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  • 特開-ATPとタンパク質合成量の計算方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001831
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ATPとタンパク質合成量の計算方法
(51)【国際特許分類】
   G99Z 99/00 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
G99Z99/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022113539
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】317001677
【氏名又は名称】陌間 委子
(72)【発明者】
【氏名】陌間 委子
(57)【要約】
【課題】効果的なATPとタンパク質合成量の計算方法
【解決手段】当明細書、及び、請求項に記した一連の計算式に、適宜、体重、ATP摂取カロリー、あるいは、タンパク質の合成量を任意に設定することにより(但し、生物学的、あるいは、生命科学的に許容でき、安全、かつ、実現可能な範囲内で)、その値に応じたそれぞれの項目の値を算出することができ、ATPを用いた効果的なタンパク質合成を実現できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成人の一日当たりのタンパク質合成に必要なATPの量を表す[数式1]
【数1】
【請求項2】
[数式1]を、一日当たりに合成されるタンパク質の値、300~400gで割ることによって得られる、成人のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量[数式4]
【数4】
【請求項3】
この時、体重Xkgの人が、一日当たりタンパク質をYg合成するものとして、体重1kg当たりのタンパク質合成量を示した[数式5]
【数5】
【請求項4】
[数式5]に[数式4]のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を代入することによって得られた、1kg当たりのタンパク質合成に要するATPの量[数式6]
【数6】
【請求項5】
[数式6]にXを乗じた、Xkgの成人の一日当たりYgのタンパク質合成に必要なATP量を表す[数式7]
【数7】
【請求項6】
[数式7]を、ATP1mol=507gの値でmol変換した[数式8]
【数8】
【請求項7】
エネルギー放出反応により、ATP1mol当たり放出される7.3kcalのエネルギーを[数式8]に代入して得られる、体重Xkgの成人が一日にYgのタンパク質を合成するのに必要なATPのカロリー量を表す式[数式9]
【数9】
【請求項8】
タンパク質合成に使われるのは、ATPとGTPの約44%([非特許文献4]参照)であることから、[数式9]によって得られる値を、必要な摂取ATPカロリー量の44%と見做した場合の、Ygのタンパク質合成に必要なATPの摂取カロリー量を表す式[数式10](但し、成人のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を表す係数;(71.5~102.66)、及び、タンパク質合成に使われるATPの割合;0.44は、成人以外、動物など、それぞれの場合に適した値によって代替可能。)
【数10】
【請求項9】
[数式10]の値に、リサイクルされるATPのエネルギー放出量のうち、タンパク質合成に使われる4,818kcal(44%)([数式3]参照)を加算した、体重Xkgの成人のYgのタンパク質合成に必要なATPの総エネルギー量を表す[数式11](但し、成人のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を表す係数;(71.5~102.66)、及び、タンパク質合成に使われるATPの割合;0.44は、成人以外、動物など、それぞれの場合に適した値によって代替可能。)
【数11】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATPとタンパク質合成量の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栄養計算に関する研究は進歩してきたが、本発明の方法を用いたATPとタンパク質合成量の計算方法は、未だ考案されていない。この発明は、エネルギー代謝の原理に基づく、ATPとタンパク質合成量の計算方法に関するものである。
【0003】
【非特許文献1】「これ知ってるかい!」出典、「ATPはリサイクルされて使われる」、2018年3月13日、最終更新2020年5月29日、[online]、[令和4年6月18日検索]、インターネット<URL:https://wisdom.kuni-naka.com/1944>
【非特許文献2】小長洋子 著、「ノーベル賞を受賞『オートファジー』とは何か」、2016年10月3日、[online]、[令和4年6月18日検索]、インターネット<URL:https://toyokeizai.net/articles/-/138721>
【非特許文献3】
【非特許文献4】

【非特許文献5】フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』出典、「グアノシン三リン酸」、最終更新 2021年12月22日、[online]、[令和4年6月21日検索]、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%82%B7%E3%83%B3%E4%B8%89%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8>
【非特許文献6】CLESSIR 出典、「エネルギーを作るATP(アデノシン三リン酸)|エネルギー源は糖質or脂質??」、2020年9月6日、[online]、[令和4年6月22日検索]、インターネット<URL:https://clessir.com/health/energy_atp_001/1396/#i>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
効果的なATPとタンパク質合成量の計算方法
【課題を解決するための手段】
【0005】
生物が使うエネルギーATP(アデノシン三リン酸)は、主にブドウ糖からミトコンドリアで作られる。ヒトの場合、成人1人が1日に必要なATPの量は65~70キログラムと言われており、自分の体重くらいのATPを1日に使っている。体内にあるATPの推定量はいつの時点でもほぼ40~50グラムしかなく、これは1分間で使い切ってしまう量である。ATP分子は細胞内でつくられると、1秒以内に消費(加水分解)され、アデノシン2リン酸(ADP)とリン酸になり、そのADPはすぐにATPにつくり直され、ミトコンドリアで1日、1500回くらいリサイクルされている。ATPではリン酸が3つ結合した構造をつくっており、このうち2つ目と3つ目のリン酸基の間をつなぐリン酸結合が切断されると、ADPとリン酸になり、ATP1mol当たり7.3kcalというエネルギーが放出される。(エネルギー放出反応)([選択図1]参照、[非特許文献1]引用)
【0006】
この点、最もエネルギーを多く使っているプロセスはタンパク質合成であり,実にATPとGTPの44%以上がタンパク質合成に使われている。([非特許文献4]引用)
【0007】
ヒトの体の中では毎日300~400gのタンパク質が合成されており、不足分は、自分の体を構成している細胞の中にあるタンパク質をアミノ酸に分解し、再利用することで補っている。([非特許文献3]引用)
【0008】
以下、上記の条件を考慮し、例えば、60kgの成人が、一日当たり300~400gのタンパク質を合成するとして、その為の一日当たりの必要摂取ATPカロリー量を計算する。
先ず、成人1人が1日に必要なATPの量は65~70kgであることと、ATPとGTPの44%以上がタンパク質合成に使われていることから、タンパク質合成に必要なATP量の計算式を以下に表す。
【数1】
この式は、ヒトの成人の一日当たりのタンパク質合成に必要なATPの量を表す。
【0008】
しかし、ATPがミトコンドリアで1日1500回くらいリサイクルされていることを考慮に入れると、一日に必要なATPの量に、リサイクルされるATPの量を加算すべきかどうかを検討する必要がある。
この点、ATPが1500回リサイクルされるということは、
【数2】
上記の値が、ATPの放出エネルギーとして、加算されて費やされているということである。
このエネルギー数値が、摂食によって外部から体内に摂取する類のものではないことは、およそ明白であるが([非特許文献6]参照)、このうち、タンパク質合成に使われる44%を次の式によって導く。
【数3】
上記のエネルギー量を、タンパク質合成に必要なエネルギー量の検討の際に、含めて考えるかどうかは、測定の目的と状況に依る。摂食による摂取は無理であろうが、例えば、臨床などで、体内の代謝機能の衰えに応じて、塩基やアミノ酸などと共に、ATPを補給する必要がある場合などには、必要となるであろう。
【0009】
尚、GTPは、ATPのリン酸の受け渡しによって生成し、リン酸を介してATPと互換性を有するため、ここでは二次的に扱い、ATPの総量のみを考慮に入れることとする。([非特許文献4]、及び[非特許文献5]参照)
【0010】
一方、タンパク質は、成人では一日当たり300~400g合成されているため、[数式1]をこの値で割ることによって、タンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を計算する。この段階では未だ、リサイクルされるATPの量は、計算に含めないこととする。
【数4】
【0011】
この時、体重60kgの人が、一日当たりタンパク質を300~400g合成するものとして、必要なATPカロリーを計算する。先ず、60kgのタンパク質合成量を60で割り、1kg単位に換算すると、以下、体重1kg当たりのタンパク質合成量を示す式が成り立つ。
【数5】
この式に、[数式4]で得られた、タンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を代入することによって、1kg当たりのタンパク質合成に要するATPの量が分かる。
【数6】
【0012】
さらに、上の式に60を乗じて、体重60kgの成人の一日当たり300~400gのタンパク質合成に必要なATPの量を求める。
【数7】
【0013】
このとき、ATP1mol=507gであることから、上の式をmol変換したものは、次の式の通りである。
【数8】
【0014】
また、エネルギー放出反応により、ATP1mol当たり7.3kcalのエネルギーが放出されることから、上の式のmol値から得られるエネルギーを求める。
【数9】
これによって、60kgの成人が、一日に300~400gのタンパク質を合成するのに必要なATPカロリー量が分かった。
【0015】
しかし、タンパク質合成に使われるのは、ATPとGTPの約44%([非特許文献4]参照)である。よって、必要摂取ATPカロリーを以下の式によって求める。
【数10】
【0016】
さらに、上記の値に、[数式3]にて得られた、リサイクルされるATPのエネルギー放出量4,818kcalを加算すると、必要ATPエネルギー量は[数式11]に示す値となり、この場合も、おおよそ、摂食によって外部から体内に摂取すべき類の値でないことは明白である。([非特許文献6]参照)よって、リサイクルされるエネルギーであることからも、[数式11]は、タンパク質合成に必要な実際のATPエネルギー総量として留意するにとどめ、摂食など、通常の手段で体外から摂取すべきATPカロリー量としては、その計算に含めないこととし、臨床の場合には、状況に応じて考慮するものとする。
【数11】
【0017】
以上、[数式10]の値を以て、60kgの成人が一日当たり300~400gのタンパク質を合成するのに必要なATP摂取カロリー量が示された。
【0018】
また、同様の方法で、一連の計算式に、適宜、体重、ATP摂取カロリー、あるいは、タンパク質の合成量を任意に設定することにより(但し、生物学的、あるいは、生命科学的に許容でき、安全、かつ、実現可能な範囲内で)、その値に応じたそれぞれの項目の値を算出することができる。
【発明の効果】
【0019】
ATPを用いた効果的なタンパク質合成を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
当明細書に記した、一連の計算式に、適宜、体重、ATP摂取カロリー、あるいは、タンパク質の合成量を任意に設定することにより(但し、生物学的、あるいは、生命科学的に許容でき、安全、かつ、実現可能な範囲内で)、その値に応じたそれぞれの項目の値を算出することができ、ATPを用いた効果的なタンパク質合成を実現できる。
【実施例0021】
上記の通り実施される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本明細書に記した、一連の計算の手法の組み合わせによる、ATPを用いた効果的なタンパク質合成の方法に、産業上の利用可能性がある。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成人の一日当たりのタンパク質合成に必要なATPの量を表す[数式1]
【数1】
【請求項2】
[数式1]を、一日当たりに合成されるタンパク質の値、300~400gで割ることによって得られる、成人のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量[数式4]
【数4】
【請求項3】
この時、体重Xkgの人が、一日当たりタンパク質をYg合成するものとして、体重1kg当たりのタンパク質合成量を示した[数式5]
【数5】
【請求項4】
[数式5]に[数式4]のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を代入することによって得られた、体重Xkgの人が、体重1kg当たりのタンパク質合成に要するATPの量[数式6]
【数6】
【請求項5】
[数式6]にXを乗じた、Xkgの成人の一日当たりYgのタンパク質合成に必要なATP量を表す[数式7]
【数7】
【請求項6】
[数式7]を、ATP1mol=507gの値でmol変換した[数式8]
【数8】
【請求項7】
エネルギー放出反応により、ATP1mol当たり放出される7.3kcalのエネルギーを[数式8]に代入して得られる、体重Xkgの成人が一日にYgのタンパク質を合成するのに必要なATPのカロリー量を表す式[数式9]
【数9】
【請求項8】
タンパク質合成に使われるのは、ATPとGTPの約44%([非特許文献4]参照)であることから、[数式9]によって得られる値を、必要な摂取ATPカロリー量の44%と見做した場合の、Ygのタンパク質合成に必要なATPの摂取カロリー量を表す式[数式10](但し、成人のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を表す係数;(71.5~102.66)、及び、タンパク質合成に使われるATPの割合;0.44は、成人以外、動物など、それぞれの場合に適した値によって代替可能。)
【数10】
【請求項9】
[数式10]の値に、リサイクルされるATPのエネルギー放出量のうち、タンパク質合成に使われる4,818kcal(44%)([数式3]参照)を加算した、体重Xkgの成人のYgのタンパク質合成に必要なATPの総エネルギー量を表す[数式11](但し、成人のタンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を表す係数;(71.5~102.66)、及び、タンパク質合成に使われるATPの割合;0.44は、成人以外、動物など、それぞれの場合に適した値によって代替可能。)
【数11】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATPとタンパク質合成量の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栄養計算に関する研究は進歩してきたが、本発明の方法を用いたATPとタンパク質合成量の計算方法は、未だ考案されていない。この発明は、エネルギー代謝の原理に基づく、ATPとタンパク質合成量の計算方法に関するものである。
【0003】
【非特許文献1】「これ知ってるかい!」出典、「ATPはリサイクルされて使われる」、2018年3月13日、最終更新2020年5月29日、[online]、[令和4年6月18日検索]、インターネット<URL:https://wisdom.kuni-naka.com/1944>
【非特許文献2】小長洋子著、「ノーベル賞を受賞『オートファジー』とは何か」、2016年10月3日、[online]、[令和4年6月18日検索]、インターネット<URL:https://toyokeizai.net/articles/-/138721>
【非特許文献3】
【非特許文献4】フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』出典、「アデノシン三リン酸」、最終更新 2022年5月29日、[online]、[令和4年6月21日検索]、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%87%E3%83%8E%E3%82%B7%E3%83%B3%E4%B8%89%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8#:~:text=%CE%94G%C2%B0%E2%80%99%20%3D%20%E2%88%9230.5%20kJ%2Fmol%20%28%E2%88%927.3%20kcal%2Fmol%29%20ATP%20%2B,%E3%83%94%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8%20%EF%BC%89%20%CE%94G%C2%B0%E2%80%99%20%3D%20%E2%88%9245.6%20kJ%2Fmol%20%28%E2%88%9210.9%20kcal%2Fmol%29>
【非特許文献5】フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』出典、「グアノシン三リン酸」、最終更新 2021年12月22日、[online]、[令和4年6月21日検索]、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%82%B7%E3%83%B3%E4%B8%89%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8>
【非特許文献6】CLESSIR出典、「エネルギーを作るATP(アデノシン三リン酸)|エネルギー源は糖質or脂質??」、2020年9月6日、[online]、[令和4年6月22日検索]、インターネット<URL:https://clessir.com/health/energy_atp_001/1396/#i>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
効果的なATPとタンパク質合成量の計算方法
【課題を解決するための手段】
【0005】
生物が使うエネルギーATP(アデノシン三リン酸)は、主にブドウ糖からミトコンドリアで作られる。ヒトの場合、成人1人が1日に必要なATPの量は65~70キログラムと言われており、自分の体重くらいのATPを1日に使っている。体内にあるATPの推定量はいつの時点でもほぼ40~50グラムしかなく、これは1分間で使い切ってしまう量である。ATP分子は細胞内でつくられると、1秒以内に消費(加水分解)され、アデノシン2リン酸(ADP)とリン酸になり、そのADPはすぐにATPにつくり直され、ミトコンドリアで1日、1500回くらいリサイクルされている。ATPではリン酸が3つ結合した構造をつくっており、このうち2つ目と3つ目のリン酸基の間をつなぐリン酸結合が切断されると、ADPとリン酸になり、ATP1mol当たり7.3kcalというエネルギーが放出される。(エネルギー放出反応)([選択図1]参照、[非特許文献1]引用)
【0006】
この点、最もエネルギーを多く使っているプロセスはタンパク質合成であり,実にATPとGTPの44%以上がタンパク質合成に使われている。([非特許文献4]引用)
【0007】
ヒトの体の中では毎日300~400gのタンパク質が合成されており、不足分は、自分の体を構成している細胞の中にあるタンパク質をアミノ酸に分解し、再利用することで補っている。([非特許文献3]引用)
【0008】
以下、上記の条件を考慮し、例えば、60kgの成人が、一日当たり300~400gのタンパク質を合成するとして、その為の一日当たりの必要摂取ATPカロリー量を計算する。
先ず、成人1人が1日に必要なATPの量は65~70kgであることと、ATPとGTPの44%以上がタンパク質合成に使われていることから、タンパク質合成に必要なATP量の計算式を以下に表す。
【数1】
この式は、ヒトの成人の一日当たりのタンパク質合成に必要なATPの量を表す。
【0009】
しかし、ATPがミトコンドリアで1日1500回くらいリサイクルされていることを考慮に入れると、一日に必要なATPの量に、リサイクルされるATPの量を加算すべきかどうかを検討する必要がある。
この点、ATPが1500回リサイクルされるということは、
【数2】
上記の値が、ATPの放出エネルギーとして、加算されて費やされているということである。このエネルギー数値が、摂食によって外部から体内に摂取する類のものではないことは、およそ明白であるが([非特許文献6]参照)、このうち、タンパク質合成に使われる44%を次の式によって導く。
【数3】
上記のエネルギー量を、タンパク質合成に必要なエネルギー量の検討の際に、含めて考えるかどうかは、測定の目的と状況に依る。摂食による摂取は無理であろうが、例えば、臨床などで、体内の代謝機能の衰えに応じて、塩基やアミノ酸などと共に、ATPを補給する必要がある場合などには、必要となるであろう。
【0010】
尚、GTPは、ATPのリン酸の受け渡しによって生成し、リン酸を介してATPと互換性を有するため、ここでは二次的に扱い、ATPの総量のみを考慮に入れることとする。([非特許文献4]、及び[非特許文献5]参照)
【0011】
一方、タンパク質は、成人では一日当たり300~400g合成されているため、[数式1]をこの値で割ることによって、タンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を計算する。この段階では未だ、リサイクルされるATPの量は、計算に含めないこととする。
【数4】
【0012】
この時、体重60kgの人が、一日当たりタンパク質を300~400g合成するものとして、必要なATPカロリーを計算する。先ず、60kgのタンパク質合成量を60で割り、1kg単位に換算すると、以下、体重1kg当たりのタンパク質合成量を示す式が成り立つ。
【数5】
この式に、[数式4]で得られた、タンパク質1g当たりの生成に必要なATPの量を代入することによって、1kg当たりのタンパク質合成に要するATPの量が分かる。
【数6】
【0013】
さらに、上の式に60を乗じて、体重60kgの成人の一日当たり300~400gのタンパク質合成に必要なATPの量を求める。
【数7】
【0014】
このとき、ATP1mol=507gであることから、上の式をmol変換したものは、次の式の通りである。
【数8】
【0015】
また、エネルギー放出反応により、ATP1mol当たり7.3kcalのエネルギーが放出されることから、上の式のmol値から得られるエネルギーを求める。
【数9】
これによって、60kgの成人が、一日に300~400gのタンパク質を合成するのに必要なATPカロリー量が分かった。
【0016】
しかし、タンパク質合成に使われるのは、ATPとGTPの約44%([非特許文献4]参照)である。よって、必要摂取ATPカロリーを以下の式によって求める。
【数10】
【0017】
さらに、上記の値に、[数式3]にて得られた、リサイクルされるATPのエネルギー放出量4,818kcalを加算すると、必要ATPエネルギー量は[数式11]に示す値となり、この場合も、おおよそ、摂食によって外部から体内に摂取すべき類の値でないことは明白である。([非特許文献6]参照)よって、リサイクルされるエネルギーであることからも、[数式11]は、タンパク質合成に必要な実際のATPエネルギー総量として留意するにとどめ、摂食など、通常の手段で体外から摂取すべきATPカロリー量としては、その計算に含めないこととし、臨床の場合には、状況に応じて考慮するものとする。
【数11】
【0018】
以上、[数式10]の値を以て、60kgの成人が一日当たり300~400gのタンパク質を合成するのに必要なATP摂取カロリー量が示された。
【0019】
また、同様の方法で、一連の計算式に、適宜、体重、ATP摂取カロリー、あるいは、タンパク質の合成量を任意に設定することにより(但し、生物学的、あるいは、生命科学的に許容でき、安全、かつ、実現可能な範囲内で)、その値に応じたそれぞれの項目の値を算出することができる。
【発明の効果】
【0020】
ATPを用いた効果的なタンパク質合成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1ATPの化学構造
【発明を実施するための形態】
【0022】
当明細書に記した、一連の計算式に、適宜、体重、ATP摂取カロリー、あるいは、タンパク質の合成量を任意に設定することにより(但し、生物学的、あるいは、生命科学的に許容でき、安全、かつ、実現可能な範囲内で)、その値に応じたそれぞれの項目の値を算出することができ、ATPを用いた効果的なタンパク質合成を実現できる。
【実施例0023】
上記の通り実施される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本明細書に記した、一連の計算の手法の組み合わせによる、ATPを用いた効果的なタンパク質合成の方法に、産業上の利用可能性がある。