(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018303
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】加工食材の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20240201BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23L19/00 102Z
A23L5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121544
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】522304291
【氏名又は名称】ディーツフードプランニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大川 訓弘
【テーマコード(参考)】
4B016
4B035
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE03
4B016LG07
4B016LK01
4B016LK06
4B016LK13
4B016LP04
4B016LP05
4B016LP10
4B016LP11
4B016LQ05
4B035LC03
4B035LE11
4B035LG02
4B035LG12
4B035LG24
4B035LG33
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP43
4B035LP44
4B035LP45
(57)【要約】
【課題】こんにゃくを利用した加工食材において、十分に肉様の食感が感じられるものを提供する。
【解決手段】こんにゃく原料に水を加えてこんにゃく糊とし、これに油脂を投入し混練して油脂入りこんにゃく糊を調製する工程と、食物繊維質原料に、水に溶解又は分散させたアルカリ化剤を混和して食物繊維入り凝固剤を調製する工程と、前記油脂入りこんにゃく糊と前記食物繊維入り凝固剤とを混和して凝固前混和物を得る工程と、前記凝固前混和物を加熱し凝固させる工程とを含む、加工食材の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
こんにゃく原料に水を加えてこんにゃく糊とし、これに油脂を投入し混練して油脂入りこんにゃく糊を調製する工程と、食物繊維質原料に、水に溶解又は分散させたアルカリ化剤を混和して食物繊維入り凝固剤を調製する工程と、前記油脂入りこんにゃく糊と前記食物繊維入り凝固剤とを混和して凝固前混和物を得る工程と、前記凝固前混和物を加熱し凝固させる工程とを含む、加工食材の製造方法。
【請求項2】
前記食物繊維質原料としておから粉末を用いる、請求項1記載の加工食材の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ化剤として貝殻焼成カルシウム粉末又は食用水酸化カルシウム粉末を用いる、請求項1記載の加工食材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、こんにゃくを利用した加工食材に関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃくは、おでんや煮物などに利用され、広く親しまれている食品である。こんにゃくは、こんにゃく粉やこんにゃく芋をすりおろしたものを水で練ってこんにゃく糊にした後、アルカリ化剤を含む凝固剤を添加し、加熱により不可逆性のゲルを形成させ、凝固させることにより製造されている。こんにゃくの原料となるこんにゃく芋には、水溶性多糖類であるマンナンがおよそ10質量%程度含まれており、こんにゃくはこの多糖類マンナンが主成分となっている。
【0003】
近年、食生活の多様化や健康志向の高まりにともなって、こんにゃくを利用して、様々な食感や風味を与えて変化をもたせた加工食材を展開することも行われている。そのような試みとして、例えば、特許文献1、2には、こんにゃく糊中に、おから等の食物繊維質原料とともに、生タマゴを添加して、均一に混和し、その後アルカリ液によって凝固させることにより、食肉感を有する加工食材が得られることが記載されている。
【0004】
また、こんにゃく原料に他の食材を混和し加工する場合、食材を均一に混合したり、こんにゃくをその食材と一体的にこんにゃく原料を凝固したりすることが難しいといった問題があった。
【0005】
このような問題に関連して、例えば、特許文献3には、凝固剤を配合せずにこんにゃく精粉と水とのみ混和してこんにゃく糊を調製し、前記凝固剤を含むおからと、凝固剤を含まないこんにゃく糊とを混練し、得られた混練物を加熱、凝固することにより、おからをこんにゃくの多糖類と強固に結着させることができ、パサつき感のない食品とすることができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3498087号公報
【特許文献2】特許第3721351号公報
【特許文献3】実用新案登録第3124102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの研究によると、こんにゃく糊におから等の食物繊維質原料を混和して加工すると、こんにゃく本来の食感を離れて新たな食感を呈するようになるものの、肉様の食感としては十分とはいえない場合が少なくなかった。
【0008】
本発明の目的は、こんにゃくを利用した加工食材において、十分に肉様の食感が感じられるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究した結果、こんにゃくを利用した加工食材の製造工程において、油脂を効果的に用いることで、肉様のジューシー感を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、こんにゃく原料に水を加えてこんにゃく糊とし、これに油脂を投入し混練して油脂入りこんにゃく糊を調製する工程と、食物繊維質原料に、水に溶解又は分散させたアルカリ化剤を混和して食物繊維入り凝固剤を調製する工程と、前記油脂入りこんにゃく糊と前記食物繊維入り凝固剤とを混和して凝固前混和物を得る工程と、前記凝固前混和物を加熱し凝固させる工程とを含む、加工食材の製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明においては、前記食物繊維質原料としておから粉末を用いることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記アルカリ化剤として貝殻焼成カルシウム粉末又は食用水酸化カルシウム粉末を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、こんにゃくを利用した加工食材の製造工程において、油脂を効果的に用いたので、肉様の食感に優れた加工食材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[こんにゃく原料]
本発明に用いるこんにゃく原料は、こんにゃく芋由来の水溶性多糖類であるマンナンを含み、そのマンナンが水分と共存することにより糊化して、これによりこんにゃく糊を形成し得るものであればよい。例えば、生芋のすりおろし、球茎から皮を取り除いて薄くスライスして乾燥させ、必要に応じて粉砕したもの(一般に「荒粉」と称される。)、荒粉を細粉に粉砕しつつ比重の軽い部分(澱粉質)を取り除いたもの(一般に「精粉」と称される。)、精粉をアルコール等で処理して、グルコマンナン以外の不純物を除き精製したものなどが挙げられる。通常こんにゃく糊はゼリー状又はペースト状をしており、これに更にアルカリ化剤を共存させ、加熱することにより、上記こんにゃく芋由来のマンナンによる不可逆性のゲルが形成されて、凝固する。工業的にこんにゃくを製造する場合に用いられるこんにゃく原料の主流は精粉であり、本発明においても好ましく使用され得る。
【0015】
[アルカリ化剤]
本発明に用いるアルカリ化剤は、こんにゃく糊をアルカリ化して、上記こんにゃく芋由来マンナンによる不可逆性のゲルを形成させて、該こんにゃく糊を凝固させることができるものであればよい。例えば、貝殻焼成カルシウム、卵殻焼成カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。工業的にこんにゃくを製造する場合に用いられるこんにゃく原料の主流は貝殻焼成カルシウム粉末や食用水酸化カルシウム粉末などであり、本発明においても好ましく使用され得る。
【0016】
[油脂]
本発明に用いる油脂は、例えば、食用動物油(牛脂、豚脂、羊脂、ヘット、ラード、マトンタロー等)、食用植物油(大豆油、トウモロコシ油、なたね油、落花生油、米ぬか油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、ごま油、パーム油、やし油、さざんか油、つばき油、かやの油等)、魚油(タラ油、イワシ油、肝油、ニシン油、サバ油、イカ油等)、油性ペースト状食品(ごまペースト、バターピーナッツ等)、香辛料由来油(ラー油、芥子油、丁子油、シソ油等)、油脂性乳製品(バター、チーズ、マーガリン等)、卵黄油、カカオ脂などが挙げられる。また、油脂として、油脂を含む食品素材(米糠、魚のすり身等)を用いてもよい。
【0017】
[食物繊維質原料]
本発明に用いる食物繊維質原料は、例えば、おから、大豆加工品、野菜類(エンドウ豆、だいこん、ごぼう、かぼちゃ、にんじん、キャベツ、はくさい、ほうれん草、きゅうり、セロリ、モロヘイヤ、青ピーマン、トマト、トウモロコシ、ゴマなど)、キノコ類(きくらげ、しいたけ、なめこ、えのきなど)、果物類(柿、いちじく、プルーン、アボカド、バナナ、なし、リンゴなど)、海藻類(ヒジキ、海苔、わかめ、昆布など)などが挙げられる。
【0018】
[工程1]
本発明においては、こんにゃく原料に水を加えてこんにゃく糊とし、これに油脂を投入し混練して、油脂入りこんにゃく糊を調製する。本工程により、投入した油脂が水分を含む状態の多糖類マンナンにアクセスして、その多糖類による網目構造に水分と油分とをまんべんなくいきわたらせることができる。
【0019】
こんにゃく原料に加える水の量としては、限定されないが、例えば、こんにゃく原料の乾燥分1質量部に対して、外割で1~100質量部の水量であってよく、5~50質量部の水量であってよい。油脂入りこんにゃく糊を形成させる際の温度条件としては、限定されないが、例えば、10~30℃の範囲の温度条件であってよく、15~23℃の範囲の温度条件であってよい。
【0020】
油脂の投入量としては、限定されないが、例えば、投入対象であるこんにゃく糊の湿潤重量の100質量部に対し、外割で1~200質量部の投入量であってよく、5~100質量部の投入量であってよい。10~80質量部の投入量であってよい。
【0021】
[工程2]
本発明においては、食物繊維質原料に、水に溶解又は分散させたアルカリ化剤を混和して食物繊維入り凝固剤を調製する。本工程により調製される食物繊維入り凝固剤は、アルカリ化剤の成分が食物繊維の成分に適度に包摂されていて、こんにゃく糊を不可逆的に凝固させる際に徐放的に作用させることができる。よって、これにより、使用した食物繊維質原料がこんにゃく糊中で不均一に凝固するのを防ぎ、まんべんなく一体化するのを助ける。
【0022】
アルカリ化剤の混和量としては、例えば、その使用するアルカリ化剤の種類や、所望する凝固スピード、得られる凝固物の硬さ性状等に応じて、適宜所望の使用量を決定することができる。
【0023】
食物繊維質原料の混和量としては、限定されないが、例えば、アルカリ化剤を含む溶液又は分散液の100質量部に対し、外割で、該食物繊維質原料の乾燥分として1~200質量部の混和量であってよく、5~100質量部の混和量であってよい。10~80質量部の混和量であってよい。
【0024】
限定されない任意の態様において、食物繊維質原料は、好ましくは12メッシュパス以下、より好ましくは300メッシュパス以下の細粉に調製して用いることができる。これによれば、粒径が揃えられているのでこんにゃく糊中にまんべんなくいきわたらせ、一体化させるのに寄与する。また、アルカリ化剤の成分を包摂するための表面積を増大させることができる。
【0025】
限定されない任意の態様において、食物繊維質原料は、水分の少ない乾燥状に調製されたものを用いることが好ましい。これによれば、アルカリ化剤の成分を含む溶液又は分散液を、乾燥状の食物繊維質原料に含侵させやすく、ひいては、アルカリ化剤の成分を食物繊維の成分に適度に包摂させやすくなる。
【0026】
[工程3]
本発明においては、油脂入りこんにゃく糊と食物繊維入り凝固剤とを混和して凝固前混和物を得る。本工程により、以降の加熱処理により凝固させる前の段階の凝固前混和物が得られる。凝固前であり、適当な容器に詰めるなどして任意の形状に成形することが可能である。形状として、例えば、立方体、直方体、球状、ドーム状、多角柱状、多角錘状、たわら状、ソーセージ形状、ハンバーグ形状などが挙げられる。
【0027】
油脂入りこんにゃく糊と食物繊維入り凝固剤との混和比は、限定されないが、例えば、油脂入りこんにゃく糊の湿潤重量の100質量部に対し、外割で、該凝固剤に含まれる食物繊維質原料の乾燥分として1~100質量部の混和比であってよく、1~50質量部の混和比であってよく、2~40質量部の混和比であってよい。
【0028】
また、得られる加工食材には、その湿潤重量の100質量部中に、内割で、上記投入した油脂が1~40質量部含有するようにすることが好ましく、5~30質量部含有するようにすることがより好ましい。油脂が含まれることにより、得られる加工食材に脂感や肉様のジューシー感が付与される。
【0029】
また、本発明により提供される加工食材には、その湿潤重量の100質量部中に、内割で、上記投入した食物繊維質原料が、該食物繊維質原料の乾燥分として1~20質量部含有するようにすることが好ましく、1~15質量部含有するようにすることがより好ましい。食物繊維質原料が含まれることにより、得られる加工食材に繊維感や肉様の歯ごたえを付与することができる。また、調味液などが滲み込みやすくなる。
【0030】
[工程4]
本発明においては、凝固前混和物を加熱し凝固させる。本工程により、油脂入りこんにゃく糊を、使用した凝固剤に含まれる食物繊維質原料とともに、これがこんにゃく糊中にまんべんなく分散した状態で一体的に凝固させることができる。これにより、本発明の加工食材が得られる。
【0031】
加熱処理の温度条件としては、限定されないが、例えば、60~100℃の範囲の温度条件であってよく、65~95℃の範囲の温度条件であってよい。また、加熱処理の方法としては、限定されないが、例えば、凝固前の混和物を、直方体形状の缶などの容器に詰めて、湯水に漬けたり蒸気で蒸したりすることなどにより行うことができる。
【0032】
限定されない任意の態様においては、上記工程の後、凝固物を水洗することが好ましい。これにより、原料に由来するアクを抜き、苦味などの異味や不快味、アルカリ臭を低減させることができる。水洗は、例えば、コンテナ容器にいれて浸したり、網カゴに入れて水を流しかけるなどにより行うことができる。
【0033】
限定されない任意の態様においては、上記工程の後、凝固物を適当な大きさに裁断したり、真空包装等により包装したり、ボイル殺菌にかけたりしてもよい。
【0034】
なお、本発明においては、上記に説明した原料の他、一般的な各種の味剤、着色料等の使用が妨げられるものではなく、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜、使用可能である。そのような食品素材は、例えば、油脂入りこんにゃく糊や食物繊維入り凝固剤の調製時に混和せしめてもよく、あるいは、油脂入りこんにゃく糊と食物繊維入り凝固剤とを混和するとき、一緒に混和せしめたりしてもよい。
【実施例0035】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
<試験例1>
製造工程において油脂を投入する量やタイミングを変え、こんにゃくを利用した加工食材を製造した。
【0037】
(調製例1)
10℃の冷水70リットルにこんにゃく精粉の3kgを投入し、低速で撹拌混合して、ゼリー状のこんにゃく糊を調製し、これになたね油の10kgを投入し、高速で撹拌混合して、おからに水分をムラなく混合させるように混練した。以下、この混練物を「油脂入りこんにゃく糊」という場合がある。
【0038】
一方、乾燥おから粉末(おからパウダー)の8kgを撹拌装置付き容器内に投入して、5分間撹拌し、撹拌された状態の乾燥おから粉末に、60℃の湯水20リットルに水酸化カルシウム粉末200gを溶かした水酸化カルシウム溶液を投入した。水酸化カルシウム溶液を全量投入した後、撹拌混合を継続して、おからに水分をムラなく混合させるように混練した。以下、この混練物を「おから凝固剤」という場合がある。
【0039】
油脂入りこんにゃく糊とおから凝固剤とを混練機に投入し、高速で2分間混練して、全混練物を調製した。この全混練物を、長方形状をした容器に詰め替えて、95℃とした湯水に入れて2時間加熱し、凝固させた。
【0040】
凝固後、容器から取り出して、板状に裁断加工した後に、25℃以下の冷水に1時間浸漬して一次冷却した。一次冷却後に真空包装した。この包装状態で90℃とした加熱環境下で1時間保存して加熱殺菌処理を行った。加熱殺菌処理後、10℃以下の冷水中に浸漬し、中心部まで冷却して二次冷却を行った。この二次冷却後に冷凍庫にいれて冷凍保存した。
【0041】
(調製例2)
こんにゃく糊に20kgのなたね油を投入した以外は調製例1と同様にして、こんにゃくを利用した加工食材を得た。
【0042】
(調製例3)
こんにゃく糊に30kgのなたね油を投入した以外は調製例1と同様にして、こんにゃくを利用した加工食材を得た。
【0043】
(調製例4)
こんにゃく糊に油脂を投入する替わりに、おから凝固剤の調製時に10kgのなたね油を投入した以外は調製例1と同様にして、こんにゃくを利用した加工食材を得た。
【0044】
[1.官能評価]
得られた加工食材について、パネラー5名により盲検にて試食を行い、過去の食経験を元に、合議にて以下の基準で点数付けを行った。
(歯ごたえ度)
4点 非常に歯ごたえがある
3点 歯ごたえがある
2点 歯ごたえがあまりない
1点 歯ごたえがない
(脂感)
4点 脂感が十分にある
3点 脂感がある
2点 脂感があまりない
1点 脂感がない
(パサパサ感)
4点 パサパサ感がない
3点 パサパサ感があまりない
2点 パサパサ感がある
1点 パサパサ感が強い
(食肉感)
4点 非常に食肉感がある
3点 食肉感がある
2点 食肉感があまりない
1点 食肉感がない
【0045】
[2.ボイル時の離水]
加熱凝固前の全混練物の一部について重量計測を行い、これを真空袋に入れて120分間ボイルを行った後に重量計測して、その重量差から離水率を求めた。
【0046】
[3.解凍時の離水]
加熱凝固後の凝固物の一部について重量計測を行い、これを真空袋に入れて24時間冷凍して、12時間の冷蔵解凍を行った後に重量計測して、その重量差から離水率を求めた。
【0047】
表1には官能評価の結果を、ボイル時の離水、解凍時の離水の結果とともに示す。
【0048】
【0049】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)およそ70リットルのこんにゃく糊になたね油を10kg投入した調製例1や20kg投入した調製例2では、マイルドな味わいであり、且つ、歯ごたえがありバサツキ感がなく、脂感があって、食肉に近いジューシーな食感が得られた。
(2)調製例1や調製例2と同様にこんにゃく糊に油脂を投入し、その投入量を30kgとした調製例3では、調製例1や調製例2と比べてやや歯ごたえや脂感に劣る傾向がみられた。また、食感全体としては肉の脂身のような食感となる傾向がみられた。
(3)油脂を投入するタイミングをおから凝固剤の調製時とした調製例4では、こんにゃく糊と混和する際におからが均一に混ざりにくく、ダマになりやすくなってしまった。またその結果、脂感が部位によって変わっってしまうため、油脂の投入量が同じ調製例1と比べて脂感に劣る傾向がみられた。
(4)こんにゃく糊に油脂を投入した調製例1~3では、調製例4と比べて加熱凝固時や解凍時の離水量が増加しており、これにより水っぽさのない、より食肉に近い食感が得られたものと考えられた。
(5)別途、調製例1~3の加工食材を調味液に浸して煮たところ、その調味液の滲み込み具合も良好であった。また、調製例4と比べてこんにゃく臭も低減され、よりマイルドな味わいのものが得られた。