2伝達カム面31の始点31aが上伝達コロ13aに当接する。即ち、80度の開き角度において、第1伝達カム面34と下伝達コロ13bとの当接状態が終了し、第2伝達カム面31と上伝達コロ13aとの当接状態が開始する。このように80度の開き角度において、第1伝達カム面34から第2伝達カム面31へとカム面が切り替わる。従って、引き続き、スライダ14は右側に移動でき、第1バネ15と第2バネ16をスライダ14で圧縮できる。一方、下カム12bの第2緩衝カム面35は引き続き下緩衝コロ17bに当接している。上カム12aは上緩衝コロ17aとは当接していない。
【0049】
<最大移動角度>
図7(b)及び
図11は、扉の開き角度が120度の状態を示している。この状態においては、上カム12aの第2伝達カム面31は引き続き上伝達コロ13aに当接しているが、第2伝達カム面31はその終点31bの近くに到達する。下カム12bは、下伝達コロ13bとは当接していない。スライダ14は右側への最大移動状態に近い状態となる。一方、下カム12bの第2緩衝カム面35は、引き続き下緩衝コロ17bに当接しているが、第2緩衝カム面35は、その終点35bの近くに到達する。上カム12aは上緩衝コロ17aとは当接していない。緩衝ピストン18は右側へ最大移動状態に近い状態となる。尚、この後、扉の開き角度が120度を越えても僅かな範囲において、上カム12aの第2伝達カム12は上伝達コロ13aに当接し、下カム12bの第2緩衝カム面35は下緩衝コロ17bに当接する。
【0050】
図12に、扉の開き角度とスライダ14の移動量の関係を示している。このグラフにおいて、上側のライン(上下2段カム)は、本実施形態におけるスライダ14の移動量を示したものであり、下側のライン(シングルカム)は、カム12が一枚の構成であってカム切り替え機構を有していない構成におけるスライダ14の移動量を示したものである。このように上下2段カムは、シングルカムに比して比較的大きな開き角度においてもスライダ14を移動させることができて第1バネ15及び第2バネ16を圧縮させることができる。
図13に、扉の開き角度と閉じ力(トルク)との関係を示している。このグラフからもわかるように、上下2段カムは、シングルカムに比して、80度以上の開き角度における閉じ力が向上している。また、上下2段カムでは、90度付近に閉じ力のピークが現れている。
【0051】
また、
図14には、扉の開き角度と緩衝ピストン18の移動量との関係を示している。このように上下2段カム12の構成は、カム切り替え機構を有しないシングルカムの構成に比して緩衝ピストン18の移動量を全域に亘って増加させることができる。そのため、流量制御流路を流れる作動油の流量を増加させることができ、閉扉速度の調整が容易になる。
【0052】
尚、本実施形態では、上伝達コロ13aが下伝達コロ13bよりも大径であったが、例えば上伝達コロ13aと下伝達コロ13bが同径であってもよいし、上伝達コロ13aが下伝達コロ13bよりも小径であってもよい。一例として
図15では上伝達コロ13aと下伝達コロ13bが同径である場合を示している。この場合、上伝達コロ13aと下伝達コロ13bは同軸上にはなく、互いの支軸が異なる。即ち、上伝達コロ13aを支持する上支軸60が、下伝達コロ13bを支持する下支軸61よりも主軸11に近く、上伝達コロ13aは、下伝達コロa13bよりも主軸11に近い。上緩衝コロ17aと下緩衝コロ17bについても同様であって、上緩衝コロ17aと下緩衝コロ17bが同径であってもよいし、上緩衝コロ17aが下緩衝コロ17bよりも小径であってもよい。
【0053】
また、カム12、伝達コロ13及び緩衝コロ17が上下二段の構成であったが、上下三段等の構成としてもよい。例えば、
図16のように、カム12を上から順に第1カム71、第2カム72、第3カム73という三枚の板カムの構成としてもよい。この場合、第1カム71と第3カム73を同一形状として、それらを上述の上カム12aの代わりとし、また、第2カム72を上述の下カム12bの代わりとしてよい。伝達コロ13を上から順に第1伝達コロ81、第2伝達コロ82、第3伝達コロ83としてもよい。この場合、第1伝達コロ81と第3伝達コロ83を同一径として、それらを上述の上伝達コロ13aの代わりとし、また、第2伝達コロ82を上述の下伝達コロ13bの代わりとしてよい。緩衝コロ17を上から順に第1緩衝コロ91、第2緩衝コロ92、第3緩衝コロ93としてもよい。この場合、第1緩衝コロ91と第3緩衝コロ93を同一径として、それらを上述の上緩衝コロ17aの代わりとし、また、第2緩衝コロ92を上述の下緩衝コロ17bの代わりとしてよい。このように、上下対称の構成とすることも好ましい。
【0054】
上カム12aに第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32が設けられていたが、第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32を互いに上下に分けて設けてもよい。即ち、第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32が互いに異なる周面に分離して設けられてもよい。例えば第1上カムと第2上カムにそれぞれ第2伝達カム面31と第1緩衝カム面32を設けてもよい。同様に、下カム12bに第1伝達カム面34と第2緩衝カム面35が設けられていたが、第1伝達カム面34と第2緩衝カム面35を互いに上下に分けて設けてもよい。即ち、第1伝達カム面34と第2緩衝カム面35が互いに異なる周面に分離して設けられてもよい。例えば第1下カムと第2下カムにそれぞれ第1伝達カム面34と第2緩衝カム面35が設けられてもよい。また、伝達コロ13と緩衝コロ17もそれらに対応して上下に複数段備えてよい。
【0055】
更に、カム切り替え機構をスライダ14側と緩衝ピストン18側にそれぞれ備えたが、スライダ14側のみとしたり、緩衝ピストン18側のみとしたりしてもよい。また、緩衝ピストン18をカム12以外の機構によって駆動したり、あるいは、スライダ14をカム12以外の機構によって駆動したりしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ドアクローザ本体
2 取付板
3 アーム
10 ハウジング
11 主軸
11a 第1軸部材
11b 第2軸部材
12 カム
12a 上カム
12b 下カム
13 伝達コロ
13a 上伝達コロ(第2伝達フォロア)
13b 下伝達コロ(第1伝達フォロア)
14 スライダ
15 第1バネ(閉じ用バネ)
16 第2バネ(閉じ用バネ)
17 緩衝コロ
17a 上緩衝コロ(第1緩衝フォロア)
17b 下緩衝コロ(第2緩衝フォロア)
18 緩衝ピストン
19 第3バネ(緩衝バネ)
20 収容室
21 エンドキャップ
22 第1軸受けホルダ
23 第2軸受けホルダ
30 第1周面
31 第2伝達カム面
32 第1緩衝カム面
33 第2周面
34 第1伝達カム面
35 第2緩衝カム面
40 第1支軸
41 キー溝
42 規制ピン
43 係止ピン
44 バネ押さえ
45 調整軸
46 第1調整ギヤ
47 第2調整ギヤ
48 操作軸
49 発泡ゴム
50 第2支軸
51 緩衝ヘッド
52 バネ孔
53 連通孔
54 貫通孔
55 ボール
56 調整弁
60 上支軸
61 下支軸
71 第1カム
72 第2カム
73 第3カム
81 第1伝達コロ
82 第2伝達コロ
83 第3伝達コロ
91 第1緩衝コロ
92 第2緩衝コロ
93 第3緩衝コロ
T1 第1中心線
T2 第2中心線
T3 第3中止線