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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018313
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】垂直離着陸航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/26 20060101AFI20240201BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240201BHJP
   B64C 11/00 20060101ALI20240201BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240201BHJP
【FI】
B64C27/26
B64C27/08
B64C11/00
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121567
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】相澤 凡
(72)【発明者】
【氏名】塚本 宗紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉村 介作
(57)【要約】      (修正有)
【課題】垂直離着陸航空機(VTOL)のロータの回転を同時に停止させる際にもVTOL機の乗り心地の悪化を抑制する技術を提供する。
【解決手段】垂直離着陸航空機10において、複数の前記VTOLロータ20は複数のグループに分けられ、各々のVTOLロータ20はいずれか1つのグループに含まれており、コントローラは、翼(前翼14、後翼16)による揚力が発生した後に、複数のVTOLロータ20の回転をグループ単位で順次停止させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向の推力を発生させる複数のVTOLロータと、
水平方向の推力を発生させる1以上のクルーズロータと、
機体の前記水平方向の移動に伴い揚力を発生させる1以上の翼と、
複数の前記VTOLロータと1以上の前記クルーズロータの各々の動作を制御するコントローラと、
を備える垂直離着陸航空機であって、
複数の前記VTOLロータは複数のグループに分けられ、各々の前記VTOLロータはいずれか1つの前記グループに含まれており、
前記コントローラは、前記翼による揚力が発生した後に、複数の前記VTOLロータの回転をグループ単位で順次停止させる、垂直離着陸航空機。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直離着陸航空機であって、
複数の前記グループは、垂直離着陸航空機の重心から各々の前記VTOLロータまでの距離に応じて分けられる、垂直離着陸航空機。
【請求項3】
請求項2に記載の垂直離着陸航空機であって、
各々の前記グループは、前記距離が同じである複数の前記VTOLロータによって構成される、垂直離着陸航空機。
【請求項4】
請求項3に記載の垂直離着陸航空機であって、
各々の前記グループは、更に前後方向の位置が同じである複数の前記VTOLロータによって構成される、垂直離着陸航空機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の垂直離着陸航空機であって、
前記コントローラは、前記重心から遠い前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させる、垂直離着陸航空機。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の垂直離着陸航空機であって、
前記コントローラは、前記重心に近い前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させる、垂直離着陸航空機。
【請求項7】
請求項4に記載の垂直離着陸航空機であって、
前記コントローラは、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループが存在する場合に、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループのうち、後方に位置する前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させる、垂直離着陸航空機。
【請求項8】
請求項4に記載の垂直離着陸航空機であって、
前記コントローラは、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループが存在する場合に、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループのうち、前方に位置する前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させる、垂直離着陸航空機。
【請求項9】
請求項1に記載の垂直離着陸航空機であって、
1つの前記VTOLロータに1つずつ接続される複数のモータを備え、
前記コントローラは、前記モータを制御して、前記VTOLロータの回転を停止させると共に前記VTOLロータの回転角度を所定角度に固定する、垂直離着陸航空機。
【請求項10】
請求項9に記載の垂直離着陸航空機であって、
前記モータは、蓄電装置に接続される、垂直離着陸航空機。
【請求項11】
請求項10に記載の垂直離着陸航空機であって、
複数の前記グループには、第1グループと第2グループとが含まれ、
前記第1グループの1つの前記VTOLロータに接続される1つの前記モータと、前記第2グループの1つの前記VTOLロータに接続される1つの前記モータとは、それぞれ共通の前記蓄電装置に接続される、垂直離着陸航空機。
【請求項12】
請求項1に記載の垂直離着陸航空機であって、
前記コントローラは、前記機体の姿勢が安定していることを検出した後に、複数の前記VTOLロータの回転を前記グループ単位で順次停止させる、垂直離着陸航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のVTOLロータと1以上のクルーズロータとを備える垂直離着陸航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、垂直離着陸航空機、所謂VTOL機が開発されている。一部のタイプのVTOL機は、複数のVTOLロータと1以上のクルーズロータとを備える。VTOLロータは、鉛直方向の推力を発生させる。VTOLロータは、主にVTOL機の離着陸工程で使用される。クルーズロータは、水平方向の推力を発生させる。クルーズロータは、主にVTOL機の巡航工程で使用される。
【0003】
VTOLロータの各々のブレードは、VTOL機の巡航中に空気抵抗を受ける。つまり、VTOLロータは、VTOL機の巡航中に抗力を発生させる。VTOL機の巡航中には、VTOLロータに起因する抗力を小さくすることが好ましい。特許文献1には、VTOL機の巡航中に各々のVTOLロータの回転を停止させることで抗力を低減する技術が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10131426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、複数のVTOLロータの回転を停止させる手順が示されていない。例えば、全てのVTOLロータの回転を同時に停止させると、VTOL機の乗り心地が悪化する虞がある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、鉛直方向の推力を発生させる複数のVTOLロータと、水平方向の推力を発生させる1以上のクルーズロータと、機体の前記水平方向の移動に伴い揚力を発生させる1以上の翼と、複数の前記VTOLロータと1以上の前記クルーズロータの各々の動作を制御するコントローラと、を備える垂直離着陸航空機であって、複数の前記VTOLロータは複数のグループに分けられ、各々の前記VTOLロータはいずれか1つの前記グループに含まれており、前記コントローラは、前記翼による揚力が発生した後に、複数の前記VTOLロータの回転をグループ単位で順次停止させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、VTOL機の乗り心地の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、垂直離着陸航空機の上面図である。
図2図2は、垂直離着陸航空機の電力供給システムのブロック図である。
図3図3は、第1のグルーピングを示す図である。
図4図4は、第2のグルーピングを示す図である。
図5図5は、第1のグルーピングにおける各列のVTOLロータの回転速度の時間変化を示すグラフである。
図6図6は、第1のグルーピングにおける各列のVTOLロータの回転速度の時間変化を示すグラフである。
図7図7は、第1のグルーピングにおける各列のVTOLロータの回転速度の時間変化を示すグラフである。
図8図8は、第2のグルーピングにおける各列のVTOLロータの回転速度の時間変化を示すグラフである。
図9図9は、第2のグルーピングにおける各列のVTOLロータの回転速度の時間変化を示すグラフである。
図10図10は、第2のグルーピングにおける各列のVTOLロータの回転速度の時間変化を示すグラフである。
図11図11は、制御部が行う停止処理のフローチャートである。
図12図12は、図1の垂直離着陸航空機とは異なるタイプの垂直離着陸航空機の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1 垂直離着陸航空機10の構成]
図1は、垂直離着陸航空機10の上面図である。以下では、垂直離着陸航空機10をVTOL機10とも称する。VTOL機10は、例えば電動垂直離着陸航空機、所謂eVTOL機である。VTOL機10は、胴体12と、前翼14と、後翼16と、2つのブーム18と、8つのVTOLロータ20と、2つのクルーズロータ22とを備える。
【0011】
図1で示されるVTOL機10は、本発明を使用する航空機の一例である。本発明は、前進に伴い固定翼による揚力が発生する状態で複数のVTOLロータ20を停止させる航空機の全般に使用可能である。
【0012】
前翼14は、胴体12の前部に接続される。後翼16は、胴体12の後部に接続される。前翼14及び後翼16は、VTOL機10の前方への移動に伴い揚力を発生させる。
【0013】
2つのブーム18のうちのブーム18Rは、胴体12の右方に配置される。2つのブーム18のうちのブーム18Lは、胴体12の左方に配置される。各々のブーム18は、前後方向に延びる。
【0014】
ブーム18Lには、後方に向かって順番に4つのモータ40(図2)が配置される。同様に、ブーム18Rには、後方に向かって順番に4つのモータ40が配置される。各々のモータ40の回転軸は、各々のモータ40に対応するVTOLロータ20に連結される。モータ40の回転軸とVTOLロータ20との間には1つ以上のギヤが介在されてもよい。VTOLロータ20の軸線は、鉛直方向と平行である。又は、VTOLロータ20の軸線は、鉛直方向に対して所定角度傾いてもよい。各々のVTOLロータ20は、垂直方向の離陸工程、離陸から巡航への移行工程、巡航から着陸への移行工程、垂直方向の着陸工程、及び、停止飛行工程で使用される。各々のVTOLロータ20は、プロペラの回転によって鉛直方向の推力を発生させる。
【0015】
図1で示されるように、8つのVTOLロータ20は、左右方向に延びる4つの列24、すなわち第1列24a~第4列24dを形成する。前方から後方に向かって、第1列24a、第2列24b、第3列24c、第4列24dが順番に並ぶ。各々の列24は、前後方向の位置が実質的に同一である2つのVTOLロータ20によって形成される。第1列24aは、胴体12の左方に配置されるVTOLロータ20-1Lと、胴体12の右方に配置されるVTOLロータ20-1Rとによって形成される。第2列24bは、胴体12の左方に配置されるVTOLロータ20-2Lと、胴体12の右方に配置されるVTOLロータ20-2Rとによって形成される。第3列24cは、胴体12の左方に配置されるVTOLロータ20-3Lと、胴体12の右方に配置されるVTOLロータ20-3Rとによって形成される。第4列24dは、胴体12の左方に配置されるVTOLロータ20-4Lと、胴体12の右方に配置されるVTOLロータ20-4Rとによって形成される。
【0016】
胴体12には、左右に並ぶ2つのモータ40(図2)が配置される。各々のモータ40の回転軸は、各々のモータ40に対応するクルーズロータ22に連結される。モータ40の回転軸とクルーズロータ22との間には複数のギヤが介在されてもよい。クルーズロータ22の軸線は、水平方向と略平行である。各々のクルーズロータ22は、巡航工程、離陸から巡航への移行工程、及び、巡航から着陸への移行工程で使用される。各々のクルーズロータ22は、プロペラの回転によって水平方向の推力を発生させる。
【0017】
[2 電力供給システム30の構成]
VTOL機10は、図2で示される電力供給システム30を有する。図2は、垂直離着陸航空機10の電力供給システム30のブロック図である。電力供給システム30は、蓄電装置32と、発電装置34と、コンバータ装置36と、インバータ装置38と、モータ40と、センサ群42と、制御装置44とを備える。図2において、実線の矢印は電力供給線を示し、破線は信号線を示す。なお、本明細書では発電装置34を備える電力供給システム30について説明するが、電力供給システム30は、発電装置34を備えなくてもよい。
【0018】
インバータ装置38とモータ40とは、1つのロータ(VTOLロータ20又はクルーズロータ22)に対して1つずつ設けられる。一方、蓄電装置32と発電装置34とコンバータ装置36とは、複数のロータ(VTOLロータ20又はクルーズロータ22)に対して1つずつ設けられる。言い換えると、蓄電装置32と発電装置34とコンバータ装置36とは、複数の電力供給システム30で共用される。例えば、互いにトルクを打ち消しあう一対のVTOLロータ20(例えばVTOLロータ20-1LとVTOLロータ20-4R)に対して、同じ蓄電装置32が設けられてもよい。
【0019】
蓄電装置32は、例えば高電圧のバッテリを有する。発電装置34は、発電機を有する。発電機の回転軸は、例えばガスタービンエンジンの回転軸に接続される。コンバータ装置36は、コンバータ回路を有する。1つの発電装置34に対して、1つのコンバータ装置36が設けられる。コンバータ回路の一次端子は、発電装置34に接続される。コンバータ回路の二次端子は、蓄電装置32とインバータ装置38とに接続される。コンバータ装置36は、発電装置34から出力される交流電力を直流電力に変換して、蓄電装置32とインバータ装置38とに出力することができる。また、コンバータ装置36は、発電装置34から出力される電力の電圧を変圧して、蓄電装置32とインバータ装置38とに出力することができる。
【0020】
インバータ装置38は、例えば三相のインバータ回路を有する。インバータ回路は、複数のスイッチング素子を有する。インバータ回路の一次端子は、蓄電装置32とコンバータ装置36とに接続される。インバータ回路の二次端子は、モータ40に接続される。インバータ装置38は、蓄電装置32とコンバータ装置36の少なくとも一方から出力される直流電力を交流電力に変換して、モータ40に出力することができる。
【0021】
モータ40は、例えば三相モータである。上述したように、モータ40の回転軸は、直接又は1つ以上のギヤを介して1つのロータ(VTOLロータ20又はクルーズロータ22)のハブに接続される。
【0022】
センサ群42は、VTOL機10が備えるセンサを含む。例えば、センサ群42は、1つ以上の角速度センサを含む。1つ以上の角速度センサは、VTOL機10のピッチとロールとヨーの少なくとも1つを検出する。各々のセンサは、検出した情報を示す信号を制御装置44に出力する。
【0023】
制御装置44は、電力供給システム30を制御する。制御装置44は、例えばVTOL機10のフライトコントローラであってもよいし、フライトコントローラによって管理されるスレーブコントローラであってもよい。制御装置44は、制御部46と、記憶部48と、ドライバ50とを有する。
【0024】
制御部46は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであってもよい。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であってもよい。プロセッサは、記憶部48に記憶されるプログラムを実行することによって各種の処理を実行可能である。複数の処理のうちの少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実行されてもよい。
【0025】
制御部46は、各々のモータ40を制御するために、ドライバ50に制御信号を出力する。これにより、制御部46は、例えば、翼(前翼14、後翼16)による揚力が発生した後に、8つのVTOLロータ20の回転をグループ単位で順次停止させる。
【0026】
記憶部48は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用される。揮発性メモリは、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用される。不揮発性メモリは、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。記憶部48の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられてもよい。
【0027】
不揮発性メモリは、複数のVTOLロータ20の停止順序(下記[4]参照)を記憶する。例えば、不揮発性メモリは、各々のグループ(下記[3]参照)と各々のVTOLロータ20との対応関係と、各々のグループに割り当てられる停止順位とを記憶する。又は、不揮発性メモリは、各々のグループに割り当てられる停止順位の代わりに、各々のVTOLロータ20に割り当てられる停止順位を記憶してもよい。この場合、1つの停止順位が複数のVTOLロータ20に割り当てられる。
【0028】
ドライバ50は、ゲートドライバ回路を有する。ドライバ50は、制御部46から出力される制御信号に応じて、インバータ装置38のインバータ回路が有する各々のスイッチング素子にオンオフ信号を出力する。また、コンバータ装置36がスイッチング素子を有する場合、ドライバ50は、コンバータ装置36の各々のスイッチング素子にオンオフ信号を出力する。
【0029】
[3 複数のVTOLロータ20のグルーピング]
本発明では、8つのVTOLロータ20は、予め複数のグループに分けられる。複数のグループは、例えばVTOL機10の重心G(図1)から各々のVTOLロータ20までの距離に応じて分けられる。この距離を離間距離ともいう。以下でグループ分けの幾つかのパターンを例示する。
【0030】
[3-1 第1のグルーピング]
図3は、第1のグルーピングを示す図である。重心Gから同一列内の2つのVTOLロータ20までの離間距離は同じである。そこで、第1のグルーピングでは、同一列内の2つのVTOLロータ20が同一グループを構成する。言い換えると、前後方向の位置が同じである複数のVTOLロータ20は、同一グループを構成する。例えば、図3で示される形態においては、第1列24aの2つのVTOLロータ20は、グループAを構成する。第2列24bの2つのVTOLロータ20は、グループBを構成する。第3列24cの2つのVTOLロータ20は、グループCを構成する。第4列24dの2つのVTOLロータ20は、グループDを構成する。
【0031】
[3-2 第2のグルーピング]
図4は、第2のグルーピングを示す図である。第2のグルーピングでは、重心Gからの離間距離が同じである全てのVTOLロータ20が同一グループを構成する。例えば、図4で示される形態においては、第1列24aの2つのVTOLロータ20と第4列24dの2つのVTOLロータ20とは、グループAを構成する。第2列24bの2つのVTOLロータ20と、第3列24cの2つのVTOLロータ20とは、グループBを構成する。
【0032】
[3-3 第3のグルーピング]
互いにトルクを打ち消しあう一対のVTOLロータ20が同一グループを構成してもよい。例えば、第1列24aのVTOLロータ20-1Lと第4列24dのVTOLロータ20-4Rとは、互いにトルクを打ち消しあう。第1列24aのVTOLロータ20-1Rと第4列24dのVTOLロータ20-4Lとは、互いにトルクを打ち消しあう。第2列24bのVTOLロータ20-2Lと第3列24cのVTOLロータ20-3Rとは、互いにトルクを打ち消しあう。第2列24bのVTOLロータ20-2Rと第3列24cのVTOLロータ20-3Lとは、互いにトルクを打ち消しあう。これらの4対のVTOLロータ20が4つのグループを構成してもよい。
【0033】
[3-4 その他のグルーピング]
第1~第3のグルーピング以外のグルーピングであってもよい。例えば、第1~第3の各々のグルーピングにおいて、2つ以上のグループが更に同一グループにまとめられてもよい。
【0034】
なお、複数のVTOLロータ20は、離間距離にかかわらず、複数のVTOLロータ20がグルーピングされてもよい。例えば、複数のVTOLロータ20は、VTOLロータ20の位置に応じてグルーピングされてもよい。同一列内に3以上のVTOLロータ20を備えるVTOL機10がある。この列内には、重心Gからの離間距離が相対的に長いVTOLロータ20と、重心Gからの離間距離が相対的に短いVTOLロータ20とが含まれる。このようなVTOL機10においては、同一列内の3以上のVTOLロータ20が、離間距離にかかわらず、同一グループを構成してもよい。
【0035】
[4 複数のVTOLロータ20の停止順序]
上述したように、記憶部48は、VTOLロータ20の停止順序を記憶している。また、記憶部48は、回転しているVTOLロータ20と、停止しているVTOLロータ20とを記憶している。このため、制御部46は、次に停止させるVTOLロータ20を決定することができる。以下で幾つかの停止順序を例示する。
【0036】
[4-1 第1のグルーピングによる各グループの停止順序(1)]
図3で示される第1のグルーピングの場合、制御部46は、重心Gから遠いグループから順にVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。なお、重心Gからの距離が同じである複数のグループが存在する場合がある。そのような場合、制御部46は、重心Gからの距離が同じである複数のグループのうち、後方に位置するグループから順にVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。又は、制御部46は、重心Gからの距離が同じである複数のグループのうち、前方に位置するグループから順にVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。なお、重心Gから各グループまでの距離というのは、重心Gから各グループ内のVTOLロータ20までの距離(離間距離)であってもよいし、重心Gから各グループの重心までの距離であってもよい。
【0037】
本実施形態において、重心GからグループA(第1列24aの2つのVTOLロータ20)までの距離と、重心GからグループD(第4列24dの2つのVTOLロータ20)までの距離とは同じである。また、重心GからグループB(第2列24bの2つのVTOLロータ20)までの距離と、重心GからグループC(第3列24cの2つのVTOLロータ20)までの距離とは同じである。
【0038】
制御部46は、第1列24a、第4列24d、第2列24b、第3列24cという順序で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。又は、制御部46は、第4列24d、第1列24a、第3列24c、第2列24bという順序で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。
【0039】
制御部46は、機械的なロータ固定機構(不図示)を制御することによってVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。制御部46は、インバータ装置38のスイッチング素子を制御してモータ40を停止させることによってVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。VTOLロータ20の回転を停止させるために制御部46が行うインバータ装置38の制御を停止制御という。更に、制御部46は、VTOLロータ20の回転角度を所定角度に固定してもよい。
【0040】
図5図7の各々は、第1のグルーピングにおける各列のVTOLロータ20の回転速度の時間変化を示すグラフである。説明の便宜のため、図5図7では簡易的なグラフを示す。図5図7は、3つの停止制御のパターンのグラフを示す。図5で示されるように、制御部46は、停止制御を開始するタイミングを一致させ、停止制御を終了する順序を調整してもよい。又は、図6で示されるように、制御部46は、停止制御を開始する順序を調整し、停止制御を終了するタイミングを一致させてもよい。又は、図7で示されるように、制御部46は、停止制御を開始する順序及び停止制御を終了するタイミングの各々を調整してもよい。
【0041】
[4-2 第1のグルーピングによる各グループの停止順序(2)]
図3で示される第1のグルーピングの場合、制御部46は、重心Gに近いグループから順にVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。その他の、停止ルールは、上記[4-1]のルールと同じである。
【0042】
制御部46は、第3列24c、第2列24b、第4列24d、第1列24aという順番で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。又は、制御部46は、第2列24b、第3列24c、第1列24a、第4列24dという順番で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。
【0043】
[4-3 第1のグルーピングによる各グループの停止順序(3)]
制御部46は、重心Gに関係なく、所定の順序でVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。8つのVTOLロータ20が、第1のグルーピングによる小グループ(第1列24a~第4列24d)に分けられ、更に複数の小グループが複数の大グループに分けられてもよい。このグルーピングにおいて、制御部46は、複数の大グループから順番に小グループを選択し、選択した小グループから順にVTOLロータ20の回転を停止させる。
【0044】
例えば、4つの小グループ(第1列24a~第4列24d)が、前グループ(第1列24a、第2列24b)と後グループ(第3列24c、第4列24d)という2つの大グループに分けられてもよい。このグルーピングにおいて、制御部46は、前グループと後グループとから交互に小グループを選択し、選択した小グループから順にVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。具体例として、制御部46は、第1列24a、第4列24d、第2列24b、第3列24cという順序で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。この順序は結果として、図5等で示される停止順序と同じである。又は、制御部46は、第4列24d、第1列24a、第3列24c、第2列24bという順序で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。又は、制御部46は、第1列24a、第3列24c、第2列24b、第4列24dという順序で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。又は、制御部46は、第4列24d、第2列24b、第3列24c、第1列24aという順序で、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。
【0045】
[4-4 第2のグルーピングよる各グループの停止順序(1)]
図4で示される第2のグルーピングの場合、制御部46は、重心Gから遠いグループから順にVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。
【0046】
制御部46は、最初に第1列24a及び第4列24dの各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。次に、制御部46は、第2列24b及び第3列24cの各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。
【0047】
図8図10の各々は、第2のグルーピングにおける各列のVTOLロータ20の回転速度の時間変化を示すグラフである。説明の便宜のため、図8図10では簡易的なグラフを示す。図8図10は、3つの停止制御のパターンのグラフを示す。図8で示されるように、制御部46は、停止制御を開始するタイミングを一致させ、停止制御を終了する順序を調整してもよい。又は、図9で示されるように、制御部46は、停止制御を開始する順序を調整し、停止制御を終了するタイミングを一致させてもよい。又は、図10で示されるように、制御部46は、停止制御を開始する順序及び停止制御を終了するタイミングの各々を調整してもよい。
【0048】
[4-5 第2のグルーピングによる各グループの停止順序(2)]
図4で示される第2のグルーピングの場合、制御部46は、重心Gに近いグループから順にVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。
【0049】
制御部46は、最初に第2列24b及び第3列24cの各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。次に、制御部46は、第1列24a及び第4列24dの各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。
【0050】
[5 制御部46が行う停止処理]
図11は、制御部46が行う停止処理のフローチャートである。制御部46は、VTOL機10が離陸工程から巡航工程に移行した後に、図11で示される処理を開始する。例えば、VTOL機10が所定速度以上で前進している状態で、翼(前翼14及び後翼16)は十分な揚力を発生させる。このため、制御部46は、クルーズロータ22を動作させた後に、前進速度が所定速度以上になることに応じて、各々のVTOLロータ20の回転を停止させてもよい。なお、制御部46は、各々のVTOLロータ20の動作状態(回転又は停止)を記憶部48に常に記憶させる。
【0051】
ステップS1において、制御部46は、機体の姿勢が安定したか否かを判定する。制御部46は、例えばピッチとロールとヨーの各々に基づいて機体の姿勢の安定度合を判定してもよい。制御部46は、ピッチが所定のピッチ範囲内である場合に、ピッチ方向の挙動が安定していると判定する。制御部46は、ロールが所定のロール範囲内である場合に、ロール方向の挙動が安定していると判定する。制御部46は、ヨーが所定のヨー範囲内である場合に、ヨー方向の挙動が安定していると判定する。ピッチ範囲、ロール範囲、ヨー範囲の各々は、記憶部48に予め記憶される。制御部46は、ピッチ、ロール、ヨーの各々の挙動が安定している場合に、機体の姿勢が安定したと判定する。一方、制御部46は、ピッチ、ロール、ヨーの少なくとも1つの挙動が安定していない場合に、機体の姿勢が安定していないと判定する。機体の姿勢が安定した場合(ステップS1:YES)、処理はステップS2に移行する。一方、機体の姿勢が安定していない場合(ステップS1:NO)、ステップS1の判定が繰り返し行われる。
【0052】
ステップS2において、制御部46は、VTOLロータ20を回転させているグループのうち、停止順位が先頭であるグループを選択する。制御部46は、選択したグループに含まれる全てのVTOLロータ20の回転を同時に停止させる。すなわち、制御部46は、停止制御を行う。制御部46は、停止させたVTOLロータ20を記憶部48に記憶させる。ステップS2の処理が終了すると、処理はステップS3に移行する。
【0053】
ステップS3において、制御部46は、全てのVTOLロータ20の回転を停止させたか否かを判定する。全てのVTOLロータ20の回転を停止させた場合(ステップS3:YES)、図11で示される停止処理は終了する。一方、一部のVTOLロータ20を回転させている場合(ステップS3:NO)、処理はステップS4に移行する。
【0054】
ステップS4において、制御部46は、計時を開始する。ステップS5において、制御部46は、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、記憶部48に予め記憶される。所定時間が経過した場合(ステップS5:YES)、処理はステップS6に移行する。一方、所定時間が経過していない場合(ステップS5:NO)、ステップS5の処理は継続される。制御部46は、所定時間が経過するまで計時を継続する。ステップS6において、制御部46は、計時を終了する。その後、処理はステップS2に戻る。
【0055】
このように、本実施形態において、制御部46は、全てのVTOLロータ20の回転を同時に停止させるのではなく、所定のグループ単位でVTOLロータ20の回転を停止させる。これにより、鉛直方向の推力が徐々に減少するため、鉛直方向の推力の変化を最低限に抑えることができる。従って、VTOL機10の乗り心地が悪化することはなくなる。
【0056】
[6 その他]
制御部46がモータ40に供給される電力を停止すると、VTOLロータ20は外力(空気抵抗、風等)を受けて回転し得る。外力によってVTOLロータ20が回転すると、モータ40は発電する。制御部46は、VTOLロータ20の回転角度を所定角度に固定する前に、外力によってVTOLロータ20を回転させてもよい。この場合、制御部46は、モータ40が発電した電力によって蓄電装置32が充電されるように、インバータ装置38のスイッチング素子を制御してもよい。
【0057】
図12は、図1の垂直離着陸航空機10とは異なるタイプの垂直離着陸航空機10´の上面図である。図12で示されるVTOL機10´において、8つのVTOLロータ20は、前後方向に4列を形成し、左右方向に4列を形成する。このようなVTOL機10´において、8つのVTOLロータ20が複数のグループに分けられ、VTOLロータ20の停止順序がグループ単位で決められていてもよい。
【0058】
[7 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0059】
本発明の態様は、鉛直方向の推力を発生させる複数のVTOLロータ(20)と、水平方向の推力を発生させる1以上のクルーズロータ(22)と、機体の前記水平方向の移動に伴い揚力を発生させる1以上の翼(14、16)と、複数の前記VTOLロータと1以上の前記クルーズロータの各々の動作を制御するコントローラ(46)と、を備える垂直離着陸航空機(10、10´)であって、複数の前記VTOLロータは複数のグループに分けられ、各々の前記VTOLロータはいずれか1つの前記グループに含まれており、前記コントローラは、前記翼による揚力が発生した後に、複数の前記VTOLロータの回転をグループ単位で順次停止させる。
【0060】
上記構成において、コントローラは、全てのVTOLロータの回転を同時に停止させるのではなく、所定のグループ単位でVTOLロータの回転を停止させる。上記構成によれば、鉛直方向の推力を徐々に減少させるため、鉛直方向の推力の変化を最低限に抑えることができる。従って、VTOL機の乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0061】
上記態様において、複数の前記グループは、垂直離着陸航空機の重心(G)から各々の前記VTOLロータまでの距離に応じて分けられてもよい。
【0062】
上記態様において、各々の前記グループは、前記距離が同じである複数の前記VTOLロータによって構成されてもよい。
【0063】
上記構成によれば、VTOLロータの回転停止前後で鉛直方向の推力のバランスを維持することができる。
【0064】
上記態様において、各々の前記グループは、更に前後方向の位置が同じである複数の前記VTOLロータによって構成されてもよい。
【0065】
上記構成によれば、VTOLロータの回転停止前後でロール方向の力のバランスを維持することができる。
【0066】
上記態様において、前記コントローラは、前記重心から遠い前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させてもよい。
【0067】
上記態様において、前記コントローラは、前記重心に近い前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させてもよい。
【0068】
上記態様において、前記コントローラは、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループが存在する場合に、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループのうち、後方に位置する前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させてもよい。
【0069】
上記態様において、前記コントローラは、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループが存在する場合に、前記重心からの前記距離が同じである複数の前記グループのうち、前方に位置する前記グループから順に前記VTOLロータの回転を停止させてもよい。
【0070】
上記態様において、垂直離着陸航空機は、1つの前記VTOLロータに1つずつ接続される複数のモータ(40)を備え、前記コントローラは、前記モータを制御して、前記VTOLロータの回転を停止させると共に前記VTOLロータの回転角度を所定角度に固定してもよい。
【0071】
上記態様において、前記モータは、蓄電装置(32)に接続されてもよい。
【0072】
上記態様において、複数の前記グループには、第1グループと第2グループとが含まれ、前記第1グループの1つの前記VTOLロータに接続される1つの前記モータと、前記第2グループの1つの前記VTOLロータに接続される1つの前記モータとは、それぞれ共通の前記蓄電装置に接続されてもよい。
【0073】
上記態様において、前記コントローラは、前記機体の姿勢が安定していることを検出した後に、複数の前記VTOLロータの回転を前記グループ単位で順次停止させてもよい。
【0074】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0075】
10…VTOL機(垂直離着陸航空機) 14…前翼(翼)
16…後翼(翼)
20、20-1L、20-1R、20-2L、20-2R、20-3L、20-3R、20-4L、20-4R…VTOLロータ
22…クルーズロータ 32…蓄電装置
40…モータ 46…制御部(コントローラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12