(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018285
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両ルーフサイド構造
(51)【国際特許分類】
B60R 21/213 20110101AFI20240201BHJP
B60N 3/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60R21/213
B60N3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121513
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 南巳
【テーマコード(参考)】
3B088
3D054
【Fターム(参考)】
3B088DB01
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA18
3D054BB21
3D054CC04
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】車両のルーフサイド部にエアバッグに沿ってアシストグリップを設ける車両ルーフサイド構造において、アシストグリップの取付部がエアバッグから膨張展開時に受ける入力荷重を低く抑えるのに有効な技術を提供する。
【解決手段】車両ルーフサイド構造101は、車両1のルーフサイド部2の内部空間2aに収容されるエアバッグ11と、ルーフサイド部2にエアバッグ11に沿って取り付けられるアシストグリップ20と、アシストグリップ20の取付部21とルーフサイド部2に収容されたエアバッグ11との間に介装されるエアバッグガイド30と、を備え、エアバッグガイド30は、エアバッグ11が膨張展開するときに取付部21の取付座面21aに向かうエアバッグ11の第1方向D1の動きを規制することによってエアバッグ11を第1方向D1よりも下向きの第2方向D2にガイドするように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフサイド部の内部空間に収容されるエアバッグと、
上記ルーフサイド部に上記エアバッグに沿って取り付けられるアシストグリップと、
上記アシストグリップの取付部と上記ルーフサイド部に収容された上記エアバッグとの間に介装されるエアバッグガイドと、
を備え、
上記エアバッグガイドは、上記エアバッグが膨張展開するときに上記取付部の取付座面に向かう上記エアバッグの第1方向の動きを規制することによって上記エアバッグを上記第1方向よりも下向きの第2方向にガイドするように構成されている、車両ルーフサイド構造。
【請求項2】
上記アシストグリップは、上記取付部の取付座面から上記ルーフサイド部の上記内部空間まで延びるように設けられたリブを有し、
上記エアバッグガイドは、上記アシストグリップに設けられている上記リブによって構成されている、請求項1に記載の車両ルーフサイド構造。
【請求項3】
上記アシストグリップは、上記取付部の車室側に取り付けられるキャップと、上記キャップに上記ルーフサイド部の上記内部空間まで延出するように設けられたキャップ飛散防止用のアンカーと、を備え、
上記リブは、上記アンカーと上記エアバッグとの間に介在する壁部を有する、請求項2に記載の車両ルーフサイド構造。
【請求項4】
上記リブは、上記ルーフサイド部の上記内部空間において上記アンカーを上記壁部で取り囲むように構成された筒状体である、請求項3に記載の車両ルーフサイド構造。
【請求項5】
上記アシストグリップの上記取付部には、アシストグリップ機能とは別の機能を有する機能部品が装着されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両ルーフサイド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ルーフサイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フロントピラートリムの取付構造が開示されている。この取付構造は、車両前部のフロントピラーとフロントピラーとの間に折り畳まれた状態で格納されるエアバッグと、フロントピラートリムに前後の取付部において取付けられるアシストグリップと、を備えている。エアバッグは、車両の衝突時に発生したガスにより車両側面に沿ってカーテン状に膨張展開することで、乗員の保護を図るように構成されている。アシストグリップは、乗員が把持することによってその乗員の乗降を楽に行えるようにするためのものであり、フロントピラートリムにエアバッグに沿って配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の取付構造は、アシストグリップをエアバッグと並走させて設ける構造ゆえ、アシストグリップの取付部の取付座面がエアバッグの膨張展開時にこのエアバッグから車室方向の入力荷重を受ける。このときの入力荷重が大きいとアシストグリップの取付部が車室側に押し出されるという問題を生じ得る。とりわけ、アシストグリップの取付部に、例えばコートフックなどの別機能を搭載する場合には、取付部が大型化する傾向にあり、取付部の取付座面がエアバッグから受ける入力荷重が増大する。また、上述のような問題は、エアバッグとアシストグリップが並走して設けられる構造であれば、車両の前後方向の前部のみならず、前後方向の中央部や後部においても同様に生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、車両のルーフサイド部にエアバッグに沿ってアシストグリップを設ける車両ルーフサイド構造において、アシストグリップの取付部がエアバッグから膨張展開時に受ける入力荷重を低く抑えるのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両のルーフサイド部の内部空間に収容されるエアバッグと、
上記ルーフサイド部に上記エアバッグに沿って取り付けられるアシストグリップと、
上記アシストグリップの取付部と上記ルーフサイド部に収容された上記エアバッグとの間に介装されるエアバッグガイドと、
を備え、
上記エアバッグガイドは、上記エアバッグが膨張展開するときに上記取付部の取付座面に向かう上記エアバッグの第1方向の動きを規制することによって上記エアバッグを上記第1方向よりも下向きの第2方向にガイドするように構成されている、車両ルーフサイド構造、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、アシストグリップは、車両のルーフサイド部の内部空間に収容されるエアバッグに沿って取り付けられる。すなわち、アシストグリップは、エアバッグと並走して配置される。エアバッグガイドは、アシストグリップの取付部とルーフサイド部に収容されたエアバッグとの間に介装される。このエアバッグガイドは、エアバッグが膨張展開するときにアシストグリップの取付部の取付座面に向かうエアバッグの第1方向の動きを規制して、このエアバッグを第1方向よりも下向きの第2方向にガイドするガイド機能を果たす。
【0008】
エアバッグガイドによるガイド機能によれば、エアバッグからアシストグリップの取付部の取付座面に入力される入力荷重を、エアバッグガイドを設けない場合に比べて低下させることができる。これにより、アシストグリップの取付部がエアバッグからの入力荷重によって車室側に押し出されにくくなる。また、エアバッグの第2方向への指向性を高めることができ、これにより、エアバッグの展開完了までに要する時間を短縮できる。
【0009】
上述の態様によれば、車両のルーフサイド部にエアバッグに沿ってアシストグリップを設ける車両ルーフサイド構造において、アシストグリップの取付部がエアバッグから膨張展開時に受ける入力荷重を低く抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の車両ルーフサイド構造を車内側からみた側面図。
【
図2】
図1中のエアバッグモジュールをエアバッグの展開完了状態にて示す側面図。
【
図3】
図1中のアシストグリップの取付部をキャップの取り外し状態にて示す斜視図。
【
図4】
図1中のアシストグリップの取付部を取付座面側から見た斜視図。
【
図7】
図6においてエアバッグの膨張展開時の様子を示す断面図。
【
図8】実施形態2の車両ルーフサイド構造について
図5に対応した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
なお、本明細書において、「膨張」とは、エアバッグの内部空間へのガス供給によって当該エアバッグが膨れてガス供給前の状態よりも大きくなる態様をいい、「展開」とは、予め所定の形状に折り畳まれたエアバッグが膨張する過程で折り畳み状態を解除するように拡張する態様をいう。このように、エアバッグの展開は実質的に膨張を伴うものであり、このときの態様は「膨張展開」と称される。
【0013】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、上記アシストグリップは、上記取付部の取付座面から上記ルーフサイド部の上記内部空間まで延びるように設けられたリブを有し、上記エアバッグガイドは、上記アシストグリップに設けられている上記リブによって構成されているのが好ましい。
【0014】
この車両ルーフサイド構造によれば、アシストグリップの取付座面に設けたリブによってエアバッグガイドを構成することによって、エアバッグのガイド機能のための専用部品を要しない。したがって、部品点数が増えるのを防ぐことができ、コスト低減効果を高めることができる。
【0015】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、上記アシストグリップは、上記取付部の車室側に取り付けられるキャップと、上記キャップに上記ルーフサイド部の上記内部空間まで延出するように設けられたキャップ飛散防止用のアンカーと、を備え、上記リブは、上記アンカーと上記エアバッグとの間に介在する壁部を有するのが好ましい。
【0016】
この車両ルーフサイド構造によれば、キャップ飛散防止用のアンカーとエアバッグとの間にリブの壁部を介在させることによって、エアバッグのガイド機能を有するリブに、アンカーがエアバッグから荷重を受けて破損するのを防ぐ保護機能を兼務させることができる。
【0017】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、上記リブは、上記ルーフサイド部の上記内部空間において上記アンカーを上記壁部で取り囲むように構成された筒状体であるのが好ましい。
【0018】
この車両ルーフサイド構造によれば、リブを筒状体とすることによって、リブ自体の剛性を高めることができる。そして、リブの高剛性化によって、エアバッグのガイド機能とアンカーの保護機能をともに向上させることができる。また、リブの壁部の厚みを小さく抑えることによって、リブの剛性を確保しつつその軽量化をも図ることができる。
【0019】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、上記アシストグリップの上記取付部には、アシストグリップ機能とは別の機能を有する機能部品が装着されているのが好ましい。
【0020】
この車両ルーフサイド構造によれば、アシストグリップの取付部が、アシストグリップ機能とは別の機能を有する機能部品の装着によって大型化した場合でも、この取付部がエアバッグによって膨張展開時に車室側に押し出されるのを抑制できる。
【0021】
以下、車両ルーフサイド構造の実施形態の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
なお、この説明で用いる図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示している。また、特に断わらない限り、車長方向に対応した前後方向を矢印Xで示し、車幅方向に対応した左右方向を矢印Yで示し、車高方向に対応した上下方向を矢印Zで示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の車両ルーフサイド構造(以下、単に「ルーフサイド構造」という。)101は、車両1の左右のルーフサイド部2のそれぞれに設けられる構造である。なお、ルーフサイド構造101は左右で同一であるため、
図1では車両1の右側のルーフサイド構造101のみを例示している。
【0024】
ルーフサイド部2の内部空間2aは、内装材3によって車室5側から覆われている。内装材3は、いずれも合成樹脂材料からなるルーフヘッドライニング(
図5中のルーフヘッドライニング3a)及びルーフガーニッシュ(
図5中のルーフガーニッシュ3b)によって構成されている。
【0025】
ルーフサイド構造101は、ルーフサイド部2の内部空間2aに組付けられるエアバッグモジュール10と、ルーフサイド部2の車室5側の部位に取り付けられるアシストグリップ20と、を備えている。
【0026】
1.エアバッグモジュール10の構造
図1に示されるように、エアバッグモジュール10は、車両1の窓部4aの上方領域から窓部4cの上方領域までの間に前後方向Xに沿って延びるように設けられている。このエアバッグモジュール10は、エアバッグ11と、エアバッグ11の内部に膨張展開用のガスを供給するためのインフレータ12と、エアバッグ11を保持するケース13と、を有する。
【0027】
エアバッグ11は、予め長尺状に折り畳まれた折り畳み状態でケース13に保持されてルーフサイド部2の内部空間2aに収容されている。このとき、エアバッグ11は、前後方向Xに沿って配置される。本形態のエアバッグ11は、ケース13から突出して車室5を上下方向Zの下向きにカーテン状に膨張展開するカーテンエアバッグである。
【0028】
エアバッグ11は、膨張展開が完了した状態で車両1の側方の複数の窓部4を覆うように配置され、車両1の乗員の頭部を保護するのに使用される。このエアバッグ11は、車両前側の第1エアバッグ部11aと、第1エアバッグ部11aよりも前後方向Xの後方側に配置される車両後側の第2エアバッグ部11bと、を有する。第1エアバッグ部11aは、膨張展開が完了した状態で複数の窓部4のうちの前席に対応した1つの窓部4aをカーテン状に覆うように構成されている。これに対して、第2エアバッグ部11bは、膨張展開が完了した状態で複数の窓部4のうちの後席に対応した2つの窓部4b,4cをカーテン状に覆うように構成されている。
【0029】
図2に示されるように、エアバッグモジュール10のインフレータ12は、車両1の衝突時等の衝撃発生時にエアバッグ11に膨張展開用のガスGを供給するガス供給部として構成されている。このインフレータ12は、エアバッグ11とともにルーフサイド部2の内部空間2aに収容されている。インフレータ12から供給されたガスGは、エアバッグ11の膨張展開に供される。
【0030】
エアバッグ11は、シート状の複数のエアバッグ基布を重ね合わせて縫合や接着等の接合を利用して袋状に形成されてなるエアバッグ形成体である。このエアバッグ11は、複数の取付部11cを有し、これら複数の取付部11cにおいてルーフサイド部2の被固定部(図示省略)に固定されている。
【0031】
エアバッグ11は、インフレータ12から袋内に供給されるガスGによって膨張しつつ折り畳みを解除するように展開していく。このとき、エアバッグ11は、ケース13から車室5に向けて突出する。最終的に、エアバッグ11は、車室側から見たとき、
図2に示されるような、車両側面を覆う展開完了状態になる。
【0032】
2.アシストグリップ20の構造
図1に示されるように、アシストグリップ20は、ルーフサイド部2の前後方向Xの中央部に設けられている。このアシストグリップ20は、その前後方向Xの両端部がこのアシストグリップ20をルーフサイド部2に取り付ける取付部21とされている。アシストグリップ20は、ルーフサイド部2に取り付けられた状態でエアバッグ11に沿って前後方向Xに延びるように配置される。このアシストグリップ20において、2つの取付部21の間の中間領域は、乗員が把持可能な把持部となる。このため、アシストグリップ20は、乗員が乗降時に把持部を把持することによって、当該乗員を支える機能、所謂「アシストグリップ機能」を発揮する。
【0033】
図3及び
図4に示されるように、アシストグリップ20は、アウタ22と、アウタ22の内側に一体状に設けられたインナ23と、キャップ27(
図3を参照)と、を有する。インナ23のうち取付部21に相当する部位には、凹部23b(
図3を参照)と、2つの貫通孔24,25と、が設けられている。
【0034】
図3に示されるように、凹部23bは、インナ23の車室側の内面23aを車外側に凹ませることにより形成されている。キャップ27は、インナ23の凹部23bを車室5側から塞ぐように取付部21に取り付けられる。このキャップ27は、その裏面から延出したキャップ飛散防止用のアンカー28を備えている。
【0035】
アンカー28は、本形態では板厚が概ね一様の板状片であり、その延出先端部は、板厚方向から見たときの形状が略矢印形状であるフック部28aとされている。フック部28aは、アンカー28の板幅方向の寸法が延出先端部に向かうにつれて一旦拡張されたのちに漸減するように形成されている。アンカー28は、キャップ27が取付部21に取り付けられたときに、インナ23の貫通孔24を通じてルーフサイド部2の内部空間2a(
図6を参照)まで延出するように寸法設定されている。
【0036】
図4に示されるように、アシストグリップ20は、インナ23のうちルーフサイド部2に対向する面が、取付部21の取付座面21aとなるように構成されている。このアシストグリップ20は、取付部21の取付座面21aから立設したリブ26を備えている。リブ26は、インナ23の貫通孔24を壁部26aで取り囲む筒状体であり、その閉断面(および、取付部21の取付座面21aを左右方向Yから見たときの形状)が略矩形をなすように構成されている。また、このリブ26は、取付部21がルーフサイド部2に取り付けられた状態でその壁部26aがルーフサイド部2の内部空間2a(
図6を参照)まで延びるように、壁部26aの立設高さが設定されている。
【0037】
なお、取付部21の取付座面21aに設けられるリブ26は、インナ23と一体成形されたものであってもよいし、或いは、インナ23に後付けによって接合される別部品であってもよい。
【0038】
図5に示されるように、アシストグリップ20の取付部21は、ボルト部材29とナット部材8を使用してルーフサイド部2に締結固定されている。この締結固定のために、ボルト部材29の軸部は、インナ23の貫通孔25を通じてルーフサイド部2の内部空間2aまで延出するように構成されている。一方で、インナパネル6側のブラケット7には、ボルト部材29の軸部に螺合するナット部材8が固定されている。なお、ブラケット7には、エアバッグモジュール10のケース13が取り付けられている。
【0039】
図6に示されるように、アンカー28は、キャップ27が取付部21に取り付けられた状態で、インナ23の貫通孔24を通じてルーフサイド部2の内部空間2aまで延出している。このとき、アンカー28は、キャップ27が取付部21から外れて車室5に飛散しようとする動きに対しては、このアンカー28のフック部28aが貫通孔24の開口縁に引っ掛かることでそのようなキャップ27の動きを防ぐ機能を発揮する。
【0040】
3.エアバッグガイド30の構造
図6に示されるリブ26は、エアバッグ11が膨張展開するときにこのエアバッグ11をガイドするエアバッグガイド30としてのガイド機能を果たす。このガイド機能を実現するために、リブ26は、アシストグリップ20の取付部21の取付座面21aからルーフサイド部2の内部空間2aまで延びるように設けられており、取付部21とルーフサイド部2に収容された折り畳み状態のエアバッグ11との間に介装されるように構成されている。具体的には、リブ26の壁部26aの一部が、取付部21の取付座面21aとエアバッグ11とを直線的に結ぶ経路上に介在している。
【0041】
また、このリブ26は、キャップ27が取付部21に取り付けられた状態で、ルーフサイド部2の内部空間2aにおいてキャップ27から延出しているアンカー28を壁部26aで取り囲む筒状体である。このとき、リブ26の筒内空間26bにアンカー28が収容される。したがって、リブ26は、その壁部26aの一部がアンカー28と折り畳み状態のエアバッグ11との間に介在するように構成されている。このため、リブ26は、エアバッグ11のガイド機能に加えて、アンカー28を保護する保護機能をも果たす。
【0042】
なお、リブ26は、アンカー28の保護機能を強化するために、その壁部26aがアンカー28のフック部28aよりも上方まで延出しているのが好ましい(
図6を参照)。一方で、アンカー28の所望の保護機能が得られることを条件に、アンカー28をリブ26の壁部26aよりも上方まで延出させた構造を採用してもよい。
【0043】
4.エアバッグ11の膨張展開動作
次に、
図2及び
図7を参照しながら、車両1に衝撃が発生してエアバッグ11が膨張展開するときの膨張展開動作について説明する。この説明によって、エアバッグガイド30としてのリブ26によるエアバッグ11のガイド機能、及びアンカー28の保護機能がより明確になる。
【0044】
図2に示されるように、車両1の衝突等の発生時に、車両1に配置されているセンサ(図示省略)に大きな衝撃が加わると、2つのインフレータ12が作動してほぼ同じタイミングでガスGが生成する。2つのインフレータ12で発生したガスGは、折り畳み状態のエアバッグ11の第1エアバッグ部11aと第2エアバッグ部11bのそれぞれの内部空間に供給される。これにより、折り畳み状態のエアバッグ11の膨張展開動作が開始される。
【0045】
図7に示されるように、エアバッグ11は、インフレータ12の作動に伴って、折り畳み状態である初期状態C0から第1作動状態C1および第2作動状態C2を経て展開完了状態(
図2を参照)に至るまで膨張展開する。このとき、ルーフヘッドライニング3aは、エアバッグ11から受ける荷重によって車室5側へ押し開かれる。これにより、ルーフサイド部2の内部空間2aのルーフヘッドライニング3aによる被覆が部分的に解除され、エアバッグ11が車室5に向けて突出可能な状態になる。
【0046】
エアバッグ11は、先ず、初期状態C0から第1作動状態C1へと変化する。この過程で、エアバッグ11は、ケース13を押し広げながらアシストグリップ20の取付部21の取付座面21aに向けて膨張展開する。このとき、リブ26の壁部26aは、取付部21の取付座面21aとエアバッグ11との間に介在しており、且つ第1方向D1を横切る方向に直線的に延びている。したがって、リブ26の壁部26aは、エアバッグ11と直に干渉し、或いはエアバッグ11によって押し開かれたケース13と直に干渉する。
【0047】
これにより、リブ26の壁部26aは、エアバッグ11側から荷重を受ける。このため、エアバッグ11が膨張展開するときにアシストグリップ20の取付座面21aに向かうエアバッグ11の第1方向D1の動きがリブ26の壁部26aによって規制される。そして、エアバッグ11は、リブ26の壁部26aによって第1方向D1よりも下向きの第2方向D2にガイドされる。このとき、エアバッグ11は、リブ26の壁部26aから反力を受けることで第2方向D2に選択的に膨張展開する。したがって、エアバッグ11を第1作動状態C1から第2作動状態C2へと短時間で膨張展開させることができる。このようにして、リブ26は、エアバッグ11をガイドするガイド機能を果たす。
【0048】
リブ26によるエアバッグ11のガイド方向は、物体の水平面で光が反射するときの現象のごとく変化する。すなわち、第1方向D1を直線的に延びる壁部26aに対する入射方向としたとき、第2方向D2は入射方向に対する反射方向となる。このため、この壁部26aの法線に対して第1方向D1がなす角と第2方向D2がなす角とは概ね一致する。このため、第1方向D1及び第2方向D2を予め想定したうえで、リブ26の壁部26aの形状や傾斜角度を設定するのが好ましい。
【0049】
リブ26によるエアバッグ11のガイド機能によれば、アシストグリップ20の取付座面21aがエアバッグ11から受ける入力荷重を下げることができ、エアバッグ11の一部がアシストグリップ20の取付座面21aとルーフサイド部2との間に潜り込むのを抑制できる。また、リブ26を設けない場合に比べて、エアバッグ11が第1作動状態C1から第2作動状態C2を経て最終的な展開完了状態になるまでに要する時間が短くなる。
【0050】
エアバッグ11が初期状態C0から第1作動状態C1へと変化するとき、エアバッグ11或いはエアバッグ11によって押し開かれたケース13がアンカー28と直に干渉するのをリブ26の壁部26aによって阻止できる。これにより、アンカー28がエアバッグ11の膨張展開時にエアバッグ11やケース13に直に接触して破損するのをリブ26の壁部26aによって防ぐことができる。このようにして、リブ26は、アンカー28を保護する保護機能を果たす。
【0051】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0052】
実施形態1の車両ルーフサイド構造101において、アシストグリップ20は、車両1のルーフサイド部2の内部空間2aに収容されるエアバッグ11に沿って取り付けられる。すなわち、アシストグリップ20は、エアバッグ11と並走して配置される。エアバッグガイド30としてのリブ26は、アシストグリップ20の取付部21とルーフサイド部2に収容されたエアバッグ11との間に介装される。このリブ26は、エアバッグ11が膨張展開するときにアシストグリップ20の取付部21の取付座面21aに向かうエアバッグ11の第1方向D1の動きを規制して、このエアバッグ11を第1方向D1よりも下向きの第2方向D2にガイドするガイド機能を果たす。
【0053】
リブ26によるガイド機能によれば、エアバッグ11からアシストグリップ20の取付部21の取付座面21aに入力される入力荷重を、リブ26を設けない場合に比べて低下させることができる。これにより、アシストグリップ20の取付部21がエアバッグ11からの入力荷重によって車室5側に押し出されにくくなる。また、エアバッグ11の第2方向D2への指向性を高めることができ、これにより、エアバッグ11の膨張展開完了までに要する時間を短縮できる。
【0054】
従って、上述の実施形態1によれば、車両1のルーフサイド部2にエアバッグ11に沿ってアシストグリップ20を設けるルーフサイド構造101において、アシストグリップ20の取付部21がエアバッグ11から膨張展開時に受ける入力荷重を低く抑えることが可能になる。
【0055】
上記のルーフサイド構造101によれば、アシストグリップ20の取付座面21aに設けたリブ26によってエアバッグガイド30を構成することによって、エアバッグ11のガイド機能のための専用部品を要しない。したがって、部品点数が増えるのを防ぐことができ、コスト低減効果を高めることができる。
【0056】
上記構成のルーフサイド構造101によれば、キャップ飛散防止用のアンカー28とエアバッグ11との間にリブ26の壁部26aを介在させることによって、エアバッグ11のガイド機能を有するリブ26に、アンカー28がエアバッグ11から荷重を受けて破損するのを防ぐ保護機能を兼務させることができる。
【0057】
上記構成のルーフサイド構造101によれば、リブ26を筒状体とすることによって、リブ26自体の剛性を高めることができる。そして、リブ26の高剛性化によって、エアバッグ11のガイド機能とアンカー28の保護機能をともに向上させることができる。また、リブ26の壁部26aの厚みを小さく抑えることによって、リブ26の剛性を確保しつつその軽量化をも図ることができる。
【0058】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、上述の実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0059】
(実施形態2)
図8に示されるように、実施形態2のルーフサイド構造102は、アシストグリップ20の取付部21に機能部品40が装着されている点で、実施形態1のルーフサイド構造101と相違している。アシストグリップ20の取付部21は、機能部品40が装着される構造にしたがって大型化される。機能部品40は、本来のアシストグリップ機能とは別の機能を有するものである。この機能部品40として、例えば、コートフック、マイク、カメラ、照明などの機能部品が挙げられる。
【0060】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0061】
実施形態2のルーフサイド構造102によれば、アシストグリップ20の取付部21が機能部品40の装着によって大型化した場合でも、この取付部21がエアバッグ11によって膨張展開時に車室5側に押し出されるのを抑制できる。
【0062】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0063】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0064】
上述の形態では、ルーフサイド構造101,102を構成するアシストグリップ20が、ルーフサイド部2の前後方向Xの中央部に設けられる場合について例示したが、このアシストグリップ20は、前後方向Xの前部(フロントピラートリム)や後部(リアピラートリム)に設けられるものであってもよい。
【0065】
上述の形態では、アシストグリップ20の取付部21に取り付けられるキャップ27がアンカー28を備える場合について例示したが、このキャップ27においてアンカー28は必要に応じて省略されていてもよい。この場合、リブ26は、エアバッグ11のガイド機能のみを果たすものとなる。このときも、リブ26を筒状体とすることによって、エアバッグ11から受ける入力荷重に対してリブ26の剛性を高めるのに有効である。
【0066】
上述の形態では、筒状体であるリブ26の閉断面形状が略矩形である場合について例示したが、リブ26の閉断面形状は略矩形に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、三角形、多角形などであってもよい。また、リブ26は、エアバッグ11のガイド機能とアンカー28の保護機能を果たすものであれば、その形状は断面が閉じた形状に限定されるものではない。
【0067】
上述の形態では、アシストグリップ20の取付部21に設けられたリブ26をエアバッグガイド30として使用する場合について例示したが、これに代えて、アシストグリップ20とは別の部材にエアバッグガイド30を設けるようにしてもよい。例えば、リブ26と同様の機能を果たす要素がインナパネル6からアシストグリップ20の取付座面21aの近傍まで延出するような構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
2 ルーフサイド部
5 車室
11 エアバッグ
20 アシストグリップ
21 取付部
21a 取付座面
26 リブ(エアバッグガイド)
26a 壁部
27 キャップ
28 アンカー
30 エアバッグガイド
40 機能部品
101,102 車両ルーフサイド構造
D1 第1方向
D2 第2方向